菅大臣記者会見要旨 平成21年10月20日

(平成21年10月20日(火) 11:23~11:52  於:官邸記者会見室)

1.発言要旨

 それでは、閣議後の会見を始めます。

 今日は閣僚懇の中で、昨日発表しました予算編成のあり方に関する検討会の結論を簡単に閣僚に説明いたしました。できれば正式な閣議決定という形で、今週中にはきちんとした文書で、各大臣にお示しをし、その線に沿っての行動をとっていただくように閣議決定する形をとりたいと思っております。

 内容については、もう既に昨日古川副大臣の記者会見もありましたし、若干私も説明いたしましたので、細かくは説明をいたしませんけれども、例えば複数年度予算の導入などについては、それに関連する無駄な使い切りの排除といったところは、22年度予算、つまり来年度予算から、そういった形をとるようにしたい。ただ、複数年度予算そのものは、さすがに来年度予算からということでは、やや時間的にも無理がありますので、23年度の予算について、その時期からの導入にしたい。こういう形で、すぐに目の前の来年度の予算に導入するものと、その翌年から導入するものと仕分けをして、お示しをしたところであります。

 中でも、いろいろな段階での公開、概算要求を細かく公開するとか、執行過程に入っても、その執行過程を公開するとか、このあたりが実行される中で、大きく、これまで国民の皆さんにとっては、予算というと総額などは報道で出ますけれども、中身については分厚い予算書を見ても、なかなか我々が見てもわからないし、専門家が見てさえ、なかなかわからない。一般の方にとっては、こんなもの見る機会もないし、また見たとしても全くわからないというものが、例えばインターネットなどで、ある程度の関心のある人であれば、誰でもが予算の中身、あるいは執行プロセス、そういうものを知ることができる、こういうふうになっていくのではないか、あるいはなっていかなければならない、こう思っております。情報の公開というのは、ある意味では民主主義の進化の最も大きなツールと言ってもいいと、私自身も自分の経験の中でそう感じておりますので、そういった形でこの検討会の結果が活きてくるように、今後もしっかりとフォローしていきたい、このように思っております。

 また、いろいろ景気判断などについても、この間注意深く私ども見ており、一方で、アジアの中国などの景気回復などによる外需効果が出る中で、一方では雇用関係、あるいは国内の状況は、決して楽観を許さない、そういう厳しい状況にあるわけです。今週の金曜日、10月23日に、雇用対策を緊急雇用対策本部として取りまとめて提示したいと、このように考えております。この雇用対策は、単に雇用のセーフティネットとか、あるいは保険とかといった形で、単に雇用に対してのそういう受け身の対策だけではなくて、積極的に雇用を創出するというところに力を入れたいと考えておりまして、新規の雇用創出というのは、簡単に言えば、仕事がそこに生じる、その仕事によって何らかのサービスや、あるいは財が生み出される、まさにそれは景気対策、さらには経済成長につながる、まさに裏表の同一の事柄になる。そういう意味で、緊急雇用対策であると同時に、ある意味での景気のてこ入れにもつながる、そういった中身のものにしていきたいということで、従来から言っておりますように、10月の臨時国会では、補正予算自体は提出をいたしませんが、いろいろな基金等が国、さらには自治体に積んでありますので、場合によっては来年、再来年に跨いで利用することを前提として積んであるものについても、前倒しによる実施によって、より雇用に対しても、景気に対しても、より刺激するような、プラスになるような、そういったある種の、財政運営と言うとちょっと大げさですが、積まれた資金の活用も含めて、この年末、さらには年度末、さらには新年に向かって、雇用と景気の両方をてこ入れをする、そういうものにしていきたい、このように考えているところです。

 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)総理が記者団の取材に対して、マニフェストで必ずしも国民の皆さんが余り期待していないことは柔軟に考えていく工夫も必要だというような発言をされました。マニフェストの工程表の実行に関して、柔軟な姿勢を示したものと受け止めておりますが、副総理自身は選挙中から、予算の総組み替えで、マニフェストの工程表どおりの政策実現をと訴えてこられました。そういう意味で、昨晩の総理の発言についての受け止めと、あと、これから来年度の当初予算の予算編成も本格化していくわけですが、その中でマニフェストの工程表の実現について、反映について、改めて現段階での御所見を伺いたいと思います。
(答)総理の発言について、私ども、多少は発言ぶりを聞いてはおりますが、私自身が感じているのは、総理の発言は、マニフェストというものの国民との約束という意味での重要性なり、ある意味それを守ることの必要性というのは、基本的に何か変わったという趣旨の発言ではないというふうに受け止めております。多分、マニフェストの中にも、かなり多くの課題が出ておりますので、このマニフェストの実現についてのいろいろな段取りとかいろいろなところで、それを柔軟な対応といえば柔軟な対応かもしれませんが、そういうことはあり得るという趣旨のことはあったかもしれませんが、マニフェストそのものを軽視していいという意味ではないのではないか、このように私は考えております。
(問)その段取りを変える、つまり工程表における時間軸というんでしょうか、実現性の例えば目標年度であるとか、あるいはどれかを先送りするとか、そういう段取りの部分の柔軟性というのは、あってもよろしいというふうに副総理はお考えなんでしょうか。
(答)質問の中身が、本当に段取りのことを聞いているのか、何かほかのことを聞きたくて言われているのか、ちょっと微妙なものですから、先ほど言ったとおりです。
(問)予算編成に関してなんですけれども、今回95兆円以上の概算要求が出されたということで、来年度予算の性格なんですけれども、財政再建といいますか、こういうものに軸足を置いたものではなくて、むしろ景気とか雇用というものに軸足を置いた予算になるというふうにお考えなのかということが1点と、仙谷大臣が来年度予算の総枠について、92兆円程度とお話がありましたけれども、この仙谷大臣と藤井大臣と菅副総理の間で、こういった92兆円というのが大まかな相場観として共有されているのかどうか、その2点についてお願いします。
(答)従来から言っていますように、財政再建という、あるいは財政の健全化という問題は、少なくとも私自身は、財政の中身を大きく変えるということがまず重要で、現実にそれが進行しつつあるわけですから、その上で、ある程度財政の中身が変わることが確実になり、あるいはそれが見えてきた段階で、先ほど予算編成のあり方検討会の結果を申し上げましたが、例えば来年度の予算では中期的フレームは間に合わなくても、その翌年の予算に関しては、そうした中期財政フレームといったものを策定するということを考えておりますので、そういう中で、財政健全化の道筋は、時期的にはすぐにとはなりませんが、必ずしっかりしたものを提示していく必要があると思っております。そういうことも含めて、単純にこの22年度の予算が財政再建型ではなくて、景気刺激型であるというふうに、何か画一的に決めつけていただくのは適切ではないのではないか。つまりは、財政の中身を変えることも、将来の財政再建なり、財政健全化につながる、ある意味では最大の要素でありますから、そういう中身を変える、中身の構造を変えるということが、財政再建と矛盾しているとは私は思いません。
 ただ、金額的にいえば、今の景気の状況、雇用の状況を考えたときに、単純に緊縮財政に、金額の面で緊縮財政と見られるような方向に行くというのは、私は必ずしもそうではなくて、景気に対しても配慮は必要ではないかと、このように思っております。
 ですから、若干の時間軸の差はありますけれども、あえて言えば二兎を追うと。つまりは短期的には景気、雇用というものを念頭に置きながら、しかし中期的にいえば、内容を変えることによって将来の財政健全化につなげていくと。私のイメージはそのようなイメージになっております。
 それから、仙谷大臣が92兆という数字を何らかのテレビ番組か何かで言われたということでありますが、数字そのものを個別に事前調整なりしたことは、少なくとも私に関しては全くありません。私の中にも、今年度の税収見通し、来年度の税収見通し、さらには場合によっては、もっと前の還付金といったようなものも法人税の場合にはあるようですので、そういうことがある程度はっきりし、そして同時にいわゆる埋蔵金というものの活用の可能性がどの程度あるのか、その一方で、国債発行というものがマーケットとの関係で、どういう形がとり得るのか、そういうものがそれぞれかかわる問題でありますから、いろいろなイメージは頭の中でつくりつつありますけれども、まだ現段階で、少なくとも私が数字を口にするのはまだ適切ではないと思ってます。
(問)財政の国債発行とか健全化を観点にした結果、マニフェストの実現を工程表どおりじゃなくて、先送りなり、一部断念なりする可能性というのはまずあるのかというのが1点。ちょっと話は変わりますけれども、副総理がご担当されるいろいろな地球温暖化対策に関してですが、環境税的なものの導入はどう考えていらっしゃるか。暫定税率廃止をマニフェストにも掲げていると思うんですけれども、その代替として、すぐさま環境税の導入が必要と考えるのか。あと税の関係ですけれども、財政の観点から、たばこ税とか、今後どのように考えるのか、その3点。
(答)なかなか答えにくい問題の質問ですが、ここもどこまで私の立場で言うべきか考えているわけですが、いろいろな発言がそれぞれの大臣から出てきている、あるいはそれらのトーンがどの程度のトーンで出てきているのか、まだ直接に、そうした今出たような環境税とか、あるいは暫定税率の問題とかについての発言、間接的にはいろいろ耳にしておりますが、発言されたとされる当事者からは、まだそうした議論をいたしておりません。そういう中ですので、一つ、今、私の立場は、全体を見る立場ですので、あまり先走ったことを言う必要があるときもあるし、あまり言わないほうがいいときもあるのかなと思っております。
 よくよく皆さんもおわかりのように、環境税の問題は、当然ながらガソリンの暫定税率とは仕組みが違うわけであります。もちろん一部にある意味での共通的な、CO2排出に抑制的という意味では、共通的な要素もあるわけであります。そういった意味で、もともと環境税という問題は、従来から我が党としては、検討課題にはなってきたわけですので、そういう問題が特に総理の25%という、ある意味での意欲的な国際的な立場での発言も踏まえれば、その持っている意味も従来以上に大きな意味を持ってくるんだろうと、このように思っております。そういう中で、当面の来年度の問題と、そうした環境税という多少時間を要する問題と、どのような形で、内容的な関連があることは理解しておりますので、そういうものをどのような形で考えていけばいいのか、これは今この場でこうすべきだというところまでは言えませんが、少なくとも関連して考えなければいけない問題だということは、私の中にもあります。
 あと、たばこ税云々については、私はたばこを吸いませんし、一般的にはたばこ税はもっと健康のためにも欧米並みにしてもいいのかなと、個人的な見解を持っておりますが、今何しろ法律が、ややたばこ産業の振興なんていうことがかかっているそうでありまして、そういう側面も含めて、場合によっては見直しが必要ではないかという意見も耳に入っております。そういった意味では、これも従来からの課題の1つだと、このように認識しております。
(問)マニフェストの先送りの可能性については。
(答)ですから、先ほども同じような質問がありましたが、マニフェストにはいろいろな要素がありますし、中身と同時に工程表もありますので、そういった意味で、基本的にはそれを国民の皆さんとの約束ということ守って実行していくのが、私は基本だと思っております。その基本の中で、これからの来年度の具体的な予算編成の中で、その基本を基本どおりやり切れるか、いろいろな議論が出てくるのか、もう少し様子を見ていきたいと思っています。
(問)2件伺いたいのですが、今の環境の関連で、科学技術も担当されているので伺うんですが、CO2の排出の厳しい目標を立てていらっしゃって、原子力の政策は今後環境対策の中でどういうふうに充実させるかということが1つと、先ほど予算のあり方の検討会の議論での確認ですが、情報公開につながるという話がありましたけれども、財務省がやっている予算の査定、どういう査定をするかということに関心があると思いますが、そこは公表するお考えはあるのかどうか伺いたいんですが。
(答)CO2を排出しないエネルギー源として、もちろんソーラーとか、あるいは風力とか、あるいはバイオマスとか、そういうものがあると同時に、原子力もストレートな意味ではCO2を排出しない有力なエネルギー源でありますし、今現在もかなりの割合を原子力発電所に頼っているわけであります。また、世界的に見ても、このCO2問題がより重要視される中では、原子力発電に対する見直しといいましょうか、ある意味でこれまで建設がやや止まっていた国においても、再開するといったこと、あるいは新設するといった動きも出ております。そういった意味で、我が国として、安全性をしっかりと担保しながら、原子力のエネルギーを活用するというのは、私はあっていい道だし、現実にもそういう形で今日まで来ていると思っております。
 と同時に、この問題は国際的なある意味でのプルトニウムが多くの発電所では精製されますので、国内だけであれば、その管理については日本は優等生とも言われているわけですけれども、これから世界に原子力発電所が広がっていく場合に、そうした核生成物の管理、つまりそれが軍事転用されないかというものに対する管理については、少し環境とは別の観点ではありますけれども、まさに世界的な安全保障の観点から、これもかなり念頭に置かなければならない課題だと思っております。そういった点で、日本は平和利用に徹して、そうした管理もしっかりしているわけでありますので、そういう点ではそういう管理という面における国際的な貢献もあり得るのかなと、若干質問から外れたかもしれませんが、1つはそんなことを考えております。
 それから、予算の公開の中で、査定というプロセスについて、大分率直なところを議論いたしました。特に参加していただいた慶應大学の片山先生からは、県での経験を踏まえて、いろいろな段階での査定といいましょうか、ある結論が次の段階に移るプロセスも公開に、県ではやっていたというような提案もあって、多少の主計局担当者との議論を一緒にしたわけでありますが、私が聞いたところでは、やはり国の予算編成では、一つ一つの段階がかっちりと分かれているというよりも、多少いろいろなものが絡み合った中で最後の形をとるということで、なかなかそういうふうにこのプロセスを区切って公開するのは難しいんだというような説明もありました。説明を100%そうだからということではありませんが、まずはきちんとしたところを公開をすると。場合によって、将来は、そういうプロセスの公開もあり得るかどうか、また検討することもあるだろうと。
 今はどちらかといえば、概算要求、これも1つのプロセスですけれども、概算要求、それから最終的にもちろん決まった予算、これはできればインターネットで検索ができるような形の公開にしていきたい。そして、さらにそれの執行過程、これも委員の中からは、自治体の場合は執行過程で、場合によっては2割ぐらいある意味での経費を軽減できると。例えば、テレビを1台買えば10万円のところを、10台いっぺんに買えば8万円で買えるようなことがあるわけですから、そういう形で執行過程の軽減もインセンティブをきちんと与えればできるんだという意見もありましたので、逆に言えば、執行過程の公開ということも含めて、まずはそういう節目節目、さらには執行過程の公開、そういうものを今回の報告で盛り込んだところです。
(問)日本郵政の西川社長の進退問題に関してなんですけれども、社長の進退問題についてどのようにお考えになっているのかということと、総選挙前後の民主党とか、今連立3党の主張を見てみると、やはりかえたほうがいいんじゃないのかという主張が多いと思うんですが、どのような後任の方が望ましいのか、副総理のお考えをお願いします。
(答)この問題は、現総理の鳩山総理がまだ総理になる前の選挙の折から、西川社長については、そのまま社長職を続けるのは望ましくないという姿勢を明確にしてされておりましたし、総理になってからも同趣旨のことを言われているわけであります。私は細かいことは申しませんが、そういった総理の意思が御本人にも当然伝わっていると思いますので、それなりの対応をされるんだろう、あるいはもうされたと言っていいのか、されると言っていいのかわかりませんが、当然のことだと思っております。
 後任等については、私はこの問題には深入りしておりませんので、特に私からあれこれ申し上げることはありません。

(以上)