第30回 消費者安全専門調査会 議事録

日時

2017年4月27日(木)9:30から10:48

場所

消費者委員会会議室

出席者

【委員】
山本座長、藤田座長代理、相澤専門委員、市瀬専門委員、西田専門委員、村田専門委員
【消費者委員会担当委員】
河上委員長、大森委員、長田委員、樋口委員
【発表者】
長岡技術科学大学 三上理事・副学長
長岡技術科学大学 張特任講師
【事務局】
黒木事務局長、福島審議官、丸山参事官、友行企画官

議事次第

  1. 開会
  2. 第29回消費者安全専門調査会における議論の整理
  3. 海外機関における事故情報の収集と利用について
  4. その他
  5. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○山本座長 時間ですので、開始したいと思います。

皆様、本日はお忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。ただいまから第30回「消費者安全専門調査会」を開催いたします。

それでは、配付資料の確認を事務局からお願いいたします。

○友行企画官 お手元の議事次第の「配付資料」のところにございます、資料1と資料2の2種類でございます。不足がございましたら、事務局までお願いいたします。


≪2.第29回消費者安全専門調査会における議論の整理≫

○山本座長 それでは、最初の議題は「第29回消費者安全専門調査会における議論の整理」です。

事務局から説明を10分程度でお願いします。

○友行企画官 それでは、資料1をご覧いただけますでしょうか。

前回は3月30日に第29回が行われましたけれども、プラスアルファ・コンサルティングというところをお招きしまして、御発表いただきました。題名としましては「テキストマイニングを活用した事故情報の分析等」でございまして、事故情報分析につきまして、テキストマイニング手法の有用性や可能性、事故情報分析におけるSNSの活用の可能性ですとか、消費者に届きやすい公表資料の作成といった観点から、御発表をお願いいたしました。そのときに出ました意見をまとめたものが資料1でございます。

まず、テキストマイニングに関することでございますが、1番でございますけれども、テキストマイニングされた結果を評価する場合に、評価者のバイアスがかかるおそれがあるという御発言がございました。

それにつきまして、2のところでございますが、テキストマイニングは、テキストを分類するので、こういう情報があるということは分かるけれども、最終的には中を全部読んで、本当に間違っていないか確認しないと、間違える可能性もあるという御指摘がございました。

3番でございますが、テキストマイニングで分析した結果を公表することにつきまして、分析結果に生のデータのリンクが張られている場合、個人情報が入っていることもあるので、注意が必要というような御議論もございました。

4番でございますが、テキストマイニングを行う際の辞書のことにつきまして、どのような形で行ったのかという御質問がありまして、それに対して、プラスアルファ・コンサルティングのほうから、一般的な辞書を使うということとあわせて、実際にデータを見て、言葉を確認しながら必要な調整を行ったというコメントがございました。

次のところ、ヒートマップでございますが、前回の資料の中に、ヒートマップといった資料の発表がございまして、そこは話題分類と品名をかけ合わせて示した図だったのですけれども、話題分類というのは、例えば火災ですとか破損、事故の種類で、品名というのは家電ですとか美容といった分類名でして、それをかけ合わせて示すことによって、消費者はこれから購入しようとしているものにどんなトラブル、事故があるのか分かるので有用だという御意見がございました。

例えば2番でございますが、美容に関してどういうトラブルが多いのかということについては、美容系のサイトに当該トラブルについての注意喚起をすれば、いろいろな人に見てもらうことが期待できるのではないかという意見もございました。

次の2ページでございますが、SNSというくくりで整理しておりますけれども、行政機関の施策の評価にSNSを活用する可能性についてというところでは、その情報がSNSでどのぐらい拡散されているか、数字で見る方法ですとか、どのような意見が投稿されているのか、テキストマイニングで見たり、プレスリリースを行うたびに、各回どのような投稿件数が出ているかということを比較するということが有用ではないかという御意見がございました。

2番でございますけれども、SNSで分析する場合に、登録されている事故情報について、その情報が登録された日と、事故が発生した日というところで、かなり差があって、事故発生日について記入がされていないことについて、そうすると、SNS上の情報と照合して記録をする場合に、事故が発生した日が正確に分かるほうが望ましいといったような意見もございました。

SNS上のデータのクレンジングの方法についてでございますが、やはりクレンジングは必要でございまして、1か月に何回も投稿しているものですとか、同じ文章を定期的に投稿しているものについては除外しましたというような説明がございました。

SNSに事実と異なる情報や風評被害のおそれがある情報が拡散した場合には、どのような対応が必要かということでございますが、誤った情報が流れていることが分かった時点で、早く正確な情報を発信することが重要ではないかという御意見がございました。

また、事故等に遭うおそれがあると思われる人への情報発信については、SNS上で危険と投稿している人に直接メッセージを送る方法ですとか、商品を誤って使用している人に伝えるという取組をしている企業が実際にはあるといった御発表がございました。

以上でございます。

○山本座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの説明の内容につきまして、御質問、御意見のある方は御発言をお願いいたします。

お願いします。

○河上委員長 いいですか。

ヒートマップのことですけれども、あのときもちょっと発言したかと思うのですが、人々の関心の高さは分かるかもしれないけれども、事故の重要性であるとか、あるいは、事故の発生頻度というものとは、必ずしも一致しないのではないかという気がするのですけれども、その辺はどのように考えたらいいのですか。

○山本座長 これはどなたに聞けばよろしいですか。

とりあえず、事務局のほうから。

○友行企画官 これはテキストマイニングを行うときの全体的に言える話だと思うのですけれども、確かに一つの分類ではありますけれども、実際にそこで何が起こっているかということについては、中身まで見ていかないと分からないというお話も、前回御説明もあったと思います。ただ、事実としてこのような単語が多く出てきたり、書き込みが多くあるとか、事故情報としてのデータがたくさん入っているということはあると思うのですけれども、実際のところは中を見て確認しないといけないというところは、最後まで注意しなければいけないところだと思います。

○河上委員長 よくSNSとか、いろいろなところで、何かが炎上することがありますね。炎上したときというのは、本当にその事故の重大性であったり、原因の問題であったりというようなこととは別の要素で炎上していることが多いような気がします。ヒートマップでそこに出てきたときに、事故の重大性等の精査をすることは、個別の事案を見ないと分からないという話になるのですか。

○友行企画官 最終的には、自由記述の部分を全部人間が読むことはできないと思いますので、当たりをつけるというのですか、一つの手がかりにはなると思いますけれども、それを実際にはどのように公表するかというときには、中を見て確認しないといけないのだというところはあるのだと思います。

○山本座長 何か相澤委員からありますか。

○相澤専門委員 どの分野でもそうだと思いますけれども、上から見たマクロな分析と、下から見たミクロの分析、両方のアプローチが必要であるという見方で、ヒートマップは一応マクロな分析という理解がよろしいかなと思います。

○山本座長 全体として、この間伺った印象ですと、重大な事故よりは、ヒヤリハットぐらいのレベルのものを見つけるのに割と有効なのかなという印象はあるのですね。本当に重大なものをどれだけ書き込むかというと、それはむしろ少ないのではないかということもあって、ですから、どういう部分が得意分野なのかということをよく見きわめて使うことが重要なのかなという印象があったのです。

ほかにございますでしょうか。あるいは今の点でも。

お願いします。

○藤田座長代理 今のヒートマップないしはSNS上の情報の話ですけれども、多分に人の価値判断の部分と、事実のことが一緒になって発信されていることが多いと思いますので、事実ベースのところで、重要性を把握するのであれば、そういうつもりで情報を見ないと、多分誤った判断になるのかなと思いますし、消費者の個々の人の関心の高さとか、価値判断について何か分析するのであれば、それはそれで、そういう見方で判断すれば役に立つのではないかと考えています。

○山本座長 私が先ほど申し上げたことは、むしろSNSのほうの話だったかもしれませんが、そうですね。どういうバイアスがかかっているかとか、どういう情報がそこにいろいろまじっているかとか、その辺を確かによく見きわめた上で、使い方を考えないといけないということかと思います。

そのほかにいかがでしょうか。よろしいですか。

≪3.海外機関における事故情報の収集と利用について≫

○山本座長 それでは、ただいまの議題はこれぐらいにいたしまして、続いての議題は「海外機関における事故情報の収集と利用について」です。

我が国では、消費者庁において、事故情報を一元的に集約し、消費者に対する注意喚起や各省庁に対する意見等を提示するという取組が見られます。また、諸外国におきましても、関係機関において事故情報の集約、注意喚起等が行われているところです。

本日は、長岡技術科学大学の三上理事・副学長と、張特任講師にお越しいただいております。諸外国、特にアメリカ、EUにおける取組などについてお話をいただけるということですので、よろしくお願いいたします。

30分程度とお願いをしておりますので、よろしくお願いいたします。

○三上理事・副学長 御紹介いただきました三上と申します。

隣におりますのが、同僚の張でございます。よろしくお願いいたします。

我々の大学は、2004年に安全専門職の教育プログラムを始めまして、今年で14年目になります。社会人の方を対象に安全を教える大学としては、日本で唯一ではないかと思います。

研究活動のセンターとして安全安心社会研究センターを2008年に設立しまして、現在、私はそのセンター長を兼ねております。製品安全関係の政府の仕事にも関わっておりまして、私自身の研究テーマも製品安全に関わるいろいろな情報の収集・解析であります。今回、西田さんからお声がけをいただいたと認識しておりますけれども、我々の知る範囲で御紹介できればと思っております。

今日先ほど司会の方から御紹介がありましたように、本日はアメリカのNEISSを中心に、ヨーロッパの取組、そして我々が取り組んでいることも少しだけ御紹介したいと思います。

アメリカの消費者製品安全委員会は、消費者製品事故にかかわるタイムリーな情報の収集を目的として、National Electronic Injury Surveillance System(略してNEISS)の運用を1972年に開始しました。

6病床以上を有し、24時間のエマージェンシールーム(ER)を持っている病院の中から約100か所を選んでデータの提供を受けています。データは一部文章で書いてあるところもありますが、基本的には、治療内容とか、年齢区分とか、コード化したデータとしてコンパクトに入力されています。現在のところ、年間40万件前後のデータが収集されています。データ収集を行っているのはCPSCですけれども、ほかの連邦政府機関もそのデータを自由に活用できます。また、一般の研究者もほとんど全てのデータを利用することができます。私自身もデータをダウンロードして、いろいろな解析を行っております。

まずその歴史ですけれども、CPSCができる前に、NCPS(National Commission on Product Safety)という組織があり、その時代、60年代末ぐらいから病院を入力源とする傷害情報の収集システムが稼働し始めたようです。収集主体は、NCPSの後FDAの時代もあったようですけれども、その後は製品安全委員会CPSCが担当しています。

次に報告方法の欄をみていただくと、最初はタッチトーン電話とか、書式による郵送とか、テレタイプとか、いろいろ苦労しながらデータ収集を行ったようです。今は完全に電子ネットワークを通じて収集が行われています。

対象病院も、最初は数も少ないですし、その性格もボランタリーな協力だったようですけれども、途中からは有償での協力に変わり、入力データ1個当たり幾らというやり方でやっているようです。

これが2003年時点での病院の分布図であります。

ここで重要な点は統計的標本設計のことです。スライドにお示ししたのは1997-98年当時の標本設計の資料ですが、この時点でアメリカの病院数は全部で5,388ありました。そして、このうちから100病院が選ばれております。100病院からの傷害報告が年間40万件ぐらいですけれども、このデータから全米で起こっている全ての傷害件数、つまりnational estimates、を推計しようとすると、標本の抽出率を使って膨らまし計算をしなくてはいけません。このスライドには表現できていませんけれども、地区別に集計するときに地区の代表性が失われないようにとか、いろいろ細かい配慮がなされて標本設計されているようです。

このスライドの一番右の欄に「ウェイト」と書いてありますけれども、例えば階層1の病院から報告のあったある傷害の件数が5件だったとしますと、それに66.22を掛け、同様にして他の階層についても計算をして、それを全ての階層について合計すると、全国で起こったその傷害の総数が分かるという仕組みになっております。

こうした標本設計が行われておりますので、推計した値についての統計的な信頼区間も分かるようになっています。

また、集められたデータに対して「必要に応じてフォローバック調査が行われ」とありますけれども、日々報告されてくるデータを専門家がチェックして、これは何か変だなとか、これは詳しくはどういうことだったのというフォローバック調査が行われているようであります。

次のスライドは、どうやって実際の収集ネットワークが機能しているのかという点についての解説です。各病院にはNEISSのコーディネーターが派遣されます。そして、コーディネーターは病院のエマージェンシールームのスタッフへの教育を行います。最初に書かれるのは多分病院のカルテだと思うのです。そして、カルテを見ながらコーディングマニュアルに従ってNEISS用のコード化と入力作業が行われます。したがって、最初のERルームでの記録の質というのが大事になりますので、そういったことも教育をしているのではないかと思います。今日はNEISSのコーディングマニュアルの現物も持ってきておりますので、回覧をいたします。

実は、我々も同様のコーディングマニュアルをつくっております。アメリカのNEISSのコーディングマニュアルとか、EUのマニュアルとか、そういった既存のマニュアルを参照しながら、よりユニバーサルに使えるようなコード化方式はないかなということで開発したものでございます。

コーディネーターはデータ入力ばかりでなく、病院の中でいろいろな分析をしたいというデータ分析業務があるときには、そのサポートも行っています。

一方、CPSC本部では、入力情報量に応じた病院への対価の支払いを行います。スタート地点では無償のボランタリーな協力だったのですが、現在では有償です。現時点での正確な数値は分かりませんけれども、2010年頃のデータによりますと分かりません約3億円がデータ購入料として病院に支払われております。報告データは年間約40万件ですから、1件当たり700から800円が支払われていることになります。

病院に端末PCを配置するのもCPSC側の役割です。

この他、コーディネーターたちを訓練したり、データの品質管理をしたり、ネットワーク全体の質を高めるマネジメントをCPSC本部は担当しています。

次のスライドは入力されている項目を示しています。「治療年月日」、「ケース番号」、「患者の年齢」、「性別」、「傷害内容」、「傷害部位」、そして、製品安全としては重要な情報である「関与した製品」などです。「傷害内容」については基本的にICDという国際疾病分類に従っています。また、「関与した製品1」のほうが直接的な原因となった起因物。「2」のほうは関連物ということで記入します。

「場所」というのは、傷害が起こった場所が、居間なのか、台所なのか、ガレージなのかといった場所を示します。

「傷害時点での行動」は、傷害時点でスポーツをしていたのか、仕事をしていたのか、庭の手入れをしていたのかといった、行動のタイプに関する情報です。

「消防署の関与」は、消防署が関与したかどうかという情報です。

「傷害時の意図」は、自傷による傷害ということもありますので、インテンショナルだったのか、そうではなかったのかという区分です。

傷害を受けた人の「人種と民族」も調査されているようです。ただ、我々がアクセスできるデータからはこの情報は削除されていますので、実際にどの程度書かれているのかはわかりません。もともとは、そういった分析もしようということで、この項目が設けられているのだろうと思います。

「自由記述文」というところに、実際、事故が起こるに至った経過が、非常に手短に書いてあります。後ほど、この自由記述文の例文をお見せしたいと思います。

このスライドに示すような入力画面が病院のコーディネーターの端末に出てきて、そこから入力することになります。

NEISSの収集するデータは政府全体の財産、あるいは国民全体の財産という位置づけですので、CPSCのほかに、労働安全、あるいは銃火器による傷害の防止、薬物、交通事故、法務統計といった様々な行政目的に応えるため、連邦政府内のいろいろな部局がこのデータを使います。データは公開されておりますので誰が使うのも本当に自由なのですけれども、多分、政府部内ということになると、先ほど申し上げた「人種と民族」などの一部の非公開データも提供されているのかもしれません。

CPSCにとりましては、NEISSで収集される事故情報が一番コアとなる情報だと思いますけれども、スライドの傷害ピラミッド図に示すように、死亡事故データも集めています。NEISSの情報収集源は病院ですので死亡事故は扱いません。これは日本と同様です。CPSCはこれをCDC(Centers for Disease Control)から購入しています。CDCは全米の死亡診断書データを収集しており、CPSCは、この中から製品が絡む死亡事故と思われる死亡診断書データを購入しているようです。政府機関内の間なのに「購入」とありました。

INDPというのは、In-Depth Investigationsですけれども、NEISSに報告されてくる事故の中で、より深い調査や情報収集が必要と考えられる事故については、救急医、あるいは検死官などから任意の聴取による情報収集が行われています。CPSCに捜査権限はありませんので、これは任意の調査になります。

CPSCには、小規模ながら実験室もあるようでして、そこに専門家がおります。彼らが電話インタビューとか、場合によっては現地に行って調査をするということになっているようです。

IPIIというのはInjury and Potential Injury Incidentの略で、ヒヤリハット情報です。医療関係者、検死官、メディアなどの情報源からいろいろな形でヒヤリハット情報も集めています。収集件数は3万件ということで、件数的には一番多いという状況です。

それから、もう一つ、消費者の苦情データベースもつくっておられるようです。収集自身は以前から行われていたようですけれども、数年前の消費者製品安全改善法に基づいて、苦情情報に関しても公開することになったことから、2011年からはウエブで公開されています。ただし、これは安全性に関する苦情だけで、性能に関する苦情は含んでいません。公開に当たっては、一旦その企業に提示して、いろいろな意見を受け付けて、最終的な公開、非公開の判断はCPSCが行っています。公開に当たっては、企業とのやりとりについての情報も公開するという形がとられています。

利用と分析の事例についても紹介してほしいとの依頼を受けておりました。しかしながら、利用分析の事例は大量にあるものですから、本日は全体の動向を示します。簡便な方法としてGoogle Scholarで調べた結果をスライドにまとめてみました。NEISSのデータを用いた分析報告には、必ず“National Electronic Injury Surveillance System”という表現が含まれていると考えられますので、この引用句を含む研究論文を検索してみました。近年ですと年間200から300件のオーダーで研究報告が出ています。それだけ研究者の皆さんが裾野広くこのデータを基にしていろいろな分析を行っているということを示しています。この中には、政府機関のスタッフによる報告も含まれていると思います。

全体の利用傾向として、71年にNEISS1が稼働して、90年にNEISS2という次のフェーズに移りましたけれども、21世紀に入ってからは、NEISSのデータを利用した研究は大変著しい伸びを示しているように思います。

そういった研究論文の中で、面白そうだと思う論文の題名だけを挙げてみました。例えば1番目「Medication Overdoses」は過剰投薬から派生する子供の傷害事故、中毒と言ったほうがいいのでしょうかね,を扱っています。

2番目はシートベルトやチャイルドシートという衝突安全装置に関する分析です。

3番目は高齢者の転倒事故に性差があるのか、ないのかといった分析事例です。

4番目も転倒です。

5番目はViolent Deathということで、家庭内暴力とか、いろいろなものを含めた暴力他傷事件の分析です。

最後は、NEISSデータを用いた分析ではありませんが、Public Health Surveillanceを担う情報システムの過去、現在、将来というテーマの興味深い論文です。

このように、NEISSデータに基づく研究論文が年間数百件という規模で書かれているというのは、大変すばらしいことだと思います。

以上がアメリカの事故情報システムについての報告です。EUの取組のほうは簡単に触れさせていただくにとどめます。EUの事故情報システムも基本的には米国と同様です。EUの消費者安全関係の委員会が各国のデータを統合してつくるようになりました。

このスライドは、米、欧、日本、中国の事故情報システムの一覧表です。EUの事故情報システムは、IDB、Injury databaseというシンプルな名前ですけれども、やはり救急病院からの入力を基にしてつくられています。人口でいいますと今はEUのほうがアメリカより大きいですけれども、事故データの件数は大体米国と同じ規模です。

欧州では、最初のころは各国単位で事故情報の収集が始まりました。各国で、「ホーム・アンド・レジャー」と呼ばれる、家庭内及び余暇中の事故に関する情報収集システムが作られました。それがだんだん広がって、あらゆる場面で起こる傷害を対象とする情報収集システムに変化してきています。そして、1997年には、これら各国のシステムがさらに統合されて、IDBという形になりました。

本日は今日御紹介いたしませんけれども、中国も10年ぐらい前から事故情報収集システムが動き始めました。ただし、依然として、個別のデータは非公開になっています。

このほかにも、オーストラリア、カナダなど、多くの国が同様のシステムを、基本的には病院ベースにして運用しています。

EUでは「Injuries in the European Union」という題名の総合的な分析レポートを2年に1回ずつ発表しています。40ページ弱のものですけれども、大変分かりやすい面白いビジュアルな表現がたくさんありまので、本日は2つだけ御紹介いたします。

1つはスライドの右上にある「傷害ピラミッド」です。軽微なものから死亡事故に至るまで、ヨーロッパ全体で起こっている傷害の全体像を示しています。これを見ますと、2010-2012年のデータに基づいた全体像として、死亡が23万8,000件、入院事故が540万件、通院で治療している傷害が3,570万件であったことが示されています。先ほどのnational estimatesの推計が行われています。これは、交通事故も含めた全ての傷害事例を含んでおりますが、大体85%ぐらいは家庭内、つまり生活の場での事故です。

右下のグラフは、横軸が年齢階層になっていまして、0歳から始まって85歳以上までの年齢階層に対応しています。いろいろな色の帯が傷害の種類に対応しておりまして、自傷、他者の暴力、家庭内及び余暇、スポーツ、学校、労働災害、交通事故に分類されています。これを見ても、家庭内、余暇、スポーツ、学校といった生活空間での事故が大部分を占めているということが一目瞭然で分かります。

EUの場合にも、データの公開はされているのですけれども、我々が見ていると、しょっちゅうトラブルがあったりして、アメリカほど個別のデータは快適に利用できるという感じではないですね。

もう一つは、一番下のコード化項目のみで、自由記述文はないのですね。ですので、本当に項目ごとの統計的な分析ができるだけで、アメリカの場合ですと、5歳の子供が何で遊んでいて、転んで、どういうけがをしたというような、ちょっと短い文章があるのですけれども、ヨーロッパは全くありません。

*消費者委員会事務局追記:消費者安全専門調査会後に行われた、三上理事・副学長の再調査により、「EUのIDBにも、システムとしては自由記述があるが、対外的には一切公開されていない。」ことが確認された。

さて、最後に、我々自身の取組についても、こういう機会にPRをさせていただきたいと思っております。

科研費などいろいろな研究費をいただいて、我々は「傷害情報サーベイランス」をテーマに研究に取り組んでおります。現在、科学技術振興機構(JST)からの支援を受けて行っている研究では「エビデンス情報基盤」という言い方をしておりますけれども、政府内、あるいは民間部門が持っている情報の中から、傷害発生のリスクの姿を解明していくのに必要な情報を抽出していこうではないかという問題意識で研究を進めています。

その一つの成果物が、本日お手元に今日お配りした「コーディングマニュアル」です。傷害を記述するに当たっては、こんな項目が必要なのではないか、といった視点からまとめたものです。傷害の場合にも「疫学モデル」ということが言われておりまして、ホスト、ベクター、エージェント、環境といった枠組みに基づいて、「傷害を負った人」、「傷害の原因となった危険源」、「危険源を顕在化させた媒介物」、これはマラリアでいえば蚊のような存在です、そして「環境」という4項目、これに「傷害の結果」を入れて5項目からなる記述枠組を提案しています。例えば8ページを見ていただくと出てきますけれども、全体で50項目ぐらいあると思いますけれども、どこの国のデータもこの表に登場する項目のサブセットを選んで調査をしているということになります。

このマニュアルでは、それぞれの項目ごとに、どんな語彙集、分類コードを使うと国際的な比較可能性を高めることができるかという観点から、極力国際標準に従って語彙集、コード表を作成しました。このマニュアルには、そうした語彙集、コード表が含まれています。特に消費者製品の場合には、ヨーロッパもアメリカも7割とか8割が中国製の製品となっていますので、中国の関係者にも使ってもらわないと地球全体としては製品安全の水準が上がらないという思いから、このマニュアルは日、英、中という3か国語で作成しております。今日お荷物になりますけれども、もしよろしければお持ち帰りいただいて、必要なときにご覧になっていただければと思っております。

もうひとつ、グローバル事故情報解析システム(I-Global Risk Watch)と呼ぶオンラインの情報解析システムも作成しております。本日はパソコンとプロジェクターの接続がうまくいかなくて、こちらのスクリーンには投影できないのですけれども、オンラインで、インタラクティブに操作できるシステムとして開発中です。ほぼすべての先進各国が事故情報は公開しておりますので、それらをクローラーというロボットで集めてきてサーバーに蓄積し、これを用いた分析を行うことのできるシステムです。我々の報告に先立って、先ほど、テキストマイニングとか、ヒートマップとかの話題がでておりましたけれども、そのような手法を使って、視覚的にも事故の状況をよく分かるようなものをつくっています。

発表した論文リストもまとめてみました。このスライドにお示ししたのが、この数年間にわたって改善、改良を重ねてきたコーディングマニュアルです。ピンク色のものが最終版です。

これが記述項目の全体像です。ホスト、ベクター、エージェント、環境、結果という五要素の下に約50項目から構成されております。下の段にWHOのICECIという国際標準分類が出てきますが、これからの傷害については国際的にもっとも通用する分類基準になると思います。正式にはInternational classification of External Causes of Injuryという傷害の外因分類です。このほか、製品分類もあります。各国当局の製品分類はみんなまちまちですので、ある製品で起こった事故が、どの国で一番多いのかといった比較がなかなかしにくいのです。そこで国際的な標準分類をどこの国も使ってほしいと思うのですけれども、その国の需要があるので無理なのでしょう。そうすると、あとは自分たちでコード変換をしていくしかないなと思っています。

それから、EUのリコール情報システムRAPEXの提供する分類基準も取り入れています。これは非常によくできていると思っておりまして、特に危険源の分類などはRAPEXのものが一番製品安全向けに使いやすいと感じています。

さて、日本ですけれども、特にNITEさんのものを中心に本日はお話ししますけれども、その一つのよさは、自由記述文が非常に豊富だということだろうと思います。右側にNEISSの事故データの記述文があります。「62YOF」というのは「62 years of female」ということで、「TRIPPED OVER THE CORD FOR THE VACUUM CLEANER AT HOME AND FELL TO THE FLOOR FRACTURED LOWER BACK」は、「62歳の婦人が掃除機のコードにひっかかって転倒し背中を痛めた」という情報が非常にコンパクトに表現した形で入っています。

日本の場合には、「事故通知」という本人からのもの、「事故原因」としてNITEが補足したもの、「再発防止措置」として報告されたものという三種類の自由記述文があります。一方、アメリカ、ヨーロッパは病院を入力源としていますので、病院は事故がどうして起こったかということまで関心がないようですね。ただ、病院というシステマチックな入り口がないので系統性に欠ける、網羅性に欠けるという弱点が同時にあります。その辺が日本のよさであり、悪さなのかなと感じています。

NEISSのデータを一応私のほうで分析してみたのですけれども、先ほどのものが、長さで言うと101文字でしたが、これは長いほうで、大部分はもっと短い。一方、日本のほうは、文字数で言うと平均で3項目合わせて240文字ですので、相当長い、豊富な情報が入っています。ですので、この自由記述文の情報をうまく使うということが、日本の資産としての傷害情報の価値をくみ出す一つのポイントだろうと思います。我々がこのコーディングマニュアルをつくっておりますのは、自由記述文を訓練した人にコード化してもらうためです。このマニュアルをよく読んでもらって、コード化して、原因とか、事故のプロセスとかをなるべく比較可能で検索可能な形のコードに変換していただくという作業をしています。最初は全く素人の方だったのですけれども、2年以上やっていただきますとだんだんプロになりまして、今や事故文を読むと、こんな感じねといって、ささっとコードにしてくれる。ですから、このような作業を進めていくと、多分、日本のデータの価値というものは、国際的にも利用できる形で充実させることができるのではないか思っています。

このスライドに我々がやっている作業の内容をまとめてみました。一方で、自由記述文を含めて事故データをコード化するという作業があります。コード化の基準は我々がつくっている「IIDFコーディングマニュアル」です。記述文を読んでコード化していますと、「こたつ」のような日本固有の単語も出てきます。こんなものは国際標準にもちろん出てこないわけです。そこで、これらは追加する必要があるなというわけで、我々は実際に事故通知文の中にあらわれる語彙を追加しながら、語彙集の拡充を図っています。このマニュアルは、自分たちで言うのもなんですけれども、国際標準をベースとしつつも、日本の事故通知文の中にあらわれる語彙もかなり含んだ形になりつつあると思っています。

事故の原因だけでなく、そのときの人間の動作とか、家庭内の部分空間というのも、国際標準と日本の場合は違いますね。極端に言えば床の間とか、そういう空間を指し示す名詞群も追加しないといけない。

製品だけではなくて、製品の角とか、材質とか、とがったころところとか、そういう製品の部分というのは、事故に直接影響する重要なポイントですので、その部分もできれば活用したいと考えています。製品が何でできているかという材質は重要です。硬いのか、柔らかいのか、滑りやすいのかといった要素は事故の原因分析において非常に大きな要素になってきますので、単に製品名だけではなくて、こういった構成部分とか、材質とかの情報を如何に整理しておくかが重要です。

今日ヨーロッパのRAPEX、アメリカ、DPACというのは中国のものです。中国はまだデータを公開しておりませんので、我々も入手はできません。

先ほどもSNSの話がありましたけれど、SNSからもデータを持ってこようと考えています。Facebookはアクセスさせてくれないのですけれども、Twitterは問題なく我々がコンピューターを使ってデータを収集することはできますので、それらを集めてきます。

我々の分析システムは機械学習の機能も持っています。先ほどのテキストマイニングで、例えば「EUスタンダード」という語彙で検索をすると、EUダイレクティブそのものが文字面としてあらわれるものもありますけれども、例えば玩具指令とか、定電圧指令とか、いろいろな形であらわれますので、そういうものを、いわばAI応用することによって幅広く検索できる機能を作りつつあります。ここに実際の表現系としての単語が出てきますので、ここをクリックすると、それに該当する案件が、ばばっと表示されるという形で、まだ日々改良中ですけれども、動くようになっています。

アメリカも、EUも、こういった形で公開していますので、我々が二次利用するサイトをつくって、世間一般に公開するということもできるのではないかと。一応、そこに行くまでにはもうちょっとそれぞれのデータのオーナーたちと話し合いをしなくてはいけないのですけれども、そんなものをつくったらどうかなということで、今、取り組んでおります。

ということで、準備したものをお見せすることができなくて申し訳なかったのですけれども、我々の取組状況の概要でございます。

論文のリストを付けておきましたけれども、もしこのテーマに関心があるとお問い合わせいただければ、いつでもお送りさせていただきます。

以上です。どうもありがとうございました。

○山本座長 どうもありがとうございました。

それでは、かなり盛りだくさんの御説明でございましたけれども、御説明の内容につきまして、御質問、御意見がある方はお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

お願いします。

○大森委員 14ページのところで、各国の傷害情報収集システムの一覧表を付けてくださっています。右端に日本のものがあって、情報源のところに「各種。しかし標本設計された調査対象ではない」というコメントがありまして、この辺をもうちょっと詳しくお聞きしたいと思っているのですけれども、病院からの統一されたデータが少ないということなのでしょうか。

○三上理事・副学長 全国推計するためには、サンプリングをしっかり考えた上でやっていかないといけません。例えばNITEさんの事故データも、重大事故については報告義務があるとはいえ、消費者なりメーカーがいわば一方的に通報するものであって、これが本当に網羅的かという保証は何もないわけです。一応我々は重大事故について全部だと理解していますけれども、アメリカで起こっているnational estimatesの数字などと比べると、日本ははるかに少ないのですね。ですので、やはり実は全数ではないのだろうと思うのです。そうすると、全数推計をするためには、7分の1のサンプリングをして10件ありました、したがって全数は70件と推計されます、というような手順を踏んだ調査対象の選定ということがないといけないのだろうと思います。

日本のよさは、メーカーなり消費者なりから直接事故についての報告があって、事故が起こった詳しいプロセスが分かるというところです。消費者庁のデータの場合には、いろいろなソースからのものが同居していますので、これをこれからどのようにしていくのか、まさにこの場で御議論されているのだろうと思いますけれども、世界全体を見ると、病院をベースとした事故情報収集システムが大半ということになっていますので、今の消費者庁の協力病院の設計分かっても、national estimatesがしっかりできるような標本設計がされると大変すばらしいのではないかと思っています。

○大森委員 ありがとうございます。

○山本座長 それでは、お願いします。

○藤田座長代理 2点ほど質問があります。

1つは、今の14ページの表ですけれども、各国で今、データベースがまちまちだというお話でしたけれども、データベースの構造を決めるために、傷害情報のモデル化の話と、属性のメタデータレベルの記述の標準化というのが多分必要だと思うのですけれども、その国際標準化みたいな話というのは動いていたりするのでしょうか。

○三上理事・副学長 例えば労働災害ですとILOで労働災害の記述方法や用いる分類について国際標準があります。一方、製品事故の場合には、まだISOレベルでの国際標準に相当するものはないと思います。消費者クレームについては確か国際標準があります。クレームについての記述項目はこうであるということが決まっていると思いますけれども、製品事故はないと思います。

我々、こういうマニュアルをつくったのは、一つはそういう議論のベースとして、材料になればいいなという思いであります。

○藤田座長代理 分かりました。ありがとうございます。

もう一つ追加で、今日、お持ちいただいたコーディングマニュアルを見ますと、かなり項目レベルで詳細にコード化ができるようになっていて、すばらしいと思いました。

これを先ほどヨーロッパとかアメリカのデータとの互換というか、統一的にするためには、今のところコード変換をやらざるを得ない状況だと理解すればいいですか。

○三上理事・副学長 そうですね。例えば傷害分類については、EUもアメリカも基本的にはICDに準拠しているように思います。一方、製品分類は国際的な相違が最も顕著です。危険源の分類もやはり比較ができないのですね。なので、例えばカーテンひもなどで発生する事故を例にとると、ヨーロッパですと窒息(チョーキング)の事故件数も多いし、リコールも非常に多いのですけれども、アメリカの場合に割と少ないのですね。これは本当に少ないのか、あるいは、分類が違うからそのように見えるのか分からない、そういうところが分類基準が違うと客観的な比較にならないという問題があります。

○藤田座長代理 なるほど。分類基準のところを、先ほどもこたつの話とかがありましたけれども、各国の文化に根ざした部分というのは、独自で策定して、セットをつくらざるを得ないという感じになっていくと思えばいいでしょうか。共通部分はもちろんできると思うのですが。

○三上理事・副学長 そうですね。ですから、国際標準の分類の中の、例えば5の83番に家庭用暖房電気器具というのがあったとしたら、その中にこたつは入れましょうと。日本ではそこに必ず入れましょうねということが決まっていればいいのだと思うのです。新しい項目を立てる必要があるかもしれません。でも、できる限り既存の分類体系の中に入れてしまうのがいいかなと。

○藤田座長代理 分かりました。ありがとうございました。

○山本座長 そのほか、いかがでしょうか。

では、市瀬委員、村田委員の順番でお願いします。

○市瀬専門委員 非常に参考になるお話をどうもありがとうございます。

海外のほうですと、病院から主に集めるという形で、病院をサンプリングして集めるというのが主流だというお話があったかと思います。そうなると、各病院に均等に事例が来るという前提になるかと思うのですが、救急治療をやっている病院をサンプリングしていると、例えば日本であった事例で、皮膚に傷害が出たとか、そういったものは、緊急といえば緊急かもしれないですけれども、そういったところが落ちてしまうような気がしたのですが、そういった問題はないのでしょうか。

○三上理事・副学長 あると思います。今、御質問を受けながら、そういうことはあるなと思いました。

多分、疾病と傷害の境目みたいなところがグレーゾーンとしてあるのだろうと思います。アメリカの場合にはCDCがありますし、疾病は多分CDCのほうで扱って、エマージェンシールームが扱うようなものをCPSCが扱うというようなデマーケーション(役割分担)になっているのかなと想像します。

○張特任講師 救急の場合は、タイムリーで、すぐ傷害情報を集めることはできるから、傷害の優先順位を決めやすいところもあって、救急病院、救急センターから事故を集めるのを中心にしていると思います。

○山本座長 さらに何かございますか。よろしいですか。

それでは、村田委員、お願いします。

○村田専門委員 大変興味深いお話をありがとうございました。

統計的な標本設計の話は非常に興味があるのですが、技術的な話なので、また別の機会に話をいただければと思いまして、今、お伺いしたかったのは、NITEの事故データの記述文をコーディングするというお話ですけれども、私のほうもデータの分析をしているのですが、20ページにNITEの自由記述文とNEISSの事故データベースの記述文の比較がちょうどいい例としてあるのですけれども、NITEのデータですが、被害者の属性、年代とか性別とかが、データにはコード化された項目としては入っていなかったように思うのですけれども、その点について、自由記述文から、補足できる可能性は、今まで使われたところではどうお考えでしょうか。

○三上理事・副学長 実は、NITEは外部に公表しないデータとしては年齢データを持っています。我々はNITEとの間で個別に協議をして年齢つきのデータをいただいています。我々も最初はそのことが分からずに、例えば幼児とか、子供とか、やたらたくさんの表現があって困ったなと思っていたのですけれども、実は年齢はあるらしいと分かり、提供をしていただくことになりました。

そのほかに、NITEではカントリー・オブ・オリジンという、原産国情報を公開していません。

○山本座長 よろしいですか。

○村田専門委員 ありがとうございました。

○山本座長 そのほかにいかがでしょうか。

お願いします。

○長田委員 先ほど先生からのお話であった、日本の医療機関ネットワークがまだまだ非常に不十分という御指摘のところで、今、40未満ぐらいの病院が協力して、情報が入って、その情報とかは先生たちはご覧になったことはあるのでしょうか。

○三上理事・副学長 我々は個別のデータは見ることができません。集計情報としてしかアクセスできないので、それがどういう状態なのか、ぜひそのうち調べたいと思っております。

○長田委員 まだ協力いただける病院を説得してみたいな感じになっているので、なかなか難しいところがあるのかと思うのですけれども、アメリカのようにきちんと予算を付けて、情報収集するのが必要なのだろうというのを、お話を伺っていて思いました。

○三上理事・副学長 そうですね。私も今回、一応レコード当たり何百円というお金をちゃんと払っているのだというのを見て、なるほどと思いました。

○山本座長 よろしいですか。

そのほか、いかがでしょうか。

それでは、お願いします。

○河上委員長 本当にうらやましいようなデータ収集や入力の現実なのですけれども、具体的に病院にとってもメリットというのは何かあるのですか。幾ばくかのお金というのは別として。

○三上理事・副学長 この幾ばくかのお金がそれほどメリットとは思えないですね。そもそも、選ぶときに機械的にサイコロを振って選んでいるのか、ある程度ネゴシエーションのプロセスがあるのかも、ちょっとそこまで我々は分かっていないので、一度訪ねて聞き出してみたいと思います。病院側に協力していただける意思というのがないとだめでしょうからね。66分の1で選ぶとしたら、結構低い確率なので、ちょっと勘弁してくださいよという人がいるとは思うのですよ。そういうときに、決めぜりふとして、何を言っているのか、調査課題にしてください。

○河上委員長 日本でも、なんとか説得をして、そういう情報を提供していただくような仕組みをつくらないといけないとしたときに、病院にとってもこんなメリットがあるのですよというところが言えるといいなと思ったものですから。

どうもありがとうございました。

○山本座長 お願いします。

○相澤専門委員 非常にすばらしい活動をされていると、大変感銘を受けながら、お話を伺わせて頂きました。

あわせてデータの提供者に対するフィードバックのプロセスについても、国際的な状況を、お伺いできればと思います。資料の8ページに、連邦政府の各部局で分析を行っているということが書いてありますが、ただデータをオープンにするので利用して下さいというだけではなく、もうちょっと積極的に、御協力いただいた病院への個別のフィードバックですとか、あるいは政府の各部局に対する啓蒙活動ですとか、そういった取組事例などはございますでしょうか。

○三上理事・副学長 どこかで見たのですけれども、先ほど民族とか人種とか、一部隠している情報があると申し上げましたけれども、ああいうところは多分政府内ではフルに提供したりしているのではないかと思っています。それから、NEISSのデータだけではなくて、詳細調査とか、そういうものもひょっとしたらひもづいていて、そういうものを提供しているのかなとか、NEISS以外の部分は我々からは全然見えないのですけれども、政府内では9ページで言うところのINDP、現場詳細調査のような情報も場合によってはアクセスさせているのではないかと思います。これは想像でしかありませんが。

○相澤専門委員 ありがとうございます。

○山本座長 そのほか、いかがでしょうか。

それでは、お願いします。

○村田専門委員 もう一点だけ、お考えをお聞きしたいのですが、NEISSの利用実績ですけれども、11ページの研究文献の増加のグラフがありますね。その中に「NEISSデータ利用拡大の重要なポイントはコード化。集計・利活用が容易」ということですね。ただ、その一方で、EUのIDBと比べると、NEISSのほうが、自由記述文があるということが一つはメリットということで、そのあたりはどのような切り分けというか、使い方があるのでしょうか。

○三上理事・副学長 自由記述文に含まれる情報は事故の姿を理解する上での補完情報として大変貴重なのですが、30万件というデータ量がありますのでこれを使い切るのは難しいのですね。なので、やはり基本的にコード化されていて、エクセルぐらいでぱぱっとできてしまうというところが、利用の裾野を広げている大きな理由だろうと思います。

我々も、NEISSの自由記述文の情報をまだ使い切っていませんが、例えばある絞り込んだ事故についてどんな事故だったのかというのを目で見て確認するにはいいのですけれども、自由記述文から事故の特徴的な傾向を推測してくださいというと、工夫が必要です。そういう意味ではテキスト情報のコード化がポイントだろうと思っています。

○村田専門委員 ありがとうございました。

○山本座長 そのほか、いかがでしょうか。

○三上理事・副学長 申し忘れましたけれども、コーディングマニュアルについては、こちらの専門委員でもある西田さんがおられる産総研と御一緒にやらせていただいております。

○山本座長 今日は、西田委員は御欠席です。

そのほか、ございますでしょうか。よろしいですか。

私のほうから若干よろしいですか。

今、産総研との協力というお話がございましたけれども、こういった取組をされているところ、特に最後のところにありました国際的にデータを集めてきて、いろいろ分析をしてみようという取組をされているところというのは、海外等に研究機関であるとか何かで、あるのでしょうか。

○三上理事・副学長 どうですかね。

○張特任講師 公開されていないで、あると思います。

○三上理事・副学長 私の同僚の張さんは、もともと西田さんのところにいて、子供の事故データの分析をやっていました。東京成育病院のデータを、病院の了解を得ていただいて、事故分析をやってきました。国内でも、病院データを分析可能な形で、匿名化した上で使って、いろいろな分析をしましょうというグループが西田さんの周りにあると思います。

国際的にというと、我々もいろいろな研究論文を見るのですけれども、まだ国際的に連携してというのはないですね。交通事故はかなり国際的に流通性のある形で提供されています。交通事故の場合、ドイツとアメリカはデータがただなのですけれども、日本では交通事故データは電子ファイルで買うとやたら高いのですよ。我々研究者からすると、あの辺のデータを無償で公開してくれるといいなと思います。

○山本座長 なるほど。分かりました。

もう一つお伺いしたいのは、NEISSの話で、CPSCが一定の役割を担っていると、6ページにまとめて書かれていますけれども、その中に、データの品質管理ということが書かれていて、その前の5ページを見ると、必要に応じてフォローバック調査を行ってデータの信頼性を高めているということがあり、あるいは、9ページを見ると、先ほどのお話にもありましたけれども、小さな実験室があって、現場詳細調査を行うことがあるというお話がございました。CPSCがこういったことをやっているということですけれども、どれぐらいのスタッフがいて、どれぐらいこの作業に労力をかけているかというイメージを教えていただければと思いますが、どうでしょう。

○三上理事・副学長 CPSCの実験室には70人スタッフがいると書いてあったのですけれども、CPSCの全体像というのは、ちょっと私も今申し上げることができません。

○山本座長 全体的にはアメリカのこの種の安全のための行政機関というのは、かなり日本に比べても人員が多いという話は伺ったことがあるものですから、その辺の感じが、あるいは日本と実態が違うのかなという感じも受けたのですが。

○三上理事・副学長 実は、今年秋ぐらいに、CPSCに過去20年ぐらいずっとこれをやっている方がいるので、一度お招きして話を聞こうかなということを考えておりますので、またそういう内輪話を伺ってみたいとおもいます。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかに、いかがでしょうか。

お願いします。

○河上委員長 素人の質問で恐縮ですけれども、私がこれをコードで入力しなさいと言われたら、絶対嫌だと思うのですね。面倒くさくて。

これを例えば自由に自分が述べたい形で情報を作文して、こういう事案だったと打ち込むと、そこから連想して、主要候補が出てきて、コードに結びつくというような、こういう仕組みはできないものできないですか。それとも、これを見て、16の15の11番とか、そのようにして打ち込むほかないのですか。

○張特任講師 今、それをつくっています。記述文章と国際基準の合意の間にギャップがありますね。そのギャップをブリッジするための作業を今、我々はやっています。

○三上理事・副学長 入力を簡素化するための。

○張特任講師 ある程度できたらまた。

○河上委員長 素人であっても、余り訓練していない者であっても、入力ができるようにしないと、なかなか裾野は広がらないのではないかと思うものですから。

○三上理事・副学長 御指摘のとおりだと思います。

○張特任講師 我々が今、雇用しているスタッフは主婦の方ですけれども、1週間毎日、3時間、4時間作業をしていただいていますが、2か月間、3か月間ぐらいで全部なれました。大丈夫です。今、毎日おもしろく感じて面白くて仕事をやっています。いろいろな事故を見て、その知識を身につけて、毎日ストーリーを見たように情報を読みながら、勉強しながらの気分で作業をやっていますと。

○三上理事・副学長 その主婦の方から聞いたのですけれども、最近は電源のソケットを見ると、ふっとやってほこりを払いますと言って。日常生活にも生かしておられるそうです。

○山本座長 ありがとうございます。

そのほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

大変充実した御報告で、アメリカのNEISSの仕組みと、EUの取組につきまして、IDBにつきまして御報告いただき、また、質疑の場面でもかなり我々がこれから作業を進めるに当たって、ぜひ聞いておきたいという点をいろいろ伺うことができまして、大変参考になりました。

他方で、伺った感じですと、国際的にも何かいろいろ取組があるのかなと、何かこういうところに、研究者の側からすると面白い研究対象であると感じて、国際的にもいろいろ行われているのかなと思ったのですけれども、意外とそれほど。

○三上理事・副学長 傷害の原因分類だけは凄く国際的な協力活動がWHOで行われています。その中にある程度場所とか、けがしたときの行為とか、ある種の分類体系になっているので、これは国際的に強調した取組と言ってよいと思います。WHOが協調の場になっていると思います。

○山本座長 WHOが。なるほど。ありがとうございます。

いろいろ情報をいただくことができましたし、長岡技術科学大学の取組も非常に先進的で、ぜひこれからも進めていただけるといいますか、恐らく、消費者庁とか、消費委員会も協力をして、進めていかなくてはいけない取組なのではないかと思いますので、ぜひ今後も進めていただきたいと思いますし、我々も協力をしていけるところはしていきたいと思っております。どうもありがとうございました。

三上理事・副学長と張特任講師におかれましては、大変お忙しいところ、今日は朝早くからお越しいただきまして、御協力いただき、どうもありがとうございました。

○三上理事・副学長 どうもありがとうございました。


≪4.閉会≫

○山本座長 それでは、本日の議題は以上となります。

お忙しいところお集まりいただきまして、どうもありがとうございました。

なお、専門委員の皆様におかれましては、この後、打ち合わせの場を設けておりますので、お時間がよろしければ御参加いただきますよう、お願いいたします。

それでは、ありがとうございました。

(以上)