与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成21年2月19日

(平成21年2月19日(木) 19:07~19:30  於:中央合同庁舎第4号館2階220号室)

1.発言要旨

今日は、経済財政諮問会議並びに月例経済報告が続けてございまして、5時半から諮問会議、それが終わりましてから月例経済報告でした。
 まず諮問会議について御報告申し上げます。
 本日の諮問会議は、現下の厳しい経済情勢におけるマクロ経済運営について取り上げました。
 総理からは最後に、先日公表されたGDP速報値では、実質経済成長率がマイナス12.7%となるなど、我が国の景気は急速に悪化している。日本経済は、戦後最大の難局に直面していると考えている。この難局に、大胆かつ迅速に当たっていきたい。
 政府としては、総額75兆円の経済対策を速やかに実行していくことが、最大の景気対策と考えている。まずは第二次補正予算のうち、財源関連法案の必要ない公共事業について、可能な限り執行を促進させるとともに、その他の事業についても、関連法案が成立し次第、執行を直ちに開始し、速やかな実施を図りたい。21年度当初予算についても、早期の成立に努め、成立後、年度当初から速やかな執行を図りたい。また、もとより今回の世界不況は、日本だけの努力で十分な対応ができるものではない。したがって、国際協調を大切にしつつ、国民各層、各企業、各地域、団体の皆さんとともに、まさにオールジャパンが一体となって対応してまいりたいとの御発言がございました。
 本日は、残念ながら議論を行う時間が十分にとれませんでした。お手元に配布された資料を御参考にしていただきたいと思っております。
 続いて、月例経済報告等に関する関係閣僚会議の概要について御報告いたします。
 景気の基調判断につきましては、「急速な悪化が続いており、厳しい状況にある」と下方に変更いたしております。これは、世界の景気が後退し急速に深刻化する中で、輸出や生産の大幅な減少が続いた結果、経済活動の水準そのものが低くなっていること、個人消費が緩やかに減少するなど、企業部門の悪化の家計部門への波及がはっきりしてきたことなどを踏まえたものであります。
 我が国の経済の先行きにつきましては、当面、悪化が続くと見られ、急速な減産の動きなどが雇用の大幅な調整につながることが懸念されます。加えまして、世界景気の一層の下振れ懸念などのリスクに留意する必要があると認識しております。
 政府といたしましては、景気の底割れを防ぐことが重要と考えており、景気対策を最優先し、75兆円規模の経済対応の実施により、「不安の連鎖」の阻止に向けた対応を図ってまいりたいと思います。
 いろいろな御意見がございましたが、株式市場対策を総合的にやるべしという御意見、民間貸出が増えているけれども、信用保証のついた中小企業に対するものが増えているのではないか。海外に出ている日本企業の資金繰りは苦しくなっているのではないか。大手銀行は、融資先選別が強まっていて、むしろ貸出を減らすことによって、自分たちの体力を温存している傾向があるのではないか。いろいろな御意見がございました。
 これに対しまして、順番は相前後しますけれども、日銀総裁から、安全弁として日銀の株の買い入れを来週月曜日から開始するというお話がありました。また、金融担当大臣の立場から、私は、銀行がやや消極的になっていると。やはり本来の金融仲介機能という責任を果たしていただけるように、私からもいろいろ働きかけたい。また、海外の企業の資金繰りに関しましては、JBICの機能強化、活用強化を早急に検討したいという発言をいたしておきました。
 以上でございます。

2.質疑応答

(問)諮問会議の部分で二、三お伺いしたいんですが、まず、この民間議員の提案があって、いろいろこれをベースに議論したと思うんですけれども、現在、与党などが言っている追加経済対策、平成21年度予算の補正も含めて、そういったものが必要かどうかという議論は今日はなかったんでしょうか。
(答)紙に書いてあることのみが説明されまして、そこまで議論は到達しておりません。
(問)ではもう1点だけ。この民間議員の提案の中には、GDPギャップが10-12月期で約20兆円ありますと。これを公需、なかんずく公共事業で埋めること自体が政策の目的ではないという御提言があったわけですけれども、これについて出席者の間から意見があったのかということと、大臣御自身はこういった考え方についてどうお考えなのかをお聞かせください。
(答)出席者からは、何の御意見もございませんでした。
 公共事業の経済に対する有効性というのは議論が分かれるところでございまして、公共事業は、瞬間的には効き目のある財政出動でございますけれども、波及効果がいまひとつであるというのが、やや定説になっているのではないかと理解をしております。
(問)重ねて、要するにGDPギャップが20兆あるとして、それを20兆円の財政出動で埋めるというような考え方の是非についてはどう思われますか。
(答)いろいろ「頭の体操」をしておりますけれども、自信を持って私の意見を言う段階ではないということです。
(問)月例経済報告の点について伺いたいんですけれども、5カ月連続で下方修正という、この事態は率直にどう見ておられるか。この危機の度合いが深まっているという御認識なのかどうか。
 あと、今後、2月ですけれども、1-3月のこの景気の落ち込みというのは、やはり深刻にとらえていらっしゃるのかどうか、その辺の御認識をお願いできればと思います。
(答)まず、経済の実態がどんどん落ちているわけですから、月例経済報告がその都度、下方に修正されることは当然のことだと思っております。
 1-3月については、5月にならないとQEのことは申し上げられないわけでございますけれども、民間のいろいろな研究者の御意見を聞いても、楽観的なことを言われる方は一人もいないというのが現状でございます。
(問)先行きの件で重ねて確認なんですが、大臣は前回の月例の会見の中で「数カ月はよくならない」という表現を使われていたわけですが、今回、参考資料で出ているエコノミストの意見の中でも、L字型になるという意見が、これはおそらく複数出ているかと思うんですが、その先行きに対する認識を改めてお伺いできますか。
(答)千里眼であれば、あなたの御質問にうまく答えられるんですけれども、やはり世界の経済の動向と連動しております。
 ただ、この資料の中にありますアメリカのエコノミストたちの分析を見ますと、09年の第3四半期から上向くというのがありまして、そういう意味では、我々が日本で判断している話は、やや悲観的なのか、向こうがやや楽観的なのか、少し感じが違うのではないかなというふうにも感じておりますけれども。
(問)今回の月例ですけれども、個人消費が減少していると、緩やかに減少しているという形で明確に減少傾向になったという判断をされました。その背景には、やはり失業率は、まだそれほど高まってはありませんけれども、今後かなり高まってくることが予想されているということで、雇用関係の悪化と、あと賃金が減少していく。特に、ボーナスとか残業だけではなくて、実際の通常の所定内の賃金まで下がるんじゃないかという方向になってくるというおそれが指摘されています。
 そこで、特に失業、雇用関係の今回の不況のインパクトはどのくらいになるのか。それに対して政府は、ではどういったことを考えているのか。そのあたり、現在わかる程度で結構ですので、よろしくお願いします。
(答)いろんな学説がありまして、生産が一気に落ち込んだときには、雇用数の減にどのぐらい響くかという、いろんなことがあります。それはまだわかりませんが、消費が落ち込んでいるというのは、消費者の消費態度が極めてディフェンシブになっているという側面もあるでしょうし、今御指摘になられたように、自分の雇用に対する不安もあるでしょうし、実際に雇用を喪失したことによる所得の喪失ということも影響してくるでしょうし、さまざまなことが原因となっていると私は思っておりますが、通常は、個人消費というのは、比較的不況に強いというのが過去の例でありましたけれども、今回は緩やかでもありますけれども、消費自体にも影響が出始めたということは、我々は十分注意し、これからの政策の中で、このことを十分受けとめてやっていかなければならないと思っております。
(問)諮問会議の有識者議員のペーパーについてお聞きします。
 「政策資源の総動員」の中で、「Wise Spendingの断行」というのがあります。大臣も常日ごろ言われていることかと思うんですが、この経済の下支えとともに、この「賢明な支出」として、低炭素革命とか健康長寿という成長戦略というものが上げられておりますけれども、この内容についてどのように評価されているのかということと、今後とられるかもしれない追加経済対策では、こうした考え方というのは、やはり柱になっていくというふうにお考えになられておりますでしょうか。
(答)今日は吉川先生のこういう重要なお話をお伺いしたということで議論はしておりませんけれども、「Wise Spending」という言葉は、そもそもケインズが使ったというふうに、前から伺っております。
 そういう意味では、こういうものの考え方を教えてくださったのは、今後いろいろな局面で大事な教えであるんだろうと、今日受けとめておりました。
(問)先ほど月例の御説明で大臣が御発言になったというJBICの機能強化、活用強化を検討したいというのは、これは具体的にどういうことなんでしょうか。
(答)基本的には、もともとJBICというのは、輸出入金融を中心にやったわけですが、そのほかにもいろいろ投資とか、いろいろな機能を持っております。JBICがそもそも持っている機能の中で、海外で活動している日本企業に、融資という機能を果たせるかどうか。また、果たせるとしても、それを強化するためには、どういう選択肢があるかというのを検討課題として申し上げたわけです。
(問)今日の民間議員ペーパーの中で「輸出頼みの経済のからの脱却」という言葉があるんですけれども、大臣は以前会見で、ある程度輸出で外貨を稼ぐことは不可欠だという考えを示されていると思うんですが、具体的にはどのような部分で輸出頼みから脱却していけばいいというふうなお考えをお持ちでしょうか。
(答)これは、なかなかそう簡単な話ではありませんが、今日の吉川先生のお話ですと、日本が成長したときにどの分野が貢献したかというと、昭和の時代までは、やはり日本の経済が回復する過程というのは、内需が主導したと。その中に表がついていますけれども、そういう御説明がありました。
 今回の景気の回復過程では、やっぱり輸出が図抜けていたというのが特徴的なことでございまして、そういう意味では、政治、政策の課題としては、内需というものをどうやったら増やすことができるのか、これは大きな課題であるわけですけれども、月例経済報告の中で、齋藤統括官が御説明をされましたけれども、雇用が増えている分野というのがありまして、それを見ますと、やはり社会保障関係とか、そういうところでやはり雇用が増えているということは、今後、内需の増える方向に非常に重要な示唆を与えている事実だと、私は思っております。
(問)今回の諮問会議と直接関係がない質問で恐縮なんですが、与謝野さんは今後、財務と金融と経済財政、3大臣を兼務されるということなんですが、官房長官は予算通過後までとかいうふうに仰ってもいるんですが、大臣としては、この兼務という状態をいつぐらいまで続けるお考えがあるのかというのがあれば。
(答)私が私を任命したわけではないんで、残念ながらお答えがありません。
(問)月例の件でお尋ねします。
 今回、需要の落ち込みが個人消費にも飛び火したということで、総需要全体の、需要全体の今後の落ち込みが加速することが懸念されるんですけれども、そういったことも踏まえまして、今後デフレ、あるいはデフレの中でも特に、たちの悪いデフレスパイラルといったような状況になる可能性というのはあるのかないのか。その点について、大臣の御所見をお願いします。
(答)総理の御発言にもありますように、底割れは絶対防がなきゃいけない。底割れというのは需要が減少する、生産が減少する、生産の減少がまた需要の、消費の減少につながるという、いわば非常に典型的な、そういう縮小するスパイラル、これはどんなことがあっても避けなきゃいけないと。それは、政府の中の共通認識だと思っております。

(以上)