荒井内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成22年7月21日

(平成22年7月21日(水) 15:20~15:31  於:合同庁舎第4号館6階642号室)

1.発言要旨

 私のほうから、次のような発言をいたしました。
 景気の判断基準、基調判断については「着実に持ち直してきており、自律的回復への基盤が整いつつあるが、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある」と、先月と同様の判断をいたしております。これは、企業収益が改善し、雇用、所得環境が安定的に推移する中で、国内民間需要に底堅さが出てきていること、他方、依然として所得面と支出面の好循環という意味での自律的な景気回復には至っておらず、雇用の厳しさにあらわれているように景気の水準は依然低いといった、これまでの状況が大きく変わってはいないということを踏まえたものです。
 先行きにつきましては、当面、雇用情勢に厳しさが残るものの、海外経済の改善や緊急経済対策を始めとする政策の効果などを背景に、企業収益の改善が続く中で景気が自律的な回復へ向かうことが期待されています。
 一方、アメリカ、欧州を中心とした海外景気の下振れ懸念、金融資本市場の変動やデフレの影響など景気を下押しするリスクに留意する必要があります。また、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要です。
 政府といたしましては、「新成長戦略」に基づき、日本経済を本格的な回復軌道に乗せるとともに、デフレを終結させるよう政策運営を行ってまいります。政府はデフレからの脱却を喫緊の課題と位置づけ、日本銀行と一体となって、強力かつ総合的な政策努力を行いますという発言をいたしまして、この後、齋藤統括官のほうから、今の世界の経済の指標等について、30分ほど詳しく説明をいたしました。その後、閣僚間で意見交換を行いました。意見交換の中身については、後で津村政務官が報告すると思います。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)民間設備投資とか、それから機械受注、それから個人消費等々、4、5月に指標として悪くなっているものがあるのですが、政務官の説明だと「踊り場入りの可能性もあるんじゃないか」というような言い方をされているんですけれども、大臣の見解はどうでしょうか。
(答)5月の数字ではあまりよくないものが多いんですけれども、ただ、3カ月というタームで平均して見てみますと、輸出も生産も消費もプラスなんですよね。5月だけが、ちょっとそういう数字なのかなという気もいたします。
 踊り場入りリスクということでは、私はないんではないかと、一時的な足踏み状態となっているというふうには思われますけれども、「踊り場」というような状況ではないというふうに思われます。
 ただ、海外の景気の下振れリスクが顕在化した場合など、これからのアメリカあるいはヨーロッパの経済状況によっては、踊り場入りの可能性は依然残っているので、注意は必要だというふうに思っています。
(問)そうすると、メーンシナリオは変わらないんだけれども、下振れ要因があると。
 今の説明の中で、もう一つは海外の話がありました。海外ですとアメリカ、特に今回は「アメリカ」という言葉が入りまして、アメリカの下振れ懸念、それからもう一つ、中国の不動産価格下落等々の指摘もあるようですが、この辺の下振れリスクはどの程度あるのかというのをもう一度詳しく御説明いただけますでしょうか。
(答)世界経済全体が景気後退に陥るリスクというのは決して低くないというか、少し心配なところもあります。だけれども、全体としては中国やインドのアジアなどを中心とする新興国が中心の景気拡大局面というのは続いていますので、私は世界全体としても緩やかな回復が続くだろうというふうに思っています。
 ただし、ヨーロッパが、この間のサミットでもヨーロッパの各リーダーから意見表示がありましたけれども、回復が見込めない中で財政再建を進めていくということ、それからアメリカの景気回復が緩やかな中で、景気刺激策の効果が本年秋以降、弱まってくるということが見込まれています。そのほかにも、ヨーロッパの金融システムの健全性に対する懸念というものも出ています。
 こういう状況で、アメリカにおいても消費者、企業の景況感を示す指標が低下しているなどの状況があって、景気が世界的に停滞するおそれがあるのではないかという懸念は事実だと思います。したがって、今後、世界経済の動向には十分、さまざまな要素、アジアを中心とする新興国、それからヨーロッパ、アメリカなどの下振れ要因を抱えている国々とか、それらが複雑に絡み合って世界経済を構成していくものだと思いますので、注意深くその動向を見ていく必要があるというふうに思っています。
(問)今回、自動車が内外でマイナスになっているんですけれども、今まで景気回復への道筋として、いつも牽引役として自動車とエコポイントという、輸出とエコ関連の経済対策ということが挙げられてきた中で、自動車の補助が9月末で終わりますので、納車してから申請ということになると、既にもう駆け込み需要も終わりつつあるような感じなんですが、そういった中で今後、自動車のそういった補助とかが終わってしまう中で、個人消費ですとか景気の牽引役としての、政府としての決め手となるものというのは、どんなものがありますでしょうか。
(答)確かに、現時点での景気が下振れする要因としては、自動車の輸出の部分と、それから国内的には建設業の減退というのが大きいんですけれども、それ以外はおおむねいい方向に動いている数字が出ています。例えば民間住宅でありますとか、それ以外の民間需要についても、先行きはそんなに悲観するような状況ではないのではないかと。
 自動車については、確かにエコポイントが終了するということから、その見通しというか見込みがなきにしもあらずなんですけれども、ただ、そこのところは何ともまだ見通せないというのが実態ではないかなと、個人消費全体は回復基調にあるというふうに見ております。
(問)今まで「エコポイント」という政策が、一つ力強い存在としてわかりやすかったんですけれども、今後、政府としてはこういう政策がありますよと、新成長戦略だとあまりにもいっぱいあり過ぎるので、この政策で引っ張っていけるというような決め手はありますでしょうか。
(答)今後、もう少し経済全体を見て、自動車の影響なんかそうなんですけれども、家電だとか、あるいは住宅だとか、それぞれエコポイントを景気刺激策として行ったわけですよね。それがある限界というか、ここでやめますよというところに今来つつあるわけで、その影響というのは冷静に分析してみて、景気判断と同時に、今後景気刺激策をもう一度やるのかどうかということも含めて判断していきたいというふうに思っています。
 自動車ですとか、そういう減退傾向のところもあるんだけれども、全般としては、個人消費の持ち直しとか、あるいは設備投資も持ち直しに転ずるかどうかというような状況のところですので、そのあたりは冷静に注視していきたいというふうに思っています。
(問)以前、G20とかでは財政健全化は世界的に合意がなくて、今もシーリングで予算削減をどうするかという議論がなされた一方で米国の景気が厳しく、また先般、大臣も指摘していた地方経済はまだまだ難しさがあると。そういう非常にどっちに振れていいのか、なかなか難しい中で、今後経済運営や出口の議論をどのようにしていきますでしょうか。
(答)そうですね、ちょうど今一番経済政策というか、その難しいところに来ているんだろうというふうに思いますね。特に、地方経済の疲弊度を私は大変心配しておりまして、これは地域ごとにそれぞれきめ細かい地域経済政策というのが、これは地方自治体が大きな役割を担うわけですけれども、そこと、ある意味では協力関係をつくりながら地方経済を支えていくという、そういうことをやっていかないといけないだろうなというふうには思っています。

(以上)