林 芳正 内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成21年9月1日

(平成21年9月1日(火) 9:33~9:46  於:記者会見室)

1.発言要旨

 それでは、御報告いたします。
 閣議の案件は特にございませんでした。
 それで、国家と市場の関係でございますが、7月17日の経済財政諮問会議で、国家と市場の関係の再構築というのが問題提起をされましたけれども、これにつきまして、8月5日と7日、それから31日と3日間、4回にわたりまして有識者の皆様と懇談をさせていただきました。
 お手元にお配りしてありますのは、議論を踏まえまして、今後の経済運営に当たっての我々の考え方を整理させていただいたものでございます。
 ポイントは幾つかございますが、これまで緊急避難的なマクロ経済政策がとられてきたのですけれども、そこからの出口戦略というものについて方向性を検討することが求められているということで、危機からの出口に向けまして、政府の役割としては、緊急時の対応というものから、持続可能な姿というものに戻していく必要があるというふうに思っております。
 その際、金融政策のほうは、我が国はデフレのリスクというのが非常に高いために、物価の動向について、中期的な視点も含めて丁寧な点検が求められるというふうに思っております。
 財政政策については、我が国の厳しい財政状況といったものを踏まえる必要があるというふうに思っております。内需の成長というのが今まで以上に重要になるというふうに考えられておりますので、供給面の再構築を進めるということと、それから、サービス部門等におきまして、潜在的需要の顕在化を含めた成長戦略というものに取り組んでいく必要があるというふうに思っております。
 出口に向けて、有効な成長政策に向けた資源配分機能、それから必要な所得再配分を行う再分配機能に政策資源というものを集約していく必要があると思いますし、インセンティブの強化ということに重点を置いた政策を実行する、そういう意味では、機能する政府というふうに書いてありますが、こういうものを目指す必要があるというふうに思っております。
 国民の公的ニーズ、公的サービスに対するニーズが個別化・多様化してきておりますので、これにこたえるために、民間において公的活動を行うという、新たな公というものの拡充が重要であると、こういうふうに考えております。
 以上がポイントでございますが、お手元にその資料をお配りさせていただきました。
 私のほうからは以上です。

2.質疑応答

(問)まず、さきの衆院選で政権交代ということが実現して、自民党としては歴史的な敗北を期したということなんですけれども、結果の率直な受けとめをお願いします。
(答)そうですね、非常に大きな負けということになりましたので、国民の審判というものを率直に受け入れて、反省をすべきところをきちっと反省して建て直しを図っていかなければいけないというふうに思っております。
 よく言われていましたのは、現政権に対する不満と、それから、民主党を中心とした野党に対する不安というもののせめぎ合いということを言われておりましたけれども、やはり現状に対する不満というのが非常に強かったということで、我々としては、そういう不満の声を同じ目線に立ってお聞きをして、それを政策につくっていくというところが足りなかったのかなという反省をしながら、今後、そういうところを含めて、このピンチをチャンスに変えていく努力というのを始めていかなければいけないというふうに思っております。
(問)あと、御紹介いただいた国家と市場の関係なんですけれども、民主党にはかねがねマクロ戦略がないという指摘もされてきたところですけれども、これは新政権に引き継がれていく考え方だということなんでしょうか。
(答)ぜひこれは、どういう政権になろうとも、大事なことだというふうに考えておりますので、しかるべく引き継いでいけたら引き継いでいきたいというふうに思っております。
(問)あと最後に、先日、CPIが発表されましたけれども、前年同月比で過去最大の落ち幅ということで、デフレの懸念、先ほどもちょっと御指摘ありましたけれども、改めてその点について御所見をお願いします。
(答)8月末に7月の消費者物価指数が前年比ではマイナス2.2ということで、過去最大の下落幅ということです。いわゆるコア・コアですが、生鮮食品、石油製品、その他特殊要因を除いたものは、前年比でマイナス0.7、前月比でマイナス0.1という緩やかな下落というふうなことでありました。
 基調としては、緩やかな下落傾向で推移するというふうに見込んでおりますが、これが持続的な下落かどうかということについては、なお見極めが必要だというふうに考えております。
 これは繰り返し言っていることですが、持ち直しの動きが景気で続いていても、需給ギャップの大幅なマイナスが続くようであれば、デフレに逆戻りする懸念というのはありますので、今後の動向を注視してまいらなければいけないというふうに思っております。
(問)今回の衆院選で歴史的な敗北をしたということなんですが、特に経済財政運営の点で、過去4年間で国民にあまり評価されなかったのかどうかについて、率直にどう受けとめているのか、お聞かせ願えますか。
(答)そうですね、過去4年間でいろいろなことがありましたけれども、一つは構造改革と言われるものが格差につながったのではないかという印象も含めて、そういうことがあったと。このことに対する御不満が特に地方とか、そういうところにあったのではないかなということ。
 それから、麻生内閣になって、リーマン・ショックということもあって、かなりいろいろな対策を政府主導で、呼び水的効果も含めてやったわけですが、その効果が現れはじめたといいますか、まだ急激な下落の後の底打ちということなので、水準的にまだ戻り切っていないということで、効果がまだ実感として伝わり切っていなかったのではないかなと、こういうことがあるのではないかと思います。
 かねてより申し上げていることですが、これは、今まさに日本経済は正念場ですので、持続的な慎重な運営というものは、どういう政権になろうとも大変大事なことではないかというふうに思っております。
(問)今のお答えに関連して、政権が変わった後のことになりますけれども、民主党は今のところ、政策で、かなり補正も含めて予算の組み替えをいろいろやっていて、今の制度、景気対策もかなり変わると予想されますけれども、これの景気への影響というのは、現在わかる範囲でどういうふうな御懸念というか、思っていらっしゃるのか。
(答)そうですね、補正予算については報道でしか承知をしておりませんので、実際今からいろいろな御検討をされるのだと思いますので、補正予算のどの部分をどういうふうに変えるのか、変えないのかということは、ちょっと見えてこないとなかなかコメントのしようがないなというふうに思います。
 ただ、選挙の前に言われていたように、例えば基金というのをやめるとか、そういう一律に外形基準といいますか、そういうものでやめていって、とにかく財源が必要なのでということでやりますと、それぞれが果たしている景気の下支えの役割というものがなくなっていく懸念というのは十分ありますので、慎重にやっていただく必要があるというふうに思っております。
(問)先ほどのCPIのところなんですけれども、この持続的な下落かどうかの見きわめが必要だというお話だったんですが、これはどれくらいかというと難しいですけれども、大体どのぐらいのスパンで下落が続くとデフレと言えるのか、そこはどういうふうにお考えなんでしょうか。
(答)これは非常に難しいことですが、過去、2001年4月で初めて緩やかなデフレにあるという判断をしておりますが、このときは、国内の卸売物価とかGDPデフレーターというのが下落していたことが背景にありまして、当時はコア・コアというのを、石油の値段があまり上がったり下がったりしていなかったので使っておりませんでしたので、コアですけれども、コアで前年比での下落が2年程度続いていたということを踏まえて判断をしたようでございます。
 そういう意味では、そういう前例はございますが、機械的に何が何年、何が何カ月というものの基準でもってデフレという判断がなされるわけではなくて、今申し上げたように、コア・コアの動きとか、それから、その背景も含めまして総合的に見極めていくという必要があるというふうに考えております。
(問)去年、デフレの脱却宣言をできなくて、今もまだ慎重に見きわめているということですと、現在の状況というのは一体デフレなのか、デフレじゃないのか、その中間の状態なのか、どういう言葉で判断なさっているんでしょうか。
(答)そうですね、これはかねてから繰り返し申し上げておりますように、まだデフレと判断するということには早いということですが、デフレの懸念があるという判断をずっと申し上げておりますので、これはそういう判断で変わっていないということです。

(以上)