菅大臣記者会見要旨 平成21年12月25日

(平成21年12月25日(金) 19:42~20:02  於:合同庁舎第4号館2階共用220会議室)

1.発言要旨

 本日の臨時閣議において、「平成22年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」について了解されましたので、その概要を御報告いたします。

 平成21年度の国内総生産の成長率は、実質でマイナス2.6%程度、名目でマイナス4.3%程度と見込んでおります。かなり低い水準であります。これに対して、平成22年度、来年度の国内総生産の実質成長率は、プラス1.4%程度と、3年ぶりのプラス成長が見込まれます。また、名目成長率もプラス0.4%程度と、久しぶりにプラスに転ずるものと見込まれております。

 平成22年度においては、今月8日に閣議決定した「明日の安心と成長のための緊急経済対策」の効果や、世界経済の緩やかな回復が続くと期待されることなどから、我が国経済は緩やかに回復していくと見込まれます。

 一方、そうは言っても、先行きのリスクとしては、雇用情勢の一層の悪化、デフレ圧力の高まりによる需要の低迷、海外景気の下振れ、為替市場の動向など、留意する点がまだまだ多いということも十分考えておかなければなりません。

 政府としては、景気の持ち直しの動きを確かなものにするため、緊急経済対策を着実に実施をしてまいります。また、デフレ克服に向けて、日本銀行と一体となって強力かつ総合的な取り組みを行ってまいります。

 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)2点ほど伺います。1点目ですが、10年度の経済見通しですが、今御説明あったように3年ぶりのプラス成長を見込んでおりますけれども、内容を見ますと、景気対策の効果が非常に大きくて、なかなか自律的な回復とは言えない状況かと思いますが、大臣、来年度の経済の中で、日本経済が自律的な回復に実際乗ってくるのはいつごろからと考えていらっしゃるのか、来年の年央なのか、年後半なのか、どういった姿を描いていらっしゃるかを伺いたいんですけれども。
(答)ここは本当に難しいところだと思いますが、いい要素を言えば、これを自律的と言っていいかどうかは別として、白川総裁も言われていましたけれども、貿易というのは、いわゆる外需だから内需でないんだという言い方は私もちょっと違うと思っておりまして、外需が伸びること、いわゆる貿易が伸びることで、場合によったら輸入も伸びることもありますので、そういう意味を含めて、アジアを中心としたそうした元気を取り戻しているということは、日本の景気回復にも期待を持てるというのが1点であります。
 もう1点は、まさに今冒頭申し上げたように、緊急経済対策、さらには今日閣議決定した来年度の予算、これが、特に来年度の予算は年内編成ということを一部からは危ぶむ声もありましたけれども、25日という、比較的当初から考えていた早いタイミングで決まったと。こういうことも私はプラスに働くのではないかと。
 さらには、この第二次補正、さらに来年度予算の中身が、いつも申し上げていますように、従来型の公共事業でもない、また従来型の単なる個別企業の効率を上げるといったいわゆる小泉・竹中路線でもない、新たな需要を生み出すという、ある意味では、財政出動を一つのレバレッジのような形でより大きな需要につなげていくということに焦点を当てて組んでまいりましたので、私はそれがきちんと効果に現れたときには、自律的景気回復になってくるだろうと、こんなふうに思っておりまして、時期をそれほど明示することはできませんけれども、来年半ば以降にはそういうことが来てもらいたいなと、そういうふうになってもらいたいなと期待をいたします。
(問)消費者物価の予測については来年度もマイナスということで、先日デフレ宣言をして、10年度もずっとデフレが続くという予測になっておりますが、政府としてデフレ克服を目指すということを目標として掲げていますけれども、いつごろのデフレ克服を目指して今後経済財政運営をしていくのか、デフレ克服の時期について、どのような時期をお考えなのか伺いたいんですが。
(答)言うまでもありませんが、先ほど22年度の予想も申し上げましたが、まだ残念ながら22年度もデフレ状況は続くという見通しではありますけれども、少なくとも、名目の成長率がプラスに転じるということは、簡単に言えばGDPの数字が上がるということですし、場合によれば、それに伴って若干の給与も上がるということにつながることも十分考えられるわけです。そういった意味では、そこが一つのターニングポイントになってくれるのではないかと思っております。
 いろいろな数字の中でも、消費者物価の対前年度の比較でのマイナス幅が縮小するという見通しになっております。さらには、日銀との政府が一体となっての強力な取り組み、総合的な取り組みもこの間もやっておりますし、これからも十分そういう取り組みができると思っていますので、そういう意味では、これもいつからというのはなかなか難しいわけですけれども、数年間続くという見通しに対して、私は先ほどの景気と同じで、来年中にはなかなか難しくても、その次ぐらいからは何とかデフレ状態をゼロに近づける、できればプラスに近づけたいですが、そういう見通しを、私なりに見通しないしは期待を持っています。
(問)そうすると、11年度には物価はプラスに持っていきたいと、そういう目標を今のところ持っていらっしゃるという理解でよろしいでしょうか。
(答)まずはゼロぐらいでしょうかね。つまりデフレともインフレとも言えない、まさにデフレゼロに持っていきたいと思います。
(問)GDPのお話が出たので、ちょっと関連で、成長戦略についてなんですが、成長戦略でも、2020年のGDPの目標を設定するやに聞いていますが、その現在の検討状況についてお願いします。
 それからもう1点、全然別なんですが、日本航空の問題で、今日も予算でその政府保証は盛り込まないという決定がされたようなんですけれども、その結果信用不安が高まることに政府としてどう対応するか、政府の役割というものについてちょっと簡潔に説明していただけたらと思います。
(答)成長戦略策定会議がスタートして、この10日間で相当精力的に作業していただいています。それまで既に各省庁、各大臣が準備していたものもすべて一緒に集めていただいて、関係者にも参加していただいて、取りまとめの最終段階に来ているところです。
 その中で、一応2020年を一つの目標というか、10年間でここまで持っていきたいということを目標にしようということは一応決めておりますが、まだ成長率とかGDPをいくらにというところの数字までは固めておりません。というのは、数字を入れた場合に、何かそれが、いろいろな数字が予算要求の材料みたいになりやすいんですけれども、そういうことを考えると、何か少し重くなるんですね。ですから、私は作業している皆さんに、少しこの成長戦略では夢を語ろうじゃないかと。だから、見通しというよりは目標にしていこうじゃないかと、そういうふうに考えておりまして、少なくとも元気が出るような目標を掲げたいなと、こんなふうに思っております。
 JALについては、報道で何か昨日でしたか、一昨日、財務大臣が話をされたというのは聞いておりますけれども、基本的には、国交大臣を中心にして、いろいろな対応を考えられているところで、私も支援機構の所管大臣ということもあって、かかわりは持っておりますけれども、直接今、この問題に何か深い形で意見を申し上げる立場にはないので、コメントは控えさせてもらいます。
(問)来年度の見通しと、それから現在取りまとめ中の成長戦略の議論の進捗状況、これらを総合してお伺いしたいんですけれども、せんだって、有識者との意見交換の中でも、新日鉄の三村会長がおっしゃっていましたが、やはり国内のデフレ等その他の状況を踏まえた場合に、一番懸念されるのが製造業を中心とする企業の海外流出ではないかと思われます。産業の空洞化というのがまさに今重大な懸念材料ではないかと思われますが、そういった中で、新しい需要をつくり出すということでそれが果たして防げるのか、それとも、経済界が要望している法人実効税率の引き下げですとか、あるいは投資減税、研究開発減税の拡充、そういったものもやはり必要になってくるのではないかというふうに思われますけれども、そういった国内で事業をする上でのインフラといいますか、基盤整備についてはどのようにお考えでしょうか。
(答)もう少しいろいろと議論なり、そういう皆さんの意見も聞いてみたいんですけれども、たしか、今日本の中で、第二次産業の占める比率に対して第三次産業の占める比率が非常に高くなってきていると理解しております。そういう中で、空洞化という言葉をよく使うんですけれども、ある意味では、成熟社会に至っている日本の中の狭い意味での内需から、まさにアジアのいろいろな成長ゾーンの中で、マーケットが、需要が広がる中で、そうした高い技術を持った企業が進出していくということは、私は、これまでもかなりそういう形が出ておりまして、ちょっと空洞化ということと海外進出ということが同じことなのか、違うことなのか。一般的に言えば、海外進出をして、大いに日本の企業あるいはそういったものが海外で活躍をして、それがまさに日本の広い意味での需要に跳ね返るというのは好ましいことでもあるわけです。
 ですから、そういった意味で、今申し上げたように、特に新日鉄といった高い技術を持ったところが国内の需要を超えた生産をする上で、日本でつくって輸出するのがいいのか、現地に近いところに工場を建てるのがいいのか、それは個々の企業の判断でもありますけれども、税制とかいろいろな問題はありますけれども、ある意味では、私は日本の発展にもそういう形も寄与する部分もあるのではないかと思っています。
 それはそれとして、税制とか投資減税とか、そういったものについては、よく言われますように、この分野はサプライサイドではもちろんありますけれども、競争力を私は落としていいとは思っておりません。前の竹中さんの議論も、競争力だけで日本がよくなるかという意味で申し上げたんであって、当然ながら、イノベーション、競争力がなければ日本全体が生きていけないわけですから、それはそれとしてしっかりと適正な形をいろいろな皆さんの意見を聞いて考えなければならないと思っています。
(問)先ほどの22年度の予算編成について、感想をちょっとお願いします。
(答)総理からもしっかりとした説明があったと思いますが、私は、2つの意味で非常にいい予算だと思っております。
 1つはタイミングです。やはり9月16日に政権が変わって、10月、11月、12月と、3カ月余りの中で、原理的な変更を含めた予算が組めるかどうか、多分皆さんの中でもいろいろと大丈夫かなというような見方もあったんではないかと思います。しかし、結果として、きちんとした形でこの12月25日という、ある意味ではぎりぎりにならないこの時点でできた。よくスピード感ということを言いますけれども、私は鳩山総理のリーダーシップを示すことにもなりましたし、経済に対するスピード感を示すことにもなったと、これが第1点の非常に大きいところであります。
 第2点、順番は逆だったかもしれませんが、第2点は言うまでもありません。内容が根本的に変わったということです。これはまさに、総理が言われていましたけれども、象徴的に言えば、福祉とか教育といった人への投資というものが大きく伸びて、コンクリートを中心とした公共事業の予算が大きく削られた。これは政権交代なくしてはできないことです。つまり、自由民主党という政党は、土建国家と言われるように、何度も私いろいろな機会に皆さんに言っていますが、まだ80年代までは、60年代、70年代、80年代前半までは、投資的な意味があった公共事業もあったわけですけれども、それ以降は投資的な意味ではなくて、あくまで地方に仕事とお金を持っていくための一種の福祉事業を公共事業の形でやっていたために、膨大な財政赤字を積み上げながら、投資効果は全く生まれなかったということですので、そういう根本的な間違いを見直す、まさに根本的な原理を変える予算が生まれた。これがもう1つ画期的なことだと、こう思っています。

(以上)