第25回 公共料金等専門調査会 議事録

日時

2017年1月25日(水)8:59から10:39

場所

消費者委員会会議室

出席者

【委員】
古城座長、井手座長代理、古賀委員、陶山委員、松村委員
【消費者委員会担当委員】
長田委員
【説明者】
兵庫県立大学経済学部草薙教授
【事務局】
消費者委員会 黒木事務局長、丸山参事官
消費者庁 澤井消費者調査課長

議事次第

  1. 開会
  2. 我が国の都市ガス小売市場の特徴に関するヒアリング
    説明者 草薙 真一 兵庫県立大学経済学部教授
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○丸山参事官 それでは、定刻より若干早いですけれども、皆様おそろいですので、会議のほうを始めさせていただきたいと思います。

本日は、お忙しいところ、お集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから「消費者委員会第25回公共料金等専門調査会」を開催いたします。

本日は、所用によりまして、白山委員、山内委員、矢野委員、それから、消費者委員会担当委員の蟹瀬委員が御欠席との御連絡をいただいております。

まず、議事に入ります前に、配付資料の確認をさせていただきます。

お手元の議事次第下部のほうに配付資料一覧を記させていただいております。

もし資料等に不足がございましたら、事務局までお申し出いただきますようよろしくお願いいたします。

なお、本日の会議につきましては、公開で行います。

議事録についても、後日、公開することといたします。

それでは、古城座長、以後の議事進行のほう、よろしくお願いいたします。


≪2.我が国の都市ガス小売市場の特徴に関するヒアリング≫

○古城座長 それでは、議事に入らせていただきます。

本日の議題は「我が国の都市ガス小売市場の特徴に関するヒアリング」です。

我が国の都市ガスについては、御承知のとおり、今年の4月から小売自由化が開始されます。公共料金等専門委員会においては、都市ガス小売自由化について、電力小売自由化のフォローアップとあわせ、適切な情報提供、消費者トラブルへの対応等の観点から検討を行い、注視すべき論点を取りまとめることとしたいと考えております。

まず、本日は有識者からのヒアリングとして、兵庫県立大学の草薙真一教授から、我が国の都市ガス小売市場の特徴等について御説明を伺いたいと思います。

それでは、御説明をお願いいたします。40分程度でお願いいたします。

○兵庫県立大学経済学部草薙教授 兵庫県立大学の草薙でございます。

このたびはこのような貴重なお時間をいただきまして、誠にありがとうございます。

それでは、御説明申し上げます。

お手元に横長の資料がございますでしょうか。資料1でございます。本日のタイトルを「都市ガス小売自由化の課題と展望」とさせていただきました。

2ページを御覧くださいませ。内容を説明してございます。本日は、総論と各論に分けて述べさせていただきたいと思っております。総論としまして、これまでの経緯と今後の見込み、各論としまして、総合資源エネルギー調査会ガスシステム改革小委員会における論点の紹介であります。そして、結びに若干申し述べます。

では、3ページ以下の総論に入ります。

4ページを御覧くださいませ。これは、関西電力のホームページからとったものでございます。「ガス小売自由化の変遷」というタイトルがございます。御覧のように、都市ガスでは、平成7年から自由化が始まっておりまして、大口と小口の割合が御覧のように数次に渡って変遷してまいりました。そして、今年4月1日をもって、ついに全て自由化されるということになっております。したがいまして、大口、小口の概念は、数次の規制緩和によって変わっていたということがお分かりいただけると思います。そして、29年4月1日以降は、経過措置料金規制が僅かな数の事業者に掛かりますものの、全面的に自由化され、大口、小口の区分もなくなることになります。

5ページを御覧くださいませ。このようなガス小売自由化とも関連しますけれども、やや幅広に法改正の概要を振り返ってまいります。電気事業法、ガス事業法、経済産業省設置法のそれぞれの法改正に伴って、様々なことがなされております。法改正は3年に渡っておりまして、平成25年、26年、27年と、3次に渡る法改正ということで、これだけのことがなされていくということでございます。

まず、電気のことに関しましては、一番上、広域的運営推進機関、OCCTOと言っておりますけれども、こちらが平成27年4月1日に設立されております。平成25年の電気事業法の改正によって設立されたものでございます。そのような見方で見ていただきまして、ガス小売全面自由化は、平成27年6月17日のガス事業法の改正に伴い、なされている。そして、また、一番下のところですけれども、ガス導管部門の中立性の一層の確保、法的分離と申しておりますけれども、平成27年6月17日のガス事業法改正で、平成34年、2022年になりますけれども、4月1日以降は大手3社のガス導管部門が独立する。そのような法的分離が見込まれているということでございます。

6ページでございます。今、申しましたようなスケジュール感というものを時系列で見てまいりますと、御覧のようになります。実は、熱供給事業法の改正も入っておりまして、これも電力と同じスケジュール感で、小売全面自由化がなされている。そして、規制当局としまして、新規制組織、これは電力・ガス取引監視等委員会でございますが、こちらも熱を見る仕組みになっているということでございます。

このような法施行期日の全体像というものを、かなり早期の段階で、経済産業省は明らかにしておりました。7ページを御覧いただきますと、大変なじみ深い図ではないかと思いますが、いわゆる電力システム改革工程表でございます。3.11の東日本大震災を受けまして、かなり早期に経済産業省がこの図を打ち出し、そして、ほぼこのスケジュール感でもって現実化してきているということとなります。広域系統運用機関もできましたし、小売全面自由化も昨年の4月1日の電気、それから、今年の4月1日のガスといった形で実現いたします。また、新規制組織としては、電力・ガス取引監視等委員会ができ上がる。そして、また、卸電力市場の活性化以下、様々な新しい仕組みというものが着実に設計されている。一番下のところで、送配電部門の法的分離、また、ガスパイプライン部門の法的分離ということがなされているということでございます。

8ページを御覧くださいませ。ガスシステム改革小委員会は、都合33回開かれておりますけれども、第1回から第21回までと、法改正を挟みまして、第22回以降、最終回は第33回までで断絶があるということを示しております。すなわち、第1回から第21回までは法改正をにらんで、例えば、小売全面自由化をするのかどうか、それから、ガス導管部門を法的分離するのかどうかということ、そのようなかなり大枠を議論するものでありました。しかし、法改正がなされまして、22回以降は、そのことを前提としたより詳細な制度設計に着手したということになろうかと思います。最終回は2016年6月のことでありましたけれども、それで何か報告書があったということはなく、むしろ、ガスの適正取引ガイドラインとか、小売営業ガイドラインといったものの制定も含め、電力・ガス取引監視等委員会で整備する。実際には、今年2月に制定される見込みがございます。

9ページで、電力の小売営業に関する指針のインターネットのページの場所をお示ししております。小売営業ガイドラインにつきましては、電力は既にあるわけですけれども、ガスは現在、存在しておりません。パブリックコメントを終えておりまして、精緻化に入っていると伺っております。電力・ガス取引監視等委員会によって、今後速やかに整備されてまいります。ガスの適正取引ガイドラインは、改訂ということになりますけれども、これも同じように、速やかに整備されることとなっております。

10ページを御覧ください。先ほどOCCTOということで説明を申しました広域的運営推進機関でございますけれども、電力では、小売事業者のスイッチングにも有益な組織であると見られておりまして、これはガスの分野では働かない組織であります。しかし、電力のほうで、このような有意義な仕組みがあるということは、ガスにおいても念頭に置くべきことではないかと思っております。

また、導管網の整備促進ということも考えられているところでございますけれども、送配電網をどのように効率的に整備するのかといったことも、OCCTOの影響があろうかと思います。そのようなことから考えますと、ガスがOCCTOのことをしっかりと念頭に置いて、今後のことを考えていくということも重要であろうということでございます。

11ページの図でございますが、小売全面自由化後は、このような事業類型に変わる、左から右に変わるということであります。まず、LNG基地事業というものは届け出になる。そして、ガス導管事業は一般ガス導管事業と特定ガス導管事業に分かれる。そして、許可制が一般ガス事業、届け出制が特定ガス導管事業ということになるということであります。そして、ガス小売事業は登録制である。こういう新しい仕組みとなります。登録は、今年も既になされております。去年からなされております。そのような形で、全面自由化の準備が整いつつあるということであります。

12ページを御覧ください。これは、関西電力が示しました図でありますけれども、ガス小売全面自由化において、電力会社は何をマーケティング・ターゲットとしているのかというものであります。電力がガスの販売をするというときに、家庭用で何をするのかといいますと、ガスを使っておられる住宅で、まだ省エネ機器を導入していない御家庭を狙う。例えば、エコウィルとかエネファームのようなものを既に使っている、エコジョーズを使っておられる、こういったところを取りに行くのではなくて、むしろ、そういったことに対して余り意識されていなかった御家庭に入っていって、オール電化に切り替えることや、あるいは、その他、セット提案とか、スマート電化・付加価値といったことで、営業をかけていくということであります。したがいまして、オール電化住宅にガスを売ろうという発想ではない。それから、例えば、何らかの省エネ機器を既に導入している御家庭に入り込んでいくという考えは余りないということを示しております。

13ページのスライドは、関西電力が示しております電力会社として、ガス小売全面自由化に際して消費者が不安に思っておられる保安の部分で取る対応ということであります。小売事業者でありますから、消費機器の点検等をするわけであります。しかし、様々なことについて、やはり既存のガス事業者、関西エリアで見ますと、大阪ガスが多くを占めますが、そこの大阪ガスに多くを委ねるということを事実上示している表であります。実際には、岩谷産業などと会社を設立したり、あるいは、自主保安ということで御努力されるというようなことを発表はしておられますけれども、実際の説明では、御覧のように「OG」という言葉がたくさん出てまいります。OGというのは大阪ガスの意味でありまして、かなりの部分を大阪ガスに委ねるということを示しております。

14ページを御覧いただきますと、これは関西電力のホームページから取りましたけれども、全面自由化後、関西電力が消費機器の調査をするという部分について、赤い色で示しておりますが、御覧のように、大阪ガスがたくさん出てまいります。また、緊急時には、従来と同じく大阪ガスが対応を行い、関西電力は、連携・協力を行いますという注意書きを添えて安心感を与えようという戦略をとっておられるように見えます。

15ページを御覧ください。開閉栓の実務の話であります。一般ガス導管事業者とガス小売事業者が分かれてそれぞれに業務を行うということになりますと、内管漏えい検査はガス導管事業者が行います。一方、消費機器調査につきましては、小売事業者が行うという作りつけでありますので、違う会社が別々の日にそのような業務を行うことは、理論的に考えられるわけであります。従来は、一気にそれができていたわけでありますので、小売全面自由化によって、かえってお客様が不便をこうむるということではないのか。

そのことを、いかに解決するのかということが一つの論点でありまして、もちろん推奨すべきはAであります。すぐに続けざまに導管の検査と小売事業者が行う消費機器調査を行う。それであれば従来と変わらないということであります。

推奨したくないのはBでありまして、違法ではありませんけれども、別の日などに小売事業者がおくれて出向く。そうしますと、消費者は不便をこうむることになります。

Cは違法であります。先に小売が行くというのは、きちんとした調査ができませんので、これは認められません。

Aが望ましいわけですけれども、Aになかなかならないという場合に考えられますのがDでありまして、一般ガス導管事業者とガス小売事業者の両者から委託を受けた者が一気にこのようなことをすればよいということであります。したがって、Dを使って、従来どおりの便宜さを確保したいということが、国の考えであります。

16ページを御覧いただきまして、消費機器調査でありますけれども、これは小売事業者が行います。小売事業者の調査対象というものと調査項目というものを並べておりますけれども、法定の調査というものが課されるわけであります。それは必ずやらなければならない調査であります。それとは別に、自主のものもあります。調査項目で調査対象を自主的に増やしているということで、それぞれに示しておりますけれども、新規参入者がコストカットのために法定のものだけをやるように委託するというようなことは、決して望ましいことではないと思われます。何らかの経験を経て、必要を感じて自主保安を実施している、自主的な消費機器の調査を実施しているということは、高く評価すべきであって、そして、また、ベストなものを提供するということをおろそかにしていただきたくないということで、委託をするにしても、そのベストなものを業務としてやっていただくということが必要であると考えます。

17ページは、昨年末までの登録ガス小売事業者一覧であります。合計9事業者でありますけれども、年が改まりまして、今年の1月に東北電力が登録申請をされておりますので、認められますと、10社となります。御覧のように、一般家庭への販売の予定がある事業者とない事業者が混在している状況でございます。

18ページを御覧ください。先ほどから何度か出てまいりました、電力・ガス取引監視等委員会なのでありますけれども、小売全面自由化に当たって、非常に大きな役割を担うと考えられます。電力・ガス・熱供給の自由化に当たって、市場の監視機能を持っておられるということ。そして、3つ目のポツのところですけれども、法律に基づき、事業者に対する報告徴収や立入検査、業務改善勧告、あっせん・仲裁など、委員会単独で行う権限がございます。託送料金の認可や小売事業者の登録等に際して審査を行い、経済産業大臣に対し意見を述べたり、取引ルールについて経済産業大臣に建議する権限を行使する。このような役割がございます。

そのようなことを図示しましたのが、19ページでございます。電力・ガス取引監視等委員会の電力・ガス・熱市場との関係を図示してございます。いわゆる8条委員会でございますので、直接的な懲罰権を行使するというようなことではなく、経済産業大臣に意見を述べる、建議をするといった形で機能するということになっております。

20ページを御覧ください。託送料金の認可の状況を示しております。7月の終わりに申請をしていただきまして、昨年末、場合によっては、年が改まって今年1月に認可をするものがございましたけれども、もちろん一番数が多いのは、関東経済産業局でありました。御覧のような形で、ほぼ認可は終わっているということであります。注意すべきは、いずれも修正の指示を一度出しておりまして、そして、申請を補正してさせるということを、一度させている。そういうプロセスがございました。

続きまして、21ページ以下の各論に移ります。

ガスシステム改革小委員会では、22ページにございますような論点を、後半、潰しておりました。これは、法改正がなされて、それを受けてどのような議論をするのかということを示したものであります。ほぼ、これを全て網羅し、論点を潰し終えて、そして、終了しているとお考えください。22ページの赤枠でくくったものは、これはできたら優先的に議論をしたいと考えているものであります。したがいまして、【III】ガス製造事業、LNG基地事業に関しましては、後回しという形で実際なされましたけれども、山内弘隆座長のさばきのもとで、全ての論点が潰せたと考えております。

字が見にくいので、拡大版が23ページ以下にございます。

23ページ、論点Iであります。ここに星印がついてございますが、この星印というのは、先行しておりました電気の小売全面自由化の詳細制度設計による議論を参考にして、なおかつ、ガスの特性を十分に踏まえながら、効率的かつ丁寧に検討を進めるという経済産業省側の意思表示がなされているということであります。

24ページを御覧いただきますと、論点IIを拡大しているものとなります。御覧いただきますと、託送に関して、非常に論点を重く見ていたということが分かります。

25ページは、論点IIの続きであります。最終保障供給に星印がついております。

論点IIIを飛ばしまして、論点IV、その他のところですけれども、スイッチングを円滑に進めるためにどうするのかということ、そして、卸料金等の取引状況を監視するのはどうしたらいいのかといったこと、ここに星印がついております。

28ページは、熱供給事業の関係ということでございました。

29ページ以下で、重立った論点、興味深い論点につきまして、御紹介いたします。左上の肩に論点の番号を付してありますので、御参照いただきながら、位置取りを確かめながら、お聞きいただきたいと思います。

まず、ガス小売事業者の変更登録であります。ガス小売事業者の登録というのは、今も続いているところでありますけれども、一度登録したのだが、変更の必要が生じる場合があり得るということを示しております。上側であります。すなわち、変更登録を受けるべき変更事項としまして、自分の供給能力の見込みは変わらないのだけれども、需要が大きく上がったために、自前では賄えなくなった場合には、変更登録を受けなければなりません。あるいは需要に変動はなさそうなのだけれども、自分の供給能力が著しく毀損して需要を賄えそうもないという場合にも、変更登録を受けるということになります。

一方、需要の見込みの増減はあるけれども、自分の供給能力で十分賄える、あるいは、需要が十分に少なくて、自分の供給能力が変動しても対応できるという場合には、変更登録が不要な軽微な変更事項という扱いでございます。

30ページを御覧ください。小売全面自由化をいかに告知するかということであります。今年の4月1日をもって、小売全面自由化となりまして、このときに、契約の内容が従来と変わるということが全面的になされます。現行の供給約款による契約から、少なくとも全く条件が変わらないとしましても契約は変わりまして、現行の供給約款と同じ供給条件を定めた小売供給契約を新たに結ぶということであります。契約を結ぶわけでありますので、当事者がよくよくその内容を理解する必要があるということで、消費者全員に説明をする義務、消費者全員に説明をしてもらうということを事業者に求める。そういう意味での説明義務を課している。そして、説明時の書面交付義務も課しているということであります。ただ、4月1日をもって一斉にそれをするということは無理がございますので、前もって、その内容をきちんと知らせるのであれば、それをもって施行日に改めて同様の説明を行う必要はないということになっております。

また、経過措置料金の話と最終保障供給の関係が混同されることがあり得ます。31ページを御覧ください。経過措置料金規制が課されない事業者のもとで考えられている概念でございまして、最終保障供給義務の対象となるのは、31ページの右側の図の中で、点線の枠囲いに入っていない御家庭などに、最終保障供給が義務として導管事業者は持っているということであります。

32ページであります。電力と同じように、パンケーキの解消ということがなされました。導管事業者をまたいでガス供給をする場合、またぐたびに託送料金を払い続けますと、託送料金が非常にかさんでまいります。それは、小売全面自由化の状況にあって好ましくないということで、電力と同じようにパンケーキを解消し、1社のみまたぐ場合であっても、2社以上またぐ場合であっても、同じ託送料金を払えばよいという仕組みを導入いたしました。

実際の計算方法が、33ページに示されております。小売事業者が負担する託送料は、同額になるように計算されるという仕組みでございます。

続きまして、料金審査のことについて、若干申し述べます。

電力・ガス取引監視等委員会に料金審査専門会合という専門会合がございまして、34ページを御覧いただきますと、その検討の経緯が示されております。このような形で、昨年行われておりまして、今年に入りましても、盛んにこの会合で検討がなされているところであります。

35ページで、料金審査専門会合の委員のお名前をつけさせていただいております。松村委員、山内委員などが入っておられます。

36ページを御覧ください。託送料金を厳格に査定するということにつきまして、なかなか困難であるということで、4月1日に全面自由化がなされることに間に合うように、ヤードスティック競争も一部導入しながら、託送料金を認可いたしました。そのことに関しまして、例えばなのですけれども、一例としまして、託送供給料金の原価算入に当たって、どのような厳格さが考慮されたかということの御紹介であります。

左側の図でありますけれども、例えば、一般ガス導管事業者が自ら都市ガス導管網の整備促進に資する需要調査、需要開拓といったことをする場合、その費用を託送料に乗せるということが可能とされております。しかし、その費用は国が厳格に審査し、妥当だと認められればようやく託送供給料金の原価の算入を認めるということになりました。自ら需要調査、需要開拓をする場合はもちろんのことなのですけれども、例えば、他のガス小売事業者に委託するといったことでも可能であります。このようなときに、公募でそれをするということになっておりまして、その公募が公平になされているかということは、電力・ガス取引監視等委員会が監視しますし、委託費そのものも、電力・ガス取引監視等委員会が厳格に審査します。その妥当性が認められれば、託送料金の原価への算入を認めるということがなされるという仕組みであります。

37ページなのですけれども、これも同様に、託送供給料金の認可に当たって、ヤードスティック競争を入れるということについて、それでもよかろうというように、ガスシステム改革少委で結論づけられた一つの根拠を挙げております。2011年3月11日の東日本大震災以降で、直近の供給約款料金の改定が原価の洗い替えを行っている事業者というものが、類型1でございます。これだけの事業者がおられました。このような事業者をも、今回の料金査定の対象といたします。したがいまして、ヤードスティック競争の中にこのようなギリギリ全て個別査定で行った事業者が入りますので、甘い査定をすると、それが明るみに出るという観点から、そのようなことをしているという経済産業省の説明がございました。

38ページを御覧くださいませ。託送供給約款の認可申請に係る審査について、経済産業省の資料から取ってきております。ポツのところで「今年7月末」とございますけれども、これは昨年のことでございます。平成28年の7月末に、ガス会社から認可申請が出てまいりまして、そして、8月には電力・ガス取引監視等委員会に意見を聴取しまして、そして、経済産業省として査定方針を策定したということであります。そして、各社が申請しました託送料金の原価というものを取ってきておりますけれども、まず、38ページの表の一番上、比較査定対象ネットワーク費用というもの、これがいわゆるヤードスティックの部分であります。あと、ずっと個別査定でギリギリと調べ上げた費用が載ってきております。御覧いただきますと、ヤードスティックによる査定がかなりきいている部分が多いということをお気づきだと思います。もともとは、個別査定が全体の費用の6割、ヤードスティックは4割に過ぎないという説明も経済産業省からなされておりましたけれども、会社によっては、ヤードスティックの部分が随分効いて、割合が増えてしまっているということは言えようかと思います。

ただ、ヤードスティックでしたからといって、甘い査定だったのかということが、次の議論になろうかと思いますけれども、査定方針というものが39ページに出てまいります。各社、様々な形で絞られたというようなことを事業者の側はおっしゃいまして、なおかつ、電力・ガス取引監視等委員会も査定の際に、かなり削ったとおっしゃっているところであります。今後、それが妥当なものだったのかというのは、検証していく必要があります。これは毎年すべきだという意見があります。また、3年に一度はしっかりとやれというような、これは法的要請としてやる。こういったことも考えられているところであります。いずれにしましても、今回の料金が100%正しかったという前提で長く続けるのではなくて、次の認可のときには、当然、厳格な個別査定を全てにおいて行うということになっております。そのような形で妥当さを確保していっていただきたいと思います。

40ページを御覧いただきますと、この各社の査定方針を踏まえた託送料金の申請と認可の関係ということで、どのぐらい圧縮されたのか。査定方針を踏まえて、各社1立米当たり幾らという形で見ていただきたいのですけれども、僅かずつかもしれませんが、確実に圧縮はされたということが言えます。

41ページを御覧いただきますと、ガス導管網を持っているけれども、託送約款を作る必要がないという、いわゆる承認事業者の論点であります。そういう事業者もいらっしゃいます。昨年の夏の段階でそのような承認を受けているのですけれども、どういうことがあったのかということを示した図であります。

まず、熱量変更の最中であるという事業者は、そもそもそのパイプラインに都市ガスを送り込むという対象のパイプラインではないということで、約款の作成が不要であります。

また、天然ガスを主原料とする、いわゆる12A、13Aといったガス以外のガスで送り込んでいるという場合も、同様の理由でありまして、約款の作成は不要であります。そのような場合には、託送約款制定不要承認の申請をすればよいということであります。

そういったことをクリアしている事業者は、今度は需要家数を見ます。15万件以上の需要家を抱えている場合には、託送約款を作成しなければならないということで、託送約款の届け出を行います。

15万件未満の場合ですと、パイプラインの連結状況を見ます。パイプラインの連結が未連結でありましたら、これは送り込むという対象ではありませんので、約款の作成は不要となります。

連結がなされているということになりますと、今度はお客様の件数を見まして、大口、卸、託送件数が何件あるのかということで、3件以上である場合に、託送約款が必要、3件未満の場合は、相対でよろしいということで、約款の作成が不要となります。

続きまして、42ページを御覧ください。同時同量という概念が、今回の小売全面自由化に伴いまして、大きく変わるということになります。従来は1時間で区切りまして、お客様の使用した量と同量を同じ時間に入れるということで義務を果たしていたわけなのですけれども、今後は、前日に示されましたロードカーブに沿って忠実にパイプラインにガスを送り込む。そういうことで、パイプラインの運営にも寄与するということが新しい仕組みであります。したがいまして、お客様の使用形態とは無関係な注入ということがなされることが当然になるということ。そして、精算というのは、(3)にありますけれども、後日のこととなるということであります。

43ページは、送り込む際のアローワンスの話であります。1時間で当日の指令を受けるということがあります。調整指令と申します。調整指令にも対応しなければなりません。前日に受けたものを、そのまま行うことが、気象状況の変化によってできないことがあります。その場合に、アローワンス、プラスマイナス5%の枠内で、きれいに送り込む必要がある。もしこれを外れますと、ペナルティーが発生するということを示した表となります。

44ページを御覧ください。パイプラインのガスの注入と託送供給エリアで、関西電力が作った地図であります。関西電力は姫路基地からガスを送り込んでおりますけれども、堺基地でも送り込めるように今、工事中であります。これができますと、大阪ガスとほぼ同じ送り込む能力を持つことになります。御覧のような形で、関西エリアではガスの競争がなされているということであります。

また、ガス導管網を整備するということに関連しましては、45ページに大阪ガスの導管整備の計画があります。新たに設置するものと古くなって補修を要するもの、こういったものがございます。これは一例であります。

46ページ、西部ガスのガス導管整備計画であります。整備計画で示しておりますものに、さらに加えますならば、今、ひびきLNG基地が稼働しておりまして、そして、大量のガスを送り込むことができるようになったこともありまして、久留米と大牟田の間はつながっておりませんけれども、ここをつなげて、熊本まで一気通貫する。北九州から熊本までガスパイプラインでつなぐということまで計画されているところであります。

47ページで、ガス導管網の有効利用ということで、都市ガスの導管網が既に整備されているところであっても、未熱調ガスを入れるニーズはあるわけであります。熱量が異なりましても、それはやっていきたいのだというニーズに、今回、応えることとなりました。年間1.5%の需要を、都市ガスの導管から抜くことが許される。3年で4.5%まで大丈夫ということであります。

48ページを御覧ください。「振替供給」という概念が、電気事業法とは違って、このような形でガス事業法ではございます。先ほど地図でありましたように、例えば、姫路と堺のほうで、エリア1、エリア2とありました場合に、ガスパイプラインがつながっているよう見えても、実際には送れないということが、物理学上、あり得るわけでありまして、そういうことからしまして、送れないエリアにお客様を見つけた場合、既存の事業者が差配することによって、ビジネスができるようにしましょうということを示した図であります。しかし、ステップ3にありますとおり、送り込めないエリアで得たお客様を失った場合に、大変問題が生じる。

この問題は、そもそもガスパイプラインがまだまだ脆弱であるということを示しているわけでありまして、49ページがそれを示している例であります。日本は、韓国、台湾などと比べましても、貧弱であるということが言えます。

そこで、50ページの導管の整備のための一般負担の話が出てまいりまして、導管事業者が、お互いに、将来裨益(ひえき)するという観点から、それを行おうではないかということであります。

51ページにありますとおり、パイプラインを延伸するためには、需要調査や需要開拓をするというお話をいたしましたけれども、御覧のような形で、国としても、いろいろなパターンを考えておられる。そういうことが言えます。

52ページのスライドですけれども、従来から行われております二重導管規制、これは生かされておりますので、気をつける必要があります。基本的には、既に導管が敷かれているところには、その導管を使うということが大前提なのだと。例外基準として、LNG基地近傍とか、電気事業の用に供されている部分で特別な条件を備えているという、こういう例外が設けられている。これは、重視しなければならないということであります。

また、53ページで、昨年あたりから、経済産業省で託送供給不可能ガスという概念を持ち始めておられます。未熱調ガス、要するに、プロパンやブタンを加えて、増熱して13Aとか12Aといったところに持っていく、いわゆる都市ガスでないガス、これは当然のことながら、託送供給不可能ガスであります。御覧のような表を作って、判断基準を国として設けているということでございます。

私からは以上でございます。御清聴、誠にありがとうございました。

○古城座長 ありがとうございました。

それでは、御質問や御意見のある方は、御発言をお願いいたします。いつものとおり、御発言を希望の方は、名札を立てていただきたいと思います。

井手座長代理、どうぞ。

○井手座長代理 ありがとうございました。

一つ質問があるのですけれども、11ページの右側の図で、特定ガス導管事業は届け出で、小売事業者にガスで卸して、全需要家に供給する。17ページの小売の登録で、国際石油帝石が特定ガス導管事業者で、これは小売事業者としても登録をしている。託送約款は今回認可制ではない。また家庭用小売には出ないで、大口だけに供給することになっています。それはどうしてなのでしょうか。これは小売事業にも出ていくわけですから、導管を中立的、透明性を確保しながらみんなで使うということからすると、きちんと整備をしたほうがいいと思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。

○兵庫県立大学経済学部草薙教授 各社の戦略がおありだと思いますが、いわゆる国帝の特定ガス導管事業への届け出ということについては、一般ガス導管事業者から見ても、違和感があるように聞いております。同じように約款を作るといったようなことが本来は望ましかったかもしれないということであります。さはさりながら、そもそもの出自が違う。そして、国際石油開発帝石さんについては、例えば小売といっても一般家庭に送り込む趣旨の小売ではないということが言われておりまして、そして、一般家庭への販売の予定はなしということにもなっているわけでございます。そういうこともあってではあろうかと思いますけれども、これは電力会社が特定ガス導管事業のほうに組み入れられているということについても、同じことが言えるかもしれません。例えば、1月になって東北電力が小売の登録申請されてきているということではありますけれども、しかし、例えば、その一方で、報道によりますと、仙台を拠点とするカメイ様との提携といったような形で、独自の経営戦略を立てられるというようなことがあるようであります。一方で、100%子会社でLNGの小売販売も東北電力でされるという報道でございましたけれども、各社各様であるということが言えようかと思います。

一般に、国際石油開発帝石様のガスパイプライン網は、その敷設されている地域にしましても、会社の方針にしましても、約款を要しないものであるという認識を国としてされており、なおかつ、ガス導管事業を届け出でしていいという、これも許可制でいくという制度設計はあり得たと思いますけれども、届け出制でいくということになっております。一般ガス導管事業者から見ると、非常に優位に立たれているということになるかもしれませんが、そういうことではないかと思います。

○古城座長 あと、いかがでしょうか。

陶山委員、どうぞ。

○陶山委員 膨大な内容について簡潔に教えていただきまして、本当にありがとうございました。

今回、託送料金について、厳格に電力料金の委員会の中で審査されて圧縮されてきたということなのですが、この原価の中に算入される費用のうちで、算入すべきか否かで意見が分かれたような費用はどういったものがあるのか。それから、また、今後導管を延ばしていくときに、注視しておかなければならないような費用項目などはどういったものがあるのか、少し具体的なものとして教えていただければと思います。

○兵庫県立大学経済学部草薙教授 もちろん全て必要だと認められたから入っているということだと思うのですけれども、例えばよく言われましたのが、役員報酬が高過ぎるということについて、どのようにそこを精査するのかとか、広告宣伝費、もちろん広告宣伝は企業にとって必要ではありますけれども、過度に使っているということはないのかとか、そういったことが議論としてあり得たのだと思います。おおよそ、各企業様が出してこられた認可申請の金額に比べたら、やはり使い過ぎであるという趣旨で圧縮されたということであろうかと思います。そのあたりが、38ページから39ページのところで、若干分かるかなと思います。

また、今後、これでしばらく進めていくとしましても、例えば、それでも利益がたくさん積まれているということが明らかになったら、例えば託送料の引下げの届け出とか、それに応じない場合には引下げ命令、こういったことも、制度的に今後間もなく整備されていくと思います。そのような形で、これが決定ではありますけれども、これで問題があれば、すぐに下げるような圧力をかけていくというような立場に経済産業省は立たれているのではないかと思います。

したがいまして、御質問としては、不要なものは省いたということであって、必要なものを入れたのだけれども、それでもってしても、もっと削るということに一応は成功したという査定だったのではないかと思います。

○陶山委員 そういったいろいろな費用に関する情報について、一般消費者から、その情報についてアクセスするのは可能だとお考えでしょうか。

○兵庫県立大学経済学部草薙教授 もちろん会社として、CSRの一環として出している情報はございます。様々な情報を取ることはできると思うのですけれども、結局のところ、託送供給の約款の認可というものがブラックボックスになるということでは、もうなくなってくると思いますので、逐次、電力・ガス取引監視等委員会の料金審査専門会合のほうでレビューを行っていかれますし、法的にも検証ということはしなければならないことになっておりますので、国民にもかなりつまびらかになっていく内容のものばかりであると認識しています。

○陶山委員 ありがとうございました。

○古城座長 井手座長代理、どうぞ。

○井手座長代理 31ページの経過措置料金のところですけれども、今、規制が課せられている事業者は10事業者。小さな需要家件数が何千件というような事業者も規制料金として入っているわけで、一方で、政令都市のところで規制がない事業者も存在している。本来、規制を残すか残さないかというときに、普及率は別に競争を反映したものではなくて、この制度を適用する前に、供給区域の削減を、きちんと削減、返上を行った上で、この料金規制を残すかどうかということを本来やるべきだと思うのです。平成8年以来、それほど削減がやられていない中で、10事業者しか料金規制が残っていないという点について、まず、草薙先生がどういうようにお考えなのかということ。

もう一つは、法的分離をした後に、経過措置料金というものがなくなったときに、本当に料金規制をなくしていいのかというのは、多分、電気も同じで、ガスの場合でも、消費者は大変関心を持ち、規制がなくなることに懸念を抱いていると思うのですけれども、その点については、草薙先生はどうお考えですか。

○兵庫県立大学経済学部草薙教授 ありがとうございます。

まず、31ページのスライドのところですけれども、確かに10事業者程度しか、この経過措置料金規制が課されなかったというのは、意外だという声があります。もっと多くなるのではなかったのかと、特に電力は全事業者に対して課すというような意味合いでどうなのかというようなことをおっしゃる方もいらっしゃいます。ただ、例えば、東京ガス、大阪ガス、東邦ガスといった、非常に大きな会社で経過措置料金規制が課されないとなりますと、一般消費者への影響、あるいは、与える不安感といったようなことを想像せざるを得ないのではないかと思います。

その一方で、余りにも非常に小さい事業者で不安定であるというようなところは、やはり別の意味で経過措置料金を課して、料金をギリギリと審査して、大臣が認可する。こういったことが必要なのだろうと思います。ほかの部分は、すべからく、実は非常に厳しい競争にさらされていて、消費者が困るような値上げができる状況にはないと考えられるのではないかと思います。例えば、LPガスとの競争が激しいとか、オール電化との競争が激しいといった状況は、ほとんどの一般ガス事業者が、今、経験をしているということでありますので、したがって、彼らは今、全面自由化のいわば全面戦争に突入しても、おかしなことにはならないだろうと考えられるわけであります。

そういった考え方に立ちますと、非常に大きな事業者、それから、非常に小さな事業者というのは、それぞれ別の意味で、経過措置料金規制を課す。それ以外の事業者はもう課さないで、いわば小売全面戦争に入ってもらって、消費者は十分競争の便益を受けることができると判断できるのではないかと思います。必ずしも供給区域の問題とリンクさせることにはならなかったのだろうと思います。

また、2022年の法的分離と経過措置料金の関係ですけれども、これは電力もそうですが、2020年4月1日からの電力の法的分離と経過措置料金というのは、理論的には本来、リンクしない話ではないかと思いますが、そのときをめどにということで、事業者は計画をしておられるというだけのことだと認識しております。したがいまして、経過措置料金は経過措置料金として、2022年以降にも続いていくのかもしれませんし、もっと早く絞り込みがあって、片手で数えるぐらいしか経過措置料金規制が課されていないというような、そういう状況になるのかもしれない。ほとんどが経過措置料金規制を外されてしまうということが、それほど遠くない将来、起こってくるのかもしれない。こういうように認識しております。

○古城座長 あと、いかがでしょうか。

古賀委員、どうぞ。

○古賀委員 御丁寧な説明、ありがとうございました。

いろいろお尋ねしたいのですけれども、順番に3点お願いします。

15ページに開閉栓の実務についてと非常に分かりやすい区分けをしていただいているのですけれども、ガスを新規に使ったりするとき、消費者が、今回この小売の自由化によって、二度手間になるのが非常に不便になると思うのです。Cの方法が違法という考え方については、注のところで御説明いただいているのですが、実際には、原則的にはAのやり方で、まず、導管の方がいて、その後、小売ということになるということですね。Bの場合は、一般ガス導管事業者とガス小売事業者の間で委託契約を結ぶことが実務上は推奨されているというような意味なのでしょうか。

2つ目は、スライドの20ページのところで、託送料金の認可の御説明があったと思うのですが、これは昨年の12月までにほぼ認可がおりているということなのですが、1回修正の指示があった後に、認可されているということなのですが、この修正の内容について、各社についての共通の事項、どういうところが修正対象になったのかということを、概括的で結構ですので教えてください。

もう一点は、戻りまして、16ページの消費機器の調査のことなのですけれども、法定の調査対象と自主的な対象と分かれているのですが、消費者としては、法定は通達、行政指導、国からの要請を含むということで、かなり法定のものに寄せられることが望ましいように思うのです。こういったことを最初に小売事業者と消費者が契約する場合に、実際の調査対象になっているものであるというような説明がきちんとされるかどうかということまで、細かいことなのですけれども、議論されているのかどうかを教えてください。

○兵庫県立大学経済学部草薙教授 ありがとうございます。

では、御質問をいただいた順番に回答を申し上げます。

15ページの開閉栓の実務でありますけれども、二度手間はかえってよくないということを御理解いただき、感謝いたします。Bなのですけれども、導管事業者と小売事業者の間で話し合って、小売事業者に委託するということは、余り想定しておりません。小売事業者は新規参入者であります。その新規参入者が、むしろ、例えば消費機器の調査ということで、どこかに委託できないか。例えばLP業界に委託できないかというように、電力会社は考える。こういったパターンがあり得て、そして、小売事業者としては、この実務というものを、どちらかというと、自分以外のところに持っていきたいというニーズが認識されているところであります。したがって、導管事業者は、文句なく漏えい検査に参ります。そういう立場で、各家庭まで行きます。そういうものを小売に委託するということは、考えにくいということが言えます。

現在、まだ自由化しておりませんので、導管事業者が各家庭に行ったときに、今、余り小売の営業はしておられないと思います。それはなぜかと申しますと、これから小売の様々な競争が起こるというときに、各家庭のキッチンにまで上がっていける特権がある今のガス会社が、その特権を奇貨として営業活動までしてしまう。それは良くないという観点から、むしろ自主的に規制しておられると思います。ですから、今、淡々と導管事業者としての役割を果たしているということが、一般的に見られるのではないかと思います。したがって、Bで、導管事業者から小売事業者に委託するということは、余り想定できないということになります。

続きまして、20ページであります。申請してすんなりと認可を受けた事業者がなかなかないということをどう捉えるのかということなのですけれども、これはこの表の見方なのですが、例えば資源エネルギー庁の本庁が5つの事業者の認可を行いますが、一括して、この12月7日に修正指示を出しているということであります。同じ日に5社に対して行うわけです。北海道経済産業局であれば、12月14日という同じ日に5つの事業者、関東経済産業局であれば、12月9日に73に対して出す。こういうことをしておりまして、査定方針というものを受けて、行政指導を行うというようなレベルのものがほとんどであると思われます。もちろん、各社、個別具体的に見て、どこをどう直すべきということは異なってまいりますけれども、査定方針がありますので、一気にそれができる。

補正申請も、ほぼ期日を設定しまして、東北経済産業局では、12月22日までに補正申請せよといった形で出しておられますけれども、ほぼほぼ同じ日に、また補正申請を出させる。そして、それを受けて、認可を出すということでありまして、理論的には修正指示というものは、行政指導に当たるようなものだということが言えようと思います。

その内容なのですけれども、これは各社ばらばらであるというようなことが言えようかと思います。具体的には、39ページにありますようなもので、東京ガス、東邦ガス、大阪ガス、西部ガスに関しまして、割と詳し目に書いておりますけれども、圧縮したのは、東京ガスが多かったと思います。大手の中では東京ガスを大きく圧縮したと思いますけれども、それももちろん査定方針があって、修正に応じさせたということになるのではないかと思います。

16ページのスライドなのですけれども、調査の対象と項目で、それぞれ法定のものと自主のものがあると言いましたけれども、今、一般ガス事業者で、法定のことだけをやって、自主的に追加的な安全のために行うことを一切していませんという事業者はいないと思われます。それぞれに事故を経験され、いろいろな教訓を持っておられ、それぞれにベストなものを組み立てておられるということであります。したがって、新規参入者もそのことを尊重すべきであって、例えばうちはコスト削減をモットーとするから、法律上やらなければいけないことだけをやってくれ、ほかのことはコストがかさむのだからやらないでくれ、あるいは、勝手にするならばそれはコストを差し引いて支払うというようなことをおっしゃるというのは、これは相当に無理がある話であるというのが、申し上げたいことであります。

したがって、消費機器の調査を委託する場合に、従来の事業者がやっておられるベストの内容に乗っかる形で、適切な費用もお支払いし委託をすることが必要なのではないかと思います。したがって、この法定のものと自主のものという区分けで、なるべく法定のものに寄せていくという考え方もあり得るかもしれませんが、法律上は何も述べていないけれども、会社として行うのだというようなことは尊重されるべきであるし、新規参入者もそれを踏まえて調査委託を行うべきであると考えます。消費者につきましても、法定の調査と自主の調査というものの区分けを説明し、余分にコストがかかるけれども、ぜひとも御理解を賜りたいというようなことをおっしゃるべきと思っております。そういう意味では、消費者に対して、きちんとした説明をするというのは、小売事業者の義務であると思います。

○古城座長 あと、いかがでしょうか。

松村委員、どうぞ。

○松村委員 私が言うのは変ですが、幾つか事実の確認です。先ほど井手委員が、供給区域の問題を挙げられました。まさに問題だとは思うのですが、事実を確認させて下さい。今回の制度改革よりはるか前の段階で、今まで未普及地域も全部供給区域にたくさん入れてしまっていて、それ自身、問題ではないかと言われて、かなり返上させたという事実があります。これは料金審査とは違う文脈です。しかし、返上の単位は、せいぜい字単位なので、未普及地域が残っている可能性を否定はできないのですが、かなりの程度この問題は解消していた。これを前提として、今回のような対応となった。この問題を放置しておいてこうしてしまった、ということではないことは、ぜひ御認識下さい。

ただ、実際問題として、オール電化あるいはLPガスにとられているとかという原因で普及率が低いのだとすると、確かに競争的なのかもしれない。けれども導管投資を怠った結果供給できなくて普及率が低い、しかも、それが供給区域に入ってしまって普及率が低いなら、普及率が低いことは競争的な市場であることの証拠にならない。今後は確かに問題になり得ると思います。今までは経過措置料金規制が嫌だから導管投資を怠ることは、このルールが予見されていなかったわけだから、なかったと思いますが、今後は導管投資を怠れば経過措置料金規制が外れるというルールとしてしまったら、変な行動を取ることはあり得るので、その点について、井手委員が御懸念のようなことを、この委員会でも注視していく必要があると思います。しかし認定の段階ではこのような問題も考慮されたことは御理解ください。

それから、陶山委員から、いろいろ託送料金について御指摘があったと思うのですが、それに対して、御回答では、託送料金は審査委員会がちゃんと調べて、お墨付きを与えたとされた。しかしこれは、私の理解とはかなり違います。託送料金は確かに審査する。もちろん一生懸命やる。やれることは全部やったつもりです。しかし全知全能の者が査定するわけではないので、当然、見落としなどはあり得る。第三者が見て、明らかにこれはおかしいという点については、大幅に削った。その点では、きちんと査定をしたことは事実だと思いますが、残っているものについて、お墨付きを与えた、これは正当であると言ったというのは、ちょっと言い過ぎではないか。現時点の知見では問題があるということまでは分からなかったという程度のことだと思います。今後もいろいろ知恵を絞っていって、おかしなコストが入っていないかは見ていく必要がある。

○古城座長 今のレベルで、電気とガスと比べて、厳格さは大体同じレベルにまでなっているのですか。

○松村委員 すぐ申し上げます。

それで、問題点はないのかという問いに対しては、例えば役員報酬だとかということを挙げられました。それは、要するにヤードスティックに入っているもの。ヤードスティックに入っているものについては、査定していません。したがって、その意味では、全く手つかずだということを言ってもいいと思います。ヤードスティックですから、比較査定なので、突出して非効率的なところはそれでちゃんと査定ができる。でも、業界全体が非効率あるいは業界全体で本来入れるべきではないコストが入っているものについては、査定のしようがない。

それで、今、古城座長が御指摘になった、電気と比べてという点ですが、少なくともヤードスティックでないところについては、電気よりも緩いということは決してないと思います。むしろ、今までの経験を踏まえて、だんだんブラッシュアップして、いろいろなことが分かってきて、ポイントが分かってきたというようなことも含めて考えれば、少なくとも同じぐらい厳格な、あるいは、電気がもう一回出てきたとすれば、やられるであろうものと同じぐらいちゃんとやったと言える。

ただし、しつこいようですが、ヤードスティックのところは全く査定していないという点は、電気と全く違う。電気よりも緩いと言われれば、否定できません。ただ、これについては、料金審査委員会は、別の委員会で決まったルールに基づいて査定するので、ここはヤードスティックだと決まったものについては、手がつけられなかった。したがって料金審査の委員会でやれることはやったが、甘いという側面も否定できない。

次に、質問したい点です。御説明の中で、例えば何年か後にはヤードスティックも含めて厳格な査定という言及があったと思うのですが、それは草薙先生の御認識だと、必ずやられるということなのでしょうか。今回、ヤードスティックで厳格な査定をしなかった部分が残っています。そうすると、もしその分にじゃぶじゃぶのコストが乗っていたということだとすると、託送料金は相当高い水準になっている。相当高い水準になっているので、この後、ひょっとしたら、もう値上げなどする必要は全くなく、したがって、値下げ届け出制の世界なので、この後、未来永劫、厳格な査定がない。したがって、ヤードスティックについても、もう手がつけられないということだって、今の制度だったらあり得るわけですね。その点について、何も決まっていないのにもかかわらず、厳格な査定がこの後あるはずだというのはどういうことなのか。お考えをお聞かせください。

○兵庫県立大学経済学部草薙教授 ありがとうございます。

確かに現行法だけでいきますと、今回認可された料金で、もう値上げがなければ二度と審査を受けることもなく、都合のいいときに少し値下げをする程度の届け出で、これからずっとやっていくことができるという話ですけれども、恐らく、例えば電力・ガス取引監視等委員会の制度設計専門会合でも、このことは議論になるのではないか、明日の制度設計専門会合で、既になる可能性があると考えておりまして、もしそういう議論があるのならば、私はそれに乗りたいと思っております。

経済産業省の立場は、今回は4月1日に間に合わせるためにどうしても仕方がなかったので、ヤードスティックを一部入れることを認めてほしいと。そうでなければ、とても間に合いませんということであり、なおかつ、今日も幾つかのスライドでお示ししましたとおり、とにかく厳格に査定できるような内容にしていきます、とにかく、削り込んでいきますということで、やむを得ず了承したということで、それは経済産業省もよくよく理解されていて、次に認可をするときには、ヤードスティック競争をしません、個別査定でギリギリやっていきますということを、ある意味約束されております。問題は、もう一回認可するような場面に事業者を引きずり出せるかどうかということになりますけれども、そこが考えどころではないかと思います。

電力のほうなどで考えておられますのは、消費者委員会の御努力もあったと思うのですけれども、既に昨年でしたか、電力託送料金に関する消費者委員会の答申ということで、7月に、3年から5年に一度、託送料金の洗い替えを原価ベースで審査するといったことで、コスト削減の結果が料金に反映されるようにしてはどうかと、今、答申のレベルですけれども、そういうこともおっしゃっています。家庭用の部分に過大な負担が寄らないように固定費の配分基準を見直すとか、あるいは事業者の効率化の促進をするということで定期的に検証すべきといったこととか、託送料金の仕組みについて、そのものを、託送料金の仕組みの状況を消費者に積極的に情報提供すべき、こういったことを言っておられます。

このようなことは、結局イコールフッティングの観点からしましても、ガスの託送料金にも言えるはずでありまして、そうなってくると、3年とか5年に一度、定期的に託送料金の洗い替えをするというようなこともあり得るのではないか。例えば、全ての会社というのは無理かもしれないけれども、幾つかの会社について選び取ってやっていく。こういったこともあり得るのではないかという気もいたします。しかし、現行法上、今のところ、そうなっていない。ガスの仕組みというのは、そういう意味で、ヤードスティック競争で非常に高止まりする託送料金を設定してしまった可能性が残っておりまして、松村委員の御指摘のとおりであります。やむを得なかったということで、ギリギリと刻み込んだという経済産業省の説明を信じるほかないと思っております。

○古城座長 私はここで所用のため退席させていただきますので、この後の議事進行は、井手座長代理にお願いいたします。御自由に御議論をお願いします。

(古城座長退席)

○井手座長代理 それでは、古城座長が退席されたので、引き続き、御質問等がございましたら、お出しいただければと思いますけれども、いかがでしょうか。

では、つなぎに私から。登録の小売事業者と17ページにございますけれども、電気の小売に比べると、はるかに登録事業者が現段階でも少ないわけですが、消費者の選択肢が広がるという当初の自由化の目的からすると、全く登録者数が少ない。こういう状況は草薙先生が想定されていたのか、その中で、自由化というものを進めてきたのかという点。それで、なぜこんなに少ないのか、新規参入するハードルが非常に高いのか、何が問題なのかということを教えていただきたい。

もう一つは、27ページの論点のところで、卸料金等の取引条件の監視というものがございます。これは電気に比べると、電気は取引が整備されている中で、ガスはそれがない。ただ、ガスの卸売料金は、以前は認可制であったものを、制度改革の中でそれを外してやったわけですけれども、これをまた再び取引条件について監視をしていく。ここは議論していないかもしれませんけれども、どういう形で監視をすることを考えているのか。この2点についてお聞きしたいと思います。

○兵庫県立大学経済学部草薙教授 ありがとうございます。

まず、17ページでございますけれども、おっしゃるとおり、非常に少ないという印象を持っております。もともと言われておりましたのが、電力は入ってくるのだろうということ。そして、電力の子会社、グループ企業、こういったところが入ってこられるだろうということは予想しておりましたが、それにしても、全ての旧一般電気事業者が入られるわけでもない。遺憾に思うところであります。もっと競争マインドを持って、入ってきてもらってもよかったのではないか。今からでも考えていただきたいと思うところであります。

特に意外だったのが、石油元売大手が余り関心を示さなかったということであります。石油元売大手あたりが、電力と並んで非常に有力であったと思っておりましただけに、いささか肩透かしということもございます。

やはり、非常にハードルが高いのだろうと思います。まず、玉(ぎょく)を扱うということについて、経験が必要だと。LNGを扱うしかないわけでありますので、LNGをどこから調達するのかというノウハウがないということで、そこが石油元売大手をもってしても、そんなに簡単ではないということがあろうかと思います。

あと、ハードルが高いということからすると、国は、恐らく卸市場を活性化するというような観点で、何とか玉(ぎょく)を、LNGそのものを一般ガス事業者からどんどん切り出させる、市場で取引させるということ。つまりは、卸売価格がそこで明らかになってまいりますけれども、例えば東京湾のどこかに市場を設ける。市場ということで、現物が流通するということでなく、金融取引のような取引も考えられるわけでありまして、いろいろなパターンで取引を活性化させていくということが、今後、求められるのではないかと思います。そうなってきたら、いろいろな企業が参入できるのではないかと思います。現在のところは、本当に玉(ぎょく)を扱える者でなければ、新規参入ができない。そして、それが、ノウハウを持っている者が実は一般ガス事業者、あるいは総合商社あたりしかないということで、思ったよりも広がらなかったということだと思います。したがって、一気に広げる方法としましては、卸市場を作り、そこで価格を透明化させ、そして、取引を活性化させる。まさに電力がやっていることでありますが、それをガスでもやるということができれば、それは可能になるのだろうと。

そのことが、2つ目の御質問の、卸料金の取引条件の監視ということにもつながって参ろうかと思います。実際「卸料金等」とありますが、料金のみならず、様々な卸契約に関する取引条件を監視していこうという意図を、私は電力・ガス取引監視等委員会に感じます。すなわち、抱き合わせ販売とか、様々なアライアンスとか、そういったことをつぶさに監視して、より市場を活性化させる方法等を見出すということを考えておられるのではないかと思います。そういう意味で、今後に期待したいと考えます。

○井手座長代理 ありがとうございます。

では、陶山委員。

○陶山委員 今のお話とも少し関連するのかもしれませんが、これは少し漠然としたイメージを持っていまして、今日いただいた資料の12ページなのですが、今のお話の中でも、新規に小売に参入してきたところは、大手電力会社が中心であって、電力会社のマーケティング・ターゲットはこれこれで、選択肢としては、セット提案というようなことが書かれています。各地で非常に、4月1日を前に、これまでの大手ガス会社と参入してくる電力会社の熾烈な価格競争が始まっているだろうと思います。今後、中長期的な見方として、資本力の関係で、ますます電力会社がマーケットに対する影響力を増大させていくのではないかという予測も立てられるのではないか。そのような中で、個々の消費者として、さらにいろいろなものが見えなくなってくる、あるいは電力会社の影響力が社会全般的に増大していく中で、草薙先生としては、もしそのような状況が起こった場合、どのような弊害が起きてくるか、あるいは、こういうところに注目しておかなければならないのではないかと、現在お考えなのか。漠然とした質問で恐縮ですが、教えていただければと思います。

○兵庫県立大学経済学部草薙教授 ありがとうございます。

私は普段、兵庫におりまして、関西電力と大阪ガスが、まさに全面戦争のように戦っているところに住む消費者なのですけれども、東京の方とお話をしますと、それほど盛り上がっているようにはお聞きしません。どうも広告などもなかなか入らないし、たまにチラシが入るのみ。テレビでそんなに派手な宣伝も御覧になっていない。関西に居ますと、盛んに大阪ガスも関西電力も、両者宣伝をしておられまして、競争が激しいなということを実感いたします。東京電力は、実際に4月1日に間に合わないで、7月にガスに参入されるというようなことで、それなりに苦しんでおられると思います。決して、圧倒的な力でもって東京電力が東京ガスを潰しに来るという状況だとまでは認識しておりません。例えば、大阪でもってしても、大阪ガスもかなりの気概を持って勝ち抜く覚悟で関電と戦うということをやっている。これは消費者にとっては望ましい状況であって、これが著しく変化してしまい、電力が一方的に強くなってかえって消費者が損をするというような状況になるとは、私は余り思っておりませんで、安心しています。むしろ、東京のほうで、関西のような競争がはっきりと現れて、そして、消費者がスイッチングを試みるというようなことが当たり前に見られることを望んでおります。そのような認識です。

○井手座長代理 そのほか、いかがでしょうか。

古賀委員。

○古賀委員 卸売市場を監視するというのは、非常に重要だというお話だったのですが、そもそも卸売市場ができるのかなということが疑問というか、難しいのではないかと思っていまして、その点についての先生のお考えを聞きたいということが1点。

それから、38ページのところに、託送料金認可申請の各ガス会社の査定項目の内容と数字が書いてあるのですが、この中で、総原価の中で、東京ガスがかなり今回、申請が前回に比べて多く、あと、東邦ガスが若干多いぐらいで、ほかのところは全体的に低く申請をされていたようなのですけれども、それをどのようにお考えでしょうか。

それから、事業報酬なのですが、これは各ガス会社によって事業報酬のパーセンテージが違うのですけれども、この事業報酬については、どのように考えたらいいのかということを教えてください。

○兵庫県立大学経済学部草薙教授 ありがとうございます。

まず、卸売市場ができるのかどうかということに関しましては、これは、経済産業省は、卸売市場を作るのが悲願でありますので、何とか作りたいということだと思います。LNGの先物取引市場とか、そういったものをウォッチしましても、余り取引の状況は芳しくないわけでありまして、うまくいくのかという疑問の声があるのも事実なのですけれども、今後、天然ガスシフトのようなことを本格的に目指すのであれば、多くのプレーヤーが存在すべきだし、玉(ぎょく)を得ることにものすごく難しいノウハウが必要なのであれば、それを持つ者が、まずは玉(ぎょく)を入れてきて、そして、グロスビディングのような形で、自社の玉(ぎょく)だけれども、市場に放出するというようなことをしてでも、市場を作るといった方向性が生まれるかもしれない。あくまでも可能性ですけれども、一応、経済産業省としては、作りたいと、悲願のように考えておられるように私は認識しております。しかし、事業者のほうは、余りそのようなことをするニーズがないのかもしれませんという状況であります。

それから、託送の認可申請の際に、例えば東京ガスのところで、いろいろと修正の行政指導を受けるというようなこと。これは、考え方が後出しのように出された部分もあって、国の考え方が一義的に定まった段階できちんと修正をされたのだと思いますので、例えば、大阪ガスのほうが特段のお褒めをいただいて、東京ガスが叱られたというような、面白くそういうことを言う方もいらっしゃるようですけれども、粛々と行政手続が進んでいったというのが実際ではないかと思います。

そして、事業報酬に関しましては、固定資産帳簿に報酬率を載せて、公正報酬をいただくという事業が導管事業なわけでありますので、その趣旨にのっとって、公正報酬率というものを設けて事業報酬を、事業者はいただくのみ。それを例えばコスト削減というような形でため込んで、余りにもため込み過ぎると、今度は引下げの要請が行政から来る。従わなければ命令されるという仕組みが今後整備されていくはずだと思っております。

○井手座長代理 それでは、長田委員。

○長田委員 私は、どちらかというと電気通信の競争のところをずっと見てきておりまして、いわゆる携帯電話が同じような形で、それまであった既存の事業者の中に新しい事業者が入ってきて、競争で一時的には料金の引下げ等が行われたけれども、結局は大手の事業者3社に集約されるような形で携帯の通信料金が高止まりしている現状で、また、新たな競争を何とかやらなければいけないというような状況に、今、なっていると思うのです。

今回のガスの関電さんの状況を見ていても、セット提案とか、付加価値をつけての提案という形で、我々消費者にそういう売り込みが行われると、結果的にはガス料金のコストを削減したり、低くするという競争にはならなくて、ただ客の取り合いのような形で、コストが最終的にまた消費者にかかってくるという心配を、ある意味、持っています。それは、LPガスのところでも、アパート全体を建てるときに、大家さんやそういうところに、全然関係のないエレベーター設備やエアコン等の機器を入れることを条件に、その入れたコストをガス料金から回収するというような仕組みが、現在、商慣行としてそれが行われていて、料金そのものの適正なあり方が消費者に非常に見えにくい形になっていると思うのです。そういう競争、そういう結果にならないようにするために、我々は何を見ていけばいいのかというところを教えていただければと思います。

○兵庫県立大学経済学部草薙教授 ありがとうございます。

今回の自由化に伴って、まず、ガス料金が下がるかどうかということについては、もちろん様々な競争が下げる圧力を生み出すはずと。実際に競争が起きなくても、見えない競争者が想定されることによって、事業者は料金の値上げができないということも含めて、料金が消費者にとって優しいものになっていくことを大変期待しております。

例えば、他の事業者のことで見られるようなこと、電気通信もそうですし、あるいは、海外でも、イギリスなどで実際に起こったことは、自由化後、料金が値上げされたということで、御懸念もあろうかと思いますので、自由化の世界でありますから、しっかりと事業者の動向、料金の動きというものをウォッチしていく必要があるのではないかと思います。セット提案にしましても、どういう思惑が背景にあってセットの提案がされているのかということを見抜く力が、消費者に求められているということではないかと思います。

一方、例えばオール電化料金などは、今でも非常安い料金体系で続いておりますが、そう簡単に、電気事業者は、オール電化料金体系を崩して値上げに持っていこうとはしません。それは、消費者の初期投資が大きいわけです。おうちの屋根に太陽光パネルを何百万とかけて設置しているという前提での電力供給だと。そうしたら、単価が安くなるということの正当性もあるではないかというようなことも言えるのかもしれません。様々な事情が背景にあってのセットであり得ますので、Win-Winの関係を目指して、事業者側と消費者側で綱引きをするなり、一定の緊張感を持って、いい関係を築いていっていただきたいということが希望であります。

○井手座長代理 ありがとうございました。

一応、予定していた時間が参りましたので、まだ御質問があるかと思いますけれども、質疑応答はこれまでとしたいと思います。

草薙先生におかれましては、朝早くから、本日は大変ありがとうございました。

○兵庫県立大学経済学部草薙教授 ありがとうございました。

○井手座長代理 それでは、事務局から今後の予定を含めて、お願いしたいと思います。

○丸山参事官 お手元に資料2というものを配らせていただいております。

こちらにつきましては、電力小売自由化に係るフォローアップ、それから、都市ガスの小売自由化に関する当面の検討課題につきまして、事務局としての案ということでお示ししたものであります。

前半部分におきましては、背景について記述しております。その下に、検討項目について何点か記しておりますけれども、これはあくまで現時点で事務局の案ということですので、今後、こちらの専門調査会での御議論を踏まえながら、適宜、加筆、修正という形でしていきたいと考えております。

具体的な検討スケジュールについてですけれども、1月キックオフから5月めどまでということで考えております。成果ということでは、こちらにつきまして、フォローアップの結果と注視すべき論点という形で取りまとめていきたいということで考えております。ただ、この間、関西電力等、前年もやりましたけれども、電力各社の電気料金値上げのフォローアップというものについて予定をしておりますので、そちらのほうを間に挟んでということで、こちらについては検討していきたいということで考えております。

説明については、以上でございます。

○井手座長代理 ありがとうございました。


≪3.閉会≫

○井手座長代理 そのほか、事務局から連絡事項がございましたら、よろしくお願いいたします。

○丸山参事官 次回の会合につきましては、確定次第、御連絡をさせていただきます。

なお、この後、委員間打ち合わせを行いますので、委員の皆様方におかれましては、委員室にお集まりいただければと思っております。

○井手座長代理 それでは、本日の会合はこれにて閉会したいと思います。

どうもありがとうございました。

(以上)