第5回 消費者契約法専門調査会

日時

平成27年2月13日(金)16:58~19:10

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
山本敬三座長、後藤巻則座長代理、阿部委員、井田委員、大澤委員、沖野委員、河野委員、古閑委員、後藤準委員、増田委員、丸山委員、山本和彦委員、山本健司委員
【オブザーバー】
消費者委員会委員 河上委員長、石戸谷委員長代理、橋本委員
法務省 中辻参事官
国民生活センター 松本理事長
【消費者庁】
服部審議官、加納消費者制度課長
【事務局】
黒木事務局長、金児企画官

議事次第

  1. 開会
  2. 委員からのプレゼンテーション(大澤彩委員・古閑由佳委員)等
  3. 意見交換
  4. 閉会

配布資料(資料は全てPDF形式となります。)

議事録

※議事録本文中の非公開部分については、□に置き換えて表記しております。

≪1.開会≫

○金児企画官 本日は、皆様、お忙しいところお集まりいただきありがとうございます。

ただいまから、消費者委員会第5回「消費者契約法専門調査会」を開催いたします。

まず、配付資料の確認をさせていただきます。

議事次第の下に配付資料一覧がございます。

資料1は、前回の専門調査会において出された主な御意見の概要です。

資料2は、大澤委員からの提出資料で、資料2-1から2-3までございます。

資料3は、古閑委員からの提出資料です。資料3-1から3-3までございます。

そのうち、資料3-2ですけれども、この中で、一部出典の関係で、公表することのできないデータが含まれておりまして、具体的には資料3-2の7ページから11ページと14ページ。このページが「禁無断転載」と書かれておりますけれども、その部分に限り委員とオブザーバーの方以外には非公開とさせていただいておりますので、御了承ください。

配付資料は以上です。もし、不足がございましたら、事務局へお声がけをお願いいたします。

それでは、ここから山本座長に議事進行をお願いいたします。

○山本(敬)座長 それでは、始めさせていただきます。

本日もよろしくお願いいたします。

まず初めに、先ほども資料の確認がありましたが、前回、委員から出された御意見につきまして、事務局から確認をお願いいたします。

○事務局 資料1-1をごらんください。

前回の専門調査会では、沖野委員から阿部委員からそれぞれプレゼンテーションを行っていただきました。

その後の御議論の中では、沖野委員のプレゼンテーション内容をもとに、一般法と特別法との関係につき、今後、個別の論点を検討する上で前提となる共通の理解についてお意見交換を行っていただいております。

また、広告をめぐる論点についても、どのような場合に消費者の意思形成に働きかけがあったと評価できるかという整理の重要性についての意見をいただいております。

阿部委員のプレゼンテーションに関しては、平均的消費者を基準に検討すべきという意見については、ブラック・リストの追加に対する考え方、民法改正の議論との関係についてなど、さまざまな意見交換を行っていただき、今後の議論につながる視点をお示しいただいております。

このような御意見の概要につきまして、この資料1で整理させていただいておりますので、御確認をお願いいたします。


≪2.大澤彩委員からのプレゼンテーション及び意見交換≫

(1)プレゼンテーション

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、本日の議事に入ります。

本日も、お2人の委員からプレゼンテーションを予定しておりますが、今回は、前半と後半に分けて、まず、大澤委員からのプレゼンテーションとその内容について意見交換を行わせていただいて、その後に古閑委員からのプレゼンテーションとその内容についての意見交換を行わせていただきたいと思います。

それでは、大澤委員から「不当条項規制部分の改正に向けた論点・提案」について、プレゼンテーションをお願いいたします。

○大澤委員 法政大学の大澤です。

本日は、不当条項規制部分の改正ということで、現行消費者契約法で言いますと、8条から10条に相当する部分についての論点及び主には提案をさせていただいております。

その前に、本日、配付していただきました資料について、2点ほど補足をいたします。

1つは、エクセルファイルになっている表でございますが、こちらは4ページのほうに注意書きを書かせていただいておりますが、あくまで私が分類したというものととってほしいということです。

といいますのは、ここで表で掲げている条項と完全に文言が一致する条項ばかりが国内の提案やあるいは海外で設けられているわけではないですので、趣旨が同じではないか、ないしは類似する趣旨なのではないかというものを大まかに分類したに過ぎないということを最初にお断りさせていただきます。

また、この表で列挙していないような条項が各提案などで、個別に列挙されていることも少なからずありますが、この表はあくまで多くの外国法やあるいは国内の提案で列挙されているもののみを表にしておりますので、その点もお断りしておきます。

もう一つの資料ですが、私の5年ほど前に書いた論文になっておりますが、こちらを配付させていただいた趣旨といいますのは、これはフランスの話ですけれども、フランスも、最初の法律ができて30年ぐらい経って、今のいわゆるブラックとグレイに分けた2つのリストができるに至りましたというその歴史的な経緯を書いたものでございますので、なぜ最終的にこれだけのリストが設けられるに至ったかということをぜひ読んでいただければということでお配りさせていただきました。

では、報告に入らせていただきます。

まず、10条のところでございます。

「提案」につきましては、事前のレジュメでごらんになっていると思いますので、極力省略して説明をしたいと思います。

まず、10条の提案につきましては、まず、基本的には最高裁の更新料特約に関する平成23年7月15日の判決が示した解釈を法改正にも反映すべきであると考えておりますが、ただ、最高裁の解釈をそのまま反映すべきではない部分も存在していると思っております。

この点について、レジュメのほうでは詳しく書かせていただいております。

まず、レジュメ2ページの「(1)10条前段要件」につきましては、これは最高裁の判決文を引用させていただいておりますとおり、ここで言う任意規定には、明文の規定のみならず、いわゆる一般的な法理、不文の法理も含まれると最高裁は判断しております。

このような解釈は、既に学説でも非常に有力に主張されておりました。

そんな中、民法改正あるいは消費者契約法改正の提案の中では、任意規定という言葉ではなく、当該条項が存在しない場合と比較してという比較対象の文言を設けております。

本提案はこの方向性を支持するものです。

次に「(2)10条後段要件について」につきましてですが、これは2つに分けて説明をさせていただきます。

まず「現行法の民法第1条第2項に規定する基本原則に反して」という、いわゆる信義則に反してというところの要件ですが、私の提案では、この箇所を削除して、現行法の「消費者の利益を一方的に害する」という基準のみを維持するということを提案しております。

その理由は、信義則に反してという言葉が重ねて置いてあることによって、よほど信義則に反するような悪質な条項でない限り、10条に反して無効とならないといった誤った印象を与えてしまうのではないかという趣旨で、この信義則に反してという文言を削除しております。

また、消費者契約法10条と民法の信義則が果たして同じなのかどうかという議論もありますが、この点についても誤解を招くような文言だと考えておりますので、信義則に反してという言葉を削除し、これに対して「消費者の利益を一方的に害する」という今までの裁判例でも一定の機能を果たしていると思われる文言を維持するというのが本提案の趣旨でございます。

次に「マル2不当性の考慮要素について」という10条後段要件に該当するかどうかの、何を考慮するかという点を明文化するかどうかという点でございますが、これにつきまして、学説では、レジュメにもございますように、要は、契約締結時点のあらゆる事情を考慮して、10条後段要件に該当するかどうかを判断すべきであるという説が有力に主張されておりますし、最高裁も先に述べました更新料特約に関する判決の中で、そこのレジュメにも引用させておりますが、あらゆる事情を考慮して、10条後段に該当するかどうかを判断すべきであるとしています。

そうしますと、こういった考慮要素を条文で明文化するかどうかというのが、恐らく論点の1つになるかと思いますが、この点に関しては、私、個人的には幾つか注意すべき点があると考えております。

まず、1つ目ですが、最高裁でも恐らくそういう「契約が成立するに至った経緯」という言葉を使っておりますし、学説でも「契約締結時のすべての事情」といったそういう言い方をしておりますが、このいわゆる契約締結過程における事情をその条文の内容が不当かどうかを判断する上で考慮に入れることが妥当と言えるかどうかという点が問題になると考えております。

といいますのは、その契約締結過程における事情というのは、例えば、条項について、十分に消費者に対する説明があったとか、契約書の文言が曖昧だったとかわかりやすかったという点でございますが、こういった点を理由に、条項の内容面を問わずに、条項が有効とされてしまうといったおそれもあるのではないかと思います。

例えば、更新料特約について言いますと、更新料特約というものがありますと。更新料は何カ月分の家賃ですという説明があれば、その更新料特約がそもそも内容として、不当かどうかというものを一切問わずに、いや、もう説明があったので、条項は有効ですよと判断をされてしまう危険があるのではないかと思いますし、あるいは、契約締結時点での事情というのは、つまり、説明があったかどうかとか、あるいは契約書にはっきり書いていたかどうかといったことは、これは条項の内容レベルで問題になるというよりは、むしろそもそもその条項が当事者の間で成立しているのかどうか、あるいはその約款が組み入れられているかどうかといったレベルの問題ではないかと考えております。

そのことから、本提案は、この契約締結過程における事情を、その不当条項のその条項の内容面を判断する上での考慮要素としては列挙すべきではないと考えまして、レジュメに掲げたような提案をさせていただいております。

もう一つ、留意すべき点は、いわゆる取引慣行、業界で行われている取引慣行を、その不当条項の内容の不当性判断において考慮すべきかどうかという点も問題になるかと思います。

これにつきましては、レジュメに「cf」という形で引用させていただいております、いわゆる無催告条項の判決でございます。保険会社の判決を引用させていただいておりますが、個人的にはこういった取引慣行で十分に手当がされていたかどうかということを、その条項の内容レベルではなくて、その当該条項を当事者の間で援用すべきかどうかというところで、援用していいかどうかというところで、考慮に入れるべきではないかという考えも持っております。まだ、この点は十分に詰める必要があると思いますが、以上の2つの点を注意すべきではないかと考えております。

そうは言いましても、この考慮要素を明文化するということで、例えば、条文に書いたこと以外の要素は、一切考慮されないかのような限定的な印象を持たれてしまうのは望ましいことではありませんので、本提案でも、その考慮要素を明文化するとしても、最後のほうに「その他諸般の事情」といった文言をつけ加えておりますが、そうすると「その他諸般の事情」という中に、今、述べましたような、契約締結過程における事情も考慮に入れることが文言上可能になってしまうということがありまして、そうしますと、そもそも考慮要素については明文化をせずに、解釈に委ねるという方向も考えられると思います。

次に、2ページの「(3)中心条項規制について」というところでございますが、これについては、かねてより学説でもずっと議論がされていたことで、1つの考え方としては、契約自由の原則という考え方から、いわゆる中心条項、ここでは契約の目的物と対価を定める条項と捉えておりますが、これには介入すべきではないという見解が有力に主張されていましたが、例えば、2014年の日弁連の提案の中では、そもそもその中心条項なのか、それ以外の条項なのかを区別することが簡単ではないということを理由に、特に消費者契約においては、その中心条項かどうかを問わずに規制すべきであるという提案も見られています。

これはもちろん1つの考え方だとは思いますが、ただ、そもそも本来、その契約の目的物や値段については当事者が合意で自由で決めるべきものであって、合意によって決められた以上は、裁判所が介入をすべきではないという、もともとの契約自由の原則との整合性を詰めていかないといけないと思っております。

とりわけ、価格の妥当性につきましては、これは価格というのは、本来、市場原理に委ねられるべきものですし、また裁判所がその価格が例えば高過ぎるとか、安過ぎるといったことを判断できるのかどうかという疑問も残ります。

特に、この中心条項と付随状況を区別するべきではないという意見の背景として、例えば、これまでの消費者契約法10条の違反性が問題となった裁判例の多くが、例えば、更新料特約ですとか、あるいは敷引特約といったいわゆる対価そのものに近い条項の不当性であるということが挙げられると思います。

すなわち、この更新料特約や敷引特約というのは、価格そのものを定めている条項に非常に近い条項ということなので、対価に関する条項には、消費者契約法は介入しないということになってしまうと、こういった更新料特約や敷引特約などの不当性を判断することはできるのかという問題が出てしまいます。ただ、これは個人的な意見ですが、これまで裁判例で問題になっていた更新料特約や敷引特約などで問題になっていたのは、もちろん更新料やあるいは敷引金の額が高いかどうかということではあると思うのですが、むしろより問題であったのは、これらの特約の趣旨が消費者にとって不明瞭でわかりにくいという点であったと考えております。

そこで、私の提案の中では、その条項の趣旨が不明瞭であるゆえに、当該条項の妥当性が、問題になるような場合に、規制を及ぼすべきだということで、提案で言いますと、「a」のような考え方を示しております。

要するに、当該条項の趣旨、例えば、なぜその対価を取るのかとか、その目的物の意味などが消費者から見てわかりにくいという場合には、消費者がその条項の趣旨を理解できないままに不当な条項を課されるという問題が生じるということから、こういったように条項の趣旨が不明瞭であるという場合には、たとえその条項で問題になっていることが、対価や目的物に当たる場合であっても規制を及ぼすというスタイルであります。

実は、このような規制スタイルは、海外で言いますとフランスでとられている規制スタイルですし、1993年のECの不当条項に関する指令でもとられています。

これは逆に言いますと、消費者から見て、その条項がいかなる意味での対価を消費者に払わせるものであるかを認識できると。認識した上で、消費者がそれに合意したという場合にまでは規制を及ぼす必要はないという考え方でございます。

ただし、これも留意すべき点は、それでも対価が不当に高過ぎるという場合ですとか、あるいはそもそも対価性がないところに消費者に金銭を払わせているという場合には、別途、例えば消費者公序規定ですとか、あるいは民法の公序良俗規定の対象となるのは言うまでもないと考えております。

最後に「10条の効果について」につきましては、レジュメに書いたとおりでございます。

次に「不当条項リストについて」のところに入りたいと思います。

不当条項リストのところで、1点修正をさせていただきたいのですが、レジュメ3ページの「(3)瑕疵担保責任の全部又は一部を排除する条項」と書いていますが、これはその後、いろいろレジュメをつくった後に、いろいろ考え直しまして全部を排除する条項というものを、このいわゆる3ページでの提案に残したいと思っております。

瑕疵担保責任の一部を排除する条項というのは、その次の4ページのところに入れると修正をさせていただきたいと思っております。

この不当条項のリストでございますが、まず、3ページに掲げたリストというのは、これはどういうものかと言いますと、既に現行消費者契約法8条、9条で設けられているものに加え、主にはこれまでの国内でのさまざまな提案ですとか、あるいは諸外国において見られる不当条項リスト、そしてさらには日本の裁判例ですとか、あるいは消費者相談事例で問題となっている条項を参考に、いかなる場合にも正当性が認められるべきではない。常に無効とされるべきであるという条項を少なくともリストを拡充する上では提示すべきではないかという提案でございます。

今の消費者契約法は、皆さんも御存じのとおり、具体的な不当条項リストとしては、8条、9条の2つしか存在していません。

そのため、多くの条項は、一般条項である10条によって判断がされています。

しかし、そもそも10条というのは、これは抽象的な要件に基づいて判断をする一般条項でございますので、結局その10条によるということは、裁判所の判断次第によって、その条項が不当かどうかが決まってくると。そうすると、どういう条項を定めれば、不当になるかどうかというのを消費者や事業者に事前に明示するものとしては機能しておりません。

そこで、どのような条項が不当であるかと消費者や事業者に示すことで、不当な条項が契約書に盛り込まれることを予防する、そして裁判所だけではなくて、裁判外での不当性判断を容易にするものとして、10条だけではこれは非常に問題があるということで、少なくとも、この3ページに掲げているような、常に無効と判断されるような条項をリストとして拡充すべきであると考えております。

ここに掲げている15の条項が、一体どういう趣旨でここに掲げているのかということでございますが、3ページをごらんいただきたいのですけれども、(1)から(3)は、これは今の8条を維持したものでございます。ただし、8条につきましては、文言上、例えば事業者の軽過失によって生じた責任を制限する条項を8条に加えるべきであるという指摘が見られますが、事業者の軽過失による責任を制限する条項が常に不当であるとは言えないのではないかということで、次の4ページに述べるリストに私の提案では掲げております。

(4)番、これは人身損害に関する事業者の責任を一部免除するという条項ですが、これは人身という法益の重要性、そして人身、人の身体というのは、これは処分不可能だということを理由に、このリストに掲げています。

(5)です。これは、契約の目的物、対価、契約期間に関する条項を変更・決定する権限を事業者のみに与える条項ということで、これも国内の多くの提案ですとか、あるいは諸外国でも多く見られるものでございます。

最も国内の提案や諸外国では、このような一方的な変更権限を事業者に与える条項をいわゆるグレイ・リストに掲げるものが多いわけですが、本来、契約の内容というのは、両当事者の合意によって決定されるべきものであり、そして変更する場合には、やはり両当事者の合意によって変更できるというのが本来は原則であるということに立ち返りますと、特にその契約内容そのもの、ここで言うと目的物や対価を事業者が一方的に変更、決定することを認めることを正当化することはできないのではないかと考えまして、私の提案の中では、契約の目的物や対価そのものに関する変更を事業者のみに与える権限、条項をここの3ページのリストに、すなわち常に無効とするというリストに掲げております。

それ以外の条項の変更や決定権限を事業者に与える条項は、次の4ページで掲げさせていただいております。

3ページの(6)ですが「契約文言の排他的解釈権限を事業者に与える条項」、これはこの条項を有効とすると、要は今の内容の決定と同じ話になりますが、事業者のみにその契約内容の決定権を与えるのと事実上同じ結果になるということで、やはり正当化ができないのではないかと考えております。

あるいは、時間の関係もありますので、個別に説明するのは減らしたいと思いますが、基本的にここに掲げている(7)ないし(8)というのは、これは消費者にとっては契約の拘束を一方的に奪われるということになりますので、正当化ができないと考えております。

(9)(10)、これはいずれも消費者の防御的な権限を排除するものであるということで、これも正当であるとは言えないということで、ここのリストに掲げております。

(9)~(11)も同じになります。

(11)は解除を一切認めないという条項で、これに関しては、消費者契約法10条に照らして無効とした裁判例が存在しておりますし、いわゆる消費者相談事例におきましても、消費者の解除権を奪うような条項というものは、非常に多く問題となっておりますので、これはもう今の消費者契約法10条にお任せするのではなくて、リストに掲げるべきであると考えております。

特に、いかなる理由があっても、契約の解除は一切認めませんとする条項は、これは例えば事業者が債務不履行を犯したようなときに、それを理由に消費者が解除することも否定してしまうことになりますので、これは合理性がないと考えております。

ただ、解除を排除する条項とここに書いておりますが、例えば、解除を制限する条項というものも見られます。例えば、解除はできるのですが、解除できる期間を制限しているとか、あるいは解除するに当たって、一定の条件をつけているような条項というのがよく見られますが、これらの条項については解除を認めていないわけではなくて、その解除ができる場合を制限しているということで、直ちに常に不当とは言えないという場合もあり得ることから、私の提案の中では、解除をそもそも認めないという条項をこちらの3ページのリストに掲げ、解除は認めているけれども、いろいろ条件をつけているというものは4ページのほうに掲げております。

(12)(13)は現行法の9条に相当するものです。

(14)は、これはちょっといろいろ考えまして、レジュメの文言をちょっと修正したいのですが、消費者が事業者に対して訴訟を提起し得る期間を不相当に短くすると書いてありますが、要は法令上認められている期間、例えば時効などよりも短く制限するという条項のことを念頭に置いています。

法律で定められた権利行使期間よりも短い期間を設定するということについて、これを正当化する理由は見出しがたいということで3ページに掲げております。

以上が、大体の内容になります。

次に、4ページに移りたいと思います。4ページの提案というのは、今、掲げました15個の条項以外にも、場合によっては消費者にとっては不利益となり得るような、つまり、個別の事情などから判断した上で、不利益となるような条項というものがあるということです。

逆に言いますと、常に不当とまでは言えないという条項もあります。

これらの条項につきまして、ちょっと言葉の使い方は非常に注意する必要があると思いますが、要は基本的には、不当であると推定されると、不当であると考えられるのですが、場合によっては、この条項を定める必要があるのだということを正当に事業者が立証できれば、不当であるということが覆る余地があるリストというものを別途設けることを検討すべきではないか。ここでグレイ・リストという言葉を使うかどうかというのは別途考える余地がありますが、いわゆる不当であると推定されるリストとして、以下の15個の条項を掲げることを検討してはどうであろうかということを提案するものでございます。

といいますのも、先ほど3ページでは、そもそも反対の証明の余地なく、常に無効なるべき条項として、3ページで15個条項を挙げましたが、条項の不当性が問題になる条項、実際に裁判例や相談で問題になっている条項は、全てそういうものばかりではなく、個別事情を勘案すると、実は不当とまでは言えないような条項というものも多く存在しています。

例えば、事業者の責任に関する条項であれば、責任を一切免除する条項というのは、これは正当化できないと思いますが、例えば、事業者の責任を一部制限するような条項というのは、例えば、それにかかるコストなどを考えると、常に不当であるとは言えないということがありますので、そこに(1)から(15)のものを掲げております。

時間が限られておりますので、内容をなるべく省略しながら説明したいと思いますが、こちら(1)から(15)に載っておりますように、基本的には、例えば(1)ですと、責任を一切免除するものではなくて、一部免除するようなものを掲げております。

あるいは、先ほど説明いたしました(5)です。解除権・解約権を不相当に制限する条項。解除を一切認めないという条項は、これは正当化することはできない。常に無効となると言えますが、例えば、解除の条件をつけるようなものには、これは常に無効となるとはいえないと考えまして(5)に掲げております。

こういったほかにも、例えば(13)~(15)あたりは、これは裁判に関する消費者の紛争解決に関する条項でございますが、これにつきましても、常に不当とまでは言えないということで、基本的には不当と推定はされるのですが、事業者の側で、いやこれはこういう事情があって条項を設けていますということを立証できれば、不当であるということが覆ると、有効になり得るという条項として掲げております。

また詳しい説明は、質問の中などで対応させていただきたいと思っておりますが、5ページに移ります。

以上、私の提案の中では、常に無効とされるべきであるという条項と、無効であると推定されるのですが、事業者の証明によって覆る可能性のある条項と分けて列挙いたしましたが、まず、リスト化に当たって留意しなければならない点というものをレジュメの5ページに書かせていただいております。

まず、文言がどの程度抽象的であるかどうかというところです。

つまり、リストというのは、消費者や事業者にとって、何が不当条項と言えるかを明確にするものである以上、余りに抽象的な文言を使うと、その明確性というのは担保されません。しかし、余りに文言が具体的過ぎると、今度はリストの射程が限定されてしまいます。

また、リストにおける不当性の基準をどのように定めるかというものも問題となります。

例えば、私のリストの中でも、幾つか入っていたと思いますが、例えば、不当にとか、過度にといった要件を入れると、消費者がこれらを立証する必要が出てくるということで、こういった点に文言を注意して作成しなければならないと考えております。

そして、次に5ページですが、私の提案に対しては、そもそもこういう二本立てのいわゆる常に無効となるリスクと、無効であると推定されるリストに分けて設けることに対するさまざまな観点からの反対論もあると思われます。

これに対して、しかしやはりリストといいますのは、レジュメにも書かせていただきましたが、事業者、消費者の双方にとって、事前に不当となり得る条項を知らせる情報提供機能ですとか、あるいは紛争解決機能、そして紛争予防機能があるということで、リストは非常に有用であるということを書かせていただいております。

例えば、まず、1つ目の批判としてあり得るのは、いわゆるグレイ・リストがあると、結局はそのグレイ・リストが実質ブラック・リストになってしまうのではないかということの批判が考えられると思いますが、これは言いかえますと、ブラック・リストのみを提示してほしいということなのかとも1つとれるわけですが、ただ、実際の裁判例や相談事例を見ておりますと、常に不当であると言えるような条項ばかりが問題になっておらず、むしろ問題となっている条項の多くは、その不当かどうかを個別具体的な事例に応じて判断すべきものが多いというのが実情だと思います。

それならば、ではそういうものは全部10条で判断すればいいではないかということが批判としてあり得るかもしれませんが、これも最初に申し上げましたように、10条という抽象的な基準のみで個別の事案に応じて不当性を判断するということは、消費者や事業者にとっての条項の不当性についての指針としての明確さを著しく欠くものであると考えております。

そこで、その文言のつくり方によっては、不当となり得る条項を列挙するということは、これはその意味で、こういう不当であると推定されるリストは有用であると考えております。

次に、2つ目の批判として、消費者契約法でリストを設けることに対する批判もあるかと思います。その法律の中で、リストを定めると、硬直的なものになってしまうと。時代の発展に対応できないと。そうであれるならば業界などのガイドラインなどで、例えば個別の業種ごとのリストを設けるべきだという批判もあるかと思いますが、これにつきましては、レジュメに書かせていただきましたように、そもそもそのガイドラインでリストをつくるにしても、そのガイドラインの指針として、消費者契約法にその業種を問わず、およそ一般的に常に無効となり得るリストあるいは無効であると推定される条項の種類の消費者契約法で掲げておくことが必要ではないかと考えております。

これは、前回の沖野委員の報告とも関係してくるかと思いますが、結局はその消費者契約法が、ほかの個別法との関係で、いかなる関係にあるかということとも関連してきます。

すなわち、消費者契約法というのは、取引の種類を問わず、消費者契約であれば、一般的に適用される法律である以上は、その業種を問わず、およそどういう場合にでも無効となる条項あるいは無効と推定される条項を消費者契約法で列挙しておき、それを踏まえて、例えば業界等のガイドラインですとか、あるいは個別法で具体的に業種ごとのリストをつくるといった形が健全なのではないかと考えております。

また、個別法との関係で言いますと、個別法に既に不当条項に関する規定があるということもあり得るわけですが、ただ、仮に個別法で設けられているとしても、個別法を1つ1つ見ていかないと、何か不当であるかがわからないというのは、消費者や事業者にとって、決して明確なものではないと考えられています。

それよりは、消費者契約法という、消費者契約一般に適用される基本的な法律を見れば、不当な条項のリストが一目でわかるという状況のほうが、消費者や事業者にとっては明確であると考えています。

ガイドラインの作成主体につきましては、これは慎重に検討すべきであると考えております。

例えば、フランスですと、独立行政組織が勧告として、その不当となる条項のリストを列挙していることもあります。この考え方は1つあり得る、日本でもとり得る考え方だとは思います。1つのメリットとしては、こういう法律よりもより更新が容易である勧告、日本で言うと命令のようなものですが、これによって、しかも業種ごとのリストを掲げることができるというメリットはありますが、ただ、そもそもどのような行政組織であれば、リストをつくる能力があるといえるのか、あるいは行政主導でリストを更新していくことの是非といったことも考えなければいけないと考えています。

最後になりますが、そもそも、現在、裁判例や相談現場で問題になっていないような条項までも、リスト化する必要はないのではないかという批判もあります。

しかし、以上、述べましたように、消費者契約法というのは、消費者契約に関する一般法です。個別具体的な業種ごとの個別法ですとか、そういったものの指針となるべきであるということを考えますと、実際に紛争になる前であっても、これはそもそも不当となり得る、あるいは常に不当となるのだという条項を列挙しておくことは重要であると考えています。

消費者契約法は、その紛争が起きた後の後追いとしての法律であってはいけないと考えております。そうであれば、少なくとも、諸外国で列挙されている条項はリスト化を検討すべきですし、そもそも消費者紛争の場合には、相談はしないものの何となく違和感を感じながら契約書を見ているという消費者もいることを考えますと、実際の相談ですとか、裁判例に挙がっていないからと言って、リスト化の必要がないということにはならないのではないかと考えております。

最後に、時間も押して申しわけないのですが、6ページで、8条、9条の改正の方向性というものを列挙しております。8条につきましては、途中でも申し上げましたように、レジュメに掲げたような問題が存在しています。

今後、リストを充実化させる上では、この点を考えなければいけないと考えております。

9条につきましても、これもいろいろなところで指摘がされているように、とりわけ9条1号に関しては、現行法のように、解除の場合に限定しているのはおかしいのではないかといった批判もありますし、そもそもその平均的な損害の意味ですとか、あるいは具体的な計算方法、あるいは立証責任に関する手当も、今後、改正の中ではしていかなくてはいけないと考えております。

「その他の課題」として、今日挙げませんでしたが、その契約条項の解釈ルールを、今後、消費者契約法で設けるかどうかという点も考えなくてはいけないと考えております。

時間を超過して申しわけございませんが、私の報告は以上とさせていただきます。

(2)意見交換

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ただいま大澤委員からいただいたプレゼンテーションの内容を受けまして、意見交換を行いたいと思います。後もありますので、おおむね40分弱ぐらいをお考えいただければと思います。

では、御意見あるいは御質問のある方は御発言をお願いします。

丸山委員、どうぞ。

○丸山委員 報告ありがとうございました。

基本的に、ブラック・リストやグレイ・リストを設けていくという方向性については、賛成でございます。提案の趣旨で確認したい点が幾つかございます。

まず、10条前段の改正の趣旨なのですけれども、当該条項が存在しない場合と比較して、条項が消費者に不利でなければ、規制の必要はないということを確認する意義があるに過ぎないという、10条前段はそのような意義しかないという趣旨なのでしょうか。

これに関連して、例えば、広い意味での任意規範から、消費者に不利に条項が逸脱しているということは、無効化に傾く要因としては考慮されないのでしょうか、この2つあわせて質問の第1点です。

第2点としましては、やはり、10条の考慮要素としまして、対価というものが挙がっていますが、これは純粋な付随条項の場合でも、価格の安さというものが、条項の有効に傾く要因となるという趣旨なのでしょうか。

第3点としましては、10条に関してなのですが、10条後段の考慮要素として、取引慣行ということが出ておりますが、これは例えば一方から見れば、悪しき取引慣行に見えるようなものも、長年行われていれば、有効な要因に傾くという趣旨なのか、これが10条に関する質問です。

あと不当条項リストに関しても、2点だけお伺いしたいのですが、いわゆるブラック・リストに関しまして、個別交渉合意というものが認定できるような事例でも、これは絶対的に無効となるという理解を出発点としてよいのでしょうか。これが1点目です。2点目は、具体的なブラック・リストの中の8番目、事業者が第三者と入れ替わることを許す条項に関してなのですが、例えば、事業者の給付能力に変化がない、あるいは消費者に解約権を同時に与えているような場合、また賃貸借の場面などを想定した場合に、もう少し要件などを絞る必要はないのでしょうか。

以上でございます。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、大澤委員、どうぞ。

○大澤委員 どうも御質問ありがとうございました。

10条に関しては、3点あるのではないかと思いますが、いずれも細かな問題で、今後、詰めていかなくてはいけないのではないかと考えておりますので、現時点でまだ十分な答えができなくて申しわけないのですが、まず、当該条項が存在しない場合と比較してというところですけれども「当該条項が存在しない場合と比較して、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する条項」というところまでかかっておりまして、まず、消費者の権利を制限し、または義務を加重しているかどうかというところの比較対象として、当該条項が存在しない場合というものを掲げておりますので、ちょっと質問の答えになっているかわからないのですが、私としてはそういうつもりで書きました。

2つ目ですけれども、対価のところですか。考慮要素の中に対価が入っているというところですが、要は対価が安くなっていると条項が有効になることがあり得るのかということかと思うのですが、それはもちろんあり得るかなとは思っているのです。といいますのも、やはり、いろいろサービスを見ていますと、例えば、昨今問題になっております携帯電話の解約金などにしましても、あれは基本料金が半額になっているという条件がついておりまして、もちろんそれで半額になっているから有効になると私は考えているわけではないのですが、ただ、サービスの対価を安くしていると、消費者にとっては、払う料金が少ないと。ただ、そのかわりに例えば、解除できる期間が限られているのか、そういったものというのが、別に常に有効になるということではもちろん言っているわけではなくて、対価と連動させて条項を設けていることというのはあり得ると思いますし、恐らくそういうものが多いと思いますので、そのときに対価が少なくとも安くなっていると。その点、消費者にメリットがあるということが、その条項を判断する上で、それで条項が場合によってはその分有効になるということはあり得ないことはないのではないかと考えております。

次に、3つ目ですけれども、取引慣行を考慮に入れるべきかということですが、先生がおっしゃっておりましたように、取引慣行自体にそもそも問題がある場合というか、事業者にとっては非常にいい慣行かもしれないけれどもということだと思うのですけれども、そのときに取引慣行があるからといって、有効に常になるということで私は申し上げたわけではなくて、そういったことがあることから考えても、条項の内容を考慮するときに、こういう取引慣行があるのでいいのだとするのではなく、条項の内容ではなくて、その条項がその契約に援用するというか、適用する上で、そういう慣行があるからどうかというものを考慮すべきではないかという趣旨で申し上げました。具体的に言いますと、保険の無催告条項に関して言いますと、あれはハガキなどを送って通知をしているという慣行があるという話だったかと思いますが、そのハガキなどを送って、督促をやっている無催告条項が有効になるということではなくて、そもそもやはり無催告で解約をするということは、やはり消費者にとって不利であると内容は内容として判断して、ただ実際上、この事案では催告のハガキは送られていたとか、そういった個別の条項を援用するときに、そういった慣行を適切に運用していたかどうかとか、その慣行がうまく消費者に伝わっていたというか、消費者に適用されていたかどうかということを考慮すべきではないかという趣旨で申し上げましたが、いずれも、今後、慎重に考えていかなくてはいけないと思っております。

あと、ブラック・リストのほうだと思うのですが、個別の交渉があった場合に、それでもここに掲げているものは、常に無効になるのでしょうかということだったのではないかと思いますが、これはもちろん、個別交渉を経ている条項が不当条項規制の対象になるかどうかという、非常に大きな問題とかかわってきますので、これも、今、なかなか安易に発言するのは難しいわけですが、私、個人的には、特に消費者契約の場合には、個別交渉があったことを理由に、そもそも条項規制を及ぼすべきではないという考え方に反対しております。といいますのは、個別交渉というのは中身にもよりますけれども、消費者契約の場合に、消費者が条項の内容を理解して、自分にとって不利になるのだということまで十分理解して受け入れているということは、実際上として、少ないのではないかと思っていますし、そもそもそういう交渉が特に情報の格差などがある条項で可能なのかという疑問を持っていますので、そうだとすると、仮に個別交渉を経ていたとしても、やはりここのブラック・リストに挙がっているような条項は、これは無効になると個人的には考えております。

「第三者と入れ替わることを許す条項」という、(8)ですけれども、これは先生おっしゃっているとおりで、私も実は、このレジュメに書くときに非常に悩んだわけですが、例えば、それによって消費者が契約から離脱する権利を認めているといったことは、これは実際上考慮していかなければいけないと思いますし、そう考えますと、そういう手当がされているかどうかということを個別事業を考慮して、無効が覆るという余地があるというのであれば、そうすると、4ページにあるリストに掲げるというのも一案だと思いますし、あるいは契約類型によって、特に継続的な契約とか、そういったものによる区別もあると思いますので、そういった考慮ができる余地を残すためには、確かに4ページのほうに掲げるという必要もあるかと思います。

抽象的に書いてしまって申しわけございませんでした。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、ほかの御意見あるいは御質問をいただければと思います。

後藤座長代理、どうぞ。

○後藤(巻)座長代理 2ページですけれども、魅力的な提案だと思います。10条後段要件について、不当性の考慮要素を条文化するということですが、不当性の考慮要素は、条文化しなくても、判例で一定のものが出ており、それから逐条解説などでこういう考慮要素があるということを書くということもできると思いますけれども、条文化すると、不当性の判断がわかりやすくなる。そういう面がありまして、裁判で争ってというところまでいかなくても、例えば、消費者相談の現場で使いやすくなるということがある。そういうことから見ますと、1つの方向として、条文の中に不当性の判断要素を書くということはあり得るし、検討すべき方向だと思います。別の場面になりますが、例えば、消費者概念についても、消費者として認めるための考慮要素を条文の中に書くということが考えられるのではないかと思います。

ただし、ご報告の中でも言及されていましたが、条文の中に考慮要素を書くということになると、難しさもありまして、重要なもので漏れたものはないかとか、あるいは本当は余り考慮すべきではない事情であっても、全く書かないでいいのかとか、あるいはそもそも諸般の事情とか、あらゆる事情ということを書くと、考慮要素を書いたことの意味が薄まるというようなこともありまして、結構難しい問題になってくる。

こうした課題もありますが、考慮要素を条文に書くという方向性は、他の場面でもあるかもしれません。検討する必要があることではないかと思います。

次に、考慮要素として挙げられているものの中で、若干疑問のものがあります。これは2点目の質問ということになりますけれども、契約締結過程の事情を考慮に入れることの是非のところです。確かに平成23年7月15日判決では、更新料特約が契約書に一義的かつ具体的に記載されているということが不当性を否定する方向で働いているとは思うわけですけれども、逆に契約内容としては不当性がそれほど高くない場合であっても、契約締結過程のところで結構問題があるというようなことになると、そこの部分を考慮して、全体として不当性を判断していくということが考えられるのではないかと思います。

つまり、わかりやすい説明をしていないというようなことがあると、それほど契約内容の不当性が高いということでなくても、全体として不当性が高いという評価を与えるということもあり得るわけでありまして、先ほどの大澤委員のお話ですと、契約締結過程の事情を考慮することのマイナス面を強調なさったように伺いましたが、むしろプラス面もあるのではないかという印象を持ちました。これが第2点です。第1点は、質問というよりむしろ感想に近いことでありますので、何かコメントがあれば、お願いします。2番目については、契約締結過程の事情を、不当性の判断でどう位置づけるのかということに関する御意見を伺いたいと思います。

○山本(敬)座長 それでは、大澤委員、どうぞ。

○大澤委員 御質問ありがとうございます。

まず、2点目のほうからお答えさせていただきますと、確かに先生がおっしゃっているような場合はあるかと思っていますが、私の問題意識といたしましては、内容が不当とまで言わなくても、そもそもその条項の提示の仕方だとか、あるいは説明が不十分であるということに問題があるという場合は、これは不当条項規制とは別のところで問題にすることはできないのだろうかという意識を持っています。

例えば、条項の組み入れの問題ですとか、あるいは説明義務と言うとあれですけれども、そういう締結過程の問題で、問題にすることではないのかという意識を常々思っております。

主には、その条項の組み入れが十分なされているかどうかというところの話ではないかと考えておりまして、そのことで契約締結過程の事情というのは外しました。むしろその契約締結過程を考慮に入れることのマイナスを割と強く意識したということで外したというのは、それは事実だと思いますので、結論から言いますと、ほかの組み入れのところですとか、そこで手当をすべきだと考えております。

1つ目の御質問というか、御意見のところですが、その条文化することには確かに明確性の意味があるということで、私もまず条文化する場合ということで提案を書かせていただきましたが、ただ、やはり、条文化をする上で、非常に慎重にならないといけないことも2点ほどあると思います。

まず、1つは先ほどの丸山委員の御質問とも関係しますが、例えば、取引慣行と書いたときに、その取引慣行といっても、悪しき慣行というものももちろんあるわけで、そういうものまでも考慮に入れることを可能にしてしまうということがありますし、あるいは今の契約締結時の事情というものも、これは文言として書いてしまうと、先ほど言ったような懸念というものもありますので、では何を考慮要素として列挙して明文化すべきかというのは、非常に慎重に検討しなくてはいけないと思っています。

個人的には、提案の1ページにもありますように、なるべく客観的な事情を考慮に入れるようにということで、その契約の目的物、対価ですとか、あるいは他の条項の内容とか、あるいはその条項を設けることが合理的かどうかといったようなことを考慮に入れるべきだと思います。

さらに言いますと、消費者契約法10条というのは、個人訴訟だけではなくて、団体訴訟の不当性判断の基準になるということもありますので、団体訴訟においては、その個別の消費者の事情を考慮に入れるのではなくて、おおよそその条項が不当といえるかどうかといった、より客観的な判断が求められるといことがありますので、その点も留意しなくてはいけないと思っております。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、阿部委員。

○阿部委員 御提案そのものはわかりやすいところがあるかと思いますが、早めに反論しておきたいことが2点だけございます。いずれも意見でございます。

1つは中心条項規制です。特に、対価に係る問題ですが、ここは民法改正の中で、いわゆる暴利行為の規制をどうするかということで、かなり議論になった上で、対応されなかった経緯がございます。あくまでも公序良俗規定で済ませるべき問題かと思います。

それから、不当条項リストの追加ですが、ブラック・リストの追加は場合によっては議論があり得ると思うのですが、グレイ・リストみたいなものを消費者契約法に置くことについては反対いたします。

確かに、事業者の反証があればというような議論もあるかと思いますが、法律に書かれますと、これはやはりグレイというものは限りなくブラックに近いものだという意識が事業者にありますので、非常に事業者の行動を阻害するのではないかと思います。

ブラック・リストの追加は、議論が十分できるかと思いますが、グレイ・リストなるものについては、消費者契約法に置くことは少なくとも反対であります。

以上です。

○山本(敬)座長 今の点に関連してでしょうか。

前段のほうですか。

では、山本健司委員。

○山本(健)委員 10条に関してコメントさせていただきたいと思います。

10条の前段、後段を最判平成23年7月15日の判旨に沿った条文内容に改正するということについて賛成でございます。

条文案についても、基本的に御提案の方向性に賛成でございます。

後段部分につき、御提案の「消費者の利益を一方的に害する」という条文提案は、「信義誠実の原則に反する」という条文提案に比して、民法の規範とは違うという点を明らかにする意味では有益だと思いました。実際に、実務で使用する場合には、どちらの条文案でも評価根拠事実と評価障害事実を総合考慮することになるのだろうと思っております。

不当性の考慮要素につきましては、例示列挙した方が、不当条項審査に関する考え方のイメージが湧き、明確性に資するのではないかと思います。

その中で、先ほどから出ております「取引慣行」の例示という点については、御指摘のとおり、注意が必要であると思います。例えば、学納金の前払い授業料不返還特約などは、現に不当条項が広く使用されていたという事案であると思います。 取引慣行という名のもとに広く蔓延する不当条項が正当化されるかのような誤解を招かないようにするために、取引慣行という字句は列挙事由から削除したほうがよいのではないかと思います。また、削除しても、例えば、「当該条項の趣旨、目的及び内容、当該契約の性質」といった他の代替表現でその趣旨は表現できるように思います。

「契約締結過程の事情」の例示という点については、特に消費者の認識や認識可能性が不当条項審査で過度に重視されないよう注意が必要と考えます。例えば、利息制限法は、借主が明示的に承諾していても、不当に高額な金利の約定を無効としています。消費者契約法の不当条項規制も、そのような側面があるはずです。不当条項であっても、消費者に明示的に示せば有効になるといった誤解を招かないよう、条文から外す方向に賛成でございます。

中心条項の問題に関して、不当条項規制は、中心条項であっても、少なくとも透明性の原則は妥当しますので、a説の本文は理論的に納得できる面があります。ただ、この場合には、但し書きで付加していただいております暴利行為等の考え方も書き込んだほうが読み手には全体像がわかりやすくなるのと思います。残る問題は、中心条項と付随条項の区別の難しさ、中間条項の扱いだと思います。結論としては、今後a説~c説を検討していく、という方向性に賛成でございます。

以上です。

○山本(敬)座長 では、大澤委員からコメントはあるでしょうか。

○大澤委員 ありがとうございます。

まず、グレイ・リストの追加について、反対があるということだったので、この点についてお答えをしたいと思うのですが、グレイ・リストという言葉を使うかどうか、非常に問題かと思いますけれども、グレイだというと、何か色がよくわからない感じがあるかと思いますが、要は不当であると推定されるということですので、もちろん問題があれば、いやこれは問題はないのだということを事業者側で反証していただければこれは無効ではなくなるということなのですが、私自身は、実際の裁判例ですとか、あるいは相談現場で問題になっているものは、実はきょう4ページに掲げた条項のほうが多いのではないかと考えています。

すなわち、裁判で実際に争われているのは、いやこれはどう見ても常に無効になるという条項よりは、この事案によっては無効になるとか、あるいは例えば解除にいろいろな条件をつけている。この条件については問題があるのではないか。しかしここには問題がないのではないかといったような判断がされているものが多いと思います。

これは、言う間でもなく、今は10条によって判断がされていますが、事業者の方、あるいは消費者の側から見ても、結局、この不当と推定されるリストがもしないということになると、結局、今、問題になっている大部分の条項が、結局10条によって判断されるということになってしまい、10条というのは、再三申し上げていますのは、これは一般条項ですので、もっと抽象的な、消費者に不利益かどうかという要件で判断されます。そうすると、結局こういう裁判所に持っていかないと、不当かどうかはわからないという状態と、少なくとも不当と推定されるという一覧があるということで、どちらが事業者、消費者にとって明確かと言えば、それはやはりリスト化がされているほうではないかと考えております。これが今のところの意見です。

あと対価規制のところですが、これは私が今のような提案をさせていただいていますのは、1つの理由としては、今、山本委員からもありましたように、まず、中心条項か付随条項かを区別するのは非常に難しいというところがあると思います。

といいますのは、やはり、これも報告の中で申し上げましたが、実際の裁判で問題になっているもので、例えば更新料特約とか、敷引特約というのは、これは非常に限りなく対価にも近いと。しかし、純粋に例えば賃料そのものではないというところがあります。

そういう意味では、よく学説では中間条項という言葉が使われておりまして、まさしくこの中心条項と付随状況の境界線にあるような、区別が非常に難しい条項だと思います。

このときに、これはしかし対価そのものに近いので、規制に及びませんとしてしまうことへの躊躇というものがあって、かつ、これらの条項で問題になっているのが、やはりその条項の趣旨が不明確であるということではないかと考えまして、提案をさせていただいております。

その意味で、公序良俗規定でやればいいというのは、これはあくまで条項の趣旨がはっきりしているのだけれども、しかし、非常に対価として高過ぎるのではないかと。そういう場合には、公序良俗規定ですとか、あるいはもし消費者公序を設けるのではあれば、そこの規制対象になると思いますが、そもそもその条項の趣旨が非常に消費者にとってわかりにくいという、それゆえに、消費者がなぜこのお金を取られているのかよくわからないというのは、それ自体がやはり条項として問題があるのではないかと考えておりますので、きょうのような提案をさせていただいております。

以上です。

○山本(敬)座長 それでは、井田委員、どうぞ。

○井田委員 済みません。リストに関する意見でございます。

これはかねてから申し上げておりますが、やはり、ブラックだけなのか、グレイも含むのかはともかくとして、リスト化するということに関しては私も賛成であります。

私は適格消費者団体の長として、実際、差止め業務とかにもかかわるのですが、資料11というものがありまして、これは消費者庁が出された差止め請求事例集という報告書がございます。去年の3月に出されたものですが、これによりますと、5ページ、消費者契約法に基づく差止め請求というので、やはり不当勧誘行為が12に対して、不当条項が252ということで、圧倒的に不当条項に対する差止めが多い。しかも、その中身からすると、約半数以上が10条に関するもの。次に多いのが9条1号に関するもので、恐らくこの2つで8割ぐらい不当条項、差止めの8割ぐらいを占めているということになります。

これはやはり、9条に関しては、平均的損害という概念、不明確性もありまして、これはある意味やむを得ないところもあるのですが、10条に関してはそもそもわからない、基準がないということと、この差止め件数の多さというのは関係すると思います。

少なくとも、ブラック・リストというものをつくることによって、後で古閑委員のプレゼンテーションにもありますし、後藤準委員の御指摘もありますが、かえって法務部を持たない中小企業とあるいは事業者にとっても、どういう契約条項ならば無効になるのかと。全く許されない条項なのかと示すことは、非常に事業者にとっても有用であると考えます。

グレイに関しては、いろいろ評価はあると思いますけれども、やはり、実際、我々が業務をやっていて、グレイ・リストに載っているような条項を目にするのも事実でありますので、何を入れるかという問題がありますが、やはりアナウンス機能という点からして、やはりグレイというものが存在したほうがお互い消費者にとっても、事業者にとっても有用ではないかと考えます。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、増田委員。

○増田委員 ブラック・リストに関してですけれども、消費者から見て、不当ではないかと思われるような条項があったとしても、その不当な条項が実現しないであろうということであれば、その契約は自分にとって有益だということで契約に至るということが多いのではないかと思います。

そういう意味から言うと、不当条項リストがあるということは、非常に有益だと思います。

グレイ・リストに関しましても、これは不当かもしれないということがリストアップされることによって、事業者と消費者との話し合いが同じ土俵に乗る可能性があるということが想像されます。

そういう意味で言うと、グレイ・リストも非常に有効なものだと思いますし、同時に大澤先生のほうで、ガイドライン、事業者団体等のガイドラインをつくるための指標となるというのは、非常にメリットの大きいことだと思います。これは中小の事業者にとっても、とても有効なことだと思いますので、ぜひ進めていっていただきたいと考えます。

○山本(敬)座長 それでは、沖野委員。

○沖野委員 ありがとうございます。

3点、お伺いしたいことがございます。1つは後藤委員との間でやりとりをされた中で、考慮要素を明文化するとした場合に契約締結過程を考慮要素として取り込んでくるかどうかという点です。

お2人の考え方の間で、もし違いが出るとすれば、相関的な考慮の可能性の点ではないかと思います。

大澤委員のお考えによりますと、一義的に明瞭に示されているかとか、とりわけ重要な条項についてはきちんと説明がされているかとか、そういった点をクリアしないと、そもそも契約内容として取り込まれないということなのですが、その点はクリアされたのだけれども、内容の点を勘案するとなお問題ではないかという点が考えられます。説明の度合いと兼ね合いで問題ではないかという部分が後藤委員のお考えならば入ってくると思うのですけれども、大澤委員のお考えだと入ってこないのかどうかということです。諸般の事情の中に、なお取り込むということなのか、それとも明示はしないという点は、諸般の事情としても、およそ考慮事項から落とすという趣旨なのかをお伺いしたいというのが1点目です。

2つ目が取引慣行についてです。不合理な取引慣行がただずっと行われて定着しているという場合にそのような取引慣行が考慮されるべきではないという点は了解があると思うのですけれども、もし、そうだとすれば、合理的な取引慣行と書いてしまうということも考えられるように思うのですけれども、どうだろうかということです。

3点目が、中心条項の関連で書かれています、当該条項が平易かつ明瞭な言葉で表現されているかという点に関連してです。これは、言いかえますと、消費者にとってのわかりにくさですとか、理解可能性を問題とするものに思われます。そうだとしますと、これは、必ずしも中心条項だけにかかわらない面があると考えられます。

中心条項でないものについては、別途、例えば解釈準則で取り込むということなのかもしれませんけれども、解釈準則も限定があるかと思うのですけれども、中心条項以外で、平明さですとか、とりわけわかりにくさ、理解可能性の低さのようなものは、諸般の事情と考えてよいのかどうかについてお伺いできればと思います。

○山本(敬)座長 大澤委員、どうぞ。

○大澤委員 御質問ありがとうございます。

恐らく1と3は少し関係しているような気がするのですが、契約締結過程の事情というのは、先生がおっしゃっているとおり、私はまずは条項の組み入れの段階で、そもそもその説明が不十分であるとか、条項が不明確であるといったときには、そもそも内容審査に入る以前に、条項がおおよそ組み入れられないと、あるいは成立しないと考えております。

もちろん、その上で、これはもっと考えなくてはいけないなと、今、反省しているのですが、仮に、その条項の組み入れがされました、あるいは条項が成立していますという、その段階でクリアしたときに、それでもなお、やはり条項が曖昧であるとか、説明が不十分なところが内容審査のところでも一切考慮されないということにしていいのかどうかというところは、確かに考えなくてはいけないと思いますが、まだそこには私自身迷いがありますけれども、ただ、そこを説明がそもそも十分されていたかどうかといったことですとか、あるいは条項が明確かどうかということは、基本的にはやはりその条項内容の審査に入る以前の問題として考えるべきではないかと私自身は考えています。今の点に関連して、先に3点目のほうの質問に関係しますが、これも先生がおっしゃっているとおり、条項がそもそも不明確であるということは、これは中心条項かそれ以外かを問わず、最後のほうに解釈準則を入れるべきかどうかということが問題になるのではないかと申し上げましたのは、そこを意識して言ったつもりでございます。

そうすると、では、中心条項以外で、万が一その不明確な条項があったときに、その不明確性というものを、その内容審査で考慮すべきかどうかということは、これはやはり先ほどの締結過程の事情と合わせて考えなくてはいけないなと考えましたが、なぜやはり条項が不明確であると、解釈の余地があるということに関しては、別途解釈準則のところで、十分手当をしていくべきだと考えております。真ん中の2番目の御質問でございますが、合理的な取引慣行とそれならば条文に書いてはどうだろうかということだと思いますが、私も実はレジュメを書いて、きょう報告をした後で、それだったら合理的な取引慣行と書けばよかったと実は思いましたので、あり得る方向ではないかと考えています。

ただ、その場合に、合理的な取引慣行を考慮に入れることができるとしたときに、そもそもその取引慣行は合理的と言えるかどうかというのは、これもまた別途、解釈の余地が出てきますので、文言の書き方は問題になるかと思いますが、確かに取引慣行とただ書くよりは、おおよそ合理的な取引慣行と書いたほうが親切というか、いいのではないかというのはそのとおりではないかと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 外国の例でも、グッド・コマーシャル・プラクティスと言われる場合に、「グッド」が入っているというのが、今の点に対応していると思います。

それでは、河野委員、どうぞ。

○河野委員 ありがとうございます。

大澤委員から、本日、御提案いただいた10条に関してなのですけれども、今回の消費者契約法の改正は、消費者にとってもわかりやすいというのが重要なファクターだったと思っております。とかく10条が解釈次第ということで、どうなるかわからないという常にこの条項に関しましては、不安がつきまとっていたわけですけれども、今回の御提案のように、やはりこれまでの裁判例ですとか、消費者相談事例で積み上げられてきたもう明らかにいかなる場合にも正当性が認められるべきではない条項というものをブラック・リストとして挙げてくださる。さらには、グレイ・リストという形で、そのときはそれぞれの消費者側、それから事業者側がしっかりとコンタクトをとりあって、どちらなのかということを判断する意味でも、グレイ・リストの存在というのも、私たち消費者から見ると、非常に重要な御提案だと思っております。

ぜひ、こういった形で改正が進められることをお願いしたいと感じております。

○山本(敬)座長 古閑委員、続いて山本和彦委員。

○古閑委員 2点質問させてください。

1つ目は、3ページのブラック・リストのところですけれども、ここの(5)のところに「対価」というのが挙がっていますけれども、ここは例えば記憶に新しいところですと、電気料金がたまに上がったりとか、新聞の月額とかも結構上がることがあると思うのですけれども、ああいったものも、できないということを意味されているのかというところを、まず、1点目として質問させてください。

それから2点目は、インターネットとかだと特にそうですけれども、無償のサービスとかも結構あると思うのですけれども、この御提案はブラックにしても、グレイにしてもそうですけれども、有償、無償を問わず、この内容でいくべきだということなのかという、その2点についてよろしくお願します。

○山本(敬)座長 ありがとうございます。

では、大澤委員、どうぞ。

○大澤委員 ありがとうございます。

対価の変更のところは、確かに検討する余地はあるかと思います。

なので、きょうブラック・リストに掲げていますが、もう一つの条文案としてあり得るのは、その例えば、これも余り評価余地の入る文言があるので、余りいいかどうかは、あまり筋がいいとは思わないのですが、正当な理由で対価を変更する場合は、例えば不当性が覆るとか、そういうことはあり得ると思いますが、ただ、基本的には、本来はその対価や目的物というのは、当事者の間で合意をして決めることだと考えていますので、その趣旨で5番、一応、ブラックのところに掲げていますが、これはもちろん今後の検討の余地はあるかと思います。

次に、2つ目の無償のサービスの場合はどうなのかということですが、例えば、今、インターネットのお話をされましたけれども、例えば、最近多いのは、ポイントサービスとか、いろいろなお店などでポイントサービスなどがあって、それでポイントカードを無料で発行しているとか、そういう場合もあると思うのですけれども、それで、無償のサービスだからといって、例えばこういう条項を設けていいということには私は必ずしもならないのではないかと考えています。

それを言うと、今、インターネットで、今、言ったようなポイントサービスと言ったように、無償サービスというのは非常に多く存在していますので、無償だから、例えば条項の不当性の判断が緩くなるとか、そういうことではないかと思いますが、ただ、もちろんその条項の不当性を考慮するときに、先ほど対価とかそういうものを考慮要素に入れていましたので、そこで考える余地はあるかと思いますが、基本的には有償、無償を区別せずに、リストとしては考えています。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、山本和彦委員、どうぞ。

○山本(和)委員 この段階で、個々的な条項に言及するのはどの程度意味があるのかわかりませんが、2点御質問です。

4ページの(14)で、証明責任に関する条項が掲げられています。

いわゆる民事訴訟法で訴訟契約とこの証明責任契約というものも議論されるわけですけれども、もっとさまざまなものが議論されていて、例えば不起訴の合意とか、証拠制限契約とか、ほかにも消費者の権利の制限しそうな、あるいはより直接に制限しそうな条項というのは、幾つもあるような気がするのですが、ここでなぜ証明責任契約だけが選択されているのか、その視点のようなものをお伺いできればというのが1つ目です。

2点目は、その下の(15)の仲裁条項ですが、これは前にも言及したことはありますけれども、私自身はこういう方向が望ましいのではないかと思っているのですが、ただ、事業者を選定したという条件だけでいいかどうかというのは、やや疑問があって、今でも建設業界では建設行為紛争審査会等を指定した仲裁条項というものは現に使われているわけですけれども、それが不当性が推定されるとはなかなか思い難いところもあって、事業者が選んだからと言って、アプリオリに不当性が推定されるということはどうかと。

ただ、方法としては、これで私は結構だと思うのですが、質問は、前の仲裁法を検討するときには仲裁法の研究者とか、仲裁法の実務家は、この方向で行こうとしたわけですけれども、これに対しては、消費者側から極めて強い反対があって、全部無効にしろという御意見が大勢を占めるような状況で、結局、最終的な妥協案としては、消費者側に解除権を付与するという現行の規律になったわけです。

この御提案は、消費者にとっては不利な方向に現行法を変えるという、現在は経過規定というか、附則の規定ですけれども、現行よりも不利な方向に変えるという御提案だと思うのですが、それが果たして、その消費者側から前の状況を見て、受け入れられるのかというのが、私の率直な疑問です。もしそこに見通しがおありであるのであれば、お教えをいただきたいということです。

○山本(敬)座長 大澤委員、どうぞ。

○大澤委員 ありがとうございます。

私、訴訟法の専門家でないので、余り考えていなくて申しわけなかったのですが、まず14番の証明責任のところですけれども、なぜこれに限定しているのかというと、別に限定する趣旨では全くなかったのですね。基本的に、割と問題になっているものが多い条項ということで、この14番をそういう意味では例示的に挙げているということですが、今、先生がおっしゃっていたような条項も含めるとか、あるいはリスト化するということは考えていいのではないかと思っていますので、積極的に証明責任を軽減する条項に限定したつもりではございません。不勉強で申しわけありません。

15番ですけれども、確かにその点も非常に問題になると思いますので、その消費者に解除権が与えられている場合、そういうものをどうするかという、解除権を与えるかどうかということも、これもちょっと今後考えさせていただきたいのですが、これはグレイ・リストに掲げましたのは、もちろん消費者に解除権が与えられている場合は、不当とは言えないのではないかということで、一応、そういうものをここに掲げていまして、それで、消費者に解除権が与えられているかどうかとここには書いておりませんが、この15番の文言をつくるときには、もちろん、今、先生がおっしゃっていたようなことを踏まえて、慎重に検討する必要があると考えています。

済みません、不十分な検討で。申しわけありません。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

では、松本理事長。

○国民生活センター松本理事長 簡単な質問なのですが、古閑委員の質問の第1点と絡むのですが、ブラック・リストの(5)、価格等を事業者が一方的に変更することができるという条項についてです。民法の改正要綱案、今週、最終的に承認されたものによりますと、約款を一方的に変えられるということになってしまったのです。

合理性があれば、価格を含めて、一方的に変えることができるのだと。従来の案だと、前提として、特定変更条項があれば変更できるということだったのですが、特定変更条項は要らないということになりました。

そうなると、約款の変更についての民法のデフォルトルールの考え方と、このブラック・リストの考え方は、相当対立するものになる感じがいたします。

ただ、一方の民法は、約款を問題にしている。他方、こちらの消費者契約法は個別契約条項を対象にしているから、すみ分けているのだという説明ができるかもしれないのだけれども、今までの消費者契約法の紛争事例は、実は約款を扱っていたものが多かったのです。したがって、この5をどう考えるのかという点は、かなり重要な論点だと思うのですが、そのあたり、大澤委員のお考えはいかがでしょうか。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

今、松本理事長から御指摘がありましたように、今週の火曜日に民法改正の要綱案が決定されたわけですが、そのようなものが決定されたということは公にされていますけれども、その中身の具体的なところまで含めて議論するためには、やはりしかるべく場を設けて、その内容についても御紹介をしてから議論するほうが建設的ではないかと思います。

今、松本理事長が御指摘された問題は、もちろん悩ましい問題の1つでして、そのときに議論させていただくということでよろしいでしょうか。大澤委員もお答えいただく用意はおありだろうと思うのですけれども、やはり皆さんに共通の理解をしていただいた上で議論するほうが適切ではないかと思いますので、そのようにさせていただいてよろしいでしょうか。

○国民生活センター松本理事長 結構です。

民法の規定との関係というのはすごく重要だと思いますので、そこでまとめてやっていただいて。

○山本(敬)座長 いずれ、まとめてやらせていただきたいと思います。

≪3.古閑由佳委員からのプレゼンテーション及び意見交換≫

(1)プレゼンテーション

○山本(敬)座長 それでは、少し時間も押していますので、議論を打ち切るのは本意ではないのですが、もし後ろのほうで時間ができましたら、そのときにあわせて御指摘いただければと思います。

それでは、大変恐縮ですけれども、続きまして、古閑委員からのプレゼンテーションを行っていただきたいと思います。こちらも、プレゼンテーションの後、意見交換を行わせていただきたいと思います。

それでは、古閑委員、よろしくお願いいたします。

○古閑委員 それでは、資料3-1のほうから御説明させていただきたいと思います。

現時点で、まだ事務局案というものが出ておりませんで、各委員から御自身の意見と言う形で出ている状況ですので、余りちょっと個別の各論の話というものがしづらいので、総論を中心に今日は意見を述べさせていただきたいと思っています。

まず、前提としてなのですけれども、この議論の中で、中には事業者というのは常に自分たちの利益しか考えていないという前提に立って出されている意見もあるような気がしておりますが、一般の常識的な企業であれば、苦情やお問い合わせを受ければ、誠実に対応しようと考えていますし、何か不具合があれば適切に救済をしたいと考えているというのが大方だと思います。

もちろん、一儲けして逃げてしまおうと考えているような悪質な事業者もおりますけれども、基本的には、やはりきちんと適切に対応していかないと顧客というのは、どんどん逃げていってしまいますので、そうすると、企業としての継続性が担保できないわけですから、やはり常識的な企業であれば、きちんとそこは踏まえて運営をしていると思います。

そうだとすると、やはりごく一部の不心得な企業が問題を起こしているわけですから、その対策をどうするのかという観点で、顧客保護というものを考えていくべきだと考えています。

今やれていることが、やれなくなってしまうということがあったりであるとか、今、対応していないのだけれども、新たに対応しなければならないということがあったりする場合に、これが過度であると、やはりその分、人的、金銭的リソースを割いて対応するということが企業としては迫られますので、例えば、今より、より優れた安全な商品やサービスをつくろうというところにリソースを振り向けるということができなくなったりとか、価格も上げざるを得なくなったりということもあり得ます。

安倍政権の今の政策というのは、従業員給与を押し上げ、可処分所得を増やして、GDPの約6割を占める家計消費を増加させるという政策だと認識しておりますけれども、それにもつながらないことになりかねないと思います。

現実問題としまして、やはり、リソースは有限なものなので、何に手厚く振り向けるかというのは、これはトレードオフになるというのが現実だと思います。

現実から目を背けると価格を事業者はそのままに据え置いて、だけれども、こういう対応を増やしましょうということが議論されがちですけれども、やはりそこはもうちょっと現実を見て議論していくべきだと思いますので、全く何も消費者契約法を今のままでいいと申し上げるつもりはないのですけれども、常にやはりそのバランス感は見て検討していく必要があろうと考えております。それが1点目です。

2点目でございますけれども、現在、提供されている商品、サービスというのは、安価または無償のものも相当出てきていると思います。

無償のものというのは、先ほどもちょっと議論になりましたけれども、インターネットなどに多くあると認識しておりまして、今回の会合の趣旨というのも、情報通信技術の発達等、社会経済状況の変化への対応の観点からというのがありますので、やはり、こういった無償のものが増えているといったことも踏まえて、検討していく必要があると思っています。

事業者としては、この条件であれば、無償で提供してもいいだろうとか、あるいはこの程度の価格で提供してもいいだろうと一定の条件でその計算において、実現をしているというものがあると思いますけれども、それに対して、事業者だけではなくて、消費者側もある面において、多少の不便、不都合があったとしても、自身の求める機能、性能さえ備えていればよいというニーズのもとで、それは成立して、そういった商品、サービスが購入されているという状況だと思います。

そうだとすると、消費者契約について、一律に絶対的に安全な環境下でしか提供されないような制度としてしまうことは、そのような商品、サービスの自由な設計を困難にすることにもつながりますので、事業者及び消費者双方、選択肢を奪ってしまうということにもなりかねないということがあると思います。

すべての消費者が有償、場合によっては、高額であっても絶対的に安全な商品、サービスを望んでいるかどうかというところは、やはりちゃんと精査をすべきであると思っておりまして、仮にそうではないのだとすると、多少不都合な条件であっても、安価又は無償の商品・サービスを望むという消費者のニーズを満たせなくなってしまうといけませんので、やはりそこはきちんと精査していく必要があると思います。

品質、絶対的に安全と考えるのであれば、例えば高級百貨店でものを買うとかということが考えられるわけですけれども、ものによっては必ずしも絶対的に安全ではないとしても、この程度のものであれば、安売りスーパーで買ってもいいだろうという選択肢があるわけでして、そういったところの選択肢を奪わないようにするということも注意が必要であろうと思っております。これが2点目になります。

3点目でございますけれども、消費者保護の政策というのは、経済循環の中で、悪質な事業者をどう排除し、きちんとした事業者の活動を守るかと、守るかというのは、過度に負担をかけないように、うまく経済循環を回すということですけれども、その観点に立つことが重要であると思っております。

現在、我が国に求められているのは、健全な財政基盤を築くための経済再生であり、あらゆる事業者にとって、大きな負荷をかける改正を行うということになってしまうと、回り回って、国民、消費者のためにならないということにもなりかねませんので、消費者の消費の源泉というものも事業活動から得られる収益、これが経済循環ですけれども、そこから得られていることですので、なるべく可処分所得を増大させるというのが、それも消費者の利益につながることですので、それも1つの消費者政策でありますから、過剰な規制によって可処分所得を損なうということにつながらないように注意していく必要があると思っています。

そう考えると、かわいそうな消費者をただの1人も出さないようにするということだと、それが本当に消費者のためかというと、必ずしもそうでないことがあると思いますので、そこをぜひ政策的に考えていく必要があろうというのが3点目です。

それから、4点目ですけれども、消費者契約法のような投網をかけるような方法で善良な企業にまで全て影響を及ぼすようなやり方でいいのかどうかというところもあるのだと思っておりまして、本来は真に悪徳な事業者をいかに減らすかと言う対策をもっとしっかりやっていくほうがいいのではないかと思っています。そのためには、方法は幾つかあるかもしれませんけれども、個別救済の充実というものをどうやったらもっと図れるのであろうかと議論があってもいいのではないかと思っています。

それであっても、今、どうしても消費者契約法の強化、全部の事業者に何らかの形でまた負荷をふやすというか、投網をかけるような形で、やはり一律にやる必要があるのだという状況なのであれば、我が国の全ての事業者に影響が出ることですので、やはり本当に必要性がどの程度あるのかというところをよく見極めて、最低限の範囲でやっていただきたいと思っています。

これまで、幾つか御提案が出てきましたけれども、その中には、やはり、今、できているビジネスができなくなったりとか、あるいは今のビジネスモデルのままではできなくなったりするものも含まれておりますので、本当にそこまでやる必要があるのかというのは、事務局の具体的な案が出てきたときに、よく検討する必要があると思っています。

それから、5番目ですけれども、今回の改正議論の中では、法の素養がないと、なかなかちょっと、実際にそれは事業者が最終的に責任を負うことになるのかどうかという判断が難しい、判断に迷うような内容というのも見受けられると思います。

実際のところ、法の素養のない人というのが、相当現場におりまして、ちょっと後ほどデータも御紹介したいと思いますけれども、我が国の事業者の中の9割ぐらいが恐らく、法務部門などもないのではないかと想定ができます。

そういった中で、今も大分アカデミックな議論がここでされていますけれども、そういった思考や判断が現場でできるのかというと、恐らくなかなか難しいのであろうということになりますし、難しいからといって、これは専門家に相談することになれば、やはりコスト負担も重くのしかかってきます。

なので、法律家の感覚で制度設計をすることのないようにということは、やはり十分注意していかないといけないのであろうと思っております。

単に、検討の結果、法律論を戦わせて、最終的に事業者が責任を負わないという合理的な結論になればそれでいいのではないかということでは済まなくて、現場の混乱というものを十分に考慮していく必要があると思っています。

やはり、この法律を守るのは事業者ですので、現場でワークしないと何もならないので、そこは常に注意を払って検討していく必要があろうと考えております。

それから、6番目ですけれども、本件のように、一般基本法の制度の設計というのは、特にそうだと思うのですけれども、社会に与える影響が非常に大きいので、主観や印象に基づく主張ではなくて、客観的・科学的な調査・分析に基づいて、忠実に事実関係を確かめていって、設計を行うことが不可欠であろうと思っています。

今日のちょうど日経新聞の経済教室にそのことについて書かれていたので、読まれた方も多いと思うのですけれども、御紹介させていただきますと、「安倍晋三政権は、経済再生と教育再生を成長戦略の要と位置づけている、持続的な経済成長にはグローバル化に対応した産業政策や人材育成を実現する政策手段について、根拠を示しつつ、議論することの重要性は論を待たない。

特に必要なのは、それぞれの政策効果の計測や、費用対効果の分析を通じての国民の合理的な判断が可能になるような情報を十分に提示することである。

データや厳密な手法を用いた実証分析に基づく政策運営、すなわち、科学的根拠(エビデンス)に基づく政策(エビデンス・ベースト・ポリシー)が求められる」という記事もちょうどございましたので、御紹介させていただきました。

それから、次ですけれども「業法制定・改定時の議論の経緯の考慮・検証」という点が物すごく大きなテーマだと思っておりますので、これについての意見に入ります。

1番目として、多くの業法をその他の個別法では、業界の事業者側の意見も聞き、それぞれの事情を踏まえ、事業活動を阻害しない妥当な落としどころを精緻に検討した上で制定されているものだと思います。

2番目として、今回の消費者契約法の改正議論においても、そうした検討の経緯をきちんと考慮・検証し、より広範な範囲に一律の規制をかけることのないようにしなければ、各個別分野における検討をないがしろにしかねないと思っております。

個別法の議論の中で、あえてその点については、規制をかけないでおこうという結論になったものもあると思うのですけれども、そういったものにかぶせてしまうというような効果もあり得ると思っております。

それから、3番目ですけれども、現在のところ、この専門調査会では、法律家による理論的な法律論が相当戦わされていると思いますけれども、やはり先ほどの繰り返しになるような点もございますけれども、我が国にある数百万あるとも言われている事業者が守る当事者になりますので、その人たちにも、ちゃんと理解をしてもらえるような議論というのも必要になってくると思っています。

私のほうも、こちらに来る前に、なるべく予習はしてきているのですけれども、それでもやはり理解が難しい点もございまして、なかなかこの会合に参加していないような事業者さんとかで、議事録を読んだところで理解ができるのかというと、やはり現実問題としては難しいようでして、そういった声は聞いております。

こういった高度な専門的な議論というものも、もちろんアカデミックにはすごく貴重な議論だと思っていまして、私も一生懸命ついていけるように頑張ってはいるのですけれども、それはそれで必要なのだと思うのですけれども、やはり最終的には、実現可能性がないと、絵に描いた餅みたいになってしまいますので、やはりタイミングとしては具体的な案が事務局から提案されたときになのかもしれないですけれども、それを守る立場にあるさまざまな業種、規模の事業者に丁寧に説明した上で、意見を得るということもやっていく必要があろうと考えております。

これが総論になります。

それから、次に、資料3-2に行きまして、今、総論の中で、具体的なデータに基づいて検証していくことが必要なのではないかということを申し上げましたので、私のほうで用意できた範囲ではありますけれども、この議論の中で有用であろうと思われるデータを御紹介させていただきます。

まずは、この専門調査会ですけれども、情報通信技術の発達等、社会経済状況の変化への対応等の観点からというところが求められておりまして、そういう意味では、インターネットの普及というのも、結構重要なファクターだと思いますので、まず、3ページ目をごらんいただきまして、これは総務省さんが公表している資料になりますけれども、まず、インターネットがどのぐらい普及しているかというと、これは平成26年度の情報通信白書ですので、25年のデータになっておりますけれども、日本人の82.8%がインターネットを利用しているということだそうです。

利用目的が次の4ページ目になりますけれども、これは家庭内と家庭外と分かれてデータをとっているようですけれども、利用目的として両方合わせても一番多いのが、電子メールの送受信ということになっていますけれども、2番目が商品・サービスの購入・取引となっておりまして、商品・サービスの購入のためにも、相当インターネットが使われているということがわかると思います。

そんな中、6ページ目をご覧いただきたいのですけれども、これだけインターネットが普及してきている中で、消費者行動はどうなっているのかということでございます。

これは総務省さんの資料、ちょっと古いですね、平成23年にはなりますけれども、ここで説明されているのは、一番上が一般的な商品の購入プロセスということで、注意、関心があって、欲求が湧いて、記憶して行動をとるということでしたけれども、インターネットが出てきて、その下のAISASであるとか、そのさらに下、AISCEAS、こういった行動パターンになっているという紹介がされております。

ちょっとこの資料の中に書かれていた説明としまして、製品間、店舗間の比較では、自分の足を使って、複数の店舗を回ることで比較が可能であるが、手間や時間がかかるのに加えて、比較可能な範囲も限定的であったというのがインターネットがそんなに普及していなかった時代のことでして、その後、インターネットが登場することによって、それぞれの購買プロセスは影響を受けているが、その中でも検索(Search)、比較、検討(Comparison、Examination)、共有(Share)に関しては、従来よりも手間と時間を軽減するだけではなく、従来はなし得なかった経験を提供しているという点で、インターネットがもたらした変化は大きいという説明がされておりまして、実際、この6ページの図、2段目と3段目に、インターネットに特有の購買プロセスというのが入っていますけれども、これを見ますと、やはり単にインターネットで何か例えば広告を見たというので、すぐに行動するわけではなくて、情報を集めるというプロセスがインターネットが登場することによって、かえって入っているというデータがございました。

それから、次に、7ページ目に行きます。

申しわけありません。7ページ目は傍聴席の皆様にはないかと存じますが、これは日本経済新聞社さんの許諾を受けて、記事を掲載しております。その許諾が卓上配付のみということでとれているものですから、今回はメーンテーブルの皆様にしかお配りができていないかと思います。

ここは、つい最近の記事でして、2月4日の記事です。ご覧になった方もいらっしゃると思いますが、日経流通新聞の7面の記事でした。これをお金を払って許諾を受けたものですから、ここでは紹介をさせていただきますけれども、店頭で気になる商品があった際に、わざわざウエブで詳細を調べると答えた人が52.3%いるというデータになっています。ウエブサイトで十分な情報が得られなければ商品の購入をやめてしまう消費者も6割以上いたということでございました。

そういった状況なので、企業のサイト運営と充実が重要になっていることがわかったという記事でして、こういう動向ですので、企業側もどんどんサイト上の情報は充実していこうという方向に向いているということが言えるのかなと思いましたので、御紹介させていただきます。

それから、8ページです。

8ページ以降、11ページまでも、傍聴席の皆様にはお配りできていないと思います。

こちらは、ビデオリサーチインタラクティブというところが出しているデータでして、これは販売されているものですから、弊社も買っているので、これを入手できたのですけれども、今回の許諾が卓上配付のみということですので、こちらも申しわけありませんがメーンテーブルだけに配らせていただいております。

まず、8ページですが、先ほど7ページの記事は店頭購入に関して、購買に当たってどういう検索とかをどの程度するのかという話でしたけれども、これは店頭購入に限らず、ですから通販とかも入ったデータになっておりまして、何か購入したい商品がある場合に、2013年のデータでいうと、□%がネット上で比較検討しているという結果になっておりまして、これは2007年からのデータがございますが、年々増加しているということがわかるかと思います。

9ページですが、これは店舗で購入する場合とあとPCを使ったインターネットで購入する場合の比較になっておりますけれども、むしろPCを使って購入するケースのほうが、より何か購入したい商品がある場合に、ネットできちんと比較・検討した上で購入すると回答した人が多いというところでして、インターネットの特殊性として、より意思形成の働きかけが強くて、直ちに購買につながっているのではないかというような話もございましたが、このデータを見る限りでは、必ずしもそういうことでもなかろうということです。

10ページも同様でして、これも店舗とPCを比べておりまして、できるだけ多くの情報を比較したいと思うと考える人は、どちらが多いのかということですけれども、これもインターネットだから安直に買うということではないというデータになっていると思います。

むしろ、インターネットで買う人のほうが、できるだけ大きくの情報を比較したいと考えているというデータになっております。

11ページですけれども、これも同様の比較でして、どんな情報でも、できるだけ詳しく深く知っておきたいと答えた人が、どちらが多いかということですけれども、これも若干、PCでネットを使って購入する人のほうがそのニーズが高いというデータになっております。

続きまして「インターネットにおける消費者被害の実態」ということです。

インターネットが登場して、何か特にこれまでの状況と比べて、何かトラブルがふえているのかどうかという、ちょっと比較をするためのデータは、残念ながら見つけられませんでした。

13ページにつきましては、これは消費者庁さんが出されているものでして、トラブルに遭ったことがないと回答されている方が88%というデータでした。

それ以外がトラブルに遭ったことがあるという人なのだと思うのですけれども、内訳を見ましても、契約内容そのものに関するもの、それから事業者に債務不履行があるもの、詐欺的なものが多く、不実告知とか、断定的判断の提供、不利益事実の不告知という誤認の類型が問題になっているものは、割合としてはそんなに多くないのではないかと見受けられるかと思います。

14ページに行きまして、これもメーンテーブルのみの配付とさせていただいているのかと思いますけれども、これは、弊社の社外秘情報になっておりますので、申しわけありませんけれども、ちょっと情報を限らせていただいております。

この折れ線グラフをご覧いただきますと、これが弊社のデータのほうでYahoo!ショッピングというサービスがございまして、そこには、ストアさんに出店をしていただいている状況で、かなり多くのストアさんが、今、御参加くださっていますけれども、それについて、何かお客様から御申告をいただいた中で、出店者側に落ち度があったであろうと判断できるものの割合を示したのが、折れ線グラフになっております。

この数値はちょっと公開をしておりませんので、メーンテーブルの方は見られていると思うのですけれども、取り扱いに御注意いただければ幸いでございます。

16ページにまいります。

これも、今、御紹介した「Yahoo!ショッピング出店ストアの状況」を御紹介しております。

Yahoo!ショッピングのストアさんというのは、これも事業者に当たる方々ですので、今回の消費者契約法の適用を受ける方々ということになりますが、その内訳を見ますと、個人事業主さんが47.5%を占めておりまして、法人が52.5%という割合になっています。

これはアンケートに回答してくださった方だけの比率ですので、母数は2,984という数字になっております。

17ページをごらんいただきまして、その方々に法務担当がいらっしゃるかどうかということをアンケートで聞いてみました。

そうしたところ、個人事業主においては、法務担当がいないという回答をされた方が96.2%でした。法務担当がいるというのは、個人事業主なので、恐らく自分に法務知識があるということなのだと思うのですけれども3.8%という結果になっております。

それから5億円未満と5億円以上と分けて書いておりますけれども、5億円未満のやはり中小企業になりますと、法務担当がいるというのは1割程度にとどまるという結論でした。これは総計してしまいますと、法務担当がいないという事業者が92%でした。これはあくまでもYahoo!ショッピングに参加されているストアさんのデータでございますけれども、何もデータがないよりはいいかと思いまして、御紹介させていただきます。

それから、参考までに、経営法友会からもデータをいただきましたので、御紹介させていただきますと、18ページになりますが、経営法友会というのは、企業の法務担当者を支援するための団体ということになっていまして、あくまでも法務を目的とした団体ですけれども、その会員と、それから上場会社等に対して、調査を行ったことがあるそうでして、この結果から見ましても、そういった企業であれば、比較的法務部門を置いているところが多いのではないかと思いますが、それであっても、やはり5億円未満ということになりますと、法務部門がないところが57.9%を占めるというところでして、資本金が上がるにつれて、さすがに法務部門を持っている比率というのは上がっているという結果でございました。

データのほうは以上になります。

これも、この議論の何かの参考になればと思います。

それから、最後に、各論ですけれども、各論については、本日、ここで読み上げることはいたしませんが、柱書きのところだけ、現在、個別の意見というのは、まだ事務局案も出ていないので、特段に示せるものではないのですが、これまで出てきた議論を踏まえて、特段に申し上げておきたいポイントのみを絞ってここに記載させていただきました。

ただ、これはあくまでもこれまでの議論を振り返ってというところですので、事務局案が出された段階で改めて意見を述べさせていただくことになると思っております。

それから、私だけではなくて、先ほどの繰り返しになりますが、丁寧にさまざまな業界、事業所に説明を行って、意見を聞くというプロセスも講じなければ影響が大きかろうと考えております。

以上です。

(2)意見交換

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、時間が余りありませんので大変恐縮なのですけれども、ただいまの古閑委員からのプレゼンテーションの内容を受けまして、残りの時間で意見交換を行いたいと思います。

御質問や御意見のある方は、御発言をお願いします。

では、河野委員から順番に行かせていただきます。

○河野委員 時間がないところ、申しわけございません。

ただいま、総論として、最初にお話くださいました中身に関しまして、あくまでも事業者サイドからの一方的なお話だと伺っておりました。消費者側から見て、先ほどの最初の御報告、どう受け取ったかということを何点か申し上げて、あと2点質問がございます。

1点目は、現在の消費者政策についてですけれども、そもそも大きく考え方が違っているかと思いました。消費者政策は、消費者の保護から自立支援、それから事前規制から事後規制ということを基本の方向としていることはここにいらっしゃる皆さん、御理解いただいていると思います。技術発展、それからグローバル化が進む中で、事前規制では、もう消費者の保護を図ることは困難です。そこで、事前規制は身体被害とか、重大な財産被害を含む分野に限定し、極力事前規制をなくす方向での政策がとられています。

ただ、それだけでは消費者被害というのは、現在、拡大する一方であるということから、事後規制、つまりトラブルが起こった後で救済する、被害拡大防止ができるようにするということが重視されてきております。

事後規制をワークさせるためには、業法等に違反した場合の行政執行が速やかに行われる必要があります。さらに消費者契約法のような民事法については、被害回復を速やかに消費者が図れるようにすることが必要です。

そのような政策の基本方向を理解していただいているのでしょうかというのがそもそも先ほどのお話を伺ったときの疑問点です。

事前規制の多くが、取り払われた後の事後規制のあり方を検討する際に、その事業者の負担がふえるのは問題という論法では、事前規制の大幅緩和は受け入れたけれども、それによって必然的に生ずる問題の解決には不熱心であり、新たに出てくる問題に対して、真摯に取り組んでくださらないという印象を持たざるを得ません。

さらにご発言の中にあった顧客保護について、過度なものを要求する規範という文言についてと消費者の消費の源泉は、事業活動から得られる収益から得られるものという認識に関してでございます。

消費者契約法というのは、民事法であって、消費者と事業者との間に紛争が生じた際の責任や権限を定めるものです。

業法による規制とは異なっていて、消費者と紛争関係にならない場合は、事業者に責任を生じさせるものではございません。

現在の調査会に先立って、消費者庁の研究会では、裁判や消費者相談等の事例を丁寧に、特に特商法など特別法で救済された事例は除外されておりましたけれども、事例を丁寧に調査し、その研究会の議論を継承するものとして、今、この専門調査会の議論が開始されていると理解しております。

これらの報告書等、事例を踏まえれば、民事ルールの充実がどのような内容や程度で必要であるかは、当然のことであり、共通の議論は十分にできると考えております。

顧客保護について、過度なものを要求する規範とならないということは明白であると理解しております。

また、消費者の意見を丁寧に拾い、当該消費者の救済にとどまらず、事業者の皆さん自身の事業活動の見直しに生かしていける事業体こそが、やはりすぐれた商品、役務を消費者のニーズに合う方法で提供できると考えております。

そのような事業体こそが収益を上げることができて、社会にも貢献できるものであるということをぜひ理解していただきたいと思います。

消費者対応を単に先ほどから伺っていますと、コストとして認識されているのかと思いますけれども、ぜひコストとして認識するのではなく、そもそもの契約の土台として認識していただきたいと思っております。

それからもう一点、かわいそうな消費者がただの1人も出ないようにするコンセプトの法制度を目指そうとするというところにも、意見を申し上げたいと思います。

そのような議論でないことは明白だと思っております。契約の対象物とか、契約内容、そしてその分野における紛争処理において、消費者と事業者に当然、情報力、交渉力の格差が構造的にあることから、その裁判事例や相談事例を通じて、紛争のさまざまな形、諸相を把握した上で、現行の消費者契約法では規定がなかったり、曖昧であったりするために、民事紛争の解決に課題を残しているということから、見直しの議論がされていますし、先ほど、大澤先生が御提案なさったことも、ここでしっかりと議論されると思っております。ぜひ、そのあたりを真摯に受けとめていただきたいと感じております。

時間の問題もありますので、質問を2つさせてください。先ほどいただきましたスライドの資料の6ページで、インターネットショッピングにおける購買プロセス、従来のものよりも比較検討ができるので、消費者にとって誤認が生じないというか、消費者もそれなりに判断ができるような条件が整っているのではないかという制度の御説明でした。

ただ、消費者側からしますと、今、このインターネットを通じて、行動ターゲティング広告やバイラルマーケティングなどを問題視しています。そのあたりをどうこのインターネットの特性として考えられているのか、ぜひお話を伺いたいと思います。

その大前提として、ステルスマーケティングという広告なのか、それとも記事なのかわからない形で、消費者がほとんど誤認する形で情報を受けとって、知らないうちにそこに誘導されてしまうということも、ごく大手の事業体においてもかなり問題になる事例がございます。そのあたりも含めて、ステルスマーケティング、バイラルマーケティング、それから行動ターゲティング広告に対しての御見解をぜひ伺いたいと思います。

それから、14ページのスライドです。

これは部外秘だということで拝見させていただきました。

Yahoo!ショッピングサイトにおける注文数と問題案件の比率なのですけれども、Yahoo!ショッピングのショッピングサイトの利用規約では売買契約等に関しまして、ヤフーさんは一切責任を負わないとしっかり書いていらっしゃいます。

そういった条件のもとで、Yahoo!ショッピングにおけるお客様から申告があり、出店ストアに落ち度があるとヤフーが判断した件数、どういう形でこの件数を把握したのか、それからヤフーさんが判断する基準というものはどういうものなのか。それから、注文数に対する比率と見ますが、単純計算をしても、□%とか□%を合算すると、年間で□から□件の問題があるということがここに書かれているわけですけれども、実際のところ、優良な事業者はしっかりとお客様のお申し出に対して対応するという最初のお話を伺っておりますと、この事例に対してヤフーさんはお客様に対してどのような対応をされたのか。
さらに、問題があると認めた出店ストアに対して、どのような対応をされたのか。対応をされた結果、最終的に顧客の満足をどのように図られたのかということを伺いたいと思います。

○山本(敬)座長 恐らく、類似した御指摘が出るかもしれませんけれども、まずは、今の御質問が出ましたので、それについてコメントしていただければと思いますが、ヤフー自体がどのようにしているかという個別の問題についてここでやりとりをしても、余り生産的ではないと思いますので、もう少し立法に向けての一般的なご意見という形でお答えいただければと思います。

○古閑委員 まず、6ページのほうでございますけれども、これはあくまでも総務省さんのデータを御紹介したもので、こういったプロセスが入るから問題がないという趣旨で御説明をしたものではございません。

広告、いろいろなものが出てきておりますけれども、その広告を直ちに対象から外してほしいという主張もしておりませんし、今回、各論に書かせていただきましたけれども、前回の沖野先生の内容に近いのですけれども、やはり勧誘に当たるのかどうかというところで見るべきだという意見でして、なので、インターネット広告は全く責任を負わないでいいのだという主張ではございませんので、ちょっとこの6ページの御説明とそのこととはつながらないことだと思っておりますので、そういう御認識でいただければと思っております。

それから、Yahoo!ショッピングの話に限らず、データがあったほうが、事実に基づいた議論をするために皆さんの御参考になるかと思って出させていただきまして、ちょっとこれを個別に多いとか、少ないとか、主観的な印象だけに基づいた議論のために使っていただくようなものとして出したものではないので、今の御指摘は非常に残念です。御協力できるところはしたいということで社外秘情報でありながら出したものでございまして、こういう印象論で個社を槍玉にあげるような、会合の趣旨とは違う御指摘があると、いろいろな事業者は萎縮してデータを出さない方向になっていくと思います。そういう不適切なご質問だと感じるところがありますけれども、御回答するとするとYahoo!ショッピングについては、今、補償制度とかもございますし、もともとあの場の提供ということで、基本的にはストアさんと買主さんの間で、取引、契約が成立するということでございまして、その中で場の提供者として、どの程度の対応をするのが適切かということは、考えてやっているつもりでございます。

それは、今、場の提供者というサービスは幾つかありますけれども、その中でその内容を競いながらやっているところなので、そこを何も考えずにやって、事業の継続性があるとは思っていませんし、全部の事業者さんでやはりそういったことは意識して運営されているのではないかと考えております。

以上です。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、続きまして沖野委員。

○沖野委員 ありがとうございます。

幾つか申し上げたいことがあるのでお時間をいただきたいのですけれども、河野委員の御指摘とかなり重なる面もございます。

1つ目は、最初の総論で言われたところについてです。あるいは、やや強調をするために言われたのかなとも思うのですけれども、全般に今回の消費者契約法の見直しというのがどういうものだとして考えるのかという点です。

事業者について、ごく一部の不心得な事業者をいかに排除するかという御指摘ですとか、事業者を悪徳なものと善良なものに分けて、悪徳な事業者にどう対応するかということが重要だという指摘についてです。

それらの表現からしますと、あたかも悪徳事業者規制法をいかにつくるかということを、今回、検討するようにも聞こえるのですけれども、やはりそうではないと思います。

そもそも消費者契約法が持っている役割ですが、経緯を重視すべきだということからすると、これは河野委員が御指摘になったところですけれども、規制緩和の中で、事前の行政規制から契約法や私法の拡充による民事ルールの充実による手当へという中で、むしろ、このような消費者契約に関する適正化のための私法ルールの充実が事前の行政的な規制というものを極力排除していくということを支えているのだという中で、消費者契約法の制定がされ、そしてその見直しが検討されているということだと思います。

消費者が安心して取引できるということが、行政規制に頼らず、ビジネスの拡大や安定に寄与するという認識もあわせて持つ必要があるのではないかということです。

それから、業法との関係につきましても、業法と契約法の違いというのは、前回、若干報告させていただきまして、整理が十分行き届かなかったのかもしれませんけれども、その違い、消費者契約法が業法の欠落や不備を埋めていくという、一般的に今申し上げたような規制緩和の中での役割とともに、そのような役割もあるということですし、業法が行政的な規制あるいは行政処分などと結びついた形で規律をされるといった特性をも含めて、両者の違いということも十分意識する必要があるのではないかと思います。

3点目なのですけれども、法の素養のない人の多い現場ということも十分考えるべきだという点です。データとしても法務部のない企業というものも多いのだという御指摘をいただきました。その点は、確かに考慮すべきだと思うのですけれども、私はそのことと各論で言われることが結びつくのかというのが疑問に思っております。例えば、先ほど井田委員から条項の差止めに関しては、消費者契約法10条に基づく差止めが大半であるということを御指摘いただきました。データに基づいた御指摘だったわけですけれども、そういう法務部もない、あるいは法律家がいらっしゃらないようなところにおいて、何が消費者契約法10条に反するのかということを一義的に判断できるのかというのは非常に疑問に思います。それなのにいきなり差止めが来るというような、もちろん事前に交渉はあるわけですけれども、そうだとすると、むしろどういったものが問題視され得るものなのかと、いわゆるブラック・リストの充実とともに、こういうものが不当だと推定されるもので無効となる可能性があるのだということを示すことによって、あるいは業界でのガイドラインなどの対応も含めて、検討できるような指針が充実することこそが対応としては必要ではないかと思います。

情報提供につきましては、各論のペーパーにおきましては、既に民法において、情報提供義務が課されているのだから、消費者契約法では必要ないという指摘がございますけれども、民法上、どういう場合に情報提供義務がどのような範囲で、どういった対象について課されるのかというのが、御指摘のような法務部もない、法律の素養もないような事業者にわかるのかというと、信義則1本で来るということであれば、一体どういうものが指針になるのかということを消費者契約法において一段具体化していくという規律を設けることが重要であるという指摘になるのではないかと考えられますので、そういった観点も改めて検討する必要があるのではないかと思います。

それから、主観的な主張ですとか、印象に基づく議論はやめるべきだ。客観的なエビデンスベースで論じるべきだというご指摘についてです。一般論としては確かにそういう点を重々念頭に置かなければいけないと思います。

そういった中で、これも既に河野委員が御指摘になったところですけれども、消費者契約法の制定そのもののときには、トラブル事例としては、PIO‐NETに収集された苦情相談受付件数の推移などが挙げられておりました。

今回も、PIO‐NETはもちろんですが、それだけではなくて、裁判例ですとか、あるいは消費者相談、日弁連ですとか、各種の相談センターに寄せられた事例がかなりあるということが先だって出されています。そこからどういうものを取り上げるべきかという、その精査はなおしていく必要がありますけれども、そういったデータがまず前段階として示されているという中で検討を進めていく必要があるのだと思います。

それから、主観的な主張ですとか、あるいは印象に基づく議論はなるべくやめるべきであるという点なのですけれども、それはさまざまなところで当てはまると思います。

例えば、不当であると推定される、グレイ・リストと言うかどうかということはありますけれども、そのようなリストを個別に明確化したときには、事業者は全てこれをブラック・リストととって、およそ経済活動が委縮してしまうといったような御主張については、本当にそうなのかという疑問を抱きます。グローバル対応というような話も一部出ましたけれども、例えば、諸外国では、不当条項についての何十年の経験があるようなところもあって、そこでは経済活動が委縮しているのかというと、必ずしもそうではないと思われますので、こういった御主張についても、主観的な主張や印象ではなく、エビデンスがあれば出していただきたいと思うところです。

それから、ネット取引の重要性について、貴重な情報提供をいただきまして、ありがとうございました。

ネット取引の増加を目の当たりにしまして、その分野での契約の適正化といいますか、消費者が安心して契約できるということが、消費者・事業者ともにこういう取引を伸ばしていくということにとって、非常に重要ではないかという印象を改めて持ちました。

ただ、情報の収集方法ですとか、比較の可能性ですとか、それぞれの取引の態様や類型に応じたような考え方ができるような配慮というものもしていかなければいけないのだろうということはプレゼンテーションから感じたところでございます。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

古閑委員から御指摘いただくことはございますでしょうか。

○古閑委員 そうですね。細かくはあれですけれども、例えば、ブラック・リストについては特段否定をしておりませんで、もちろん内容については精査すべき必要があると思いますけれども、そういった形で明確になることは場合によってはいいことなのではないかと思っております。

それ以外も幾つかありますけれども、とりあえず大丈夫です。

○山本(敬)座長 では、続きまして、河上委員長、お願いします。

○消費者委員会河上委員長 私は全く内容ではなくて、早くに気づくべきだったので、ちょっと失礼していたのですけれども、資料3のクレジットがある会社名のクレジットになっておりまして。

○古閑委員 申しわけございません。それはちょっと事務局に指摘を受けまして、これは差しかえになるそうです。

○消費者委員会河上委員長 そうですか。では、結構です。

これは古閑委員の名前にしても構わないという前提でよろしゅうございますか。

○古閑委員 はい。

○消費者委員会河上委員長 では、そういう形で処理させてください。

○古閑委員 済みません。ちょっとこれ本当に膨大な検討が必要だったので、チームでやったものですから、こういうことになってしまったのですけれども、意見としては私の意見として。

○消費者委員会河上委員長 肩書きで書かれるのは全く問題ございませんので、よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 どうもありがとうございました。

それでは、山本健司委員、どうぞ。

○山本(健)委員 詳細な御報告、貴重なデータをどうもありがとうございました。

ご報告内容に関する私の意見・感想は、先ほどの沖野委員からの御意見と重複するところが多いので、重ならないところで私の感想を述べさせていただきたいと思います。

資料3-2の13ページの「インターネット取引でのトラブルの経験」という点です。

内閣府の平成20年版国民生活白書では、2006年中の消費者被害の有無の調査で「被害に遭った」と回答した人は全体の2.6%であった、交通事故の被害に遭う率0.6%、刑法犯の被害に遭う率1.2%よりも高い、というデータが紹介されております。

本日頂戴しました資料3-2の13ページの図表で、インターネット取引でトラブルに遭ったことがない人が88%、ひっくり返せばトラブルに遭った人の割合は12%という御報告を頂戴いたしました。もしそうならば、12%というのはかなり大きな比率であると思います。むしろインターネット取引における消費者被害の予防・救済のための法律対応が急務であることの証左ではないかと思いました。その点をつけ加えさせていただきます。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

古閑委員から何かございますでしょうか。

○古閑委員 ここの内訳が載っておりまして、消費者契約法を変えることによって、12%がどの程度改善されるかという項目を見ると必ずしも消費者契約法で手当がされるものではないのではないかということで御紹介させていただきました。12%が少ないとは私も思っておりません。

○山本(敬)座長 増田委員、どうぞ。

○増田委員 今のことでございますけれども、消費者契約法を改正することで、これが少なくなる可能性はあるかと思います。サンプルを申し込んだら定期購入扱いにされたという相談がありますが、その定期購入の表示の問題、それが広告とか勧誘とかということにもなるかと思います。ご報告の中でのトラブルの原因は、果たして一体何なのかということがこれだけではわかりませんので、今の御主張というのはちょっと違うのかなと感じているところです。

それから、今まで河野さん初め、ほかの先生方からの御意見と全く同じ意見ですけれども、そもそも悪質な事業者に対する消費者契約法ではなくて、相談の現場におきましては、悪質事業者の相談よりは、今は全ての事業者に係る相談というのが非常に目立っている状況にあります。その中で、もともと継続的に事業を運営していこうという事業者の方々に対して、お話し合いで解決をするという場面が多くありますので、その中で、消費者契約法を活用していくというメリットを重要視していただきたいと考えております。

○山本(敬)座長 御意見ということでよろしいでしょうか。

○増田委員 はい。

○山本(敬)座長 まだまだ御意見が多数あるかと思いますが、終わる前に一言だけ申し上げておきたいことがございます。

エビデンスベースの議論をするべきであるということは、私も前に発言しましたように、歓迎すべきことでして、やはりそのような形で議論を進めていくことができればと思います。その意味では、萎縮せずに,出せるものは出していただいて、ここでしっかりと議論することができればと思います。

とりわけ、コストの問題は無視できないということはおっしゃるとおりだと思います。では,具体的にどのようなコストがどれぐらい、どのようにかかってくるのかということを,まさしくエビデンスベースで議論することができればよいことだと思いますし、本来、立法ないし改正をするときには、そのような議論をやはりできる限りするべきではないかと思います。

したがって、もう一度申し上げますけれども、萎縮せずに、そのようなものがもし出せるのであれば、お出しいただいて、議論に寄与していただければということを一言申し上げておきたいと思います。

それでは、時間をかなり超過してしまいましたので、もちろん、これで終わりというわけではなく、また改めて議論していただければということで、本日の意見交換はこのあたりとさせていただきます。

本日の意見交換の内容につきましても、事務方のほうで整理をしていただいて、今後の検討に生かしていきたいと思います。


≪4.閉会≫

○山本(敬)座長 それでは、最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。

○金児企画官 本日も、熱心な御議論をどうもありがとうございました。

次回は、3月6日金曜日の17時からの開催を予定しております。

議題と詳細については、後日、御案内いたしますので、よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところ、お集まりいただきまして、ありがとうございました。

以上