菅大臣記者会見要旨 平成22年4月16日

(平成22年4月16日(金) 18:16~18:36  於:合同庁舎4号館4階408号室)

1.発言要旨

 先ほど月例経済報告等に関する関係閣僚会議が開催されましたので、その概要を御報告いたします。

 景気の基調判断につきましては、「着実に持ち直してきているが、なお自律性は弱く、失業率が高水準にあるなど厳しい状況にある」と、先月と同様の判断をいたしております。これは企業収益が改善し、雇用・所得環境の悪化に歯止めがかかりつつあるなかで、設備投資が下げ止まりつつあり、個人消費の持ち直しが続いていること、他方、こうした景気の持ち直しは依然外需や経済対策に牽引されたもので、自律的な回復には至っておらず、雇用の厳しさに表れているように、景気の水準は依然低い、といったこれまでの状況に基本的な変化がないことを踏まえたものです。

 先行きにつきましては、当面、雇用情勢に厳しさが残るものの、企業収益の改善が続くなかで、海外経済の改善や緊急経済対策を始めとする政策の効果などを背景に、景気の持ち直し傾向が続くことが期待されます。一方、海外景気の下振れ懸念、デフレの影響など、景気を下押しするリスクに留意する必要があります。また、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることも注意が必要だと考えております。

 政府としては、「明日の安心と成長のための緊急経済対策」を推進するとともに、今般成立した平成22年度予算を着実に執行してまいりたいと考えております。政府は、日銀と一体となって、強力かつ総合的な取り組みを行い、デフレの克服、景気回復を確実なものとしていくよう政策努力を重ねていきます。

 これと統括官が説明をし、その後、日銀総裁からも現在の経済に対する見通しが述べられ、何人かの方の質問等もありましたが、基本的にはこの月例経済の報告を了承する形で終わりました。

 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)今回、指標をいろいろ見ていますと、日銀の短観が改善したり、だいぶ景況感が改善してきているような中で、それでもまだ上方修正をせずに基調判断を据え置いているという、今回の据え置きになった理由というのを教えていただけますでしょうか。
(答)これは若干両方の数字が出ていることは御存じかと思います。今言われたように、日銀短観や景気ウォッチャーなどの指標は、景気は着実に持ち直しているということを裏付けることになっておりますが、一部輸出数量や鉱工業生産、消費総合指数などの指数を単月で見ると、一部弱い動きが見られております。ただ、これは数カ月の単位で均して見ると、持ち直しているという基調が続いていると。若干両面あったので、トータルしたら変えることはなくて、据え置いたことが適当だろうと、そういう判断です。
(問)もう1点伺いますが、今後基調判断を上方修正する際には、どういった条件が整うと上方修正ができるんだというふうに、今時点ではお考えでしょうか。
(答)ずっと言い続けてきていることは、やはり自律的な成長と言いましょうか、回復と言いましょうか、そういうところを注目していって、今回も「なお自律性は弱く」という表現が残ったわけです。ですから、外需、さらには政策的な効果に加えて、まさに自律的な国内の消費、さらにはいわゆる設備投資などが、下げ止まりから明らかに上向いてくるといったようなことになってくれば、当然自律的ということに表現を変えることも可能かと思っております。そんなところでしょうか。
(問)2点お伺いしたいんですけれども、1点は今回公共投資の部分の判断について下方修正をされているかと思いますが、鳩山政権では新年度予算でも公共事業について大幅削減をしております。今後の景気に与える影響についてはどのようにお考えか、1点お伺いしたいと思います。
 それと、加えてもう1点が、最近原油を始めとする資源高が結構話題になっているかと思いますが、これについても今後の景気に与える影響については現時点でどのように御判断されているか教えてください。
(答)まず最初の公共事業の削減の影響ですが、3月の公共工事請負金額を見ますと、前年度比で16%減となっております。その内訳を見ると、国が36.9と大幅なマイナスになっています。この背景としては、平成21年度当初予算の前倒し執行の効果が一巡したこと、21年度の第一次補正予算の見直しなどの影響も若干は出ているかと思います。一方で、日銀短観や景気ウォッチャー調査の結果からも確認できるように、国内民間需要の自律的な回復の芽が出つつある状況に変わりはないというように見ておりまして、マクロ的なレベルでの影響ではなくて、限定された中での影響だと思います。
 ただ、御指摘のとおり、公共事業を含めた受注の弱さなどを背景に、建設業の先行き、業況判断が慎重となっていること、3月には建設業で倒産件数が増加したことなどは注意が必要だと思っております。
 転業支援等、例えば林業における作業道の建設などに転業を進めるといったようなことを従来からできるだけ進める方向で、国交省と林野庁等が連携するというようなことも進めておりますが、なかなか一遍に全部の必要なレベルの転業による新たな仕事ということにはならない状況があるということは理解しておりますので、十分注意をしておきたいと、こう思っております。
 資源高については、企業物価に幾分この資源高が影響はしておりますが、まだその影響は限定的だと思っております。資源高が消費者物価に転嫁されるかどうかについては、現時点ではデフレギャップといいましょうか、需給ギャップが大きいので、一遍にそう大きく転嫁されることは難しいというか、そういう状況かなと思っております。そんな状況でしょうか。
(問)日本経済に関係あるかもしれないのでちょっとお伺いしたいんですけれども、今、中国の人民元の切り上げの話が市場で出ており、あと国際機関も人民元を切り上げるべきだという主張が出ているわけですが、これは切り上げた場合、日本経済に与える影響、及び為替相場に与える影響、大臣はどのように見ているかお伺いしたいんですが。
(答)先だっても中国に行ったときに、この話題について私は多少慎重な物の言い方をいたしました。つまりは賢明な判断をされることを期待するという程度にとどめたところです。基本的には、国々によっていろいろな影響が出てくると思っておりますが、日本の経済にとって、現在、日中間の貿易もそれほど大きなアンバランスが生じているわけではありませんので、それほど日本そのものにとって、今すぐこうしてもらいたい、ああしてもらいたいということではないと思っております。
 ただ、この間中国に行ったときに申し上げたのは、例えばドルをたくさん買った場合に、市中にお金が流れますので、それによってバブルが生じて、それが膨らみすぎて、そのバブルが崩壊したような場合には、逆に中国自身の経済にとって余り好ましいことではないということについては、我が国の経験を含めて、少し、アドバイスになったかどうかわかりませんが、申し上げたところです。そういったところです。
(問)2点お伺いしたいと思います。1点目は金融政策についてなんですけれども、日銀の政策について表現に少し厚みが出ていますが、経済財政大臣として、現在の金融政策についてどのようにスタンスを持っていらっしゃいますでしょうか。また、定期協議が先週ありましたが、一方で決定会合には政務三役が出ておりませんが、今後どのような対応をされますでしょうか。
 2点目は、景気が徐々に明るくなる中で、景気の循環からより経済の構造、日本経済の構造をどう変えるのかというふうに議論のレジームをシフトしていくような雰囲気も出てきたかと思いますが、今後どのような議論をしていきたいとか、そういう考えはありますでしょうか。
(答)最初の日銀の金融政策については、御承知のように、この間いろいろな場面で、もちろん先日のように総理を交えての場面、あるいは今日の月例経済のような場面だけではなくて、いろいろな形で意見交換なり意思疎通をしてきているわけです。
 昨年、例えば12月1日でしたか、経済政策を出して、ドバイショックの直後ですが、日銀が急遽臨時の政策決定会議を開かれて、0.1、3カ月というものを決められたり、その後の幾つかのポイント、ポイントで、いろいろな政策を決めておられると。私はそれをトータルして言えば、今、政府と日銀の間では、大きい流れとしては共通の目標に向かって、お互いに自分たちの手段そのものはそれぞれの判断の中でやっていると、こう思っております。
 もちろんいろいろな意見がさらにあることも承知をしております。さらにあることについても、また必要があれば、それぞれ意見交換するべきだと思いますが、これまでのところは、結果としては比較的意思疎通もよくとれていますし、結果としては今日の状況に至ったということで言えば、つまり全体が改善されてきたということで言えば、結果としてもいい方向に来ているのではないかと、このように思っております。
 それから、景気が少し明るくなってきたので、経済全体に対しての新しいフレームというような趣旨でしょうか。今度、今月の終わりにG7とG20に私も出かけますけれども、ヨーロッパの情勢、先ほどの中国の情勢、アメリカの情勢等々あります。やはり我が国の中で言えば、あるいは国際的に見ても、経済と財政というところが非常に関連をさせながらと言いましょうか、関連をする問題でもありますけれども、重要だなと思っております。つまりは20年間のこの低迷する経済状態、あるいは10年近く続いているデフレ状況、こういうものから脱却する本格的な経済財政戦略を打ち出すことがこれからの最大の課題だと思っております。いろいろな形で表現をしたり、あるいはそのための準備をいたしておりますけれども、中期財政フレームを6月に仙谷大臣のもとで戦略室を中心に出していただくことなども1つの節目にしながら、それに向かって今申し上げたような、単年度の物の考え方を超えて、あるいは3年、5年というものをさらに超えて、なぜ20年間こういう状態が続いているのか、それからどう脱却するのか、こういうものをしっかりと過去の検証を踏まえて打ち出せるような順次準備をしていると、このような状況にあります。
(問)今のお話の関連でお尋ねします。今朝の会見では、財政健全化法のたてつけについておっしゃいました、成長、社会保障、財政のこの3本柱なんですけれども、このうち成長と社会保障について、法案の落とし込むに当たって、どの程度詳しい内容のものにするのか、具体的なイメージがおありだったらお伺いしたいのと、社会保障については制度全体の改革について、あるいは給付と負担のあり方について、これからさらに踏み込んだ議論が必要になってくるかと思うんですけれども、そのあたりの検討の進め方というのはどういうふうにお考えなのか、そのあたりをお聞かせください。
(答)まず、この法案については、適宜総理とも御相談をしておりますが、まだ出すということを決めて作業を進めているわけではありません。可能性があるということの中で作業を進めることについては、総理の了解もいただいておりますが、このことは単に財政とか、単に内閣という段階を超えて、国会という場、あるいは与党のいろいろな議論もありますので、まずはそこはまだ確定的にやるという方針を内閣で決めてということではないことだけはあらかじめ申し上げておきます。
 それで、いわゆる成長と社会保障と財政健全化という形を考えていると申し上げたのは、実は成長も、ある意味では社会保障も、それぞれ土俵はかなりつくっております。成長戦略の肉づけを今、これも国家戦略室が担当部局になって、私と仙谷さんが責任者で進めております。それから、社会保障についても、例えば年金の議論の場も改めてつくりましたし、またマニフェストに関連しての議論も社会保障についてはかなりあります。
 ですから、あらためて新しいことをすべてについて言うというよりも、そういう大きい枠組みの中で、成長、社会保障、そして財政健全化という、そういう大きな枠組みの中でそれぞれを関連させて考えていこうという、そういう位置づけとして、そういったものを入れていったらどうだろうかということで今作業をしております。
 ですから、特別そこで何かを言うというよりも、そういう大きな枠組みで考えようと。そのときに、当然ながら、一方では財政のあり方との関連がありますので、財政の健全化についても、今、中期財政フレームという形で準備を進めていただいていますけれども、こういう部分の議論を内閣なり与党なりが考えてお示しするという形だけでいいのか、国会という場で議論をお互いにする、特に自民党の皆さんは既に財政健全化責任法というのを出されていますので、そういうあり方のほうが場合によっては望ましいのではないかという意味で、しかもそれに対してさらにそのパイを大きくする話はどうなんだとか、いや社会保障はどうなんだという御指摘もありますので、それらも含めて考えていきましょうという、そういう考え方のもとでの法案を今準備していると、こういう状況です。

(以上)