第2回 集団的消費者被害救済制度専門調査会 議事録

最新情報

日時

2010年11月15日(月)9:30~12:30

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【専門委員】
 伊藤座長、三木(浩)座長代理、磯辺委員、大河内委員、大高委員、
 沖野委員、窪田委員、黒沼委員、中村委員、山本委員
【担当委員】
 池田委員、下谷内委員、山口委員
【関係省庁等】
 消費者庁  加納企画官、鈴木課長補佐
 法務省民事局  佐藤参事官
 最高裁判所事務総局民事局  朝倉第一課長
 国民生活センター理事長・弁護士  野々山氏
【消費者委員会事務局】
 齋藤審議官、原事務局長

議事次第

1.開会
2.集団的消費者被害の実態について
3.集団的消費者被害救済制度研究会において示された手続モデル案について
4.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第(PDF形式:62KB)
【資料1】消費者被害の現状 (消費者庁提出資料)(PDF形式:291KB)
【資料2】消費者被害事案の整理 (消費者庁提出資料)(PDF形式:153KB)
【資料3】2009年度の相談の特徴 (消費者庁提出資料)(PDF形式:156KB)
【資料4】消費者の動向に関する調査 (消費者庁提出資料)(PDF形式:143KB)
【資料5】現行制度の概要等 (消費者庁提出資料)(PDF形式:356KB)
【資料6】海外制度比較表 (消費者庁提出資料)(PDF形式:125KB)
【資料7】訴訟制度の検討 (消費者庁提出資料)(PDF形式:42KB)
(参考資料1)最近の消費生活相談事例(PDF形式:187KB)
(参考資料2)今後のスケジュールについて(PDF形式:57KB)
(参考資料3)契約当事者・相談者の属性 (野々山理事長提出資料)(PDF形式:58KB)


≪1.開会≫

○原事務局長 おはようございます。月曜日の朝早くからお集まりいただきましてありがとうございます。消費者委員会事務局の原でございます。
 ただいまから第2回「集団的消費者被害救済制度専門調査会」を開催いたします。なお、本日は所用により桑原委員、三木澄子委員が御欠席となっておりますが、人数としては過半を超えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 議事に入る前に配付資料の確認をさせていただきたいと思いますけれども、議事次第と書かれた紙の後ろに配付資料一覧を掲載しております。
 資料1~資料4にかけては消費者相談、消費者被害の現状ということで、消費者庁から準備をしていただいた資料となっております。
 資料5~資料7が今日の後半の議論になりますが、現行制度の概要や海外の制度、訴訟制度でどういったものを検討していくかについての資料となっております。
 参考資料2として今後のスケジュールもお付けしておりますので、御参照いただきたいと思います。
 それでは、伊藤座長、議事進行をどうぞよろしくお願いいたします。

○伊藤座長 おはようございます。
 議事に入る前に前回所用で御欠席の大高委員、沖野委員、黒沼委員、山本委員、消費者委員の下谷内委員から簡単に自己紹介をお願いしたいと思います。それでは、大高委員からどうぞよろしく。

○大高委員 弁護士の大高と申します。大阪で弁護士をしております。日弁連では消費者問題対策委員会に所属しておりまして、こういった集合訴訟等の問題を勉強しておりました。不慣れな点もあると思いますけれども、ひとつよろしくお願いいたします。

○伊藤座長 沖野委員、お願いします。

○沖野委員 東京大学の沖野と申します。民法を専攻しております。これに先立ちます消費者庁での研究会に参加させていただいておりました。引き続き参加させていただくことになりましたので、どうかよろしくお願いいたします。

○伊藤座長 黒沼委員、お願いします。

○黒沼委員 早稲田大学の黒沼でございます。専門は会社法、金融商品取引法です。消費者庁の研究会から引き続いて参加させていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

○伊藤座長 山本委員、お願いします。

○山本委員 一橋大学の山本でございます。民事訴訟法その他民事手続法の関係を専攻しております。よろしくお願いいたします。

○伊藤座長 引き続きまして、消費者委員会の下谷内委員、お願いいたします。

○下谷内委員 下谷内でございます。よろしくお願いいたします。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。

≪2.集団的消費者被害の実態について≫

○伊藤座長 それでは、議事に入りたいと存じます。本日は「集団的消費者被害の実態について」、「集団的消費者被害救済制度研究会において示された手続モデル案について」を議題として取り上げたいと思います。
 まず集団的消費者被害の実態についての議論を行いたいと存じます。既に消費者庁研究会の報告書におきまして、集団的消費者被害の実態について一定の整理がされているところでございますが、更に精緻な検討を要するところと思われます。そこで消費者被害実態についての説明を消費者庁の加納企画官よりお願いいたします。

○加納企画官 それでは、資料に基づきまして御説明したいと思います。
 資料1から順次御説明したいと思いますが、消費者被害の現状ということで苦情相談の件数の推移について1枚目冒頭でお付けしております。これは国民生活センターのPIO-NETに基づきましたデータの推移でございます。
 2枚目の(2)-1で取引、3枚目の(2)-2で安全・品質ということで、それぞれ件数の内訳という形でお付けしております。
 4ページ(3)に、商品・役務別に見た既払金額の分布ということで、消費者事件は少額事件が多いと言われておりますけれども、それがどういうふうになっているのかというのをグラフでお示ししたものでございます。内容によっては例えば四輪自動車であるとかサラ金とか、この辺につきましては比較的額が高いものの相談もありますが、そのほかにつきましては5万円や10万円といった、比較的少額と思われる相談が多いというデータでございます。
 以上が苦情相談の傾向でございます。
 続きまして資料2をごらんいただきたいと思いますけれども、消費者被害事案の整理ということで、これは消費者庁の研究会から整理を続けているものでございますが、裁判例や相談事例などから典型的と思われる消費者事件につきまして、一定の視点で整理を試みたものでございます。この整理につきましては第1回の専門調査会でも御説明したところでございますけれども、最終的に判決主文においては、「被告は原告に対して幾ら支払え」という形で、被害者及び被害内容が何らかの形で特定されなければならないと思われるところでありまして、そういった観点から被害者の特定が容易か困難か、被害内容が定型的か個別性が強いかという2つのメルクマールをマトリックスしまして、4つの分類に分けて整理を試みたものでございます。
 1.には被害者の特定が比較的容易であり、被害内容が定型的と思われる事案として整理を試みておりまして、一番最初の消費者契約法の不当条項規制に関する事案というのは、大学の学納金の返還請求がなされた事案でございますが、こういったものについて想定される消費者の請求、額、対象の特定が容易か困難かについて整理を試みております。
 今回新たに書き加えたものとしまして右の方ですけれども、共通争点、個別争点、問題の所在を書いてございます。
 共通争点といいますのは、消費者被害事案におきましては同じような事件が多数発生するとよく言われておりますが、共通争点の内容がどんなものなのかというものを、判決文などを検討しまして整理を試みております。例えば一番上の学納金の返還請求事案におきましては幾つかの共通争点、これは被害者というか原告が誰であれ共通すると思われるものでございますけれども、例えば在学契約の法的性質及び消費者契約に該当するかどうか。入学金、授業料の法的性質、「一旦支払われた入学金、授業料等は返還しません」という契約条項が消費者契約法に照らして不当かどうか、「平均的な損害の額」の考え方といったところであろうかと思います。
 他方で個別争点もなくはないと思われるところでございまして、例えば1つは入学辞退の事実があったかどうか、その時期がいつであったか。この学納金の判例によりますと、入学辞退をした時期が4月1日より前か後かということで結論が異なってございまして、そうしますと、そこのところは個別に受験生ごとに見ていく必要があるのではないかと思われるところでありまして、個別争点があるのではないかと書いております。
 一番右の方は問題の所在ということでございまして、ここは消費者庁の方で考えてみたものでございますので、いろいろと御意見をいただければと思っておりますけれども、現行制度で何が問題になっているのかということでありまして、学納金の事案であれば少額の事件が多い。少額というのは幾らをもって少額と言うかというのは非常に評価の分かれるところではあろうかと思いますが、数十万円という場合であれば少額とみられることが多いだろうということでありまして、自ら訴えを提起することがためらわれるのではないか。あるいは返還請求できることがわからずに、被害に遭っているという認識を持ちにくいという受験生も多いのではないかということで書いております。
 同じように特商法の民事ルールに関する契約条項に関する事案、個人情報流出事案、虚偽の有価証券報告書開示等による証券被害事案ということで、共通争点、個別争点、問題の所在という形で整理を行っております。
 2枚目は1.被害者の特定が容易であり、被害内容が定型的という事案のところに整理を試みておりますけれども、この2枚目につきましては二重線で囲っておりまして、二重線につきましては1枚目の下の字が小さくて恐縮ですが、若干の注記をしているところでございます。これらの事案につきましてはいわゆる悪質商法と言われるものが多く並んでおりまして、ねずみ講の事案、預託商法の事案、投資商法、モニター商法という形で最近の大量消費者被害事件という形で書いております。
 これらにつきましては、いずれも勧誘がどういうものであったかということがかなり大きな争点になると思いますので、そういう意味では個別性が本来は強いと思われる事案でありますが、ただ、裁判で争われた内容を見ておりますと、当該商法自体が破綻必至であるなどの理由で非常に強い違法性があるということで、公序良俗無効という形で争われ、それが認められているということもございます。そうしますと、個々の勧誘文言あるいは被害者が若者であるかお年寄りの方であるか、男性か女性かということを問わずに、公序良俗無効という形で判断されることもあるのではないかと考えまして、そうした場合はかなり類型的な認定が可能になってくるのではないかと考えて、あえて二重線で囲みまして1.の中に入れております。
 一番上の事件は商品販売を仮装したねずみ講被害事件でありまして、具体的には関西地区の大学生などを中心に、通信販売を騙ったねずみ講商法が行われた事案でありまして、ねずみ講の有罪判決も出ておりますし、経済産業省が行政処分をしたという事案でございます。これにつきましては共通争点で当該取引自体の構造及びそれ自体の違法性、故意過失、公序良俗違反が共通争点として浮上してくるのではないかと考えられますので、その旨を書いております。
 他方で基本的には勧誘がどういう文言で、どういう態様をなされたかというところが問題になってくる方が多いと思われますので、その場合は個別争点と書いておりますが、ただし書で書いておりますのは「必ず儲かる」等似たような勧誘がされることも多いということであります。この種の事案におきましては上位者が下位者に対して、勧誘マニュアルのようなもので勧誘の仕方を指示ことも多くなされると認識しておりまして、そうした場合、その勧誘文言が非常に似たようなものが言われることが多いのかなと思われるところでありまして、そういう観点でただし書で書いてみました。
 問題の所在につきましては少額事件であることのほか、当該システム自体に破綻必至性があるという場合においては、最終的に被害回復につながらないことが多いということでありまして、備考のところにも財産保全制度の必要性について書いております。同じように和牛預託商法、投資商法、モニター商法についても整理を試みております。
 3ページ目2.ですが、被害者の特定は容易であるが、被害内容の個別性が強いと思われる事例ということでありまして、リフォーム詐欺事案、保険金不払い事案、敷金返還請求事案という形で書いてございます。リフォーム詐欺については後でまた参考資料で御紹介させていただきたいと思いますが、最近また件数が増えてきているようでございます。
 保険金不払い事案につきましては生命保険等につきまして、保険金の支払いをしないというトラブルが何年か前に多発したということで、金融庁が保険会社に対しても行政処分を行ったということがございました。そこで争われましたのは、告知義務違反による契約解除などという形で保険会社が主張するわけですが、告知義務違反が本当にあったのかどうかというところで、非常に問題があったと言われているところでございます。そういった勧誘文言につきましては個別争点に近いのではないかと思われるところでありますが、保険約款に基づく告知義務がどういうものでなければならないかとか、告知義務の内容がどうでなければならないかということにつきましては、共通争点が比較的多いのではないかと思われますので、そういう形で整理を行っております。
 敷金返還請求事案も、消費者契約法に基づき原状回復特約の有効性が争われた事案でございますけれども、当該特約については共通争点という形で争われることが多いのではないかと思われますが、その特約が無効である場合の原状回復義務の範囲につきましては、その不動産の使用状況によって個別に異なってくるのではないかと思われますので、そのように整理をしております。
 4ページ3.は被害者の特定は困難であるが、被害内容は定型的と思われる事案ということで、価格カルテル事案、偽装表示事案、運賃の過剰徴収事案という形で3つほど挙げております。
 カルテル事案につきましては著名な判例があるところでございますけれども、共通争点としてはカルテルの有無や内容、適正価格の算定というところがあろうかと思いますが、1つは個々の購入額と適正価格の差額が損害として認められるのではないかと思われるところですけれども、購入額というのは当然ながら個別に異なる。更にはその前提として対象消費者の特定が非常に困難である。当該購入者というのは全国各地に散らばっておりまして、それに関する追跡データ等は通常はないと思われるところですので、被害者の特定というのは一般的には難しいのではないかと思われる事案と言えるのではないかと考えております。
 同様に偽装表示事案等につきましても、被害者の特定が困難であろうと思われているので、そういう整理をしております。
 5ページ、最後になりますが、被害者の特定が困難であり、被害内容の個別性が強いと思われる事案ということで、幾つかの事案を整理してございます。例えば薬害事件や食中毒事件といいますのは、当該製薬を投入された被害者の方がどこにいるかというのはなかなかわかりにくい。食中毒事件においても当該食品を食べた人がどこにいるのかというのは、なかなかわかりにくい。かつ、その被害内容も症状等は千差万別であろうと思いますので、個別性が非常に強いと思われるところでございます。しかし、共通争点もないわけではないと思っておりまして、例えば薬害事件であれば当該製剤の製造・販売過程における過失の有無であるとか、これは国家賠償で争われておりますけれども、安全対策を講ずべき義務の有無や発生時期等につきましては、共通するのかなと思われるところでありまして、そのような整理をしております。
 以上が被害事例の整理でございまして、こういった整理が今後の議論のある意味たたき台になるのではないかと思われますので、これは消費者庁で検討したものでありますけれども、いろいろな御意見をいただければと考えております。
 総じて消費者事件ですので共通争点が幾つかあるものの、個別争点もあるというところをどう見るかというふうに、問題意識としてはとらえられるのではないかと考えております。
 以上が資料2でございます。
 続きまして、資料3に基づきまして御説明をしたいと思います。これはPIO-NET情報を更に分析しまして、販売方法や手口別に整理を試みたものでございます。1位から25位まで並べておりまして、例えば1位がインターネット、2位が家庭訪販と書いておりまして、件数、男女構成比、契約当事者の特徴では年代など、契約金額と既支払金額という形で分けて、上段、下段で書いております。これをごらんいただきますと、特に金額のところなんですが、こういった金額であるということでありまして、これをどう見るかというのは御議論いただければと思いますけれども、比較的少額と言われる事件が多いのではないかと思われるところです。
 他方で10番の次々販売でありますとか、23番の過量販売はたくさん商品を買わせるという事例でありまして、金額が増えてきている。11番の利殖商法は投資物でありますけれども、これにつきましては比較的金額が高くなる傾向にあると言えるかと思います。
 10番の次々販売や23番の過量販売を見ますと、契約当事者の特徴ということで20代、70代、女性中心、無職、給与生活者と書いておりますが、割と高齢者であるとか若者であるとか、そういった方が、ねらわれやすい傾向があるのではないかと思われるところでございまして、その特徴というところでもそのような形で書いております。
 右の方は主な商品・役務でございまして、ふとんであるとかその他いろいろな商品の内容、一番右の方には相談の特徴ということで、どういう内容なのかを簡単に整理をして載せております。
 資料4についても併せて御説明したいと思いますけれども、これは消費者が被害に遭ってどうするのか、そして何もしないときにその理由は何なのかという形でかつて調査を行いましたので、そのデータを御紹介しております。
 資料4の1枚目ですが、被害に遭ってどうするか。相談したりしますかということについてのアンケート調査をした結果ですが、一番多いのが「どこにも相談することも伝えることもしなかった」が3割弱でありまして、ここをどう見るかということだと思います。警察に相談したとか、国民生活センターに相談したという方も何人かいらっしゃいましたけれども、何もしないという人が多いというのがデータとしてあります。
 2ページ目は相談しなかった理由は何かということでございます。一番多いのは半分弱ですけれども、自分にも責任があると思ったという消費者の方が多いというのがデータとして見られます。ここはいろんな見方があろうかと思います。2番目には申し出ても解決策があるとは思えないとか、証明が難しいとか、金額が少ない、面倒だからというものもありますが、そういった回答もあるところでありまして、ある程度解決策があると思えないという辺りは、消費者庁としてもいろいろ受け止めていかなければならないのではないかと考えているところでございます。
 駆け足で恐縮ですけれども、まず資料1~資料4について概略を御説明申し上げました。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいま加納さんから状況あるいは問題に関して資料に即した説明がございましたので、どの点からでも御質問あるいは御意見などを御自由に出していただければと存じます。野々山理事長、どうぞ。

○野々山理事長 今、加納企画官からの報告で、最近の消費者被害の現状について御説明をいただきましたが、その中で被害額が数十万円単位の少額だということが消費者事件の1つの特徴であるということと、もう一つ、被害に遭ったときになかなか自ら行動しない傾向があることも消費者被害の特徴とされました。それとの関係で最近の消費者被害の新しい状況があります。私の方で参考資料で付けさせていただきました。参考資料3は、国民生活センターがPIO-NETに集約された2009年の統計を公表している、「消費生活年報2010」という出版物があるわけですが、そこに搭載されているデータです。図5を見ていただきますと、最近の傾向としては高齢者の割合が非常に増えてきている。未成年あるいは20代というかつて被害が多い年代の1つの層として認められたところが徐々に減りまして、60歳以上の高齢者の割合が徐々に増えていく。恐らくこの傾向はこれからも続いていくだろうと考えています。
 もう一つ、その高齢者の被害の特徴としましては図6にあるように、被害者本人が自分で相談するのかということを見ますと、60歳代あるいは70歳以上になりますと、自分では相談せずに契約当事者以外が相談している割合が増えてくるということです。そういう意味で、自分が被害者であることを認識しない、あるいは認識していても自分では相談をしないという割合が増えているという傾向が、最近の消費者被害ではあるということを指摘させていただきまして、それも併せて今後の議論の前提事実としてとらえていただければと思います。

○伊藤座長 ありがとうございました。野々山さんから御説明があった参考資料の内容あるいはそこに含まれている情報なども含めまして、御質問等をお願いできればと存じます。大高委員、どうぞ。

○大高委員 意見が1点と質問が1点ございます。
 意見の方から申し上げますが、資料2の問題の所在で、かなりの部分で少額な請求の場合が多く、提訴がためらわれることが多いという記載がございます。確かにこれはそのとおりでありまして、もっともだと思っております。しかし、問題意識としてはこういう少額の場合のみ提訴がためらわれるのかということについては、問題意識を持っております。
 例えば一番最初に出てきております大学授業料の学納金の返還問題であれば、確かに多くの被害者は100万円前後の方が多かったように記憶しておりますけれども、例えば医学部などであれば数百万円から、多いものであれば一千万円近い学納金の返還請求を求めるという事案がございます。こういった問題に関わった弁護団の弁護士の話によれば、かなり被害者はいるはずなんだけれども、なかなか安い実費程度の着手金を設定しても依頼をしてもらえない。例えばある医学部の事例で言えば、原告になってもらったのは2名だけであったということでございました。原因などを聞いてみますと、やはり結果が分からない段階で裁判を起こすということは、普通の方にとっては負担になっているようだというお話がありまして、資料4の相談をしなかった理由を見ても金額の大小ではなくて、権利行使自体が1つの障害になっている、やること自体が1つの障害になっているという側面があるのではないかと思っております。
 それに関連して質問なんですが、資料2の2枚目の和牛預託商法とか投資商法事案も、少額な請求の場合が多いとまとめられておりますけれども、私の印象では比較的こういうものは高額で、勿論低額の定義にもよるわけですが、100万円単位の被害が出ているケースが多いのではないかとイメージを持っておりましたが、何かこれは具体的な分析結果等に基づいておられるのかどうか。その辺りもしあるのであればお教えいただければと思います。
 以上です。

○伊藤座長 まず今の御質問の部分に関してはどうでしょうか。加納さんでよろしいですか。

○加納企画官 和牛と投資商法等は確かに数百万単位の事件も多いんですけれども、数十万円単位のものもあるということで最初の想定される金額としては書いてございます。そういった場合には少額だろうということで書いておりまして、数十万円が圧倒的に多いとか何とかというデータに基づいて書いているわけではございません。そこはまた精査したいと思います。

○伊藤座長 大高委員、御質問の部分はよろしいでしょうか。やはり相対的なものだとは思います。それから、先ほどの大高委員の御意見の部分、少額の枠を超えるものであっても、さまざまな理由で提訴をためらうような状況があり、そういう問題も認識する必要があるのではないか。そういったことについて何か御意見などございますか。朝倉さん、どうぞ。

○朝倉課長 私も大学の授業料について幾つかの判決を出しておりまして、御存じのとおり、雑誌等にも掲載されておりますが、大高委員の御発言で実態のよくわからなかったところがございます。医学部で二人だけしか提訴する人がいなかった、その余の人は結果が分からないので提訴をためらったということですけれども、二人が提訴した判決が確定した後に、これは勝てると思ってどどどっとみんな提訴してきたという実態はあるのでしょうか。
 提訴があったとすれば勿論大高委員がおっしゃられたように、確定かどうかがネックになっているでしょうし、そうではなくてその後そんなに提訴はなかったということであれば、提訴をためらう理由というのはもしかしたら他のところにあるのかもしれないと思うわけでございます。私は大高委員が弁護士をされている大阪地裁で判決を行った後に、当該大学に対して後からたくさんの提訴がされるという傾向は余り感じたことがなかったものですから、その辺のところをもし御存じでしたら教えていただきたいと思います。

○伊藤座長 大高委員、何か補足して情報をいただければお願いします。

○大高委員 残念ながら私もその後の実態として確かに朝倉課長がおっしゃったように、後からたくさんの提訴がされるという状況がなかったというのは確かだろうと思いますが、その原因については私も知見は持ち合わせておりません。

○伊藤座長 今の点について、ほかの委員の方でも御発言があればお願いします。沖野委員、どうぞ。

○沖野委員 この具体的な問題について、十分な知識や資料を持っているわけではございませんけれども、大学の場合はそのような訴訟が起こり、判決などが出ますと、大学の方での自主的な取組みというものがございまして、そのような訴訟が他大学について起こっているという事情等に照らして問題を認識した時点で、過去にさかのぼって返還等の措置を自発的にとっていたという事情が、私が知る限りのある特定の大学にはそのような処理もございます。学納金のケースに関しましてはそのような事情も一端をなしているのかもしれないと思います。

○伊藤座長 わかりました。どうもありがとうございます。野々山さん、お願いします。

○野々山理事長 今の点ですけれども、これも具体的なデータを持っているわけではありませんが、消費生活センターの相談員の方にお聞きした限りでは、学納金訴訟で一定の結論が見えた後は、センターに相談者が見えた後にセンターから大学に持っていくと、大学の方は比較的スムーズに返還をしてきたと聞いております。今日は三木委員が御欠席なので、もしその辺の事情がわかれば次回にでもお聞きしたらいいかと思います。

○伊藤座長 ある程度の判断基準が最高裁などの判例などによって確立されると、それに従って当事者が適切に行動したことも、1つの要因になっているということなんでしょう。どうぞほかの委員で御発言があればお願いいたします。山口委員、どうぞ。

○山口委員 今、未公開株の問題が非常に問題になっておりますが、先ほどの投資商法事案で少額な請求が多いというのは、提訴がためらわれるのは高齢者であること、弁護士に頼んでも回収可能性が非常に厳しいということもあって、未公開株の被害者がなかなか弁護士にも頼まない、消費生活センターなどに言ってもそこで終わってしまうということが非常に多いです。ただ、現実の問題として私どもが例えば弁護士会で相談して被害弁護団を立ち上げますと、それこそ先ほどの表現から言えばどどどっと被害者が集まって、回収手続をしていくことになります。
 それは2つ大きな原因がございまして、やはり比較的安く弁護団は引き受けてくれるということ、それから、投資詐欺の場合には事業者側の事情がなかなかわかりにくい。したがって、1人や2人の被害者から事情を聞いてもよくわからないのですが、これが100人、200人集まりますといろんな情報が入ってきて、なるほど向こう側の事情はこんな内情だったのかという、あえて言えば敵情がいろんな内部事情も含めてわかってくることがございまして、弁護団をつくって集団的に被害救済を図ることがやりやすくなるという面もございます。この問題の所在のところでも投資商法の場合には特に高齢者が多いこと、回収可能性について訴訟で勝っても可能性が非常に疑問であること、加害者側の内情の情報が集まりにくいので、その点で個別の被害者あるいは個別の弁護士が受任して取り組むことに、躊躇する傾向があることも指摘しておきたいと思います。

○伊藤座長 わかりました。山口委員御指摘の性質の被害に関して、集団的救済によるメリットの御発言がございましたが、他の委員の方で御発言はございますか。下谷内委員、お願いします。

○下谷内委員 私どもの団体でも週末電話相談を受けております。私も現役で相談していたこともありましたし、適格団体をつくりましたときにも担当をいたしておりました。そのときに私どもは学納金でありますが、大学、専門学校について学納金の申入れをいたしまして、その後いろんな形で報道されました。そのときにいろんなところから、いろんな方々から御相談はありました。ですから、やはりこういうような形で何らかの申入れをしたり裁判をすることによってそれを周知することがあれば、いろんな形で改めて御相談が入り、そしてまたこういう事案にありますからとか、裁判判決をお知らせいたしますと、御自分で行動されて相手方の事業者がそれに応じるということが多々あったかと思いますので、こういうことは積極的に進めていくべきことではないかと思います。

○伊藤座長 ありがとうございました。磯辺委員、どうぞ。

○磯辺委員 私どもも適格消費者団体として裁判外の申入れ等の活動を積極的に行っているわけですけれども、2つパターンがございまして、1つは相手方が約款等が是正をし、責任も認められて、私どもと裁判外の和解書等を結んで、その中で過去の被害者についても実際に専門学校の部類なんですが、通学していた事実ですとかはっきりする範囲については、対応するという合意書を結んで終了するという事案もございます。
 一方で、私どもの持っている権限が差止請求権にとどまっているということから、例えば有料老人ホームの事例ですけれども、入居申込金というものを73万5,000円とるということだったんですが、それについて一切返還しないという規定があったわけです。入居に当たってかかる実費ですとか、契約解除に伴って生じる一定の損害については返金しないこともあり得るのかもしれないですけれども、全額を返還しないという合理性について質問し、申入れをし、結果としてその入居申込金については制度上なくすことになったわけです。この場合にもさかのぼっての返還請求もできるようにということで協議をしたんですけれども、私どもは消費者契約法9条1号で主張したわけですが、相手方の主張としては、9条1号に基づいての不当な約款とは考えていない。消費者団体から要望があったので、この約款については是正するという対応であるという範囲で、合意書の締結には至らなかったというものがございます。
 ですから、こういう事例の場合にはその後、消費者の方から、「約款が是正されたので、私の入居申込金の返還がなかった件についても返還してもらえるだろうか」という問い合わせがこちらにもあるわけですけれども、私どもができる現状の範囲としては、約款が是正された事実をホームページでも公表しておりますので活用していただいて、個別に交渉していただくことになります。その方から最終的なフィードバックはありませんので結果がどうなったかわかりませんけれども、想像するに消費者契約法9条1号の違反を認めていないということは、事業者からすれば不当利得返還に応ずる理由はある意味ないわけですので、その辺が争点になると、被害者の方はやはり個別に1から争わざるを得ないことになると思っておりまして、このように争う姿勢を見せる事業者との関係では、差止請求でいろいろ成果を取っても限界があることを感じている次第です。

○伊藤座長 差止請求に関して、ある程度客観的な判断が出ても、個別的な不当利得だとか損害賠償という請求権の話になると、必ずしも適正な解決が図られる場合だけではないという御意見と承りましたが、ほかにいかがでしょうか。

○佐藤参事官 1点は感想で1点は御質問なのですが、資料2などを拝見していますと今回は共通争点と個別争点で整理されているということですが、かなり事案によって差があり、共通争点がはっきりしているものもあれば、リフォーム工事の有用性や悪質商法の構造など争点が抽象的にならざるを得ないもので、かなりいろんな種類があるなと思って拝見しておりました。
 それとの関係で質問ですが、先ほど山口委員から、例えば弁護団を立ち上げると100人、200人来る、その過程で被告側の事情が見えてくるというお話がございました。これは弁護団を立ち上げることによって、例えばホームページを立ち上げることによって来るのか、消費者センター等に相談をすることによって来るのか、どういう形である意味弁護団を立ち上げると人が来るのかという点が私の興味があるところです。また1人の被害者から話を聞いても実態はなかなかわからないけれども、100人、200人集まってくると共通の争点が見えてくるということがあるのかないのか、その辺りをもし弁護団なりをされている方で教えていただければと思います。

○伊藤座長 わかりました。弁護団が組成されたときに、潜在的な被害者の方が申し出てくるルートがどういうものであるのか、それから、佐藤さんが後半におっしゃったような被害の実態解明という点について、先ほど山口さんのお話に関連しますので、まず山口さんにお話いただいて、大高さんからも補足していただければと思います。山口さん、お願いします。

○山口委員 これはかなりはっきりしておりまして、2つの事例を申し上げますと、1つは私はジー・オーグループという大神源太さんという人が中心になって、投資商法で詐欺的なことをやってきた事件がございまして、被害者は2,000~3,000人、被害額としては100億円程度の事件だったんですが、この場合には消費生活センターには既に200件以上の被害相談があったんだけれども、個別弁護士の方でぽつぽつと民事裁判をやっていた程度ではあったようです。
 弁護士会で話し合っても、これは被害弁護団を立ち上げるしかないのではないかということで決意いたしまして、これが報道されました。同時に何月何日に被害者に対する説明会をしますという報道がなされ、ある会場を借りて会合をいたしますと、たしかあのときには200人ほどの人がお見えになりまして、個別に20人ぐらいの弁護士で手分けして事情聴取をするということをいたしました。
 その結果、中にはやはりいろんなバリエーションで説明を受けて、こんな書類をもらっている人がいるのかというような、例えば本来は営業マンが被害者には渡してはならないような、こういう美味しい商法なんだ、必ずもうかるということを書いた従業員用のマニュアルなどをもらっている人がいたり、大分従業員と親しくなっていろんな内情を聞いている人がいたり、あるいはお金を早く返せということで申し入れて、それを録音テープにとっている人がいたりという、いろんな被害者の情報が入ってきて、それを総合いたしますと事業者側のやり口あるいは内情などがかなりわかってきた。従業員の名前も相当数リストアップできますので、この人が相当活発に動いて被害者をつくり出しているなという事情も判明しまして、メディアによる報道というのが非常に大きな要素があると言えるかと思います。
 もう一つの経験としては、これは判例集にたくさん載っておりますので固有名詞を言っていいと思うんですが、ある銀行が資金を投資してゴルフ場を開発していこうとした。勿論事業主体はゴルフ開発会社なんですけれども、銀行がうちが融資しますよ、うちが関連しているいいゴルフ場の会員権ですから買いませんかと言って、ゴルフ会員権を大量に売った。勿論銀行の融資が2,000万円とかついておりました。結局そのゴルフ場はできませんで、2,000万円の借金だけが多くの消費者に残ったという事件で、銀行は当然のようにローンを払えという訴訟を起こしてきたわけですが、紙ぺらになったゴルフ会員権のために2,000万円のローンを払い続けることについて、どうしても納得ができないという方々がかなりおられまして、たしかあのときも私どもで直接受けたのは30人ぐらいですけれども、個別の弁護士に頼んで訴訟を起こした方もかなりいました。多くの人は負けているんですが、私どもは10人ぐらいの弁護団でいろいろ被害者から、これもたしか200人ぐらいから事情聴取をして某銀行側がどんなマニュアルで、どんなことをやってきたかということがかなりわかりました。弁護団だということで元行員でこっそり話をしてくれる人も出ました。
 これは個別の弁護士がやっていたところでは考えられない事態でありまして、そういう情報を弁護団として集めて、そうしますと消費生活センターなどでもあそこに弁護団があって、そこに行ったら何とかなるらしいという話も出てきて、被害者がかなり集まってくるということがございまして、私に言わせれば歴史に残るレンダー・ライアビリティ、融資者責任を銀行側に認める一定の判決が得られたのかなと思っております。あれなどもたくさんの被害者から情報を集めたことによって、ようやく一定のレンダー・ライアビリティを認める判決が得られたということかなと自分で思っております。

○伊藤座長 大高委員、何か補足していただければ。

○大高委員 基本的に山口委員がおっしゃった視点とほぼ同じになりますけれども、私も弁護団活動をしていまして、いかに被害者の数を集めるかということであります。個々の被害者から依頼を受けて、事業者あるいはローンなどが絡んでいる信販会社と交渉する場合と、弁護団を組んで数十人または数百人単位の被害者をまとめて交渉するのでは、全くパワーが違う。一人の被害者の代理であれば突き放した対応をする信販会社であっても、弁護団として組織として対応すれば、ある程度リーズナブルな解決に持っていくことも可能だということです。
 そのために弁護団としては山口委員からもお話がありましたように広報、これは後ほどの通知・公告の点にも絡んでくる問題意識になってくるかと思いますけれども、広報も最初の段階で重要になってまいります。私が関与した弁護団であれば、例えば被害者を集めるのと一石二鳥をねらう形で110番みたいなものを開きまして、それをマスコミに報道してもらう。そうすると、そのニュースを見た被害者の方が110番に電話をかけていただいて、社会的関心を高めると同時に被害者からの情報を集めることが可能になることがあったと思います。
 被害者をたくさん集めることによるメリットとして、山口委員からもありましたように、対象となる相手方となる事業者のやり口が見えてくるということはあると思います。これは弁護団事件ではありませんけれども、私が大阪の適格消費者団体ケーシーズの代理人として活動したときの経験でございますが、今でも唯一ですけれども、勧誘を対象として差止めをしたケースに携わった経験がございます。これは勧誘ですから普通であれば勧誘の個別性が問題になるところなんですが、被害者の方に10人、20人と手分けをして事情聴取をしますと、判を押したように同じような勧誘のステップ、勧誘の文言を受けていることがわかってまいります。それこそ前の別の方に取った陳述書が、そのまま別の人にもそのまま名前を変えれば使えるのではないかと思うぐらい、同じような勧誘を受けていることがわかってきて、これは何がしかの組織的な勧誘もしくはマニュアルがある勧誘があるのではないかということが見えてくるということで、ある程度被害者の数を集めることによって見えてくるものがあるのかなというのを感想として持っております。
 以上です。

○伊藤座長 ただいまの点あるいは他の点でも結構ですが、何か御発言はございますか。
 そういたしましたら、いろいろ御意見をいただいた点は当然、今後の議論の基礎になるものですし、今後の議論においてもしばしば繰り返して考えていかなければいけないことかと思いますので、今日の段階ではこの程度にさせていただきまして、次に現行の諸制度についての審議をお願いしたいと思います。
 この専門調査会において議論の中心となる集合訴訟制度は、新たな制度をつくることになる可能性がありますが、そうである以上、現行の諸制度による消費者被害回復の問題点などを踏まえて議論をしなければならないと思います。そこで加納さんからこの点に関する説明をお願いしたいと存じます。

○加納企画官 それでは、お手元の資料5に基づきまして御説明をしたいと思います。
 資料5は現行制度の概要や運用状況、備考というところで集団的消費者被害の救済について考えなければならないと思われるところを、まとめてみたところでございます。
 1枚目は消費者団体訴訟制度でございまして、制度の内容はここに書いてあるとおりでございます。運用状況もここに書いてあるとおりでございますが、備考のところですけれども、現在及び将来の行為に対する停止・予防というのは既に措置されているところでございますが、過去の行為による被害の回復については措置されていないことを、どう見るかということでございます。
 適格消費者団体の中には過去の被害回復、約款であるとか不当勧誘についても行うよう要請することも、運用としているケースもあると聞いておりますが、ただ、その場合でも事業者から回答がなかなか得られないということ、その同じ事案について被害回復されていないということを、別の消費者から情報提供を得たということがあったと適格団体からは聞いておりまして、そういう事案があるところをどう見るかということだと思います。
 2枚目は通常共同訴訟ですが、制度の概要、趣旨等はここに書いてあるとおりでございます。備考のところですけれども、やはり被害が少額である場合とか、先ほど来委員のお話の中にもあったかと思いますが、勝つかどうかなかなかわからない、見通しが立たない段階では、委任をしにくいところがあるのではないかと思われるところでありまして、消費者被害事案で弁護団が被害者説明会という形で受任を行う手続を取ろうとした場合においても、勝つかなかなかわからないという段階で、更に弁護士に払うお金が出るということになると、言うならば更に被害が増えるように被害者としては思ってしまうこともあるということでありまして、なかなか集まりにくいことがあると聞いておりまして、結果としてなかなか集まりにくいことがあるのではないかと思われるところであります。
 消費者が被害自体を認識しにくいことなど、特に高齢者の場合なんかもそうだと思いますけれども、訴訟にそもそも出ないこともあろうかと思われるところです。
 続きまして3ページですが、選定当事者制度でございまして、制度の概要に詳しめに書いておりますが、平成8年の民事訴訟法の改正において選定当事者制度を利用しやすくするという観点から、いわゆる追加的選定の制度が導入されたということでございまして、その際のねらい目としましては、例えばというところに書いておりますけれども、共通の原因に基づく被害者が多数存在するが、それぞれの被害額が少額であるという類型の訴訟において、訴訟に要する労力や時間等の関係から、個別に訴えを提起することが困難な場合も少なくないということでありまして、そういった場合に被害者の権利の実現の実効性を高めるという観点から、できる限り訴訟をまとめて追行させるということで、先行する訴訟に共通の被害者が参加することを容易にするという観点で、こういう制度が導入されたようでございます。
 ただ、その運用状況でありますけれども、これに関して客観的なデータ等は私どもは持ち合わせておりませんが、件数は実務上非常に少ないのではないかと思われるところでございます。備考に少しコメント的に書いておりますけれども、1つは選定当事者制度を利用するには選定行為が必要でありまして、それはお互い選定者と選定当事者の顔が見えているような、例えば入会権の場合と書いてありますが、そういう場合であれば利用されやすいんでしょうけれども、消費者被害のような場合は、多数の人に対して被害が拡散的に発生することがありますので、そういう前提を欠いているのではないかということで、なかなか利用されにくいのではないかと書いております。これについてはまたいろいろと御議論をいただければと思います。
 4ページは少額訴訟でございまして、簡易な手続でもって紛争解決をするということで、下の方に件数等の推移という形で書いておりますけれども、かなり順調に推移しているのではないかと思われるところでございます。ただ、備考に書いておりますが、基本的には争点が非常に単純化された、複雑でない事案において利用することを前提としている制度と思われますので、消費者被害の場合には少額ではあるものの、それなりに法律的な争点、例えば学納金では平均的な損害の額はかなり法律的判断を要しますし、多数被害の事案におきましては、そのシステムがどうであったかという形で、事実関係も非常に複雑な場合もあるということでありまして、争点が複雑であったり当事者が多数で多い場合を念頭に置いた制度ではないのではないかと思われることを書いておられます。
 5ページは被害回復給付金支給制度について書いておりまして、組織犯罪処罰法違反に該当する犯罪行為を行われたという場合に、没収した金を原資として被害者に分配するという手続でございます。運用状況としましては、いわゆるヤミ金や振り込め詐欺などを中心としてそれなりに利用されてきているところでございますが、備考のところに書いていますように、基本的にはマネー・ローンダリングなどの限定した範囲内において、こういう措置を講ずるという制度でございまして、消費者被害は非常に多種多様でございますので、必ずしもこれに全部乗っかるというわけではないところをどう見るかということだと思います。
 6ページは課徴金でありまして、独禁法等に既に導入されている制度でありまして、運用状況等についても書かせていただいております。課題としましては課徴金として納められた金銭が、被害者の配分には回されないというのが現行制度となっておりますので、ここをどう見ていくかということだろうと思います。
 最後に振り込め詐欺救済法でございますけれども、振り込み詐欺を始めとする一定の犯罪に利用された口座を凍結して、その口座の金銭を被害者に返していく。また、余った金銭につきましては預保納付金ということで納付し、一定の手続を経た後に犯罪被害者支援の充実のために支出するという枠組みの制度でございます。運用状況については書いてあるとおりでありまして、かなり実績も重ねられておりまして、消滅預金等債権は約73億円、被害者への支払いが35億円、預金保険機構への納付額が38億円となっておりまして、現在金融庁におきまして38億円の使途について、どうするかを検討されているところでございます。
 以上が現行制度という形で整理を試みたものでございます。
 8ページ、小括というところで現行制度の整理につきまして、簡単に私ども消費者庁の方でまとめてみましたので御紹介したいと思いますが、今まで御説明したような消費者被害事案の整理を踏まえまして、消費者被害事案の特徴や現行制度の問題の所在について、どう整理するかということでございまして、新しい制度をもし仮につくるとなれば、被害事案の実態と現行制度の限界というところを、正確に把握しなければいけないと思われますので、積極的に御議論をいただければと思っておるところでございます。
 私どもの方で例として書かせていただいたものは、これはすべて網羅しているわけでもなく、足りないところ、よけいなところもあるかもしれませんので、御意見をいただければと思いますけれども、幾つか案として書いてみました。
 1つはやはり少額請求が多いということでございます。
 2つ目に資料2で今回御説明しましたが、共通争点の存在が多い。反復継続的に事業活動が行われ、その事業活動に基づいて瑕疵があった場合に被害が発生するということだと思いますので、共通争点は存在が多いことが特徴的だと思います。
 他方で個別争点は個別で見なければならない点、勧誘の文言とか対応が特に典型的でございますけれども、個別争点もそれなりにあるということだろうと思いまして、ここをどう見ていくかだと思います。
 3つ目に書いておりますのは、消費者被害の場合には被害者同士のつながりが希薄であったり、被害者の所在を把握し特定することが困難なことがあるということでございまして、やはり同種事案が拡散的に多発することがございますので、被害者同士のつながりは一般的にはなかなかない。弁護団あるいは原告団という形で組織をし、被害者を集めて弁護士なりが一定の組織的な対応をすることもございますけれども、それにも限界があるとお聞きするところでありまして、その被害者の把握、特定というのも一般的にも難しい。先ほどの話でも公告や呼びかけ活動などという御紹介があったかと思いますが、弁護団を立ち上げたりする場合には、テレビのニュースで紹介してもらったりということがされているようでございますけれども、全部を把握するのは一般的には難しいということがあろうと思います。
 3つ目は加害事業者の財産の散逸・隠匿により、被害回復が困難になることがある。これはいわゆる悪質商法の場合は特にその傾向は顕著だと思いますが、当該商法自体が破綻必至ないし自転車操業でやっているということなので、いずれ破綻することが多いということで、被害者が多数発生したときには事業が破綻し、被害者だけが残るということが非常に多い。そういう場合は財産保全の必要性が非常に高いのではないかという問題意識もあろうかと思いますけれども、そういったことを書いております。
 4つ目に書いておりますのは、消費者が被害に遭っていることを自覚しないことがあるということでございまして、1つは高齢者の問題等があろうかと思います。先ほど国民生活センターの相談事例を御紹介したときに御紹介しましたけれども、次々販売であるとか過量販売といった事例におきましては、特定の高齢者や認知症を患っておられる方がターゲットとなって、繰り返し同じ人がねらわれるという傾向にあるということですが、そういった方々は被害に遭っていることを必ずしも自覚しないことが多い。
 5つ目には、消費者個人では事案の解明が困難なことがあると書かせていただきました。1つはいわゆる欠陥製品のような事件だとしますと、その欠陥の有無などにつきましては非常に専門的知識を分析、検討には有すると思われるところでございまして、それについては消費者ではなかなか事案の解明が困難である。また、破綻必至商法などの場合におきましては非常に複雑なシステムをとっていることがございます。そういった場合、消費者一人では取引の全体像が見えず、一体自分はどういう位置づけなのか、あるいはシステム自体がどうなっているのかというのがなかなかわかりにくいということでありまして、ある程度数を集めて情報分析をしないと、取引の全体像がなかなかわかりにくいといったことがあろうかと思います。
 一番最後に書きましたのは若干抽象的になって恐縮なんですけれども、こういったことを一言で言うならば構造的格差、消費者契約法では情報の質、量、交渉額の格差と書いてございますが、そういった格差、反復継続的に事業活動を行う事業者と、そうではない消費者との間の構造的格差というものに由来するというまとめ方が、1つできるのではないかと思われるところでありまして、その旨を書かせていただいております。これは消費者庁私どものまとめに過ぎませんので、是非批判的観点からの御意見をいただければと思います。
 以上のような1つの整理ということでありますが、2つ目の○に書いてございますのは、消費者被害事案というのは今まで御説明を申し上げましたように、非常に多種多様であると考えますと、問題の所在もまたそれぞれ異なるのではないかと考えられるところでございます。そういった問題の所在に応じて幾つかの制度について制度間の役割分担を適切に図り、進めるべきではないかということでありまして、前回でもいろいろ御意見等ございましたけれども、すべて集合訴訟制度で対応することは困難であろうと思いますので、例えば財産保全制度については別途強力な制度を用意するなどの適切な制度間の役割分担が必要であり、かつ、適切ではないかと思われるところでございます。
 最後の○に書いておりますけれども、1つの整理ということで試みておりますが、被害救済というのは、個々の被害者がその請求権を行使することによって図るというのが基本であろうと考えられますので、現行制度によって請求権行使の実効性が確保されていないのであれば、それに対応する措置を講ずべきであろうと考えられるとしまして、1つの整理として3つほどの整理と考えております。
 1つはいわゆる少額多数被害事案につきましては、請求権を極力糾合する手続を設けることによる対応。少額というのは何かとか、少額に限らないのではないかという御意見等もございましたけれども、消費者事件の切り口の1つの整理としては、少額多数被害ということではないかと思います。
 先ほどの民事訴訟法の選定当事者制度の導入でも触れましたけれども、できるだけ手続を束ねるのが基本的な考え方としてあるのではないかと思われるところでございまして、請求権の糾合というのがキーワードになるのかなと思うところでございます。
 2つ目に書いておりますのは、被害者の特定や請求権そのものを観念しづらいという事案、端的には偽装表示事案などが差額がとらえにくいということで、請求権そのものがなかなか関連しにくいということだろうかと思いますけれども、そういう場合には訴訟手続とは別途違法行為を抑止する観点が経済的不利益、端的に言えば課徴金のようなものが一番近いのではないかと思われるところですが、それを賦課する制度を設けることによって対応。
 一番最後ですが、請求権を観念することができても加害事業者の財産の散逸・隠匿等により、その行使がおよそ実効的でないと考えられる場合には、特別な財産保全制度を設けて請求権の行使につなげることによる対応といった整理が考えられるのではないかとしております。
 これらにつきましては、消費者庁の研究会でもおおむねそういう整理が試みられたところでございますけれども、この専門調査会におきましても整理の仕方等につきまして、いろいろと御意見をいただければと考えているところでございます。
 私の方からの御説明は以上でございます。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。ただいま話がございましたように、被害回復給付金制度とか課徴金制度という、この問題を考える上での背景となる制度があり、直接この調査会で中心的に取り上げる集合訴訟制度的なものに関しては、現在の制度として共同訴訟、つまりみんなでやりましょうというものと選定当事者、被害者の中の誰かにそれを委ねるという制度が現実に存在しているわけですが、それらが十分に機能しているかどうかという疑問がございまして、その理由等に関しても今、加納さんからの説明があったとおりでございます。
 従来の研究会の報告書の中でも当然取り上げられておりますけれども、改めて専門調査会としてこういった点についての認識をある程度共有して、これからの議論の前提をつくっていければと思いますので、御質問も含めまして御自由に発言していただければと存じます。大高委員、どうぞ。

○大高委員 まず意見として3点申し上げたいと思います。
 1つ目は加納企画官からありました少額多数被害事案については、請求権を極力糾合する手続を設ける対応ということで、1つの切り口として少額多数事案を挙げたということでございますけれども、先ほどのところでも申し上げましたとおり、提訴がためらわれる場合が多いのは必ずしも少額な事案、勿論少額が典型であることは間違いありませんけれども、これに限られるのではないと思っております。これは先ほど述べたところですのでこれ以上は申し上げません。
 2点目として小括の1つ目の○の例で、消費者個人では事案の解明が困難なことがある。これはそのとおりであると思いますけれども、この事案の解明の中には単純に事実関係だけではなくて、法的な分析というものも入ってくるのではないかと思っております。例えば契約条項の有効、無効が問題になるような事案であれば、これは事案としては非常にシンプルなわけでありますが、その有効性の議論については事案によっては非常に高度な法的な議論が闘わされる。こういったものを消費者個人がやっていくというのは、なかなか難しいのではないだろうかと思っております。
 3点目最後としては、3つ目の○の整理の2ポツ目になりますけれども、被害者の特定や請求権そのものを観念することが困難な事案についての対応についてですが、ここにありますように請求権そのものを観念することがそもそも難しいという事案については、なかなか民事訴訟の枠の中で対応していくのは難しいというのは、確かにそのとおりなんだろうと思っておりますけれども、請求権があることははっきりしているんだが、単純に被害者の特定が難しいという事案は、十分集団訴訟の枠内で対応できるのではないかと思っています。
 まだ御説明はありませんけれども、資料7のA案、B案にありますように、共通争点を先に審理して、その後参加してもらうという手続であれば、十分に対応できるのではないかと思っています。この被害者が特定できないというのは、ある意味被害者をどう掘り起こしていくかという話でありまして、これを入口の時点で切ってしまう必要はないのではないかと考えています。
 以上です。

○伊藤座長 大高委員からは3点にわたっての御意見がありましたが、いかがでしょうか。黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員 大高委員の指摘された問題点に関連して、私もちょっと意見を述べたいと思います。
 最後の整理として示された点でございますけれども、前の研究会に参加しておりましたので認識が違っているのかもしれませんが、前の研究会では被害類型に応じて対応策を変えるということまでは、確定的な結論を出してはいないと考えております。前の研究会ではさまざまな救済方法があるので、それぞれの救済方法を考えていくときにどういう事例を典型的なものとして、念頭に置いて設計したらいいかを考えなければ効率的な議論ができないので、それを念頭に置いたと思っております。集団的な訴訟に乗りやすいのは、少額多数被害事案であるということは私もそのとおりだと思っていますが、その次に書かれている被害者の特定や請求権そのものを観念することが困難な事案についてはという点については、これも大高委員と同様に、集団訴訟制度を考えるときにこういう事案を初めから排除して考えるべきではないだろうと思っております。
 被害者の特定の点ですけれども、資料2で言うと第3、第4類型だと思いますが、内容が定型的で被害者の特定が困難な事例というのは、集団的訴訟に乗り得るものではないかと思っております。被害者の特定が困難でも被害額の総額がわかるようなものもあり得るわけで、それは訴訟制度のタイプによっては乗り得るわけです。その後で個別に申し出をしてもらって賠償額を分配する。余ったものは何か別の処分の仕方を考えることもあり得ると思います。
 請求権そのものを観念することが困難な事案、本当に請求権が成り立たないようなものが訴訟に乗らないのは当然ですけれども、偽装表示事案をその例として挙げられた点については、これはまだ損害賠償の法理がかたまっていないというだけでありまして、何が因果関係のある損害なのかという判例がかたまれば十分に請求権は成り立つし、定型的な請求になり得るものだと思います。ですから勿論ほかにも困難な事案というのはあるわけで、それを初めから念頭に置いて制度を設計するのは難しいとは思いますけれども、議論から排除するのは適当ではないと考えております。

○伊藤座長 確かに被害者の特定の困難性とか、請求権を考えることの困難性それ自体がかなり幅のあるものですし、困難性の理由にもいろんなものがあるでしょうから、その点は十分検討しなければいけないことかと思います。窪田委員、どうぞ。

○窪田委員 基本的には同じ部分に関連することですが、少し違う視点から、述べさせて頂きます。これは意見というより御質問になるのかもしれませんが、第2類型に当たるものについて、第2類型の形式的要件を満たすから別に第1類型に入らないというふうに見るべきではないというのは、それはそのとおりだと思います。そのうえで問題となるのは、第2類型に当たる場合に、経済的不利益を賦課する制度と損害賠償との関係がどのようになるのかという点は、実質的にも検討しておくべき必要があるんだろうと思います。
 つまり現行制度にも幾つかあるということで、たとえば課徴金制度があるわけです。ただ、課徴金制度でとったお金というのは被害の填補には当てられませんから、被害者の救済とのルートがうまくつなげられていません。今回のような仕組みで事件の多様性があって、それに対応して複数の制度を考え、かつ、その役割分担を考えていくという形になりますと、出発点として課徴金的にとらえていくとしても、それを被害の填補に充てるといったルートを確保するということも、検討すべき事柄なのだと思います。
 質問と申し上げましたのは、恐らく第1類型に当たる部分が本委員会の主としての検討対象だと思いますし、一方で課徴金に相当するものについては別途検討するということではございましたけれども、今お話をさせていただきましたように、課徴金の話は課徴金だけで議論すればいいというのではなくて、恐らく損害賠償との関係でどう調整をしていくのかといった点が問題となります。特に今、数度にわたって御指摘がありましたが、請求権を観念できない場合はともかく、単に被害者を見つけるのが難しいというケースであれば、やはり課徴金が確定した後で、それを聴取した後で被害者が出てくるといった場合に、その被害者の個別の損害賠償請求権と課徴金との関係というのは、実質的にも検討する必要があると思います。その意味では所管問題ということでこちらでやりたいということではありませんが、その点について意識的にどこかで検討する場面を設けておかないと、何か断片的な制度の寄せ集めということで、従来とそんなに大きな違いが出てこないのではないかということになりかねないと思いますので、その点を御検討いただけたらと思います。
 以上です。

○伊藤座長 加納さん、どうぞ。

○加納企画官 今の窪田先生の御指摘につきましては、要はこの専門調査会はどちらかと言うと訴訟制度ということで御検討をお願いしておりますけれども、それ以外の制度との関連性をどう見据えるかということだと思いますので、そこにつきましては消費者庁における別途の検討の進捗状況を踏まえながら、また御報告などをさせていただければと思います。

○伊藤座長 池田委員、どうぞ。

○池田委員 私もその点は是非お願いしたいと思います。消費者委員になりまして、いろいろ皆さんのお話を聞いてつくづく思うのは、こういう時代の社会の変化に伴い、詐欺的な悪質商法の問題に対し、社会全体がきちんと取り組むことが最大の目標ではないかということです。
 消費者目線の行政においては、そういうことに対し、きちんとした対応をとっていくことが要求されていると思います。この集合訴訟と悪質商法に対する研究会というのは、消費者委員会とは別の組織で行われるというスタイルになっています。これは決定事項ですからやむを得ないですけれども、やはり同じようなスピード感でやっていただきたいと思います。国民側の目線で見て、あるいは経済界にとっても、本来消費者が要求している悪質業者への対応をきちんと厳しくやることを要望したいと思います。これらに対する相互のスピード感が非常に大事ではないかということだけは、私の希望なり意見として申し上げておきたいと思います。

○伊藤座長 そこは全くおっしゃるとおりだと思います。そういう意味で加納さんから発言がございましたように、適宜そういった点についても配慮して情報提供あるいはそれを踏まえた議論をしていきたいと思います。中村委員、どうぞ。

○中村委員 委員の皆様からいろいろ意見がありまして、いろんな被害を救えるようにしたいというところは、それはそれでよろしいと思うんですけれども、やはり企業としてはそもそも一般的に被害と認識しないような案件で、個々の方がこれはある意味大問題だというようなことで、次々に訴訟を起こされるという事態も懸念しているところでありますので、やはりそうは言っても何でも取り込もうということよりも、最も問題であることをどれだけ取り込めるかをまず見ていただいて、その上でそれに併せてどういうものが取り込めるのかという観点で考えていただきたいと思います。
 もしこういう案件も是非救えるようにということでありましたら、今回御説明していただいているような、例えば消費者団体のところにクレームがたくさん来るような事案、これは勿論救わなければいけないことだと思うんですが、それ以外にどういうものを拾おうとするのかというところはターゲットといいますか、もし委員の方からこういうものも入れたいというところは具体的に御説明をいただいて、抽象的にいろんな被害があるんだからそういうものを救えるようにということですと、これから議論を詰めていくに当たって議論がしにくいのかなと思っております。
 もう一つ、これからいろんな類型ということで議論をしていくわけなんですけれども、適格消費者団体の方で今、申し上げましたように、ある程度クレームが集まっているような事案ということで整理がされているものでしたらわかりやすいんですが、仮に個々の被害者の方が提訴されることも考えているんだとすると、逆に中身の精査、どういう類型について訴訟を認めるのかについては綿密に詰めていかないと、うまく訴訟の整理ができていかないのではないかと考えております。

○伊藤座長 どういう制度設計をするかということと、その中でどういう権利を確定するような手続を設けるか、これは両者一体の問題だと思います。そういう意味では今日後半に議論していただくものと密接な関連がある話です。大河内委員、どうぞ。

○大河内委員 ずっと皆さんの議論を聞いていまして、被害事例の資料にも、返還請求できるとは知らなかった。被害に遭っていることの認識が持ちにくいということを、ほとんどのところに書いてあります。しかも被害に遭ったという認識があると答えた人でも、3分の1の人がどこにも相談していません。そして相談した方もいろいろなところに相談していますが、相談したからといって被害回復がなされているかどうかはわかっていないわけで、そういう現状というのを消費者の権利の回復という観点から、何とかしようということで集合訴訟という制度を考えることなんだろうと思っています。ですから余り個別の細かいことにとらわれると、制度ができても使えないのではないでしょうか、私たちはとにかく被害に遭っていること自体がわかっていないわけですから、公平な社会と言ったらいいのでしょうか、そういう社会をつくっていくための1つの制度として考えるのであったら、現状を踏まえた制度づくりをしていただきたいと思います。あと質問なんですけれども、今の御説明いただいた選定当事者制度のことなんですが、運用状況について客観的な調査が存在しなくて、利用された件数は少数にとどまっている模様であるという書き方なんですけれども、これはなぜこの調査ができないのかとか、こういうあいまいな書き方になぜなるのかなと思って、ちょっと聞かせてください。

○加納企画官 この選定当事者制度については、データが例えば裁判所等においても選定当事者制度の利用状況については、示すものがないということでございます。私どもとしてはこういうふうなことをやる場合には、データ等を極力そろえる必要がございますので、例えば何らかの調査をすることも考えたいところではございますけれども、一般的には選定当事者制度については実務家の間では、利用されているのは少ないのではないかと言われているのが一般的と思われますので、その点についてまず書かせていただいたということでございまして、正確に何件あってどうのこうのというところはデータが今ございませんので、どうしてもということであれば、また当局と御相談させていただきながらということで考えたいと思います。

○伊藤座長 大河内委員からの御質問に対する情報提供をということには、今の段階でなっていないと思いますので、これから補充していただければありがたいと思います。いずれにしても新しい制度が仮にできるとしても、選定当事者の制度は当然存続するわけですから、そういうものがどういう機能を果たすことが期待されるかということとの関係でも、新しい制度の設計の仕方というのは重要なものだと思いますが、いかがでしょうか。三木委員、どうぞ。

○三木浩一座長代理 消費者被害の特徴というのを最初の段階で消費者庁から御説明いただきました。少額多数というのがよくキーワードに使われるわけで、勿論そうした案件もある程度多いことは確かですけれども、他方で大高委員がおっしゃったように、消費者被害が既存の制度で救済が困難であるということの中には、必ずしも少額には限らない、高額なものも多く含まれております。したがって、少額を過剰に強調するのは対象を考える上で、適切でない場合もあるのではないかと思います。
 諸外国の例を見ても、アメリカのクラスアクションを始め、あるいはヨーロッパの諸制度でも、集合訴訟が担うべき機能として挙げられている事案、実際に機能を果たしている事案には、高額な案件が相当多いと思います。私が考える主たる理由は、大河内委員がおっしゃったように、被害の意識を被害者自身が持ちにくいとか、実際に持っていない例というのが少なくないのではないかと思います。特に現在の高度資本主義社会の下ではそうした事案が多いのではないかと思います。
 例えば、これこれの場合にはお金を返還しませんという契約になっている場合、多くの場合は事件として誰かが掘り起こすまでは、そんなものかなと多くの人は思っていて、これは返してもらえないんだろう。ところが、消費者契約法なり法律家の目から見ると、そのような約款あるいは商取引の実務なりが非対称的である、不当に消費者にとって不利になっていることはしばしばありますけれども、それは一般の市民は勿論ですが、法律家ですら改めて指摘されて初めて気がつくことは少なくないわけです。
 学納金の返還の問題にしても、大学側もあれを悪いと思ってはいなかったわけです。学生の側もそういうものかと思っていたようなところがありますので、制度の構築に当たってはそうした事実も考慮しておく必要がある。先ほど若干の委員の方から悪質商法、詐欺的商法、犯罪的商法の対策が急務であるという御発言がありました。そのこと自体は全くそのとおりだと思いますけれども、そうした事案だけを解決すればいいのかというと、そういうわけではない。きちんとした企業が格別の悪意もなく、商慣行としてやっているものの中にも集合訴訟を通じて、改善していかなければいけないものは含まれていると思います。
 既存の制度の評価と分析についても申し上げておきたいと思います。1つは選定当事者が先ほど来話題になっております。これは私の個人的な意見となりますけれども、選定当事者が現在使われていない理由は、選定当事者制度が制度としておかしいからとは必ずしも言えないと思います。また、平成8年改正で導入された追加的選定の基本的な考え方が間違っているからだという気もいたしません。基本的にはその考え方自体に正しいところはあるだろうと思います。
 ただ、先ほど選定当事者が使われていない理由と推測されるものとして消費者庁が挙げた中に、入会権のような事件と異なって、消費者事件では被害者相互、権利者相互がお互いに人的な事前のつながりがない、顔が見えないということがあり、そのこと自体もそれは1つの要因だと思いますけれども、では顔が見えない、人的つながりがない多数の権利者がいる事件が集合訴訟で救済できないか、集合訴訟制度のルートにうまく乗らないかというと、そんなことはないわけです。追加的選定制度を導入する際にも、被害者たちに対しての公告のようなものを導入すべきかどうかが議論され、結局は導入されなかったわけですが、現在の選定当事者制度はそういった公告の制度も持っていない。あるいはそれ以外におよそ集合訴訟と呼べる制度が何ら明文で規定されていない。
 追加的選定制度を含めた選定当事者制度というのは集合訴訟の中ではオプト・イン型に属するか、あるいは2段階型に属するかのいずれかでありますけれども、諸外国のその種の制度を見ると数十か条という規定が置かれていることが多いわけです。ところが、日本の選定当事者制度は、追加的選定をとって見ても1個の規定、ただ追加的選定ができるということだけで、選定をしたあとどうなるのかは規定がない。あるいは、追加的選定の制度趣旨としては、先行して提訴した当事者が築いた一定の有利な訴訟状態を見定めて、残りの者が参加することを期待した制度ですけれども、どうやって一定の訴訟状態というものが、客観的に他の権利者や被害者にわかるのかという仕組みも持っていない。
 オプト・アウト型のクラスアクションを含めて、あらゆる集合訴訟制度は多数の権利を束ねる制度ですけれども、束ねた場合には当然共通争点のほかに個別争点が出てくるわけですが、その共通争点と個別争点の審理をいかにして効率化するか。なかんずく個別争点についてはどのような訴訟制度をつくったとしても、本来個別である以上個別審理が必要だとすれば、審理の効率化にはつながらないわけですけれども、そこをどういう形で効率化を図っていくのか。これは更に言えば選定当事者制度やクラスアクションなどの集合訴訟制度のみの問題ではなくて、消費者庁の資料でも整理されている、いわゆる普通の集団訴訟と呼ばれる通常共同訴訟でも1970年代ごろ辺りから実務の中で、あるいは研究者の間で通常共同訴訟において、どうやって共通争点と個別争点の関係を合理化していくのか、あるいは個別争点の審理の効率化を図っていくのかということが検討されてきた問題であり、したがって、そのような本質的に多数の被害者、権利者が登場してくる訴訟に、共通的な問題が背後に横たわっているんだということも議論していかなければいけない。
 それは逆に言うとこれからつくられるであろう制度は、決して魔法のような制度にはなり得ないのであって、民事訴訟制度である以上、これまでの議論で課題となってきたところは課題として残るし、それをできる範囲で最も効率的に、かつ、原告、被告双方の手続、権利をきちんと保障して行えるかということを、考えていかなければいけないということだろうと思います。したがって、余り過剰な期待はかけられないし、かと言って勿論現行制度の些細な手直しでは困るというところを、考えていかなければいけないんだろうと思います。
 最後に、被害事案として整理された中で、消費者庁の御説明と委員の間で認識がずれていたと私は感じたのは、被害者の特定が困難であるが、被害内容は定型的と思われる事案の評価であります。3ということでまとめられている部分であります。
 委員の一部の方々からは被害者の特定は困難であっても、集合訴訟制度に乗せることは可能ではないか。手続の中で参加を募っていけばいいではないかということでありました。そういうことが可能な事案については全くそのとおりだろうと思います。
 ただ、私が見ますところ、消費者庁が被害者の特定は困難であるとして整理されたもの、例えば価格カルテルの事案であるとか、運賃の過剰徴収の事案というのは、手続の中で被害者を募っていけば、徐々に特定できるのではないかということで整理できるものとはやや性格を異にするように思います。
 例えば価格カルテルのような事件につきましては、違った見方もあり得るかもしれませんが、基本的には個々人が被ったと考えている損害と、カルテルとの間の因果関係の立証が極めて困難であり、少なくとも従来の民事法の考え方では、ほぼ立証は不可能に近いと考えられてきた事案です。つまり、因果関係で結び付けることは極めて困難であり、その意味では不利益賦課制度のようなものを中心として、議論をしていかなければいけない類型ではないかと思います。
 運賃の過剰請求につきましては、有名な事例としてアメリカのカリフォルニア州でタクシーのメーターの設定がおかしくて、過剰請求していたという事案があります。しかし、アメリカのように強力なクラスアクションを持っている国でも、基本的には通常のクラスアクションでは対応できなかった事案であります。というのは、やはり最終的に誰が被害を受けたかという個人の被害者の立証が不可能に近いので、最終的には近似的賠償という形で解決がされたというところで、個々の個人を特定して、それに配るということはもとより不可能であり、できなかった事案であります。
 近似的賠償のようなものを集合訴訟の対象ととらえるとすれば、そうしたものも集合訴訟の枠内に入ってきますけれども、これは近似的賠償のようなものが可能かどうかというのは手続法の問題ではなくて実体法の問題であり、そういう実体法を立法しなければ不可能であります。アメリカでもカリフォルニア州は州法の中に近似的賠償を認める実体法を持っていたからできたのであり、アメリカの法域の中にはそのような近似的賠償を認めないところはたくさんあると聞いておりますので、これは集合訴訟を導入すればどうこうなるという問題ではないということではないと思います。
 やや発言が多岐にわたりましたけれども、やはり議論は仕分けていかなければいけないと思います。

○伊藤座長 山本委員、どうぞ。

○山本委員 今の三木委員の御発言とほとんど共通するので、簡潔にお話したいと思います。
 私もやはりこの制度で達成されるべき目的というのは、ある程度特定して考えていく必要があるのではないかと思っております。この消費者庁おまとめのペーパーにありますように、大きくは損害賠償という被害者の被害の回復という点と、加害者側から不当な収益を剥奪することによって、被害の再発を防止するという目的があろうかと思います。損害の賠償についても克服すべき課題として、訴訟自体を提起することの困難性の問題が一方であり、他方では判決が出たとしてもそれが果たして現実に実現するのか、強制執行が可能であるのか、その時点できちんとした資産が被告側に保全されているのかという問題があるんだろうと思います。
 それぞれの達成すべき目的に応じて構成すべき制度というのは、やはり変わってこざるを得ない部分があるということです。1つの制度でできるだけ多くの目的を達成できるような制度ができればそれは理想だと思いますし、それをできる範囲で追求はしていくべきだろうと思いますけれども、ただ、やはりそれは難しいところがあって、まさに二兎を追うものは一兎も得ずということになりかねない。三木委員が言われたように、やはり制度は魔法のようなものではないので、すべての期待に1つの制度で応えるというのは難しい局面があるということは、念頭に置いておく必要があるんだろうと思います。
 被害内容ごとに今日のペーパーにあるように、その課題がどこにあるかということが異なってくるということも、このペーパーのすべての整理が相当かどうかはともかくとして、それは言えるんだろうと思っております。したがって、そういう幾つかの達成すべき課題に応じた制度があるとすれば、それぞれの制度に最もなじみやすいような被害の類型というものもあって、もしそういうことであるとすれば、適切な被害について達成すべき目的に応じて、適切な制度が選択されていくことが望ましいだろうと思います。
 抽象的にはそういうことを思っておりまして、具体的に最後に三木委員が言われたところも私は全く同感でありまして、被害者の特定が困難であるという部分は結局最終的に被害者がその手続に入ってきたとしても、実際に立証ができるのかどうか。偽装表示で偽装された牛肉を買ったということを、みんなが領収書を持っているわけではありませんので、それは具体的にどうやって立証するのかというと、非常に難しい場合があることはたしかなんだと思います。
 運賃もそうですし、パスモを持っている人は乗った履歴が検索されるんだとすれば、ある程度立証は可能なのかもしれませんが、個別に切符を買った人は難しい。陳述書とかで立証しても限界があることは確かで、結局もしこういう事案がこの制度に乗ったとしても、どの程度の割合の人が数百円とか数千円のためにその訴訟手続の中に入ってくるのか。仮に入ってきたとしても、そのうちのどれぐらいの割合の人が立証することができるのかを考えると、結局その被害全体を回復したとしても、大半が三木座長代理が言われるように近似的賠償のような話になって、個別の被害者の賠償には結局当てられないとすれば、そういったようなものを念頭に置いてこの制度をつくるべきなのかどうかということは、考える必要があるのではないかと思います。
 以上です。

○伊藤座長 山口委員、どうぞ。

○山口委員 今、両先生から近似的賠償という用語が出ましたが、ちょっと説明をいただいた方がありがたいと思うんですが。

○伊藤座長 三木委員、お願いします。

○三木浩一座長代理 私が適切な説明者かどうかわかりませんが、私の理解しているところを説明します。
 英語でCy Pres Distribution、発音の仕方が人によって異なりまして「スィープレ」または「サイプレ」と呼ばれる分配方法です。ただ、分配と言ってもこれは擬制的分配であって、実際には分配をしない際に使われる手法です。具体的には被害者の特定ができないとか、被害者が存在しても個々の被害者を立証することはほとんど不可能に近いという場合などに、加害者から代表原告が得た金銭を分配できない以上、最も分配に近い効果をあげるように利用する。そこが近似的と呼ばれる理由です。
 分配に近い効果をあげるというのはどういうやり方かというと、先ほど少し触れましたカリフォルニアのタクシー料金過剰請求の事件では、一定の期間内、一定のエリアのタクシー料金を一律に下げさせるという措置をとった。それによって実際に過去に過剰請求をされた被害者がそのタクシーに乗れば、料金が安くなった分返ってくるでしょうけれども、そのタクシーを利用するのは過去にそのタクシーを利用した者でない人も含まれてきますし、逆に過去に被害を受けた人がそのタクシーをその期間内利用しないこともありますから、結局被害者にきちんと行き渡ったかどうかはよくわからない。しかし、それ以上のやり方が思いつかないということで、それは近似的賠償として処理されたということであります。
 ただ、これはまだ近似的賠償としては被害者に比較的近いところに、ある程度の確率でお金が渡るというやり方でありましたけれども、そこまでできないケースも多々ありまして、その場合には一定の消費者保護のために活動をしている団体に寄附をするとか、何か消費者の利益になる施設をつくるということで近似的賠償をする例もありますし、甚だしきかどうかはわかりませんが、結構関連性が薄いなと私が思ったりするのは、どこかのロースクールに寄附をする。将来立派な法律家を育ててもらって、その法律家が消費者保護をしてくれるという極めて迂遠なやり方ですけれども、それも近似的賠償とされた例もある。そういうことかと思います。
 一部付け足しであり、かつ、繰り返しになりますが、近似的賠償は、アメリカと言えども当然にできるわけではないのであって、何か根拠となる法律なりが必要であるということだと思います。

○伊藤座長 黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員 2点だけ申し上げます。第一点は私が申し上げたのは議論をする際に初めから排除するべきではないということです。最初に私が発言した意味は、被害者の特定や請求が困難なものであっても、特定できた範囲で、請求権が成立した範囲で分配することもできるのであるからという意味でして、特定できないから近似的賠償をすべきだという提案を申し上げたわけではありません。
 第二に、これはこれからの話になりますけれども、訴訟制度を検討していく過程で、どこかの段階で範囲を確定するといいますか、限定する必要が生じてくるだろうと思います。それは立法や運用の資源の問題とか、あるいは技術的な問題、政治的な理由によるかもしれません。ただ、そのときにいろんなやり方があると思うんですけれども、制度を認めても因果関係が立証できないから使われないだろうとか、損害賠償を受けてもそれを分配する相手方が多くないからという理由で、うまく範囲を確定できるのか、あるいは限定していくのが適当かということについて、今の段階ではっきり言えないのではないかということです。
 先ほど申したように、因果関係が認められないものまでとれると私は思っているわけではありませんし、分配できないものは何らか返す方法を考える、あるいは最終的にそういう額の判決が出ないようにすることも可能であると思っておりますので、具体的なことはこれから議論すればいいと思っておりますけれども、入口の段階で限定すべきではないと申し上げたわけであります。

○伊藤座長 わかりました。

≪3.集団的消費者被害救済制度研究会において示された手続モデル案について≫

○伊藤座長 それでは、今までも関連する御発言がございましたが、ここまでの議論を前提にして、集団的消費者被害救済制度研究会において示された手続モデル案についての議論を行いたいと思います。研究案ではA案からD案がモデル案として示されておりますので、やはりそれを基礎にしてここでの検討も行うことになるであろうと考えられます。そこで加納さんからその点の説明をお願いできればと思います。

○加納企画官 その前に比較法的観点からの御説明ということで資料6を用意しました。海外の制度ですが、概略をざっと御説明したいと思います。新しい制度になるかもしれないということでありまして、海外制度で参考になるものをある程度調べたものをまとめてみたものでございます。
 アメリカ、カナダ、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、ブラジルと、これら以外にもたくさんあると思いますけれども、私どもで調べられた限りで参考になると思われるものにつきまして、手続の構造や手続追行主体、その要件、判決効等について概略をまとめたものでございます。
 まずやはりアメリカのオプト・アウト型クラスアクションというのが1本の柱としてあるかと思います。これについて既に御案内の方も多いと思いますけれども、御説明をしたいと思いますが、いわゆるオプト・アウト型のクラスアクションというのが連邦民事訴訟規則に定められてございまして、追行主体はクラス構成員でございます。横を見ていただきますと他国においては構成員ではなく、それ以外の団体であるとか公的機関に主体を認めるところもございます。
 手続追行要件としましてはマル1~マル6まで書いておりますが、多数性、争点の共通性、代表の請求の典型性、代表の適切性、共通争点が他の争点に優越するものであること、他の手段よりもクラスアクションが適切と認められたというものが定められておりまして、これを裁判所が判断をしてクラスの認証を行うということでございます。
 裏に行っていただきまして、認証をした場合には手続保障の観点から通知・公告という形で除外の機会を与えるということでございます。その費用につきましては原則として原告が負担するということのようでございまして、ここで非常に大きな費用がかかるということでございます。
 判決の効力ですが、オプト・アウトをしなかったクラス構成に対しては有利にも不利にも及ぶということで、紛争の一挙解決を図るということでございますが、手続保障との関係をどう見るかという論点が非常に大きなものとしてあろうかと思います。
 同じように通知・公告につきましては和解、取下げというところでもありまして、判決ではなく和解で終わるという場合においても、改めてオプト・アウトの機会を保障するということでありまして、通知・公告がされるということであります。
 訴訟費用や弁護士費用の負担に関しまして幾つか書いてございますけれども、クラスアクションの乱用というのがアメリカでも問題になったということでありまして、特に和解において代理人である弁護士がこの制度を濫用的に使うことが多い。それは被害者には被害を回復するクーポン券を渡すだけで、代理人である弁護士が多額の報酬をもらうということがあるということでございまして、和解に関する規制も最近設けられていると聞いております。
 分配手続につきましては管財人のようなものを指定して行うということでございますが、マル3で先ほど話題になった近似的分配という形で、分配が非効率的であるという場合であるとか、クラス構成の把握が困難であるという場合には、一定の消費者団体というか公益的な使途に用いることもあるようでございます。これがアメリカの制度の概要でございます。
 戻っていただきましてカナダでございますけれども、2つ書いておりますが、オプト・アウト型と、この後御説明する2段階型という双方の要素を組み込んでいるという手続でございまして、手続遂行主体についてはクラス構成員でございまして、要件についてはアメリカの制度と似たような要件が並んでいるところでございます。
 これにつきましては、判決の効力等につきましても同じような規律が設けられておりますけれども、2枚目の一番下の辺りですが、総額査定という形でいわゆる総額判決を可能とする特別の規定が設けられてございます。
 デンマーク、ノルウェーですけれども、これにつきましてはオプト・イン型とオプト・アウト型の両者を、併用的に用いるという制度が用意されてございます。少額につきましてはデンマークの制度では真ん中辺りに書いていますが、1人辺り2,000デンマーククローネ(3万円)以下の請求というのが、法案の理由書というところでは検討されているということでございます。明文でこういうふうに書いてあるということではないようでございます。
 スウェーデンにつきましては、オプト・イン型の手続が用意されているということで紹介させていただいております。
 ブラジルですが、後ほどまた消費者庁の研究会のモデルで御紹介するときに、1つの有力な選択肢として書いておりますけれども、2段階型と言われる手続を用意してございまして、手続追行主体につきましてはここに書いてあるように公的機関及び団体ということでありまして、逆にクラス構成員には認めていないという制度でございます。
 2枚目にいきまして判決効ですけれども、すべての被害者及び相続人の利益にかなう請求認容判決に限り対世効を有するということでありまして、いわゆる責任原因に関する判決をするということでありますが、その判決の効力が片面的に拡張するということのようでございます。この辺をどう考えていくかということだろうと思います。
 以上が諸外国の制度の簡単な御紹介でございます。詳細につきましては消費者庁の研究会の報告書や、その前の内閣府の研究会の報告書にもまとめてございますので、そちらを適宜御参照いただければと思います。
 続きまして、資料7に基づきまして手続モデルについての御説明をしたいと思います。
 消費者庁の研究会では先ほど御説明したような比較法定観点も踏まえて、4つの手続モデルを訴訟制度の新たな制度設計として考えられるのではないかということで、選択肢として掲げてございます。A案からD案という形で書いてございます。順序が逆になって恐縮ですけれども、C案というのがアメリカのオプト・アウト型クラスアクションを想定したモデルでございまして、手続追行主体が訴えを提起し、手続追行許可の審理を裁判所において行う。その後、通知・公告を行いまして除外の手続を踏むということでありまして、その後、訴訟手続をして、最後は総額判決、対象消費者の総員に対して支払うべき金額の総額を支払うよう命ずるという判決でございます。その判決の効力は有利にも不利にも及ぶとしております。その後、分配手続を別途設けるという概略の手続でございます。
 これに対しましてA案ですが、いわゆる2段階型手続というものを想定、イメージして考えたモデル案でございまして、手続追行主体の提訴、手続追行許可の審理の後は責任原因、共通争点に関する部分について判決をするということでございます。その判決の効力なんですが、A案につきましてはいろんな考え方が混ざっておりますので、その共通要素をくくる形で書いておりますけれども、消費者に不利な判決は及ばないこととすると書いておりまして、手続保障の問題はここで回避しようとしております。その後に通知・公告を行いまして手続加入という形で、できるだけたくさんの消費者に手続に入ってもらうことをしまして、個別争点を個別に審理していく。それは訴訟手続による審理によることによれば、簡易な手続を設ける、調停に付することも考えられるのではないかという整理をしておりまして、最終的に給付判決という形で出されることを想定しております。
 B案はA案とC案の折衷的な考え方でございまして、共通争点である責任原因の判決につきましてはオプト・アウト型手続によって判決をする。その効力は有利にも不利にも及ぶとしておりますが、やはり個別争点が少なからずあるだろうということで、個別争点については別途手続加入行為及び審理手続を用意して、最終的には個別に給付判決をするという形で想定しているものでございます。
 D案ですけれども、これはいわゆるオプト・イン型という形で現行制度に比較的近いモデルではないかと思われるところですが、ただ、できるだけ請求権を束ねる、糾合するということを制度目的にしようとしておりますので、通知・公告を手続の初期に行い、できるだけたくさんの消費者に申し出でいただくことによって請求権を糾合する。その後の手続については、今までの現行制度に近い訴訟手続による審理及び給付判決という形で、対象消費者ごとに請求金額を特定して判決をする。その手続に加入した消費者については、判決の効力は有利にも不利にも及ぶということを想定しております。
 2ページ目にはモデルの補足説明ということで書かせていただきました。ちょっとだけ補足させていただきますとマル2ですけれども、2段階目の手続についてはさまざま考えられるところでありまして、簡易な手続と1枚目で書いてございましたが、その具体的な運用として査定手続のようなことを設けることも考えられるのではないかとして書いております。具体的な内容ですけれども、簡易な手続で裁判所が判断する手続として、例えば以下のようなものが考えられるのではないかとしております。
 1つは1段階目を担当した手続追行主体が授権を受けて裁判所に申立てをし、その申立てをした場合には相手方の意見や証拠関係について整理をして、裁判所に書面を提出する。代表者がその主張などを整理するという形にして、裁判所が査定をするということでありまして、例えば金額だけ争いはあるけれども、それ以外のところについては1段階目でほぼ責任原因の判決が確定したという場合であれば、あとは金額についてだけ消費者の状況をとりまとめて、それを裁判所に提出し、裁判所は簡易に査定をするということで、簡易迅速な被害者救済を可能にしてはどうかという考え方でございます。
 3ページですが、手続モデルの比較検討ということでメリット、デメリット。これも消費者庁の研究会でおおむね整理されたところを敷衍したものでございますけれども、簡単にまとめてございますので、今後の議論の出発点となろうかと思いますので御議論いただければと思いますが、まずC案についてですけれども、メリットとしましては総額を支払わせるということでありまして、いわゆる違法収益の吐き出し効果が非常に強い。また、紛争の一回解決も図られるということだろうと思いますが、デメリットとしましてはやはり手続保障の問題でありまして、自ら関与していない敗訴判決の効力が消費者にも及ぶことをどう考えるか。
 手続保障の観点からはどうしても通知・公告手続が厳格なものになりやすいのではないかと思われるところでありまして、そうすると制度の実効性がかえって阻害されるのではないかと思われるというところを書いております。総額判決となりますと相当被害内容が類型的かつ画一的に認められるような場合でないと、この制度には乗せにくいのではないかと思われるところでありまして、対象事案の選別の問題を書かせていただいております。
 これに対しましてA案ですが、不利な確認判決は及ばないということで手続保障の問題は回避するとともに、2段階目の通知・公告手続というのは手続保障の観点というよりは請求権をできるだけ束ねる、名乗り出ていただくというための手続でありますから、手続保障の観点ではないということなので、必ずしも厳格なものでなくてもよいのではないかと思われるところであります。
 他方、デメリットとして書かせていただきましたのは、消費者に個別に名乗り出ていただかなければいけないということをどう見るかということでありまして、収益吐き出しの効果は不十分ではないかという御批判もあろうかと思うところでございます。
 B案はA案とC案の折衷案として御紹介させていただきましたけれども、有利不利問わず判決の効力が消費者、対象者に及ぶとしておりますので、紛争の一回解決の可能性は非常に高いと思われますが、やはり手続保障の問題は依然として残るだろうと考えられるところでございます。2段階目は個別に名乗り出ていただかなければいけませんので、そういう意味では収益吐き出し効果が徹底していないのではないかという批判も、あるかと思われるところでございます。
 D案につきましてはオプト・イン手続ということでありまして、比較的現行の民事訴訟の考え方には近いのではないかと思われるところでありますが、デメリットとして書かせていただきましたけれども、消費者が自ら申し出をするというところがどこまでできるのかというところでありまして、通知・公告を一生懸命するんだという話になろうかと思いますが、先ほど来少し関連する御議論もあったかと思いますけれども、訴訟の帰すうが見えない段階で申し出をするということで、制度の実効性としては弱いのではないかという御批判もあり得るかと思っております。メリット、デメリットどの辺を見るかということであろうかと思います。
 制度設計上の課題としましては、それぞれ当事者適格の問題、手続保障の問題など、あるいは2段階型におきましては1段階目と2段階目の関係をどうするか、2段階目の簡易な手続、先ほど査定という形で少し参考になる考え方を御紹介申上げましたけれども、どうするかといったところはまだまだ今後専門調査会において、御検討をいただかなければならないのではないかと思われるところでございます。
 以上雑駁ではございますが、比較法と手続モデルの御紹介ということでさせていただきました。
 資料6、資料7の御説明とは関係していないので恐縮でございますが、参考資料として付けているものについて若干付言させていただきますと、これは最近の消費生活相談事例としてどんなものが多いのかということで、冒頭では資料3で手口別に見た相談特徴ということで件数、金額等の整理をしたものをお示ししましたけれども、その具体的な内容としてこんなものがありますということの御紹介でございます。
 1~8ページまでこういう事例が最近は多いということと、年代別とか金額が大体どれぐらいであるという形でデータをお付けしております。住宅リフォーム詐欺につきましては件数が減ってきたと言われておりますけれども、2010年度におきましては昨年同時期と比較しますと増えてきているということで、また今度は増加傾向に転じるかもしれないという状況であることが書かれております。
 私からの説明は以上でございます。

○伊藤座長 それでは、各手続モデルは研究会での議論の内容を踏まえたものでありまして、本調査会としてA案ないしD案のうちのどれをとるかという性質の話でないことは当然のことではあります。とは言えやはり従来の研究成果を踏まえて議論をすることが合理的かと思いますので、そういう意味ではこの調査会においても中心的な検討課題に関わるものと思います。
 したがいまして、本日の段階でこれについて詳細に立ち入るということ、あるいは一定の方向性をここで合意をすることは、まだ時期尚早かと思いますけれども、入口の問題としてそれぞれの考え方の長短、特質等などについての質問あるいは御意見をお願いできればと存じます。山口委員、どうぞ。

○山口委員 理解できていない部分があると思いますので教えていただきたいんですが、資料7のチャート表を見ますとA案、B案、C案の3つの関係なんですけれども、B案、C案は第一次判決の前に除外(オプト・アウト)の申出というのがあります。その後、AとBの違いは要するに不利な判決の効力が及ぶか及ばないかという部分のようなんですが、AとBの違いでオプト・アウトの申し出がBではあるけれども、Aではない。そのことが不利な判決の効力が及ぶかどうかに関わってくるんだと思いますが、これは除外の申し出があるから除外の申し出をしなかった人に効力が当然及ぶということになるのかもしれないんですが、AとBとCで除外の申し出がこの段階であるのが必然というか、そこで当然制度的な準備としてこういうものを予定して、この除外がなければ効力が及ぶという前提でこの枠組みをつくっているということなんでしょうか。

○伊藤座長 加納さん、どうぞ。

○加納企画官 まずC案が比較的わかりやすいのではないかと思いますけれども、これはアメリカのクラスアクションをイメージしてつくっております。手続追行主体の提訴があって、要は対象消費者の範囲を確定して、対象消費者の請求権をすべて束ねて請求するんだということだろうかと思いますので、ほうっておいたらすべての人がその手続に入ってしまうということで、除外の機会を与えなければならないということで、除外の機会を設けているということであろうかと思います。
 これに対しましてA案なんですが、A案の審判対象は何かというのはさまざまな考え方が混ざっておりますので、この図自体必ずしもわかりやすくないのですが、1つは責任原因の有無について確定の判断を求めるという、固有の地位に基づく手続だとする考え方があろうかと思います。そうした場合は個々の消費者の請求権とは別のことをやっていることになりますので、別に初期の段階では入ってきてもらうという必要性はない。責任原因について判断した後に通知・公告をして入ってきてもらって、入ってきてもらった後は個々の請求権について審判対象としていることになろうかと思います。
 ややこしいのは、A案の場合にも個々の請求権が審判対象になっているんだけれども、それは個別に当事者となっている人だけの分について判断しているのであって、手続が更に進行して加入すると加入手続を設けて、他の消費者の請求権についても審判対象に加えていくんだという発想もあろうかと思いますので、A案については大きく分けて2つの考え方が混ざっている。消費者庁の研究会の報告書もそういう構成になっているかと思います。なので、通知・公告の位置づけとしては、そういった審判対象に巻き込まれる消費者の請求権がなっているかなっていないかというところの違いから、こういうふうに後に来るのか先に来るのかという違いが出てくるのではないかと思います。

○伊藤座長 いかがですか。これはまさに制度設計の内容に関わる問題ですから、責任原因の確認とは何ぞやということになりますと、ここで議論をしていかなければいけない性質の問題なんですけれども、いかがでしょうか。

○三木浩一座長代理 海外比較表のところで若干気になったところを私なりに指摘しておきたいと思います。
 まずアメリカのクラスアクションについての御説明ですが、裏の一番最後の分配手続の概要ですけれども、ここに書いてあることが間違いだという趣旨ではありませんが、誤解をややもすれば招くのではないかという書きぶりですので、念のためにということで申し上げます。
 アメリカのクラスアクションは、代表原告がクラスメンバー全員の権利を束ねて訴訟するわけで、日本風に言うところの訴訟物は全員の権利が訴訟物ですので、当然判決の名宛人は代表原告にお金を払えという判決になるわけではなくて、クラスメンバーにお金を払えという判決になるわけです。ただ、オプト・アウト型ですのでクラスメンバーが訴訟の途中で特定する場合もあるわけですけれども、完全に特定しない場合にはクラスメンバーに払えと言っても、クラスメンバー一人ひとりの名前を挙げていくわけにもいかないので、結局はクラスメンバー全員の権利が合わさった1つの財団のようなものを観念して、その財団に支払われるという判決になります。和解についても同じです。
 ですので、当事者が管財人を選定と書いているこの当事者の意味にもよりますけれども、代表原告が判決の名宛人ではありませんから、代表原告が勝手に選べるというわけではなくて、クラスアクションの場合はほぼ100%和解で終わりますので、和解条項の中で分配手続を担当する者を定めておくことになります。
 管財人という表現もやや誤解を招きやすいので、日本語で言う管財人というのは倒産管財人を考えればわかるように、一定の裁量権があるんですけれども、クラスアクションの場合のクレーム・アドミニストレーターは一切の裁量権を持たないとされておりまして、分配をするに当たっても例えば誰が権利者であるかの認定をする裁量権もない。例えばある何月何日から何月何日までのこういう形式の領収書を持っている人は、自動的に権利者として認定しなさいということが和解条項に入っていまして、そのとおりにやるわけですので、一切の裁量権はないと言われております。
 そういうことで、ちょっとその辺は誤解を招きやすいかなと思いましたので、1点指摘した点であります。
 もう一点はブラジルのところであります。ブラジルにつきましては裏側の判決効の御説明に、このペーパーに書いているわけではありませんが、口頭の御説明で片面的な判決効だという御説明がありました。これについてはブラジル国内で理解が分かれているというか、いろんな理解がされているんだろうと思いますが、私がインタビューをした有力な学者数名及び官僚数名の方の理解によりますと、判決効は片面的にあるわけではない。判決効の客観的範囲の問題であるという御説明でありました。
 どういうことかというと、このブラジル型クラスアクションの判決で代表原告が敗訴したというか、原告側に不利な判決があった場合には、二度と他の適格者がクラスアクションを起こせなくなるという意味では有利にも不利にも働く。ただし、被害者個人はなお個人としての個別訴訟は起こせるということです。しかしそれは判決効が片面的であるわけではなくて、クラスアクションの訴訟物と個別訴訟の訴訟物は別物であるので及ばないというだけであって、判決効も客観的範囲のものであって片面性があるわけではないという御説明でありました。その点については違う評価の仕方も勿論あるかもしれませんが、少なくとも当然に片面的という理解をしていいかどうかは、なお学問的に見ても疑問の余地があるということですので、1点断っておきたいと思います。

○伊藤座長 さらに御質問、御意見をお願いします。大高委員、どうぞ。

○大高委員 資料7の各手続モデルの比較検討につきまして大きく2点ほど意見といいますか、今後の議論の視点として申し上げておきたいことがございます。
 1点目は通知・公告の問題でございますけれども、通知・公告に関してはA案ではメリットとして通知・公告の簡略化が図りやすいとありまして、一方、B案、C案では手続保障の観点からは厳格な通知・公告が必要になるという記載がございます。これはそもそもどの程度をもって簡略、またはどの程度をもって厳格ということにもよるかと思いますけれども、これは恐らく手続保障という理論面からこういった整理をされているんだろうと思いますが、思いますにA案でも2段階目でたくさんの人に入ってきてもらって実効化しようとすれば、これは十分な通知・公告をしなければ入ってこないわけで、例えば簡略化してもいいからと言って例えば官報公告だけでいいとしてしまうと、それで本当に終わってしまえば誰も被害者が来なくて、結局回らない。勿論こういうことをおっしゃるような意見の方はいないと思いますけれども、そういう意味で通知・公告の必要性といいますか、重要性というのはどの案をとっても同じでありまして、取り立ててA案のメリットもしくはB案、C案のデメリットと位置づけて議論するというのは、むしろミスリーディングではないかと思います。
 2点目ですけれども、C案に関してデメリットとして対象事案が限られる、対象事案の選別が困難という記載がございますが、確かに前回の研究会の議論でもC案というものはすべての事案に適用できるものではないという議論がありました。私もその点はそのとおりだろうと思いますが、だからと言ってこれも一律に対象から外していくというのはいかがなものかと思っておりまして、可能な事案については積極的に適用する。ただ、適用範囲が狭いから例えばA案なりB案と組み合わせてA案、B案の足らざる部分を補う形でC案の視点を生かしていくという考え方は、十分あり得るのではないかと思っております。今後の議論に向けた視点として2点申し上げました。

○伊藤座長 窪田委員、どうぞ。

○窪田委員 私の専門は民法ですので手続法のことを十分に理解していない部分があるのかもしれませんが、今の大高委員の御発言との関係で1点、これからの議論にも関係すると思いますので確認させていただきたいと思います。実際にA案をとったとしても通知・公告をきちんとやらなかったら原告を集めることはできていないし、十分に集団的な訴訟として機能しないというのはそのとおりだと思いますが、ただ、A案では基本的には通知・公告をして手続加入ですから、基本的にはここではオプト・インの仕組みとなりますから、そこでの場面の通知・公告が仮に十分になされなかったとすると、うまく集団的な訴訟として実行できないというだけの話となろうかと思うんです。
 それに対してB案、C案において通知・公告が非常に重視されているというのは、オプト・アウトを前提とした上で非常に簡単な、ほとんど知られていないような通知・公告を前提として、訴訟の効力が及ぶことを前提としてできるのかというお話だったのではないかと理解しておりましたので、その点では実質的にも違うのかなと理解しておりました。この点だけ確認させていただけたらと思います。これから多分A案をとるのかB案をとるのかC案をとるのかという議論では、やはり大事なポイントだろうと思います。

○伊藤座長 詳しくは加納さんに説明していただければいいと思いますが、例えばB案以下における通知・公告は、結局請求権を持っている被害者の裁判を受ける権利を侵害しないようにするためという、制度的な意味があるものだと思いますが、どうぞお願いします。

○加納企画官 座長が整理していただいたところとほとんど一緒でございまして、大高先生がおっしゃるようなところも勿論ありますので、A案だから通知・公告を手抜きしていいということではないんですけれども、制度的な位置づけが違うというところはA案とB案、C案で認識する必要があるのではないかという指摘でございます。

○伊藤座長 山口委員、どうぞ。

○山口委員 私は諸外国比較表の2枚目の一番上の通知・公告の欄を非常に注目しているわけなんですけれども、アメリカあるいはカナダ(ケベック)などでは裁判所が通知・公告の方法を裁量で決めることができるとなっておりまして、そういう建てつけのところが多いようです。費用についてはノルウェーやスウェーデンのように国が負担あるいは裁判所が負担、実質国なんでしょうけれども、負担するところがあれば、被告側に負担させるところもあるようなんですが、とりあえず最初の段階で通知・公告となれば、原告側が負担することになるのかなと思うんです。
 私は現実に今の日本の裁判所の実際の運用からしますと、通知・公告と言っても限度があるのではないかと思うんです。例えば消費者被害の破産手続などで知れたる債権者への通知と言っても、配当がほんど期待できないような事案ではインターネットに載せるだけで、知れたる債権者への通知とみなすという運用をされていますし、私がやっている事件でも実際には管財人は通知をしないで、被害弁護団で実質通知をしているというケースもございます。今まさに武富士の事件で話題になっておりますけれども、中には特に悪徳商法事案では家族に知られたくないというところから通知してほしくない、突然裁判所から、あるいは誰からかあなたも原告になる余地がありますという通知が来ると、かえって困ってしまうということもあり得ると思うのです。ですから厳密な通知とか軽い通知といっても、やることは恐らく要するにメディアにどれだけ乗るかによって、被害者がどれだけ集まるかが決まるぐらいで、BでもCでも厳密な通知・公告ということで知れたる債権者あるいは知れたる被害者全員に、裁判所の送達証明か何かを付けないとだめなのかというところまでは、恐らく私は要求するのは無理ではないかと思うので、そこら辺の現実的な通知・公告の方法との絡みで制度の枠組みをつくらないと、動かなくなるのではないかと思いますが、どうなんでしょうか。

○伊藤座長 朝倉さん、お願いします。

○朝倉課長 今、山口委員がおっしゃられた観点、現実的なことを考えなければいけないというのはそのとおりだと思います。実は消費者庁の研究会でも申し上げましたけれども、議論をするときに公告(広告)と通知というのは分けて考えなければいけないと思います。公告(広告)というのは今でも倒産事件等で行われております。いわゆる新聞に載せる広告では数千万円かかるという実態については、消費者庁の研究会のときに申し上げておりまして、しかも倒産の場合の公告(広告)する内容と、集合訴訟の場合の公告(広告)する内容では、おそらく集合訴訟の方が多いと予想されますので、新聞の広告代金というのはそれに応じてもっと高くなりますという話は申し上げたところです。
 個別の通知についてはなおさらのことで、今、山口委員がおっしゃられたようにいろいろな問題があり、しかも一人ひとりにやろうと思ったら郵送料だけでも莫大な費用がかかるという状況にございます。一方で実際に効果的なものは何かとおっしゃられたらメディアによる広告です。先ほど相談110番の話もありましたが、70歳の次々販売の被害者であるおばあちゃんが日経新聞を読んでいるかと言ったら必ずしも読まれてはいないのではないかと思いますので、形式的に新聞に載せることにどれだけ効果があるのかという問題もあろうかと思います。
 ただ、権利を失わせることに関連して通知・公告(広告)を行うことになれば、現行倒産手続などとの平仄の問題がありますから、集合訴訟制度だけ実質面で考えてという訳にもなかなかいかない難しいところがあると思う訳です。全体の民事訴訟手続、ほかの手続との平仄を考えなければいけない。そうすると、ここはちょっと窮屈な通知・公告(広告)になる。
 そういう意味ではA案で予定されている通知・公告というのは、皆さんもおっしゃっているように、要するに来てくださいという公告(広告)、公告(広告)と言ってもどちらかと言うと「広告」でございますので、こちらは効果とコストを考えてコストパフォーマンスで一番効果的なものを行えばいいということになるように思います。
 いずれにしても手抜きという話ではなくて、現在の他の制度との平仄からどういう拘束があるかということから位置づけを考え、しかも実際にどのぐらいのコストがかかるのか、それを先ほど山口委員がおっしゃられたように、原告がもし負担することになった場合には負担ができるのか、そもそも個別の訴訟ですら提起できないとおっしゃっている人たちが、そのような費用を捻出できるのかという点についても、よく考える必要があろうかと思います。

○伊藤座長 大高委員、どうぞ。

○大高委員 若干私の先ほどの意見の補足というわけではないんですけれども、今のお話を伺っていて、私が申し上げたかったのは整理をメリット、デメリットという形でされていて、A案のメリットとして簡略化というものがあって、そのように整理するのに違和感を感じたということを申し上げたかったんです。理論的な面で手続保障の観点の整理としてこういうことは言えるというのは、私が先ほど申し上げたとおりです。今、朝倉課長がおっしゃったように実際に実効的な通知・公告をしようというときに、やはりA案でも仮に知れたる被害者がいるのであれば、かつ、それが個別が適当なのであれば個別にするという選択になってくるんだろうと思いますし、結局事案に応じて考えるべき話、勿論B案、C案のように失権効と結び付く場合は、ミニマムの通知・公告というのが議論としてあり得るのだろうと思いますけれども、私の印象としては取り立ててメリット、デメリットと整理して差異化を図るような話なのか、相対的なものではないかという感じがしたものですからそういうことを申し上げました。
 あとは補足なんですけれども、厳格という点に関しては私の記憶なので正確に議事録をトレースしたわけではないんですが、オプト・アウトにおける厳格な通知・公告については請求額によっていろいろ考え方もあり得るのではないか。少額なものについては簡略化していくという考え方もあるのではないかという議論が消費者庁の研究会においてあったように記憶しております。勿論大勢の意見という趣旨ではなくて、そういう議論もあったように記憶しておりますので、一応付け加えておきます。

○伊藤座長 三木委員、どうぞ。

○三木浩一座長代理 今、通知・公告が話題になっておりますので、私もその点について一言申し上げたいと思います。
 いみじくも大高委員がおっしゃったように、B案、C案で言う通知・公告というのは失権効を発生させていいかどうかの要件としての通知・公告であり、他方でA案で言うところの通知・公告あるいはD案もそうだと思いますが、これは朝倉課長がおっしゃったアドバタイズメントとしての公告であるということで、やはり性格が違うことは押さえておかなければいけない。これは簡略でいいかどうかという程度の問題というよりは、質的な問題だろうと思います。
 通知・公告が負担が大きいというのは山口委員がおっしゃったとおりですけれども、それは勿論この後の議論として負担が大きいから簡略化しろという話になるのか、負担が大きくてもこれは失権効の要件であるから必要だとすれば、その制度自体の実効性がどうかという議論になるのかというところは、両様の話の展開があり得ると思います。
 負担との関係ですけれども、公告は特に日本では朝倉課長がおっしゃったように、新聞広告を出す場合でも1,000万以上かかったりするケースが多々ありますが、しかし、それでおさまるわけでは更にないということを踏まえておく必要がある。具体的に言いますと特に失権効の公告ですが、これは事例によるのだと思いますが、私が見聞きした事例では第1回目の公告でも新聞には期間を空けて3回載せろということで、つまり一度だけでは全員に伝わらない、たまたまその日の新聞を見なかったりする可能性があるということですので、運用の問題なのか立法の問題なのかわかりませんけれども、公告というのが1回数千万を払えば済むという話ではおさまるかどうかということも、押さえておく必要がある。
 勿論3回なりを出す公告が訴え提起直後だけでは終わらないのであって、例えば手続の重要な段階、和解などが典型ですけれども、そういうときには数回の公告を打つ必要があるということですので、公告に要する費用とか手間というのは、そうした全体で考えなければいけないということだろうと思います。

○伊藤座長 山口委員、どうぞ。

○山口委員 この公告なんですが、例えば破産法では官報に掲載することが条文上明記されているわけです。私は新聞に5,000万円もかけて載せるというのはナンセンスでして、公告は官報に載せるので足りるのではないかと思うんです。実際上、破産手続においては再三経験することですが、例えば未公開株などの相談があって調べてみると、とっくに破産手続が終わっている。それは勿論細かにやれば破産管財人が事業所側から書類を取り寄せれば誰に未公開株を売ったかわかるはずなんだけれども、あるいは会社の方が隠匿してそこら辺が分からない場合もあるかもしれませんが、いずれにしても破産手続の中で債権届が遅れて配当を得る機会を失うことはしょっちゅうあるわけです。それについて大して問題にはなっていないと思うんです。遅れてしまった、だめだったね、残念。これで終わっているわけです。
 だから私は仮に失権効をもたらすとしても、それほど厳密に個別に絶対送達するようなシステムをとらなければいけないということになるのか。一応官報に載せて公告して、あとは個別の努力あるいは裁判所の裁量でやれば済むというふうにすればいいのではないかと思っているんですが、そこら辺を余り固く考えると全然動かない制度づくりになってしまうと思うので、そこら辺の通知・公告の方法というのは非常に重要だと思うんです。前提としてどこまでやらなければいけないのか、どこの程度で足りるのか、これは是非議論して固めていただきたいと思います。私は繰り返し言いますが、そんなに厳密に考える必要はないと思います。

○伊藤座長 そこはまさにモデル案を基礎として行う議論の1つの重要な要になることだと思います。磯辺委員、どうぞ。

○磯辺委員 私どもでもA案からD案でどのようなものが望ましいのかという議論をしておりまして、議論の中で出てきておりますのはC案というのは、総額判決まで出て被害救済が図られるということで、手続上、消費者にとって負担が少ないのではないか。消費者団体に申し出ることで足りることになりますので、C案が望ましいんだけれども、C案は総額判決の可能性がどうなのか、もしくは通知・公告手続の問題等で対象になる事案がどうしても限定されるだろうということで、更に広い事案を対象にできるようにということでA案も必要という議論をしております。
 先ほどの通知・公告の件ですけれども、C案で通知・公告を行う場合に少額多数被害ということにもしフォーカスを絞れば、個々の消費者の権利行使がほぼ考えられない事案と考えたときに、通知・公告手続がどれだけのものが要求されるのか。つまり個々の権利行使が考えられない事案であれば、通知・公告手続は簡便でいいのではないか。団体のホームページ等に掲載するとか、そういった範囲でも大丈夫なのではないかという議論をしておりまして、そのようなことも議論の俎上に載せていただければと思います。

○伊藤座長 そうですね。おっしゃるとおりで、どういう請求権を手続に乗せる対象として考えるのかというのも、今の通知・公告の在り方を考えるときの大変重要な要素になると思います。三木委員、どうぞ。

○三木浩一座長代理 最初に申し上げておきますが、オプト・アウト型のようなものの可能性は追求できる範囲で追求したいと思っておりますので、はなから否定するつもりで通知・公告の問題をあれこれ申し上げるつもりはありませんが、議論上の問題あるいは比較法の問題を踏まえてどう考えられるかということを申し上げましたし、今からも申し上げることは先に断っておきたいと思います。まず山口委員がおっしゃった破産の失権と通知・公告の関係ですが、私は以下のように思います。
 一般的に債権者は債務者の債務状態に注意しておくべき自己責任がある。破産、倒産というのは債務者の財務状態の最も典型的な悪化ですので、それを債権者側がある程度注意をしておかなければいけないということを前提として、現在の失権と公告の関係は作られているんだろうと思います。
 それに対してこの集合訴訟のケースでは、必ずしも債務者の財務状態が悪化しているわけでもないですし、そのタイミングで訴訟を起こさなければいけないわけでも必ずしもないかもしれないときに、代表原告が言わば他の債権者から見れば勝手に訴訟を起こす。その債権者の代表原告の訴訟を知りようもないままで代表原告が敗訴すれば、自分が何もしていないのにその権利が失われてしまうことの保障をとるための通知・公告ですので、やはり破産と同じというわけには、議論の仕方としてはいかないのではないかという気がいたします。
 磯辺委員がおっしゃった、少額であれば通知・公告は省略していいのではないかという議論は、感覚的には理解できないわけではありません。その少額が幾らかということで、それは恐らく相当な少額ではないかとは思いますが、ただ、これは私が不勉強でもし知らないことがあればお教えいただきたいですけれども、私が知る限りではアメリカやカナダのクラスアクションでも、少額だから通知・公告が不要であるという議論は存じません。かなりアメリカのクラスアクションは荒っぽい制度だと諸外国では思われていますが、その荒っぽいと思われている制度でも通知・公告はかなり丁寧に出されているわけであります。アメリカに住んだことがある方であれば御経験があるのではないかと思いますが、私自身も住んでいるときに極めて少額のケースでクラスアクションの郵便物が届くということは何度か経験しておりますので、なかなか比較法的に見ても難しい議論を含んでいるのではないかという気はいたします。

○伊藤座長 山口委員、どうぞ。

○山口委員 教えていただきたいんですが、諸外国で破産の通知・公告と、いわゆるクラスアクション的な集合訴訟における通知・公告は、かなり実際上の運営は違っているのか、それとも似たようなものなのか、そこら辺はどうなんでしょうか。

○伊藤座長 三木委員、どうぞ。

○三木浩一座長代理 もし間違っていれば御指摘いただきたいですが、私が認識している限りでは、アメリカでは破産の通知・公告に関しては日本と同じような程度であるのに対して、クラスアクションの通知・公告は極めて厳しい。特にこれは法域によっても違いますけれども、連邦の法域においてはそもそも個別通知が原則であって、知れている債権者に対して個別通知が省略できることは基本的にはない。更に知れていない債権者に対して公告を併せてかけなければいけない。それも事案によるのかもしれませんが、何回もかけなければいけないということで、大変厳しく運用されていると理解しております。

○山口委員 通知・公告されたために困るという、例えば今の武富士の実情のような問題はアメリカでは起こっていないのでしょうか。

○三木浩一座長代理 私がこれまで読んだり、人と話をしたり、研究をした範囲では、そういう通知・公告をされて困ったとか云々という話は聞いたことがありません。むしろ余りにもしょっちゅう通知が送られてくるので、一般市民はそのようなものを、理解できないこともあってでしょうけれども、ジャンクメールと勘違いして読んでくれないという嘆きはよく聞きますが、通知・公告が家族に知れて云々という被害の話は、聞いたことがありません。

○伊藤座長 よろしいですか。窪田委員、どうぞ。

○窪田委員 今の点に関連してということになるかと思いますが、今は専ら手続法的な観点から失権という点が取り上げられたのだと理解しておりますが、前回の消費者庁の研究会で少し出た問題として、この場合の代表者が一体どういう形で訴訟遂行主体、権利を持っているのか、権限を持っているのかという議論がある中で、任意的訴訟担当なのか法定訴訟担当なのかという議論がございました。
 その際に実体法の研究者はその点についてどのように考えるんだと問われて、そんなこと問われても困るなと思いながら、沖野委員も私もほぼ似たような答え方をしたのではないかと記憶しております。実体法の観点からは、恐らく両方とも説明は可能なのだと思いますが、その場合、全体の制度としてみた場合に合理的な仕組みがつくれれば説明は可能なのではないかということを述べたと記憶しております。つまり、その場合にはやはり一方でどれだけのチャンスが与えられていて、どういう機会があったのかということと、それによって生じる効果を相対的に見ていかざるを得ないだろうということがあったんだろうと思います。
 また、ほとんど何も通知もないのに自己の権利が他人によって行使され、自分が言わばそこでは主体とはなり得ないという話と、恐らく破産の場合には自らの権利について失効してしまう、権利を失ってしまうという話はフェーズが違うのかなという気もします。つまり実体法的な観点から言うと、私は何も知らないのに私の権利を誰かが行使しているというのは大変に奇妙な事態だといえそうです。それに対してチャンスがあったのにその権利を失ってしまうというのは、ある意味で破産における失権だけではなくて、消滅時効とかさまざまそういう制度があるわけです。その点では、両者の局面は異なっていて、単に手続法的な問題だけではなくて、実体法的な観点から見ても無視できない部分があるのではないかと思いました。その点では、印象めいたことで恐縮なんですけれども、補足させていただきたいと思います。

○伊藤座長 中村委員、どうぞ。

○中村委員 通知・公告の部分については、特に皆さん十分議論していただいているので新たな意見はないんですが、先ほど三木委員から御説明をいただいたところでちょっとだけ安心したんですけれども、ブラジルの片面的判決というのが必ずしもそういうことではないということで、A案においても、同じような裁判の立て方で1回負けたからということで、違う裁判所で勝つまで次々にやるということは、想定されていないという理解でよろしいんでしょうか。

○三木浩一座長代理 私が申し上げたのはブラジルの話で、日本の場合はこれからの議論いかんではないかと思いますので、制度の立て方いかんだと思います。

○伊藤座長 加納さん、どうぞ。

○加納企画官 中村委員の御質問の観点ですけれども、A案はまた次回以降もっと御説明できるかと思っておりますが、いろんな考え方が混ざっておるところは若干わかりにくい等ございますけれども、中村委員がおっしゃったように手続追行主体が訴えを提起して、負けたという場合にはもうできなくするというか、訴訟提起自体を制限するという考え方もあるというのは、研究会の報告書の中で触れられております。

○伊藤座長 よろしいですか。
 それでは、本日ちょっと皆様の御都合で退席された委員の方もおいでになりますけれども、最後の部分に関しても有益な審議をしていただいたように思います。勿論ここで示されている案についてそれぞれに長短がございますし、これに限らずより適切な案も考えられるかと思いますが、本日は通知・公告に関する議論が多かったように思いますけれども、それを今後の議論の基礎として生かしていただければと存じます。

≪4.閉会≫

○伊藤座長 他に特に御発言がないようでしたら、予定の終了時間が迫っておりますので、本日はこれで閉会にさせていただきたいと存じますが、よろしいですか。それでは、事務局から次回の日程についての連絡をお願いいたします。

○原事務局長 大変長時間ありがとうございました。次回の日程は参考資料2に今後のスケジュールを付けておりますけれども、12月2日木曜日の16時から19時ということで予定をしております。第9回まで予定をさせていただいていますが、大体木曜日を審議に使わせていただけたらと思っております。
 次回につきましては今日の議論に引き続き、手続モデル案について議論を深めていただけたらと考えております。
 事務局からは以上です。

○伊藤座長 それでは、次回以降引き続きよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。

(以上)