林 芳正 内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成21年7月13日

(平成21年7月13日(月) 18:50~19:24  於:記者会見室)

1.発言要旨

 それでは、月例経済報告等に関する関係閣僚会議が開催されましたので、その概要を御報告いたします。
 景気の基調判断につきましては、「厳しい状況にあるものの、このところ持ち直しの動きがみられる」と上方に変更いたしております。これは、①依然として経済活動が極めて低い水準にあるものの、②輸出が持ち直しているということに加え、経済対策の効果もあって、このところ個人消費にも持ち直しの動きが見られるようになったこと、③こうした中で、在庫調整が一巡しつつあり、生産の持ち直しが続いていること、などを踏まえたものであります。
 先行きにつきましては、雇用情勢の一層の悪化が懸念されるとともに、世界景気の下振れ懸念や金融資本市場の変動の影響など、景気を下押しするリスクにも留意をしていく必要があると、こういうふうに思っております。
 政府といたしましては、「経済危機対策」などを着実に実施してまいります。
 また、「安心・活力・責任」の3つの目標を同時に達成するための道筋を示す「基本方針2009」に基づき、経済財政運営を進めてまいります。
 また、日本銀行には、我が国経済が、物価安定の下での持続的成長経路に復帰するため、引き続き政府との緊密な連携の下で、適切かつ機動的な金融政策運営を行われることを期待しております。
 私からは以上でございます。

2.質疑応答

(問)まずは、今回、月例経済報告、3カ月の連続の基調判断の上方修正をされて、実に7年2カ月ぶりということなんですけれども、まずは率直な評価というところを教えてください。
(答)そうですね、先ほど申し上げましたように、まずは厳しい状況があると。特に低い水準にあるということがまずあって、ただ、その中で輸出が持ち直しているということと、それから、個人消費は、これは多分に経済対策の効果だと思いますけれども、そういうことが徐々に出てきていると。
 それから、在庫調整は、これは前から言われてきたことですが、リーマンショック後の在庫水準まで戻ってきたということで、今後は生産と出荷というもの、というか、需要と生産というものがだんだん均衡してくるだろうということで、持ち直しが出ているということでございますので、最悪の時期は脱したということでありましょうけれども、今後、言ってみれば、交通事故に遭って入院して、手術は終わったけれども、今からじっくりとリハビリをして元気になっていかなければいけない、こういう時期だろうかと思いますので、これは繰り返しになりますが、慎重に経済運営をしていかなければいけない、そういうふうに思っています。
(問)その一方で、この上方修正3カ月連続というと、かなりすごくぐんぐん持ち直しているようにも見えるんですけれども、一方で、庶民あるいは消費者の景気実感からはかけ離れているのではないかというような声も一部にありますけれども、そういった声に対しては。
(答)そうですね、先ほど申し上げましたように、水準自体が非常にまだ低いところにある。これは、10-12と1-3で大変大きな落ちを見ておりますので、その部分がやはり非常に実感とこの一部の指標の動きというのがつながらないという一つの理由ではないかということだと思っております。
 また、雇用情勢も、先ほど申し上げましたように非常に厳しいということでありますから、いわゆる景気回復と言えるような状況には至っていないと、こういうふうに思っておりますので、早くそういうふうに言えるようになるようにしっかりとやっていかなければいけないということであると思います。
(問)直接関係ないんですけれども、本日、麻生総理のほうから解散総選挙の日程を御決断されたということで、解散してから総選挙の間までにひょっとすると政治空白みたいなものが生じる危惧みたいなものがあるかと思うんですけれども、そういった場合の経済財政運営についてのあり方というのはどういうふうに受け止めていらっしゃいますか。
(答)そうですね、基本的には、解散、選挙という間も、我々政府の一員としてはきちんとそれぞれの仕事をしていくということでありますので、そこは何かポテンヒットが出るようなことがないようにしっかりとやらなければいけないと、こういうふうに思っております。
 私は、幸いなことにこの選挙では候補者ではございませんので、しっかりとこの職に邁進してまいりたいというふうに思っております。
(問)先ほど、消費の持ち直しのところで、経済対策の効果は大きいというお話がありましたが、この概要を見ても、家電とか車とか、かなり対策によって押し上げられている部分が多くて、逆にそれでマイナスとか、さらに二番底に向かうんじゃないかという懸念も相当高まっているんですが、その点についてはどのようにごらんになっていますか。
(答)そうですね、私、最初のころに申し上げたかもしれませんが、かなり政府のお金もある意味では先繰りをして、随分積み上げて対策を打っておりますので、これに反応して効果というのも出てもらわないと困るなと、こう思っておりましたので、このお配りした資料のように効果が現れているということは大変いいことだと、こういうふうに思っております。
 おっしゃるように、省エネ家電のエコポイント、それから環境対応車の補助金というのは21年度中の措置ということになっておりますが、今回のものは、全体としては、最初に総理の御指示があったこともありまして、複数年度にわたって使える施策も入れるようにということがございまして、たとえばスクールニューディールですとか、それから道路公安、空港などの公共投資もございますし、それから、雇用対策も基金を使ってやる、介護、医療も基金を使ってやる。さらに言うと、2,700億で科学技術の新しいことをやる、こういうのも複数年度にわたってやるということになっておりまして、今までの補正予算とかなりそういう意味では様相を異にした、かなり複数年度にわたってお金が出ていくという仕組みになっております。
 また、予算ではありませんが、減税も住宅ローン減税も5年でございますし、贈与税減税も2年間ということもありますので、車の減税もそうでありますが、そういうものが着実に実施されるということを通じて、個人消費に望ましい影響が出てくるというふうに期待をしております。
(問)下振れリスクについてお伺いしたいんですが、大臣が就任された後に出たアメリカの雇用統計をきっかけに、実体経済の見通しが慎重になっていて、株安と為替円高が進み、さらには政局不安という新たな下振れリスクが加わってきているような......
(答)最後に仰ったのは何不安。
(問)政局不安です。わずかここ二、三週間の間にリスクの度合いがやや高まっているかどうかについて大臣の御認識をお伺いしたいと思います。
(答)そうですね、基本的には、申し上げたように、幾つかのリスクがあるというふうに常に申し上げてきておりまして、その認識は基本的には変わっておりません。特に、今お話のあったアメリカでありますが、生産が減少しております。これは7カ月連続だということですが、まだ景気が後退をしていると。金融危機もまだ途中でございますので、実体経済が悪化するということと、金融が悪いということの悪循環でまだ深刻な状況にあるだろうと、こういうふうに思っております。
 消費とか住宅など、向こうもいろいろ対策を打っておりますので、ちょっと収縮のテンポが緩やかになっているという、そういう兆しも見られるというところでありますが、非常にまだ注意して見ていかなければいけないんじゃないかなと、こういうふうに思っております。
 外国でいうと、逆にアジアは、特に中国が非常にほかと比べて調子がいいものですから、中国向けの輸出が改善する。これは中国もかなりの景気刺激策をやっておりますので、また、やはりヨーロッパと比べて、アジアのほかの国は、中国に近いということもあって、中国向けの輸出がプラスであるということでいい数字が出ているということがございますので、そういうところは今数字にアジアがいいというのは出ているわけでございますが、それぞれ動向が、アジア、アメリカ、ヨーロッパと、異なった理由で異なった数字を出しておりますので、それぞれ我が国にとって大事な地域でございますので、注意深く見ていくということだと思います。
 それで、政局は、先ほど御質問があったように、特にそういう解散とか総選挙のスケジュールに余り左右されずに、きちんと経済運営をやっていくということに尽きるんではないかなと、こういうふうに思っております。
(問)政局の話なんですが、都議選でこれだけ大敗すると、やはり麻生総理では次の衆議院選挙を戦うのは厳しいのではないかという声もあるんですが、それについてはどうお考えになるかということと、あとは、解散の証書が来週もし総理から出た場合、サインされるかどうか。
(答)党内でこれまでいろいろな動きがあったということは私も承知しておりますし、私の会館には署名をしてくれないだろうかというファクスも届いておりました。
 ですから、そういう動きがあることは承知しておりますが、都議選の応援に回っていて、もうそろそろ内輪揉めはやめてくださいとか、お互いの足を引っ張っているからだめじゃないですかという、これは応援演説をしていくと出てきてもらっている人なので、基本的には支援してくださる方の声だというふうに受け止めていますが、そういう声が非常にあったということと、一部の世論調査にもそういう話が出ております。
 今日、御案内のように、解散総選挙の日程というのがほぼ固まりましたので、特に候補者になられる皆さんは、ここの界隈にいらっしゃるよりは、それぞれの選挙区で御活動されるということが中心になっていくというふうに思われますので、もうこれで一丸となって麻生総理のもとで戦っていくんだということにだんだん収斂をしていくのかなというふうに私は見ております。
(問)あと、解散の詔書が総理から......
(答)すみません。そういうことでございますから、そういうものが出てまいりましたらきちんと署名したいというふうに思います。
(問)都議選の敗北についてはどういうふうに受け止めていらっしゃいますか。
(答)そうですね、私も後半で随分いろいろなところに回りまして、少し時間があると、いろいろな景気対策のお話とか、今先ほど申し上げたような政策効果が出ているということ、それから、選挙でございますので、与党の政策と民主党が今仰っている政策の比較とか、それからもう一つは、都議選があたかも政権交代につながる一里塚のような言い方というのはいかがなものかという、こういったような演説をしてまいりまして、一定の反応があったというふうに思っておりますが、それを上回るような残念な結果だったということであります。
 議席数は非常に数字としては競っている数字ですが、得票数まで分析すると、まだまだそういう与党に対する評価というものがやっている政策に比べて戻り切っていないんではないかなという印象を持っておりますので、やはり今の経済の対策を含めて、我々政府与党でありますから、やっていることをきちんと説明を丁寧にして御理解を増やしていくという努力を今後も続けていかなければいけないというふうに思っております。
(問)同じような質問になってしまうかもしれないんですけれども、世界経済、ちょっと不透明感が出ている中で、日経平均、9営業日連続で下落という形になっているんですけれども、そういうような最近の情勢と今回の月例経済報告の上方修正について、何らかの影響を与えるものとお考えでしょうか。それとも下振れリスクというところにおさまってくるんでしょうか。
(答)足元で株価が下がったり、為替も動いておりますが、これは、アメリカとかヨーロッパで景気後退から底入れするのかなというような期待がちょっと後退してきているかなと。先ほどどなたかの御質問でアメリカの話がありましたけれども、そういうことと、それから、これは喜んでいいのか、悲しんでいいのか難しいんですが、質への逃避ということで、景気への期待が後退しますと、円を買うと。要するに、円が一番安全なんで買うというようなに傾向が、これは去年ぐらいからありまして、去年は円キャリトレードの巻き直しというのもあったんですが、ここへ来ましてやはりユーロとドルと円でそういう質への逃避というのがあるのかなと、こういうような見方があって、為替が円高にいっているということ、それから、先週ぐらいまでかなり上がっておりましたんで、ちょっと一服ということなのかなというふうに思っております。
 やはり心配しなきゃいけないのは、先ほど申し上げたような生産活動がまだ低いとか、それから、下振れのリスクの世界経済の実体経済、金融の問題、こういうものを見ていかなきゃいけませんが、こういう株価とか為替もずっと続いていくということになりますと、マインドとか、それから実質的に輸出にマイナスの影響が及ぶということも懸念されますので、これは注意深く見ていかなければいけないというふうに思っております。

(以上)