菅大臣記者会見要旨 平成21年10月27日

(平成21年10月27日(火) 11:55~12:22  於:官邸記者会見室)

1.発言要旨

 それでは、定例会見を始めます。

 昨日、鳩山総理の所信表明演説があったわけですが、私は非常によかったのではないかと思っております。やはり、まずは言葉が非常に平易というか、いわゆる政治家独特の言葉ではなくて、一般の皆さんに普通に聞いてもらえるような言葉であったということと、やはり鳩山総理の人柄、つまりは、あまり大上段には振りかぶらないけれども、非常に芯の強いところのある、そういう人柄もよくあらわれたのではないかと、こんなふうにも思っております。評価も、比較的よかったという、マスコミの評価も、そういうふうに見ておりまして、この国会のスタートとしては、いいスタートが切れたなと、こう思っております。

 今日の閣議で、案件はいろいろありましたが、多少、閣僚懇の中で、従来から行政刷新会議のほうで、無駄の削減ということでスクラップをしているけれども、一方でビルドが必要ではないか、こういう議論が従来からあります。まさに行政刷新に加えて、新たな創造ということだと思っております。

 国家戦略室についても、いろいろな期待をいただいているわけですが、基本的には、行政刷新会議とのある種の役割分担という意味では、そうした新たな創造という分野を国家戦略室が受け持たなければならないと、こう思っております。もちろん今でも個別には雇用の問題、あるいは環境の問題を取り組んでおりますが、もう一つ、そう遠くない時期の問題としては、総理も言われている二次補正から本予算に向かっての、まさに雇用、環境、景気、さらに言えば経済成長、こういう方向性をしっかりと打ち出していきたいと、このように思っております。

 そういった意味で、これまでは一次補正の見直しとか、あるいは本予算に対する概算要求とか、そういうものがやや立て込んでおりましたので、あまり新たな歳出を伴うことについては申し上げないで、歳出を伴わない範囲での雇用対策等を提案してきましたが、二次補正、さらには本予算の中でもどういう問題に重点を置いて、逆に言えば、それ以外のところについてはある程度押さえ込んででも、どの問題に重点を置くか、こういった方向性については、順次、一つの方向性を見定められるような形をとりたいと、このように思っているところです。

 それと今日皆さんのお手元にも出ているかもしれませんが、内閣府の参与のお二人を任命をいたしました。いずれも、いわゆる非常勤という扱いでありますが、お一人は宮崎徹さんという方で、いろいろなシンクタンクでお勤めをされていたり、あるいは現在は帝京平成大学の専任講師という形でも仕事を続けられております。私とは長年の友人でもありまして、特に経済、マクロ経済、そういった面でのアドバイスをいただくにはふさわしい方だということで、大学のほうとの兼任ということになりますので、週3日程度ということになると思いますが、お願いをいたしました。もう一方は、湯浅誠さん、これはもう皆さんもよく御存じの方だと思います。昨年、いわゆる派遣村で、その村長ということで大変注目をされましたが、今回、特に緊急雇用対策本部を立ち上げる中で、現場の目からいろんなことを、これまでも既にいろいろアドバイスをいただいてまいりました。これから年末に向けて、昨年のような派遣村が必要でないように、きちっと国としても、場合によっては自治体にもお願いし、さらには労働組合や企業等々、いろんな社会的な存在の皆さんに協力を要請して、そういう状況をつくりたいと。特に具体的には、緊急雇用対策の中に出ておりますように、ハローワークに自治体の協力を得て、ワンストップでいろいろな人に対応できる、住居のない人、あるいはどうしても生活保護が必要な人等々に対応できるような形をとる、こういうことを具体的な目標として、湯浅さんにはいろいろと現場の状況を把握し、あるいはそれを関係方面にしっかりと伝えて、今申し上げたような方向に持っていくことのお手伝いというよりは、もうちょっと積極的ですが、一員として頑張っていきたいと、この対策本部の一員として頑張っていただきたいと思っております。一応、御本人からは、12月までを一つのめどにして、その後については、また改めて御相談をしたいということを言われておりますが、いずれにしても、まずは年末に向けて頑張っていただきたいと、このように思っています。

 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)2点お願いします。今、御紹介がありました湯浅さんと宮崎さんについて、ちょっと事務的な確認をさせてください。今のお話では肩書きについて、内閣府の参与という言われ方をされましたけれども、これはいわゆる国家戦略室の政策参与ではなくて、内閣府の参与という形で言われたのでしょうか。それと、宮崎さんの任期ですけれども、湯浅さんは一応12月までを一つのめどにということでしたけれども、一方の宮崎さんのほうの任期がどのようになっているか、これがまず最初の1問目です。
 2問目ですけれども、JALの問題についてお伺いいたします。各紙報道で、JAL問題について、企業再生支援機構の活用等がいろいろ報道されておられます。一応経済財政担当相ということで所管大臣になられるかと思うのですが、現状どうなっているかということの御説明をいただきたいということと、あわせて、これは鳩山内閣として、このJAL問題を解決するに当たって、重視しているポイントがどこにあるのか、これは副総理のお立場でお話を伺いたいと思います。
(答)お二人とも内閣府参与という形です。国家戦略室も政策参与という枠組みがあるわけですが、私も、このあたりの実務的な差というのは、いろいろ事務方にお願いをしているんですが、私の理解では、内閣府であるか内閣官房であるかということで、確かにある種の、この社会での形式上の差はあるんだと思いますが、実質的な、こちらだとこれができて、これだとこれができないというような差は、特に聞いておりません。
 宮崎さんについては、経済財政の問題を中心にした相談役ということでありますので、今、内閣府の中にある、その部門の責任者を私が務めている関係で、そういう形でお願いしました。
 また、湯浅さんについては、主に緊急雇用対策本部の中での活動ということで、広い意味ではもちろん、これも国家戦略室にも当然絡んではおりますけれども、ある程度限定的な雇用、貧困という問題の限定的な中でのお手伝いということでありまして、国家戦略室全体を考える立場のスタッフという方、ほかにも順次今決まってきておりますが、ちょっとそういう意味で仕事の種類が違うものですから、内閣府という形が適当だろうということでお願いをしたところであります。
 また、任期については、宮崎さんについては特に決まっておりません。決めておりません。
 それから、JALについては、確かに支援機構の所管大臣という意味では、私が経済財政担当ということで所管をいたしておりまして、せんだってスタートのときも、そういう立場であいさつに出席をしたわけです。ただ、この支援機構の仕組みは、支援するかどうかというのは、まず当事者である、この場合ですと注目されているのはJALですが、当事者であるJAL、あるいはそこに融資をしている政策投資銀行、そういうところからの何らかの申し出があった場合に、かなりいろいろと内容を精査した中で、それを支援するかどうか決めるという仕組みになっておりまして、それを決めるのは担当大臣ではありません。支援機構そのものの中にある、その決定のための委員会がありまして、そこがそうした自らの調査に基づいて自主的に決定する、そういう仕組みになっているわけであります。そういった意味で、この問題について担当大臣という立場は、広い意味ではそのとおりでありますが、今申し上げたように、決定そのものを私がするという立場にはないので、そういう立場も含めて見守っているという状況です。
 副総理としてということでありますが、もちろん鳩山内閣にとって、この問題が始まったのは、もちろん長いJALの歴史、少なくとも前政権以前の長い歴史の中で、こういう状況まで来ているわけでありますけれども、国民の空の足というものを何とか確保しながら、しかし一方では、もし公的な資金が何らかの形で必要になる場合には、それは国民の皆さんが納得していただけるものでなければならないわけでありますから、そういった両面を含めて、しっかり状況を把握して、中心はやはり国土交通大臣だと思いますが、国土交通大臣を中心に、最終的には総理の判断もいただかなきゃいけない場面もあるかもしれないと、このように考えております。
(問)今のJALの問題に関連するんですけれども、政府が公的資金を注入する場合に、JALの企業年金の減額が必要だという見方もあるようですけれども、これについては副総理はどのようにお考えですか。
(答)アメリカのGMの場合も、企業年金の取り扱いが非常に大きな課題であったようですし、日本国内でも既に幾つかの例が、この問題で起きております。本来、年金というのは、老後の大変大きな生活の基礎として期待をし、前提としてかけているわけですから、それが原則的には守られなければならない性格のものだということは、よく承知をいたしております。
 と同時に、守ることがその企業の力でできなくなったときに、それを公的な形で守るということにもしなるとすれば、他の同じような基金や同じような年金に入っておられる多くの国民の皆さんとの公平性ということも当然問題になるわけでありまして、そういう点で、この問題がかなり難しい問題であることは認識をいたしております。また、それに対して、どのような対応の仕方があるかということも幾つか議論が出ている、皆さん方の報道にも出ておりますが、出ていることも承知をしておりますが、今この場で、こういう方向がとるべき方向だというところまで私が申し上げることはまだできないし、またそういう立場にはないと思っております。
(問)北澤防衛大臣が朝のぶら下がりで、海上自衛隊をインド洋の給油活動に送って、期限切れの後にはソマリア沖の海賊対策に転用するのを検討したらどうかという趣旨の御発言をされたんですが、この件についてコメントをいただけますか。
(答)そういう発言があったということは、まだ直接は聞いておりません。その中でコメントと言われても、あまり軽々にコメントすることもできないものですから、よく真意を聞く機会があれば聞いた中で、いろんなことが今並行して動いていますので、よく真意は聞いてみたいなと思っています。
(問)先ほどの冒頭の御発言で、今後、雇用と環境と景気、経済成長の構想を打ち出されるということなのですが、これは具体的にいつごろまでに何を打ち出していかれるのでしょうか。
(答)一つは、二次補正というものを念頭に置きながら、今日も、これは環境の、小沢環境大臣を事務局長のもとで、私も出席しますが、関係の省庁の副大臣に集まっていただいて、25%削減に資する政策課題を出してほしいと。その中には当然ながら、こういう政策をやればソーラーパネルが、もっとたくさん需要が喚起されるだろうとか、いろいろなものが入っております。そういう意味では、二次補正の中にそういうものを盛り込むこともありますので、一つは、既にそういう作業の玉込め的なものは始まっているというか、少なくとも今日から環境に関しては一部始まるという状況です。
 それから、本予算についても、9月の末に一つの方針を閣僚委員会で決めて、15日までに概算要求を出すようにという形をとりましたが、これは1回その方針を出せばそれで終わりという性格のものではなくて、この進展する状況の中で、次の段階、次の段階で基本的な方針を出すことが必要だろうと思っております。まだ日程的に固めたわけではありませんが、少なくともそう遠くない時期に、次の段階として、例えば、同じことですが、雇用と環境といったものを重視した本予算にしてもらいたいといったような趣旨のことを、どのレベルかできちっと方向性を定めて、閣僚委員会などを経て、打ち出す必要があるかなと。日程的にあまり確たることは言えませんが、そんなに先ではないかなと思っています。
(問)二次補正では、今のお話ですと、環境ニューディール的な、そういった、財源を積み増して…という理解でよろしいでしょうか。太陽光のように。
(答)つまり、二次補正という意味はポジティブな意味での、まさにビルドするという意味も、可能性としては入っているということですから、今言われたようなことも可能性としては入るということです。
(問)話は変わりますが、国債の利回り、長期金利が政権発足時に比べるとじりじり上昇しているんですが、これは景気の持ち直しに伴う自然な金利の上昇と見るか、あるいは景気が厳しい中での悪い金利上昇と見るか、お考えを教えてください。
(答)この長期金利の見方については、今まさに質問された方自身が言われたように、よい金利上昇と悪い金利上昇という、そういう色分けがきちっとできるかどうかは別として、見方が大きく2つあると私も理解しております。
 つまりは、アメリカ経済を含めて、世界経済全体がやや持ち直している、あるいはアジアは、特に中国なんかは昨年に負けないぐらいの勢いを取り戻しているということで、そういう全体の世界経済の回復状況の中で、金利が上がってきているという見方もありますし、また一方では、我が国の状況がそこまでない中での財政規律等、大型予算が予想される中で、そういったことについての若干の心配がこういうことにつながっているんではないかと。
 私もいろんな専門家に聞くんですが、なかなかこのマクロ経済というのは、物理学のように、こっちに玉が飛んだら放物線を描いてここに落ちるなんということが、なかなか確定的でないものですから、私にも、どちらということを100%確実に申し上げることはできませんが、私は、今の鳩山政権の財政運営、経済運営は、まだまだ遅いという方もありますけれども、まずは財政の中身を大きく変えようとしていると。そこに対する評価は私はまだ足らないぐらいだと思っています。
 つまりは、かつて小泉さんは、「では民主党にやらせてみればいいじゃないか。やってみたら、どれだけ大変なことになるかということがわかるだろう」と言われていましたが、まさに、その大変なことを今やっている渦中ですから、やっている最中ですから、そういうことを考えていただければ、私はまさに、やらなければいけない財政構造の改革が今進んでいると、そういうふうに考えていただければ、そのことが財政規律があいまいで、それが金利上昇につながっているというふうに私は思いません。
 ですから、あえて言えば、どちらかといえば世界経済全体の回復的な方向を、マーケットがこういう形で判断したんだろうと私は思っています。
(問)先ほどのお言葉の中で、今後の二次補正、本予算に関してのお話の中で経済成長という言葉をお使いになりましたが、今まで選挙戦などでは、自民党側から「民主党のマニフェストには経済成長戦略がない」という批判を浴びてきて、それに対して鳩山総理は、たしか内需拡大政策、子ども手当をやっていくことが成長戦略だというふうにおっしゃったかと思うんですが、こういったこととは別の経済成長戦略を今後つくっていくということをおっしゃっているのかというのが一つ。
 それからもう一つは雇用の関係で、先ほどお話のあった湯浅さんは、先日のテレビで、今回、政府が打ち出した緊急雇用対策については、「10やらなければいけないうちのまだ1ぐらいしかできていない」というふうにおっしゃっていて、予算措置を伴う雇用対策の必要性を述べられていました。これを二次補正等を使って強力にやっていくということを先ほどのお言葉はおっしゃっていたのかどうか、その確認を。
(答)よく成長戦略という言葉を使われますけれども、まさに成長戦略の中には、内需の拡大、消費の拡大ということは、当然大きな要素でありますから、そのことについて、マニフェストに盛り込まれたことを実行することで、そういう方向につながっていくというふうに思っていることは、従来から変わりません。
 あえて言えば、それに加えて新たに、25%削減という方向性を就任早々、鳩山総理が国際的に意見表明をされたわけでありまして、それもかつての政権は、そんなことをやったら逆に景気にマイナスになると、失業がふえて国民負担がふえるんだという言い方をしていましたが、私たちはそうは思っていない。これを進めることは、逆に日本の技術革新を踏まえて成長につながってくると、こう思っておりますので、そういうこともある意味では加わった言葉だと理解をしていただいて結構だと思います。
 それから、湯浅さんのテレビ番組は、私は残念ながら見ておりませんが、いろいろな仕組みを工夫して今回の案をつくったわけで、ただそれは10月、今始まった国会では補正予算を出さないという前提でつくりました。それを二次補正というものを考える段階で、必要であれば、雇用をさらに守り、さらに拡大していくために必要であれば、そこに財政的な支えが必要であると考えれば、それは盛り込むことも決して否定するものではありません。

(以上)