仙谷大臣記者会見要旨 平成21年10月9日

(平成21年10月9日(金) 10:39~10:58  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。  今日の閣議は、地方分権推進委員会の第3次勧告が出されたと。これをよく分析検討して、進めるべきものはスピードアップを図って進めるべきであると、こういう閣僚懇での原口大臣のお話があった程度で、皆さん方に御報告すべきものはほとんどなかったと、こんな感じでございます。
 御質問があればどうぞ。

2.質疑応答

(問)補正予算の見直し、現在、副大臣レベルで精力的に協議していると思うんですが、今日までの手応えと、あと閣議決定はいつごろになりそうかという見通しというのを教えていただけますでしょうか。
(答)後者のほうは、まだ私にはめどがついておりません。
 それから、手応えは、先般も記者会見で申し上げたとおり、ある意味で2兆5,000億円出てきたこと自身が日本の分担管理が一つの原則になっている内閣制度の中では、ある意味では革命的というか、そういう状況だと思っておりますので、十二分に手応えを感じておりますが、今の内閣に課せられた使命というのは、それを超えてなお、21世紀の知識経済に資するような資源配分を政府が、特に中央政府が断行できるかということだと思っておりますので、手応えは十分感じておりますけれども、まだまだもっともっと、私どものほうで今申し上げたような観点から、施策が来年度予算からできるように、そのための準備作業だと思ってやっておりますので、そういう意味では、総理もおっしゃっておりますように、より一段、二段の御努力をいただきたいと、こういうことだと思います。
(問)今のに関連して、今日、先日古川副大臣から今日までに各省で示したものを見直して持ってくるようにということだったと思うんですが、その結果については、今日公表されるお考えがあるのかというのが1点と、15日が来年度の当初予算のほうの締め切り日となっていますけれども、それまでに何らかこの補正の話については、結論を出すというお考えでよろしいですか。
(答)各省各大臣からも、実質的には概算要求は、補正の見直しを踏まえた上でやりたいという要望も、これは事実上の話でありますけれども、あるんですね。実質的な問題としては、そういうお話もある種合理的なところがあるなというふうに思っておりますので、今日の多分夜までに集約されると思いますので、それを丸々皆さん方に発表するというところにはまいらないと。やっぱりこちらのほうで精査をして、そして先だって発表申し上げたような格好で発表するか、さらに副大臣レベルなのか、あるいは大臣レベルなのか、この交渉的なことを、折衝的なことを始めなければならないのか、そこで判断をさせていただきたいと思っております。
(問)話題は変わるんですけれども、一昨日7日に、民主党の小沢幹事長が記者会見で、国会改革の一環として、内閣法制局長官の政府答弁、関連を含めて国会で認めないというような方針が示されましたけれども、内閣法制局長官の国会答弁に関して、禁止ということに関しては大臣いかがお考えでしょうか。
(答)「禁止」という言葉は、なかなかきついなと思いますけども、憲法調査会で諸外国を歩いて見て、憲法裁判所とか、フランスは憲法院という制度ですけども、憲法解釈そのものは、やっぱり非常に政治的色彩を帯びるのが当たり前だという、このコモンセンスというか、常識を日本人が持てるかどうかだということをつくづく私は今の段階でも考えております。
 つまり、反対から言うと、憲法解釈なり法律解釈というのが、政治的な判断とは別に、一定の絶対的真理があるかのような理解をもって、戦後、日本は特に神学論争と言われるような論争が続けられてきたと。私は、それほどまともな法律家ではあったと思いませんけれども、あんまり法律解釈論争を抽象化して、そこに絶対的な真理があるかのように扱うのは間違っていると。やっぱり憲法解釈も時代ととともに変わらざるを得ないところというのもあると。あるいは、社会の構造転換とともに変わらざるを得ないところもあると。あるいは、ゾレンの問題として、変えるべきところもあるんだろうと、これが一般原則だと思っています。
 解釈論で変えられないとすれば、それは憲法の文言を変えていくということが自然な姿であります。それはもう皆さん方も御承知のように、EUという統合体ができて、ある種のEUガバナンスができた瞬間に、各国憲法を変えざるを得なかったと。したがって、ヨーロッパ諸国は、多かれ少なかれ憲法条項に手をつけて、少なくともガバナンス問題、つまり国家主権の問題というのを変えたわけですね。
 日本は、やっぱり金科玉条の憲法解釈論があるというドグマがあるものだから、なかなか変えられないと。メディアの方々の憲法論争というものもどうもそちらに引っ張られておるような気がして、これはある種憲法をめぐる常識論というか、何かそれが徐々にか、あるいは論理的に、急激にかはともかくとして、変えなければいけないと私は思っています。したがって、小沢幹事長のおっしゃる、あたかも内閣法制局が憲法解釈権について最終解釈権を持つかのような、あるいはそのように見える振る舞い、あるいはそのように扱うメディアと憲法学会の動向に対して、ちょっと違うんじゃないかというお考えと私は割と軌を一にしているというか、ほとんど同じ考え方だなと思っておりまして、その一つのやり方として、要するに内閣法制局ではなくて、そのときは官房長官なりが憲法解釈論を政治家として、現時点でのこの条項の憲法解釈論は我々はこう考えておって、その具体化がこういう法体系になっておって、運用がこうなるという話は、それは僕はやっぱり政治家のほうが責任を持ってやるべきなんだろうと思っています。
 ただ、日本の場合にそのことが抽象的レベルというか、作られた法律とか、運用がそのもの自身を異議を申し立てて争えるという、この構造がありませんね。諸外国ですと憲法裁判所、ヨーロッパは特に憲法裁判所という格好になるわけでありますが、だからその仕組みをどう作るのかと。つまり、内閣法制局が国会で話して、それでおしまいということではなくて、その解釈論の持つ意味を、国民がいい思いをしたくて、あるいは自治体がいい思いをしたくて、違うぞと、それはと。ということは、どこかで決着をつけなければいけません。それも、決着をつけること自身も、非常に本来は政治的な色彩を、あるいは時代的な色彩を帯びると思いますけども、それはそれで私はそれこそが政治だし、国民の主権行使の問題で、そういう構造を早く作らないと、要するにそのときの政権政党のフィードバックの可能性のない、ある種独りよがり、独善的なことになるおそれもあるなと。
 そこのところを気をつけなきゃいけませんが、しかし内閣法制局が最終的な解釈権を持つかのような取り扱われ方というと、特別内閣法制局だけが悪い話ではなくて、戦後、60数年培ってきた、特に憲法9条をめぐる解釈論が膨大に積み上げられてきたことのプラスの面とマイナスの面があると思いますが、僕は、一般的な憲法解釈論というか、憲法解釈とは何かということから言えば、小沢幹事長とほとんど同じ考え方です。
(問)補正の話に戻って恐縮ですけれども、7.1兆円の予算が来年度、子育て手当など必要だということをマニフェストで掲げてらっしゃって、まずここでどのくらいを確保できればいいと考えてらっしゃるのかということが一つと、あと概算要求ですけれども、先日、昨年度よりも多くならないように各省にお願いしていらっしゃると思いますが、厚生労働省などはやはり子ども手当などで昨年度よりも多く要求がなることが予想されますけれども、そういうことの対応は改めてどうでしょうか。
(答)現実的には、来年度の7.1兆円に資するために、補正予算の中から幾ら執行停止等々で持ってこれるかと。これは現実のプラス、マイナスの話だと思いますが、我々がやろうとしているコンセプトは、先ほどから申し上げたように、やっぱりあくまでも、コンクリートから人へという、この我々のマニフェストに書いた基本的なコンセプトに従う予算編成をやると。だから、補正予算そのものをとってみても、そういう観点からの検討が必要だと。
 この間、ちょっと感じてきたのは、やっぱりコンクリートから人へという、つまりハードからソフトに予算を振り替えたときも、どうもソフトのほうもモラルハザードを、壮大なモラルハザードを生む可能性があるなと。ハードのほうはハードのほうで皆さん方もお気づきのように、公共事業費はとりわけ当初の予定から倍々ゲームになって増えていくとかですね、そういう無駄とか、あるいはよく指摘されているように、一つの工事単位で見ても、民間でやればこれの半分でできるみたいな話というのは、ごろごろ転がっておるわけですね。
 ここは、そういうハードはハードでのモラルハザードを生んできて、その反省がやっぱり一つ事業見直しであったり、あるいは査定をきちっとやって縮減できるものと。事業自体を行うにしても、ちゃんとこのぐらいできるんではないかという話もあるのかなと思います。
 それから、ソフトのほうは、実際問題として、システムを作り、運営されたシステムが非常に効率的、効果的で、あるいは顧客満足度が、ということは国民の満足度が高いシステムが開発されて動いているのかというのは、実は見えるようで見えないというか、空気のような存在だと言えばそうでありますから、ここはまたここでモラルハザードを生む余地というのは物すごくあると。
 それは、多分、私は上から管理して締めつけて、やればできるという話でもないと、この間の見てきたことというか、経験で思うんですね。それはモラルハザードを生まないで効率的に、そのサービスを国民が受けることによって、あるいはそこに自分が参加することによって得られる充実感みたいなものが、満足度を高める問題だと思いますので、これは我が日本のガバナンスの最大の課題になってくるだろうと。それに資するような予算の使われ方という、その方向を目指したものでないと、ただ金を丸投げして、さあ好き勝手に使えみたいな話も、ちょっと警戒的に考えなきゃいかんなと、最近、そう思い出しまして、そういう目でこの補正の問題も概算要求の問題も見てみたいなと。
 いずれにしても、ここまでの下からの積み上げ方式というのに限界があることは間違いないんで、政治主導で全体最適から見れば、優先度、プライオリティーをどうつけるのかということは政治がやるべきだということになって、今やっているわけですね。
 ただ、その場合でも、なかなかモラルハザードをどう防止するのかというのは、まだ最も有効な手段を見出し得てないと。そして、またそれは我々自身が上からやっただけでできる話ではなくて、やっぱり自治体なり、あるいはエージェンシーでやるとすれば、エージェンシーの中に国民によく見えていることと、それから国民の、タックスペイヤーの御意見がよく反映される仕組みというのは、人事と、それから事務執行のやり方そのものに反映していく、このことをやっぱり今実験的にでも始めるべきだと、こんなことを感じておりまして、だから性急に、あなたがおっしゃったように、7−x=yという、そのまま頭の中に目標値みたいなものがないわけじゃないけれども、余り数字自身に私はこだわってないと。質的な意味に少々力点を置いて考えたいなと思っています。
(問)スケジュール感を教えていただきたいんですけれども、先ほどのことで、今夜中に折衝的なこととおっしゃったんですけれども、実質的な額などの公表は来週になるんでしょうか。来週とすると、例えば来週のどのぐらいの段階なのかということと、あとまた場合によっては、もう一度精査し直すように仙谷大臣のほうから指示されることも考えられるんでしょうか。
(答)次はより見直しの指示というよりも、もう具体的に厳しい折衝が副大臣間で行われることになるのか、あるいは大臣レベルになるのかということだと思います。
(問)具体的な公表の時期は。
(答)それは、やってみないとわからない。ただ、先ほど申し上げたように、概算要求の締め切りをしておりますから、各省各大臣の御要望というか、希望には応えたいなとは思っていますけども、確約はできないと、こう思います。

(以上)