菅大臣記者会見要旨 平成21年12月15日

(平成21年12月15日(火) 12:02~12:24  於:官邸記者会見室)

1.発言要旨

 今日は朝からいろいろな会議が立て込んでおります。最初に、基本政策閣僚委員会、さらに予算関係の閣僚委員会、そして閣議と進められました。

 内容は、私に特に関するものについて言えば、もうお手元にいっていると思いますが、「予算編成の基本方針」というものを、その3つの会議で確認し、最終的には閣議決定をいたしました。内容については、お読みいただければわかりますけれども、国債発行については、「約44兆円以内に抑えるものとする」という表現になりました。また、同時に、「特別会計について聖域なき見直しを断行した上で税外収入を確保し、これを最大限活用した予算編成を行う」ということも明記をいたしました。多少の意見交換はありましたが、基本的には基本政策閣僚委員会においても、社民党、国民新党、それぞれの党首、この表現で了解をいただいたところであります。

 それに次いで、私が関与の濃いところでいえば、第1回成長戦略策定会議が開かれました。これもお手元に資料が出ていると思います。総理のほうから1週間ほど前に指示をいただきまして、準備を進めてまいりました。あの場でも、皆様入っておられたので聞かれたと思いますが、年内に骨子をということでありますが、決して今から作業を始めるわけではありません。あの後の会議でも、各大臣のほうから、例えば直嶋さんは、閣僚に指名された段階から1カ月半ほど50人ぐらいの方からヒアリングをしてきたと。アジアの需要を内需化する、温暖化対策をチャンスにする、国民が実感できる成長戦略というものをほぼ取りまとめて、場合によっては経産省としての取りまとめということで発表したいというようなことも考えておられたようであります。また、前原国交大臣も、10月中に成長戦略会議というものを国交省内につくって、外部から、武田薬品の社長の長谷川さんを座長とする13名の会議をやってきたと。6つの項目について、いろいろな議論をしてきたという話もありました。原口大臣のほうからも、地域活性化という観点からの成長戦略を12月中にまとめようということで、この間作業を進めてきたと。等々、各大臣からの話がありまして、そういう意味では、相当程度これまでの蓄積といいましょうか、取り組みがありましたので、それをこの2週間程度で一挙にまとめ上げたい。と当時に、そうした省庁の中での検討を超えて、外の人の話も幾つか聞こうということを申し上げました。あの会でも申し上げたように、民主党に近い関係の人の話ももちろん聞くつもりですが、場合によっては、必ずしも民主党と立場が違う方からもお話を聞いて、参考にさせていきたい。早速、明日は、今の予定では、竹中平蔵慶應大学教授をお招きしてお話を聞くと、そういう予定にいたしております。細かいことは、必要であれば、また事務方にお聞きいただきたいと思います。

 もう1点、サミュエルソン教授が亡くなられました。私も直接の面識はありませんが、最近に至るまで文筆の場でいろいろなコメントをされていたのを、時折目を通して、大変ある意味では参考になったところであります。ちょうど偶然ですが、このサミュエルソン教授というのは、若いころは熱力学の理論を大変学んだと。ここにある新聞に、フランスの科学者、ルシャトリエの熱力学の理論を若い時分に学んだということが書いてありまして、何となくこの記事そのものにはちょっとうれしくなりました。私も学生時代、応用物理という学科で、熱力学というのはなかなかおもしろい学問ですが、ヒートポンプなんていうのは熱力学のカルノーサイクルというものを応用したものなんですけれども、そういう意味では、そういう科学技術を学んだ方が経済学をさらに学んでいくと。私も最近、かなり経済の関係の論文に目を通しておりますが、私の頭にとってわかりやすいのとわかりにくいのとがあるんですけれども、何となくやっぱり理系的な感覚で理解できるものは、それなりに説得力があるんですが、そうでないものの中では、本当にばらばらなものですから、人によって違うという感じで、そういう点では、サミュエルソン教授もそういうバックグラウンドだったのかなと思ったのが1つと、もう1つは、やはり経済に対して、政府の関与と自由経済というもの、市場原理というものと両立させると。ある時点では、政府が財政出動などで関与しなければいけないと同時に、市場原理というものを大事にして、それをどのようにある意味で使っていくのかということを、自信を深めたとここに書いてあるんですが、そういうサミュエルソン教授の考え方とかある種のスタンスは、これからの日本の経済にとっても大変参考になるということを改めて思ったところであります。

 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)天皇陛下と中国の習近平国家副主席の会見問題ですけれども、宮内庁長官が内閣の対応に懸念を示す発言をされました。その発言内容について、副総理御自身の受け止めを伺いたいというのが1点と、加えて、昨日民主党の小沢一郎幹事長が記者会見の中で、その長官の発言について、反対するなら辞表を出してから発言すべきだというふうな主張もされました。それについて、副総理はどのようにお考えになられるでしょうか。
(答)陛下が、かつて手術もされておりますし、また、かなり、70歳を超えられておりますので、普通の社会人でいえば、もうハッピーリタイアという世代にも達しておられます。そういう意味で、陛下の体調なりを気を遣うというのは、一方で宮内庁長官としての仕事の大きな部分であろうと思っております。そのことと、一つの今の憲法制度における物事の決定という問題と、今回の場合少しいろいろと議論になっているわけですが、私は率直に申し上げて、100%こちらで、100%あちらだということではなくて、そこのところをルールをルールとしてしっかり押さえながら、一方で陛下の身近におられる立場から、そうした観点でいろいろ心配をするということと、結局は一つの広い意味でのバランスではないかと、このように思っております。
(問)関連というのか、つけ加えですけれども、長官が、いわゆる行政官というか、官僚の立場で内閣の方針、閣僚の方針をある種批判めいた形で懸念を示したことについて、従来副総理がおっしゃっておられるような政官関係に照らして、抵触するというか、問題視すべきではないかと、こういう認識は特にございませんでしょうか。
(答)ですから、今申し上げたように、片方の立場で、立場というのは単に両者という意味ではなくて、いわゆる今の憲法に基づく内閣と、例えばある役所の事務次官なり、あるいは役人としての長官との関係という一般論で言えば、一般論で一つの判断があるわけですが、一方で、今申し上げたように、陛下のそばにおられる宮内庁長官という立場という、他の行政庁とはやや性格の違うところもありますので、私はそうしたことを含めた、ある意味でのバランスではないかなと思っております。
(問)12月16日で、鳩山内閣ができてからちょうど3カ月、副総理が就任会見でハネムーンとおっしゃいましたが、間もなくハネムーンも終わるところでして、この3カ月を振り返って、戦略室だけでなく、鳩山内閣全体の総括的な評価、あるいは反省点があれば反省、今後に向けてどのようなことをしていきたいか、その辺をお願いします。
(答)まあ、ハネムーンが終わる時点でいいんじゃないですか。
(問)今日出ました予算編成の基本方針について何点か伺いたいんですが、先ほど御説明があった国債の発行枠のところですけれども、この表現ぶりですが、44というところで、なぜ約44というあいまいな表現になっているのか。この表現にした理由をちょっと伺いたいんですが。
(答)私もちょっと何で約がついているのか、文章を一つ一つまではあれしませんでしたが、簡単に言えば、まさに44兆というものが一つの、それ以内で抑えようということじゃないでしょうか。
(問)やっぱり上限という理解でいいんですか。
(答)ここで読んでいただければ、「44兆円以内に抑えるものとする」というのは、44兆円以内と書いてある以上、44兆円以内です。
(問)この(2)の「入るを量りて出ずるを制す」というところで、基本的な方針は入るを量りて出ずるを制すで、足らざるを国債で埋めることから脱却するとして、ただし今年はある程度容認すると。あくまで44兆円というかなり大きな国債の発行というのは、来年度予算編成だけでの特別なというか、特例という認識なんでしょうか。
(答)それは、つまりは前政権の中でもリーマンショック以降、まさに大きな不況、あるいは恐慌にさえ陥りかねない状況が世界を襲ったわけでありますから、何度もこの場でも申し上げましたが、私たちはそういうことに対して財政出動することそのものを否定したことはありません。一次補正についても、規模そのものについてどうこうとは、少なくとも私自身は口にしたことはないはずです。ワイズ・スペンディングかそうでないかという、中身の問題をまさに問題にしてきて、見直しから今の二次補正につながったわけです。
 来年度も、残念ながらまだリーマン・ショックに端を発した、あるはサブプライム端を発した問題は、完全にクリアできていない状況。特に日本のほうが、一時期は程度は軽いと、ハチに刺された程度だと言った前内閣の人もありましたけれども、私はある意味で他の国に比べても日本の状況は、デフレ状況も含めて、なかなかまだ厳しい状況にある、このように見ております。そういった意味では、少なくとも来年度の予算についても、財政によって何とかより効率的な形で、より有効な形で需要を喚起する、あるいは知恵を出すことによって需要を喚起する。そういう姿勢で臨むべきだと思っておりますので、そういう意味では、今言われたように、44兆という国債の発行というのは、ある意味では極めて積極的財政だと、このように思っております。
 ただ、一方で、やはり市場の信認、マーケットの信認という問題がありますので、ぎりぎりこの位のところでおさめることによって、長期金利の上昇を大きな形で招くようなことを避けることができるのではないかと。まさにナロー・パスですから、そういう意味づけでこういった全体の表現になっている。このように理解いただきたいと思います。
(問)子ども手当の財源をめぐって、原口大臣、長妻大臣、福島大臣の調整が続いていると思いますけれども、取りまとめ役の菅副総理として、今後どういった考え方で調整を進めていかれるんでしょうか。
(答)ややにぎやかになっておりますが、ちょっと時期的にいろいろなことがまだ確定、必ずしもこの問題だけではありませんが、確定的になっていないところがありまして、そういう意味で、まとめるときにはなるべく歩調を合わせて、五月雨的ではなくて、マニフェストに関するものについてはできれば、完全な同時かどうかは別としても、ある段階で決着をつけていきたいと思っております。ですから、いろいろな議論があることはもう十分承知をしておりますけれども、最終的な場面でどのような形で決着をつけるか。そのことは、あらかじめ言えば、つく決着もつかないこともありますから、頭の中でいろいろ考えて、というふうにだけ申し上げておきます。
(問)成長戦略会議なんですけれども、今日あいさつの中でもいろいろとおっしゃっていましたけれども、骨子の中身、どういう方向性のものにしたいのか、あと意気込みなどをちょっと教えていただければと思います。
(答)あまり意気込みなどを聞かれると、つい言い過ぎるのであれなんですけれども、どうも私はこの間、いろいろなメディアや、あるいはテレビの出てくる人を見ていると、立場はいろいろなんですね。財政をもっと出動しろと言ってみたり、いやいや金融でやれと言ってみたり、いやいや何とかと言ってみたり。あの場でも申し上げたように、私は過去の16本の政府なりそういうところから出した成長戦略を、まず検証しないでおいて、新たなものをつくっても、私は有効のものにならないと。まして私の立場は、かつての竹中さんがいた立場ですから、100%官僚任せにやったとは申しませんが、少なくともこれまでとはこういう方向で違うんだという方向性を出さない限りは、結局似たようなものが出てきて、同じような失敗をすると思っておりましたから、私はそんなに、個人的には、それこそ焦っていないというのは、別に2年、3年かけていいという意味ではなくて、少なくとも今日が90日目ですけれども、90日間の間にそんなに過去の16本のものを精査して何とかして、新たなものをつくるというのは、私はまだ決して時間が長くかかったというふうには思っておりません。
 ほぼ国家戦略室もスタッフが20人程度そろってきましたし、予算編成についても、もちろんこれからが最後の山場ではありますけれども、基本的に議論する体制が整いつつある中で、先ほど申し上げたように、各省庁はそれぞれ独自で成長戦略をつくっていたわけですから、私はこの最終的な2週間でしっかりした中身が打ち出せると思っております。
 あえて言えば、何が間違っていたのかということをきちっと言えと、そしてその間違っていた部分については、私なりの考え方を強く申し上げております。この場でも申し上げたことがありますけれども、80年代以降の公共事業は、所得の再配分、田舎と都市の再配分にはなったけれども、投資効果はほとんどありませんでした。それから、小泉・竹中路線というのは、1つの会社をリストラによって建て直すことはできたけれども、日本国を建て直すことには、そのルールは、日本国民をリストラできない以上は、そんなことは不可能なわけでありまして、その第1の道と第2の道が私は間違っていると。そこで第3の道にのっとって、いろいろな成長戦略をそこを中心にやってくれということを申し上げているわけです。
 今日も前原大臣が、1つの例ですが、観光ということを非常に強くその場でも言われていました。まさに観光というのは、橋をかけたり、道路をつくったり、トンネルを掘ったりする要素は少ないわけですけれども、場合によっては、2,000万の世界からの観光客が、目標のとおり来るとすれば、非常に大きな経済効果をもたらすわけであります。そういったことを含めて、まさに選択と集中ですから、そういう方向性を持ってこの成長戦略はまとめ上げていきたいと思っていますので、私はいろいろな人が、ただ1点、民主党には成長戦略がないと言えば何か言ったような気持ちになっているというのは、私にはそれなら成功した成長戦略を1本でも持ってきて説明してくれと言いたくなったんですが、あまりこれ以上言うと、挑発に乗ったことになりますので、この程度にしておきます。
 以上です。

(以上)