菅大臣記者会見要旨 平成21年10月16日

(平成21年10月16日(金) 17:54~18:34  於:合同庁舎4号館408号室)

1.発言要旨

 月例経済報告の記者会見という位置づけだと思いますので、私のほうからまず報告を申し上げます。

 本日、総理も出席されて、月例経済報告の関係閣僚会議が催されました。その場で、私のほうからまず一定の見方を申し上げ、その後、統括官のほうから詳しく説明をさせていただきました。私が申し上げたところ、ほぼそのとき申し上げたとおりをまず申しますと、景気の基調判断については、「持ち直してきているが、自律性に乏しく、失業率が高水準にあるなど、依然として厳しい状況にある」という判断をしています。

 これはまず第一に、企業の生産を中心とした上向きの動きが半年程度続き、景気は方向としては持ち直してきているものの、外需やこれまでの経済対策に牽引されたもので、自律的な回復には至っていないこと。失業率が高く、賃金や企業収益も前年から大きく落ち込んでいるなど、景気の水準は依然低く、厳しい状況にあること。こういった状況に基本的には変化がないことを踏まえたものであり、判断としては「据え置き」ということになります。

 こうした景気の状況は、企業のマインド面にも反映されており、厳しいながらも持ち直しの動きが続いておりますが、特に中小企業ではそのテンポが遅いことに注意する必要があります。

 先行きにつきましては、雇用情勢の一層の悪化や、海外景気の下振れ懸念、金融資本市場の変動の影響など、景気を下押しするリスクに十分留意をする必要があります。

 政府といたしましては、家計の支援により個人消費を拡大するとともに、新たな分野で産業と雇用を生み出し、内需を重視した経済成長を実現するよう政策運営を行ってまいります。

 また、現下の厳しい雇用情勢を踏まえて、本日、緊急雇用対策本部を開催いたしました。19日にも事務局長を中心とした実務者の会議を開き、国会が始まるまで、23日には緊急雇用対策を取りまとめたい。1週間の時間ではありますが、実はもうかれこれ二、三週間前からいろいろな準備をしていただいてきたところでありますので、まずは臨時国会に向けての今年中、さらには今年度中にかかわる問題について、緊急雇用対策を取りまとめたいと思っております。

 これに関しては、ほかの場面でも申し上げましたが、臨時国会にはこれに関する補正の予算は出しません。ただ、既にいろいろな形で積んである基金等を十分に活用して、必要な費用は捻出をすると、そういう方針で今準備をいたしております。

 私どもとしまして、この月例報告の続きをいきますと、日本銀行の総裁も出席されていた会議でありますが、日本銀行には、引き続き政府との緊密な連携の下で、適切かつ機動的な金融政策運営を行われることを期待しておりますと、こういうことをその場で申し上げました。

 その後、先ほど申し上げたように、統括官のほうから詳しい説明があり、また日銀総裁のほうからもこの経済報告がありました。

 私が感じたのは、基本的には政府が考えていることと、日銀の総裁が仰ったことはほぼ方向性は一致をしているのではないかなと、このように感じた次第であります。

 既に今の中で申し上げましたが、もう1点の報告としては、ちょっと重なりますが、本日、緊急雇用対策本部の第1回目の会合を開きました。19日に実務者会議を開き、23日までに、多分23日になると思いますが、この対策本部の第2回会合を開いて、その段階で緊急雇用対策を策定して発表することにいたしたいと思っております。内容的にもいろいろ、今日のマーケット・アイの中でもいろいろ参考になる御意見をいただきましたけれども、実際に雇用そのものにつながるようなプログラムをつくりたい。もちろん、いろいろな研修でスキルアップをするということは大変重要なことでありますが、スキルアップをしたけれども、雇用にはつながらなかったというのでは十分でありませんので、実際に雇用につながるような内容にしたい。

 また、同時に、公共事業の削減の方向があるわけですが、そういう分野からの転業というものをきちんと受け止められるような、これは特に農業、林業といった分野ですが、それについてもしっかりと取り組んでいきたいと。

 また、今日のマーケット・アイの樋口先生のお話にもありましたが、NPOと、これは第3セクターと言っていいのか、サード何とかと言っていいのか、言い方はあれですが、従来の企業や法的なところ以外のそういった分野の皆さんの努力というか、いろいろな試みについてもしっかりと連携ができるようにしていきたいと、このような方向で23日までに一つの、実現できる、つまり雇用につなげるような内容のプログラムを打ち出したいと、このように思っております。

 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)まず、今回、政権交代後初の月例ということなのですが、今までの政権と違う点はどこにあるでしょうか。
(答)実は私、大分以前に厚生大臣をやったり、あるいは自社さ政権当時にさきがけの政調会長をやっておりまして、月例報告には何度かというか、かなり出た記憶はあるんですが、ある意味で相当間が飛んでいまして、10年以上間が飛んでいます。今回、私自身が報告するという立場でありましたが、何が変わったと言われても、形の上ではそう大きくは変わっていないと思っています。
 ただ、事前にいろいろ説明を受けた中で、私は私なりに納得ができたものについて報告をしたつもりです。ただ、実質的には統括官初め皆さんが言われていることと私の認識に余り差がなかったので、そういう意味では、統括官初め皆さんが用意されたものを半ば読み上げたところもありますが、私は私なりにいろいろな皆さんの意見を聞いたりしながら、自分なりの判断というものと、そういう統括官を初めとする皆さんの意見というものをきちんと重ね合わせた中でこれからも見解を述べていきたいなと、こんなふうに思っています。
(問)2点目なのですけれども、非常に経済状況が厳しいということを強調する判断となっているわけなのですけれども、新たな経済対策というのは必要だと考えていらっしゃいますでしょうか。今回の予算措置を講じない雇用対策で十分だと思っていらっしゃいますでしょうか。
(答)今回の何ですか。
(問)予算措置の講じない雇用対策で十分だと思っていらっしゃいますでしょうか。
(答)先ほど申し上げたように、予算措置を講じないという表現は少しもしかしたら誤解を招くので、書かれるときにはよく気をつけてください。つまり、補正予算は出さないということを申し上げたんであって、予算措置を講じないとは申し上げておりません。つまりは、一次補正の中で積まれた予算、かなりあります。もちろん一部は凍結をしましたけれども、相当部分は実際に動いているわけです。それ以外にもいろいろな形で今年度の本予算でまだ十分に活用されていないものもあります。
 予備費等の利用については、これはこれでいろいろと制約もありますけれども、いろいろな形がとり得るわけでありますので、予算措置を伴わないという表現は正確ではないというか、間違っております。補正予算をこの10月の臨時国会では出しませんと申し上げたんです。ですから、必要な措置について、必要な財政措置はいろいろ工夫をする中でしっかりやっていきたいと。そのことが雇用にもつながるし、ある意味では内需にもつながってくる、そういうものにしていきたいと思っています。
(問)3点目なのですけれども、日銀の総裁とも話し合われたということなんですけれども、前回の決定会合では、景気判断を上向きに日銀のほうで修正しているんですけれども、特には、今回政府のほうは横ばいなのですが、基本的には認識には変わりがないということですか。
 あと、今後、日銀とは政策関係でどういったコミュニケーションをとっていかれますでしょうか。
(答)日銀の認識と政府の私どもの認識、表現をちょっと比較をすれば、「持ち直してきているが」といったような表現、「持ち直し」という表現をたしか日銀もとられたと思っておりますので、細かい細かいニュアンスまで言えば多少の見方はあるのかもしれませんが、私が認識しているところでは、基本的に認識は変わっていないんではないかと思っています。
(問)日銀と政府との今後のコミュニケーションについて。
(答)これは、先ほどの勉強会でも津村政務官からもお話がありましたが、私などももっとオープンな形で時折意見交換をできる形があってもいいのかなと一般論としては思っておりますが、あの場でも議論があったように、皆さん方、メディアの皆さんから見ても、そういうことが、それはそれで一つのあり方なんだなと思っていただけるのか、何かこう政府が、それこそ日銀の独立性に対して何か圧力をかけているというふうに見られてしまうのか、そういうことも勘案しながら、しかし、日銀法にも意見交換といいましょうか、そういう整合性を持った金融、財政の運営が必要だということは盛られておりますので、工夫をしていきたいと、このように思っています。
(問)2点伺いますが、景気の判断に関しては据え置きというお話ですけれども、表現は9月と10月で変わっていまして、単純に言って「持ち直し」という言葉が前にあるか後ろにあるかという話ですけれども、何でこれをあえて変えているのか、要は政権交代して、官僚主導から政治主導ということでいろいろな方面でやられていると思いますが、今回の景気判断に関しても、政治主導の面からあえて色づけした景気判断に関して意味があるのかどうかというのが一つ。
 あと、月例の表現ですけれども、かねてから非常に一般の人にはわかりにくい、何が変わったかわからないという指摘もあったと思いますけれども、この点について、今回、ある程度工夫した面はあるのかどうか。また、今後どういったふうに変えていくのか、その点を伺いたいんですけれども。
(問)わざわざ政権交代したから表現をこっちのほうをこっちへ持っていけとか私が言ったり、そういうことはありません。ただ、多少のニュアンスの中で、例えば失業率は5.7から5.5に数字の上では下がったわけですが、しかし有効求人倍率も低いままですし、新卒者の雇用情勢も大変厳しい中で、ややもすれば、持ち直しというものが余り強調され過ぎても間違ったメッセージを与えるかなということは私自身は思っておりました。特にその場所を変えたとかということがどういう、わざわざ政治主導ということでそういうことをしたということではありません。 それから、わかりにくいという話は、今後はまた工夫してみたいと思います。ただ、今のまさにお話、質問の中でも、何か場所を変えただけでどういう意味なのかと問われるぐらいに、ある意味では月例経済報告はそういう非常に専門的というのか、皆さんが一字一句をとらえながらいろいろなニュアンスを読み取ろうとされますので、そういう意味では、一字一句を気をつけて言うとすると、やや一般的な言い方から若干離れているのかなと。私なりにそういう理解がありますが、今後、できるだけ一般的にもわかりやすくて、しかも誤解を招かないような表現ができればいいなと思っています。
(問)雇用対策の関連で、ちょっと本部の中でもう既にお話が出ていたら、重複していたら恐縮なんですが、まず近く取りまとめる対策なんですけれども、事業の希望感といいますか、もっと言えば、補正等の活用で額の面でどのぐらいを雇用に特化した対策に使えるようなイメージで手当てをしていこうと考えておられるのか、これが1点。 あと、二次補正という可能性も取りざたされておりますけれども、その中で、別途財政出動を伴う雇用対策を行うお考えがあるか、この2点をお願いいたします。
(答)まさにいろいろな準備は多少前倒しで進めていただいていますが、そうはいっても正式にスタートしたのは今日ですので、例えばどういうお金を幾らこれに使うといったような、それが合計するとこのくらいになるといったような金額的なところまではまだ私自身も把握はいたしておりません。各省からいろいろな案件が出てくると思いますので。ただ、できれば何万人の雇用という言い方にできればいいなと。それが何万人になるかわかりませんが、そういうふうには思っております。 それから、第二次補正については、もう既に鳩山総理が通常国会での第二次補正というものはあり得るという表現をされております。さらには、15カ月予算という表現もされています。 雇用から言えば、そういう意味では、年末のこともありますので、さらにその前の、つまりはこの臨時国会前に、ある意味で今申し上げたような形である種の財政措置も含んで、補正予算はありませんが、財政措置も含んで、まず緊急雇用対策のプログラムを第一弾で出していく。その進行を見ながら、場合によっては二次補正というものを含む場合に、雇用のさらなる対策を盛り込んで、さらには本予算の中でも必要であればその第三弾を盛り込んでいく、こういうふうに私自身は考えておりまして、そういう一連の流れの中で雇用対策に万全を期したいと思っています。
(問)ちょっと細かいところで恐縮なんですが、基調判断で、先ほど、持ち直しを強調しすぎると間違ったメッセージもということを仰っていましたが、今回はむしろ雇用とか厳しいところを強調しているということについて、民間のエコノミストなどからは、民主党さん、政権が今後やろうとしている子ども手当とか雇用対策とかと、そういったものと整合性を合わせるために判断も変えたんじゃないかという見方が出ていますが、その辺についてはいかがでしょうか。
(答)判断を変えたというのは。
(問)順序を入れ替えたんじゃないかという見方があるんですが。
(答)さっき言ったことで、皆さんはこの分野長年取材されているから、そういうふうに表現がちょっと変わっただけでいろいろ判断されるんでしょうが、私は十数年ぶりに、まして自分で発表するのは今回初めてですので、私自身の中で言えば、特に何かをねらってこの順番を変えたとかいう意識は私にはありません。
(問)同じく月例の先行きのリスク判断のところについてお伺いします。 今回、これまでに加えて、「金融資本市場の変動の影響」という項目を加えられていまして、なおかつ、同時に配られている会議資料の中では、その部分について、「円高、株価下落の影響」という形で為替の問題について触れていらっしゃるんですけれども、これは円高もプラスマイナスの要因が、景気に対してはプラスマイナス両方の要因があると思うんですが、現時点の円高は景気に対してマイナスがあって、今後の為替の動向には十分注意していかなければならないという、そういう認識を込めて月例では判断されたのでしょうか。その辺お願いできますでしょうか。
(答)一時心配された円高も、私、今日の終値は知りませんが、90円台に回復という言い方がいいのか、下落という言い方がいいのかわかりませんが、なっているというふうに理解していますし、株価もニューヨークマーケットの影響が大きいんでしょうが、1万円を回復しております。 そういう意味で、もちろん一般的には、この金融市場、為替、株価というものが景気に与える影響というのは当然あるわけですから、そういう意味で下振れ懸念とか下押しするリスクということを申し上げました。ですから、その中にはもちろん為替の水準が余り大きく変動したときにはそれなりの影響が出るというのは、これは一般的にももちろん知られていることでありますから、そういうことを含めての表現になっていると、そう御理解いただきたいと思います。
(問)雇用対策についてお尋ねします。 今日開かれた本部会合で、具体的な進め方として示されましたが、生活困窮者や新卒者に対する支援、これについて、恐らくこれから各省庁に具体的なアイデアを出してもらうことになるんだと思うんですけれども、経済財政担当大臣のお立場で、例えばこういったような施策が必要ではないかとか、そういったようなイメージが何かしらもしおありでしたらば御紹介いただきたいんですが。
(答)まず新卒者、高校卒業あるいは大学卒業の新卒者については、これは政府としていろいろ手だてを打つことは当然ですが、やはりそれぞれの地域の中で、経済界、労働界を含めていろいろ努力いただきたい。また、学校、もちろん文科省ということもありますが、いわゆる中央の文科省に限らず、いろいろな学校関係者も努力いただきたい。 そういう意味では、社会的にロストジェネレーションと言われたような状況を生み出さないための、ある意味ではいろいろな関係者に呼びかける。そういうことも含めて、政府としてやれることは、先ほど来言っていますように、今日スタートを切った中でいろいろな案を取りまとめていこうと思っていますが、政府だけでやるのではなくて、ある意味では、ちょっと大げさな言い方をすれば、全国民的な課題として新卒者に仕事が何とかお互いに紹介できるような体制をつくれないかなと思っております。 それから、貧困あるいは困窮者の問題は、一部雇用とも重なりますけれども、一部は雇用のもっとベースになる、例えば住居が定まらないといったような、昨年のいわゆる派遣村に集まった人たちのようなことが起きないようにしていくと。 もう御承知のように、住居が定まらなければなかなか雇用というのも見つけにくい、あるいは見つからないわけですから、そういう意味で、特に私も昨年あるいは今年初めの派遣村には、途中からですが、ある程度かかわりを持ちました。一番大きな要素は、とにかくあそこにいけば何とかなると。それは、食べ物もそうだったかもしれませんが、場合によったら、千代田区や中央区の人が来ている、あるいはハローワークの人が来ている、あるいは弁護士さんやいろいろな支援者が来ている。そういう人たちに支えられて、ある人は緊急のお金を、小額ですが借りるようなことができたり、ある人は、どうしてもの人は生活保護が受けられるような手続ができたり、あるいはいろいろな状況がそれによって得られたり、そういう意味では、一つのワンストップサービスといいましょうか、あるところに行けばそういうことが何とか支援が受けられると、そういうことが重要なのかなと。 この面でも、単に中央官庁としてやるだけではなくて、都道府県、市町村、できれば県庁所在地を含む政令指定都市ぐらいはそういうことに対して協力してもらえないかなと。これもこれからですが、そういったところにも呼びかけをしていきたい。場合によったら、これも経済界、労働界、それぞれ全国的な組織を持っておられるところに呼びかけをしていきたい。場合によったら、党としてもいろいろな活動を昨年はしましたので、そういう形でやっていきたいと、こう思っています。
(問)内閣府が来年度の概算要求で、地域別に雇用問題について、労働界ですとか経済界の人たちが集まって話し合う場をつくろうと、そういうようなものを盛り込んでいるんですけれども、これが先ほど仰った知恵を出し合う場の受け皿になるという理解でよろしいんでしょうか。
(答)私も細かくどういうプログラムが既に出されているか知りませんが、趣旨は全くそのとおりです。 どうぞ。
(問)ちょっと細かいところで申しわけないんですが、この総理指示のところにあります「グリーン雇用」というのは、具体的にこれはグリーン・イノベーションのような環境分野のことなのか、あるいは従前仰っている農林漁業に関することなのか、ちょっと詳しく説明していただけたらと思います。
(答)私の理解では、やはりこれは農業とか林業、漁業まで入るか入らないかはちょっと微妙ですが、やはり農業とか林業というものをイメージしての指示だと思っております。先ほども申し上げたように、一つの面では、公共事業が少なくなった中での兼業という側面もありますし、さらには、緑のダム、前原大臣はコンクリートのダムについては全面的な見直しを言っておられますが、一方で、緑のダム構想というのを前から民主党は持っております。そういう意味では、山の整備、それは同時にCO2削減の地球温暖化問題にも寄与するわけでありまして、そういう意味では、そういった山、林業といったものと、それから農業といったものがこの緑の雇用にはそういうものをイメージされているものと理解しています。

(以上)