菅大臣記者会見要旨 平成22年1月19日

(平成22年1月19日(火) 11:10~11:34  於:官邸記者会見室)

1.発言要旨

 今日閣議では、私に国際通貨基金総務会総務たる日本政府代表など、国際的な金融機関の政府代表を命ずるという、辞令といいましょうか、そういうものをいただきました。

 今日皆さんのお手元に、私が財務大臣になって最初に指示をしたことを受けての、財務省改革のある意味でのスタートの方向性が出ましたので、それを説明いたしたいと思います。

 確か1月11日だったと思いますが、休日ではありますけれども、政務三役会議を財務省で行う直前に丹呉事務次官を呼んで私の考えを伝えました。この皆さんの資料にも出ていますように、財務省はある意味では霞が関の象徴とも言える役所ですけれども、その役所のビジネスモデルを、中で働いている人にとってももっと働きやすく、そして国民にとっても縦割りとか、あるいは将来の天下りを考えての仕事ではなくて、国民のことを考えての仕事をするという、そういう役所にもっと変えていく。それにはどうすればいいかということを検討することを考えてくれということを指示をいたしました。まさに若い有為な人材が誇りとやる気を持ってまずは財務省の仕事に精励できるような、そういう形をどうすればつくれるかということであります。

 これは私が昨年6月にイギリスに行ったとき、さらにはその前後関係者の話を聞いておりますと、イギリスの財務省では、例えばほとんどのときに夕方6時とか定時になれば退社というんでしょうか、仕事を終えると。しかしだからといって仕事の中身が日本の財務省に比べて決して劣るわけでもないし、テリトリーがそんなに変わっているわけでもない。これは日本の財務省から向こうに行って何年間か仕事をして、会った人もいますし、日本に帰ってから過去の経験者に会ったりした人もありますが、そういう皆さんの話を聞いても口をそろえてそういうふうに言うわけでありまして、そういうことがイギリスで可能なのになぜ日本ではそうなっていないかという、こういう問題意識も含めて指示をいたしました。それに対して事務次官のほうから、先週の段階でもうほぼ中身が来ていたんですけれども、正式な形で今日こういう形の取り組みの方向について、ある意味での報告がありましたので、私のほうでその線に沿って進めてくれということを申し上げました。

 具体的には、事務次官の下に省内の中堅若手を中心とするプロジェクトチームをつくる。そのメンバーは部内の公募、財務省の中でこういう議論をしたいけれども、そういう議論をすることに参加したいという人を公募して、それによってスタートさせるということでございます。そのプロジェクトチームが部内の職員、これには外部からの出向者とか、地方の職員を含む皆さんからの意見聴取をする。それに加えて外部の有識者や、財務省にかつていて今離れている人などからヒアリングをして、多方面の意見を集約して、その上で改革案をまとめて提言をする、こういう考え方になっております。

 主な検討事項としては、これからの役人のあり方といいますか、イギリスを例にとりますと、プロパーのお役人と、いわゆるスペシャルアドバイザーと呼ばれる民間から登用されたいわゆる政治任用スタッフと、そして政治家の大臣、副大臣という3つの構成要素が、それなりの役割をきちんと認識しながらやっているわけですが、日本の場合にはまだスペシャルアドバイザーに当たる者があまりおりません。そういう意味ではイギリスと同じような形ではありませんけれども、いずれにしても政治家と官僚のあり方について、逆に官僚の皆さんの立場から見てどういうあり方が望ましいのかということも含めて検討課題とすることとなっております。

 それに加えて、オープンな人事制度の構築。これは、例えば、すべてがイギリスがいいわけじゃありませんがイギリスを例にとりますと、一つのポストが空いたときには内外に公募をかけて、同じ役所であっても、だまっていて課長から部長に上がるというのではなくて、必ず部長職なり局長職が空いたら手を挙げる。外から手を挙げた人、他の役所から手を挙げた人、あるいは民間から手を挙げた人、内部から手を挙げた人を一定のルールの下に審査をして次を決めていく、こういう形がとられております。また人事評価のあり方も、上役がその査定をするだけではなくて、360度評価という形で、同僚や部下からもどう見られているかということも見た上で評価をする。そういった中身を含めてオープンな人事制度をどうすれば構築できるかを検討してもらいたいと思っています。

 次のページに、働き方の見直し、平日にデートができる勤務形態の確立と、ちょっとおもしろく書いてありますけれども、これは先ほど申し上げたように、日本では何か深夜勤務が、特に国会が始まると当たり前になっているわけですが、なぜそういう形にならざるを得ないのか。これはここには書かれておりませんが、当然国会のあり方にもかかわるというふうに私自身は認識しております。そういうこともある意味では、これまでだと国会ということになると遠慮があっていろいろ言えないところもあるいはあったかもしれませんが、少なくとも今回は私の指示ですので、遠慮なくこういうあり方は何とかならないかということも挙げてもらえればありがたいと思っております。そういう意味では、行政版「カイゼン」運動の推進と、超過勤務が少なくても質の高い行政ができるような取組と、場合によったら勤務形態の柔軟化、これは仕事によりますけれども、必ずしも何時から何時までという固定的な形でなくても、フレックスタイム的なことも可能かもしれませんし、職種によっては在宅で一部勤務することも可能かもしれません。民間では取り入れられていることですが、こういったことも議論してもらいたいと思っています。

 縦割り意識の払拭ということで、これは先ほど言ったことにも重なりますけれども、オープンな人事制度、先ほどのことと、局横断的課題の積極的提言、多岐にわたる国際的課題に対する新たなチームの創設等、縦割りではない物事の考え方、仕事の進め方を考えてもらいたい。

 最後のところに、誇りと安心を持って公務に専念できる環境整備、職種にとらわれない抜擢人事の実施、職員の専門性の向上、定年前後の専門知識の積極的活用。これは民間でもそうですが、今民主党政権は天下りというものは基本的に禁止ということで進めておりますけれども、だからといって50代半ばで仕事をしないで済むということにはなりませんので、やはり元気のいい方は60代、場合によっては70代になっても仕事ができるようなあり方を、これは役所の単位だけでできることかどうかは別として、少なくとも役所の単位の中でも、場合によってはどんどん昇給するのをそのままにして75歳まで仕事をするというのはさすがに難しいかもしれませんが、例えばある段階で仕事の性質を変えて、給料は安くなるけれども、週3日なら3日仕事を続けるような、そういうあり方も実はいろいろな関連のところであるかもしれません。これは天下りという形ではない形での、そういう元気のいい高齢者にも働く機会を提供する。これはある意味で、先日発表した成長戦略の中での、労働力が低下することに対する女性の労働参加と高齢者の労働参加にも資するある意味でのモデルになるようなことも、少なくとも一つの財務省という部門で考えてもらいたい。

 こういうことで、私が指示したものをこういう方針でやりたいということで事務次官のほうから話がありましたので、ぜひ取り組んでくれということを申し上げました。時間的には、今月中にもこのチームを立ち上げていろいろなヒアリング等をやった中で、4月末ぐらいまでには私に対する報告をまとめてくれると。場合によったら3月中ぐらいに中間的な報告もしてくれるということになっております。もちろん財務省の中だけの議論ということについていろいろな見方があると思いますが、私はあえてここはまず財務省の中で働いている人に本音ベースで自分たち自身のこと、あるいはその経験者を含めて意見をまとめてもらう。つまりは霞が関を変えるのには、外からいろいろと天下り禁止とかいわゆる政治主導だとか、そういうことをやることももちろん必要なことはやらなければいけませんが、中で働いている皆さん自身がこう変えることによって縦割りとかそういう意識もなくなるんだという、自分たちの中で変えるという、そのときに本当に変わってくると思っておりますし、財務省が変わることの一つのモデルを示すことができれば霞が関全体を変える大きな一歩になるのではないかと、このように思っているところであります。

 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)今御説明のあった財務省改革についてですけれども、事務次官の下に置かれるということですけれども、この改革の動きにおいて大臣含め政務三役、いわゆる政治家の関与がどのようにされるのかという点をちょっと伺いたいと思います。人選、公募されるということですけれども、この人選とかふるい分けに関与されるんでしょうか。まずそれが1点目です。
 2点目ですけれども、この財務省改革は公務員の働き方ということになりますので、当然今後内閣で進める公務員制度改革にも関係してくると思うんですが、この財務省でまとめられる改革案をどのように活用されるお考えなんでしょうか。それが2点目です。
 最後3点目ですけれども、中堅若手の職員の皆さんが改革案をまとめられるということですが、必ずしも菅大臣が考えておられる公務員のビジネスモデルと違うものが出てくる可能性も当然あるかと思うんですけれども、この職員から上がってきた改革案をどこまで尊重されるお考えなんでしょうか。以上3点お伺いします。
(答)実は若干私の経験を申し上げますと、厚生大臣になった直後に、これは全く制度が違いますけれども、薬害エイズに関する資料を調査するために同様のプロジェクトチームをつくったことがあります。これも多少の経緯はありましたけれども、事務次官の下に正式に大臣としてこの仕事についてくれという辞令を出しまして、確かそのときは13名だったと思いますが、そういう皆さんを決めてそして調査のやり方を決め調査に入ってもらいました。結果としてはそういう調査を始めたことが、その後の進展をみた大きなきっかけになりました。そういう意味で、今回は大きい方針は私のほうから事務次官に指示をし、またそれを受けて今お手元にあるような案が出てきたわけでありまして、そういう意味では、そうしたところで内部でそういうPTをつくってくれということで詰めております。中身についてはもちろん政務三役の会議でも説明を私なり事務次官といいましょうか、事務方からもしてもらいましたが、基本的にこのPTそのものは、ある意味で事務次官の下に置かれるということで、あえて政務三役が直接加わるとか、こいつはいいけどこいつはだめだと言うということはいたしません。逆に言うと、自主的なところから出てくるものが何かということを私は見守っていたいし、ある意味では期待もいたしております。つまりは自分たちを守るためだけの案が出るのか、そうではなくて自分たち自身も脱皮していこうという案が出るのか、私は脱皮したいという案が出てくることを予想もすると同時に期待もいたしております。
 公務員制度の改革という問題との関係で言えば、もちろん中身によっては、大いに参考にすべき、普遍化すべきことは出てくるかと思いますが、今制度的に、公務員制度は主に仙谷さんのところでやっていただくことになっておりますが、今制度的にこのPTとこれを直接つなげるとかということを考えているわけでは全くありません。
 私の期待する、あるいはイメージするものと違うものが出てきた場合はどうするかというふうに言われますけれども、それは出てきたら出てきたでそれをまたしっかり検討してどうするかを考えるしかないと。いずれのものが出てくるかも含めて、いずれにしても、出てきたものを、出てきたからすぐそうなるわけじゃありませんので、出てきたものを具体的に制度に変えていくべきことは変えていきたいし、採用できないことについてはそれは採用しない、そういうことになると思います。
(問)ちょっと話は変わるんですが、岡田外務大臣が大臣命令を出して調べている日米の密約に関してちょっとお伺いしたいんですけれども、密約の中で、沖縄返還に関しては原状回復補償費を日本が肩代わりするという内容が含まれていまして、吉野元局長が裁判で証言されたりはしていますがまだ文書が見つかっていません。これに関して有識者委員会は元大蔵省OBにヒアリングを実施していますが、財務大臣として調査に協力する考えがあるかどうか。関連して、琉球大の教授の調べによると、日本の大蔵省とアメリカの財務省との間で別の密約、返還に関する日本側の負担を実際より水増しするという別の密約があるという指摘もあるんですが、これに関して財務大臣として調査に協力するという意向があるかどうか、この辺についてお伺いします。
(答)この問題、若干の報告を事務方からも受けております。藤井財務大臣の段階でも、協力して調査を進めるようにという指示が出されているというふうに伺っておりますし、私も藤井前大臣同様しっかりと調査をしてくれと。特に私の、あまり過去のことばかり言っても恐縮ですが、厚生大臣時代にもそういう問題が、偶然といいましょうかありましたので、そういうことを考えると、やはりしっかりと取り組んでくれということを言っております。ちょっとその2種類という言い方になるのかどうかそこはよくわかりませんが、かなり国際機関との関係等々があるということでまだ最終的な報告は受けておりませんが、今いろいろとやっているということでありましたので、少なくとも後になって、何かやはり、ないと言ったけれどもまだあったみたいなことがないように徹底的に調査するようにと。大体役所というのは、意図的にシュレッダーにかければ別として、古い書類は大体残っているというのが私の過去の経験でありますので、しっかりと調べてほしいということを私から強く申し上げております。
(問)それは財務大臣になってからその指示をしたという。
(答)もちろんです。つまり財務大臣になってから早い時期に一定の報告がありましたので、その中では藤井前財務大臣も指示をされていたということでありますので、私からも改めて、私としてもしっかりやってくれと強く申し上げました。
(問)日航の経営再建問題について、今日支援機構が支援決定をし、裁判所に会社更生法の申請ということなんですけれども、政府として何かそれを受けて声明をお考えになっているのか、どういう内容で発出するおつもりなのか。
(答)この間いろいろな形で支援機構を一つの軸にした話が進んでおりまして、従来から申し上げているように、私はそういう全体が、合意形成が進むようにということで、中身そのものにはあまり意見を申し上げないで、全体の枠組みが前に進むようにということで、後方支援といいましょうか、そういう形でやってまいりました。今日一定の節目がやってくるというふうに私も承知しております。そのときにはまたその節目にふさわしい形の対応が必要であればきちんと対応したいと。今具体的に何かということについて材料を持っておりませんが、一つの節目でありますから節目として必要なことはきちんと対応したいと思っております。
(問)小沢氏の資金管理団体の問題についてちょっとお伺いします。昨日も与野党で対決ムードが出てきて、今日の代表質問にも影響があるかと思いますが、改めまして、今日予算審議に影響があるかどうかということをお聞きしたいのが1つ。
 あとは今日の閣議あるいは閣僚懇でその話題が出たかということについてお伺いしたいんですけれども。
(答)特に出ておりません。
 それから質疑に影響するかというのは、国会質疑というのは皆さんも御存じのように、こちらからもちろん昨日の財政演説のように提起することもある、あるいは予算案として出すこともありますけれども、審議の中身そのものは野党からの質問を受けるわけですから、そういうことに関連する質疑があるかと言われれば、多分それはあるだろうと。そういう意味では、質疑の中にそういうものが入ってくるという意味で、影響と言えばそれはもちろん、そういう意味での影響は、そういう意味ではあるだろうと。ただ私は、昨日も申し上げましたけれども、今最も重要視される問題は、特に私の立場、財務大臣の立場からすれば、やはり予算であり経済であると思っておりますし、またそのことは日本全体にとっても優先度の非常に高い問題だと思っておりますので、何かそういう影響によって逆に何かこの経済情勢をより悪くするようなことにはならないように、これは与野党を超えてそこはしっかりとそのことを国民の利益を考えてやっていかなければいけないしやってもらえるものと、このように考えております。
(問)関連して、今日中堅ゼネコンが家宅捜索に入るわけです、改めて。国民の目からは、捜査が進展するようにも見えているんですけれども、その点について、閣内、党内で今日議論はなかったというお話ですが、そういうのが話せない雰囲気などがあるんでしょうか。
(答)今あなたから閣内で議論があったかと聞かれたから、特に今日はありませんでしたと事実をお答えしました。それ以上でも以下でもありません。
(問)特にそういう空気があるとか、言えない雰囲気があるとか、そういうわけではないと。
(答)いや、私にはそんな空気は全く感じませんけれども。

(以上)