第16回 消費者契約法専門調査会

日時

平成27年7月28日(火)13:00~16:00

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
山本敬三座長、後藤巻則座長代理、阿部委員、井田委員、大澤委員、沖野委員、河野委員、古閑委員、後藤準委員、増田委員、丸山委員、山本和彦委員、山本健司委員
【オブザーバー】
消費者委員会委員 河上委員長、石戸谷委員長代理、橋本委員
法務省 中辻参事官
国民生活センター 松本理事長
【消費者庁】
井内審議官、山田取引対策課長、加納消費者制度課長、消費者制度課担当者
【事務局】
黒木事務局長、丸山参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 中間とりまとめに向けた検討(1)
  3. 閉会

配布資料(資料は全てPDF形式となります。)

議事録

≪1.開会≫

○丸山参事官 それでは、定刻になりましたので始めさせていただきます。

本日は皆様、お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから消費者委員会第16回「消費者契約法専門調査会」を開催いたします。

本日は所用により、柳川委員が御欠席との御連絡をいただいております。

まず配付資料を確認させていただきます。

議事次第の下部の配付資料一覧をお示ししております。

資料1が本日御検討いただく中間取りまとめ(案)です。

その後ろに関連いたしまして、参考資料1として参考事例集をおつけしております。

資料2が阿部委員提出資料。

資料3が柳川委員提出資料となっております。

参考資料2として、仲裁法施行状況に関する調査結果。

参考資料3として、阿部委員からの提出があった広告関係4団体からの意見書を配付しております。

もしお手元の資料で不足がございましたら、事務局へお声がけをお願いいたします。

それでは、山本座長、議事進行をお願いいたします。

○山本(敬)座長 本日もよろしくお願いいたします。

本日は、中間取りまとめ(案)についての御検討をいただきたいと思いますが、まずはその検討に入る前に、参考資料2としてお配りしております仲裁法の施行状況に関する調査結果について事務局から説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○事務局 参考資料2をごらんください。こちらは本専門調査会、第2回の会議のときに、委員から御指摘があった仲裁合意をされた仲裁法の施行状況についての調査結果を示したものでございます。

同様の調査は平成19年の国民生活審議会においてもなされていたものでございますが、このたび改めて仲裁法がどのように使われているかというところで行った調査の結果です。

2ページに質問事項を記載しておりまして、この質問事項を主な仲裁の主体に送付した上で行った調査結果を示しております。

3ページからその回答結果をお示ししてございますが、基本的には仲裁の申し立ての件数、またはその中で消費者紛争にかかわるもの、そして仲裁合意というものの解除が行われたものを回答いただいておりますけれども、件数ということでは多いものではございません。

10ページ以降に、実際にその仲裁が使われた事案の概要、そして12ページの問4で仲裁合意を解除した事案の概要。13ページの問5でその特例についての意見や工夫等を記載してございます。こちらの資料は、委員の御意見を受けて行った調査の結果を参考としてお配りしているものでございます。この点について改めて論点を提示したというものではございません。

以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

よろしいでしょうか。一番この問題にかかわる山本和彦委員がまだおいでではありませんので、場合によってはまた後で補足いただくことにいたします。

続きまして、本日、阿部委員より、広告関係4団体からの意見書を参考資料として御提出いただいておりますので、その内容について簡潔に御紹介いただきたいと思います。

○阿部委員 ありがとうございます。

参考資料3でございますが、広告関係4団体の消費者契約法の見直しに関する意見書でございます。資料の11ページに具体的な団体名が出ております。全日本広告連盟、日本アドバタイザーズ協会、日本広告業協会、日本インタラクティブ広告協会の4団体です。それぞれお読みいただければ、いわゆる結論は反対というところが多いのでありますが、その中身として広告実務に対する影響ということで、かなり具体的な記載がございます。今までこの場でも広告実務に関する議論はなかったかなと思いますので、ぜひともお読みいただいて御参照いただければと思います。

以上であります。


≪2.中間取りまとめに向けた検討(1)≫

(1)「はじめに」・「第1 見直しの検討を行う際の視点」・「第2 総則」について

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、本日の議事に入ります。本日は中間取りまとめに向けた検討として、資料1の中間取りまとめ(案)について事務局から説明した上で御検討をいただきたいと思います。

なお、本日の進行としましては、この中間取りまとめのうち、まず「はじめに」「第1 見直しの検討を行う際の視点」「第2 総則」についてを1つの区分とする。さらに「第3 契約締結過程」について御検討をいただいた後、休憩を挟んで「第4 契約条項」「第5 その他の論点」「おわりに」を御検討いただきたいと思います。つまり、全体を3つに区切って事務局からの説明と、委員の皆様による御議論をお願いしたいと思います。

まずは「第2 総則」までについて検討したいと思います。事務局から説明をお願いいたします。

○事務局 それでは、事務局から御説明させていただきます。

資料1を1ページめくっていただいて、1ページの「はじめに」をごらんください。「はじめに」の一番下の部分に書いてございますけれども、上記のところにはこれまでの経緯を書いてございますが、この中間取りまとめはこれまでの審議の内容を踏まえ、現時点における到達点を整理するとともに、今後の検討の方向性を示すものとして整理してございます。

すなわち、基本的にはこれまでの御議論を記載しているところでございますので、本日も今まで挙げた論点をさらに御検討いただくというよりは、これまでの議論が正しく反映されているかというところで御意見を頂戴したいと考えておるところでございます。

2ページ、「第1 見直しの検討を行う際の視点」を記載してございます。これは諮問事項として記載されていたところ、社会情勢の変化あるいは裁判例の蓄積、さらに経済活動が円滑に進むように留意する必要があるという点であるとか、民法等その他の法律との関係を記載してございます。

3ページからが個別の論点について記載しているところでございます。

基本的にはア、イ、ウという形で3つに分けて記載してございまして、アは問題意識を記載してございます。イでこれまでの意見の概要をお示しし、ウとしてこれまでの議論の到達点、今後の方向性を記載してございます。基本的にはアとイはこれまでの議論をそのまま記載しているという位置づけですので、ウを中心にポイントを絞って御説明差し上げたいと思います。

まず最初に「消費者」概念のあり方でございますけれども、この「消費者」概念のあり方についてはイでマル1~マル5という5つの類型に区分した検討を行ったということを整理してございます。

その上で4ページのウですが、この「消費者」概念のあり方については法の適切な解釈・適用により相応に対処できる場合があると考えられると整理してございまして、他方で実質的には消費者の集合体に過ぎない団体と事業者との間の契約、この点については「消費者」概念を拡張することも考えられるところであると整理してございます。この点は引き続き検討すべきと記載しているところです。

続きまして情報提供義務でございますが、こちらも5ページにイで意見の概要を整理してございます。

情報提供義務については、イの4行目のところですけれども、まず意思表示の取消しに係る部分については、後ほど述べます不利益事実の不告知において検討することとして、ここでは損害賠償を効果とする規定について記載してございます。

ここではその下に記載してございますように、民法改正の議論や裁判例を踏まえた要件等が検討されたわけでございますが、ウで発生要件のあり方については慎重に検討する必要があるということで整理しております。

一定の事項の不告知による意思表示の取消しというものを先ほど申し上げたとおり検討した上で、その上で必要に応じて損害賠償の規定を設けるかどうかということを検討すべきということで整理してございます。

6ページ、契約条項の平易明確化義務ですが、この平易明確化というところは幾つかの論点で出てきた問題でございますが、ここについてはウに記載してございますように、条項使用者不利の原則をどのように具体的に規律するかという点において検討することとするという整理で記載してございます。

4の消費者の努力義務でございますけれども、ここについてはアの下のほうで消費者にはみずから情報を収集する努力まで求めるものではなく、事業者から情報が提供されることを前提として少なくとも提供された情報を活用することが消費者に求められるといった規定であるという前提に、イのところであくまでも努力義務を規定するものであるから削除する必要はないという意見もあったところでございます。

ウの整理としては、現時点では同項の規定を削除しないこととするのが適当であるということで整理してございます。

まず総則までということで、御説明は以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの説明の内容を受けまして議論を行いたいと思います。御意見、御質問のある方は御発言をお願いいたします。

阿部委員。

○阿部委員 お手元の資料2として私どもの意見を記載しておりますが、特に今日御議論願いたいところだけに絞って申し上げます。

まず総則の1であります「消費者」概念の拡張の問題でございますが、ウの結論部分は確かにこのような形で構わないかなと思うのでありますが、仮にいわゆる解釈等で「消費者」概念を拡張するときに一体どこまでなのかという線引きをもう少し明確にしていただきたい。権利能力なき社団全てが消費者に含まれるみたいなことにならないように、ここは具体的に何が消費者と同視できるものなのかということは、きちんと画していただきたいと思います。

次に6ページの3であります平易明確化義務でございますが、法的義務というのは非常に難しいと思うわけであります。平易化と正確性というのは矛盾する概念でありまして、正確に書けば書くほど細かく複雑になって、ある意味わかりにくくなる。一般的な消費者に向けてどの程度の説明をすればいいのかということにもかかわりますけれども、義務と言われましても、条項を平易明確にしたい一方で、逆に平易にするということと正確性が損なわれるというところはセットになる場合もあります。要は消費者に対する事業者のあり方としての義務としてはわかりますが、法律上の義務と言われるとなかなか対応に困るところかなと思います。

以上であります。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見は。大澤委員。

○大澤委員 3点ございます。

1点目ですけれども、「第1 見直しの検討を行う際の視点」の見直しという言葉の意味が若干気になりました。論点の見直しとか、あるいはどのようなところに問題があるということは、この専門調査会の前にも既に消費者委員会のワーキンググループですとか、あるいは消費者庁の平成26年1月からのあの検討会でも既に出されているところですので、今回の専門調査会というのは2ページの最後のところにも書いていますけれども、ふさわしい規定のあり方を考えるということでやっているのではないかと私は理解しておりましたので、見直しというのは間違っているとは思わないのですが、見直しよりはもう少し明確な基準をどうするかとか、もう少し前に進んだ議論だということを踏まえていただきたいと感じました。ただ、これは私の印象ですので、別に必ず直してほしいということではありませんが、単に論点を洗い出したということではなくて、では具体的にこれまで出されていた論点を踏まえると、どういう規定が望ましいかということについてこちらでは議論をしてきたつもりですので、そのような形にしてほしいです。見直しというと少し後ろ向きな印象を個人的には持ちました。

2点目は今、阿部委員がおっしゃっていた「消費者」概念のところですが、基本的なウの部分なのですけれども、ここが若干コンパクトになっているからだと思うのですが、多くの問題が無理に凝縮されているような印象を受けました。といいますのは、3ページにマル1~マル5の5つに区分して検討を行ったということで、マル1~マル5それぞれについてまとめてというよりは、それぞれの論点についてどういう課題があるか十分検討してきたと思いますが、ウのところを見るとマル4の団体のところは切り出されて別途検討するということが書かれていますけれども、それ以外のもの、マル1、マル2、マル3とマル5について、解釈適用により双方に対処できるという形でまとめられているところは若干違和感を感じました。

といいますのは、マル1、マル2、マル3とマル5というのは性質が違う問題だと考えています。マル5というのは形式的には事業者に該当すると言っていますので、形式的には事業者に該当するけれども、それでも保護を考えなければいけないという場面であるのに対し、マル1、マル2、マル3というのはそうではなくて、むしろ形式的にも消費者に近づけたいというか、定義の見直しによっては消費者に当たるという可能性があるという場面ですので、マル1、マル2、マル3とマル5というのは性質が違う問題だと思います。

ですので、ウの書き方「以上を踏まえ」の2行目「その範囲を明確に定める必要がある中で」というところの、ここにまとめられていることが若干違和感を感じるのだと思いますが、マル5の問題とマル1、マル2、マル3の問題は性質が違うのではないかと思いますので、どこまでが消費者契約法でカバーすることが妥当なのかとか、そういうことをもう少し具体的に書いていただきたいと思います。そのようにしないと、ここでわざわざマル1~マル5まで分けて議論した意味が少し薄れるように感じました。

マル4に関しては「他方で」というところから書いてありますけれども、個人的には団体に関して、とりわけ全ての団体に適用を及ぼすことがいいかどうかは別といたしましても、少なくとも消費者の集まりに過ぎないような団体をカバーできるような規定について、基本的には規定レベルで何とか対処できないかについて、もう少し前向きに今後検討すべきだということをもう一歩書いていただけるといいかなと思います。といいますのは、そこに裁判例を逐条解説などで紹介するなどと書いていますが、これだけですと裁判例は私が把握している限りでは地裁の判決1個しかないはずですので、これを載せただけではこういう例がたまたまあったねという印象を与えるだけだと思いますので、規定レベルなどでももう少し考えることを今後やるべきだといったことを書いていただけるといいのではないかと思いました。

長くなって申しわけないのですが、3点目ですけれども、これは3ポツの平易明確化義務のところですが、基本的なスタンスとして特に反対はしませんが、条項使用者不利の原則のところで検討するという、それもそのとおりだと思いますが、ただ、条項使用者不利の原則のところを拝見すると、条項使用者不利の原則のことしか書いていなくて、今の3条1項をどのようなものとして位置づけるかということについてまでは余り書いていないように思いました。具体的には、これは現行法だと努力義務になっていますが、これを法的義務にすべきかどうかとか、こういった論点というのはまだ残されていると思いますので、この点についてもウでは書いていただきたいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見があれば。丸山委員。

○丸山委員 「消費者」概念のところの4ページに関してコメントをさせていただければと思います。

取りまとめられているウの方向で、基本的には異論はないのですけれども、今、大澤委員もおっしゃっておりましたように、実質的には消費者の集合体に過ぎないような団体と事業者が契約しているという場面に、消費者契約法の規律を及ぼしていくことについては賛成しておりまして、これは法改正という方向でぜひ検討をお願いしたいと思っております。基準の明確性というものを保つために、例えば法人ではない団体というものが事業目的ではなく契約をしているといった、そういった割り切った限定をするというのも1つ考えられると思いますので、今後引き続き議論をしていただければ幸いだと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 古閑委員。

○古閑委員 「第1 見直しの検討を行う際の視点」ですけれども、意見の中でこの議論を行うに当たっては、経済再生、経済成長も我が国の重要な課題であって、それとのバランスも大切であるという旨も発言させていただいておりますので、その旨の記載も追加を御検討いただければと思います。

2ページの3段落の末尾に、これも追記を御検討いただきたいのですけれども、「そして、検討に当たっては問題となっている事例が解決されるのかという視点だけではなく、一般の消費者契約に与える影響についても十分留意しなければならない」という旨です。

2ページの下から2行目のところなのですけれども、「法の位置付けを踏まえつつ」を「法の位置付けを踏まえ、個別の業法の制定改定過程で検討されてきた事項が事実上、ないがしろにならぬよう、細心の注意を払いつつ」というのも追記を御検討いただきたいと思います。

「第2 総則」ですけれども、4ページのウですが、現行法では事業者間契約となるが、実質的には消費者契約と見るべき場合の「消費者」概念の拡張については、事業者間取引や法的安定性が阻害されることのないよう、画一的に判断できるような明確な基準が引けるのかを議論した上でという趣旨の追記を御検討いただければと思います。

今、かいつまんで申し上げましたけれども、よろしければ詳しくは後で事務局にペーパーをお渡ししたいと思います。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、山本健司委員。

○山本(健)委員 これまでの議論の経緯を迅速かつ端的に取りまとめていただいた事務局の御尽力にまずは感謝申し上げたいと思います。

この専門調査会の議論状況の現時点における中間的な取りまとめとしては、原案の記載は基本的に穏当なところであろうと考えております。その上で2点、御検討をお願いしたいと思います。

1点目は、第2の1の「消費者概念」のところです。4ページのウの5行目で、原案の字句は「現行法では事業者間契約となるが」とされているのですけれども、この点については「現行法を形式的に当てはめると」という表現が正確ではないかと思います。東京地判平成23年11月17日は、現行法のもとでも権利能力なき社団であるスポーツクラブチームと事業者との契約を消費者契約に該当すると判示しており、「現行法では事業者間契約となる」という表記は不正確であるように思います。

2点目は、第2の4の「消費者の努力義務」のところです。7ページのウで「情報通信技術の発達により、消費者自身が情報を収集する手段や入手可能な情報量が増加している側面もあること、(中略)、同項には、引き続き、意義があると考えられる」とされている部分です。このような御意見が議論の中で出ていたということ自体は否定しませんが、この規定については削除すべきという意見も数多く述べられていたところであり、少なくとも今読み上げさせていただいたような御意見が本専門調査会の多数意見であったわけではないと思います。

したがいまして、この部分の記載についてはイのほうに移していただくことをご検討いただきたいと思います。例えば、イの部分を「・・・という意見もあったが、法3条2項は1項と表裏であり、あくまでも努力義務を規定しているものであるから削除する必要はないという意見や、情報通信技術の発達により消費者自身が情報を収集する手段や入手可能な情報量が増加している側面があることを踏まえると同項には引き続き意義があると考えられるという意見もあった」としていただいて、ウの部分を「法第3条第2項は、その意義に種々の理解の仕方があること、あくまでも努力義務を規定するものであることを踏まえると、現時点では同項の規定を削除することとするのが適当である」といった表記に改めることをご検討いただきたいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 それでは、河野委員。

○河野委員 まず2ページのところなのですけれども、3段落目「また、法施行後の裁判例等や消費生活相談事例の傾向を踏まえ」と書いてあります。消費者にとってみますと、みずから問題に対して積極的にアクションを起こせないといいますか、消費者裁判というのはほとんど実際のところ勝てませんし、そういったところを救おうということで消費者契約法の中にも平成18年に差止め請求が認められるようになりましたし、同様に平成25年に裁判手続の特例法等もできました。ですから、裁判例という記載ですけれども、消費生活相談事例はたくさんふえていると思いますが、それほど実際のところは数がないという大前提でまとめていただけるとありがたいと思います。それが1点目です。

4段落目、下から6行目のところの記載です。「他方で」と書いてございます。「消費者契約法は、個別の業法との関係では、消費者契約に関する一般法に当たる。すなわち、個別の業法が特定の分野に限り適用されるのに対し」ということなのですけれども、この点、個別の業法の多くは行政規制ルールのみの規定でして、民事ルールが定められている法律というのは少ないと思っています。また、特商法のように民事ルールが定められている場合も、法規定の大部分というのは行政規制ルールで民事的効果を持つ規定というのはごく一部だと認識しております。

この点を考えますと、業法で定められているのだから消費者契約法の規定は不要という御意見が出されたところですが、消費者側からすると丁寧にここのところは議論を重ねてきたところだと思っておりますので、もし記載していただけるのであれば、「他方で、消費者契約法は、個別の業法における民事ルールとの関係では、消費者契約に関する一般法に当たる。すなわち、個別の業法の一部に定められている民事ルールが、特定の分野に限り適用されるのに対し」というようなニュアンスで書いていただければと思います。

もう一点、7ページの消費者の努力義務のところで、今、山本健司委員からウのところをもう少し書き直すといいましょうか、議論に即した形でという御提案があったところです。私自身はウのところに、このような感想を持ちましたので御検討いただければと思います。

ここのところは、消費者の努力義務規定を維持する理由として、消費者の情報入手可能性が高まっている側面だけが書いてあると思います。これでは法3条の2項が「事業者から提供された情報を活用し」としている趣旨から考えて、やはりミスリードになるおそれがあると思っています。そもそも消費者の努力義務というのは、大前提として消費者が合理的な選択ができるような情報を事業者が過不足なく提供するということを前提として考えていただきたい。その情報を活用することに努めるというように第3条2項の趣旨を理解しております。ですから、このウのところで一方的な書きぶりになっていると思いますので、そのあたりのバランスを考えて書いていただければと思いました。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、後藤委員。

○後藤(巻)座長代理 4ページのウというパラグラフから上に数えていって4行目のところですけれども、「さらに、マル5については、事業者間の格差の問題は、事業者間取引を規律する法律において考えるべきであり」という部分の「事業者間取引を規律する法律」という表現がやや気になります。これは私が第7回で発言したところとも関係するのではないかと思いますが、事業者間取引を強行的に規律する法律というのは、比較法的には見られますけれども、そういう意味で、ここで実際に適用されるのは主に民法ということになりますが、事業者間取引を規律する法律という書き方をすると、事業者間取引を規律する法律というのがそれなりに数があって、それで規律すればよろしいのではないかという誤解が生まれることがあるかもしれません。そこで、民法という言葉をここで入れていただくか、少し表現を変えるか、そのようにしていただいたほうがいいのではないかという感想を持ちました。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

たくさんの御意見をいただきましたが、事務局からお答えいただくことはあるでしょうか。

○事務局 今いただいた御意見を踏まえて検討したいと思いますが、先ほど古閑委員も少しおっしゃっていただきましたが、修文案がございましたら、その案をいただければと思います。今、控えた部分もございますけれども、よろしくお願いいたします。

(2)「第3 契約締結過程」について

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

続きまして、「第3 契約締結過程」の検討に移りたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。

○事務局 8ページの「第3 契約締結過程」から改めて御説明を差し上げます。

まず1の「勧誘」要件のあり方でございますけれども、ここについては上から4行目ですが、アで問題意識として不特定多数向けのものなど客観的に見て特定の消費者に働きかけ、個別の契約締結の意思の形成に直接影響を与えているとは考えられない場合は「勧誘」に含まれないというところで、この要件が検討されるべきというところで始まってございます。

イの意見概要ですけれども、9ページで第13回の議論状況を書いてございますが、1つは「勧誘」という文言を維持した上で不特定の者に向けられた働きかけが含まれることを示すという案。それから、「また」以下で取消しの規律を適用する対象を具体的に画するという観点から、「勧誘」という文言を違う文言に置きかえて示した案というものがございます。その文言については修正する必要性を指摘されたものですけれども、方向性については支持する意見もございました。

こういった意見を踏まえて、ウのところでは不特定の者を対象としたものであっても、それを受け取った消費者の関係で個別の契約を締結する意思の形成に向けられたものと評価することができると考えられ、事業者が当該事業者との特定の取引を誘引する目的をもってする行為をした場合で、そこに重要事項についての不実告知等があり、これにより消費者が誤認したというときに意思表示の取消しの規律を適用することが考えられる。ただし、適用範囲や事業者に与える影響等については、引き続き検討すべきということで整理してございます。

2の断定的判断の提供でございますが、10ページのウを見ていただきたいと思います。御議論いただいたところで2行目のところでございますが、客観的な効果、効能が問題となる痩身効果や成績の向上といったところですけれども、これについては現行法上の不実告知として捉えられる場面もあるということで記載してございます。運命・運勢等の客観的でない効果・効能が問題となる場合については、後ほど第3の5というところで述べさせていただきます心理状態の利用というところで対処する可能性があるということで検討すべきと書いてございます。

さらに、断定的判断について、その上で、それでもなお財産上の利得に影響しない事項について必要性があるということであれば、それを検討すべきである。また、現行の文言を維持した上で逐条解説に記載することも考えられると記載しております。

11ページの不利益事実の不告知というところですけれども、イのところで第8回、第13回の議論があったところですが、この不実告知型と不告知型に分けるというところで、その基準の明確性についての必要性を指摘する御意見もあったのですけれども、御議論としてはこの類型を分けた上で御議論されていたところだと整理してございます。

そこでウ以下ですけれども、まず不実告知型のほうでございます。こちらについては12ページのウで不実告知型は先行行為として告げた利益、それから、告げなかった不利益というところが表裏一体であるということから、不実告知と同視で取り扱い、故意要件を削除するのが適当である。ただし、現行法の4条2項のただし書きに規定される免責事由については、引き続き検討すべきということで整理してございます。

不告知型でございますが、こちらについては13ページの上から5行目「以上を踏まえ」というところで、第13回の議論の状況を記載してございます。先ほど情報提供義務のところでも述べさせていただきましたが、契約締結過程において情報提供義務が問題となる事案のうち、契約の効力を否定すべきもの、すなわち取消しが問題になるというところは不利益事実の不告知、不告知型において検討するという案が示され、その上で不告知型について先行行為要件を削除した場合に、不告知の対象となる事項をどのように限定するかという検討課題が示され、不実告知型においては後ほど述べます「重要事項」の範囲の拡張論点に対し、不告知型は現行法を維持するという考え方も示されたところでございます。

ウでございますけれども、そういった議論を踏まえまして、不利益事実の不告知、不告知型については裁判例や特商法の類例から先行行為要件を削除することが考えられるところでございますが、事業者の予測可能性は確保するという観点から、告知義務の範囲を適切に画する必要がある。その上で「重要事項」概念について不告知型関係では拡張しないことが適当であり、引き続き実例を踏まえた検討をすべきということで整理してございます。

14ページの4、重要事項でございます。ここについては12ページの下のところで、イの真ん中あたりの「これを踏まえ」というところで、第13回の議論状況を記載してございますけれども、1つは現行法の4条4項各号の事項につけ加えていく中で、必要とする事情をつけ加えた上で例示であることを明示するという案。それから、別の案として必要とする事情に関する事項であるとか、その他の事項を具体的に限定列挙としてつけ加えていくことで議論されていたところですけれども、この限定列挙としてつけ加えていくという方向性には賛成する意見もあったのですが、その文言について適切かという疑問が呈されていたところでございます。

そこでウのところですけれども、「重要事項」の適用範囲を明確にしつつ、裁判例や特商法の規定を踏まえた上で、必要とする事情に関する事項を限定列挙として挙げていくことが適当ではないかと、これまでの議論状況の整理として記載してございます。

さらにその他の事項、有利であることを裏づける事情であるとか、消費者に生じる危険に関する事項等を列挙する、あるいは列挙事由を例示として位置づけることも考えられるところですが、こちらは引き続き検討すべきということで整理してございます。

5の不当勧誘行為に関するその他の類型でございまして、まず(1)で困惑類型の追加でございますけれども、17ページのウを見ていただきまして、まずマル1で執拗な電話勧誘というものが取り上げられてございます。しかし、この電話勧誘については特定商取引法の見直しにおいて、電話勧誘販売における勧誘に関する規制のあり方が検討されておりますので、その状況等を注視して必要に応じ検討すべきと整理してございます。

他方で威迫による勧誘というものが取り上げられてございますが、こちらについては威迫という文言について、事業者が粗野または乱暴な言動を交えて威迫したことを要件とする案などが示されてございましたけれども、その適用範囲を明確にした上で取消し事由として規定することが適当であると整理してございます。

(2)の不招請勧誘についてでございますが、こちらも18ページのウでございますけれども、この不招請勧誘につきましても特商法の見直しで勧誘に関する規制のあり方として検討されているところでございますので、その状況等を注視しつつというところで、必要に応じ検討すべきと記載してございます。

(3)の合理的な判断を行うことができない事情を利用して契約を締結する類型でございます。これについてはアの「そこで」のところですけれども、事業者が消費者が合理的な判断を行うことができないような事情を利用して、不必要な契約を締結させた場合というものを問題点として取り上げているものでございますが、当初イのところで下から3行目、暴利行為準則に関する判例等をもとに検討がされ、19ページの(ア)ですけれども、この暴利行為準則や過量販売解除権などの要件を参考にした上で検討されてございますが、19ページ(ア)の真ん中あたり「委員からは」というところで、マル1の主観的要素について曖昧ではないか。マル2の客観的要素についても不明確ではないかという指摘があったところで、(イ)第14回において主観的要素、客観的要素について分析的に検討されました。

その上で20ページのウでございますけれども、この事業者が判断力の不足等を利用して不必要な契約を締結させるという事例について、一定の手当を講じるということの必要性については、異論がなかったところではないかと思います。その規定を設けるとしても、ただ適用範囲が明確でなければ事業者の事業活動が過度に制約され、事業活動を委縮させたりすることにもなりかねないという御意見もあったところでございます。

これらを踏まえて下から3行目ですけれども、適用範囲の明確化を図りつつ、消費者を保護する観点から規定を設けることについて、引き続き実例を踏まえた検討をすべきということで整理してございます。

21ページの6、第三者による不当勧誘というところでございますけれども、イのところでございまして、民法の96条2項と同様に第三者の不当勧誘に基づく誤認、困惑を取り消すことが問題になっているわけですが、イのところでインターネット上での他人による評判やテレビでの芸能人の発言など、事業者のコントロールの及ばないものも対象に含まれるのではないかという懸念に対して、下から3行目で、取消しが認められる範囲は限定的であるという意見も見られたところでございます。

そこで22ページのウですけれども、上から4行目のところで、事業者が当該第三者の不当な勧誘をしたこと及びそれに起因して消費者が誤認または困惑し、意思表示をすることを知っていた場合について、取消しを認めることについては引き続き検討すべき。また、知っていた場合に認めるとすれば、それを知ることができた場合についてもあわせて検討すべきということで整理してございます。

また、第三者との関係については一定の関係がある場合ということで、現行法第5条1項についても論点として取り上げてございましたけれども、これについては必ずしも契約締結の直前までの必要な段取りを行っていなくても、これに該当する可能性があるという解釈の問題として逐条解説等において記載すべきということで整理してございます。

7の取消権の行使期間ですが、これは現行法の6カ月間、長期が5年というところが短過ぎるのではないかという議論でございますけれども、ここは23ページのウというところで一番下ですが、引き続き実例を調査した上で検討すべきということで整理してございます。

8の法定追認の特則ですが、イの上から4行目の第15回というところで、取引の安定というところが問題になっておりまして、ここを配慮した形で民法で挙げている法定追認事由の一部について法定追認の規定を適用しないという修正案が示されたところでございますけれども、こういう議論を踏まえた上で24ページのウでは下から6行目ぐらい、「以上を踏まえると」というところですが、民法125条第1号に掲げられた全部または一部の履行というものが問題となると考えられる事案であり、これについて消費者契約法に基づく取消権との関係では、同法について法定追認の規定を適用しない、あるいは取消権を有することを知った後でなければ効力が生じないとするかについて、これは当否も含めた上で引き続き検討すべきであるということで整理してございます。

24ページ、9の不当勧誘行為に基づく意思表示の取消しの効果というところでございますが、ここは26ページのウを見ていただきたいと思いますけれども、2行目ですが、効果の範囲として特定商取引法のクーリング・オフをした場合の精算規定を参考にした案が示されており、これについて考えられるところですけれども、消費者契約一般にそのような規定、クーリング・オフ類似の規律を設けることについては、慎重に検討する必要がある。他方で少なくとも新民法の施行により返還義務の範囲が変わるかどうかというところが議論されておりまして、取消した場合に返還義務の範囲を現在の解釈と同じく引き続き現存利益の限度とするためには特則を置くことが必要であると考えられるため、消契法に設けるべき規定の内容について引き続き検討すべきであるということで整理してございます。

説明は以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの説明の内容を受けまして議論を行いたいと思います。ただ、かなり多岐にわたっておりますので、まとまりごとに御意見等を伺うことにさせていただければと思います。

まず、1の「勧誘」要件のあり方について御意見、御質問のある方は御発言をお願いいたします。阿部委員、どうぞ。

○阿部委員 「勧誘」要件の在り方が最大の問題の1つだと考えているわけですが、9ページのウの結論でありますけれども、引き続き検討ということでいいかと思うわけでありますが、特に広告一般と勧誘との境目について、今までの議論で釈然としないところはまだ残っておりますので、ここはきちんと画していただきたいと思うわけであります。

消費者に対して特定の取引の誘引ということであれば、もう少し書きぶりを狭めるというか、明確にできるかなと思っております。広告一般に広がるようなことがあってはならないと思います。ここは厳重に検討してください。

○山本(敬)座長 ほかに御意見があれば。大澤委員。

○大澤委員 これだけたくさんまとめていただいていますので非常に申し上げにくいのですが、日本語の問題で9ページのウの1行目が若干わかりにくいかなと思いました。特定の取引って一体何を指すのかというのは、この委員会の場でもかなり議論になったと思うので、議論していた委員の先生方はわかるかもしれないのですが、この報告書だけ見るとわかりにくいなと思いましたので、例えば「事業者が当該事業者との間で特定の」というように今、書かれていますけれども、要するにこれは当該事業者と消費者との間である特定の取引を誘引するということだと思いますので、それがわかるような形に書き直していただければと思います。事業者が当該事業者と消費者との間でのある特定の取引を誘引するということかなと思いましたので、ここのニュアンスをもう少しわかりやすく書いていただければと思いました。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見があれば。古閑委員。

○古閑委員 8ページのアの2段落に、「不特定の者に向けた広告等を見て契約を締結することも多くなり」とありますけれども、そういったデータが専門調査会で特段出ていませんし、逆に私のほうで、契約締結に至る過程で多くの消費者はいろいろなものを見て総合的に意思形成をしているという資料も出しているところなので、ここの部分というのは趣旨を踏まえて修正を御検討いただければと思います。

8ページのアの2段落目の末尾に、裁判例も見られるとありますけれども、これも御提示いただいたのは1件だと思いますので、そういったニュアンスがちゃんと伝わるように表現を検討いただければと思います。

8ページから9ページにかけてのイのところですが、第8回の専門調査会で勧誘概念を拡張した場合、メーカーの用意した情報を転載した帰責性のない小売業者はどうなるのかという議論があって、帰責性のあるときのみ取消しの対象とするという議論もあったと思いますので、そこも反映をいただければと思います。

9ページのウのところですけれども、8ページのアの1段落目には意思の形成に影響を与えるものを指した記載になっていますので、事業者が当該事業者との間で特定の取引を誘引する目的を持ってした行為のうち、意思の形成に影響を与えるもののことを指すのだと理解をしておりましたので、そういった記載ぶりで、そのニュアンスをちゃんと反映した修正をお願いできればと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見等があればと思いますが、いかがでしょうか。丸山委員。

○丸山委員 今までの質問、意見のところにもかかわると思うのですけれども、勧誘のところの当該事業者との特定の取引を誘引する目的を持ってする行為。これによって取消しの規律適用対象を具体的に画するという説明がなされているのですが、どういう形で具体的に画されようとしているのかが一見するとわかりにくいという印象がございます。指摘がありました広告の種類によって画するという趣旨なのか、それとも広告とかビラなどを打つ主体と販売する主体が分離をするという、そういう場面で画するという趣旨なのか、わかりにくいという印象がございましたので、わかりやすい工夫が可能であれば、そのように書いていただければと思いました。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見等がありましたら。よろしいですか。先ほど大澤委員から、内容は同じであるけれども、表現を少しわかりやすく、ないしはより明確にしたほうがよいのではないかという御指摘もありましたが、それを含めまして事務局からお答えいただくことがありましたら。

○事務局 今、ウの1行目のところで幾つか御意見をいただきましたので、ここは踏まえて検討したいと思います。

○山本(敬)座長 わかりました。

続きまして、2の断定的判断の提供の部分と、3の不利益事実の不告知の部分をまとめて扱いたいと思います。御意見等ありましたらお出しいただければと思います。いかがでしょうか。阿部委員。

○阿部委員 不利益事実の不告知の不告知型の結論の13ページのウでありますが、先行行為要件の削除が考えられると言っております。ここは反対いたします。先行行為があってそれに対して不利益事実を告げなかったということが問題になるのであって、先行行為要件が削除されますと、言わなかったこと一般についてどのような落ち度があるのかということが非常に不安定になります。事業者としてはもちろん説明義務というのはあるわけでありますけれども、言わなかったことについてどこまで責めを負うのかということについては、ここは先行行為として何かいいということを言って、それに対して不利益事実を告げなかったことがセットで問題となっているはずでありますので、このような見直しについては反対いたします。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

大澤委員。

○大澤委員 10ページのウの断定的判断の提供のところですが、書かれていることは確かにこの検討調査会で議論があった結果がウになっているのだと思うのですが、幾つか疑問がありまして、まず上から3行ほどのところですけれども、典型的な事例は、痩身効果や成績の向上その他の客観的な効果・効能が問題となるものであるが、これは現行法上の不実告知として捉えられる場合もあると考えられる。それはそうだと思いますが、ただ、これはここで議論していた中では、確かに不実告知としても考えられますよねという話はあったと思うのですけれども、およそ一般的な消費者から見て、今の消費者契約法を見たときに果たして痩身効果や成績の向上について例えば断定的な表現をしているときに、まず不実告知に当たるんだと考える方ばかりではないのではないかという危惧を持っています。

まずは断定的な効果の書き方をしているというときには、断定的判断の提供に当てはまらないかどうかというのを検討して、そこで例えばいわゆる財産上の利益に限定されるんだという説をとれば、断定的判断の適用は難しいということになって、例えば不実告知とか錯誤の問題になると思うのですが、およそ一般的な解釈としてこの専門調査会以外のいろいろな人の解釈で、まず不実告知として捉えられるというようにいくのが果たして一般的なのかどうか若干疑問を持っていますので、ここに関しては不実告知の場合で効果・効能の問題を捉えるべきだというような書き方をするよりは、もっと端的にこういう客観的な効能・効果を断定的に保証しているものについて、今の断定的判断の提供の規定の中で何か対処ができないかというものを、もう少し検討していただきたいと思います。

といいますのは、10ページの最後の3行のところを読みますと、現行法の文言を維持した上で、必ずしも財産上の利得に影響を及ぼす事項に限定されるわけではないことを逐条解説等に記載することも考えられると書いていますが、ここだけを読むと要するに条文の文言は変えずに、ただ解説の中で財産上のものには限られませんよと書くということだけだと思いますので、これですと今の学説の多数の考え方と余り変わらないだけで、法改正として何も変わらなかった、ただ逐条解説の表現だけは変わったというようになってしまうのではないかと思っていますので、一般的な先ほど申し上げたような不実告知にまず思いつくのかどうかというところも含めまして、よりもっと前向きに経済上、財産上の利得に関係しないようないわゆる客観的な効果・効能について断定的な判断をしているものについて、今の断定的判断の提供の規定の中で何か対処の道はないかということをもう少し前向きに今後検討するべきではないかと考えています。その意見からすると、このウの書きぶりは若干消極的というか、わかりづらいなと感じました。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

痩身効果や成績の向上にかかわる問題を現行法の枠内で対応できるかといいますと、ここに書かれている問題のほかに、将来における変動が不確実な事項なのかどうかという問題もありまして、これは立法当時から指摘されているところです。それが解釈でクリアできるかという問題も残ってしまう可能性がありますので、これも検討課題かもしれません。

では、事務局から。

○事務局 今の大澤先生の御指摘についてですけれども、対処の必要性の有無については、不実告知あるいは第3の5に記載するような類型で対応することが適当であるとした上で、その上でなお対象にする必要性があるかどうかを検討すべきということを下から4行目、5行目で記載してございます。

その上で、今の大澤先生の御指摘は、修文というような形でのイメージであれば、どういった形をイメージされているのか少しお伺いできればというところでございます。

○大澤委員 文章の修正案ということでしょうか。代案があるわけではないのですが、まず一番気になりましたのは上から3行目のところの、これは現行法上の不実告知として捉えられる場合もあると考えられる。それは正しい記述だと思うのですが、これらの問題も不実告知の問題に投げてしまうというか、完全に移してしまうかのような印象を受けたので指摘した次第ですので、申しわけありませんが、文章の代案は思いついていません。今後思いついたら御連絡いたします。

以上です。

○山本(敬)座長 最後に、「今後これらの事項についても対象にする必要性があるかどうかを、その上で検討すべきである」ということで、大澤委員の御指摘が含まれているのではないかというのが事務局の指摘でしたが、恐らくそれはそのとおりではないかと思います。

それでは、ほかの点についていかがでしょうか。古閑委員。

○古閑委員 3の柱書きのイですけれども、これは特に異論はなかったという結び方になっておりますが、第13回の専門調査会で基準を明確にできないのであれば分けるべきではないという意見も述べておりますので、その趣旨を御反映いただきたく、同じくウにもその趣旨を御追加いただければと思います。

(1)の不実告知ですけれども、11ページのイの第2段落の「他方で」の後ろに、これも13回で述べたところですが、不利益事実の不告知において故意要件が定められたのは、事業者の積極的、作為的な行為を要求される規範であることから、取引の安定性を配慮したためとされているが、現在において取引の安定性を劣後させるだけの社会情勢の変化があったのかはもう少し議論すべきという意見を述べておりますので、その旨も追記を御検討いただければと思います。

11ページのウですけれども、不実告知型の事案と不告知型の事案を明確に分ける基準ができなかった場合には、不告知型と思われるような事案が故意要件を削除されるといった扱いになることもあり得ますので、ここも意見としては留保したいという思いでして、引き続き検討というようにしていただけないかと思っております。

(2)の不告知型ですけれども、ここの今の13ページの書きぶりですと、前提として現在の重要事項の概念がそのまま情報提供義務に当てはまることのようにも見えますので、そういったことでいいのかというところは必ずしも結論が出ていないと思いますので、もう少しそこの部分も踏まえて検討という書き方にしていただけないか、御検討いただければと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

不利益事実の不告知に関しては、不実告知型と不告知型を区別して、それぞれについて要件を考えるという仕組みでこれまで考えてきました。その区別の基準が明確であれば、それもよいけれども、区別の基準が必ずしも明確に立てられないのであれば、その前提自体をさらに検討する必要があるという御指摘かと思います。

区別の基準に関しては、この中間取りまとめ(案)の中には明確には書かれていないところですけれども、これまでの議論の中では出ていたように思いますので、確認させていただいてよろしいでしょうか。

○消費者庁加納消費者制度課長 消費者庁から御説明させていただければと思いますが、第8回、第13回で消費者庁からペーパーを出して議論をいただいたわけですけれども、その際にいわゆる不実告知型と不告知型という形で分けているのは、裁判例の状況を踏まえてということを御説明いたしました。

裁判例の状況はどうなっているかということでございますけれども、いわゆる先行行為というものがございまして、一定の利益となる旨の事実を告げるということであり、かつ、その先行行為を前提として一定の事項について告げない。現行法の4条の2項に規定がありますけれども、何について告げないかということについても現行法は重要事項についてであるということでありまして、当該告知により当該事実が存在しない。消費者が通常考えることに限るという形で一定の概念を画していると思います。

そういった何について告げないのかということにつきまして、先行行為と関連性が強いものという形で対象を画していると思いますので、そういったものについて告げないという場合について、不実告知型という形で整理できるのではないか。逆に先行行為との関連性が弱いというものもあるということでありまして、そういった裁判例もあるということを踏まえて、関連性が弱いものについては不告知型ということで整理することができるのではないかということでありました。

ですので、あえて基準が何かということについてお答えをしますと、先行行為があって、一定の事実を告げないという形に条文の規定がなっているわけでありますけれども、告げない範囲が何かというのがある程度画されているかどうかというところではないかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

4条2項の括弧書きの部分、つまり「当該告知により当該事実は存在しないと消費者が通常考えるべきもの」という基準を言葉どおり適用するというのが一応の基準であるという御説明だったように思います。さらにつけ加えますと、これは私自身たくさん裁判例を見たときにわかったことですけれども、当該告知、つまり利益になる旨の告知なのですが、その利益が特定して述べられているときは、この特定の利益を告げた以上は、通常、この不利益事実はないと考えられる。それを告げていない場合に、不利益事実の不告知として取消しが認められているケースでは、故意を認定しないまま、ないしは故意を推定してしまうような形で取消しが認められています。これが不実告知型というものが存在するという理解の前提にあったことだと思います。そのような裁判例にみられる状況を言葉にして規定することが、ここでの前提だったと思います。括弧書きをそのまま維持した上で、さらに利益になる旨の特定性が要件になってくると思います。そういったことを含めてこの区別が成り立っていることが、もう少し明確に読み取れる表現ぶりのほうがよいかもしれません。

よろしいでしょうか。今の点について特に御意見あるいは御補足いただくことがあればと思いますが、いかがでしょうか。松本理事長、どうぞ。

○国民生活センター松本理事長 断定的判断と今の不利益事実の不告知の部分の関連性なのですが、断定的判断の提供の範囲をできるだけ広げようという考えをお持ちの方がいらっしゃることはよくわかります。しかし、前にも言ったかと思いますが、本人の努力と全く無関係な次元で変動する事柄について断定的判断の提供を告げるということは非常に問題があるけれども,それは不実の告知ではありません。その典型は市場価格がどんどん変動していくものについて絶対にもうかりますというものです。

他方、このサプリを飲めばやせますというのは、そのサプリだけで、あとは食生活を変えず、かつ、運動もしないでやせますということは不実の告知だろう。あるいは不実告知型の不利益事実の不告知だろうと思うのです。ですから、救済できればいいんだということで断定的判断の提供の範囲を広げるというのは、各条文の関係を非常に不透明にするので、それは避けたほうがいいのではないかと思います。Aということだけで確実に何々になるのではなくて、隠れているところのBとかCとかも伴って初めて当該広告で言われている効果が生ずるのだとすれば、それらのことを正しく言わないとだめなのだろうと思います。

○山本(敬)座長 ほかに御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。後藤委員。

○後藤(準)委員 不実告知のところで12ページの部分で故意要件は削除すると出ているのですが、故意要件を削除するのであれば、事業者の軽過失の場合の免責事由もきちんと設定する。そういった形にぜひしていただきたい。そうしないと常に軽過失で取消しがされることになったりすると事業者にとってはかなりの負担になってくる。いずれの場合でも挙証責任というか消費者側が事業者側の故意である立証ができないからこれを削除するという言い方に多分なっているのだろうと思うのですが、これはそうすると事業者側に一方的にあらゆるツケが回ってくると思われますので、これはぜひとも軽過失の場合の免責事由もきちんと設けてもらいたいと思っています。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

では、山本健司委員。

○山本(健)委員 ありがとうございます。

今回の中間取りまとめ(案)は、これまでに各委員から種々の意見が出た議論状況の中間的な取りまとめである以上、個々の委員の意見がそのまま会議体の取りまとめ意見にならないのはやむを得ないところであると思います。

原案のウ部分の記載については、当方の意見とは異なる点が多々ございますけれども、この専門調査会の議論状況の現時点における中間的な取りまとめとしては、基本的に穏当なところではないかと思います。

そのような観点から、11ページのウの点ですとか、12ページのウの点については、原案のとおりでいいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

大澤委員。

○大澤委員 先ほどの松本先生の御意見も踏まえまして、もう一度考えてみたのですが、ここは類型の区別、類型の区別というのは先ほどの3ポツの不実告知型と不告知型だけではなくて、断定的判断の提供等も踏まえて、改めて4条に記載されている、いわゆる誤認類型についての類型の線引き自体の見直しにもかかわっているのではないかと思いましたので、これについても一言入れたほうがいいのではないかと思いました。場所は具体的にはわからないですが、1つとしては9ページの断定的判断の提供の前のところで、今の恐らく現行法の条文の順番に書かれていると思いますので、その冒頭のところが1つ考えられるかと思いました。

あるいは議論を伺っていると、基本的には不利益事実の不告知型が中心と言ったら言い方に語弊があるかもしれませんが、その中で不実告知型と不告知型に分けて議論していて、そちらがまずメーンになっていて、それと少し違うものというか、少しずれてくるものとして断定的判断の提供というものが捉えられているような気もしますし、あるいは断定的判断の提供に当たりそうな事例でも不実告知型とか、あるいは不告知型と重なりそうな事例があるということを踏まえると、この三者の関係について、これは恐らく4条の現行法の類型分けそのものの見直しにもかかわってくると思いますので、これはどこかに入れたほうが現行法との関係でこの報告書を読む人にとってはわかりやすいのかなと思いました。

現行法との関係でこの報告書を読む人から見ると、「勧誘」要件のあり方の次にいきなり2号の断定的判断の提供が来ていまして、不実告知というものが条文で言うと抜けているわけですので、条文の順番どおり読む人は恐らく理解できると思うのですが、いきなり断定的判断の提供が出てきて、後で不実告知型と不告知型と出てきますので、それがどうしてこうなったのかというものについては書いたほうがいいのではないかと思いました。

重なる意見かもしれませんが、以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

沖野委員。

○沖野委員 全般的にウの記載について山本健司委員がおっしゃった一般的な立場がそういうことだろうと理解しております。取りまとめという観点からの制約があるだろうということです。ですので、本日の御意見が出た点についてのみ申し上げたいと思います。12ページの不実告知型のウと13ページの不告知型のウについてです。

まず、12ページのウにつきまして、特に4条2項ただし書きの規定の取り扱いですけれども、これが不実告知型であると整理したときには、まさに不実のことを告げたと捉えたというタイプですから、そういう類型として整理したときに、このただし書きというのがどうなるかというのは、その性質決定との関係がありますので、これは引き続き検討すべきという扱いとすることが、基準とすることからは適切だろうと思います。もちろん引き続き検討すべきですから、置くという可能性もあるわけですので、しかし、性格づけとしてはそのようなものですから、ウはこの記述のままのほうが適切ではないかと思います。

13ページのウに関しまして、先行行為要件の削除に対して阿部委員から強い反対があったと理解いたしましたが、そういう意見があるということはもちろん示されているわけですが、その御意見の趣旨は、言わなかったことについてどこまで責任を負うか、言いかえると、どこまで言わなければならないのかという対象範囲を明確にすることが重要であるという観点からのものでございますので、ウにつきましては先行行為要件を削除することが考えられるが、予測可能性を確保するためには、その範囲を適切に画する必要があるということで、阿部委員の御指摘の懸案は、まさにここに盛り込まれていると思いますので、ここの記述もこのまま維持することが適切ではないかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

よろしいでしょうか。事務局から、以上の意見を受けてお答えいただくことがあればと思いますが、いかがでしょうか。

○事務局 いただいた意見を踏まえて検討したいと思いますが、これまでの議論の整理であるというところがございますので、その観点も含めて検討させていただきたいと思います。

○山本(敬)座長 河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 消費者の判断を誤認させる誤認惹起のタイプの勧誘行為をどのように類型的に分けていくかという部分が最後残ってしまうのですけれども、要するに事実と異なることを告げてしまったときには、これは事業者側にとってみると主観的な要件は要らなくなってしまうということで、そちらに近づけていけばいくほど事業者としては厳しいという感じになるのだと思うのです。

不利益事実の告知の場合も、先行行為でもってある程度言うべきことは決まっているのに、それを言っていないと言われるから、不実告知型に近づけていけば、それだけ要件は厳しくなってきてもやむを得ないという判断になるのだろうと思います。

今いろいろ出てきている懸念というのは、類型の中にどういう要件で押し込んでいくかということとの関係になると思いますので、御意見を参考にしながらまとめていくことで、現時点で事務局のまとめている仕方で共通認識を持っていただければ、先に進めるのではないかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

続きまして、4の「重要事項」と5の不当勧誘行為に関するその他の類型をまとめて扱いたいと思います。御意見等ありましたら。阿部委員。

○阿部委員 「重要事項」につきまして、15ページのウの結論でございますが、前段は賛成いたします。一方で、「消費者が当該消費者契約の締結を必要とする事情に関する事項」以外は慎重に考えていただきたいと思います。特に「重要事項」を単に例示とされてしまうと非常に不明確になります。今までの議論の中で出てきた事例につきましても、前段でここまで追加されたら救済は十分に可能かと考えておりますので、前段の「適当と考えられる」というところまでで終わっていただきたい。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見ありましたら。古閑委員。

○古閑委員 「重要事項」のところですけれども、追加列挙のところなのですが、「消費者が当該消費者契約の締結を必要とする事情に関する事項」ということで、特商法も踏まえるような流れがありますけれども、特商法のほうは訪問販売と電話勧誘販売についてのみ適用があるものなので、取りまとめとしては、そこに拡張するところも適当ということではなくて、再度ヒアリング等を行った上での検討という形にしていただけないかと思っております。ここは御懸念されている事業者さんも結構ありまして、例えばどうしてもこれを入れるということであれば、消費者側の内心の事情等については通常、事業者は知り得ないため、消費者から事業者に内心の事情等の表示があった場合に限るとの限定を加えるなど、そういった議論も引き続きしていくべきではないかというところもありますので、お伝えいたします。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見等ありましたら。後藤委員。

○後藤(巻)座長代理 17ページのウの一番最後のところで、現在の困惑類型に威迫を追加していただき、取消し事由として規定することが適当であるとまとめていただいたのは、我が意を得たりということで、ありがたく思っております。

その上で少し気になりますのが、執拗な電話勧誘、不招請勧誘の部分が特商法の検討を注視していくという取りまとめになっておりまして、これを特商法で検討することについては特に異論はないのですけれども、ただ、執拗な電話勧誘とか不招請勧誘については、私生活領域への侵入とか、私生活の平穏を害するというような問題が本質的な問題としてあるのではないかと思いますが、このようにペーパーになっているものを見ますと、このような本質的な問題に関する言及が取りまとめから漏れてしまうような印象があります。

そういうことで、表現としては適用範囲を明確にしつつ、取消し事由として規定することが適当であると書いていただいておりますので、この適用範囲を明確にしつつという部分で私生活の平穏侵害についても考えていただけたらと思います。このこと自体は、今までの専門調査会での議論の中で中心的に議論されたわけではありませんが、私も第14回で私生活の平穏ということが大事ではないかという発言もしておりますので、適用範囲を明確にという中に、今後、今、申し上げたようなことも考慮していただくことを要望いたします。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、大澤委員。

○大澤委員 議論したのが前のことなので、私の記憶違いだったら申しわけないのですが、17ページのウのマル2の威迫による勧誘というところで、これは威迫等という漢字が抜けているのは何か意識をされているのかというのがまず1点質問したいことです。といいますのは、隣の16ページの(イ)には威迫等と書いてありますので、ここで「等」が抜けてしまっていると、しかもその次に鍵括弧つきで威迫という言葉が出てきていますので、あたかも威迫という類型として要件ではないですけれども、適用範囲が決まったかの印象も若干受けますが、実際には16ページの(イ)にあるように、威迫したことを要件とするという案はもちろんありましたが、しかし、威迫ではさすがに漠然とし過ぎるという意見もあり、逆に威迫だと限定されているという御意見もあって、かなりこれに関してはそもそもどういう場面が威迫等による勧誘に当たるのかというところから含めて、まだかなり議論の余地は残されているのではないか。余り意見はまとまらなかったのではないかという印象を持っていますので、まずはマル2の「威迫による」は差し支えがないのでしたら「等」は残したほうがいいのではないかということと、鍵括弧つきで威迫とつけるのであれば、そもそもどのような場合が威迫等による勧誘に当たるかというところから洗い直して、その上でそれを条文化する場合にはどのような要件で適用範囲を画するかを明確にしつつ、取消し事由として規定することを検討してはどうか。そういったことがもう少しこの文章に含まれていいのではないかと思います。

すなわち、威迫等による勧誘というのは、そもそもどういう行為を念頭に置いているかということをまず検討した上で、その上でそれを条文にする場合にはどういう要件で明確化するべきかという2段階が恐らく議論では必要なのではないかと思いますので、その点を御検討いただければと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 今の点は確認させていただいてよろしいでしょうか。

○事務局 今の17ページのウで威迫の「等」がないというのは、漏れているわけではなくて、外しているものでございまして、それも16ページの(イ)に書いてございますけれども、威迫等による勧誘というところでは、威迫したこと、あるいは粗野もしくは乱暴な言動を交えて、または迷惑を覚えさせるような方法ということで、迷惑を覚えさせるような方法というところも検討されていたところでございます。

ここについては現行法の不退去・監禁や執拗な電話勧誘等の要件の整理が必要であるという指摘もあり、その後の第14回のところでは、この威迫したことを要件とする案と、粗野または乱暴な言動を交えて威迫をしたことという案が提示されているところです。

こういった議論経過を踏まえますと、ここの整理としては、威迫について、粗野または乱暴な言動を交えて威迫というように加えることも含めてですけれども、威迫による勧誘ということで規定していくことができるのではないかということで記載しているものでございます。

○山本(敬)座長 大澤委員、よろしいでしょうか。

それでは、ほかに御意見があれば。山本健司委員。

○山本(健)委員 15ページ「重要事項」のウ部分の記載について、原案を修正すべきではないかという御意見がありましたが、修正する必要はないと思います。

まず第1文について適用範囲のお話が出ましたけれども、冒頭で「重要事項」の適用範囲を明確にするという留保つきなので、原案どおりで特段問題はないと思います。

第2文については、賛成する意見もあった以上、「引き続き検討すべきである」という原案の取りまとめが適切であると思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 今の「重要事項」のところなのですが、ここの追加事項として「消費者が当該消費者契約の締結を必要とする事情に関する事項」という言葉が、特商法をそのまま引用する形で出てきているので、事業者サイドから消費者が一体どういうつもりで契約するのか、内心の意図がどうなのかわからないという不安があるという指摘があったわけですが、裸でこういう文章を出すから、外からは全く見えない動機、消費者独自の動機について事業者はわからないではないかという不安を持たれるのだけれども、ここで言いたいのは事業者が勧誘のプロセス、あるいは広告も含む勧誘のプロセスにおいて、消費者に動機づけをしているというところにあるわけです。その動機づけに際してうそのことを言ったりしているケースが従来あった。シロアリ駆除詐欺商法やリフォーム詐欺商法などが典型ですけれども、事業者が消費者に対して誤った事実を告げることによってその契約が必要だという動機づけをすること、それは不当ではないですか。そういう場合は取り消せるでしょうということなので、もう少しこの文章を展開して書いたほうがいいのではないかと思います。

そのように考えれば、ペンディングとなっているところの当該消費者契約の締結が消費者に有利であることを裏づける事情、つまりお買い得ですよという話ですね。これも事業者が一定の情報を与えることによって,例えば市場価格は物すごく高いけれども,あなたのためのこの価格は安いのですよということを事実に反して告げる行為は,まさに当該契約に誘引するために、契約を締結させる動機づけを与えているわけで、その動機づけのやり方が不当ではないか。事実に反することを言って不当な動機づけをしている。これはよくないでしょうということなので、したがって、消費者の契約締結への動機づけに対する事業者の働きかけというところをもう少し明確に書けば、両方とも当然立法化されるべきことになるということがわかりやすくなるのではないかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 最初のほうにお話したほうがよかったのかもしれないのですけれども、18ページの合理的な判断を行うことができない事情を利用して契約を締結させる類型、これは暴利行為との関係で記述がなされておりまして、そこで社会の高齢化の進展とか高齢者の判断力不十分といったような事情が初めて出てまいります。実はこれは諮問との関係もあるわけですけれども、諮問の中で高齢化の進展に対応してどういう問題があって、必要があるかということを聞かれているので、かなり大事な部分になるのではないかと考えております。

第9回でしたか、消費者庁から出していただいたものの中に、例の適合性原則という言葉が出てまいりました。適合性原則を中間報告でどのように位置づけたのかというのは、実はあのときの議論は非常に漠としたもので、結局、正面から適合性原則に関して何か予見効果を立てることはやる必要はないというか、やれないのではないかということと、それぞれの制度の中で適合性原則の考え方を生かすことになるのではないかという話でまとまったかのように考えております。ここではつけ込み型の類型に関して取消し事由とするという形でのルールが提案されているだけなのですけれども、あるいは問題の背景のあたりで適合性原則というものについての一定の説明があって、その具体的な展開としてここにつけ込み型の規定が用意されているんだという一連のストーリーが書かれていてもいいのではないかということであります。既に消費者基本法の5条であるとか、さまざまな法律の中にこの考え方というのは入ってきているわけですから、その意味でももう少し適合性原則について、概念上いろいろ意見の分布があることは存じておりますけれども、少し書き込んでいくことを考えてはどうかということであります。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

井田委員。

○井田委員 今お話がありました、合理的な判断を行うことが事情を利用して契約を締結させる類型についてですが、20ページのウの取りまとめ(案)につきましては、私は原案のとおり賛成ということでございます。

事業者側の懸念といたしましては、例えば主観的要素につきましては不当に利用するとかいう限定もあり得ると思います。客観的要素について、不必要な契約ということについての御懸念を示される御意見もあったと思うのですが、例えば類似の規定である特商法9条の2の過量販売解除権のたてつけとしては、基本的に分量を超えているかどうかということで、分量を超えていたら過量ではあるが、当該申込者に特別な事情があった場合にはこの限りではないという規定ぶりがなされている。つまり事業者側のほうが特別な事情を立証するというたてつけになっているのに比べると、文言としては確かに不必要な契約というのはわかりにくいという向きもあるかもしれないですけれども、この中で単に数量だけではなくて、当該消費者の契約当時に置かれた事情なども総合考慮して不必要であったかどうかということを消費者側が立証しないといけないというたてつけになっていると思うので、私自身としてはこのような文言でも十分に事業者の御懸念に配慮できているたてつけにはなっていると思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

以上の御意見をいただきましたが、事務局から特にお答えいただくことはあるでしょうか。

○事務局 先ほどと少し重なる部分もありますけれども、いただいた意見のうち、これまでの議論を整理していただいた部分と、少しつけ加わっている部分もあるかと思いまして、そこはまた御相談させていただきたいと思いますが、修正案は検討したいと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、残りの部分、つまり6の第三者による不当勧誘、7の取消権の行使期間、8の法定追認の特則、9の不当勧誘行為に基づく意思表示の取消しの効果について、まとめて御意見等をお出しいただければと思います。いかがでしょうか。阿部委員。

○阿部委員 6の第三者による不当勧誘の結論部分のウでありますけれども、要は知ることができた場合まで広げるということになると、まさにそれは一体どのような事態になるか。知っていたという場合についてもかなり疑問があるわけでありますが、知ることができた場合にまで広げることは反対させていただきます。知っていたという場合はやむを得ないかと思いますけれども、ここの境目というか、どういうことであれば知っていた場合にあたるのかということははっきりしていただきたい。

○山本(敬)座長 ほかに御意見等がありましたらいかがでしょうか。古閑委員。

○古閑委員 6の第三者による不当勧誘につきましては、第13回の際に劇場型勧誘のような事例が挙げられて紹介されていたものについて、その事例に対して規制の案としては広過ぎるのではないかという意見を述べたと思いますので、その追記を御検討いただければと思います。

もう一つ、21ページのイとかウのあたりに、これも第13回で質問させていただいて、知っているとか知り得るの対象が誰なのかという質問について、例えば現場でレジ打ちをしていたりとかする一従業員のこととかを指すものではなくて、責任を有するような立場の方という回答をいただいていたと思いますけれども、その点もこの取りまとめの中に追記をお願いできればと思います。

8の法定追認の特則のところですが、困惑類型の事例を中心に御説明がされていまして、誤認類型までは含める必要はないのではないかという意見も申し上げておますので、そちらの追記もお願いできればと思います。

9の不当勧誘行為に基づく意思表示の取消しの効果のところですけれども、26ページのウの末尾に、なお、不当勧誘の範囲が明確にならない限り、当該改正に伴う影響も評価し難いことから、「不当勧誘行為の範囲について一応の結論が出た後に、この論点は検討すべき」というような趣旨で追記を御検討いただければと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見等がありましたら。河野委員。

○河野委員 7の取消権の行使期間について、23ページの最後のウのまとめでは、引き続き実例を調査した上で検討すべきであると記述されています。この点に対しましては追認後6カ月の行使期間の場合、行使期間が経過してしまうと被害回復は諦めてしまうということが現実なのです。ですからアンケートをとりましても実際は相当数の救わなければいけない事例があるというのは想像に難くないところですので、そういう点を考えますとPIO‐NETに登録された相談を丁寧に読み解いていけば、多数の事例の確認ができるというように思っております。

これはお願いなのですけれども、消費者庁さんと国民生活センターさんに御負担をおかけすることになると思いますが、丁寧に相談事例の読み込みを行って、ぜひここの実例を調査していただきましてしっかりとした根拠になる数字を出していただければと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見等がありましたら。それでは、事務局からお願いいたします。

○事務局 今、幾つか委員から御指摘をいただいていまして、特に古閑委員から幾つか意見を追記ということで御意見をいただいたところでございまして、また修正提案をいただけるという話でございましたが、少し確認させていただきたいのが、意見の追記というところで冒頭申し上げましたように、アで問題事案を書いて、イで意見の整理をして、ウでその意見を踏まえた整理という形で記載してございますが、その意見が述べられた点についてイに追記していくことはそのように追記すべきかと考えるところでございますが、イに記載を追記ということなのか、ウの中で記載しなければならないというようなお考えなのか、そこの点だけは今の時点で御確認させていただければと思います。

○山本(敬)座長 古閑委員、よろしいでしょうか。

○古閑委員 9のところは実際に影響が大きいところだと思うので、できればウにぜひ記載をお願いできればと思います。

○山本(敬)座長 事務局のほうはよろしいですか。

○事務局 では、その点は、どこに記載するかも検討した上で御相談させていただきたいと思います。

○山本(敬)座長 わかりました。

では、山本健司委員、どうぞ。

○山本(健)委員 ありがとうございます。

原案のウ部分の記載は、当方の意見内容とは異なる点が多々あるのですけれども、この専門調査会の議論状況の現時点における中間的な取りまとめとしては、基本的には穏当なところであると思います。本日これまでに出ている御意見は、これまでの専門調査会の議論で表明されておられる御意見内容の確認ということだと思われますので、基本的にイの部分で、これまで述べられた御意見の補充という趣旨で位置づけられるべきものと考えます。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見等がありましたらと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。

それでは、以上、御意見を伺いましたけれども、多岐にわたっていましたので、もし御発言の漏れなどがありましたら遠慮なくお出しいただければと思いますが、よろしいでしょうか。丸山委員、どうぞ。

○丸山委員 24ページ以降の不当勧誘に基づく意思表示の取消しの効果のウの取りまとめのところでございますけれども、いろいろな意見はあるとは思うのですが、特にウの「他方」以下で指摘されているところというのは非常に重要な部分だと思いますので、何らかの手当が必要だというのは、取消しの範囲の拡張にはかかわらず、検討されるべきことだと思いますので、こういった記述というのはぜひ残していただきたいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、最初に申し上げておりましたように、ここで一旦休憩をとらせていただければと思います。14時50分まで休憩をとらせていただきます。14時50分から再開しますので、よろしくお願いいたします。

(休憩)

○山本(敬)座長 それでは、ただいまより議事を再開いたします。

本日の最初に、仲裁法の施行状況に関する調査結果について事務局から説明をしていただきましたが、この点について山本和彦委員から御意見をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

○山本(和)委員 まことに申しわけありません。遅刻してしまいましたので時機におくれたものになりますけれども、コメントをさせていただきます。

いただいた調査結果は大変詳細な調査をしていただき、今後の議論をしていく上での1つの大きな参考資料になると思います。

これを見させていただいた限りにおいては、住宅紛争、建築工事との関係で一定のB to Cの仲裁合意が行われているということはわかり、また、実際にそれに基づいて仲裁事件が行われているということも一定の数あるということがわかった。ただ、それ以外のものについては弁護士会の仲裁を見る限りは、ほとんどB to Cの仲裁は行われていないということではないかと思います。それを見る限りは、現段階で何らか明確な方向性を出すような議論をすることはなかなか難しいことかなと思いまして、今回この仲裁合意の問題について、この調査会として何らかの方向性を打ち出すことは難しいのかなと思います。

ただ、最初に問題提起をさせていただいたように、この問題は司法制度改革の中で最初に議論がされ、現在の仲裁法の附則の規定につながっているわけでありますけれども、これは最終決定というわけではなくて、消費者、事業者の立場を踏まえたフォーラムでより詳細な議論がされるべきであるということで、当面の間の暫定的規律として設けたものでありまして、それが将来にわたり長期に続いて、ずっと何十年もこのままの形になるということは相当ではないと思います。これは仲裁法という民事手続関係の法律と消費者法との中間のもので、こういう分野においてはしばしば問題が放置されたまま、両方のポケットに落ちてしまって議論が停滞することが往々にして見受けられますので、将来のことを考えれば今回は検討が見送られるとしても、引き続きこの問題に目を配っていただいて、消費者委員会においてもどこかで方向性を決めるような議論をしていただければということを希望したいと思います。そのためにこの調査結果というのは1つの大きな材料になるのかなと思います。

私からは以上です。

(3)「第4 契約条項」・「第5 その他の論点」・「おわりに」について

○山本(敬)座長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。

それでは、最後に「第4 契約条項」「第5 その他の論点」「おわりに」の部分についての検討に移ります。事務局から説明をお願いいたします。

○事務局 27ページ「第4 契約条項」から御説明したいと思います。

まず1の事業者の損害賠償責任を免除する条項、現行法8条1項についてですけれども、これについて、現行法の8条では軽過失の一部免責というところは無効にならないわけですが、人身損害については軽過失によるものであっても無効とすべきではないかという議論でございました。

イに議論状況を書いてございますが、28ページのウでございまして、身体に生じた損害については内容がさまざまであって、一定の範囲で事業者の免責を認めるべき必要性もあると考えられるところから、契約の目的、種類、性質、内容、その他の事情を考慮した上で無効とする記述、また、身体ではなく生命だけを区分けするのであれば、その生命に生じた損害については一律に一部免除条項を無効とすることが考えられるということで、これらについては不当条項の類型追加とあわせて引き続き検討すべきであるということで整理してございます。

(2)は「民法の規定による」要件のあり方ということで、現行法の8条で不法行為により消費者に生じた損害賠償、それを民法の規定による責任と定められておりますところ、この民法以外の規定による不法行為責任についても無効とすべきではないかというところで、ここは特段、民法の規定に限る理由はないというところで、異論はなかったとイに記載しており、ウではこの文言を削除するのが適当であるということで整理してございます。

2の損害賠償額の予定・違約金条項についてでございますけれども、まず(1)は解除に伴う要件のあり方でございます。29ページのイですが、第12回の議論を書いてございます。真ん中あたりですけれども、期限前の弁済に伴う損害賠償の額を予定する条項というところで、これがもともと返還時期までに生ずべきであった利息相当額が含まれないことを規定すべきではないかという議論がされていたところでございますけれども、第14回の会議ではこの9条1号の改正の提案として、解除に伴い、損害賠償額の予定条項ということで対処するという案が示されております。

さらに、「解除に伴わない」を外すというところについては、下から3行で債務の弁済等によって消費者契約が終了する場合に伴う損害賠償額の予定条項という形で限定するという案についても御指摘がございました。

29ページのウで、30ページに行っていただいて、消費貸借における期限前弁済について実質的には契約を終了させる点で契約の解除の場合と差異がないというところで、10条により無効となるという裁判例もございまして、この解除に伴い損害賠償額の予定条項、一定の場合にはというところで限定をかける可能性もあるわけですけれども、規律の対象となるような規定を見直すことを検討すべきということで記載してございます。

(2)の「平均的な損害の額」の立証責任でございますけれども、ここは第10回と第14回で御議論いだいたところでございます。

31ページに第14回の議論を記載してございます。まず第1というところでは、事業者が立証責任を負うという趣旨の規定を設けるという案を示しております。次の段落で、第2では消費者は当該事業者に生ずべき平均的な損害の額または同種の事業を行う通常の事業者に生ずべき平均的な損害の額のいずれか、または双方を立証することができるという形で提案をしてございました。

この案についてイの一番末尾ですけれども、また、立証責任の転換という形でなく、もう少し歩み寄れるような折衷案について議論が必要ではないかという意見もあったところでございますけれども、ウですが、最初の段落では立証責任を事業者に転換することも考えられるという記載をしてございますが、これについては事業者に与える影響というところで配慮する必要があるということを記載してございます。

現行法のもとで最高裁では立証責任は消費者にあるとした上で、事実上の推定という余地を残してございます。これを前提としますと、事実上の推定によって同種事業者の損害額を立証した場合に事実の推定が働くことも推認されることが考えられるところでございまして、そういった運用を踏まえてというところで32ページの頭のところで、同種事業者に生ずべき平均的な損害の額を当該事業者に生ずべき平均的な損害の額と推定する規定ということを検討すべき対象として整理してございます。

32ページの3、現行法の10条に関する部分ですけれども、(1)の前段要件については「民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定」の適用による場合に比しというところで、明文の規定と比べてというところが、最高裁では一般的な法理も含まれるという判示がされているところでございまして、その最高裁を踏まえてウのところですけれども、当該条項がない場合と比べて消費者の権利を制限し、または消費者の義務を加重するのかどうかを判断するという規律が適当ではないかということで記載してございます。ただし、具体的な既定のあり方については、引き続き検討すべきと記載してございます。

後段要件でございますけれども、アとイのところに記載してございますが、後段要件については基本的に平易かつ明確ではないことを考慮要素として明記する案が検討されてございました。これについては多くの委員から意見があったところでございまして、平易、明確性については消費者不利の原則等において検討することとしてございます。

その上でウですけれども、一番下の3行、現行法の後段要件は特に見直さないのが適当であるということで整理してございます。その上で「また」以下ですが、後段要件に規定する信義則に反するかどうか、この点について民法1条2項という文言を維持するかという御議論が出ていたところですけれども、法の趣旨・目的に照らして判断されるべきということを解説において明確にしてはどうかということで記載してございます。

4の不当条項の類型の追加でございます。これはこれまで取り上げられた幾つかの条項を取り上げて記載してございますけれども、まず34ページの(1)消費者の解除権・解約権をあらかじめ放棄させ又は制限する条項というところでございます。

まず35ページのウのマル1でございますが、消費者の解除権を放棄させる条項につきましては、解除権を制限する条項との区別を明確にした上で、これを例外なく無効とする規定を設けることが考えられるということで書いてございます。

その際ですけれども、放棄させようとする解除権が解釈上認められるものまで含まれるのか、あるいは法律の明文で認められるものに限定するのかということ、また、実務への影響については勘案して引き続き検討すべきということで整理しています。

マル2の消費者の解除権を制限する条項ですけれども、この場合については前のページ、35ページのイに戻っていただきまして、解除権を制限する条項は(イ)マル2の2段落目のところですけれども、どのようなものを無効とするかというところで、一定の場合には有効な場合があるという議論のもとで、1つは現行法10条の要件に当たる場合を無効とするという規定のあり方、もう一方は、そのような条項を原則として無効とした上で、当該条項を定める合理的な理由があり、それに照らして内容が相当である場合には例外的に有効とするという考え方の2つが示されたところでございます。

その消費者の解除権を制限する条項については、36ページのマル2で記載しておりますように、第15回で示された2つの案のほか、立証責任が事業者に課されることが問題だという御意見のもとで、この合理的な理由の有無の内容や当該条項の内容の相当性についての立証責任を事業者だけに課すものではないという案も含めて検討すべきであるということで整理してございます。

(2)の事業者に当該条項がなければ認められない解除権・解約権を付与し、または事業者の解除権・解約権の要件を緩和する条項ということで、事業者側の解除権に関する規定でございますけれども、これについてもイで一定の場合は必要性があるということが想定されるということで御意見があったところでございまして、36ページのウでは先ほどの解除権を制限する条項と同様に、どのような場合に当該条項を無効とする規定を設けるのが適切かというところで、15回で示された2つの案あるいは立証責任を事業者だけに課さないという考え方を含めて検討すべきということで同じ記載をしてございます。

37ページ(3)ですけれども、一定の作為または不作為をもって意思表示があったと擬制する条項。これにつきましてもイで記載していますように、一律に無効とするのではなく、諸要素を総合考慮すべきである。一定の場合には有効の場合があるのではないかというところで、ウのところですけれども、こちらについてもどのような場合に条項を無効とする規定を設けるのかということで、同じ記載をしてございます。

(4)ですけれども、契約文言の解釈権限を事業者のみに与える条項、それから、契約に基づく権利義務の発生要件あるいは内容についての決定権限の付与をする条項ということでございますが、これについては38ページのイに議論状況を書いてございますけれども、まずイマル1の解釈権限の付与条項については、これにより契約の内容が事業者の裁量によって消費者の意思にかかわりなく確定されるということで、実質的に契約内容を事業者が一方的に決定できる結果になるということで、例外なく無効とするという考え方が示されましたが、これについてはマル1の解釈権限の付与と決定権限の付与の区別が判然としないという意見があったところでございます。

マル2の決定権限の付与条項については、実務上は一定の必要性が認められる場合があるというところで、第15回ではこれを不当条項に一定の類型を加えるということではなくて、個別の事案ごとに信義則、権利濫用、不法行為の適用に委ねるという考え方が示されておりましたけれども、これについても不当条項の類型と区別する理由はないという意見もあったところでございます。

そこでウですけれども、マル1解釈権限の付与条項については、決定権限付与条項の区別を明確にした上で例外なく無効とする規定を設けることが考えられると記載してございます。

他方、決定権限付与条項については、実務上の必要性を勘案した上で、一定の場合には当該条項を無効とする規定を設けるということで、不当条項の規定を設けるということを含めた検討をすべきということで整理してございます。

(5)のサルベージ条項でございますけれども、38ページの下に記載してございますように、その効力を本来であれば全部無効となるべき条項が、強行法によって無効とされない範囲に限定する。法律で許容される範囲において一切の責任を負いませんというものでございますけれども、これについては39ページのウでございますが、問題になった実例等を調査した上で引き続き検討すべきということで整理してございます。

続いて40ページで「第5 その他の論点」に入りたいと思います。

1が、これまでに何度か出てきております条項使用者不利の原則でございますけれども、ここについてはアの2段落目の2行目ですが、条項について複数の解釈が可能であることにより紛争が生じたとき、この場合に問題になるものでございますが、イのところで「これを踏まえ」という段落で、第15回の議論を記載してございます。この条項使用者不利の原則の適用範囲を明確にするという観点から、ここでは定型約款という民法の条項に限定するという案が示されました。

その中で議論としては、通常の方法により解釈してもなお複数の解釈が可能であるときという、40ページの一番下の段落に記載していますけれども、これについて通常の方法というところの意味が議論となったところでございます。

会議の場では通常の方法とは、適法な解釈の方法として一般的に認められる解釈の方法という意味で、各人が通常と思うという解釈の方法を意味するものではないという意見があったところでございます。

ここでウで整理してございますが、まずは定型約款に顕著にあらわれるものと考えた上で、「そこで」以下ですけれども、定型約款の条項について契約によって企図した目的、慣習及び取引慣行などを斟酌しながら、解釈により合理的にその意味を明らかにすることがまず試みられるべきである。これが通常の方法による解釈と呼ぶことも可能であるということで整理してございまして、それでもなお複数の解釈が可能であるときに、この定型約款を作成した事業者にとって不利に解釈しなければならないという記述を設けることが考えられる。他方で、定型約款に限らず、事業者によって一方的に準備、作成された条項、個別交渉を経なかった条項について適用すべきとの意見もあったことですので、これらを踏まえた上で引き続き検討すべきということで整理してございます。

41ページの2、抗弁の接続/複数契約の無効・取消し・解除というところでございますけれども、ここにはイで議論状況を記載してございますが、こちらは産業構造審議会の割賦販売小委員会では、マンスリークリア取引というところに抗弁の接続等の民事ルールを適用することが議論されていたところですけれども、結果的にはそこでコンセンサスを得るには至っていなかったということでございます。こういったイに記載している経過を踏まえますと、ウですけれども、要件を慎重に検討する必要があり、一方でこの問題については法第5条で対処できる場合もあるということですので、状況を見定めた上で必要に応じ検討すべきということで記載してございます。

42ページの3、継続的契約の任意解除権ですが、こちらについては継続的な役務受領と継続的な商品購入と整理して議論いただいたところでございますけれども、特に継続的商品購入型というところで民法上の解約権等が認められないというところが43ページの上のところで記載してございますが、本専門調査会については消費者の任意解除権を規定するのがどの程度の期間のものを想定するのか。また、どのような影響が生ずるのかというところを精査する必要があるという意見が出ていたところでございます。

また、イの一番下のところですけれども、継続的契約の任意解除権が長期間契約に与える影響という懸念も示されていたところでございます。

そこでウですが、このような記述を置くというところについては慎重に検討する必要があるというところでございまして、関係法令の運用や裁判例、相談事例などの状況も見ながら必要に応じ、検討すべきということで整理してございます。

最後に「おわりに」でございますが、44ページでございます。こちらについては最初の3行はこれまで審議を行ってきたということで記載しておりまして、最後の2行でございますが、これも既にスケジュールでもお示ししていたところでございますが、本年秋以降も中間取りまとめをした後に、本専門調査会において団体等からのヒアリングを行うとともに、引き続き課題に関する検討を深めていく必要があると記載してございます。

なお、この点について本日御欠席の柳川委員からは、資料3で意見書を出していただいておりまして、その中で1ページから2ページにかけてのところですけれども、今回の中間取りまとめ(案)である程度合意が得られたという点についても今後事業者ヒアリングを行い、その対象としていくべきだということで書いておりまして、その下に柳川委員からも書いていただいておりますように、基本的には中間取りまとめはそのスタンスに立っておりまして、先ほど重要事項のところで古閑委員が御意見を言っていただいたかと思いますけれども、例えば適当であると記載しているところについてもヒアリングをして、この専門調査外の御意見をお聞きすることは当然前提としているところでございます。記載ぶりについては少し検討させていただきたいと思っております。

以上でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの説明の内容を受けまして、議論を行いたいと思います。ただ、今回も論点が多岐にわたっておりますので、まず1の事業者の損害賠償責任を免除する条項、2の損害賠償額の予定・違約金条項、3の消費者の利益を一方的に害する条項をまとめて扱いたいと思います。

以上、3つの点について御意見等ありましたら御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。大澤委員。

○大澤委員 8条については、特にこのまとめでよろしいのではないかと思います。

2の9条1号に関しては、まとめ方について再度検討していただきたいと思う点が2点ございます。

まず1点目ですけれども、解除に伴う要件のあり方というところで、ここでウのところを見ると例に出されているものが期限前弁済に関する条項だと思います。これは確かにもともと期限前弁済に関する条項を特化してリスト化するかという論点がもともとたしかあって、しかし、それだけを取り出してリスト化するのはどうかという意見があったことも踏まえて、恐らくそもそも解除の場合に限定するという要件がどうなのかという議論の流れだったのでないかと記憶しているのですが、実は解除に伴う要件のあり方が実際に問題になっている裁判例としては、本日の参考資料の今までの事例集で取り上げられていますところで言うと、参考資料1の13ページにある事例2-3のような事例も実際の裁判例では問題になっています。これは建物賃貸借契約における明け渡しをしなかった場合に、賃料相当額の1.5倍の損害金を払うという条項です。この効力が裁判例では問題になっていて、その際にまさしくこの解除に伴う条項と言えるのかどうかという要件が争われている事案ですので、この事案についても事例2-3で挙げている以上は、(1)ではこういう事案もある。そういう裁判例もあるということを踏まえてというのが正しい記載ではないかと思います。

現状を踏まえると、これは期限前弁済よりは、もちろんこちらも大事なのですが、むしろ賃貸借契約のこちらの明け渡し時に関する契約条項のほうが実際には争われていると思いますので、少なくとも30ページのウには両方挙げるのが適切ではないかと思います。これが1点目です。

2点目は31ページのウの立証責任のところなのですが、第14回は私は欠席しておりましたので、議論の雰囲気を正確に把握しているわけではないのですが、32ページの取りまとめ方はやや唐突な印象を受けます。それは本日出されております柳川委員の意見の中でも唐突ではないかという意見が出ていまして、私と趣旨が同じかどうかはわからないところがあるのですが、32ページだけを読みますと、同種事業者に生ずべき平均的な損害の額を当該事業者に称すべき平均的な損害の額と推定する規定を設けることを検討すべきであると書かれておりまして、これですと31ページ(イ)の第2の案が中心にされているというか、第2の案を中心に検討するかのように読めるのですが、私個人の意見を申し上げますと、これは(イ)の第1、第2どちらにも問題があるのではないかと考えていまして、むしろもう少し歩み寄れるような折衷案となるのですが、この専門調査会の議論の全体の雰囲気としても、第1、第2以外の意見というのもあるのではないか、もっと言いますと、第1、第2どちらにも問題があるのではないかという雰囲気もあるのではいなかと思いますが、それであるにもかかわらず、第2の案を検討すべきであるかのような書き方がなされているのは、若干記述に飛躍があるように考えられます。ここで第3の案を言うことは適切ではないと思いますので控えますが、この記述についてはまだ混迷が深まっている状況ではないかと思いますので、第2の案を検討すべきであるという書き方は断定的であるように感じました。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

事務局からお願いします。

○事務局 今、大澤委員から御指摘いただいたことで、後半は検討させていただきたいと思います。

前半ですが、御指摘いただいた裁判例に関係するところで、29ページのイで、とりわけ違約罰を平均的な損害の額で規律することの当否などという、少し関連するような御意見も出ているところでありまして、その事案もウの今後の方向性のところで記載できるかとうところは、少し検討が必要かなと思っております。そこはまた御検討させていただきます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

今の点ないしほかの点についての御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。山本和彦委員。

○山本(和)委員 今、話題になった31ページから32ページのところで、私も14回を欠席していたのでどういう議論になったのかは承知していないのですけれども、この書きぶりだけについてコメントをさせていただきますと、31ページの下から4行目ぐらいに書かれているところで、「この場合」というところですけれども、平均的な損害の額が立証されれば、そこから当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を推認することとなるがと、あたかも当然そうなるように書かれていますけれども、これは少なくとも「推認し得る場合があるが」ぐらいの表現ではないかと思いまして、経験則上そういう場合はあると思いますが、当然にそうなると読めるのはややミスリードかなというのが1つです。

32ページの最後のまとめのところで注51というものがつけられていて、推定規定を設ける場合はその効果については事実上の推定を法定するような場合、法定証拠法則と言われるのでしょうか、そういう場合といわゆる法律上の推定とがあると思うのですけれども、この注51に記載されている効果というのは、どちらかというと前者のような効果を定めているように思えて、普通に推定規定を置く場合の法律上の推定とはやや違う効果が書かれているような気がするのですが、14回の会合でそこまで詰めたような効果の合意があったのかどうか私はよくわかりませんが、もしそこまで詰められていないのであれば、果たしてここまで書くのはどうか。そもそも注51のようなところまでこの段階で書くことは必要があるのかどうかということは私も疑問を持っているということです。

○山本(敬)座長 その点については、事務局からまず御補足していただけるでしょうか。

○事務局 前半の部分はそうかなと思うところがございますので、少し検討させていただきたいと思います。後半の部分は事務局としては前回の議論を整理したつもりでございましたが、山本和彦委員からの御指摘でございますので、少し検討させていただきたいと思います。

○山本(敬)座長 結論としてこのような可能性があるということを図示しながら資料の中で説明されていたことがありまして、それを注に書かれたのだろうと思います。

山本和彦委員、どうぞ。

○山本(和)委員 この特別な事情があることについて立証する責任があるということなのでしょうか。法律上の推定であるとすれば、事業者は自己に生ずべき平均的な損害の額が同種事業者に生ずべき平均的損害の額と異なることまで証明しなければならない。つまり証明手段については証明責任の転換があるというのが法律上の推定の普通の考え方だと思いますので、私の前回の提案はそういうことを言われているのかなと理解したので、それと注51というのは必ずしも整合していないのではないかという感じを持ったということなのです。ただ、御検討いただけるのであればそれで結構です。

○山本(敬)座長 それでは、消費者庁から。

○消費者庁加納消費者制度課長 どうも申しわけございません。多分意図していることは今、山本和彦先生がおっしゃったとおりなのですけれども、特別の事情があることという書き方がよくなかったような気がいたしますので、検討いたします。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

○丸山委員 少々不明確な点を教えていただきたいと思います。29ページから30ページにかけてのウの部分なのですが、まず29ページでは損害賠償額の予定、違約罰全般に解除に関係のない条項についても、規制を及ぼすような形での検討をするというように読めるのですが、他方で30ページに進みますと、実質的に契約を終了させる点で変わらないという記述が出てきまして、そういう契約を終了させる場面での損害賠償額の予定、これについては拡大を検討するというようにも読めます。結局、一定の場合という文章の部分がが、どういう一定の場合を念頭に置いて、これから議論するのか少々不明確になっておりますので、契約の解除にかかわらない、とにかく一般的に違約罰、損害賠償額の予定を射程に入れるのか、それとも実質的に契約終了に伴い損害が発生する場面を念頭に置かれているのか。射程も含めて全般的に議論するというならそれでもいいのですけれども、この点を教えていただければと思いました。

○山本(敬)座長 事務局からお願いします。

○事務局 29ページのイで、「これを受けて」以下に14回の御議論を記載しておりまして、提案としては解除に伴わない損害賠償というものがまず提案されていて、そこで想定されているのは期限前弁済の場面である。期限前弁済については契約終了に類似するという御意見もあったというところで、さらに丸山委員からだったと思いますけれども、一番下のところで債務の弁済等によって消費者契約が終了する場合に伴う損害倍賠償金の予定条項という形で限定するという案も示されていたところでございます。

多分、明確に契約が終了する場面に限定するということでコンセンサスがあったということではありませんが、そういう場合に限定する考え方があるということで、この「一定の場合」を記載しているということで整理してございます。基本的には丸山委員が御指摘になったような考え方で、契約の終了場面を想定して記載しているところです。

○山本(敬)座長 「一定の場合」というのが、それだけを取り上げるとさまざまな読み方ができるので、これで特定できているのかというのが御指摘のポイントだったように思いますので、ここはもう少し表現ぶりを含めて御検討いただくということでよろしいでしょうか。

それでは、ほかに御意見等がありましたら。大澤委員、どうぞ。

○大澤委員 今の点に関係するのですが、契約の終了の場合に限定するということでコンセンサスが得られているわけではないというのはそうだと思いますけれども、解除に伴うという要件が果たしてこれは妥当なのかどうかという議論に関して、私は第14回を欠席しておりましたので余りここで言うのは適切ではないと思うのですが、そのときには恐らく違約罰的なものも含めて多分検討していたのではないかと思います。

先ほど私が意見を申し上げたときに、事務局がおっしゃっていたのは、先ほどの賃貸借の明け渡しの場合の条項というのは違約罰に当たるので、例に挙げるのは適切ではないのではないかと聞こえましたが、それはそうかもしれないのですけれども、だからといってウから外す理由として適切なのかどうか私にはいまいちよくわからないところがありまして、現行法でも違約罰に関しては学説の理解では多数と言えるかどうかはわからないのですが、違約罰というのは現行法だと消費者契約法の10条によるしかないという理解が多いのではないかと思います。それはなぜかというと、違約罰というのは平均的な損害の額で判断できるようなものではない。それだけでは判断できるようなものではなくて、違約罰の趣旨なども踏まえないと判断できないという理解だと思います。

ですので29ページのイの下から5行の記述はある意味で当然の指摘だと考えていますが、そのことで先ほどの明け渡しのときの条項というのは違約罰だと考えると、これは例としてはウに関しては適切ではないことになりますと、先ほどの丸山委員の質問とも関係するところですが、違約罰的なものは一切含めないというか、そういうものは基本的に考えずに、基本的には実質的に契約を終了させるような場面を念頭に置いているということであれば、先ほどの賃貸借の例は外すというのは理解できるのですが、仮にそうではなく、実質的に契約を終了させる場合に限定しない、少なくともそれに限定するというコンセンサスが得られていないということであれば、恐らく従来の議論で解除に伴う要件が必要かどうかという点で挙げられた例というのは、むしろ賃貸借の例ではないかと理解しています。実際その裁判例を指摘して、解除に伴うというように限定する要件は不適切ではないかという意見が学説などでも見られたのではないかと思っております。

しかも参考事例集で先ほど事例の中で挙げられていたことを踏まえますと、今後ウの部分、今の丸山委員の御指摘などを踏まえてどのように書き直すかにもよると思うのですが、契約を終了させる場面に限定しないということであれば、先ほどのような賃貸借の事例も当然入ってくるのではないか。つまり今の法律ですと10条で考えられる違約罰の事例というのも当然入るはずではないかと思いますので、これは個人的な意見になりますけれども、今後別にここで実質的に契約を終了させる場面に限定しているわけではないということであれば、その点はウのところでもう少しわかりやすく記載してほしいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

事務局からお願いします。

○事務局 前提として今、大澤委員から御指摘いただいているように、賃貸借の事例について「解除に伴う」要件がこれまで議論されていたということは承知しております。ただ、今回の専門調査会の議論の整理として、この事案に対応するために何らかの規定を設けるということで議論されていたわけではなかったのではないかと思います。その意味で先ほどイで記載しているいろいろな課題の中で、検討する材料、事例ということでは出てくるということで、多分この参考事例にも挙がっているということだと思います。

そのような状況で、ウで今後の方向性として事例を挙げるのは適切かどうかというのは検討させていただきたいという趣旨でございます。

○山本(敬)座長 大澤委員、どうぞ。

○大澤委員 私が危惧しておりますのは、より端的に申し上げますと、確かに議論として賃貸借の話は余り出てこなかったというのは私も記憶をしています。第14回を欠席していますのでわかりませんが、私が危惧しておりますのは、ウの記述だけを見ると委員ではなく、およそ一般的に外の研究者の方とか、あるいは実務家の方、いろいろな方がこの報告書を見たときに、ウのところで解除に伴う要件というものを今後見直す必要があるという例として、特に期限前弁済においてはという例だけが挙がっているとすると、ではこれに特化した条文をつくればいいではないかという批判が出ないかということを危惧しているというだけです。

つまり特定の期限前弁済だけが挙げられていることによって、だったらそれに対応する規定を設ければいいという話に戻ってしまって、結局、では何でそこから解除に伴わない条項に広げようという議論に進んだのかということが、この期限前弁済の例だけが挙がっていると一般的にはわかりにくいかなと思っただけですが、確かにこの調査会のまとめということであれば、これ以上、意見は余り強く申し上げません。

以上です。

○山本(敬)座長 御指摘のように、これまでの議論の積み重ねの上での中間取りまとめですので、わかりやすくなければいけないと同時に、これまでの議論も反映していなければいけないというところで事務局も苦労しておられるところだと思いますが、御意見を踏まえて御検討いただければと思います。

ほかの点についてはよろしいですか。今の点でも結構です。河上委員長、どうぞ。

○消費者委員会河上委員長 多分、消費貸借における期限前弁済というのがかなり突出した例になっているのでわかりにくいのかも知れません。通常よく問題になってくるのは、レンタルの「延滞料」なんかがそうです。幾つかそういう解除を伴っていないけれども、それに対して一定の違約金というか延滞料なんかが課されている例をつけ加えることによって、具体的にわかりやすくするという方向でまとめてはどうかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ほかの点について御意見等がありましたらお出しいただければと思います。いかがでしょうか。山本健司委員。

○山本(健)委員 ほかの点ではないのですけれども、9条1号の「平均的な損害の額の立証責任」に関する32ページのウ部分の記載については、大澤委員が先ほど2番目に指摘されていた点に私も同意見です。原案の3行目の「規定を設けることを検討すべきである」という記載については、「規定などを設けることを検討すべきである」といった記載に改めるべきであると思います。

9条1号の「平均的な損害の額の立証責任」に関する具体的な法文のあり方については、ほかにもっと良い規定の仕方があり得ないかを含め、今後も検討が継続されるべき課題であると考えます。現時点で「同種事業者に生ずべき平均的な損害の額を当該事業者に生ずべき平均的な損害の額と推定する規定」という対応方法のみに検討対象を限定しようというのは、第14回の専門調査会における多数意見ではなかったように思います。第14回の専門調査会のときには大澤委員から中間案として具体的な条文案が書面提出されていたかと思います。時間等の関係で詳細な検討はなされていなかったと記憶しておりますけれども、今後の検討ではそのような中間案も含めて継続検討されるべきであると思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、続きまして4の不当条項の類型の追加について、御意見等がありましたら御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。では、阿部委員。

○阿部委員 4(1)の消費者の解除権・解約権をあらかじめ放棄させ、または、制限する条項の結論部分のウのマル1でありますが、例外なく無効とする規定を設けることが考えられると書いてありますが、前回も御説明いたしましたけれども、終身年金契約みたいに、そもそも途中解約はあり得ないという商品等もございます。ここの書きぶりはもう少し慎重にお願いいたします。実務への影響などを勘案しつつ、引き続き検討するのは結構でございますけれども、例外もあるということで御議論をお願いします。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、河野委員。

○河野委員 39ページのサルベージ条項なのですけれども、サルベージ条項のある約款を持つ企業を特定して、その企業にかかわる契約トラブルがどのようなものがあるかということで、これを今後まとめのところが問題となった実例等を調査した上でと書いてございますので、ここも先ほどと同じようにPIO‐NETで調べることがその有効な事例収集の方法であるかなと考えておりますので、ぜひこのあたりも丁寧な調査をお願いしたいと思っています。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見等がありましたらお出しいただければと思います。いかがでしょうか。大澤委員。

○大澤委員 36ページ、37ページ、同じ記述が繰り返されているところですが、36ページの上のほうのマル2の最後の3行のところですが、当該条項を設ける合理的な理由の有無・内容や当該条項の内容の相当性についての立証責任を事業者だけに課すものではないこととする考え方も含めて検討すべきであるというのが、言っていることは大体わかるのですが、これが具体的にどういうことを念頭に置いているのかというのがよくわからないのです。といいますのは、これは恐らくその前の35ページの(イ)で立証責任の所在次第では検討の余地があるという意見も見られたという、ここから来ているのではないかと思うのですけれども、つまり立証責任がその事業者に一方的に課せられるというのは困るという意見が幾つかあったということは、この専門調査会であったということは承知していますので、その観点からそうではない考え方も含めて検討すべきであるというように36ページにつながっているのだと思いますが、これは具体的にどういうことをイメージされているのかということを教えていただけないでしょうか。

○山本(敬)座長 事務局からお願いいたします。

○事務局 ここはこの点を議論されたときに、立証責任が特段問題であるというところで、立証責任のあり方によっては歩み寄れるというところの御議論があったことを踏まえているところですけれども、そこはそういう意味でこれから議論を詰めていただくところかと思いますが、例えば規範的な要件とか、そういったものが考えられるのだと思いますけれども、それはむしろこれから御議論をいただくところだと思います。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。ほかに御意見等がありましたらお出しいただければと思います。沖野委員。

○沖野委員 必ずしも取りまとめとしての正確性という点からのものではないのかもしれず、もともとの提案がそういう性格を含んでいたのかと思うのですが、解釈権限付与条項と決定権限付与条項のうちの決定権限付与条項については、他の追加が想定される条項と異なり、第15回で示された2つの考え方のようなタイプの提案がそもそもされていなかったと思います。

それがなぜなのかという問題もあって、そういう中で38ページにある合理的な必要性が認められる場合はないのではないか。この指摘の中には、そうだとすると2パターンがここでも可能性としては入ってくるのではないかということを含意していたのではないかと思うのですけれども、このペーパーだけをざっと見ますと、これだけがほかのものと違う扱いをされているが、それはなぜなのかという疑問を読んだ人は持つと思われまして、そこの説明がないと、なかなかなぜこういう議論なのかということがわかりにくいのではないかと思われます。その点をつけ加える必要はないでしょうか。しかし実はそのことは1つ前のといいますか、もともとの提案においてなぜこの部分だけが他の信義則ですとか不法行為ですとか、そういったものに委ねるという提案になっていたのかを改めて問うことでもあると思うのですけれども。それとともに、合理的な必要性はないので無効とするような規律を設けるとすると、ほかのものと同じように2通り考えられるのか、これだけ違うことになるのか、その点も書いておかないと、なぜこれだけ違うのかという疑問を持たれるように思うのですが、いかがでしょうか。

○山本(敬)座長 これは前に議論した部分ではありますけれども、事務局から補足いただけるでしょうか。

○事務局 まず1つは実際の議論経過を記載するというところがございますけれども、その背景というところだと思いますが、私が理解しておりますところは決定権限付与条項というところは、権利義務の発生要件の該当性等についての決定権限ということで、個別の場面においていわば当てはめるというところで問題性が出てくるところで、その前提のもとに個別の事案で実際に不当にその条項が利用された場合に対応するということで信義則、権利濫用、不法行為等の適用に委ねるという提案がされていたのだと思います。

ただ、その中でそういう考え方に対しては、これについても不当条項として扱うべきではないかという意見が出てきた中で、38ページのウのマル2のような整理をしているのですけれども、先ほど沖野委員も言っていただいたように、ここはほかのところと同じような既定のあり方を含めて検討することは含意しているものでございますが、議論の経過としてそういう形で提案されて議論をしたというところではありませんので、このような記載の仕方をしてございます。

○山本(敬)座長 沖野委員、どうぞ。

○沖野委員 経緯の説明に関してなのですが、それでもこのときにこれだけほかと区別をすることが適切ではないのではないかという御指摘もあり、そうだとしたときのあり方としては、他のものと並ぶということではなかったでしょうか。もとの提案自体は決定権限の付与は具体的にそれが恣意的、濫用的に行使されたときが問題なのだという考え方から出ているということですが、そもそも権限の幅が非常に広いとか、中核的なものに与えられているとか、そういったことであれば大もとが違うということもありますし、他の点で例えば解除権ですと放棄させるタイプと制限させるタイプということで、その軽重といいますか、大小というものがある中で問題があるようなものについて無効とする規律、その中で2つのものがあり得るということを出しているとすると、ウで必ずしも書いてもらう必要はないのかと思いますけれども、他と同様に扱うというか、他と同様の考え方があるということが出されたことを付記していただくと、より明確ではないでしょうか。

○山本(敬)座長 事務局からお願いいたします。

○事務局 趣旨としては先ほど申し上げたように含意しているところですので、記載を検討させていただきたいと思います。

○山本(敬)座長 河上委員長。

○消費者委員会河上委員長 これも全体的な話になって恐縮なのですけれども、第10条の一般条項の意味合いについてであります。これは何度か座長からも発言がありましたし、私も申し上げたことがあるのですけれども、個別の具体的な不当条項というのは実は10条の一般条項の具体化として存在していて、ある意味ではそれぞれの条項がなぜ無効条項とされなければいけないかということの理由が10条を起点として説明可能であるというところがあります。ということで、単にだらだら不当条項例が並んでいるわけではない。とすると、10条のところで介入の基本的な考え方といいますか、信義則に照らして両当事者の権利義務の分配が不公正になっていないかどうか、あるいはそれを期待化するようなことになっていないかということや、当事者間での武器対等原則が破られていないかといったような、いろいろな考え方が考慮の要素としてはあり得るところですから、その部分を10条のところできちんと明らかにしていただいた上で、それぞれの条項の位置づけをすると話としては見えやすいのではないかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

大澤委員。

○大澤委員 今の河上先生の御意見にも関係するのですが、34ページの(1)の上の部分ですが、記述としてもう少し追加してもよろしいのではないかと思っています。

まず追加すべきことというのは、なぜ今、具体的に列挙されている条項を取り上げているのかということです。何度も申し上げて恐縮ですが、不当条項のリストをもっとふやすべきだという議論の中では、ここに取り上げられているもの以外についても多くの提案がされているところだと思うのですが、その中からなぜこの専門調査会で(1)以下のものに特に絞って取り上げているのかということは、どこまで書くかお任せしますが、一言書いてもよろしいのではないか。なぜこれらが特に規定が必要なのかということです。そういう積極的な観点から、特に(1)以下に挙げられているものは特に規定を設ける必要があるんだということは、もう数行書いてもよろしいのではないかと思います。なぜこれらを選択したのかという理由についてということです。それが1点です。

もう一点ですけれども、同じく(1)の上の「しかし」以下の3行のところで、契約当事者の予見可能性を高めるなどの観点からというところで、それは本当にそのとおりだと思うのですが、ここももう少し具体的に単純に予見可能性を高めるという書き方よりは、より踏み込んで、なぜリストというものを10条の具体例として挙げる必要があるのかということにつきましては、この専門調査会でも何度も議論がされてきたところだと思います。私の最初の報告もそうですし、それ以降の議論でもなぜリストを充実させる必要があるのかということについては、例えばいざ紛争になったときの基準の明確化という観点のみならず、紛争予防機能という観点から、事前に事業者にとってもどういう条項であると不当となる可能性があるかということを示す意義もあるといった点も多々指摘されていたと思いますので、そういったことも具体的に書いて、より消費者契約法の見直しに当たってリストの追加が必要なんだということを社会に説得的に示すために、ここはこの6行にもう少しだけでも記述をつけ加えていただければと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見等ありましたら。後藤委員。

○後藤(巻)座長代理 今回の中間取りまとめについて直接その文言を直すとか、そういうことではないのですが、今、河上上委員長からもお話があったところで、10条の定式に乗せた形で不当条項のリスト化を図るという点について少しコメントをしたいと思います。これは第11回で私が発言した内容で、解除権を制限する条項について、10条の定式に乗せるというやり方でいく可能性があるのではないかと申し上げまして、そのときには消費者の解除権を制限する条項は、その制限が民法1条2項の規定する基本原則と比較して、消費者を一方的に害するものではないことを事業者が証明しない限り無効とするという発言をしまして、10条の定式に乗せると言いましても、通常の10条の適用とは違って立証責任は転換するということを意識して発言していたわけですけれども、その後、消費者庁から示されたものは、立証責任の転換というところはなしにして、10条の定式に乗せるという形で出てきているという経緯があります。そのことに関しては、私は消費者庁が出してきた案というのは、当初、私が考えていたものとは違うのですが、これもあり得るなと考えておりまして、当該条項を設ける合理的な理由の有無、内容や当該条項の内容についての相当性についての立証責任を事業者だけに課すものではないこととする考え方も含めて検討すべきであるという、36ページに書いてある部分の要請に、10条の定式に乗せるという考え方が適合的であるという感じを持っております。

だからといって、10条の定式に乗せるということが、全面的によいという発言をするほど今、考えを詰めておりませんけれども、今まで問題となっていたところについての種々の御議論を総合して考えると、私の印象としては、10条の定式に乗せて不当条項リストをつくるということが、10条の一般条項を適用すれば足りるのであって、余り意味のあるものではないとか、あるいは法制上問題となるとか、いろいろな御意見もおありのところだと思いますが、やはり考慮していただくものとして残していただいて、その方向の検討をしていただけたらなと感じております。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

御指摘は、中間取りまとめを踏まえて、その後、続けられる議論の中でさらに検討していくべき課題ではないかと思います。

以上の点についてよろしいでしょうか。古閑委員、どうぞ。

○古閑委員 37ページですけれども、(3)イとして一番最後に「また、当該条項が無効になった場合に及ぼす影響についても」という2行の文章があると思うのですが、これは私が会合の中で(3)の中で(2)も同じですけれどもということで発言をしておりますので、(2)にも同様の趣旨の追加を御検討いただければと思います。

37ページ(4)イ、下から2行目ですけれども、特段の異論はみられなかったというようにありますが、マル1とマル2の区別ができればという話で、できなければこの内容でいいということではないという意見だったと思いますので、そういったニュアンスでの修文をお願いできればと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

以上の点について事務局からよろしいでしょうか。

○事務局 阿部委員に確認をさせていただきたいのですけれども、今日資料2として出していただいているところで、16ページで契約文言の解釈権限あるいは決定権限のところの意見をいただいているのですけれども、ここの意見のマル1解釈権限のところなのですが、事業者側にコンプライアンス上の要請や高い専門性がある場合ということで、一律に無効とすることは不適切ということなのですけれども、このコンプライアンス上の要請や高い専門性というところのどういったものがイメージ、想定されているのか少し御補足いただければと思っております。

○山本(敬)座長 阿部委員、よろしいでしょうか。

○阿部委員 例えば具体的には特定の業法に基づく業務でやり方等にルールがあるようなものです。医療等はこういう場合には関係ないのですけれども、事業者側の専門的な判断を要する役務・サービスみたいなものを考えています。もう少し具体的にということであればお出しいたします。

○山本(敬)座長 解釈権限を付与する条項の効力を認めるかどうかという問題でして、そのような条項が実際にあり、それがどのような合理性を持っているかということについて補足していただければという趣旨だと御理解いただければと思います。よろしいでしょうか。ただ、中間取りまとめについては、次回に取りまとめ(案)について御了承を得られればと思いますので、それまでにお出しいただけますようにお願いしたいと思います。

それでは、最後に「第5 その他の論点」について御意見等をお出しいただければと思います。いかがでしょうか。阿部委員。

○阿部委員 条項使用者不利の原則で41ページでございますが、ウの最後の4行に「なお、定型約款に限らず」とございます。これは私ども議論があるとしても定型約款にかかわるところかなと思っておりますので、余り広げていただきたくないということが意見です。

それから、そもそも定型約款について今、民法の改正法案に出ているものが前提になっているという理解で、それ以上突っ込んだ議論はされていないと思いますけれども、ここは今の民法の改正法案で定めている定型約款が前提だということは再度確認させてください。

○山本(敬)座長 それは、その前提で書かれていると理解してよろしいのでしょうか。

○事務局 そうです。ここの定型約款は民法改正法を想定してございます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、ほかに御意見等ありましたらお出しいただければと思いますが、いかがでしょうか。大澤委員。

○大澤委員 今、御発言があったところなのですが、この「なお」以下は個人的には残してもらわないと困ると思っております。といいますのは、今度の新民法の定型約款の範囲が余り広くないのではないかという意見は第15回の会議であったと思います。そのことからこういった意見が出ていたということもありますので、これは議論のまとめということであれば、残していただいたほうがいいかなと思っております。もちろん実際に今後の中間取りまとめの後の議論で、この意見をとるかどうかというのはまた別の問題となりますし、まずは定型約款に限定してという意見もわからなくはないのですが、ただ、これまでの議論を踏まえますと定型約款に限定するのは適切ではないという意見もあったのは事実だと思いますので。書き方はお任せします。これらの意見があったことも踏まえということで、私は「踏まえ」という書き方ですので別にこの意見を採用しようとは読めませんでしたけれども、議論としてあったのは事実ですので、これは残していただきたいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、ほかに御意見等ありましたらいかがでしょうか。山本健司委員。

○山本(健)委員 今の点に関して大澤委員の御意見に賛成です。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

通常の方法による解釈の意味については、前回、議論していただきました。それを受けて現時点で可能な限りその意味がわかるような書き方をしていただいているところだと思います。その点を含めまして御意見等がありましたらいかがでしょうか。よろしいですか。

ほかの点についてもよろしいでしょうか。

それでは、以上で一通り「はじめに」から「おわりに」までを検討してきました。全体を通じて御補足していただくこと、あるいは御意見があるならば今お出しいただければと思います。山本健司委員。

○山本(健)委員 ありがとうございます。

「はじめに」の部分ですが、原案の第3段落から第4段落では、これまでの経緯が十分に記載されていないように思います。この専門調査会における議論は、内閣府消費者委員会の「消費者契約法に関する調査作業チーム」における1年半に及ぶ論点検討の結果、及び、消費者庁の「消費者契約法の運用状況に関する検討会」における半年間にわたる多くの裁判例や相談事例など立法事実となり得る事実の調査・整理の結果を前提として、議論が開始されております。この専門調査会における議論は、そのような複数の会議体の検討・調査の結果を前提として開始されていること、唐突に議論が始まったわけではないことを、事実経緯のところで記載していただいたほうが、読み手に対して、この専門調査会の位置づけがより明確になると思います。御検討いただければ幸いです。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

古閑委員。

○古閑委員 「おわりに」のところで言うつもりだったのですけれども、最後の下から2行目にヒアリングを行っていただくという趣旨が書かれておりますが、ヒアリングを行って、それを反映させていくという趣旨も何らかのニュアンスで記載いただけないかと思っています。柳川委員から本日出ている御意見に賛成するところでございまして、現時点においては事業者に与える影響の精査が不十分な状況で、この専門調査会でコンセンサスと見られたような部分についても、確定的な結論が得られたということではなくて、そこも含めて意見を聞く、経済活動が円滑に進むように留意し、というところを引き続き見ていく必要があると思っています。

終盤において大分絵姿が見えてきたところではありますけれども、各事業者はそこからみずからの事業への影響について検討を始めているというところも多い状況というのが実態でございまして、そんな中、数少ない事業者サイドの委員である私にも他事業者等から意見を寄せていただくものもありましたが、なるべく御紹介できるよう努めてはいるものの、不十分な点もございます。本日もこれまでの議論に新たな議論を加えることにならない範囲で寄せられた御意見も踏まえて発言はしておりますけれども、もっとしっかりとしたヒアリングが必要であると思っておりますので、先ほど事務局からもその旨の御発言があり、非常に安心しているところではございますが、正当にビジネスをやっている守るべき主体となる事業者がついてこられないような制度を時間をかけてつくり上げてしまったということでは意味がないので、ここでも理論上の議論に終始せず、今後はそこをしっかり反映させていくニュアンスを出していただきたいという意味での意見でございます。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見等がありましたらお出しいただければと思います。よろしいでしょうか。

それでは、そろそろ時間も参りましたので、本日の議論はこのあたりにさせていただきます。

次回の会議では、本日いただいた御意見を踏まえて案を修正し、中間取りまとめを行うことにしたいと思います。引き続きどうかよろしくお願い申し上げます。

最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。


≪3.閉会≫

○丸山参事官 事務局です。

本日も熱心な御議論ありがとうございました。

次回は8月7日金曜日、13時からの開催を予定しております。よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございました。

以上