第6回 成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ 議事録

日時

2016年11月15日(火)16:00から18:00

場所

消費者委員会会議室

出席者

【委員】
樋口座長、池本座長代理、大森委員、増田委員
【オブザーバー】
後藤専門委員
【説明者】
消費者庁 佐藤取引対策課長
東京都消費生活総合センター 佐々木活動推進課長、浅倉相談課長
(独)国民生活センター 保木口教育研修部教務課長、教育研修部教務課担当者
【消費者庁】
福岡審議官、河内消費者政策課長
【法務省】
中辻参事官
【事務局】
黒木事務局長、福島審議官、丸山参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 関係省庁・関係機関からの報告
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○丸山参事官 それでは、会議を始めさせていただきたいと思います。

本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただきありがとうございます。ただいまから「成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ」第6回会合を開催いたします。

本日は、所用によりまして河上委員長が欠席との連絡をいただいております。

議事に入ります前に配付資料の確認をさせていただきます。

お配りしております資料につきましては、議事次第下部に配付資料一覧を記載しております。不足の資料がございましたら、事務局までお申しつけください。

それでは、樋口座長、以後の議事進行をよろしくお願いいたします。


≪2.関係省庁・関係機関からの報告≫

(1)消費者庁

○樋口座長 それでは、早速、本日の議題に入らせていただきます。

本日は、新たに成年となる者の消費者被害の防止・救済のための対応策について検討するために、関係省庁・関係機関の方々にお越しいただきまして、若年消費者の被害実態やそれに対する各省庁の現状の取組、関係機関が行っている消費者相談の窓口対応、消費者啓発等についてお伺いしたいと思います。

関係省庁・関係機関からの報告として、消費者庁、東京都消費生活総合センター、国民生活センターの計3団体から御報告いただきます。

それでは、まず、消費者庁から特定商取引法の概要や執行状況について御報告をお願いいたします。

○佐藤消費者庁取引対策課長 消費者庁取引対策課長の佐藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

本日は、これまでの本ワーキング・グループでも議論になっております判断力不足便乗でございますとか、適合性原則違反でございますとか、こういった論点を中心に特商法の仕組みと執行の状況について概略を御説明させていただきます。

お手元資料、まず1ページを御覧いただければと思いますけれども、これは皆さんよく御存じのことだと思いますのでざっとおさらいをするだけにとどめますけれども、そもそも特商法とは何を規律しているかということですけれども、1ページの資料の左側にございますけれども、7つの取引類型を対象に行政規制と民事ルールを定めるというものでございます。

具体的にはそこにありますように、訪問販売、電話勧誘販売、通信販売、特定継続的役務提供、連鎖販売取引、業務提供誘引販売取引、訪問購入、この7つを対象にしておりまして、行政規制としてはここにありますように、例えば不当な勧誘行為を禁止するとか、あるいは契約に関係する書面を交付しなければいけないとか、一定の告知義務があるとかそういうことを規制していて、そういうことが守られない場合には行政処分または罰則の適用があります。

それから、民事ルールとしては、そこにありますようにクーリングオフ、要するに契約締結後一定期間は無条件で解約することができるというクーリングオフの仕組み。それから、クーリングオフ経過後も中途解約ができる仕組みでありますとか、過量販売解除という契約を解除するための特則が規定されておるわけでございます。

こういったことで特商法の取引類型に該当すれば、通常の取引では認められていないような消費者の保護のルールが定められているということでございます。

それから、2ページ目を御覧いただきますと、これもよく御存じだと思いますけれども、先般6月に国会で特商法の改正法案が成立・公布されまして、新たな規制強化が実現したということでございます。全部は御説明しませんけれども、例えば1番目の左上のところにありますけれども、悪質事業者への対応ということで、我々は業務禁止命令と呼んでいますけれども、従来の法人に対する業務停止命令に加えて、業務停止を命じられた法人の取締役などに対して、停止された業務の範囲の中で新たな法人を設立してその業務を継続することを禁止する。個人に対してそれを命ずることが可能になるということでございます。

それから、業務停止命令の期間も従来最長1年だったのを2年に延ばすとか、あるいは刑事罰の強化ということをやっております。

それから、民事ルールの関係で言うと、4番のところでございますけれども、いわゆる過量販売会場の仕組みでございますけれども、従来訪問販売に認められたものを電話勧誘販売にも認めるということを新たに導入したわけでございます。

それから、5.の下から2番目のところにありますけれども、取消権の行使期間を従来の6か月から1年に延ばすということもやっています。

以上が特商法の概略でございます。

次に3ページを御覧いただければと思いますけれども、こういう特商法の体系の中でこれまでこのワーキング・グループでもいろいろ議論されてきたというふうに承知しておりますけれども、いわゆる消費者の判断力の不足に乗ずるような行為、あるいは消費者の適合性原則がどういうふうに規制されているかということについて御説明申し上げます。

ここにありますように、特商法の規制対象となる取引類型のうち、通販を除く6類型に対してこれらの行為が行政処分の対象と規定されています。

マル1番目が、相手方の判断力不足に乗じて契約を締結させること。いわゆる判断力不足便乗と言われるものです。マル2番目が、相手方の知識、経験及び財産の状況に照らし不適当と認められる勧誘を行うことというものでございます。

4ページを御覧いただきますと、具体的な条文が書いてありますけれども、特商法の7条が我々の行政処分の一形態である指示の根拠規定で、8条が業務停止命令の根拠規定でございますけれども、7条の4号を受ける形で、下にありますけれども、省令施行規則ですけれども、この省令の7条の2号、3号にそれぞれ具体的に規定をされています。

7条の2号を御覧いただきますと、「老人その他の者の判断力の不足に乗じ、訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約を締結させること」というふうに書いてあります。

第3号には、「顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行うこと」というふうに規定をされています。

これは訪問販売に関する規定の例でございますけれども、連鎖販売取引を始めほかの取引についても同様の規定が置かれておるところでございます。

この省令の7条の2号に書いてあります「老人その他の者」というところですけれども、この「老人」というのは単なる例示でございまして、当然若年者も含まれるということでございます。

以上が特商法の規定でございます。

次に執行の状況について御説明申し上げたいと思いますけれども、まず、マクロの状況を御説明申し上げたいと思います。

5ページ目を御覧いただきますと、数字の表がありますが、これは下の注のところに書いてありますけれども、平成24年4月から今年の10月までに国が特商法違反で処分した事業者の契約者をPIO-NETで登録されている方々の数を私どものほうで集計して、年齢別の割合を計算してみたものでございます。

したがって、これらの人々がみんな被害に遭ったというわけではありませんし、また、処分をした事業者の全ての契約者をカバーしているわけでもありませんので、そういう意味で全体的な傾向を大づかみするための参考的な指標だというふうに御理解いただければと思います。

そういう前提で御覧いただきますと、まず一番下の行、「7類型全体」というふうに書いてありますけれども、この行が、要するにこれまで約5年間の間に我々が処分した事業者、一番右にありますとおり、全部で109事業者ありますけれども、この全109事業者の我々がPIO-NETで把握し得る限りで契約者の年齢別のプロファイルがどうなっていたかという分布でございまして、これを見ますと、一番多いのが60代以上ということで57.4%ということになっています。20代はというふうに見ますと、17.8%ということになっております。

同様に各取引類型ごとに見てみますと、若年者の割合、20代の割合が非常に多いのは、「特定継続的役務提供」というところで真ん中にありますけれども、まず全体を見ていただくと、全体の60%が20代ということになっております。ただ、特定継続的役務提供というのはエステとか学習塾とか結婚相談所とかそういうものが対象になっているわけですけれども、これを具体的な役務ごとに分けてみますと、この期間に我々は2件のエステ事業者を処分しているのですけれども、その2件の事業者の契約者を見ると、当然ですけれども、やはり20代、若い女性が非常に多いということで、7割以上が20代ということになります。

それを除きますと、それ以外の事業者は3事業者あるのですけれども、それ以外については20代が29.2%であるのに対して、30代が31.3%ということで30代のほうが若干多いということになっております。

それから、連鎖販売取引ですけれども、一番下にありますが、全体では20代が21.1%というふうになっておりますが、60代が47.2%で、やはり連鎖全体で見ると高齢者のほうが契約者が多いということになっています。

ただ、これも当然商品ごとに大きく違っておりまして、スマホ向けゲームアプリの事業者と自動車関連機器の事業者、その2社について見ると、やはり20代が圧倒的で6割を超えます。ただ、それを除くと11事業者あるのですけれども、逆に6割が60代以上ということで、連鎖で多いのは健康食品とか化粧品とかそういったものですけれども、そういうものについては高齢者のほうが契約者の方が多い傾向にあるようでございます。

それから、最後ですが、訪問販売、一番上ですけれども、これも20代が15.6%に対して、61.9%が60代以上という傾向にあります。しかし、これも商品によって非常に大きく違っていまして、我々、投資用DVDの販売というのを3事業者について処分したのですけれども、これは20代が100%ということでございます。それ以外に34の訪販事業者について処分しているのですけれども、これらについては、20代は10%未満(9.6%)ということですが、60代以上が66.3%ということになっております。

以上、このデータを見る限り、まず全体的には20代よりも60代以上の契約者の方が割合としては高いということでございます。

それから、一定の取引形態と契約者の年齢層との間にそれほどはっきりした相関があるわけではないのではないかというふうに考えております。むしろ、先ほど御説明したとおり、取扱商品、サービスの種類によって同じ取引形態でも契約者の年齢層というのは結構違っているような印象がございます。

最後に6ページでございますが、こういうマクロの話を踏まえた上で個別の事案で、特に判断力不足便乗、適合性原則違反ということで私どもが実際にどういうような事実を認定して処分しているかということを、最近の事例で典型的なものを幾つか御紹介させていただきますが、これは処分をした事業者について判断力不足便乗または適合性原則違反を認めたものです。ただ、これらの事業者を処分するに当たっては、当然のことですけれども、ほかの違反行為、不実告知とか不適切な勧誘とか、そういうものも当然あわせて認定をしておりますので、適合性原則違反とか判断力不足便乗だけで処分しているわけではないということは御理解いただければと思います。

まず、一番上の例ですけれども、これはCO2排出権取引に係る役務提供契約の訪問販売業者なのですけれども、この事業者が、そこにありますように、消費者が投資の知識や経験に乏しいことにつけ込んでCO2排出権取引というのは非常に複雑で多額の損失を被るおそれのある大きなリスクを伴う取引であるにもかかわらず、消費者の知識、経験、財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行っていたということで、これは適合性原則違反認定をしております。

それから、27年4月の電話勧誘販売の事例ですけれども、これは認知症が認められる消費者の判断力不足に乗じて健康食品の売買契約を締結させたということで、判断力不足便乗を認定しています。

3番目の事例ですが、27年1月の連鎖販売業者に対する処分の例ですけれども、これは連鎖販売取引契約の締結について勧誘するに際して、消費者側がお金がないから無理ですと言っているのに対して、親戚から借りてくればいいでしょうと言って、消費者の財産の状況、つまりお金がないという状況に照らして不適当な勧誘を行っていたということで適合性原則違反を認定しております。

それから、26年6月の事例ですが、電話勧誘販売業者でございますけれども、健康食品の売買契約なのですけれども、これも認知症の症状が表れている消費者に対して、判断力が不足しているということを認識した上でこれに乗じて売買契約を締結させたということで、判断力不足便乗を認定しています。

また、消費者が年金生活者であるとか生活保護の受給者にもかかわらず、財産の状況に照らして支払が困難であるということを認識した上で不適当な勧誘を行っていたということで、この適合性原則違反を認定しております。

こういった形で認められる場合には、こういう判断力不足便乗とか適合性原則違反も積極的に認定して悪質事業者の処分に努めているところでございます。引き続きこういうような規定も十分に活用して、高齢者の方々あるいは若年消費者の方々の被害の防止に向けてしっかり法を適用していきたいというふうに考えているところでございます。

私からの説明は以上でございます。

○樋口座長 御説明ありがとうございました。

ただいまの御説明を踏まえまして、御質問、御意見等がある方は御発言をお願いいたします。

池本委員、お願いします。

○池本座長代理 御説明ありがとうございました。

御説明いただいた資料の中で、まず、処分事業者の契約者の構成では、悪質商法が高齢者をターゲットにするというのが昔から言われてきたことですが、あわせて20代若年層をターゲットにした悪質商法というのが次に多いのだということがこれで非常にクリアになっているかと思います。

そこで、全体像というよりは6ページの資料に関連して、現場の執行しておられる方の印象という感じなのか、あるいは実務の経験というところになるのかもしれませんが、判断力不足に乗じてとか、知識、経験、財産の状況に照らして不適当と認められるというのが、ほかの客観的な要件である程度判定できるもの、あるいはセールストークのように、こういうことを言ったかどうかという聞き取りによってある程度ありなしが判定できるものに比べるとなかなか認定しづらいというようなところがあるのではないかと思うのです。民事の効力であれば事後評価でいいですが、執行する行政処分の場合には、そのあたりのこの2つの規定の活用というのがどのくらい現実にあるのか、また、それは執行する上での使いやすさというか、ほかよりはなかなか難しいけれども何とか使っているのか、これも活用できているという感じなのか、そのあたりの現場の感触というのをもしお分かりであれば教えていただきたいのですが。

○佐藤消費者庁取引対策課長 それは非常に重要な御質問だというふうに思っております。私どもとしては、やはり判断力不足便乗とか適合性原則違反というのも非常に重要な行政処分のツールだというふうに認識をしております。他方で、これは判断力不足便乗あるいは適合性原則違反のみの問題ではないのですけれども、我々が行政処分をするに当たって、個々の消費者の方々の御協力をどれだけいただけるかというのはケース・バイ・ケースでございまして、池本座長代理、まさに御指摘のとおり、民事訴訟の場合は消費者が自ら当事者になられるわけで、自分がそのときどうだったかということを一義的に御主張されて、それでもって自分の損害の回復を図られるというお立場にあられるわけですが、我々がこういう判断力不足便乗とか適合性原則違反、あるいは、その他当該消費者の個別具体的な何か御事情、それは、例えば具体的にどういう勧誘をされたかとかいうことも含まれるのですけれども、具体的なケースでどのような違法行為があったかということを認定するに当たって、個々の消費者の方々がどれだけ御協力いただけるか、あるいは、それを補強するようなきちんとした証拠を我々がどれだけ確保できるかというのは、やはりケースごとに違いますけれども、場合によってはなかなか難しい例もあるというふうに思っております。

ここにありますように、判断力不足につけ込んだとか、あるいは適合性原則に明らかに反しているというふうに認定するに当たっては、例えば消費者の方が認知症を患っていらっしゃるとか、あるいは、生活保護を受けていらっしゃるとか、外形的にもかなりそれが明らかであることがあれば、我々としてもそれを認定しやすいというのは確かにあるのではないかと思います。そういうのがない場合にどこまでこの人はそのときに判断力が不足していたとか、この人の知識、経験に照らしてそれは不適切、バランスを欠いたような勧誘だったというふうに認定できるかというのはケース・バイ・ケースだと思いますけれども、場合によってはなかなか難しい面もあるのかもしれません。

○樋口座長 ほかにいかがでしょうか。

後藤委員、お願いします。

○後藤専門委員 ただいまの池本委員と問題関心が共通しているのではないかと思うのですけれども、3ページの判断力不足便乗及び適合性原則違反の規制ですけれども、2つに分かれていて、判断力不足便乗の場合と適合性原則違反の場合ということで、省令でいうと7条の2号と3号と一応分かれているのですけれども、判断力が不足していると知識や経験も余りないということで両者は関連している面もありまして、特定商取引法の解説書などを見ると、「相手方の判断力不足に乗じて契約を締結させること」というのは適合性原則違反の一つの面であるというような解説をしているものもあるのですけれども、ここで特に省令の7条の2号、3号と一応分けて規定しておりますので、分けて規定していることが実際の執行実務でどの程度意味があるのかということをお尋ねしたいのです。

実際に認定するときに両者は余り区別しないで認定しているということなのか、あるいは、最後のページのところで、判断力不足便乗と書いてあるものと適合性原則違反と書いてあるものと、両方書いてあるものもあるのですけれども、分けて書いてあるものもあるということから見ると、適合性原則違反と判断力不足便乗というのを認定のところで分けて認定するということもあるというふうに、この資料からは見えるのですけれども、分けて認定する場合に判断力不足便乗の場合と適合性原則違反の場合とで、つかまえるポイントみたいなものがどこか違うのか、どちらのほうが認定しやすいとか、そういうような違いがあるということであれば、それについてお尋ねしたいと思います。

余り違いはなく、両者区別しないで一体的に判断されているということであれば、それはそれでそういう御回答もあると思うのですが、その辺についてお尋ねしたいと思います。

○佐藤消費者庁取引対策課長 この6ページを御覧いただければお分かりいただけると思うのですけれども、我々が処分をするに際して事実を認定する場合には、判断力不足便乗と適合性原則違反をそれぞれ分けて別々のものとして認定をしています。やはり判断力不足に乗じて契約を締結させたということを認定している例は、ここで言うと認知症というのが典型例でございます。これは外形的にも非常に明らかな事例だというふうに言えると思うのです。

ですから、そういう認知症のように外から見ても明らかに消費者の方の判断力が落ちているような場合には、かつその契約を締結させたということがある場合には、判断力不足便乗として認定するということだと思います。

それに対して適合性原則違反のほうは、ここにありますように、顧客の知識、経験という主観的要件もありますけれども、財産の状況という客観的な要件も規定をされておりまして、この個別事例でも、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、例えば消費者が生活保護を受けていらっしゃるとか、そもそも財産がほとんどなくて生活保護を受けているとか、年金しか収入がないとか、そういう財産的な状況というのも外形的にある程度はっきり分かるわけですから、そういうものを事業者の側が認識しながら勧誘をしていたような場合には、こちらの適合性原則違反で捕まえる、こういうような実務でやっておるところです。

○樋口座長 お願いします。

○後藤専門委員 両者を分けて考えるとすると、未成年者について何らかの立法的な対応を考えるという場合に、判断力不足便乗ということを基本に置いて立法を考えるのと、適合性原則違反ということを基本に置いて立法を考えるのと、可能性としては2つあると思うのですが、使いやすさ等を含めてどちらのほうがよりベターだというふうにお考えになりますでしょうか。

○佐藤消費者庁取引対策課長 そもそも特商法では、御説明申し上げたとおり、判断力不足便乗なり適合性原則違反というのは既に規制対象となっておりますので、先ほど申し上げましたとおり、ここの省令に書いてあります「老人その他の者」はあくまでも例示でございますので、若年者も場合によっては当然含まれ得るというふうに解釈をしておりますから、そういう意味でさらに現行の規定を深堀りあるいは改正する必要というのは、私どもとしては現時点では余り考えていないです。

○樋口座長 お願いします。

○後藤専門委員 先ほど判断力不足便乗と適合性原則違反と2つ分けるとした場合に、両者どちらが使いやすいのかという問題意識でお尋ねしたのですけれども、私の見るところ、適合性原則違反の場合に「知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行うこと」ということで、最後に「勧誘」という言葉で結ばれているのに対して、判断力不足便乗の場合には「判断力不足に乗じて契約を締結させること」というふうになっていまして、判断力不足のほうは「勧誘」という言葉が出ていない。不適当な勧誘が行われたかどうかの認定というのは割と難しいのではないかと考えるのですけれども、特に判断力が不足しているような場合ですと、勧誘が不適当かどうかを本人から適切に聞けるかどうかという問題も出てきますので、そういう意味から言うと判断力不足に乗じて契約を締結させたというような規定形式のほうが認定しやすいように、規定の表面上の文言からは思うわけでありますが、実際の執行実務においてその辺の違いというのか、そういうようなことがあるのかどうかということについてお尋ねしたいのですが、いかがでしょうか。

○佐藤消費者庁取引対策課長 どちらが認定しやすいとかいうよりは、要するに具体的なケースにおいてどちらに該当するのかというふうに私どもは考えますので、まさにここにありますように、判断力の不足に乗じて契約を締結させたというようなことが言えるのであればそれを問いますし、勧誘の一環として知識、経験及び財産の状況に照らして不適当だと認められるようなものがあれば、先ほども申し上げたとおり、るる認定をして、実際に処分しておりますので、だから、そこは個別のケース次第、ケース・バイ・ケースということかと思います。

○樋口座長 ありがとうございます。

増田委員、お願いします。

○増田委員 判断力不足といった場合に、高齢者の認知症等ということであれば判断力不足と言いやすいですけれども、若者の場合で判断力不足で違反になったケースというのはどのくらいあるのかということと、通常、私ども消費生活相談員としては、知識、経験がないことによって適切な判断ができないというようなことで相手方と話し合いをすることになるのですけれども、その辺のところで判断力不足の例としては、若者の場合はどういうことがありますでしょうか。

○佐藤消費者庁取引対策課長 少なくとも我々が今回調べた範囲では、若者について判断力不足便乗というのを認定して処分した例というのはありません。ただ、そこは先ほど申し上げましたとおりケース・バイ・ケースかというふうに思いますので、例えば若年の方で何らかの理由で非常に判断力が低い状況にあったとか、あるいは、個人の属性としてそういう人だというものがあって、まさにそれに乗ずるような形で事業者が契約を締結したというような事例があれば、当然現行規定を適用して処分することは十分可能です。ただ、これまでの処分実務ではそういう例はなかったということかと思います。

○樋口座長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

後藤委員、お願いします。

○後藤専門委員 5ページの表なのですけれども、訪問販売のところと電話勧誘販売のところが60代で非常にパーセンテージが多いわけですけれども、高齢者被害ということで不招請勧誘の規制ということが議論される部分だと思うのですけれども、仮に不招請勧誘の規制というのを高齢者に連動させるというのでしょうか、高齢者と同じような問題が若者にもあるというふうに考えて、不招請勧誘規制を考えるというふうにするのも一つの方法かと思うのですが、その場合に訪問販売の場合は20代のところで15.6%、これはほかの年代に比べて、60代以上は別ですけれども、かなり多いのですが、電話勧誘販売のところは特段多いわけではない。それから、それ以外の特定継続的役務提供とか連鎖販売取引は若者の被害が多いということから見ると、特に高齢者で問題とされている不招請勧誘規制の強化とか、それに民事効を与えるとか、そういう議論がどこまで若者に有効なのかという観点で見た場合に、訪問販売のところには有効かもしれませんけれども、それ以外のところでは余り有効ではないというような見方もできそうな気がするのですけれども、この辺について何かお考えがあればお尋ねしたいと思います。よろしくお願いします。

○佐藤消費者庁取引対策課長 先ほども申し上げましたとおり、私の理解では、例えば訪問販売のところを御覧いただいても、投資用DVDとそれ以外とでは年齢プロファイルは全然違うわけでございます。だから、特定の取引形態と年齢による、これは契約者なので被害ではないのですけれども、契約者の多い少ないとの間にそれほど強い相関があるのかというとそうではなくて、むしろ商品が何なのか。当然、若者が使うものであれば若者の契約が多いですし、高齢者の方がお使いになるものであれば高齢者の契約者が多いということだと思うので、特商法上の取引類型と年齢の相関関係がどこまであるのかというのは私も疑問だと思っています。

○樋口座長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、消費者庁からの御報告はこのあたりにさせていただきたいと思います。

(2)東京都消費生活総合センター

○樋口座長 次に、東京都消費生活総合センターから御報告をいただきたいと思います。

本日は、同センターの活動推進課長でいらっしゃいます佐々木勝広様、同じく同センターの相談課長でいらっしゃいます浅倉美文様に御出席いただいております。お忙しいところを御出席いただきましてありがとうございます。

それでは、「消費者被害防止のための若者啓発・教育事業」や「相談事例から見た若者の消費者被害の状況」等について御説明をよろしくお願いいたします。

○佐々木東京都消費生活総合センター活動推進課長 東京都消費生活総合センター活動推進課長の佐々木と申します。本日は、当センターの取組の現状につきまして報告する機会を賜りまして誠にありがとうございます。私からは、「消費者被害防止のための若者啓発・教育事業」と題しました資料2-1をお手元に御用意いただきまして、こちらに基づきまして説明をさせていただきたいと思います。

まず、2ページを御覧ください。当センターの事業は2つの柱、左側の箱ですが、消費生活相談と情報提供、消費者教育・活動支援、主にここから成っております。このうち、右側の項目の最上段、都内の消費生活相談の状況につきましては、この後相談課長から御報告をさせていただきます。ここでは下段の情報提供及び被害防止啓発、次の消費者教育事業について説明させていただきますけれども、幅広く都民に実施している中で、ここでは特に若者向けの事業に絞って御紹介させていただきます。

3ページを御覧いただきたいと思います。当センターが実施している若者向け消費者被害防止啓発事業の概要でございます。

1つ目は、関東甲信越ブロックの自治体が行う悪質商法被害防止共同キャンペーンでございます。若者の消費者被害の広域化に対応するために、平成10年度からブロック内の自治体、今では1都9県6政令指定都市になってございますけれども、国民生活センターも加わる形で協力して毎年1月から3月をキャンペーン期間として、ポスター、リーフレット、また、交通広告等による啓発を実施してございます。

都が作成しました啓発ポスター、リーフレットのデザインをブロック内共通のデザインとして取り扱っていただきまして、各都県市、都内区市町村が若者向けのイベントや各団体の施設、学校等を通じまして掲示・配布をしておるところでございます。また、ポスターでの交通広告も実施してございます。こちら資料に記載の配布部数は都のみの数字ということで御理解いただければ幸いでございます。

このキャンペーンでは、一番下に記載してございます名称と時期は自治体によって少しずつ異なるのですけれども、広域に連携して若者向けの特別相談、ここでは「若者のトラブル110番」ということで記載がございますけれども、こちらを実施しているのが特徴的になってございます。

4ページでございますけれども、今年の1月から3月に実施しました前回のキャンペーンのポスターを掲載させていただいております。ここに登場する「カモかも」「サギだもん」「相談インコ」の3つのキャラクターはキャンペーンの中から生まれたものでございます。ここでは、ちょうどこのポスターの最下段のところに消費者被害防止に向けた消費生活相談を促すメッセージとともに、右側には消費生活センターの認知度を上げるために都のセンターの名称と電話番号を記載してございます。この部分を各自治体がそれぞれの名称と番号を入れかえて啓発活動を行っているということでございます。

5ページになります。前回のキャンペーンリーフレットの裏面を掲げさせていただいています。本来のサイズはA3判2つ折りでこんな大きさのものになるのですが、今、皆様方のはちょっと小さく写ってございますけれども、先ほどのポスターのデザインを表紙に使用いたしまして、こちらに記載の裏面に、若者の被害の多い悪質商法の手口や事例、ここではキャッチセールス、アポイントメントセールス、マルチ商法、架空請求の4つを取り上げて、漫画で分かりやすく伝えながら被害に遭わないためのアドバイスを送っているという形の構成になってございます。

資料の6ページを御覧いただきます。一部はキャンペーンの続きになるものでございますけれども、初めに映画館で「カモかも」を使った15秒の啓発CMを上映してございます。キャンペーン期間中の2週間、都内の映画館10館で上映するということで、これは都独自の取組になります。

紙媒体による啓発がなかなか若者に行き届かないところがございますので、さらに多様な媒体あるいは手法を用いて訴求していこうと考えたものでございます。

また、都内の高校卒業生に対して学校を通じて一人一人に行き届くことを狙って啓発ノートを作成・配布しております。ここでは一旦、7ページを先に御覧いただけたらと思うのですけれども、先ほどのリーフレットと同じくノートの下段に悪質商法の手口など解説を15事例載せる形のノートを用意しています。本体はこちらになりますけれども、こういうノートの各ページに、これは30ページほどあるのですけれども、こちらの下のところにそれぞれ悪質事例とかトラブルの事例を載せて、高校生が卒業するときに一人一人に行き届かせるという形で取り組んでおります。

また、6ページに戻っていただきますと、最後の項目、若手芸人によるネット動画を活用した啓発というものを平成25年度から実施しております。これも多様な媒体・手法による若者への訴求の一つでございますけれども、若者にとって身近に感じる同世代の芸人を通じて消費生活行政に関心の薄い層にもお笑いでアプローチをしながら、若者が多く利用するインターネットを活用しまして動画による効果的な普及啓発を行うものでございます。

資料に写真等の記載がないのですけれども、例えば、先ほど来よく出てくるキャッチセールスやアポイントメントセールスやマルチ商法のほかにも、サイドビジネス商法やデート商法、オンラインゲーム、エステティックサービスなど、若者が被害に遭いやすい消費者トラブルをお題にして若手芸人が作った漫才やコントを公開イベントで披露してもらいまして、それを収録した動画をインターネットで流すといった取組もさせていただいているところでございます。

これらの若者に絞った取組のほかにも消費生活情報を総合的に提供するホームページなどを持っておりますし、フェイスブック、ツイッターも活用した形で幅広い世代に向けた情報発信を行っていることは、冒頭に申し上げたとおりでございます。

8ページを御覧いただきたいと思います。消費者教育のうち、消費者教育人材の育成になります。学校で消費者教育に携わる教員の方々を支援するために、夏休み期間中に学校における消費者教育に必要な知識を提供する教員講座を実施いたしますとともに、教員向けの情報提供誌「わたしは消費者」を毎年4回ほど発行いたしまして、都内の国公私立の全ての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校などにお届けすることを通じまして、消費生活上の新たな課題に関する情報や消費者教育の有効な実践例等の情報を提供してございます。

教員講座は実学13回、実験実習・体験講座3回の計16回というのを骨格に据えてございますけれども、飯田橋にあります消費生活総合センター、立川にあります多摩消費生活センターの2会場で同じプログラムを実施するということでやってございます。

プログラムの詳細は、9ページを御覧いただきながらと思います。

9ページでは、実学、実験実習、体験の3区分の大枠を御覧いただけると思うのですけれども、今年度に実施した教員講座のテーマ、講師を載せております。「分野」というのを御覧いただきますと、実学講座のほうでは概論、消費者教育、法律、法教育、契約、情報、衣、食、住、金融の項目を消費者教育の核として私どもはセットしておりまして、そこに今度は受講していただいた教員の方々のアンケート結果を踏まえて、プログラムを企画する時点で法改正とかトピックを勘案しながら講座のテーマの設定、あるいは講師の選定というのを毎年度見直しをしてきているところでございます。今年度は延べ1,257名の方々に受講していただいたところでございます。

続きまして、10ページを御覧いただきたいと思います。消費者教育教材の作成・配布になります。

1つ目は、消費生活に役立つ情報を楽しく分かりやすく学習するための教材として、毎年消費者教育DVDを作成しております。区市町村や図書館、学校などに配布させていただいております。このDVDは後で御説明いたします都の消費者啓発員による出前講座とか、あるいは、区市町村主催の都民向け講座の教材としても活用をお願いしておりまして、消費者教育の推進を図っているところでございます。事例はこの後御覧いただきたいと思います。

次の項目のWeb版消費者教育読本につきましては、子供のころからのきめ細かな消費者教育によりまして、自立した消費者を育成できるとの考えから、生徒自身が消費生活の当事者として認識を持ち、社会の中で主体的に判断し行動できる力を身につけるための教材を毎年作成しております。学校で消費者教育の推進を図っていただくための支援でございます。

以前は紙ベースで教育読本を作成してまいりましたけれども、インターネットの普及状況とか、あるいは学校の情報環境の整備状況等を考慮いたしまして、平成18年度よりWeb版で作成をさせていただいております。

次の4コマ漫画で伝える消費者教育読本の話とあわせて、事例を次ページ以降に御覧いただきたいと思います。

11ページでございます。今年の2月に発行いたしましたDVDの案内のリーフレットでございます。高校生、若者を主な対象に作成したものでございまして、契約の成立あるいは契約の拘束力など、高校生の主人公とともに日常生活を舞台にした法律の考え方を体感しながら、民法や契約の考え方を学習することで不当な契約から身を守る自立した消費者としての法律センスを養うことを狙ったものでございます。教員の方々が授業を効果的かつ効率的に行えるよう、弁護士や高校教員が執筆した補足解説やワークシートといったものもこの中に収録してございます。

12ページを御覧いただきたいと思います。毎年度発行していますWeb版消費者教育読本案内リーフレットでございます。

今回は主に中学生を対象としたものでして、このWeb版消費者教育読本では、前半は「楽しく学べる買い物体験」、後半は「深く考える発展ステージ」、まとめでは「消費者の権利と責任」、こういった形で構成されております。ガイドロボットの案内で様々な商品の買い物の疑似体験を通しまして情報を整理し、自分なりの考えで商品を選択する力を身につけたり、あるいは、製品安全の考え方やエシカル消費などを幅広く学びまして、批判的思考力を養うことを狙ったものでございます。こちらも教員用の指導書や指導者用の資料が付属しております。

これらの教育教材の作成に当たりましては、都の教育委員会を通じまして、指導的立場あるいは熱意のある教員の皆様方の協力を得る形で、授業で使い勝手のよいものになるよう多面的に検討を重ねながら作ってきてございます。

さらに13ページを御覧いただきたいと思います。若者向け消費者教育読本の表紙と2ページの部分を抜粋して表示しております。

こちらは若者向けに様々な悪質商法の手口などを4コマ漫画で紹介する「飯田橋四コマ劇場」でございます。昨年2月に発行した消費者教育読本でございまして、新入社員などの若者が陥りやすい悪質商法や消費者トラブルを漫画で楽しく学ぶことができるという内容でございます。こういったものも含めまして、若者向けの啓発活動を行っております。

続きまして、14ページを御覧いただきたいと思います。

14ページでは、協働による情報発信としまして、出前講座を紹介させていただいています。消費者問題に関する一定の知識を身につけた方々を東京都消費者啓発員として養成・委嘱いたしまして、地域あるいは職場など身近な場所で開催する講座に講師として派遣しておるところでございます。相談員の経験などをお持ちの一般の方々を中心に組織しているために、ここでは民間の方々との協働による事業という位置づけでこういったタイトルになってございます。

平成27年度の派遣実績としましては、全体で242回、受講者は2万2,000人に上っております。このうち学校向けとしては無料で派遣しておりまして、計132回、受講者は1万7,000人となっております。

学校種別ごとの状況を見てみますと、大学・専門学校が学校向け全体の43%、高等学校が14%、中学校が22%、小学校が21%を占めている状況でございます。大学では主に入学時の新入学生のガイダンスで活用していただくということが通例でございます。

15ページを御覧いただきたいと思います。学校向け出前講座案内リーフレットでございますけれども、その右側に人気テーマランキングを掲げております。1つとしては若者の悪質商法被害防止、2としてインターネットやSNSのトラブル、3としてお金の使い方、4として糖分の測定(実験講座)、5としてクレジットカードやローンの仕組みとトラブル防止、これが人気ランキングとして皆さんにお声かけいただいているものの主なメニューになります。

16ページを御覧いただきます。締めくくりとしまして、若者向けの啓発あるいは消費者教育における課題というのを記述してございます。あくまでも都のセンターの現場の考えということで御理解いただければ幸いですけれども、まず、より多くの若者に情報提供できる多様な媒体あるいは手法による啓発について、これまでも映画の啓発CMとか、先ほどのお笑い芸人を活用した動画による啓発などに取り組んでまいりましたけれども、引き続き国、自治体とも今後さらにコンテンツを含めて創意工夫の取組が求められる状況にあるのだろうと思っております。

また、消費者被害に遭いながら消費生活相談を御利用いただかない方々には、相談窓口を御存じなかったというケースも多々ございますので、認知度を高める取組が不可欠だというふうに思っています。

先ほど共同キャンペーンのお話を申し上げましたけれども、自治体ではできる限り相談窓口を普及すべく、最近の刊行物の中では、ホームページもそうですけれども、自らのセンターの電話番号だけではなくて、消費者ホットライン「188」を積極的に記載しているところですけれども、全国共通の仕組みということでもございますので、特に国から一層強力に情報発信・普及をしていただけると大変ありがたいというふうに思っております。

次の多様な主体との連携ということでは、大学との連携強化が都としては課題であるというふうに思っています。既に第3回のこちらのワーキング・グループの中でも報告があったように思いますけれども、毎年度計画的かつ的確に対応していただいている学校さんもおありのようなのですけれども、私どもには情報交換のルートがないために実情が分からないというところがございます。これは大学の設置に関する権限を文部科学省さんがお持ちで、都道府県単位で大学とのパイプがないということが1つにはあるのですけれども、その上に130を超える大学が集積している東京といった一部の自治体に特有の問題なのかもしれません。

若者の消費者被害防止のためには、大学と消費者生活センターとの間で情報共有の仕組みがうまく構築できれば、効率的に大学の実情に応じたきめ細かな対応を図ることができるようになるのではないかと思っていますし、大学様にとっても必要なときに必要なだけの都の出前講座の活用をすれば足りるといった形で、全て自力で賄わなくてもよいことが分かれば、学生への啓発・教育への取組に向けたインセンティブにもなるのかなというふうに思っている次第です。

最後に教育委員会との連携強化でございます。私ども都のセンターの役割としましては、直接学校教育を行うものではございませんけれども、教員の方々に効果的で効率的な消費者教育を進めていただくための支援を行うのが役割だというふうに思っております。場合によっては、私どもの提供する出前講座というもの、あるいは、使い勝手を工夫した教育講座を積極的に御活用いただきたいというふうに切に願っておるのですけれども、一方で教員講座を、都で伺っている限りの話ではあるのですが、教員の方々は限られた授業の時間数の中でやりくりに非常に苦労されているというのをお話ししていて思う次第でございます。環境教育や人権教育や金融教育と「○○教育」とつくものが多数あるというふうに聞いております。消費者教育として着実に授業を進めていただくためには、学校長や教育委員会の御理解をいただくことは不可欠だと思っている次第です。

また、今年は、都では初めて都教育委員会と協力いたしまして、都立学校はもとより、区市町村の教育委員会にも都の教育委員会から通知を出していただきました。内容としては、私どもの教員講座というものをそれぞれの学校の教員研修の一環として活用されたいという内容なのですけれども、全てがその結果とは思いませんが、これまで過去2年間1,000名程度だった教員講座の受講者数が今年は1,250人ということで2割アップしたということは実績であると思っています。こうした連携協力というのを今後ともきちんと進めていくことが重要だというふうに思っている次第でございます。

長くなりましたが、私のほうからは以上でございます。

○浅倉東京都消費生活総合センター相談課長 東京都消費生活総合センター相談課長の浅倉でございます。私のほうからは、相談事例から見ました若者の消費者被害の状況について、相談現場の立場から御報告をさせていただきたいと思います。また、相談事例に関する内容となりますので、主任相談員の担当者を同席させていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

資料2-2を御覧ください。

まず、平成27年度の都内における若者の相談が占める割合の多い商品・役務でございます。

東京都では、契約当事者年齢が29歳以下である相談を若者相談と定義しております。上段は契約当事者年齢が20歳から22歳の上位10位の詳細でございます。教養娯楽教材、精神修養講座、パソコンソフト、理美容用具、タレント・モデル養成教室などが上位となっております。

下段には対比の参考といたしまして、契約当事者年齢18歳から19歳と23歳から29歳の項目を掲げておりますが、内容を御覧いただきますと、20歳を過ぎるとマルチ商法、キャッチセールス、デート商法、アポイントメントセールスなど、悪質商法の典型的なケースが多く出てきまして、18歳から19歳の内容に比べ悪質な事業者からの勧誘が増えることが見てとれるかと存じます。

続きまして、2ページからが相談の事例でございます。なるべく多くの事例ということで9つの事例を挙げております。被害に至る流れを分かりやすく説明するため、少し長い説明となっているものもございます。本日は時間も限られておりますので、ポイントとなる部分をお話しさせていただきたいと思います。

まず、事例1でございます。SNSを通じて連絡のあった大学の先輩からもうけ話の勧誘があり、指南されるままに消費者金融や学生ローンで高額の借入れをして、ソフトの購入と投資資金を確保いたしましたが、利益を得ることはできず、返金交渉も思うように進まず、探偵業者にお金を払い解決を依頼したがうまくいかなかったという二次被害も生じている事例でございます。

続きまして、事例2でございます。多数の人間が登場する劇場型のものとなっておりまして、SNSで「20代で1,000万円を稼げる」という広告を見たことをきっかけに、事業者や成功者などの話を聞くようになり、高額な投資ソフトやコンサルティング契約などを締結させられたもので、最初はお金がないからと断っていましたが、こちらも事業者の指示どおり事実と異なる年収400万、勤続4年目など虚偽の申請をして消費者金融から資金を確保、その後、効果が得られないため契約の解除を求めるものでございます。

続きまして、3ページ、事例3でございます。就活支援塾でございますが、アンケートに協力したところ、執拗な勧誘電話が来るようになり、その後に入会、セミナーには参加したが、内容に不満、今後の活動に不安を感じ解約したいというものでございます。

就活支援塾に関しましては、本人だけではなく保護者からも相談が寄せられております。中には高額な前払いを前提とした支援講座の契約や関係の会社で高級スーツをオーダーするように勧められ契約したという相談もございます。

また、就活支援塾で行われる講演者の話に魅了されまして、大学を中退して、その支援塾の社員になると言っているなど洗脳とも思える精神状態に陥り、組織から抜け出せないという相談も寄せられております。

続きまして、事例4でございます。若者などの利用が多い無料サイトに事業者が入り込み集客の手段にしている事例でございます。

こちらは、恋愛感情を利用したデート商法でございまして、高額な宝石の購入を契約させられております。また、この事例は直接会って、次回会う約束をすることで特定商取引法の訪問販売で規定する特定顧客逃れをしているケースでもございます。

続きまして、4ページ、事例5でございます。20歳代前半の女性をターゲットにアルバイトの募集に応募後、採用された会社から売上げに協力してほしいなどと言われ、美容品や化粧品をクレジット払いで契約すると、特典として無料で脱毛エステが受けられるとの説明で高額契約をさせる手口でございます。毎月のクレジット引き落とし額に相当する金額をお礼やモニター料として振り込むので実質負担はゼロと案内しており、数回の振り込みはありますが、ほどなく支払が滞ると弁護士を通じ、その契約を解除・解約するように言われ、勧誘者から案内された雑居ビルなどで関係者からお金を渡され、そのお金を待機している弁護士に払い、クレジット契約を解約するよう指示されます。以降クレジットの引き落としはとまり、解約できたものと思っていたら、突然販売店から債権譲渡を受けたという、事業者を原告として販売店との自社割賦契約分の代金の未払いを請求する訴訟が提起されるというものでございます。

実際事例の案件に関しましては、多くは20歳代の女性でございますが、750名以上の方に対して訴訟が提起されております。

続きまして、事例6でございます。明確な購入の意思がないのにもかかわらず、ローン審査が通るだけでもと言われ契約した中古車購入契約でございまして、契約書にサインをすることで発生する責任を理解できていない事例でございます。

このような仮契約と言われて契約書類にサインしたという相談も多く寄せられております。

続きまして、事例7、8でございます。金銭的な被害だけではなく、身体にも危害・危険が及んでいる、また、及ぶおそれがある事例でございます。

事例7でございますが、高額な包茎手術の事例でございます。インターネットを見て来院した相談者が、支払能力を明らかに超える高額な施術を勧められ、支払が困難になっているというものでございます。

包茎について悩みを持つ消費者は、自分だけで悩み、秘密にする傾向が強いため、トラブルが生じても恥ずかしいなどの理由から、身近な人や消費生活センターに相談することを躊躇する状況もございます。

続きまして、5ページの事例8でございます。こちらはインターネットで500円の顔やせコースという広告を見て来院した相談者が、カウンセリングの際に、キャンペーン期間中なのでモニターとなればリフトアップの契約が半額になると言われ高額な契約を締結したものでございまして、ローンを組むに当たっても、大学生ではなく、パート・アルバイトとして年収も192万円に書き直すなどの虚偽の内容の申請を指示されております。

契約内容も十分理解できないままに施術を受けたところ、顎に内出血や鼻の上部の腫れが残るなど身体に深刻な危害が生じております。

続きまして、事例9でございます。若者の多重債務の事例でございます。

学生時代から生活費のために複数の消費者金融から借入れを行っていて、奨学金の返済もあり、今の収入では返済困難というものでございます。

以上、これら事例から若者の消費者被害の特徴を見てみますと、一番の点は、ある意味当然とも言えますが、法的知識や社会経験が乏しいところにつけ込まれている点でございます。契約についての知識不足、適正な金銭感覚が身についておらず、安易な借金により高額な契約代金の支払をしているという点がございます。

また、SNSがトラブルのきっかけとなっている点もあります。SNSを通じて接触のあった先輩や同級生などから、もうけられる、大丈夫、うまくいくなどと言われると、事業者の話に疑問を感じていても契約をしてしまったり、時にはバーチャルな世界での単なる知り合いでしかない勧誘者を親しい友人であるかのように思い込んでしまったり、深く考えることもなく安易に知人などを紹介・勧誘し被害を拡大させるといった点もございます。

事業者との連絡につきましてもSNSを利用したものが多く、契約書もなく、一たびトラブルが発生いたしますと所在地や連絡先、担当者も分からないなど、消費生活センターがあっせんなどに入りたくても入れない状況もございます。

このほか、低収入や将来の経済的不安など若年層の貧困といった点も見られます。もうかるという言葉で簡単に契約に引き込まれたり、貸金、クレジットの利用により多重債務を抱えた若年層が増加しているという問題がございます。

最後に6ページでございますが、消費者被害の未然防止と拡大防止の東京都の取組でございます。

消費者教育につきましては、先ほど佐々木の説明のとおりでございます。

被害防止のための注意喚起・情報発信につきましては、資料2-3のような消費者注意情報等の発信、また、ツイッターやフェイスブックなど若者に到達しやすい媒体を使った広報。いまだ若者からの認知度が高くない被害救済のための相談窓口である消費生活センターの周知などを行っております。

法制度上の問題点の改善にかかわる国への働きかけについてでございますが、こちらは私どもが受けた相談の被害実態から消費者保護規定の拡充を求め、必要な法改正などを要請するものでございます。

駆け足でございますが、若者の消費者被害の状況につきまして、以上でございます。

○樋口座長 御説明ありがとうございました。

ただいまの御説明を踏まえまして、御質問、御意見等のある方は御発言をお願いいたします。

大森委員、お願いします。

○大森委員 佐々木課長にお聞きします。

文字離れの若者向けの啓発をいろいろ考えていらして、動画とか映画のCMとかいろいろなことをされて感心したのですけれども、文字離れの若者にペーパーを何部配ったというのは余り効果がないのではないか。動画とかそういうふうに変えていったらどうですかというような御提案をするのですが、費用がかかるから無理ですというお話をよく聞くのです。こういう形に啓発を変えられてかなり負担が増えたかどうか。これが1点。

あと、若者向けの消費者被害キャンペーンを1月から3月にされていますね。この110番をされているのですけれども、この期間でどれぐらいの御相談があったのかということ。

あと、これにかかわらないのですけれども、メールでの相談とかそういうことはされていないのかどうか。

あと、啓発員を使って学校とかに積極的に出前講座をされているようなのですけれども、よくこういう普及指導員とかいうように人材をたくさん集めていらっしゃるところが多いのですけれども、ボランティアでやっているのですとかいう形でなかなか続かないケースが多いのですが、活動費とか報酬はどのようになっているのか。

あと、学校をたくさん書いていらっしゃるのですけれども、企業の新人研修とかはどれぐらいの実績があるのか。

いろいろたくさん言いましたけれども、よろしくお願いします。

○佐々木東京都消費生活総合センター活動推進課長 では、活動推進課長のほうから、冒頭にこういった普及啓発をしていくに当たってはいろいろ予算がかかっているだろうが、どのくらいなのかというお話ですけれども、基本線は私のほうで、この間増やしている部分は、以前からずっとやっているものの中を組み替えてきているので大きな変更はないのですけれども、ただ、芸人啓発、お笑い芸人を使ったネット動画については、ここの部分は新規の取組を毎年度要求して、とりあえず今年は付いたからやっているという状況です。この金額は600万円になりますけれども、この額が実質的には増えてきているだけで、それ以外はこれまでの中でやりくりしています。その意味では、以前からそういう取組をしてきたということはあると思っています。

それから、啓発員の関係については、先ほどのチラシの中は学校向けの講座のチラシだったので、あそこには無料としか書いていないのですけれども、実は一般の方々の場合には1時間当たり9,300円の費用をいただくという形であり、啓発員の方々には費用支弁をさせていただいています。今ここですぐにぱっと数字の持ち合わせがないのですけれども、そういった1時間9,300円をいただく範囲で啓発員の方には御案内をさせていただいているということが1つです。

○浅倉東京都消費生活総合センター相談課長 それでは、私のほうから、若者トラブル110番の特別相談の実施状況でございますが、本年につきましては3月14日、15日の2日間で実施しておりまして、その中で受けた相談の件数は全体で91件でございました。東京都のセンターでは28件、区市町村の各センターで受けたのは63件となっております。

具体的な相談の概要でございますが、一番多いのは、時期の関係もあるのですが、賃貸マンションとかアパートとかに関する退去の際の原状回復でありますとか、そういうところの相談が多くを占めております。

また、先ほど申したようにマルチ商法に関するものでございますとか、インターネット取引の関係の相談等が寄せられております。

○佐々木東京都消費生活総合センター活動推進課長 2つほど残っていたかと思いますが、もう一度お願いできるでしょうか。

○大森委員 たくさん申し上げて済みません。あと、若者の相談なのですけれども、メールで相談とかいうことはやっていらっしゃらないですか。

○浅倉東京都消費生活総合センター相談課長 メールにつきましては、現在対応のほうは行っていない状況でございます。

○大森委員 そうしたら、若者であっても電話か来所という形ですか。

○浅倉東京都消費生活総合センター相談課長 そのような対応になっております。

○大森委員 あともう1件ですけれども、学校のほうにたくさん出前講座をされているのですけれども、企業の新人研修とかがありますよね。実績があれば。

○佐々木東京都消費生活総合センター活動推進課長 実は、先ほど242という数字で出前講座の実績を申し上げましたけれども、そのうち学校のほうで132、それ以外ですと行政で33、企業・法人で35ということで、企業の中でどこまで新人研修か、今ここで持ち合わせがございませんけれども、一応概略はこのような数字になっています。

○樋口座長 ほかにいかがですか。

池本委員、お願いします。

○池本座長代理 東京都で啓発も相談も非常に意欲的に取り組んでおられるというのをお伺いしたので、それぞれについて一、二点お伺いしたいことがあります。

まず、啓発活動のところです。8ページで教員講座、高校生とかそういう人たちに向けた消費者教育を担う教員の方々に消費者問題を理解してもらうというのは非常に大事なポイントだと思います。先ほど1,257名というふうにお伺いしたのですが、これは教員講座15回掛ける2回以上プラス共通1回というと31コマある、それぞれの参加者の延べで考えると1つについては平均40回ぐらいかなというふうに見たのですが、そういう理解でいいのか、そこのカウントの仕方の意味を確認したいということ。

なぜそれをお伺いするかというと、今、成年年齢引下げが議論されていて、そうすると、今後高校を卒業していこうという人たちについて飛躍的に消費者教育をしっかりと伝えていかなければいけない。そのために教員向けの研修というのがどういうふうにすればさらに飛躍的に増えていくのだろうかというところが分からないので、そのあたり御意見も含めてもしあれば教えていただきたいという点が1点。

それから、大学生向けの出前講座というのも、14ページで、学校向けのうちの43%を占めているというのは非常に大きな数字だというふうに思います。ただ、これは先ほどのお話ですと、新入生のガイダンスとかというワンポイントの機会ではないかと思うのですが、それでも非常に貴重な場です。ただ、130の大学がある中でいうとまだまだ一部でしかないのかなというふうに思うのですが、先ほど最後のページのところで都道府県から大学に向けてのパイプがないというところの御指摘がありました。そこは恐らく一番ポイントになるところでもあるし、そこをどう切り開いていくかということと、大学の場合にはガイダンスのようなところに出前講座の形はとれるけれども、高校・中学のような担い手になる方がいないというところがあります。その意味で、大学における消費者教育、特にこれから数年間の中での最も切実な課題に対して、大学における消費者教育を広げていくために、課題もしくはヒントがあれば教えていただきたいという点です。

それから、最後、相談の現場のところで非常にリアルな事例をたくさんいただきました。この中で深刻な被害になっているものの多くは、収入とか仕事を偽ることを指導されて高額の契約に至っているというのがあります。これはクレジットと書いてあったり、ローンと書いてありますが、多くはクレジット契約方式かなというふうに思うのですが、こういう虚偽の申告をアドバイスされて、例えば訪問販売などで言えば、それは禁止行為の指示対象行為になることだと思うのですが、そういう案件はクレジット会社の側はすんなりと解約処理に応じるのか、それとも民事的な効力とは直結しないのだというので難航するのか、そのあたりの現場での実情がどうか。あるいは、消費者金融のような場合にはますます解決困難ではないかと思うのですが、そのあたりは実情としてどうなのかというところをお伺いしたいと思います。

○佐々木東京都消費生活総合センター活動推進課長 では、最初の3点から申し上げます。

まず1点目、教員講座の人数のカウントの仕方は、延べです。全ての各コマ、今回で言えば31コマの受講された教員の方の数の延べが1,257でございます。実際どのくらいの方が新規で来ている方かというと、昨年度(27年度)のアンケートで見ますと、大体4割が新規の方です。それから、何回もずっと受講されている方。実は、10回以上、つまり10年以上ずっと受講しているという教員の方も15%から20%いるという、そんな感じです。

実際受けていただいているのは、中学・高校の学習指導要領に沿ったものにしている関係もありますので、家庭科の先生が多い。大体7割ぐらいは家庭科の先生というのが受けている教員の方々の科目の現状でございます。

そういう中で、今後飛躍的にという意味では、たまたま東京都の例で言いますと、先ほどの飯田橋のセンターと多摩のセンターの2か所でやっています。座学で言えば100人から150人が入れる教室でやっている。ただ、たまたま最近はワークショップ形式のものという工夫もしていますので、少しキャパシティーが小さくなっているものもあるのですけれども、その規模の中で受け入れる範囲はまだまだあるというふうに思っています。仮に今後新たな民法改正、成年年齢引下げに伴って、逆にどの科目の先生がこのお話に直接該当になって教員研修講座を受けていただくかということがある程度見えてくると、そこが見えるかもしれません。まだ当面の余裕はあるというふうに思います。

それから、大学につきましては、パイプがないということですけれども、例えば私どもも26年度は飛び込みの営業ですけれども、70弱の大学に飛び込みで営業に行きました。それから、27年度は100の大学と200の専門学校に飛び込みで営業に行っています。ただ、そこまでやってもなお今の程度の現状だと。ただ、私どもが仮に各大学なり専門学校の状況が分かれば、もう少しいろいろな御提案ができるのでしょうけれども、そのパイプがないのです。それは、先ほど取引対策課長さんがいらっしゃいましたけれども、例えば若者向けのDVDのお話で停止命令を出したときに、大学でまさにそういう状況があるのであれば、何とか大学の各学校の学生課のほうにお知らせできないかということでやったのですけれども、どうしても窓口がないので、最後は消費者庁さんと一緒に、大学というのは協会が2つあるらしくて、その協会の2つにそれぞれお願いをしました。ただ、東京だけというわけにいかないので全国向けというルールのもとに、東京の学生の中でこんな悪質な事例があるので注意喚起していただきたいというようなお話をしました。そのくらいまでパイプがない、飛び込みで営業に行ってもなかなかそこから先に進めないというのが現状ということで御理解いただければと思います。

3つ目は、大学での担い手のお話なのですけれども、先ほど申し上げたように、学習指導要領の中で教える科目があるということであれば私どもも支援がしやすいのですけれども、大学ではそれぞれ専門の領域を究めていくところなので、まさに消費者教育をやっていただくというもの自体はなかなか担い手が見えないといいますか、今、お願いできるところで思い浮かぶものはないというのが状況でございます。

○浅倉東京都消費生活総合センター相談課長 それでは、先ほど虚偽の申請をしていろいろお金を得たケースで、クレジット解約などに応じているのか応じていないのかというところですが、正直、各信販会社によって、スムーズに応じるところもありますし、その点は会社によるというような状況でございます。

もう1点、消費者金融とか学生ローンの関係ですが、こちらは、ここでお金を借りて、そのお金を事業者に渡したりするような流れになりますので、消費者金融とか学生ローンと直接交渉するということはございません。

○樋口座長 よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。

後藤委員、お願いします。

○後藤専門委員 詳しい説明をどうもありがとうございました。

幾つかあるのですけれども、まず、3ページの「リーフレットの作成、配布」というのがあって、区市町村、大学、高校等23万部というふうに書いてあるのですけれども、これは特に若者向けということではなくて、一般的な消費者啓発のためのリーフレットという意味でしょうか。それとも、特に若者向けのものを作っているという意味でしょうか。

○佐々木東京都消費生活総合センター活動推進課長 先ほど御紹介しているこのリーフレットですね。5ページのところに裏面が出ていますけれども、このリーフレットを大学、高校、区市町村のほうに主にお送りしているということです。

○後藤専門委員 一般向けのものとは別に作っているということなのでしょうか。

○佐々木東京都消費生活総合センター活動推進課長 キャンペーンという意味合いですと、先ほどの1都9県6政令指定都市という関東甲信越のブロックでやっているものは、ほかに高齢者のキャンペーンが9月にありまして、9月も同様な形で、ただし、それは大学とか高校ではなくて、送り先が高齢者の施設という形になっているという使い分けです。

○後藤専門委員 配る場所が違うということですか。

○佐々木東京都消費生活総合センター活動推進課長 はい。それから、載せている事例につきましても、もちろん高齢者に多い被害、手口みたいなものを載せています。それが高齢者のほうです。

○後藤専門委員 それから、リーフレットとかDVDの作成とか、いろいろな形で啓発・教育活動をなさっていますが、その効果の検証というのでしょうか、例えば、こういうことは余りあってはいけないと思うのですが、リーフレットを作成して置いておいても割と残ってしまうとか、DVDを作成しても多くは利用されていないとか、あるいは、出前講座をした場合に、その出前講座の成果の把握というのでしょうか、アンケートでこんなふうに役に立ったとか、そういうふうなところまで把握しているのか。効果も上がる形でというのでしょうか、そういうような努力というか方策がどうなのかということを知りたいのですが、いかがでしょうか。

○佐々木東京都消費生活総合センター活動推進課長 厳密な意味での啓発事業の効果というのはどうやっても計りようがないといいますか、今、方程式がないというふうには言われております。ただ、私どももいかにそれぞれ、例えば若者なら若者にどこまで届いているかということについてはきちんとやらなければいけないと思っています。あらかじめ区市町村に送るとき、あるいは大学に送るときも、どういう方法でどのくらい要りますかということを聞いた上でお知らせをお送りしているのと、DVDについては、例えば高校生向けのDVDは都内の全高校にまず配布させていただいて、そこに対して、もちろん都外の高等学校あるいは関連する学校、あるいは企業でもこういったものが必要だという場合には、私どもは複製という形で御提供させていただいています。その複製を安い金額でやらせていただいていますけれども、それが年間に300ぐらい来ますので、その意味で、行き渡っているという点では行き渡っていると思っています。出前講座の関係も、終わった後に、出前講座で派遣した啓発員の報告、クライアントとして呼んでいただいた方からの実施の報告もいただいて、その中でどういう声があったのかというのをつぶさに見た上で、特に内容的にどこまで声が届いたかというのはつぶさに見て、仮にこういう方向のものがもっと望ましいという話があれば、啓発員の再養成講座というのも毎年4回ほどやっていますので、そういった講座の中で次のスキルアップみたいな形のフォローはさせていただいています。

○後藤専門委員 あと2つあるのですが、よろしいでしょうか。

これはもし分かればということなのですけれども、東京都では充実した啓発・教育事業を行っていると思いますが、東京都以外の道府県で東京都並みのことが行われているのかどうかという点なのですけれども、もし横の連絡等でそういうことが分かれば教えていただけたらと思います。よろしくお願いします。

○佐々木東京都消費生活総合センター活動推進課長 まだつぶさに申し上げる情報を持ち合わせていないのですけれども、もともとキャンペーンをやるときの発想が、それぞれ今持っている予算、資産というのをどううまく活用して、今あるものを最大限活用するにはどうするかというところから始めております。その意味で東京都が使っているこういったリーフレットを活用すれば、その分ほかの県はデザイン料とかを節約できますし、その分をほかに回していくという形で。そして、同じものを全部一斉に配ることで相乗効果を高めていくということではやってきていますので、その限りではお答えできると思うのですけれども、例えば先ほど交通広告の話もございましたけれども、交通広告は、今、実際には東京しかやっておりません。ただ、一時的にはほかの県もやっていた時期もあり、そこはどうしても予算上の制約なりで厳しい状況で断念されているところもあると思っていますが、つぶさには報告できる内容がございません。申し訳ございません。

○後藤専門委員 あと1点なのですけれども、資料2-2なのですけれども、この事例を見させていただくと、先ほど池本委員も御指摘になったところなのですけれども、事例3は除いて事例1から9まで全部ローンとかクレジットが関係している事例ということだと思うのですが、ローンを利用すればよいとかそういうような形で借りることを勧めたり、クレジットを組めばよろしいというような形で勧めたり、そういうようなところが若者の被害の元になっているというふうに思うのですけれども、そこのところを手当すれば、事例に挙がっているようなものについてかなり効果がありそうな気がするのですが、この辺について何かお考えがあれば教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○浅倉東京都消費生活総合センター相談課長 おっしゃるとおり、若者ですので、所得とかお金がないということもあるので、必ずこういうケースにはクレジットとかサラ金とかがセットになっている状況でございます。

そういう状況もございますので、やはり収入のない学生といいますか、収入の少ない若者に高額な借金をさせない仕組みというのですか、これは貸金業界の方とかクレジット業界の方とか、そういうところで仕組みの強化というのですか、その辺のところが必要と現場では感じております。

○樋口座長 ほかに御質問ございますでしょうか。よろしいですか。

それでは、東京都消費生活総合センターからの御報告はここまでにさせていただきたいと思います。お忙しいところ御報告いただきまして誠にありがとうございました。

(3)国民生活センター

○樋口座長 次に、国民生活センターから御報告いただきたいと思います。

本日は、同センターの教育研修部教務課長でいらっしゃいます保木口知子様に御出席いただいております。お忙しいところ御出席いただきましてありがとうございます。

それでは、学校現場への直接的・間接的な教育研修について、御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○保木口国民生活センター教育研修部教務課長 では、国民生活センターの教育研修事業におきまして、今、御紹介がありました、学校現場への直接的・間接的な教育研修についてということで御説明させていただきます。

本日、こちらのカリキュラムの内容等を扱っております課長補佐の担当者を同席させていただきます。

早速、こちらの資料の2ページ目を御覧いただけますでしょうか。

こちらは、今年度私どもで実施している教育研修事業の全体像になります。カテゴリー別に分かれておりまして、受講者の主な対象は消費者行政の職員や、消費者センターなど消費生活相談窓口に実際に勤務しておられます相談員となっておりますが、右側の赤で囲ってある部分が消費者教育推進のための研修ということで、全部で年間124コースやっているうちの18コースをこちらに当てております。その中で今回関係しますのが、赤で書きましたマル1消費者教育学生セミナー、マル2教員を対象とした消費者教育講座、この2つは、いわば学校現場への「直接的な」研修となります。

次の青字の部分が「間接的な」といった表現で表している講座でございまして、消費者教育に携わる講師を養成するための講座となります。こちらの中で特に今回の対象となるのが、マル3小中学生等、実際には高校生や大学生までも視野に入れた講座。それとマル4は、教員対象と書いているのですが、学校の先生方に対して講義を行う講師を養成する講座です。

次の3ページの模式図を御覧ください。先ほど申しました「直接的な」研修というのが赤で囲ってある部分でして、大学生や学校の先生に相模原の研修施設に集まっていただいて、そこで実際に講座を受けていただくというものです。

マル3とマル4というのが「間接的な」とう表現をしたものなのですが、実際に受講されるのは消費生活相談員や行政職員です。そういった方々に消費者教育についての手法や現状などを学んでいただいて、水色の矢印のように、学校の先生にお話ししたり、出前講座といった形で相談員や行政職員が学校の現場に行って講座を行う、といった流れになっています。

次のページからは、それぞれの研修の主な目的と内容、次のページにカリキュラムの概要、具体的にどんなことをやっているのかをお示しいたしました。

「直接的な」ものとしましては、まず、マル1大学生向けの消費者教育学生セミナーです。こちらは、対象としましては大学生と申し上げたのですが、実際の受講者はいわゆる一般的な大学生というよりは、もう少し消費者教育に関心のある大学生、あるいは大学院生となっております。学部や専攻等は問わないのですが、来てくださっているのは生活科学部や家政学部、教育学部で、今後教員を目指したいとか、消費者教育に関してのゼミをとっているという学生がほとんどです。全国各地からの参加がございまして、学生間での交流や学びを通して消費者教育への自分自身の理解も深めていただきつつ、さらには広めていただくというところも考えております。

カリキュラムとしまして、こちらは1泊2日、相模原の宿泊施設を活用し、泊まり込みで御飯も一緒に食べながら交流も深めていただく形になっております。1日目は専門家や事業者、NPOなどの講義によりまして、先進的な消費者教育の取組の報告や、実際の消費者教育についての理解を深め、消費者市民社会における消費者の役割を考えるといった講座になっております。その後、演習やワークショップを通して、自ら考え、主体的に行動する消費者を目指すといった目的で取り組んでおります。

2日目は、ワークショップで検討した内容をグループごとに発表するという形になっております。その発表の手法としては、主には寸劇であったり、最近の学生さんですとパワーポイントとかを使って、いわゆる映像的なもので発表されたり様々です。

2つ目の「直接的な」研修は、教員を対象とした消費者教育講座。こちらは、小学校、中学校、高等学校、あるいは特別支援学校などの先生方にお越しいただいております。そういった中で、やはりこちらも消費者市民社会の実現に向けた消費者教育の新しい部分を主に学んでいただくといったカリキュラムになっております。

カリキュラムの内容としましては、こちらも1日目は専門家の講義により、社会を変える消費者市民を育む消費者教育の在り方を考え、先進的な事例報告等により、実際の学校現場における消費者教育の取組を知るといった内容です。

2日目はワークショップで、消費者市民社会の構築を目指す消費者教育の提案ということで、今後の授業で利用いただけるような学習指導案や教材の作成までを行います。こちらは夏休みの期間に行っておりますので、2学期以降の授業で使っていただける教材をお持ち帰りいただいています。

次が「間接的な」研修として、小中高生等を対象とした講座を行う講師を養成する講座で、主に消費生活相談員などが主な受講対象となっています。

こちらにつきましても、カリキュラムの概要を見ていただけますでしょうか。まずは学習指導要領を御理解いただいた上で、授業の組立て、消費者教育の実践の実情などを学んでいただき学校現場への理解を深め、学校現場において消費者行政現場の特徴を生かした消費者教育を行う上でのポイント、学校との連携といったことについて学びます。

こちらは2泊3日になっておりますので、2日目、3日目においてはたっぷりとワークショップなども行いまして、今後学校などへの出前授業、出前講座等で利用できる講座案の作成を行い、その一部を発表し、アドバイザーから講評を受けるといった内容になっております。

4つ目が、やはり「間接的な」研修で、こちらは今年度初めて行ったものです。消費者教育推進法の中でも教員に対しての研修をもっと拡充するようにということもありますので、主に相談員などが学校の先生に講義できるような内容になっています。

こちらは1泊2日の講座になっておりまして、1日目は、やはり学校現場の現状を踏まえて、今、学校の先生が何を求めていらっしゃるのか、先生にどういった情報を提供する必要があるのかといったことを学びます。ここでも先進的な事例報告等により、教員向け研修、情報提供などの具体的な手法、ポイント、学校との連携等について学びます。

2日目はワークショップで、教員のための消費者教育講座の組立て方を学び、今後の研修で利用できる講座案の作成を行い、その一部を発表しまして講評を受けるといった形で進めております。

駆け足ですが、現状の紹介として以上でございます。

○樋口座長 ありがとうございました。

ただいまの御説明を踏まえまして、御質問、御意見のある方は御発言をお願いいたします。

池本委員、お願いいたします。

○池本座長代理 非常に中身の濃いカリキュラムを作って、それぞれ、特に間接的な消費者教育というのは、今後学校現場や地域で消費者教育が飛躍的に発展していくための講師を養成するという意味でものすごく大事だろうと思います。

その関係でお伺いしたいのですが、マル3、マル4の消費生活相談員等向けとありますが、カリキュラムの中身と照らし合わせて読むと、恐らく各自治体の消費者行政の職員と各地の相談員複数名などにしっかりとこういう中身を学んでいただいて、それぞれの地域、自治体でさらに現場の教員なり地域の関係者に向けて伝えていかなければいけないのだろうと思うのです。

そこでお伺いしたいのですが、このマル3、マル4、それぞれのテーマについては、参加者というのは何人ぐらいで、その内訳で相談員と職員でどのくらいなのか。あるいは、これは今後さらに飛躍的に増やしていける可能性はどうなのかというあたりをお伺いしたいと思います。

○保木口国民生活センター教育研修部教務課長 今、細かい内訳まで入った資料を持ってきていないので、大まかな数字を申し上げます。マル3に関しましては、まだ4コース全部終わっていないので最終的な人数は固まっていないのですが、これまで実施したところの人数でいいますと、実は消費者教育関係の講座に関しましては、残念ながら受講者が比較的少ないのです。ただ、ワークショップとか手を動かすカリキュラムの多い講師養成系の講座に、72人の定員が満員になることが受講者にとって効果的なのかどうなのかということはそもそもまた別の問題としてあるのですが、実際としましては20人から30人といったところです。もう少し多い回もありましたけれども、そんなところでしょうか。4回のうち1回は徳島でもやっております。

あと、こちらのマル4は今年度初めて実施したということもありまして、より周知度が低かったのかなというところもあるのですが、2回実施しまして、それぞれ20人程度でございます。講師養成講座に関しては、今後も更なる周知をしていきたいと考えております。

○樋口座長 増田委員、お願いします。

○増田委員 教員を対象にした消費者教育ということについてなのですが、こちらに参加される先生方というのは自費で参加されるのでしょうか。全国から来るとなると、やはり交通費も時間もかかるかと思うのですが、その辺の負担というのはどうでしょうか。

○保木口国民生活センター教育研修部教務課長 中には自費で御参加される方もいらっしゃるようですが、多くの場合は学校からの派遣という形で来られています。

○国民生活センター教務課担当者 あと、消費者行政の現場に教員の派遣をお願いする形で案内を出していますので、交付金を使っていただいて自治体からの派遣ということもここ何年かは増えています。

○樋口座長 大森委員、お願いします。

○大森委員 3つほどあります。

まず、教材とか指導案をグループに分かれて作るわけですけれども、参加された方によって作りたい内容とかが違うと思うのですが、そのグループ分けはどういう感じでされているのか。それが1つです。

あと、もう今まで何回もされているのでいろいろな授業案とか教材を作られていると思うのですけれども、それはホームページに載せるとか、報告書を作るとか、共有化というか、そういう形のことはされているのかどうか。

あとちょっと忘れたので、また思い出します。

○保木口国民生活センター教育研修部教務課長 教材とか指導案を作成する上でのグルーピングということでしたが、まず、対象の学校別、教科別、テーマについても事前にある程度受講者からアンケートで希望を聞いた上でグルーピングしております。

あと、作った教材の共有化ということなのですが、こちらは今までのところ考えておりません。

○大森委員 もう1つ思い出したのでよろしいですか。

○樋口座長 どうぞ。

○大森委員 これは相談員の方とかが受けられていると思うのですけれども、今、消費者団体とかでも出前講座とか教材を作ったりしているところが多いと思うのですが、そういう人たちには案内とか参加する機会はないのでしょうか。

○保木口国民生活センター教育研修部教務課長 こちらにおいては、確かにそういう動きも盛んになっておりますので今後検討の余地はあるかと思うのですが、今は、受講者同士同じバックグラウンドでの情報交換ということも重要視していますので、先生は先生、相談員及び行政職員という塊での受講形態になっております。

○樋口座長 ほかに何かございますか。よろしいでしょうか。

それでは、国民生活センターさん、ありがとうございました。

本日の議事は以上でございます。

最後に事務局から事務連絡をお願いいたします。


≪3.閉会≫

○丸山参事官 本日も御熱心な御議論をどうもありがとうございました。

次回につきましては、明日11月16日水曜日、午前10時からの開催を予定しております。よろしくお願いいたします。

○樋口座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところお集まりいただきましてありがとうございました。

(以上)