原口内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成22年8月10日

(平成22年8月10日(火) 11:20~11:45  於:会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。8月10日、閣議後の会見を始めさせていただきます。
 今日、人事院から提出された人事院勧告について、閣議で報告をした後、給与関係閣僚会議を開き、国家公務員給与の取扱いの検討に着手をいたしました。この閣僚会議において、国家公務員の労働基本権が、なお制約されているという現状においては、人事院勧告制度を尊重するという基本姿勢に立って検討すべきと発言をしました。本年度の国家公務員の給与の取扱いについては、今後引き続き検討するということになりました。なお、地方公務員の給与については、地域の実情を踏まえつつ、国家公務員の給与を基本として決定すべきものであり、本年度の給与改定については、地方財政事情等を勘案しつつ、勧告尊重の基本姿勢に立って対処する必要があります。一般論で言うと、ろくでもない経営者に限って、給料をいじります。要は、優秀な人材が国家・国民のためにしっかりと働いてもらえる、そして、その労働環境が、労働者、働く者としての権利が保障されていると、これが極めて大事だというふうに考えています。ただ一方で、厳しい財政状況、そして国民の、納税者の理解といったものがございます。私は総務大臣として使用者の責任に立って、この勧告をしっかりと最大限尊重するということが大事だということを、今日改めて強調したところでございます。
 また、JPエクスプレス社の統合に伴う遅配事故について、検討状況について御報告をしたいと思います。午後、業務改善命令、これを発出します。今回の事故は多くの国民、利用者の皆様に御迷惑をお掛けする大規模な混乱になってしまいました。誠に遺憾でございます。所管する大臣として心からお詫びを申し上げたいと思います。日通との宅配統合は、前経営陣の下、郵便事業株式会社が慎重な検討を主張する中で、日本郵政、つまり持株主導で推し進められたという経緯がございますが、7月30日に提出された郵便事業株式会社の報告によると、今回の事故に関する発生原因は、現場段階の事前の準備不足及び業務運行管理体制の不十分さによるとのことでございました。しかしながら、業務運行管理体制は事業運営の基礎であり、その実態について、郵便事業株式会社に再度調査を要請し、その結果が昨日9日に報告されました。その内容は、現場における報告体制については本社の指示に従ったものは報告がなされていましたけれども、現場が自らの判断で生の情報を伝えるという柔軟性が欠けている。つまり、前のときも私たち野党時代も、総務委員会で西川体制の不備ということで、多くの議員が指摘をしましたけれども、生の情報が上げられない、都合の悪い情報を言うと怒られる、都合の良いものしか上がっていかない。こういうことが前から指摘をされていましたが、縦割り組織の弊害として社内の連携が欠如し、また、現場からの報告を一部上層部に伝えていなかった。前の経営陣の時代と変わっていないのではないか。私は強く危機感を持っています。特に上層部に生の情報が伝わりにくい体質が残っているとの報告は、かんぽの宿の一括譲渡問題についても同様のガバナンス上の問題の指摘があったものであり、経営上極めて大きな問題であると認識をしています。この業務は、国民生活に深く浸透している重要な基本サービスの一つであり、その適正な業務運行の確保は、郵便事業株式会社に対する国民からの信用そのものに大きく影響を与えるものでございます。総務省としては、事故再発防止に万全を期すとともに、業務運行体制の在り方についても見直す必要があるものと考えています。また、私たちは1月から、ずっとこれをチェックをしていたのですけれども、総務省内部のチェックの仕方についてもこれで本当によかったのか。自らのことについても、しっかりと管理体制、再チェックをしてみたいと思います。以上から、総務省としては、郵便事業株式会社法第12条第2項に基づく監督上の命令として、郵便事業からの報告に基づく再発防止策を着実に実施する。それとともに、業務運行体制の見直し等を着実に行っていただき、それらの実施状況について、本年11月19日、つまり、年末の繁忙期前、来年1月末及び3月末に報告していただききたい旨を、本日夕方、郵便事業株式会社の鍋倉社長にお伝えをする予定としております。これが2点目です。
 3点目。今日、内閣総理大臣談話が発出をされるという閣議決定に至りました。私たちは過去の歴史にかんがみ、村山談話、あるいは小泉談話、それを踏まえて、日韓の未来志向の関係、これを更に強固にしていくということから、内閣総理大臣談話についても、鋭意慎重に議論を進めてきたところでございます。今日、内閣総理大臣談話として発出をされるわけでございますが、ここに至って、私の方からは次の2点について要請をしたところでございます。一つは、正しい歴史認識、そして歴史に正対するという姿勢の下で、未来志向、なぜこの100年のこの時期に、この談話が、どのような意味を持つかといったことを国民の皆様にしっかりとお伝えをし、あるいは、かつては近くて遠い国と言われた韓国。安全保障上も、経済上も、あるいは、世界と平和と安定についても極めて重要な国であります。李明博大統領になられて、日本でお過ごしになったということもあって、未来志向の協力関係を強力に進めていただいているこの韓国に対して、私たちがどのように、更に関係を強化していくかというのは極めて重要なことである。そのことを、国民、それから韓国国民、そして、世界の皆さんに明確に伝わるような、そういう努力を更に進めてほしいということが1点。2点目は、これまでも総理大臣の談話、ののつく談話はいくつかあったわけですけれども、大臣談話というのは過去、こういう歴史的なものについては、小泉談話、それから、村山談話、これが代表的なものでございます。そこに至っては、そこに至るプロセスについても、しっかりとしたプロセスを踏まえてほしいということを、この2点を再度確認をしたところでございます。
 私の方からは以上です。

2.質疑応答

(問) 時事通信の増渕です。人事院勧告についてですが、これを完全実施するかどうか、その取扱いについて、大臣のお考えをお伺いしたいのと、民主党が掲げている人件費2割削減の観点から、人事院勧告制度についてどのような在り方であるべきかという、2点についてお願いします。
(答)私は基本的に、労働者の労働基本権三権、これについてしっかりとした回復が必要であると。公務員制度改革基本法、これ、私も携わって、与野党、当時は私たちは野党でしたけれども、しっかりとした前向きな姿勢を出して、当時の与党と合意をした。これが基本法です。この基本法の線に沿って一刻も早くこの労働基本権を回復する。人事院勧告は、この基本権の制約の代替措置であります。したがって、その代替措置であるこの人事院勧告を最大限尊重し、その使用者としての責任を全うするということは、政府に課された重要な課題であります。私は、その課題を着実に実施をしていくことが極めて大事だというふうに考えています。一方で、今度は改革に向けた全体の枠組みを、今、階大臣政務官を中心に素案を作って、この間の国会でも、私、答弁をさせていただきましたけれども、全体像を国民の皆さんに、そして、国会にお示しをして、その中で私たちは公務員総人件費の2割カット、そして、それは1.1兆円、去年が1,400億円なわけですけれども、今回の人事院勧告、これをそのまま実施するとですね、これ、いろいろな出入りがありますけれども、700億円強という形になります。この全体像を、パーツ、パーツを議論していたら、それは全体の、いわゆる国民の奉仕者たる公務員をどのようにするのか、どのような制度を変革するのか、これが見えなくなってしまいます。そこで、総務省、私としては、全体像をできるだけ早くその素案をお示しをし、そして、例えば共済の問題、手当の問題、それから、総人件費の問題、そして、出先機関や国と地方の在り方の問題、こういったものの中で変革を進めていく。納税者の、正に強い意思、公務員だけが得をしているのではないかというような誤った、あるいはそういう疑いを持った方もいらっしゃいますし、また、地域によっては民間の給与よりも多いところもまだあるわけでございまして、民間準拠といったことについても、しっかりとそれが実施されているのかどうか、それを考えていくことが大事だと思います。なお、私たちは、官だ民だ、公務員だ民間だという、労働者を分断して考える考え方には立ちません。むしろ、立場の弱い一人一人の労働者の権利を保障していくためには、連帯が必要であります。つまり、今までの政治がだれか身近なところに敵を作って、そして、スケープゴートを叩けばいいのだというような、そういう論理にはくみしないということを、最後に申し上げておきたいと思います。
(問)共同通信の林ですけれども、おはようございます。先ほど、日韓関係で未来志向というお話もありましたが、15日の終戦の日にですね、靖国神社を参拝されるか否か。15日でなくても、もしくはその前後ですね、参拝されるおつもりがあるかどうかというのを確認させてください。
(答)参拝する予定はありません。閣僚として、現内閣の方針に従います。私個人としてはいろんな意見があります。
(問)すみません、ブルームバーグニュースの駅と言いますけれども、海外の話題で非常に恐縮なのですけれども、御存知でなければ申し訳ないのですが、ブラックベリーの話でですね、中東の国で、サウジアラビアとかUAEが、テロ関係で検閲したいという話をして、リサーチ・イン・モーション(RIM)と揉めていたのですけれども、どうやらその話がまとまったらしいというような情報が入ってきまして、何をお伺いしたいかというと、これがまとまった背景には、一部、インスタントメッセージの検閲をRIM側が受け入れたのではないかというふうな観測が流れているのですけれども、翻って日本でこういうことが起こり得るのかどうかという点について、もし差し支えなければお言葉をいただければと思います。
(答)特定の会社の、いくつかの前提をもとにした御質問ですから、それに直接答えをするということは、総務大臣としては控えたいと思います。一般論として、すべての言論は検閲を行われるべきではない。また、検閲を前提に何かを認めるとか認めないとかいう議論は、私たち民主主義と、そして、人権を尊重する国家にあっては、あってはならないと、そのように思っています。
(問)読売新聞の古川です。冒頭、大臣からお話のあった内閣総理大臣談話の件で、大臣が二つ要請をなさった内容が、この談話にはきちっと踏まえられていると御判断されての閣議決定だと思うのですが、どの点に反映されたというお考えなのかというのが一つ。それと、大臣はいつも、先の大戦を巡る戦争指導者の責任だとかですね、どこに問題があったのかということについて、深い研鑽を積まれているということを御自分でもおっしゃっていますが、正にこの100年の時期に、多大な損害と苦痛を与えたことを、痛切な反省、お詫び申し上げるという、これを出す意義というかですね、これはどのように評価、あるいは評価でないのであればそれでも結構なのですけれども、御見解を改めてお伺いします。
(答)この痛切な反省と心からのお詫びというこの文章は、一番最初に入ったのが、私の認識ではですね、村山談話、そして、その後出された小泉総理の談話、これと同じ文章でございます。この文章を踏まえていること、それから、もう一つは、国際法上の新たな義務を日本に課すものではないということ。これは今までの政府と全く同じであります。そこをもし、一歩でも踏み出しているのであれば、私はある意味、体を張ってでも、それは阻止をしなければいけないというふうに考えておりました。しかし、今、御質問にございましたように、歴史に正対をし、不都合な真実もあります。目を覆いたくなるようなもの、あるいは自分たちとしては受け入れ難いもの、そういったものも歴史の中にはあります。しかし、本当に強い、そして、本当に他国に尊敬される国家というものは、歴史の真実から目をそらさないという国家であります。また、韓国政府がそのようなことも配慮をしながら、未来志向の関係を築こうということを再三再四にわたって、特に李明博政権になって、特に顕著でございますが、やってきてくださっているということ。こういったものを踏まえた談話になっているという判断をいたします。この来し方の64年間、いや、その前の35年間、そういったものを未来に引きずるわけにはいきません。そして、国際的な安全保障上の観点からも、韓国は極めて私たちにとっては大事なパートナーであります。そのパートナーに対して、歴史的なこの時期において、一つの節目ともなる談話を作ることができたというふうに考えています。
(問)北海道新聞、中村です。人事院勧告の話に戻ってしまうのですけれども、大臣は勧告を最大限尊重すると。その上で全体像を作るとおっしゃっていましたけれども、臨時国会ですね、給与法改正が焦点になろうかと思いますけれども、野党の理解、みんなの党などは、かなりもっと大胆な削減を求めています。野党にどのように理解を求めていくのか、この現時点での、この状況での大臣のお考えをお願いします。
(答)野党というよりも与党も含めた、与野党を含めた国民全体に対して、納税者としての御理解を求めていく。そのためには、公務員制度改革に関する基本的なフレームワーク、それから工程、そして基本的な、それを支える理念といったものを共有させていただくことが必要だというふうに考えています。正に800兆円を超える借金。この借金の中で、仕事の在り方、業務の在り方、そして、国と地方の関係と、こういったことが見直されないで、そのまま、あるいは共済ですね。そういったものについても、聖域無く見直すことを前提として国民の皆様に御理解をお願いしていきたいと、そう考えています。
(問)朝日新聞の岡林です。ゆうパックの問題で2点伺いたいのですが、先ほど大臣が指摘されたガバナンスの問題で、再度調査を要請して昨日上がってきたものがあると。生の情報が、一部上層部に伝えられていなかったというところが確認できたということなのですが、例えば、準備が全然できていないよという現場の状況が、例えば上層部に伝わっていなかったということなのか、どういうことが上層部に伝わっていなかった情報なのかというのが分かれば教えていただきたいのと、それから、最後に御指摘のあった、総務省内部のチェックの仕方について問題があったのかどうかという発言がありましたが、この再チェックというのはどのようになされる御予定なのかというのをお伺いしたいと思います。
(答)今、全体で言うと、検証委員会、日本郵政旧経営陣も含めて、検証委員会の中で様々な角度から委員にお願いして、やっていただいているところでございます。事故発生後の業務状況報告に対する対応としてはですね、支店の対応、本社の対応、そういったところで、例えば、支店長がすべての最終確認の上、本社に報告をすると。ほぼ実態を把握した報告となっていましたけれども、しかし、本社から求められたものは形式的な指標情報であったため、それ以外の情報は報告していない。つまり、これだけ報告しなさいよということで、それだけしかやっていない。あるいは、本社の対応は支店等からの報告の一部が本社の対策会議に報告されなかったことや、現場の生の声が把握できず状況判断を誤る。現場の実態を示す情報、例えば現場の写真はどうなっているのか、そういったものを求めなかった。正確な状況把握を誤った。現場からの生の。つまり、違うものを統合していますよね。そこで、例えば、埼玉ターミナルや千葉西ターミナルなど、本社の近隣の支店ですら、本社から出向き、実態を把握していない。こういう報告が来ているわけであります。総務省の中でも常に口を酸っぱく言っているのは、現地、現場主義と。現場に赴きなさい、現場の声を一番大事にしなさいと。私、松下政経塾で松下幸之助さんから再三再四言われたのがこれです。現場無くして業務は無いのですね。ですから、災害が起これば真っ先に、この間も北九州、雨がやめばすぐ行く。その姿勢を徹底してくださいと。総務省としても、現場主義が貫かれているかと。これ2年も3年も前から指摘されてきたことです。それはチェックできているはずなのに、なぜしないのか。自己反省も踏まえてですね、関係の司から聞き取り調査をしてみたいと思っています。よろしいでしょうか。
(問)共同通信の今井と申します。フューチャースクールの件なのですけれども、実証実験が動き出していますが、ゆくゆく全国展開する上ではですね、お金の問題というのは大きな課題になるかと思うのですけれども、自治体の財政も厳しい状況の中で、何か具体的なお考え、対応策、お考えがありましたらお聞かせください。
(答)そうですね。フューチャースクール、今、東と西で5者ずつ選定作業をして、そして、実証実験ということで入っています。ゆくゆくは原口ビジョンに掲げましたように、全体に広げていきたい。そのために、何の予算でどのように進めるか。今の御質問は極めて大事なものであります。一つは今回の、今、来年度予算の中での目玉、玉にしていきたい。私たちは1割削減、更にプラスアルファ1割削減ということを言っていますが、そういう行政努力、行政刷新努力の中で出てきたものを中心に、更に進めていきたいと考えています。しかし、税金でやれるものには限りがあります。例えば、PPPであるとか、あるいは大きな民間投資といったことも、呼びやすくするような税制上、あるいは制度上の設計も考えていきたい。成長戦略の目玉にしていきたいと、こう考えています。
(問)日本経済新聞の高橋と申します。1点だけ、ゆうパックに関してなのですが、ゆうパック問題を受けてですね、郵便事業株式会社の鍋倉社長以下、役員が報酬の自主返納をするという方針を決めています。これは、持株の齋藤社長も同様だと思うのですけれども、今回の業務改善命令を改めて出すに当たって、これに加えて何か追加的なですね、経営責任を問うお考えはございますか。
(答)追加的なことは考えていません。業務改善命令というのは非常に重い命令であります。その上で、経営の、この間も齋藤社長に申し上げたのは、体質そのものの改善に取り組んでほしいということを申し上げたわけです。風通しを良くし、そして、国民、サービス利用者が中心のサービス、それをどのようにするか。そのためには、やはりそこに従事している人たち、私は正直、郵便会社、郵政をかばうわけではないけれども、10年間のうちに4回も組織が変えられればですね、混乱するというのは当たり前だと思います。しかし、それを差し引いた上でも、やはりやらなければいけないのですよ。その意識を、そのものをやはり改革していただくように、更にお願いをしていきたいと思っています。
(問)大臣、公務があるようなので、この辺でよろしいでしょうか。ありがとうございます。

(以上)