第22回 公共料金等専門調査会 議事録

日時

2016年11月9日(水)16:00から17:55

場所

中央合同庁舎4号館4階共用第4特別会議室(東京都千代田区霞が関3-1-1)

出席者

【委員】
古城座長、井手座長代理、古賀委員、白山委員、陶山委員、松村委員、矢野委員
【消費者委員会担当委員】
長田委員
【説明者】
東京海洋大学大学院 海洋工学系流通情報工学部門寺田教授
一般社団法人全国消費者団体連絡会河野事務局長
一般財団法人日本消費者協会松岡理事長
【事務局】
消費者委員会 黒木事務局長、丸山参事官
消費者庁 福岡審議官、澤井消費者調査課長

議事次第

  1. 開会
  2. 東京のタクシー運賃組替え案に関する有識者ヒアリング
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○丸山参事官 それでは、定刻になりましたので、会議を始めさせていただきたいと思います。

本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから、「消費者委員会第22回公共料金等専門調査会」を開催いたします。

本日は、所用によりまして、山内委員、それから、消費者委員会担当委員の蟹瀬委員が御欠席との連絡をいただいております。

まず、議事に入ります前に、配付資料の確認をお願いいたします。

議事次第下部のほうに配付資料一覧をお示ししております。

お手元の資料の中で、もし不足がございましたら、事務局までお申し出いただきますようよろしくお願いいたします。

なお、本日の会議につきましても、公開で行います。

議事録についても、後日、公開することといたします。

それでは、古城座長、以後の議事進行をよろしくお願いいたします。


≪2.東京のタクシー運賃組替えに関する有識者ヒアリング≫

○古城座長 それでは、議事に入らせていただきます。

本日の議題は「東京のタクシー運賃組替え案についての有識者ヒアリング」です。

本日は、3名の有識者の方々をお招きしております。

まず、東京海洋大学大学院の寺田一薫教授から学識経験者としての御見解をお伺いし、その後で全国消費者団体連絡会の河野康子事務局長、日本消費者協会の松岡萬里野理事長から、それぞれ消費者団体としての御見解をお伺いしたいと思います。

初めに、寺田教授から御説明いただき、意見交換を行いたいと思います。

寺田教授は、交通政策を主な御専門とされ、国土交通省に設置された新しいタクシーのあり方検討会には、ワーキンググループの委員として参加されていました。

それでは、御説明をお願いいたします。25分ぐらいでお願いいたします。

○東京海洋大学大学院寺田教授 東京海洋大学の寺田でございます。本日は、意見を述べさせていただく機会を設けていただき、大変ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

以下、資料1に基づいて御説明させていただきたいと思います。

いきなりですけれども、本日の議題の「組替え」という言葉にちょっと違和感を覚えたというか、初めて聞いたということがあります。しかし、例えば英国の公益事業料金の規制で、プライスキャップと言われているもののサブキャップとか、そういうやり方の中ではリバランスと言って、価格の再調整とか微調整という概念が頻繁に出てまいります。同様のものと理解すると、よくある議論といいますか、必要な議論のように思います。

それから、東京のタクシーが議題ですけれども、短距離の値下げについて余り情報がありません。本日は高齢化ということでは先を行っていると考えられる地方のタクシーの話とか、需要と供給条件の上で比較的似た交通機関と考えられるバスの話も少し混ぜて、お話させていただくことをお許しいただきたいと思います。

本運賃組替え案についての意見を先に申し上げました後、若干関係のありそうな周辺の問題について、加えたいと思います。

4ページ目ですけれども、まず最初、本運賃組替え案についての意見です。

現在のタクシー政策が規制緩和に移行している途中なのか、あるいは逆に再規制に行こうとしているのか、私自身は判断がつきません。いずれにせよ規制と規制緩和の中間のところにいると考え、物流の事例なども含めますと、参入規制のほうが残り、運賃規制のほうが軽くなるというのが国際相場です。その意味では、今回の運賃体系、運賃表の工夫をするといいますか、少し柔軟性を持たせるという方向性については、当然の方向性だと理解しております。

2つ目に、タクシーの需要を拡大していくということでは、部分市場といいますか、セグメントごとにいろいろなことをしていく必要があります。大きく分けますと、比較的中距離帯でタクシーのかたい需要がある一方で、短距離と長距離のほうには取りこぼしがあると考えられます。東京では余り積極的ではありませんけれども、長距離の割引をやっているところもあります。残された短距離のほうに課題があったといいますか、これまで見過ごしがあったと考えます。

3つ目ですけれども、成功しているケース、あるいは失敗しているケース、いろいろあるとは思うのですが、タクシーと競争する交通機関のほうで短距離の値下げ等の増収策がとられています。対抗上、タクシーも何もしないわけにはいかないと理解しております。例えば、乗合バスのほうですと、30年弱前に広島とか仙台のほうで距離制に移行するというのがありました。15年程度前に全国で主に1キロメートルから2キロメートルぐらいの距離帯の値引きをする、100円バス等の動向がありました。

それから、マイナーな例ですけれども、福岡の地下鉄とか多摩モノレールとか、鉄道・軌道系で1駅は100円にするというのもあります。あるいは、若干もとに戻っているところがありますけれども、京浜急行などの私鉄では、各駅停車の増発で、100円台前半で乗れるところを開拓するという動きもありますので、競合交通機関にあわせてタクシーの対抗ということも当然と思われます。

その上で、5ページですが、基本的には平均運賃といいますか、平均収入といいますか、それは仮に一定であっても、お客さんから見て割安感が出るような運賃体系を模索すべきで、その意味で短距離の運賃とか遠距離の割引を模索すべきと思います。

距離帯別の需要については、情報が残念ながらありませんけれども、例えば地方中核・中枢都市クラスのバスの運賃改定などを見ますと、短く見ても4キロメートルから6キロメートルぐらい、少し長目に見ると2キロメートルから10キロメートルぐらいのところは、少し強気でもよくて、その手前と先は割引をすべきという感じがあろうかと思います。そういう運賃体系に移行していくべきかと思います。特に1キロメートル以下のお客さんというのは、バスでもタクシーでも非常に少ないので、幾ら割引しても減収にならないといいますか、積極的割引をしていいのかなと思われます。混雑時間等の供給不足のおそれがあるとすれば、昼中だけ割引をするということも考えられるかと思います。

その辺を勘案しますと、今回の申請の初乗り距離の1,059メートルというのは、ほぼ適切な距離ではないかと思います。その一方で、初乗り運賃410円ということになっておりますが、それが適切かどうかは、割引の方向性は認めますけれども、ぴったりかどうかというのは、私には判断がつかないという感じでおります。

それから、90円刻み、80円刻みにするということがあるのですが、消費者のほうは、バスなどで大まかな距離刻みとか運賃刻みにだんだんなれてきているように思います。一部では北欧型運賃などと呼ぶようですけれども、80円、90円ということに余りこだわらなくてもよいのかなという感じもします。たとえば九州の西鉄の距離の長いバスは1,000円の次は1,500円に上がるのですけれども、そういうことにも消費者はなれてきているといいますか、混乱しないようになってきている。500円の次は800円などという運賃もありなのかなと思います。総じてですが、全体を勘案しますと、本運賃組替え案には賛成を表明させていただきます。

以下、時間の許す限り、少し関連する話を続けさせていただきたいと思います。まず、タクシーの運賃規制スキームといいますか、そのプロセス自体ですが、現在、いろいろな目的を組み込もうとしております。日本の国土交通省は、こういうことには大変器用といいますか、上手だとは思うのです。ただ、特に下限運賃のほうに、中小の事業者の保護だけでなくて、労働者の保護とか安全ということを組み込めるのかどうか、私は少し疑問を持ちます。それぞれのテーマごとに直接規制が原則ということです。上限のほうが、経営効率化とか消費者保護の観点から決まるということでは当然かと思いますが、いずれにしても、多くの目的を組み込み過ぎて複雑化しているということは否めないという感じを持ちます。

下限値の法的意味については、この場のテーマではないので差し控えますが、仮に上も下も確定した幅運賃か、あるいは下のほうが緩い幅運賃か、どちらをイメージした場合であっても、規制と規制緩和の中間段階で、幅運賃というのが海外の物流などを中心によくとられる仕組みなので、その枠組みは認めます。しかし、幅運賃と言ったときに、幅の中では完全に自由というのが基本なので、現在のタクシーのように、幅の中にもいろいろ制限があるという状態は、異常というのは言い過ぎですが、少し変わったことをしているという位置づけになることは間違いないかと思います。

具体的に言いますと、幅が非常に小さいということです。一般的には、幅というと20%とか上下各15%で、しかもだんだん広げていくというのが普通です。幅運賃と言いながら幅が非常に小さいという問題が1つあろうかと思います。

もう一つが、追い越し禁止と称して、短距離と遠距離で運賃が逆転するのを禁止する規制をやっていることです。これは、今回のような運賃の柔軟化に直面しますと、残念ながら邪魔な規制の仕組みと言わざるを得ません。撤廃していくことが好ましいのではないかと思います。どの産業でも、路地裏戦略みたいなものと表通り戦略みたいなものが必ずありますので、それを会社は選べないということになります。路地裏戦略みたいなものをとった場合に、短距離は強気がいいのか、逆に値引きがいいのか、ちょっと判断がつきませんけれども、会社のほうでその辺を選ぶべきではないか。外食チェーンとか航空などの他産業では、そういうことを企業が選んでいますので、タクシーでもそういうことを認めるべきだと思います。

7ページです。今回のような組替え型の運賃変更を促していくためには、運賃規制の運用をどういうふうにしていったらいいかという改善案に移ります。基本的に視点としては、乗合バスのような賃率、例えばキロ当たり何円といったものを決めて、一方で大まかな短距離の加算とか遠距離逓減の方針も決めて、下限をどうするかという問題は別にあるかと思いますけれども、そういうものを決めて、それによって消費者への説明、および今日行っているような規制プロセスでの議論を行うことが好ましいと思います。

運賃自体は、定額で規制するのが原則ですが、理論上の、運賃スケールのような概念を別に設けることが好ましいのではないかと思います。その上で、距離の刻み等はおおむね100円とかおおむね300メートルごとということを、別にガイドラインなどで示せばよいのではないかと思います。

それから、少し話が変わりますけれども、今回の組替え、特に短距離の割引につきましては、まず基本的には発地と着地が近い利用者、たとえば、自宅から近くの病院に通う利用者がいます。一方、鉄道などとの乗り継ぎでの長距離のトリップはありますけれども、駅と自宅間などタクシー利用距離は短い利用者、その両方を開拓することが必要です。量的には鉄道などとの乗り継ぎのケースのほうが多いと推測されます。鉄道など他の交通機関との乗り継ぎということを考えると、タクシーの追加の運賃を安くするだけではなくて、物理的なシームレス化というのも並行して行うべきです。これは車の両輪となるべき政策だと思います。

もちろん、タクシーのつけられる駅前広場を整備してということに時間がかかります。当面できることになりますと、例えば駅前広場のない私鉄とか、特に地下鉄の駅だと思いますけれども、乗り場を設置する必要があるかと思います。駅前広場がなければ、路上で一、二台分のスペースでもよいのではないか。少なくとも地下鉄の終点のターミナル駅にタクシーがつけられないなどの状態は改善すべきです。そういった駅の近くで、タクシーが路上で客待ちをして、お巡りさんが来ると一旦逃げて、二、三十分で戻るという目に余る状態すら見かけます。そういうことを改善すべきだと思います。

逆に収入を生まないタクシーの待機車両が駅前広場を占有しているケースも都内にはあります。そういったケースではスペースの一部をバスに開放して、占有許可自体には交換という概念がないのかもしれませんが、実態としてタクシーとバスがスペースを交換することで両者の利便性と増収になる余地があるというのが私見です。

関連して全国的なタクシー一般的の話です。準特定地域、特定地域の許可により、新規参入と増車を厳しくする地域の問題が別にあるわけですけれども、前から気になっていたのは、その条件の中に、法令違反又は事故発生率が全国平均より高いという条件があり、これは準特定地域でも特定地域でも共通です。一般的には、参入構造を固定して事業者の入れかわりがないようにするという場合は、サービス質が高くて、今の事業者でよいということでないと、それができないはずなので、あるべき姿と逆になっているということが気になります。当該条件を外すことができないかなというのが個人的な意見です。

実は似た制度で、交通経済学で有名なのが、イギリスのバスのクオリティー・コントラクトと言って、品質契約と訳している制度です。しかしこれは逆で、自治体が高サービス水準で、今の会社で最長10年間入れ替わりがなくてもいいと思ったときに発令できるものです。日本のタクシーの準特定地域、特定地域の問題の規定が正反対というのが非常に気になります。イギリスのバスの品質契約制度は、実施例はないのですけれども、2000年交通法という大きな立法の目玉になる仕組みとして作られたものです。

それから、一般的な委任された規制、事業者に調整を委ねるタイプの規制でよくあることですが、時限措置である規制を卒業した後、どうするのかという心配もあります。

10ページ目ですけれども、今、関係者は運賃の話だけをして、実車率については経年的な変化だけにしか注目しないという状態です。実車率は非常に微妙なもので、特に待ち時間という形でサービスに影響するものですので、もう少し慎重に最適化といいますか、望ましい実車率がどのぐらいかということを真剣に考えるべきではないかと思います。当然ですけれども、車両数削減というのは、実車率を引き上げます。空車が捕まりにくくなりますので、その分、利用者の待ち時間増加が起きます。

タクシー利用者の1分当たりの価値がどのぐらいかというのは、調査がないのですけれども、例えば都市鉄道などの事業評価などに使っている数字がそのまま当てはまるとしますと、1分当たり三、四十円ということになります。あるいは、東京のタクシーの利用者はもっと高い可能性が強いと思います。また、急いでいるときにタクシーに乗るということもあろうかと思うのですが、1分当たり三、四十円ぐらいだとしますと、例えば10分の待ち時間増があると、数百円の値下げの分の消費者の利益というのは吹き飛んでしまいます。今回、730円が410円に、最大320円引き下げられるということなのですが、実車率の動きによっては、その分が消えてしまう可能性があるということは考えるべきではないかと思います。

あと、接客等のサービスの質自体は、規制緩和前よりは格段に向上しています。実際に東京・神奈川のタクシーランクの評価に参加させていただいているところでは、年々厳しくしていかないと絶対評価が維持できないという形になっています。規制緩和前のことを皆さん、忘れてしまっていると思いますけれども、サービスの質自体はかなり上がっていて、規制緩和の持つその分のプラスの効果というのは正当に評価すべきではないかと考えます。

ちょっと直接関係のないお話も含まれるのですが、11ページ目、最後のところになります。今回の短距離値下げに伴う運賃組替えを機会に、タクシーのサービスをよくしていこうということを考えますと、幾つか気をつけるべきことがあるように思います。

1つ目ですけれども、都区部・武三では運賃のブロックと営業区域が一致していると思うのですけれども、発地又は着地がその中になければいけないという、タクシーが営業するエリア規制があります。エリアとエリアの境目の近くに行きますと、どうしても帰りは空車で戻らなきゃならない確率が高まるので、タクシーがエリアの境界のほうに近づかない、つまりタクシーの空白地域が生じるという問題が一般的にはあります。東京23区と武蔵野・三鷹のケースですと、恐らく営業区域の境目の半分ぐらいが川、つまり多摩川と江戸川と一部荒川なので、この種の問題がほかの場所よりは発生しにくいのですけれども、問題が起きていないわけではありません。

あるいは、神奈川県の大船駅みたいに、営業区域の境目の真上に大きなターミナルがあるといったケースも東京にはないので、ほかの地域ほどには問題は深刻ではないと思うのですが、一般的には境界線のところで車が来ないという意味で供給が過小になってしまうケースが考えられます。需要開拓という意味で営業区域を少し重ねるということが必要な施策ではないかと思います。ほかに原因があるという説もあるのですが、例えば川崎の幸区辺りなど、東京周辺でタクシーの利用が少ないエリアが実際に存在するという問題は起きています。

それから、もう一つ、短距離の利用促進は好ましいことだと思うのですけれども、その結果として心配されるのは、午前のピーク時の供給不足です。特に朝遅めの時間の通勤でタクシーを使われる方が、最近、随分増えておりますし、それから、地方のタクシーですと、需要のかなりの部分が午前中の通院です。今後、東京でもそういった通院需要が増えていく、あるいはタクシーが取り込んでいかなければいけないとすると、午前中はタクシーが捕まりにくい状況は支障になります。タクシーは通院には使えない乗り物だねという消費者の認識がはびこることは極めて好ましくないと思います。

午前の供給不足の問題に関しては、勤務シフトの問題との関係が大きいのですけれども、その辺、人為的な問題も絡んでいますので、何とか解決していただきたいといいますか、気をつけていただきたいと思います。

それから、最後、とりとめもない話で、余り具体的でなくて恐縮ですけれども、大まかにキロ当たりの運賃ということで見ますと、タクシーと他の交通機関、その中でも比較的高いのが乗合バスだと思うのですけれども、それでも両者の間にかなり大きな開きがあります。2キロメートルから数キロメートルぐらいまでの距離帯のキロ当たり運賃をとってみますと、タクシーとバスでは10倍から数倍ぐらい差があるので、その範囲でいろいろな新規サービスの余地があるということは間違いないことだと思います。世の中一般に存在する新しいサービスは、隙間といいますか、そういうところから生まれることが多いですから、タクシーとバスの間にいろいろな新規サービスの余地があると思います。

タクシーを今よりも安い乗客当たりコストで運行しようとすると、乗合の形をとらざるを得ませんので、乗合タクシーなどが隙間を埋めるべきだと。ちなみに英語ですと、タクシーの車を使ったバスという意味でタクシーバスと言うと思うのですが、そういうものに課題があると思います。許認可上は、セダン型タクシー車両を使ってもバスとなりますので、その辺のいろいろなサービスが出てくるようにするためには、基本的には乗合バスのほうの規制を柔軟化すべきです。乗合バスでも区域運行という形が認められて、その隙間を埋められるようになってはきましたけれども、乗合バスの運行計画について、もう一段自由化が必要だと思います。

具体的には、おおむねの時刻表みたいなものが提示できるとか、タイムウィンドウと言うのですけれども、何時ごろ来ますとか、そういうことを認めていく必要があるかと思います。

大体お時間になりましたので、以上で終わられていただきます。ありがとうございました。

○古城座長 ありがとうございました。

意見交換に入る前に、事務局から山内委員のコメントについて説明があります。山内委員は、日程の都合により、専門調査会には出席されておりませんが、交通経済分野について長年研究されている方なので、御意見を参考とするため、事前に事務局からコメントを聴取したところです。

それでは、事務局から説明をお願いいたします。

○丸山参事官 お手元の資料4、右肩のほうに付されている資料があるかと思います。そちらを御覧いただければと思います。タイトルといたしまして「東京のタクシー運賃組替え案についての山内委員のコメント」ということになっております。以下、読み上げさせていただきます。

  • 日本のタクシー運賃は、長い間の慣行に基づくもので必ずしも合理的な運賃体系ではない。現行の初乗り運賃は国際的に見ても標準的とは言えないものなので、これを正していく方向の改定は、基本的には推進すべき取組と考えられる。
  • 今回提案された東京のタクシー運賃組替え案では、初乗り運賃が安くなる一方、一定距離以上では現行より運賃が高くなる。このため、引き上げとなる距離帯での需要動向は注意深く見守る必要があるが、方向性として、負担力のある利用者に一定の負担をしてもらいつつ、潜在的な利用者が多くかつ価格弾力性が大きいと考えられる距離帯の運賃を安くするというのは、合理的な運賃改定と言える。
  • ただし、タクシー運賃は、利用後に事後的に確定する性質のものであるため、消費者が予め料金体系を的確に把握していることが非常に重要となる。新運賃の導入は、消費者への周知を徹底するためのしっかりとした広報活動が行われ、情報の非対称性が少しでも小さくなることを前提としたものでなければならない。
  • タクシー運転手の賃金水準は非常に低く、社会的問題の一つと言える。運転手が少なくとも現在の収入を維持していくためには、今回の運賃組替えが、業界全体にとって収益中立であることが必要である。また、現在タクシー事業にかかる経費の約7割が人件費と言われているが、運賃組替えにより適切なタクシー収入の労働分配が崩れるようなことがあってはならない。
  • 東京では、かつて一部の事業者により、初乗りの運賃引き下げ及び距離短縮を行う「たまごっちタクシー」という試みが行われていたが、参加台数が少なく、定着しなかった。新運賃の導入に当たっては、当時の実績についての検証を行うことが重要である。

以上でございます。

○古城座長 ありがとうございました。

それでは、寺田教授からの御報告に基づきまして、質問や御意見のある方は御発言をお願いいたします。いつものとおり、前の名札を立ててください。

陶山委員、どうぞ。

○陶山委員 どうもありがとうございました。少し教えていただきたいことがございますので、質問ということでお聞きいただければと思います。

今日、寺田先生の資料の4ページで先生の御説明がありましたが、長距離の利用者については、少し割引の形で見ていく必要があるとおっしゃったかと思います。中距離は利用者をしっかり捕まえているので、これでいいのではないかということであり、今回、短距離については、利用しやすい形になる。ただ、今回の変更の初乗りとその後の運賃の段階的な加算によって、長距離のところはこれまでよりも値上げになってきますけれども、先生がおっしゃいました割引を検討していく必要があるというのは、今回の変更の線上なのか、また別の商品としての御意見なのか、その点を教えていただきたいことが1つ。

もう一つが、この距離とかの運賃だけでなくて、首都圏ではタクシーを呼びますと、はっきり私も存じ上げないのですが、迎車料金といいますか、300円といった料金が加算されるということです。それは、効率から見て、客待ちをしているのと、流しているタクシー、呼ばれて行くタクシー、大きく3種類ぐらいを見たときに、逆にお客さんに呼ばれて行くところは効率がいいのではないかと思えたりするのですが、その迎車料金は適切なのかどうなのか。もしくは、効率がいいのであれば、迎車料金がなくなっていけば、利用者側からすればもっと使いやすくなっていくと思います。

特に、前回、ハイヤー・タクシー協会からの御説明のときにも、高齢者とか病院に通う人、それから障害者も含めて、どうしてもタクシーを利用しなければいけない、せざるを得ない人たちにとっては、長距離の部分というのは非常に負担になってくるのではないかということと、プラス、迎車料金は何とかならないだろうかということで意見が出ておりましたので、そこを少し教えていただければと思います。

以上です。

○東京海洋大学大学院寺田教授 ありがとうございます。

基本的には、2つの問題は共通しています。適度な競争の中で自主的な値下げが進んでいくことが好ましいと思いますし、今の規制が長距離割引や迎車料金引下げを大きく妨げているわけではありません。今回、事業者のほうで長距離を少し上げたいと言っているのは、ロードファクターが低下していることに伴って、コストは若干しか上がっていないにしても、平均費用が上がっていることをカバーしたいという意向によるものです。その点自体は正当なので、基本的には事業者側のその意向に従ったうえで、申し上げたような適度な競争の中で自主的に運賃を下げる会社も増えてくることを希望します。長距離については、若干の値上げなので、値上げしなくてもいいような気もしないでもないですけれども、今回の申請についてはそのように考えます。

迎車料金については、既に御承知のように、Uberといいますか、ライドシェアなどとの特に競合する分野になります。ライドシェアをどう規制するか分かりませんけれども、仮に法的には禁じられるにしても、グレーゾーンにそういうサービスがあるという脅威の中で、もっといろいろなイノベーションが出てくることが予想されます。そうした中で迎車料金の加算額が減っていくことが好ましいと思います。例えば、迎車予約すれば長距離割引が受けられるようにする、つまり迎車料金と長距離割引をバーターする手もあるかと思います。そういう広い意味でのイノベーションが進むことを希望します。

○古城座長 井手委員、どうぞ。

○井手座長代理 2つ質問があります。

1つは、5ページで、山内委員のコメントにもありましたけれども、短距離は価格の弾力性が大きいということで、これを730円から410円に引き下げるということで、寺田先生は、ここの部分というのは減収になるとお考えですか。それとも、弾力性が大きいので、引き下げることによってかなりの収入増が見込めるという意味で、増収になるのではないかということについて御意見を。ということは、この410円というのが適切かどうか不明だということですけれども、先ほど冒頭にあったワーキングとかで、410円であれば長距離と相殺してプラスマイナスゼロということだったのですけれども、その部分が増収になるということについて、どういうお考えか。

もう一つは、410円というのと現行の730円というのが並行して運賃体系として存在し続けるということについて、1,400円を超える人は多分、現行運賃のほうがいいという選択をするでしょうから、730円のほうを選ぶということもあると思います。そういう二本立てというか、運賃の自由化が必要だと言われているので、そういうこともあってもいいのではないかという点について、どうお考えでしょうか。

○東京海洋大学大学院寺田教授 ありがとうございます。

需要の価格弾力性についてはデータがないところの山勘で推測せざるを得ません。まして100メートル単位の距離帯別の需要の価格弾力性は分かりませんので、その前提です。一方バスではそういう経験ないわけではないので、そこから類推するしかないということです。ものすごく短い距離帯については増収になる。なぜなら現状で乗っている人が非常に少ない。特に1キロメートルから手前ではそうなるでしょう。特に、700メートルぐらいのバス停2つ分ぐらいのところについては、現況で乗っている方がほとんどいないという意味で増収になるかと思います。一方で、1.4キロメートル辺りに距離帯別利用者数の山があるとのことですけれども、そこら辺まで行くと、恐らく減収になるかと思います。

ですから、ものすごく短い距離帯をどのぐらい獲得できるのかということに依存すると思います。410円でも乗り捨て部分が結構あるというか、そういう利用が開拓できるかどうか。並行してシームレス化みたいなことをやらないと、駅の階段を昇り降りして、不便な乗り場まで行って、タクシーに乗って700メートルで降りるという利用者を大きく増やすのはなかなか難しいと思います。物理的シームレス化施策を並行してやるべきということになります。全体的には残念ながら、増収・減収については、距離帯別に違うだろうということしか言えません。

一方では、もしかすると、短期的に需要の価格弾力性の絶対値が1以上で減収になっても、マイカー所有率を抑制できるなどで、長期的には増収という可能性もあると思います。需要の価格弾力性というのは一般的には直前と直後の比較なのですけれども、それを10年といったスパンで見たときに異なった結果になるということがあります。ちなみに、バスの短距離運賃がらみのイノベーションというのは、どちらかというとそういうことを期待して実施されているケースが多いと思います。

それから、二本立てで、つまり二重運賃についてですけれども、これは歴史の中に教訓があります。1996年申請で97年実施でしたか、340円タクシーがありまして、たしか4分の1程度の車が半額程度の340円まで値下げして、4分の3ぐらいのタクシーは高いままだったと思うのですけれども、そのぐらいの台数比率だと効果が出ない。たまたま安い車が捕まったらラッキーだったというだけで、それで終わってしまうということだった。今回、申請自体がかなり多いようですけれども、短距離値下げタクシーの比率が高まらず二重運賃化すると、効果が減殺されてしまうということが心配されるかと思います。

○古城座長 古賀委員、どうぞ。

○古賀委員 御説明、ありがとうございました。

最初に先生が組替えという用語に非常に違和感があるとおっしゃられて、私も同様に感じていたのですけれども、今回、引き上げとなる距離帯での価格の需要動向を注意深くという、山内委員からのコメントもあるのですけれども、今回、初乗り運賃を下げて、距離を短縮しながら上げることによって、中間的なところ以降が実質的に値上げになると消費者としては受け止めているのですけれども、これがタクシーの料金規制自体が正しいかどうかとか、それから、今回の料金の設定が妥当かどうかという問題はあると思うのですが、実質的に運送収入が実績年度と同じものを確保した上で、その中でタクシーの料金を実態に即したというか、よい方向に持っていくというところで非常に工夫が必要なところだと思うのです。

先生が御説明いただいたところで2点教えていただきたいのですけれども、1つは、5ページで、初乗り運賃410円が適切か否か不明だとおっしゃって、大まかな距離運賃刻みにしてもよいのではないかという御意見だと思うのですけれども、ここは今の下限料金規制とぶつかるようなことはないのでしょうかということと。

もう一つ、11ページで、価格/サービススペクトラムとして見る場合に、1キロメートル当たりのタクシーが350円から400円という算定をされていらっしゃるのですけれども、これのデータの根拠を教えていただきたい。実は、先回のこの調査会でも申し上げたのですが、基本料金を1メーター換算しますと、基本料金が365円から387円と、実質10%近い値上げになりまして、加算のほうも、メーター換算すると321円から337円と実質的には値上げになると感じているのですけれども、ここの1キロメートル当たりタクシー350円から400円という算定と、実際にはどのくらいの区画が適当だと考えていらっしゃるかということを教えてください。

○東京海洋大学大学院寺田教授 ありがとうございます。

個人的な印象としては、今回の組み上げで値下げと値上げとありますけれども、値上げのほうは閾値と言うとちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、いろいろな計算上、生じたものなので、あるいは距離刻みも変わるし、時間加算の刻みも変わりますので、計算上のものと考えてもよろしいのではないか。だから、組替えというよりは、短距離の値下げ案で、それに伴って運賃自体が微調整されるというくらいの印象です。しかし確かに値上げがあることは間違いないので、値上げになっている距離については、サービスの改善か、あるいは届出による営業割引の工夫など何かはすべきでしょう。

あと、下限とぶつかるかどうかです。下限の問題は非常にデリケートなのですけれども、今回、運賃改定をするわけなので、上限も下限も動く前提です。100円刻みにしようと500円刻みにしようと、そういう下限の設定の仕方ということで議論するのであれば、それでいいのではないかと思います。

あと、数字がラフ過ぎて恐縮です。11ページの大まかな運賃スケールなのですが、バスでもタクシーでも、短距離に乗ったときはものすごいキロ当たりの運賃を払っていることになるので、数値が捕まらないのですけれども、大体50円、100円ぐらいの刻みとして捉えたときに、運賃水準に開きがあるよということをお示ししただけなので、350、400という数字には余りとらわれずに、バスとの間に開きがあるというところを見ていただければというのが個人的な意図になります。おっしゃるとおりではないかと思いますが。

○古城座長 次、矢野委員、どうぞ。

○矢野委員 御説明、どうもありがとうございました。

私は、6ページで少し質問させていただきたいと思います。先生のほうから、先ほど運賃規制全般はいろいろな目的を組み込もうとしていて、複雑過ぎているというお話がありましたけれども、今回の場合は消費者保護のほうがどちらかというと前面で、労働者保護や安全のところがどうなのかと受け取ったのですけれども、今回の組替え運賃については、その辺の労働者保護とか安全のところでもう少し具体的に教えていただければと思います。

経営の効率化もとても大切なのですが、先ほど先生の御回答の説明の中で、減収と長期的な増収というお話もありましたけれども、私も減収を少し心配しております。一方で、運転手の人たちの労働環境といいますか、その辺も心配しているところです。本当に経営的に成り立つのだろうかどうかというところも含めて、御意見をお聞かせいただければと思います。

○東京海洋大学大学院寺田教授 ありがとうございます。

基本的には、申し上げたように、上限が経営効率化の観点と、それから消費者保護の観点から主に決まっていて、下限は確たる下限なのか、緩い下限なのかが争点ですけれども、一般的には中小企業等の事業者保護の観点から決まるというのが普通です。しかし、タクシーの場合には、歩合制の賃金体系が避けられないといいますか、ほかの形をとるのが非常に難しいということで、労働者保護というか、賃金の話が入る。それから、貸切バスのほうがそういう議論が盛んですけれども、安全確保のための運賃規制、特に下限という話が入ってきているのかなと思うのです。

ただ、労働者の保護であれば、申し上げているように、労働時間とか最低賃金とかで直接やるべきものなので、運賃スキームの中にそれを持ち込むというのは、メーンストリームの議論ではないと理論上は言えると思います。安全も直接規制すべきなので、日本の場合、それをタブー視するという風潮があって、一般的に運賃規制が複雑になりがちで、現代のタクシーでもそういう議論になっているのかなという印象です。

したがって、まとめますと、労働者の保護とか安全を軽んじるものではありませんけれども、今回のような議論は別な場でやったほうがいい。実際に、現在の下限の決め方の中で、ただのコストでなく安全確保・法令順守後のコストが明確に盛り込めないのかという議論を別の場でやっておりますけれども、余り簡単ではありません。そういう印象を持っております。

○古城座長 陶山委員、もう一回ですね。どうぞ。

○陶山委員 今の議論に、私も非常に疑問に思っていたので、加えて御質問したいと思います。

今回は運賃の議論ということですが、前回、タクシー協会のほうから御説明のところでも、一般的な労働者との賃金格差が年収にして300万円ある。労働時間についても、私たちから見れば非常に長い時間であり、変則の労働時間で働いておられて、しかも経費の7割を占めている人件費が変動費扱いになっている。今、先生もおっしゃったのですが、主に歩合制でやられているということなので、労働者保護というのは直接的にこの課題で扱わないといけないという御意見で、私も多分そうなのだろうと思うのですけれども、ここをしっかりやっていくと、当然それは運賃にもはね返ってくる課題だと思います。

それはそれとして、今後のきちんとした議論が必要だと思いますが、山内委員も出されていますように、今回の運賃組替えによって、収益全体が減るかもしれないという可能性も持ちながらの実施であっても労働分配率が崩れるようなことがあってはならないということだと思います。もし、そのような可能性があるとすれば、それに歯止めをかけるような手立てというのは何か考えられますでしょうか。

○東京海洋大学大学院寺田教授 分配の問題に規制で介入するというのは、テクニックとして恐らく無理ではないかと思うのです。ただ、A型、B型とか、歩合制のバリエーションの中で、ちょっとよろしくないものを、問題があるものをなるべく減らして、B型をAB型にといった具合にバリエーションを増やしていくということはあるのかなと。いろいろな働き方をしたい方が増えてきていると思いますので、そういうニーズに合わせていくということは必要ではないかと思います。

労働時間に関しては、昨今あちこちで問題になっているように、基本的に直接規制すべきです。特にタクシーの場合、ほかの産業と違いまして、直接安全性にかかわります。過労運転の巻き添えになって利用者が一緒にけがをしたり、死んだりということにつながります。交通産業の場合の労働時間の規制というのは、一般産業よりももっと厳しくすべきなので、そういうふうにしていただく。つまり、監査などの重点を移していただくということが必要だと思います。

○陶山委員 今のところ、人件費の歩合の部分は、固定の部分も全くないわけではないと思っていますが、どの程度の割合でしょうか。

○東京海洋大学大学院寺田教授 調べないと数字は分かりません。

○陶山委員 では、国土交通省のほうで分かれば教えてください。

○東京海洋大学大学院寺田教授 どの賃金タイプでも、最低賃金は払わなきゃいけないので、ある金額までは固定給になるのです。その上でその先の話だと思います。

○古城座長 いかがでしょうか。

ちょっと伺いたい。タクシーの実車率は、ここのところ低下して、最近、改善していますけれども、適切な実車率というのはどうなのでしょうか。前回のお話ですと55%ぐらいだと業界の方が。何%ぐらい。

○東京海洋大学大学院寺田教授 ちょっと分からないですけれども、40%後半までいくと、かなり捕まりにくい。

○古城座長 40%は捕まりにくい。

○東京海洋大学大学院寺田教授 基本的には、午前と午後の輸送の方向性などがありますので、50%が上限というか、そのぐらいの感覚で捉えられていいのではないかと思います。業界には怒られるかもしれませんけれども。40%台半ばぐらいは異常ではありません。

○古城座長 そうすると、それを基準にタクシーが過剰とか過剰でないとか言う。

○東京海洋大学大学院寺田教授 いや、それは何とも言えないですね。航空でも座席利用率70%台を超えると予約が入りにくくなるということがあります。同様に、どの辺から利用者のタクシーの捕まりにくい感が急に上がるのかというのは、ケース・バイ・ケースです。流しているか、駅待ちが多いか等によりますので、一般的には言えないと思います。

○古城座長 もう一つ、タクシーの経営は赤字だと言われて、タクシーの台数も多いと言われているのですけれども、普通の産業だと、赤字ですと退出が進んで供給が減るはずですけれども、タクシーの場合はそうなっていないのはなぜですか。1つは、実は赤字じゃない。もう一つは、迎車が来るまで待っている。

○東京海洋大学大学院寺田教授 他産業を含めて、退出のポイントを見極めるというのは意外に難しいことだと思います。タクシーの場合、恐らく意外に固定費というか、車庫とか、そういう投資があって、その分がサンクしてしまっていると思います。つまりそのサンクコストが退出決定に関する計算から除外されて、赤字でも出ていかないということがあるのではないか。政策的にそういう会社を市場から追い出すという政策は考えられまして、例えばランク制度でCランクという、一番低いランクを連続してとると公表する。そうすると、事実上、金融機関から圧力をかけられてしまうということが起きるように聞いているのですけれども、そういうものをもっと厳しくして促すという手はあるかと思いますが。

○古城座長 井手委員、どうぞ。

○井手座長代理 タクシーの場合、運賃競争とサービス競争等を通じて自然淘汰される仕組みがない。これが私は決定的に問題だと思っています。

もう一つは、会社自体は多分もうかっているのだと思います。平成14年に規制緩和をして、再規制するということがあったときに、労働条件の改善というのが1つ目的だと言われていたのですけれども、実際にはほとんど改善されていない。それは、要は一生懸命ドライバーさんが稼いでも、会社が半分ぐらい持っていくので、月35万円ぐらいになるという仕組みがずっと続いているので、こういうことをやっても一向に労働者の待遇改善にはつながっていないということについて、どういうお考えですか。

○東京海洋大学大学院寺田教授 先ほどの陶山委員の御質問への回答と同じようになってしまうのですが、基本的には歩合制であっても労働者も会社もハッピーになるような、リスクシェアというのですか、それを探すべきです。今のところそれが見つからないという感じだと思います。無理かもしれませんけれども、それを一生懸命探すしか解決はないのだと思います。

例えば、完全な固定給だと会社はうまくいかないので、適度なインセンティブというのですか、賃金の対売上比の傾斜の仕方を見つけることです。ある売上に達したら歩合率が上がるとか下がるとか、そういうことのイノベーションをしていって、答えを見つけるしかないと思います。単純な固定給型がサステナブルでないということは事実なので、その前提で、みんなで知恵を出し合うしかないと思いますけれども。

○古城座長 いかがでしょうか。

古賀委員、どうぞ。

○古賀委員 国交省の方にお聞きすべき問題かもしれないのですけれども、今回、組替えという申請で出てきているわけですが、運賃改定の申請の場合と組替えの申請というのがちょっと違うようですが、組替えの申請の場合は原価計算書の添付が省略できるとなっていて、改定の場合は原価計算書というものが当然必要だと思うのですけれども、そこの違いというのを分かる範囲で御説明いただけたらと思います。

○東京海洋大学大学院寺田教授 こちらではちょっと分かりかねます。幅の中の値下げなら要らないですけれども、今回の申請自体が組替えという言葉なのが、ただの改定なのかも分からないので、済みません。

○古賀委員 組替えに該当しない場合は改定になるようですけれども、今回は組替えだということの説明がよく分かりません。

○東京海洋大学大学院寺田教授 私の個人的な理解では、幅の中での値下げと、それ以外とが2種類あるのではないかと思うのです。

○古賀委員 そこをしっかり消費者に説明していただかないと、今回の組替えは消費者にメリットがあるのかどうか分からないと思います。

○東京海洋大学大学院寺田教授 でも、単純な値上げよりはいいですね。上がるところ、下がるところ、両方あるので。ただ上げるよりも、上げて下げるほうで会社側に大きな説明責任を求めるようになってしまうと、また値上げだけになってしまいますから。理想としては、組替えという言葉があるとすれば、値上げよりは組替えのほうを説明責任を軽くしてあげないと、料金体系のイノベーションが進まないような気はしますけれども。

○古城座長 丸山参事官、どうぞ。

○丸山参事官 古賀委員の御要望については、事務局のほうを経由して国交省のほうに伝えたいと思います。

○古城座長 あと1つくらい。

○陶山委員 先ほどの私の質問も、国交省に答えていただいていいですか。

○丸山参事官 済みません、よく聞こえませんでしたので、もう一度お願いします。

○陶山委員 先ほど私が質問しました固定の部分と歩合給の部分の割合がどの程度なのか、教えていただきたい。

○丸山参事官 あわせて、事務局を経由してお問い合わせさせていただきます。

○古城座長 ほか、いかがでしょうか。

ほかにございませんようなので、寺田教授に対する質問等は以上とさせていただきます。お忙しいところ、どうもありがとうございました。

○東京海洋大学大学院寺田教授 どうもありがとうございました。

○古城座長 続きまして、全国消費者団体連絡会の河野事務局長、日本消費者協会の松岡理事長から、それぞれ御説明いただき、意見交換を行いたいと思います。

それでは、河野事務局長から御説明をお願いいたします。15分程度でお願いいたします。

○一般社団法人全国消費者団体連絡会河野事務局長 皆様、こんにちは。全国消費者団体連絡会事務局長の河野でございます。

本日は、東京のタクシー運賃組替えにつきまして、消費者の立場からの受け止めと意見を申し上げたいと思っております。簡単な資料を用意してまいりましたので、それに沿ってお話させていただきます。

2ページを御覧ください。

本日は、この場に私どもの会員の関係者の方が非常に大勢いらっしゃるということで、ちょっと緊張もしますけれども、まず、私の所属しております全国消団連ですけれども、1956年に創設されまして、本年12月で60周年を迎える消費者団体の連絡組織でございます。2013年に法人化し、現在、全国的に組織展開している消費者団体が16、都道府県単位の消費者団体連絡組織が26、食の安全や子供の権利保護など専門家集団5の47団体が会員でいらっしゃいまして、消費者にかかわる広範な問題に対して連携・協働して活動を進めているところでございます。

そこで、本日のこのテーマについてですけれども、実は組織内でこのことについて共有化しているというよりは、この次に申し上げますけれども、私がタクシーのあり方に関しまして、国土交通省の検討会の委員を務めていたこともございまして、そういった背景をもとに、この受け止めをお話ししたいと思っております。

では、スライドの3を御覧いただければと思います。

今回の議題でございます東京のタクシー運賃組替えについてですけれども、まず運賃制度そのもののあり方については、先ほど寺田先生も、このことについてはなかなかコメントしづらいとおっしゃっていましたし、山内委員の資料4を拝見しても、長い間の慣行に基づくものでと書いてございまして、この運賃制度そのもののあり方については、幅運賃の決め方には一定のルールが置かれていることは当然理解しておりますし、それから、事業区分が全国を地域に分けて決められていることも理解しております。

そういったことを含めて、このやり方が果たして妥当かどうかを判断する十分な知識を持っておりません。ただ、上限運賃というのは、当然のことながら消費者を保護するため、それから、下限運賃というのは、事業の維持のためと理解しているところでございます。

さて、今回、私自身、タクシーを利用する消費者の立場に加えまして、この間、国土交通省自動車局において、交通政策基本計画に基づいて交通政策の長期的な方向性を検討する場に消費者代表として加わってまいりました。1つは、豊かな未来社会に向けた自動車行政の新たな展開に関する小委員会、もう一つは、新しいタクシーのあり方検討会でございます。

この間、タクシー事業における様々な課題、先ほども寺田教授との意見交換の間でいろいろやりとりされていましたけれども、例えば都市部において流しの営業があったり、タクシー乗り場が設置されていたり、最近ですとスマホでタクシーを呼んだり。タクシーの営業形態と私たち消費者とのアクセスといいましょうか、接点は本当に様々でして、先ほどから、なぜ自然淘汰がされないのかという御議論がされていましたが、そもそも消費者側は、タクシーの営業形態から考えると選べないのです。タクシー乗り場に並んだら、来たタクシーを、私はこの会社は嫌だから、次のものにするというわがままはききませんし、急いでいるときに流しで拾う場合は、来たタクシーに乗らざるを得ない。

そうすると、乗ったタクシーがサービス面とか接客面で非常に自分の満足に届かなかったとしても、それをこちらで排除していくだけの社会的なルールとなっていないわけです。つまり、公正な市場の仕組みが、タクシー事業の現状のあり方には余り働いていないと感じています。まず、利用者側がタクシーを選べない状況である。そのために、ドライバーの皆さんや会社の意識改革に余りつながっていないのではないかと感じています。

また、賃金の相当部分が歩合制であり、事業継続のために効率化を図ろうとしますと、どう考えてもドライバーの方の賃金や労働時間等にしわ寄せが来ることというのは想像できるところでございまして、事業構造上の課題というのも脈々と存在しているということは明白でございます。

更に、平成13年の規制緩和以降、タクシー車両は一気に増えました。更に、リーマンショック以降、タクシー需要は非常に冷え切りました。そのことへの対応策として、タクシー適正化・活性化法の施行、更には、より強制力のある、これは私としてもどんなものだろうと思ったのですけれども、新規参入はなし。それから、事業者間で相談した結果、公正取引委員会の独禁法にはかからないで配車数を決められるという、非常に強制力のあるタクシー特措法というものが施行されています。そういった外部の力によって、業界の窮状を何とかしようという動きになっていると感じているところです。消費者から見ますと、タクシー業界は自らの事業の行く末に対して、自分の手で本気で何とかしようとしない、他力本願の組織としか思えません。

そうした内向き指向の業界に想定外の環境変化が起きました。御存じのとおり、情報通信技術の進展によるUberやLyftなどのライドシェアの波と、技術革新による自動運転の波、どちらも世界的な流れを持った大波だと思っております。

こうした中で、本年4月、私が委員を務めましたタクシーのあり方検討会の報告である「タクシー改革プラン2016~選ばれるタクシー~」において、厳しい経営状況にある事業者が中長期的にサービス提供を維持できるようにするためには、生産性向上や人材の確保、利用者利便等において、業界自らが変わる努力が必要であると結論づけています。他力本願から自力での変革へ、タクシー業界は待ったなしの状況に立たされているというのが、2つの検討会に参加した私の認識でございます。

次のスライドを御覧ください。

前置きが非常に長くなりました。そこで、今回の提案についてでございます。東京地区における初乗り運賃の組替えは、値下げなのか、それとも値上げなのか。私自身は、正直なところ、どちらとも判断がつかないと受け止めております。この提案は、見かけ上は運賃にかかわっていますが、実は運賃の多寡が主たる問題ではなく、タクシーが今後の生き残りをかけて、より利用者の状況に近づこうとしてとった対応策ではないかと思うからです。確かに実車距離が短い場合、特に現在の初乗り2キロメートル未満の利用者にとっては安く乗れます。

一方、運賃のカーブを見ていくと、4キロメートル乗ると現状と同額となり、それ以上は現状より運賃負担が増えます。ここだけに注目すると、値上げのカモフラージュではないかという指摘もあるかと思いますが、都内の利用状況を鑑みて、新たな需要喚起策として見ると、それは相応な提案ではないかとも考えるところでございます。現状、2キロメートルは乗っていないのに、その分の対価を払わざるを得ない運賃の仕組みというのは合理的かというと、私は首を傾げたくなるところがございます。自分が乗った分を適正に払うという点では、諸外国の制度でも今回の提案と同様の仕組みであると思っております。

資料の4ページの細かい理由の2つ目、3つ目に書いた内容ですけれども、初乗り距離を短縮することで減益になる分を、長距離利用者に負担してもらうことで収支のバランスをとろうとするという今回の提案の一面。それから、歩合制給料が主流であるドライバーの皆さんが、現状の初乗り料金を確保できないことへの将来的な不安への対処。単純に運賃が1.059キロメートルで410円になるということの背景には、事業がそれなりに持つ様々な理由があると推測されるわけで、今回の提案の成否には、利用者だけでなく、雇用されているドライバーの皆さんの理解も重要であるという、タクシー業界の皆さんの見解ではないかと感じるところもございます。

初乗り運賃の組替えは、値下げなのか、それとも値上げなのか。その答えは、実はタクシー業界が本気で地域公共交通としての役割を認識し、事業改革に踏み出す覚悟があるかどうか。それを利用者にしっかりと伝えて、利用者がどう受け止めるかにかかっているのではないかと感じているところです。

最後のスライド、5番を御覧くださいませ。

地域の適正化・活性化の視点から、タクシー特措法の適否を検討する際に地域の利用者の声を反映すべしということで、対象交通圏において行ったアンケート調査の結果を拝見する機会がございました。そこに見られた利用者の声として、例えばサービス面で言うと、短距離での乗車に嫌な顔をされたり、それから、安全面で言えば、運転が乱暴だったり、急にとまったり、本当に不安や不満が多く見られました。運賃が高いとか運賃制度の不透明さに関しても、利用者からの指摘がたくさん書かれていて、今のタクシーが利用者からどう見られているのか、業界の皆さんが今後のあり方に関して改善のヒントとなる意見が、そのアンケートにはたくさん掲載されていました。

初乗り運賃組替え提案に関して、私の周りでも、急に雨に降られたとき、コンビニのビニール傘を買うよりは安いかもしれないとか、駅やバス停までの移動。特に、地下鉄の移動などは、ここで乗換えですよと言われても、1駅分ぐらい歩かされてしまう現状等を考えると、鉄道やバス利用が困難になった高齢者にドア・ツー・ドアのタクシーの利用がより身近になるということでは、朗報ではないかと前向きに捉える意見もございました。一方、こういったことが実際に行われると、ドライバーの方が多分嫌な顔をするに決まっている。それから、荒い運転になって生きた心地がしなくなるに違いないなど、これまでのタクシーのイメージから、サービスの向上は期待できないという意見もございました。

今、全国で地域の移動の足をどう確保するかが大きな問題となっています。今回、組替え申請があった東京地域と過疎地を抱えた地方都市の状況というのは多少違うかと思いますが、地方の自治体で進められている公共交通網の形成計画では、鉄道・バス等の利用に関してはしっかりと書き込まれていますが、タクシーの出番は余り見られません。タクシーは、自ら公共交通としての自分の居場所というのを見つけなければいけない状況に来ていると思います。環境変化への対応とか地域の特性への配慮はもちろんですけれども、消費者・利用者の立場に立った事業革新を進めることで、利用者から選ばれるタクシー、利用者に喜んで乗ってもらえるタクシーになってほしいと思います。

今回の初乗り距離組替え申請というのは、そうした利用者視点に立つ提案の一つであると認められるように、社会に向けて、私たち利用者に向けて、十分な説明が更に求められると感じております。

私からは以上でございます。

○古城座長 ありがとうございました。

続きまして、松岡理事長から御説明をお願いいたします。10分程度でお願いいたします。

○一般社団法人日本消費者協会松岡理事長 日本消費者協会の松岡と申します。

私は、このタクシー料金の問題をやってきたことが余りないので、お話をいただいてから資料を探したりしました。それから、前回の委員会の資料がアップされてから、いろいろ詳しい資料を拝見したものですから、こぼれ落ちていることがたくさんあると思います。料金だけじゃなくて、サービスの問題とか業界に対してのことも入れていいというお話だったので、その線に沿って御説明したいと思います。それから、私の場合には全く消費者サイドのことだけになります。労働問題については、そこまで手が回っておりませんので、今回は入れておりません。

消費者問題として、実はタクシーは長年、トラブルの多いところでした。乗車拒否とかメーターの改ざんとか乱暴な運転。それから、地理がよく分からない運転手が多いとか、消費者相談にもいろいろ出てきた経緯があります。しかし、近代化センターができた以降、徐々にそういうものが減っていまして、現在、私どもの相談室にタクシーに関するトラブルというものはほとんど入っておりません。そういう前提で、近代化センターの働き、それからいろいろな法律とか規制の効果というものは、それなりにあったと思います。

しかし、私たちにとってはいいほうに向いた規制ではありましたけれども、だんだんタクシー業界としては規制にある意味守られてしまって、そこに安住してきているのではないかという気がします。今回、ここへお話をするために周りにいろいろ聞きましたら、不満が結構たくさんありました。そういうものは、規制の中に守られて安住している業界というものがあるのではないかと感じました。

それは前置きですけれども、運賃の問題から入りたいと思います。運賃全体を組替えるという案ですが、例として挙げられた1,059メートルまでは410円とし、237メートルごと加算運賃を80円とするという案自体には異議ありません。というのは、東京の運賃というのは非常に高いとずっと感じていました。諸外国の大きな都市の運賃、タクシーに乗ると本当に安いなと感じたりするぐらいですから、東京の運賃は非常に高いと思っております。ですから、安くしていただくということについては歓迎するわけです。長距離の場合は上がっていくということについては、一般消費者の人が10キロメートル以上を利用するということは早々ないのではないかと思いますので、近距離、利用度の多いところを安くしていただくという案で了解できると思っております。

しかし、すごく不思議に思ったのは、何でこの半端なキロメートルとか料金。どうしてこういう端数になるのか、ちょっと理解ができませんので、その根拠は何なのだろうと思います。特に距離の問題は、そういうところがあります。

それから、初乗り上限の410円という提案とか、加算されている80円という根拠が、いろいろ資料を読ませていただいたのですが、はっきり分かりません。計算の仕方というのは国土交通省の資料であったと思いますけれども、それが410円になるというところが、何で400円じゃなくて410円なのだろうかとか、端数が分からない。237メートルごとと言わなくても、せめて240メートルぐらいにしてくれたほうが分かりやすいのではないかという、何か理由があるのかというところに疑問を感じます。そういうことはありますけれども、今度の組替え案については了解できることだと思います。

ただし、2のところにありますが、渋滞対策として、現在も時間距離併用運賃になっています。現行は105秒、この5秒もよく分からないのですが、105秒でメーターが上がるようになっています。それでさえ、少し大きい交差点に行きますと、すぐ上がりますし、何となく心臓によくない感じです。それが90秒になるというと、一般的な信号はどんどん加算されていく、メーターが上がっていくとなりますので、消費者の心理としては、初乗り料金は安くなったけれども、非常によくメーターが上がるという意識が強くなるのではないかと思います。なぜ105秒が90秒に修正されたのかというところがよく分かりません。

これは、長距離になると通過する信号の数も多くなりますから、当然加算も多くなっていくわけで、距離で示された運賃以上に、時間が併用されると価格が上がっていくのではないかと思われます。これは、今回の運賃組替え案で示されている料金体系とどういうふうにシミュレーションが変わっていくのかというところを示していただきたいと思います。これが料金に関する意見です。

次に、この際ですから、タクシーの運賃だけではなく、サービスの面もいろいろ検討していただきたいと思います。

運転手さんの問題というのは非常にいろいろあるのですが、とにかく大きい荷物の積み下ろしを手伝ってくれないという不満が結構あります。外国などから帰ってきて最寄り駅からタクシーに乗ると、途端に、ああ、東京に帰ってきたという感じがするのです。運転手さんは座席に座ったまま、自動的にトランクをぱっとあけて待っているだけです。そのトランクの中に雑巾とかバケツが入っていたりして、そこに荷物を入れるというところをもっと改善していただかないと、特に観光客や海外のお客さんには印象が非常に悪いところだと思います。

それから、皆さんの意見で一番多かったのは、行く先を言っても返事をしてくれないので、正しく伝わったかどうか不安になるということです。特に高齢者になってきますと、発音が正確にできていないという自覚もありますので、行き先が伝わったかどうか。中には、間違って、似たような発音のところへ連れて行かれたという話もありました。そういうところは、もう一度確認の応答をしてくださるだけでいいわけですから、そういうサービス、それぐらいのことはしていただきたいと思います。

それから、初乗り料金が安くなるということは、短距離の利用者に対して、先ほど河野事務局長もおっしゃいましたけれども、つれなくされたり、乗車拒否が出てくる可能性はないのだろうか。そういうことのないようにしてほしいということです。

タクシー業界全体に対しての改善の要望として一番強かったのは、駅から自宅とか目的地まで行くタクシーは比較的拾いやすいのですが、その逆ですね。自宅とか最寄りの場所から駅へ行くとか、どこか目的地へ行くときのタクシーは、ほとんど流しでは捕まえられない。特に朝の時間帯というのは捕まらない。運転手さんの交代の時間帯にぶつかるということがあるわけですけれども、そういうのはちょっとずらして、タクシーの台数がたくさん流れているようにしてほしい。

常時、都心でタクシーを拾う人たちのように、仕事で乗り慣れているというのではなくて、一般的に消費者が利用したいと思うときは、病院へ行きたいとか、通勤の交通機関の事故があって電車に乗れなくなったのでタクシーで行きたいとか、大きい荷物があるからとか、いろいろあるわけですね。そういうときには、タクシーには頼れないということが現状です。お客が足りないということは、逆に言うと、こういう需要が本当はたくさんあるのに、それを無視した運行の計画になっているのではないか。それは、余り利用者の多くない住宅街を流していてもしようがないということになりますけれども、その場合は捕まえやすい情報、アプリを利用するとか、そういうことにもっと力を入れてほしいと思います。

アプリ利用というものがされているようでありますけれども、一般的には余り知られていませんし、ITに弱い人たちには訳の分からないものになっているので、消費者との情報アクセスの改善を図ってほしいと思います。東京の場合、タクシー会社がどこにあるか分からないということも多くありますので、そういうことを改善してアクセスしやすくしてほしいと思います。

それから、タクシーの車体に対する不満も結構ありました。これは、乗り降りしにくいという意見が強いですね。高齢者になってきますと、体が不自由で、スムーズに乗り降りできないとか、体格がいい方とか、高齢者で杖をついているような人たちには不自由だという意見が随分ありました。もっとワゴンタイプがタクシーの中に増えてもいいのではないかと思います。海外の例を見ますと、ワゴンタイプのタクシーも随分あります。大きい荷物も、体のちょっと不自由な人も乗りやすい車体というものがもっとあると思いますし、自動車は日本のお得意ですから、もっとそういうことを自動車メーカーと相談して進めていただきたいと思います。一部、いろいろ調べていると、ホームページに出てきて、改良のほうに向かっているようですが、もうちょっとスピードアップしていただけたらなと思います。

もう一つ、クレジットカードが利用できるタクシーが私の感覚では非常に少ないような気がします。実は、クレジットカード利用というのは、料金が非常に明確になって、特に外国のお客さんにとっては信頼できるわけです。ごまかしが余りないだろうと思われる。私たちが海外へ行ったときにも、メーターとともにクレジットカードでの支払いのほうが後でトラブルになったときにはやりやすいとか、透明性がありますので、ぜひそういう観点からもクレジットカード利用ができるように、それも乗客のほうからカードが利用できるような、カードを運転手さんが受け取ってやるというのではなくて、乗客にさせるような仕組みを導入してほしいと思います。

東京には観光タクシーというものがあるということが今回初めて分かりましたけれども、京都ほど知られていないですね。それから、あっても面倒臭い。京都は観光地ですから、それに徹しているのかもしれませんけれども、もうちょっとそういう新しい分野を開拓していき、利用を多くする。観光は別に海外のお客さんだけじゃなくて、日本人も利用したいと思いますから、バラエティーの富んだものにして、料金や内容が事前によく分かるようなものにしてほしいと思います。広く広報してほしいと思います。

それから、ライドシェアが話題になっていて、タクシー業界は反対するわけですし、またライドシェアの規制の問題が出ています。確かに問題があると私も思うのですが、このライドシェアがある意味歓迎されるということについて、タクシー業界は反省すべきではないかと思います。仕組みのいいところは、タクシー業界も率先して取り入れたらいいと思います。例えば、アプリの利用で配車を早くしてもらえるとか、相乗りを認めるようにするとか、そういうことをタクシー業界の場からどういうふうに取り入れたら、このライドシェアが取っていく分野を取り返せるかというところを考えていただきたいなと思います。そのことで、新しいタクシーとなるように私は期待しております。

以上です。

○古城座長 ありがとうございました。

それでは、今、お二人から御発言いただきましたが、それについて御質問や御意見がある方はお願いします。

白山委員。

○白山委員 ありがとうございました。

私、正直申しまして、この議論がどこまで、何を議論すればいいのか、ちょっとよく分からなくなってしまったのですが、幾つかお伺いします。消費者団体のお立場から、今回の運賃組替えというものをどういうふうにお考えになられているのかというところをもう一回確認したいのです。

例えば、山内委員のペーパーにもございましたように、業界全体にとって収益中立。それは裏を返せば、マクロ的には消費者・受益者側にとっての負担が中立ということになると思うのですが、私も消費者ですが、消費者団体とか消費者の方々の間で、かなり長距離にわたるようなタクシーの利用者、一定の所得水準の方といいますか、そういう方々の負担増になるとか、あるいはもっと短い距離しか、ぱっとしか利用しない方々の負担の度合いの変動とか、そういうものは議論になっているのかどうかというのをお聞きしたいのと。

それから、価格の問題を抜きにして、乗車したいときになかなか乗れないとか拾えないということの損失をできるだけ少なくしたいというのが、消費者の方々のニーズとしてあると思うのですが、仮にそれが拾えた場合に、一定のサービスを維持してもらいたいということになると、直接的にサービスを提供しているドライバーの方のサービスの質といいますか、それをアップするためには、最低限のところとして、山内委員も、労働分配率を一定維持するということを通じて、消費者の方々の最低限の安全性とかサービスの品質の維持が必要だという観点からおっしゃっているのではないかと思います。

だから、そこは今回の価格の改定の問題と労働分配率との問題の関連性、そこに問題がないようにしてもらいたいという山内委員の御意見と消費者の方々の御意見は一致しているという理解でいいのかどうかということと。

それから、様々な高齢化へ向けての車両の改善とか、より高齢者の方々も乗りやすい車両ということになると、事業者側にとって一定の利潤がないとそういう投資ができないわけでして、この辺について、今回の価格改定がそこまで踏み込むのかどうか分からないですが、サービスの提供を上げるということはそれなりの設備投資も必要な面が出てくるので、そういうことについて、今回の価格改定をどう考えるかみたいな議論は、消費者団体の間で出ているのかどうかというのをちょっとお聞きしたいのです。

○古城座長 いろいろ質問があったのですけれども、この改定案について簡単にどういう御意見かという結論だけおっしゃって、あと細かい話は続けたほうがいいと思います。

○一般社団法人全国消費者団体連絡会河野事務局長 改定案に関しては、先ほど申し上げたような理由で、今回の数字の置き方、根拠に関して言いますと、私も実はよく分からないという大前提ですけれども、初乗りを2キロメートルに置いて、乗らない分を払わされているというよりは、1キロメートルに刻んで、その分で合理的に上がっていく。時間併用制もありますので、今後、消費者にとって、どういう数字の置き方がいいのかということは、事業者の皆さんにも考えていただきたいのですけれども、全体の方向性とすると、これは悪くない御提案だと思っています。

それで、先ほど消費者のほうで、短距離は安くなるけれども、長距離はどうなのだという実態を把握しているのかという御質問だったと思いますが、実は私たちの中で、タクシーを日常的に頻繁に利用しているモードでないのです。恐らく観光とかビジネスの方が主たる利用者ではないかと思っておりますので、そういう受け止めでございます。申しわけありません。

そんなところでよろしいでしょうか。

○古城座長 松岡理事長、どうでしょうか。

○一般社団法人日本消費者協会松岡理事長 タクシー料金のこういう話が消費者側に示されているわけではありませんし、しかも労働の問題とか設備の問題に至るまでの数字をどこで見つけたらいいのか、私も探したことは探したのですけれども、非常に難しいです。どうやって読み込むのかというのも資料として難しいところがありまして、こういうものはぽんとどこかで決めたら、消費者がそれに応じて理解するだろうと思わないでほしいと思います。そういう説明の場もまだいただいていないわけで、消費者の合意があるかと言われると、私たちは自信がないところがあります。

ただ、河野事務局長もおっしゃったように、そんな長距離を一般の消費者が乗ることは少ない。特に東京はほかの交通網がありますから、何万円もお金をかけるのだったら電車を乗り継いでいくという感じになると思いますので、それよりも日常的に使う料金のところで判断するというのが一般的な考え方ではないかなと思います。

○古城座長 ありがとうございます。

次に、3人挙げられておりますけれども、順序どおりで陶山委員。

○陶山委員 お聞きしようとしたことのお答えが少し返ってきたのですが、いろいろな変化があるときに,負担が重くなる利用者あるいは消費者に最も配慮しなければならないのではないかなと考えておりまして、この長距離利用者、どんな方たちがいらっしゃると想定されていますかということをお聞きしようと思ったのですが、松岡理事長のペーパーにも書いてありますし、消費者は長距離を利用する人は余りいないのではないか、ということなのですね。それから、タクシー協会の人も、それは会社の経費とかで乗られる方が中心なのではないかということだったのです。

ただ、私の周辺では、そうでない事例もいろいろ見聞きしておりますので、そこへの対策等が必要じゃないかという立場から御意見をお聞きしたいと思っておりました。ただ、一般的には乗らないという見方でいらっしゃるのですが、私の周辺では、介護とか病院通いで非常に長距離、片道四、五千円、どうしてもかかってしまうという知人もおりまして、そういうケースもあるのではないかと思っております。

それから、河野事務局長のお話の中で出てきましたが、これは国交省のほうにお願いしたいのですが、アンケート調査をされたということであり、その聞き取り等がまとまっているものがありましたら見せていただけたらなと思っております。

以上です。

○古城座長 ありがとうございます。

次は、松村委員、どうぞ。

○松村委員 消費者の方の御意見は、恐らく今回の提案は特に大きな反対はない。具体的に不満を述べられたのは、渋滞時の時間課金に関してで、90円単位が80円単位に変わるので、その分比例して時間を短縮したという説明だとは思うのですが、御指摘のとおり、確かに引っかかる回数が急に増えることになって、その分実は値上げなのではないかという疑念は確かにある。あくどく値上げしたということでは決してなく、単に形式的に調整しただけだということは分かるとしても、実質的にかなりまずいことが起きるのではないかという御懸念は伺った、ということだと思います。

そういう意味では文句をつけるのはとても難しいかもしれないけれども、この点は事後的にそういう効果がなかったかどうか監視してくれと、国交省に言うべきだと思います。

言われた意見の大半は、今回の申請に関してではなく、今回を契機にして、普段タクシー料金に対して言う機会は非常に少ないので、意見を聞いて欲しいということだったのではないか。そういう点で、私たちがヒアリングしているわけですから、私たちも聞かなきゃいけないのですが、国交省の方も今回の値上げと直接関係なくても耳を傾けていただきたい。いろいろな不満があるという点に関して、最終的にはというか、究極的には、既存のタクシー業界がこういうサービスを全然してくれない、全然要望に対応してくれないということがもし続くとすれば、もっと競争を促してこれを解決してくれないかという要望が、自然に出てくることになる。

極端なことを言えば、ライドシェアがもっと普及して、これでまともに競争してくれるということがあれば、ライドシェアのほうが消費者のニーズをきちんと踏まえて、いろいろなタイプの消費者が使いやすい車を出してくれる、あるいはタクシーが全然捕まらないような時間帯に適切に出してくれることになれば、そちらを消費者が支持することになると思います。

もちろん、現時点では、2種免許の問題を始め大きな問題がありますので、そんな簡単に解禁できないというのは分かるとしても、消費者としても、既存のタクシー業界が対応してくれないとするならば、私たちは新規事業者を支持するという声を上げていけば、タクシー業界も対応せざるを得なくなってくると思います。消費者が継続的にそのような声を上げていくことは、とても重要で、よいことだと思います。

以上です。

○古城座長 ありがとうございました。

次、古賀委員、どうぞ。

○古賀委員 どうもありがとうございました。

今日、ヒアリングをさせていただく立場なので、私が申し上げるのが適切かどうか分からないのですけれども、今日の論点とはずれるのですけれども、いただいた意見のことを考えておりまして、一般的に消費者にとってタクシーは、今の段階では非常に贅沢品なのです。同じところに行くにも、私なども乗る場合と公共機関を利用する場合があるのですけれども、乗らない理由というのが、実は幾らかかるか分からないということがあるわけです。料金が不明確であるということがあると、そのために選ばれる、喜ばれるタクシーということからかけ離れていくと思います。

要するに、タクシーの乗車率が減っているということで需要を喚起していくためには、初乗りだけでなく、料金が下がる必要ももちろんあるのですが、それ以上に料金が明確になって、料金の予測可能性がすごく高まることが、その利用への促進力になると思うのです。

そうすると、料金が果たして妥当かどうか。値上げが今回どうかということはさておくとしまして、乗車契約も消費者とドライバーとの個々の契約になるわけですけれども、予定された契約内容に適したサービスが受けられるか。その料金が消費者にとって予見可能でリーズナブルであるかというのは、消費者にとって非常に大事なところで、私は2つのことがあると良いのではないかと思うのです。

1つは、前回の調査会のときも事業者の方がおっしゃっていたように、事前予測運賃情報というものが与えられる。どこに行くには、どれぐらいの距離で、これぐらいの料金は最低かかりますよという説明がいただけるということ。それから、今、初乗り上限410円と、237メートル、80円加算の根拠が分からないという御意見があったのですが、これは私も消費者として、そこは全くそういうふうに感じるのですが、タクシーで走行距離を明示していただく、表示していただくと、それがこのタクシーの運賃が妥当かどうかというのが消費者にとって分かりやすいと思うのです。

そうすると、この237メートルごと80円というのは非常に分かりにくい。例えば、250メートルごと80円とか90円とメーターに表示されると、大体幾らだというのが分かるのですけれども、タクシーに乗ると運賃メーターが上がるのが非常に早いと感じるタクシーもよくあるのです。そういう意味では、事前の予測運賃と走行距離の表示、それから走行距離の加算の運賃の丸め方というか、その辺が分かると消費者が非常に利用しやすくなるのではないかと、今日のお二方のお話を聞いて思いました。

済みません、ちょっと論点がずれています。

○古城座長 井手委員、どうぞ。

○井手座長代理 前回、前々回ですか、時間距離併用運賃が昭和45年に導入されたのですけれども、今日御指摘があったように、90秒というのは、信号は1分30秒で平均的には変わる。ということは、赤でとまったら必ず料金が上がるという今回の仕組みだと思います。それと同時に、時間距離併用というのは、以前にも言いましたけれども、混雑を避ければ得られたであろう機会費用を運賃で回収するという。

これは、寺田先生にお聞きしたいのですけれども、時間距離併用運賃は、高速道路ではどうして取らないのですか。ドライバーさんは、高速道路で混雑すると機会費用は発生しますね。高速道路で消費者は高速道路料金を払っているからというので、時間距離併用運賃はなぜやらないのか。もし時間距離をやるのであれば、一般道も高速道も混雑すれば同じだと思うのですけれども、その辺はどういうふうにお考えか。

○古城座長 お教えください。

○東京海洋大学大学院寺田教授 導入時のことは分からないです。済みません。ただ、後付けの理解としては、高速道路走行中は平均速度が速いので、その分と相殺されているというのが実態だと思います。逆に、スピードが速かったら、マイナスの時間距離併用みたいで、運賃を引いてもらわなきゃいけない分を引いていませんので、それとキャンセルアウトしているという理解だと思うのです。

○井手座長代理 だから、私が言いたいのは、時間距離併用運賃は何となく作られているけれども、今の信号状態とかいろいろ考えると見直すべきではないかというのが個人的にはあります。

○東京海洋大学大学院寺田教授 ドライバーの方の賃金だけから算定すると実際の時間制割増額の半分ぐらいにしかならないと思います。残りの半分の上乗せ分は混雑税というのですか、つまり渋滞している場所・時間に、タクシーの回転が悪くなって利用者がサービスを入手しづらくなっていますので、そういう場所と時間にはお客さんのほうでも利用を控えていただく必要があります。その効果が半分かと。だけれども、そういう説明をしないで、ドライバーの賃金だけという説明しているので、高いと受け止められるのではないかと思います。

○古城座長 まだ御質問があるかと思うのですけれども、大体予定時間になりましたので、意見交換は以上とさせていただきます。

有識者の皆様におかれましては、本日はお忙しいところ御出席、ありがとうございました。


≪3.閉会≫

○古城座長 事務局から連絡事項はございますか。

○丸山参事官 本日も熱心な御議論、どうもありがとうございました。

次回の会合につきましては、確定次第、御連絡をさせていただきます。

○古城座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

(以上)