古川内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年10月17日

(平成23年10月17日(月) 15:39~16:02  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 まず、月例経済報告等に関する関係閣僚会議の概要を報告いたします。
 「景気は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるなかで、引き続き持ち直しているものの、そのテンポは緩やかになっている。」と下方に変更しております。これは、サプライチェーンの立て直しが進展するにつれ、景気への追加的なプラスの効果が薄らいできている中で、海外景気の回復の弱まりなどにより輸出が横ばいとなっていることから、我が国の生産の持ち直しペースが足下で鈍化していることなどを踏まえたものであります。
 先行きにつきましては、景気の持ち直し傾向が続くことが期待されますが、回復力の弱まっている海外景気が下振れた場合や為替レート・株価の変動等によっては、景気が下振れするリスクが存在することに注意が必要であります。
 政府といたしましては、震災からの復興に全力で取り組むとともに、急速な円高の進行等による景気下振れリスクや産業空洞化のリスクに対応し、また、円高メリットを最大限活用するため、円高への総合的対応策の最終取りまとめ及び平成23年度第3次補正予算の編成を早急に行ってまいります。
 もう1点、今日は御報告がございます。
 この月例経済報告関係閣僚会議の後で、総理の下に、私と官房長官、そして総務大臣、外務大臣、財務大臣、経済産業大臣の関係閣僚が集まって、新しい会議体の骨格やメンバー構成などについて意見交換を行いました。その場で、この新しい会議体の名称は、「国家戦略会議」とすることに決まりました。
 会議の具体的なメンバー構成につきましては、総理を議長といたしまして、基本的には本日出席した6名の閣僚と、民間議員数名を考えております。民間議員の選任につきましては、総理に一任ということになりましたので、至急調整の上、御報告申し上げたいと思っております。
 会議で取り組む課題につきましては、国家の内外にわたる重要政策の司令塔として、重要基本方針の取りまとめ等を行うとともに、中長期的な国家ビジョンの構想も行うことになると考えております。
 いずれにいたしましても、会議の詳細につきましては、今日の意見交換をもとに、今後、関係者と協議し、会議設置の閣議決定をした上で、今月中に第1回会合を開催したいと考えております。
 私からは以上でございます。

2.質疑応答

(問)月例についてですけれども、基調判断を2カ月前に上方修正したばかりで、この2カ月しかたっていないのに、今度は景気判断を下げる。非常に景気の判断が激しくなっているのですけれども、この点について、まず大臣の受けとめと、その振幅が大きくなることによって、政府の景気判断がわかりにくくなるのではないかという心配があると思うのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
(答)基本的には生産の持ち直しは依然として続いておりまして、景気が腰折れしているような状況ではないと私どもは判断しております。今後も、薄らいできてはおりますけれども、サプライチェーンの立て直しによる押し上げ効果が続くことや、また復興需要から公共投資の動きが底堅くなってきておりますことなどを背景といたしまして、景気の持ち直し傾向は続くというふうに期待しております。
 しかし、今、御指摘もございましたように、景気が下振れするさまざまなリスクが存在している。そうしたことから、常に私ども、その時々の景気の動向には十分留意しているわけでございまして、そうした留意の中で、その時点での景気の状況判断をさせていただいているということでございます。
(問)国家戦略会議についてですが、重要政策の司令塔として取りまとめの役割を担うとのことですが、TPPを初めとした経済連携については経済連携に関する閣僚会議が扱い、社会保障・税一体改革も国家戦略会議は取り扱わない方向のようですか、そうなると、重要政策といっても何が当てはまるのか、どういうことを具体的にする会議なのかというのは、まだ幾分、不透明かと思うのですが、現下で重要政策とされている課題が、今ちょっと外れている印象があるのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
(答)取り扱わないなどという話は、一言もした覚えはないわけでございますが、まずはこの年内に策定する日本再生の基本戦略について議論し、その中で、必要に応じて平成24年度予算の骨格や、その他の重要政策課題についても検討してまいりたいと思っています。当然、その中では、経済連携や、社会保障や税の一体改革も議論に上がってくると考えております。
(問)月例経済報告ですけれども、3次補正が、そもそもは9月ぐらいに本格的なものをやると言ったのが、11月以降にずれ込んでいますけれども、こうした3次補正の遅れが、現時点での下方修正に響いているということはないのでしょうか。
(答)私どもは、この月例経済報告において、さまざまな指標をもとに、その時点での経済状況について判断しておるわけでございます。今お話のありました3次補正等につきましては、私どもも一日も早く実現できるよう、鋭意努力しているところでございますので、そうした政策努力をこれからも行っていくことによって、今の景気を下支えしてまいりたいと思っております。
(問)国家戦略会議ですけれども、総理は「産官学の英知を集めた司令塔に」ということをおっしゃっていましたが、2年前に政権交代したとき、国家戦略室を似たような位置づけで設置したと思うのですが、結局、その国家戦略室はどうだったのか、今回、なぜこの新しい会議をつくることになったのか、もう一度、整理をお願いしたいのですが。
(答)国家戦略室においても、民間の人たちにも来ていただいて、さまざまな知恵をいただいて、例えば新成長戦略についても、あるいは財政運営戦略についても、私が室長のときにまとめてきたわけであります。
 ただ、当時から、その中身を決めていく過程が不透明ではないか、そういう御指摘をいただいておりました。今回、国家戦略会議を設けることにいたしましたのは、そこでどういう議論が行われて、政策が決まっていったのか、そうしたことを国民の皆様方にもお伝えしていく。もちろん、この戦略会議を回していく事務局の役割の中心は、戦略室が担っているわけでございますから、戦略室の中にある官民の知恵をまさにこうした会議の場も活用して、より練り上げていく。そして、その議論の過程も外の皆様方にわかるような形でお伝えしていく。そういった意味では、戦略室、国家戦略局でやろうとしていたことを、より強化し、より透明性を高めるという位置づけだと考えております。
(問)先ほど閣議決定とおっしゃいましたけれども、法的な位置づけは別にあるのでしょうか。
(答)今のところは、まずは閣議決定を行って、戦略室もまだ、総理決定で置いているわけですから、戦略室の局への格上げなどと一緒に、その法律上の位置づけを行ってまいりたいと思っております。
(問)今日、岩田先生の研究会から報告書が公表されましたけれども、その中でインフレによる財政再建はよろしくないということが書いてありますが、民主党の中の議論では、物価上昇による財政再建ができるから増税は必要でないという意見も多いと思うのですけれども、この点、古川大臣はどのように整理されて、民主党の方に訴えるのでしょうか。
(答)今日の有識者会合のときのあいさつでも申し上げましたが、我々が政策判断をするときに、一つの有識者の皆様方の御意見として参考にさせていただきたいということでございますので、有識者の皆様方の御意見として、今後の政策、議論の中で活かしてまいりたいというふうに思っております。
(問)国家戦略会議の政策決定プロセスの中での位置づけなのですけれども、これまで政策は、党の政調の事前了承を得た上で、最終的には政府・民主三役会議で決定していたと思いますけれども、この戦略会議はどの辺の位置づけになってくるのかという点と、当初、党幹部もメンバーに入る予定だったと思いますけれども、今回メンバーに入らなかった理由は、どういったところにあるのでしょうか。
(答)まず、後のほうから申し上げますと、一つの案として、私はそういうことも考えてはいかがかということを申し上げていたわけであります。議論の中で、これは政府の会議体としていこうということで決まったということでございますので、当初から何かそういうことが決まっていたとか、そういうわけではありません。
 政府と与党との間での政策の決定でありますが、最終的に党でさまざまな議論を行っても、それを政府で決めるということは従来から変わっていないところであります。したがいまして、例えば、これは案件によると思いますけれども、内閣として重要な事項と考えるものについて、政府のほうから党のほうに提案していく。その提案する場に使われることになるかもしれませんし、党からいろいろと議論が出てきたら、そうしたものを受けてまた議論するということもあるかもしれません。
 いずれにいたしましても、この戦略会議の場において、政府として、この内閣として、重要であると総理が判断して、この場で議論してもらいたいと考えた事項について、議論して、そして、政策の方向をリードしていくという役割を担っていくことになるというふうに考えております。
(問)月例経済報告についてお伺いしたいんですけれども、輸出が横ばいになって、生産は持ち直しのテンポが緩やかになっているという話が出てきたかと思います。世界経済の減速の影響が大分出てきていて、半導体とかアジア地域への輸出への影響が出てきていると思うんですけれども、この現況についてどのような認識をお持ちなのかということと、今後どうしていきたいのか、その2点についてお話をお伺いしたいと思います。
(答)海外経済の回復が弱まっている中で、我が国の輸出が足元で、今お話があったように、横ばいになっており、既にその影響が見られているというふうに考えております。また、為替相場は、国内企業の想定為替レートを上回る状況が続いておりますので、こうしたことも企業収益や輸出の下押し圧力になっていると認識をいたしております。
 こうした中で、海外景気がさらに下振れた場合には、我が国の輸出が一層下押しされるほか、金融資本市場への影響も考えられますし、また円高の長期化は、海外への生産シフトを加速させかねないと思っております。そういった意味から、今後とも海外景気の状況や為替レートの動向については、十分注視してまいりたいと考えております。
(問)国家戦略会議についてお伺いしたいんですが、先ほど内外の重要政策の司令塔とおっしゃいましたが、司令塔という言葉ですと、経済財政諮問会議ともイメージがかぶってしまうと思うんですが、既存の諮問会議を活用されなかった理由と、諮問会議と国家戦略会議の違いはどのような点にあるとお考えでしょうか。
(答)もともと国家戦略室を立ち上げるときに、経済財政諮問会議でやっていた話は戦略室において行うということになっていました。今回この国家戦略会議でも戦略室が任務としていた事項については、所掌の範囲内と考えております。
 もともと国家戦略室をつくるときに、戦略室が経済財政諮問会議の代わりをするということで諮問会議を動かしていなかったわけでありますし、政治主導法案を出したときには、戦略室を局に格上げするのと同時に、経済財政諮問会議を廃止することを法定をしようとしたわけですから、その延長線上にあると考えていただきたいと思います。
 国家戦略室は、税財政の骨格や経済政策の基本を定めること、それから総理からの具体的な指示事項を担当するということで、これまでも新成長戦略やエネルギー・環境会議の主催など、さまざまな重要課題に取り組んでまいりました。
 今回の流れは、当然そういうものに通じる取組のみならず、国家の内外にわたる重要政策ですから、今までは内政がほとんどでありましたけれども、内政のみならず、内政と外政がリンクするような部分についても、戦略会議のスコープの中に入れていくということになりました。言ってみれば、経済財政諮問会議でやっていたよりも、もっと広い範囲で国家の重要政策について取り扱うことになろうかと考えております。
(問)国家戦略会議について、確認ですけれども、TPPについて議論を行う可能性があるのかどうかが一つと、その場合、既存の閣僚会議でTPPについて話し合っていくということになっていますが、これとの役割分担がどうなっていくのか。それと、3点目、国家戦略会議は各年度の予算編成に影響を与えていくような存在になるのかどうか。
(答)TPPにつきましては、今、TPPだけではなくて、経済連携に関する閣僚会合でも議論をしているところであります。ですから、TPPはそちらで議論をしていく。その議論の推移を見ながら、国家戦略会議は現実に第1回目がどのタイミングでスタートになるかは、まだこれから日程調整をしていかなければいけないわけでありますから、その調整の中で決まってくる。国家戦略会議の議論がスタートした段階で、TPPの議論がどうなっているかを踏まえて考えていくことになります。ですから、今の段階で否定をしているわけでもありませんし、またどういう形でこれが議論に上ってくるかということも、既にこちらのほうは議論が進んでいるわけでありますから、その状況がはっきりしなければ、その時点での国家戦略会議との関係がはっきりしてこなければ、今の時点ではどういう形で取り上げるかということを申し上げる段階にはないと思っております。
 国家戦略室においても、従来から予算の基本方針等を示すということでやってまいりました。そういった意味では、先ほどから繰り返し申し上げておりますように、国家戦略室がやっていたことについては、当然、国家戦略会議で担当する、予算についても戦略会議においても議論していくということであります。
(問)今回の国家戦略会議の立ち上げの前提として、政府内にある各種会議の統廃合を検討したいということを常々おっしゃっていましたが、現時点で国家戦略会議の発足に伴って、統合並びに廃止が決まっている会議体がございましたら、教えてください。
(答)1回目を開会するときまでには、整理をして御報告をさせていただきたいと思っております。
(問)もう1点、お願いします。経済情勢に関連してですが、今回4月以来の下方修正ということになりましたけれども、先ほどの大臣の発言で、腰折れはしていないということでしたが、8月に内閣府で示した経済見通しの成長率予想を変えるような状況には、今の時点ではなっていないという御認識でしょうか。
(答)現時点では考えておりません。
(問)外政についてですけれども、広い意味では食料、エネルギー、TPPなども含まれると思いますけれども、例えばNSCみたいな国家安全保障の分野も国家戦略会議がかかわるテーマとして取り上げられるのかについてお願いします。
(答)余り何でもかんでもということではないとは思っておりますが、先ほどから申し上げておりますように、なかなか内政か外政かはっきり区別ができないものがあります。そういう内政・外政一体的なもの、例えば経済連携のようなものは国内の問題と対外的な問題を一体的にやらなければいけない部分があります。そういうリンケージしているものを中心に、ここでは取り上げていくことになろうかと考えております。
(問)国家戦略会議についてですが、民間委員、メンバーというのは、大体どのぐらいの人数を考えていらっしゃるのかというのと、あと一部報道でメンバーに緒方貞子さん、岩田一政さんという名前が挙がっているんですけれども、検討に入っているのかどうかお伺いします。
(答)人数については、議長である総理を除いては、なるだけバランスのとれた形にしてまいりたいと思っております。民間の方々については、まさに先ほど総理から一任をいただいて、総理の御指示のもと、これから声かけをするところでございますので、決まりましたら、またお伝えをさせていただきたいと思っております。

(以上)