甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成21年9月16日

(平成21年9月16日(水) 9:32~9:47  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。
 約1年間、皆さんとおつき合いをいただきました。今日で最後の会見になります。長いことお世話になりまして、ありがとうございました。

2.質疑応答

(問)今日、臨時閣議を終えられて、この1年間の感想をお聞かせ願えますか。
(答)私は、この選挙までの4年間の任期のうち、3年間閣僚でおりました。安倍内閣、福田内閣、そして麻生内閣と。そして最終場面で政権交代、これを正に内閣の内側から見るということにいわば立ち合ったわけでありまして、歴史の転換点を内側から見ることができたというのは貴重な経験だと思っております。
 新しい選挙制度によって政権交代がより起こりやすくなるという、ある種の与党も野党も緊張感を持つと。そして、与党だけじゃなくて野党も現実論として政策を語ると。単なる机上の空論、言ってもその後に責任を持たないということではないという体制ができ上がるのはいいことだと思います。
 この1年、規制改革、行革、公務員制度改革の担当大臣として振り返りますと、いい仕事ができたという部分と、それから、あと一息でできずに残念だったという思いとが交錯をいたします。
 規制改革の担当大臣として取り組めたことは、ライフサイエンス分野の大胆な規制改革ができたと。これは日本再生医療学会のホームページのトップページに、私の、甘利明の尽力によってこの道が開けたというふうに書いてありますんで、今まで規制改革というのは大どころのたまがなかなかなくて、説明してもよくわからないような、一体何をやってきたんだろうかというような、ちまちましたものが割と多いと指摘を受けてきましたけれども、ライフサイエンス分野の規制改革の道を開くという大きな仕事ができたというふうに思っておりますから、これは国民医療にとって画期的な道が開けたと同時に、新しいライフサイエンスの分野での産業のフロンティアが開けたというふうに思っております。これは、経済産業大臣のときからずっと思ってきたことを担当大臣として仕上げることができたというふうに思っております。
 それから、行革担当大臣としましては、能開機構をどう整理していくかという点でありますけれども、従来の行革大臣は、恐らくその者が持っている設立の基本的な考え方だけにしか沿わないで、なくすか、縮小するか、統合するという視点だったと思いますが、私は過去の経験を活かして、能力開発ということと産業政策、なかんずく中小企業政策を統合して、産業政策の視点を取り込んでこの改革をすることができたということは、私だからできたんだというふうに思っております。
 これは5年たってしっかり、よくぞああいう改革にしたという評価をいただけるというふうに自信を持っております。もちろん、通常の無駄を見直して節約をするという意味で言えば、独法の支出に対する細かい見直し等々も行いまして、毎年3,000億ずつ節約をするということも実現ができたと。これは野田さんの公益法人改革とあわせて、特殊法人、独法改革の両方で年間6,500億円の経費を節約できたということは、これも一つの成果であろうというふうに思っております。
 また、行革の中で、新しい視点の行革、量の行革に加えて質の行革にチャレンジをすると。これはこの後の行革担当をされる大臣がどう取り組まれるのかということは定かではありませんけれども、タオルを絞り切る作業がかなり限界に来た中で、新しい視点を行革に取り込むという試みは評価されてしかるべきだというふうに思っております。
 それから、公務員制度改革であります。基本法に沿ってかなりいいところまで来ました。水面下で、私は民主党の責任者とも実は詰めておりまして、内々に会って打ち合わせもしたりしてきました、今だからお話をしますが。その中では、まとめるという方向が最終的に出ました。こういう方向でまとめると。一気呵成に衆・参を通そうという内々のところまで実はいったんでありますが、最後で問責決議が可決された以上は審議はできないという壁にぶつかってしまいまして、これが頓挫してしまったということは残念な話であります。
 私はずっと党内がまとまらないということが民主党のアリバイにされてしまっていると審議に応じないということを再三申し上げてきましたけれども、それは、水面下で彼らと連絡をとっていたから実は言えることでありまして、その実態は私は一番よく知っていたつもりであります。とにかく完成品でなくとも8割の仕上がりでも、とにかく成立をさせて、それからさらに完成品に向けていくという手法を取りたかったわけでありますけれども、そこができなかったということは残念であります。私の思いを党内の皆さんには是非わかっていただきたかったんですけれども、余り水面下で野党と連携をとって落としどころを探していますからというようなことはなかなか言える立場になかったものでありますから、はっきり申し上げることができませんでした。そこは心残りがあるところであります。
 民主党が掲げる政治主導というのは、客観的な能力の評価によって対象者リストをつくり、それから先は、大臣あるいは総理大臣の判断で幹部人事を行うということが正に政治主導の一丁目一番地であります。そこのところを我々が掲げてきたということは間違いではなかったというふうに思いますし、官僚主導から政治主導へということを標榜されている民主党政権は、何が一丁目一番地かということをしっかりと見つめ直してもらいたいと期待をしております。
 何かありましたら。これでお別れでございますから。いろんなことがあったね。正に激動の1年だったですね。絶好調でスタートしてから、終わったときには政権交代ですからね。
(問)今、タオルを絞り切る作業が限界に来ているというお話がありましたけれども、民主党は行政改革でかなりの財源を捻出したいというようなことをおっしゃっていますが、その実現性と課題についてどうお考えでしょうか。
(答)それはタオルを絞っていけば、最初はたくさん水が出るけれども終盤になれば水が出なくなるというのは、当然どの分野でもそうなんでありますが、そこで、質の行革というのは、行政の流れの工程を分析をして全体最適を図るという新しい手法で、それをやれば今までのただ絞るという作業に新しい要素が加わるんだと思います。それによって、本当に必要のない部分、あるいは統一してできる部分を持ち込めば、絞る余地は広がっていくんだというふうに思います。ですから、そういう質の行革を、顧客満足度という視点と、それから新しい仕組みに組み立て直すという2つの視点で見ていく必要があるんだと思います。そこがどこまで踏み込めるかですね。
 ただ、母数以上の行革はできませんからね。要するに、収入が55兆だとしたら、55兆以上の行革はできませんからね、仕事を全部やめちゃうということですから。だから、それは新しいやり方を導入するという、やり方を変えていくのは、是非トライをしていただいて、そこで合理化、効率化を図って、出てくる原資を新たな政策に向けていただくというトライは大いにやっていただければというふうに思います。
 ただ、果実を生み出すということを節約で生み出すという、これは当然限界がありますから、全体のパイを、果実を大きくしていくという経済成長戦略というものが基本になければこの配分はできないということは、政権としてはしっかり心に銘記をしてもらいたいと。果実は生み出さなければ配分はできないと。国家の収入というのは、経済を伸ばしていけば、2倍にも3倍にもなりますけれども、節約で2倍、3倍を目指すということは、母数を上回る節約はできないと。母数を上回る収入拡大は、経済を成長させていくという手法によって、これは可能になるわけでありますから。政府の経営も企業経営と同じでありますから、従業員の給料を増やす、ボーナスを増やす、節約して出しますからねという社長についていこうとする従業員は余りいないんじゃないかと。やっぱり業績を伸ばして利益を上げると、そのプランを描いてみんなで頑張ろうという会社に、やっぱり従業員はその社長を信頼するんではないかと思ってますから、そこを忘れてはいけないと思います。
 どうもお世話になりました。

(以上)