与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成21年4月17日

(平成21年4月17日(金) 19:07~19:37  於:中央合同庁舎第4号館2階220号室)

1.発言要旨

先ほど月例経済報告等に関する関係閣僚会議及び経済財政諮問会議が連続して開催されましたので、それぞれの概要を申し上げます。
 初めに、月例経済報告について御報告をいたします。
 景気の基調判断につきましては、「急速な悪化が続いており、厳しい状況にある」と、先月と同様の判断をいたしております。これは実態経済面のデータ等を見ますと、一つ、世界の景気後退は引き続き深刻であること。一つ、我が国では生産が極めて大幅に減少するなど、企業部門が悪化していること。一つ、個人消費の緩やかな減少など、家計部門への波及がみられることなど、これまでの状況に基本的な変化がないことを踏まえたものであります。
 一方、我が国経済の先行きにつきましては、当面悪化が続くと見られるものの、在庫調整が進展するにつれ、悪化のテンポが緩やかになっていくことが期待されます。ただし、生産活動が極めて低い水準にあることなどから、雇用の大幅な調整が引き続き懸念されるところであります。
 政府といたしましては、「景気の底割れ」を防ぐとともに、日本経済の成長力を高めていくため、「経済危機対策」の速やかな実施を図ってまいります。これまでの対策とあわせて、景気を下支えする効果が期待されます。
 次に、経済財政諮問会議について御報告いたします。
 第一の議題は「経済危機対策」についてです。
 今後、諮問会議で「基本方針2009」に向けて、財政健全化について議論を行っていくことといたしました。また、私から財務大臣として発言をさせていただき、対策における地方向け交付金について、確実かつ早期に、地方の事業が実施されることが重要とのお話を申し上げ、今後適切に取り組んでいくことといたしました。
 幾つかの意見を御紹介申し上げます。
 一つ、対策を着実に実行すべき。ただ、世界の経済状況は不透明である。果断な対応を引き続き図ってほしい。財政健全化目標について、2011年PB黒字化の見直しは必要である。現実的な目標をつくるべきである。
 別の議員からは、これは鳩山大臣でございますが、二次補正の6,000億も使い勝手はよいと言われたが、検証していきたい。今回は、前回は財政力1.05で交付金をカットしたけれども、今回はさらに1.05以上の財政力のところについても配慮をするようにしたい。95%補充で尻込みするようなことでは困るので、一つ一つの自治体と連絡をとって、今回の対策の実効を上げていきたいと。
 第二の議題は「未来開拓戦略」についてですが、二階大臣から御報告があり諮問会議としても了承をいたしました。
 最後の議題として「安心実現集中審議」に向けた議論をいたしました。次回以降の諮問会議で、本日の議論を踏まえ「安心実現集中審議」を行い、具体的な政策等について審議を進めることといたしました。
 幾つかの議論が出ましたので、御紹介申し上げます。
 一つは、格差そのものと格差を固定しないこととは、分けて考えるべきである。いろいろな政策の中で、少子化対策は成長政策にも貢献する。新しい目で検討すべきである。最大の格差対策は経済の活性化であるので、やはり経済の活性化と車の両輪とすべきである。
 別の方からは、高齢者への給付サービスが若い世代に比べると日本では非常に高いと。若年層の貧困という問題もある。少子化対策は、この意味でも大変に重要である。社会保障の中で一番大事かもしれない。
 総理からは、母子家庭の所得の低さには問題意識を持っている。また、OECDのデータは、現金給付だけで国際比較を日本とされるが、日本の場合はいろいろな現物給付があるので、そういうこともよく調べたいと、こういう御発言がありました。
 そして、最後に総理から、本日の締めくくりとして次の御発言がございました。
 まず「経済危機対策」については、経済危機対策は、生活者にとっての安心、未来への成長を見据えたものである。事業費で57兆、財政出動で15兆という過去最大のものとなった。「短期は大胆、中期は責任」と繰り返し申し上げてきた。このような大胆な財政出動をするからには、中期の財政責任をきちんと果たさなければならない。多くの借金を次の世代に残していくことは問題であると。そのことを心構えとして持たなければならない。その心構えの必要性がある。そのため、経済財政諮問会議で信頼性のある財政再建の取り組み方針を今後検討していただきたい。これは、通貨や国債の信任にもつながるものであると。
 また、総理から成長戦略については、今回の危機は、世界の経済や産業をめぐる競争の構造を一変させる可能性をはらんでいる。この世界的な転換期にピンチをチャンスに変えなければならない。当面の景気対策、財政再建の先にある、伸ばすべき産業分野の姿と、その実現の道筋を描いた未来開拓の成長戦略を取りまとめることができた。これは実りあるものとなるよう、目標や対策の推進をしっかりフォローアップしてもらいたい。
 また、「安心実現集中審議」については、次回以降の諮問会議では、「安心社会実現会議」での議論と密接に連携しながら、国民の安心を確かなものとするための具体的な政策等を議論していただきたい。議論の成果は「基本方針2009」や「中期プログラム」の改訂に反映していきたい。
 以上の御発言がありまして、諮問会議も終了いたしました。
 以上でございます。

2.質疑応答

(問)始めに月例の件なんですけれども、月例経済報告の判断なんですが、据え置きということですが、先行きの部分で、やや明るい見通しを久方ぶりに示されたかと思うんですが、この先行きの見通しについて、大臣御自身は、このまま緩やかになっていくのか。それとも、またちょっとアメリカの数値が悪いものが出始めたりしていますけれども、どのように推移していくのかというお考えをちょっとお聞かせいただけますか。
(答)我々は希望を持って進まなければなりませんけども、景気に対する判断は、先月と全く変わっておりません。
(問)もう1点、先行きに関するところで関連なんですけれども、今回の変化の一つとして、為替とマーケットに関するリスクの部分を先行きの見通しから落としているんですけれども。月例の先行きで、為替と株式のマーケットに関するリスクの部分をすっぽりと今回落としたんですけれども、こうした点について大臣の御見識はいかがですか。
(答)為替は今100円を挟んで極めて安定していると思っておりますし、株価も9,000円近くまでいっておりますから、それは将来のことはわかりませんけれども、一応現時点では、比較的安堵感のある安定状況ではないかと、私は思っております。
(問)月例で1点、追加で伺いたいんですが、先月と判断は全く変わらないわけですけど、それまでずっと判断はずっと下方修正を続けていたんですが、多少底打ちの兆しというか、その辺については見えつつあるというか、どこかに底打ちの兆しがそろそろ見えるという期待というか、兆しは見えているというふうにお感じなのかどうか、かすかにでもですけれども、その辺はどう見ていらっしゃるんでしょうか。
(答)例えば在庫のところだけ見れば、在庫調整は相当進んでいるという、その1点だけを見れば、そういうことは言えるんですけれども、あるいは街の景気ウォッチャーの話を聞くと、比較的明るい兆しの声が聞こえてきますけれども、やっぱりまだ、底打ち感というものを持つには、まだ至っていないだろうと思っております。
(問)諮問会議のほうで2点ほどお聞きいたします。
 今日から実質的に「骨太09」の議論が始まりましたけれども、今後の「骨太09」の見通しとしまして、ここ数年の「骨太方針」と異なる特徴点というのは、あえて言うとどういったものになるとお考えなのか。今日の民間人のペーパーを見ておりますと、今年はやはり社会保障などの安心という分野や、この財政再建の新たな目標というところが大きくクローズアップされるのではないかなと思うんですが、その辺の見通しについていかがでしょうか。
(答)「2009」と「2006」を仮に比較した場合、やっぱり一番大きな見通しの違いというのは、世界経済の全く予想しなかった変化、また経済危機プラス世界の金融システムが揺らいでいるという点でございます。
 これにつれまして、「骨太2006」が前提とした成長率も、これは改訂せざるを得ませんし、そういうものを改訂いたしますと、歳入の予測というものも当然変わってくるわけでございます。そういうもろもろの変化を考えて、「骨太方針」をつくっていかなければならないわけでして、明白に幾つかの点で既に「2006」とは状況が違っている。予想の範囲を超えて状況が違っているということだと思っております。
(問)もう一つ補足で。「安心社会実現会議」というものと二人三脚で今後、「骨太09」の論議を進められていくと思うんですが、やはり今年の中心テーマとなるのは、こういった安心分野というか、社会保障というところが、やはり大きくクローズアップされるということになっていくのかということについて、いま一度御所見をお聞きできますでしょうか。
(答)まず諮問会議では、やはり具体的な政策に結びつくようなことをやっていただくということで、やはり「骨太」の中に盛り込むべき、特に社会保障分野の政策については、「骨太2009」を書くまでに諮問会議としては相当成熟した議論をしていただきたいと思っております。
 次回は、社会保障問題を議論する前提としての、格差の問題をいろいろな資料を使って勉強したいと思っております。
(問)今日は総理から、信頼のある財政再建の方針をつくってほしいという指示があったということなんですが、その一方で、今日は民間議員から、財政健全化に向けてということの提言がありまして、その中で「政治的なコミットメントの重要性」という項目があります。この「政治的なコミットメントの重要性」ということについて、大臣はどう受けとめたか。まずは、今までは財政再建といいながら、その目標はありましたが、公約としてコミットメントという言い方はしていなかったと思います。今までよりももっと、強い意思を示せというように大臣として受けとめたのかどうなのかということが1点。
 また、ここで「オールジャパン」という言い方もしております。これであれば、橋本政権のときの財政改革法のような、法律として財政再建をきちんとやっていくんだというものを示すというところまで考えるべきだとお考えなのかどうなのか。その2点についてお願いします。
(答)「中期プログラム」というのは、ある種の麻生内閣としての政治的コミットメントであって、これは閣議決定まで昇格をさせて、なおかつ税制の附則で国会の意思として、これをコミットしていただいたわけでございます。
 これだけで十分かどうかという問題は、やはり経済が予想以上に悪い。歳入もそれと同じように落ちていくだろうと。そういう中で、これからどうするんだという道筋を、やはり国民にお示しする必要があると。それに対して、断固たる決意をもって臨むという、そういう姿勢をお示しすると、それが大事であり、それが政治的コミットメントと呼ばれるものであると思っております。
 どういう内容になるかというのは、これから審議をしないと確たることは申し上げられませんけれども、しかしながら、財政再建の重要性というのは、相当大きな補正予算をつくった後だけに、なお一層、私は重要になっていると思っております。
(問)今のお話、大変よくわかったんですが、財革法といったような「中期プログラム」のほかに、新たに法定化すべきものがあればということはお考えになっていますでしょうか。
(答)財革法という法律は、非常にいい法律だったんですけれども、歳出削減が中心の財政再建の法律であって、その中には、歳入改革の問題と、経済の成長力の問題が落ちていたと。その当時からすれば、落ちていても不思議のない状況だったわけですが、やはり仮に将来、今は全く財革法のところまで構想が行き届いておりませんけれども、やっぱり今の考え方は、持続可能な財政、持続可能な社会保障制度、それから負担は広く分かち合う、そういう多分3つの思想が根底に流れているんだと思いますし、今日、総理も言及されていましたけれども、やっぱり将来の世代に負担を残さない、できるだけの努力をすると。これが総理の御意思だと思っております。
(問)「安心実現集中審議」の中で、次回以降、格差を中心に議論されるということなんですけれども、大臣の御認識をちょっとお伺いしたいんですけれども、格差があることが、やはり国民の不安感、国民不安につながっているというのは、やっぱり一つの大きな理由なのかという点が1点。
(答)次回は、漠然と「格差」とか「格差感」とかというのを議論するのではなくて、具体的な数字で年齢階層別とか、子供の貧困の問題とか、独居老人の問題とか、そういうデータに基づいて、実証的な議論をしたいと思っております。しかし、これはやっぱり議論をするときには、やっぱりベーシックな知識として、皆さんが持たなきゃいけない話なので、それの実態というのを、まず統計の上からきちんと把握しようという試みでございます。
(問)大臣と私が違うように、生まれながらにして、やっぱり違いというのが、生まれながらにして家庭環境の違いとかいろいろあって、そういう部分の差というのを政策的な対応で埋めていけるのかという、素朴な疑問があるんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
(答)おそらく分類としては、「格差」と「格差感」という2つあるのと、「容認すべき格差」と「容認することはできない格差」、そういうふうにカテゴリカルに考えることはできるので、これはみんな、全くおんなじという社会はつくることは多分できないだろうと思いますけれども、言われなき格差というものはあるかどうかというのを実証的に勉強しなきゃいけないと、こういうことだろうと思っています。
(問)今日の民間議員ペーパーで、中長期的な財政健全化のところで、「「基本方針2006」の歳出改革を継続する」というふうに書いてありまして、これは具体的には多分、社会保障費の2,200億円削減とか公共事業費の削減みたいなところを継続したほうがいいというふうに民間議員の方は仰っているのかなと思うんですが、この点については今後も続けていくということでよろしいんでしょうか。
(答)結局は、全体の歳出改革のところは、「骨太2006」の線に沿ってやっていくということが、全体の雰囲気だろうと思っております。
(問)ただ社会保障費の2,200億円削減なんかは、去年の段階では、もうかなり限界じゃないかという話もあったんですが、それもやはり「09」でも続けていくという理解でよろしいですか。
(答)2,200億という話は、象徴的な数字として議論されているんですけれども、誤解していただきたくないのは、今ある社会保障費から2,200億切るという話ではない。これは、8,000億ぐらいの社会保障費の増分を容認しているという数字ですから、ほうっておけば1兆円ぐらい増えていくものを、8,000億円ぐらいで抑えようという話なので、何かイメージとして社会保障費から2,200億切っていくという話にとられがちですけれども、決してそういうことではなくて、高齢化等で必要な社会保障費は当然認めると。しかし、その中でも、倹約や効率化を進めて、2,200億ぐらいは増える分から切っていこうということで、しかしながら、いろんな手当で事実上、2,200億、本当に歳出が必要なところにはきちんと予算上の措置をしているということも、もう一方では事実であると思っています。
(問)財政再建の目標なんですけれども、今の2011年のプライマリーバランスの黒字化というのは難しいという認識は皆さん共通だと思うんですが、新しい目標については、引き続きプライマリーバランスに焦点を当てるのか、それとも大臣が仰っているような、対GDP比の債務を考えていくのか。それとも、プライマリーバランスとそういったGDP比の債務と両方の合わせた目標をつくるのか。どういったイメージで考えていらっしゃるんでしょうか。
(答)どんなイメージをつくっても、「プライマリーバランス」という橋は渡らなきゃいけないわけです。ただ、橋の渡り方が問題なんで、橋を渡ったら地獄に行ったとかいうことじゃ困るんで、橋を渡って財政が健全化方向に向かうという、そのことをきちっと確保しなきゃいけないということがあります。ですから、プライマリーバランスという考え方を捨てたわけではないんで、むしろ、プライマリーバランスをどういう状況で到達することが望ましいのかと。そこがポイントで、これはフローとしてのものの考え方で。
 私がもう一つ言っておりますのは、これは「骨太2006」の中にも書いてありますように、2010年代の中ごろに債務残高の対GDP比を一定にしましょうというのは、ストックとしての財政再建目標を言っていると思っております。別の側面から一つのことを語っているというふうに考えていただきたいと思っています。
(問)今のフローとストックの目標については、いずれも以前の2011年というのと一緒で、2000何年という年次を区切って目標を立てるということでよろしいんでしょうか。
(答)年次のない目標というのは、目標でないんで、目標を掲げるときには、多分、年次は入ってくるものと思っています。

(以上)