甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成20年10月24日

(平成20年10月24日(金) 9:42~10:07  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。
 私からは1点でございます。
 一部報道がなされているようでありますが、今日、規制改革担当大臣といたしまして、私がかねてから、経済産業大臣をやっていた当時から、ぜひ取り組みたいと思っておりましたライフサイエンスの分野に関する規制改革というものを、会議における検討テーマとして提案をしたいというふうに考えております。
 規制改革会議の有識者の方々も懸命に取り組んで、今日までしていただいているんですが、どうしても粒が小さくて、フロンティアを開くというようなものがなかなかなかったと。私は、ライフサイエンスの分野、医療の分野で、これは誰も損をしなくて患者に貢献できるイノベーションが起きる、そこで、その分野の産業も発展をすると、現状では、外国勢力にかなり席巻をされてしまっているというところを伸ばしたいというふうに思っておりました。
 私の21世紀構想というのは、日本全体をイノベーションセンターにすると、イノベーションのヘッドクオーターにすると。そこで生まれたものを国内外においてシェアをとっていくと。海外をそういうイノベーションの生産基地にすると。そこで上げた利益を日本に環流をして、さらにイノベーションに向かわせるということを、1年前に構想を世に問うということで発表しましたけれども、そうしたことに関連をして、ライフサイエンスの分野で、この分野が、いわゆるフロンティア分野だと思っておりましたので、これを提案をしたいと考えております。
 今日申し上げるのは具体的に申し上げますと、まず医療機器の臨床研究用承認制度の創設であります。これは、医療法や薬事法というものは、現代の医学の進歩というのを想定しないで設計をされています。ですから、医者が臨床用に医療機器を自分で加工して、それを使い、またそれをさらに加工して臨床にという、医者が加工し、つくったものについては、これは、薬事法上認められているんですが、医療法、薬事法、両方関係すると思いますが、そこの分野を専門の、このライフサイエンスにかかわる企業がつくると、これが抵触をしてしまうということ、この矛盾を抱えている。つまり、アマチュアがつくったものはいいけども、プロがつくったものはだめという。ですから、ここに臨床に関しては、もちろん安全を完全に確認するんでありますけれども、迅速な承認制度というのはできないだろうかと。
 それから、2番目が医工連携、医者とエンジニアの役割分担でありますが、これを可能とする規制改革であります。「自家再生医療」という言葉がありますけれども、自分の細胞をとって培養して、それを再生医療に使うということでありますが、その医者が患者の細胞をとるというところまではできると。しかし、それを培養して、再生医療に使えるようにするということは、医者の能力では、いわゆる分野の外でありますから、そこをライフサイエンスにかかわる企業が、より専門家としてバイオ技術を駆使して培養した細胞をつくると。それを患者のもとに移植するというのは、また医者の仕事でありますけれども、そういう医者とエンジニアといいますか、バイオエンジニア、ライフサイエンスエンジニアとの連携がスムーズに行くような措置と、これが患者の治療にとってもすばらしいことでありますし、その分野の産業群が一気に伸びていくということになるんではないかと、かねてから考えていたわけであります。
 さらには、高度医療評価制度の積極的運用、臨床段階での保険診療の併用、これは混合診療がいろいろ拡大するのを懸念する側の問題意識はよくわかります。今日、一部テレビで報道されていましたけれども、ちょっと違うんでありまして、この分野に関しては、混合診療を認めることが患者にも医療の世界にも資するんではないかということで、全面解禁をせよ云々ということで迫っているんではなくて、そうすると構えられちゃいますから、臨床分野について患者の利便とか医療の発展の立場から、この高度医療評価制度というのはありますけれども、これを積極運用していいんではないかと。今まで、確かこれは1件ぐらいしか認められていないんではないかと思いますから、その限定した分野に関して、開放することを懸念している人たちに配慮をして、その分野に関してはもっと積極活用をしてはいいんではないかという思いであります。
 それから、独立行政法人の医薬品医療機器総合機構等の機能や体制の強化。これは行革大臣からすると、どんどんスリムにということが私の仕事のように思われますが、実は迅速な検証・認可といいますか、そういうところを担当するところについては、マンパワーもこれは完全に不足しているんではないかということで、部分的に見ると、スリム化と反対になる、機能体制の強化だからなるではないかということになってしまうかもしれませんが、これは規制改革の観点から、より迅速な許認可・検証という点から、そこの機能強化をしてもいいんではないかと思うところであります。
 それから、スーパー特区、先端医療開発特区、この提案で要望された規制改革案への対応、これは従来から出ているところでありますから、これを加速をしたいというふうに思っております。
 規制改革会議におきましては、この申し上げましたライフサイエンスの分野も含めまして、第3次答申に向けて、他もありますから、審議を深めていただきたいと考えております。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)今日、顧問会議のワーキンググループがありまして、それは記者は傍聴可能と、公開という形になりましたけれども、その辺何か……。
(答)基本的には、議事は広く公開するというのが原則であります。ただ、委員の方の中には、誰はばかることなく、思いのたけをおっしゃりたいと、それがなかなか言いづらい環境にあるという方もいらっしゃるんでしょう。ですから、どう公開をし、どうそういう人たちの自由にものを言える環境を整えていくかということは、場合によってはぶつかってしまうことになるんでありますが、顧問会議自身がインターネット中継されております。顧問会議の座長とワーキンググループの座長にお任せして、政治的干渉はしないということにして決めてくださいというお願いをしました。そうしたところが、当初よりも開放していこうと。記者さん方の傍聴は認めると。冒頭のカメラ撮りもオーケーということで結論が出たようであります。これは、顧問会議とワーキンググループの協議の結果だということだと思っておりまして、それは尊重したいと思っております。
(問)規制改革の関係ですけれども、今後、厚労省側と調整をする形になると思いますけれども、交渉過程においては、例えば難航した場合には、多分、大臣自らが舛添大臣と接触するとか、そういうお考えはありますか。
(答)私は今日この発表をする前に、舛添大臣と、これは政治のリーダーシップ、大臣間のリーダーシップでやっていきたいという話をさせていただきました。舛添さんは基本的には了解をいただきまして、今日も話をしましたが、協力をしますと。事務的にはいろいろ正直ありますけれども、これは大臣間で、政治のリーダーシップでやっていきましょうという2人の確認はいたしました。
(問)それは今日の閣議前後……。
(答)閣議の前に話をしました。
(問)そのときの感触というのはどんな感じですか。甘利大臣が感じられる舛添大臣の。
(答)舛添さんは、もう問題意識は持っていたようです。ただ、事務的に反論が出たときに、その反論に対してちゃんと答えられる人を揃えたいということで、その点で協力してほしいということで、その協力についても話し合いました。
(問)現時点で想定される課題というか、これを実現するために何か想定されるハードルというのはどういうところでしょうか。
(答)結局、私は前に、これも大臣間の交渉で直に、柳澤厚労大臣のときにやりました革新的創薬の官民対話、これも事務折衝ではどうにもならなくて大臣間で協議をしました。
 そのときに柳澤大臣が言われたことは、政治家としてはよくわかるけれども、どうしても、厚生省というのは人の安全の最後の砦なので、過剰防衛になりがちなのは理解してほしいと。つまり、いろいろ規制改革、許可、認可に絡んで、人体への被害が出たときに最後の責任をとるのは厚生省であると。だから、普通の役所よりも安全に関すること、今までやっていなかった分野については、極めてナーバスになるということは理解してもらいたいという話でした。そういう点は、私も理解をいたします。
 厚生省が何でもいいよと始めちゃったら、やっぱり安全・安心の分野で人体にかかわることですから、これは、じゃあ最後のチェックはどこがするんだということは当然なりますから、そこはきちんと懸念されることを迅速にチェックするという体制を整えるということについては、全く異論はありません。
(問)そういう意味で言うと、臨床研究だとか自家移植についても、多分安全面での……。
(答)そうです。安全面について、こういう規制緩和をしたから、こういう培養したときにこんな問題が発生したとか、ウイルスがどう付着したとか、いろんなことで患者がより重篤になったじゃないかみたいなときに、この規制改革はどうなったんだというような話になると思うんですね。
 ただ、現状では、医者がやる分にはいいんですね、医者がやる分には。医者よりもバイオ技術というのは、バイオ技術者のほうが、ライフサイエンスの技術者のほうがプロであることには間違いないですね。だから、医者もやってはいけないということであるならば、またこれは一つの案ですけれども、アマチュアの培養に関してはですよ、培養に関してはそうプロではない人がやることがよくて、その培養に関して専門集団がやることについてはノーというのは、やっぱり法律の制度設計が今日を想定していないからだと思うんですね。だから、今の医療技術の発展という、ライフサイエンスの技術の発展ということを現状認識をして、それに見合った法体制、制度設計にすべきだと思うんです。
(問)大臣は株式をお持ちですけれども、昨今の、いわゆる金融危機それから株価下落をどの程度実感されているかということ、こういう問題は解散総選挙のときも微妙に影響というか、判断が絡んでくるんですけれども、その点どういうふうにお考えでしょうか。
(答)経済産業政策をずっとやってきた立場からするとですね、株の取引は悪だということになっちゃうと非常に困る、困るというか、資本主義市場経済、株というのは、業を起こそうとする人とお金を持っている人をつないでいるわけですね。株という、いわば信用だけの紙切れですよね。発行して、資本家からお金を集めて、そしてその事業に他人の金を使っていくための直接調達の手段ですから、間接金融たる銀行業以外のルートをつくるという意味で、極めて大事なのでありまして、この信用度合いが棄損してしまうということは、資本主義市場経済の根幹でありますから、まずその資本主義市場経済をつくるときには株式の取引市場をつくると。中国もそうですし、どこもこれがまず第一、インフラの第一なんでありますから、そこの信頼性をちゃんと回復するということが大事だと思います。
 ただ、政治家に関しては、インサイダーのことがありますから、そこは気をつけなきゃいけないと。だから、大臣になった場合には、株の取引をしないで預けておくということは、それなりに市場関係者にも理解をしていただけるかと思うんです。
 私自身も経済産業大臣をやっていたときに、いろいろファンドのアタックが、いろんなことがありまして、企業防衛策がちゃんととれているかどうか、我が国の基幹産業分野で、そういうことを心配した時期があります。そういうことのチェックというのは、いわば一つのインサイダー情報になりますから、そこは本当に気をつけなきゃいけないなということを感じておりましたから、政治家の株取引、情報が集まるところのは、もう本当にこれは慎重にしないといけないと。そのこと自身が「株は悪である」ということとは別なんだということをよく市場に理解をしてもらいたいというふうに思います。
 私の株は今、私の父親と母親が株をかなりやっておりまして、多分恐らく、その取引で私が大学まで出れたんだと思います。しかし、私自身は、特別、ベンチャー育成には非常に興味があったんでありますけれども、それ以外の取引というのはそんなに興味がない。ただ、友人が証券会社に行ってたりしたんでですね、いろいろ株の役割の大切さなんということは、よく飲んだ席で聞かされましたけれども、自身はそう熱心に取引をしているほうではありません。
 前の大臣のときに、ディズニーランド―あそこはオリエンタルランドというんでしたっけ、あの株をどうして買ったんですかと聞かれたんですが、実は、子供からあそこの株を買うと優待券が来るというんで、「お父さん、あそこの株を買ってくれない」と言われまして、貯金をおろして買いました。そうしましたら、あれは1,000株だったかな、俺買ったのは。持ってるのは1,000株だっけ、1,000株買いました。その株価だけは正直言って、気になっておりまして、株価下落と、あんまり下がってなかったと思うんです、オリエンタルランドというのは。
 ところが、失敗したのは、後で家内に言われたのは、優待券は500株単位で来るから、本当は500株ずつそれぞれ、例えば私と家内が買うということにしたほうが、優待券は2倍来たんだということを言われましたけれども、くだらない話ですけれども。それで買ったということです。
 それから、六、七年前ですか、友達がベンチャー事業を起こすということで出資してくれないかということで、いいよということで、出資をしました。ところが、1年半前、何か新しい事業展開をしていくので引き取らせてくれという申し出が来ましたけれども、大臣をやっている期間はもう移動ができないから勘弁してくれと、終わるまで待ってくれということで、終わった時点で出資額同等額、損も得もしません。500万出資したんですが、500万で渡しました。これは相手からの要望であります。利息をつけるとかいろんな話がありましたけれども、それはもう一切余計なことを言われるので言いませんということで、出資額だけで引き取ってもらいました。
 あと、端株が何か、これ本当に私困るんですけれども、両親が多分、私をいろいろ子供たちを学校にやるのに株をやったんでしょうけれども、細かな端株が出たんですね、売買ができない3株とか5株とか言うのがあったようなんですが、四国電力で何か3株だか5株だかあったのを後でわかりましたけれども、もう90になるお袋のことですから、わかんないんですね、離れて生活していますから。それがあったので、それはもう5株か何かを申請するのは嫌なもんで、それは売っちゃいました。もちろん、それは大臣をやめたときです。
(問)御自身の資産全体を見たときの評価というんですか、あと今回のこの全体の制度のあり方についてはどのように……。
(答)私の資産はどうなんでしょう、普通だと思うんですけども。他の1回生大臣から比べれば多いのかなと。鳩山さんから比べれば、はるかに少ないんですけども。何だっけ、質問。
(問)御自身の資産全体についての評価と、あとは制度全体についてのあり方……。
(答)制度はですね、要するに、資産をたくさん持っている人はいるなりの事情があるんでしょうし、ない人はないなりの事情があるんでしょうが、要は変化ですね。その変化、資産が増えていくのに疑義があってはいかんということで、そういう意味では、この制度でいいんじゃないんでしょうか。増えていったり減ったりした場合には、その理由があるでしょうから、それが正当な理由であるということがはっきりしていけばいいと。その間に不透明なことがあってはいけないということだと思います。
(問)あと麻生総理なんですけれども、いわゆる制度がスタートして、恐らく一番の資産家総理だというふうに思われるんですけれども、「金の心配をしなくていい」というような部分もありましょうし、またかえって庶民の心がわかるのかという批判も招きやすい部分もちょっとあろうかと思うんですけれども、資産家が総理になるということについては、どういうふうに受けとめていますか。
(答)それは、誰がなってもいいんじゃないんですか。
 自分のお金がたくさんあるという人は、不透明なお金を集めなくてもいいわけでありますし、お金、所得の多い人が庶民の心がわからないといったら、多分、みのもんたさんは、あの番組をやっている資格はないんだと思いますね。はるかに収入は物すごく、10億円以上じゃないんでしょうかね。
 しかし、ちゃんと主婦の心をつかんでらっしゃるということは、所得の多さと庶民の心をつかむというのは、別問題なんじゃないんですか。

(以上)