与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成20年12月22日

(平成20年12月22日(月) 12:46~13:22  於:記者会見室)

1.発言要旨

月例経済報告等に関する関係閣僚会議が開催されました。その概要を御報告いたします。
 景気の基調につきまして、「景気は、悪化している」と下方に変更いたしております。これは、世界経済が一段と減速する中で、輸出や設備投資が減少し、生産や企業収益が大幅に減少するなど企業部門の状況が急速に悪化していること、第2に、有効求人倍率が大幅に低下し、派遣労働者等の雇い止め、解雇、新卒者の内定取り消し等の深刻な問題が生じるなど、雇用情勢が急速に悪化しつつあることなどを踏まえたものでございます。
 我が国経済の先行きにつきましては、当面悪化が続くとみられ、急速な減産の動きなどが雇用の大幅な調整につながることが懸念されます。加えまして、世界的な金融危機の深刻化や世界景気の一層の下振れ懸念、株式為替市場の大幅な変動の影響など、景気を更に下押しするリスクが存在することに留意する必要があると認識しております。
 政府としては、生活対策に加えまして、12月19日、新たに「生活防衛のための緊急対策」を取りまとめたところであり、国民生活と経済を守るため、「生活対策」の実現及び税制改正に併せまして、20年度第二次補正予算及び21年度の予算において、果断な対策を実施することとしております。
 以上でございます。

2.質疑応答

(問)まず「悪化」という表現なんですけれども、これまでは経済が最も深刻な時に使われていた表現だと思いますけれども、それを踏まえて経済の認識というか、底が近づいているのか、それともどういう状況にあるのか、改めて認識をお願いします。
(答)日本の経済は、日本経済として独立して成り立っているわけではありません。世界経済の一翼を担っているわけでして、通商、金融、人的交流、あらゆる面でいわば経済に関しては国境のない経済といってもいいほどの状況であると思っております。従いまして、他国の経済状況に影響されることは、一つ貿易面だけではなく、金融等あらゆる面で世界経済とつながっているということを考えますと、アメリカを始め諸外国の実体経済、金融の状況等、まだまだ解決しなければならない問題が多く存在するということは、我々わかっているわけでして、そういう意味で上振れする状況というのは考えづらい。むしろ下振れする要素というものは、やっぱり懸念されるという状況であると思っております。
(問)先行きなんですけれども、重ねてお伺いしますけれども、今回企業の関係の指標がすごい悪かったということで、今後雇用というのはもう既に悪化しつつあるということですけれども、雇用も更に悪くなることも考えられて、あと消費が悪くというふうに波及するということが考えられるわけですけれども、そのあたりの御認識をお願いします。
(答)いわば今は不安というものをあらゆる国、あらゆる企業、あらゆる個人が持っているという時代状況ではないかと思っております。せめて国内においては、そういう不安の連鎖が続くようなことはあってはならないと。麻生政権の下で行うこととしている、いわば事業規模75兆の経済対策も、この不安の連鎖を断ち切るというためにあらゆることをやろうとしているわけです。普段では決して許してはいただけないような、また市場原理という原則からは外れることを多く行うわけです。例えば株式の買い入れ10兆とか、あるいは日本の中央銀行たる日本銀行が企業リスクを背負うと、すなわちCPの買い入れについて極めて弾力的な方針を打ち出した等々、そういう連鎖を断ち切るという作業が、まず我々の第一の仕事だと思っております。
 今は、明るい明日を語るのではなくて、暗い明日にならないようにいかにするかということに政策は焦点を当てているというふうに私は考えておりまして、そういう点では、現時点で日本政府及び日本銀行が持っているあらゆる政策資源を総動員しようと、そういう姿勢で日本経済をとにかく底割れしないようにやっていこうという非常に強い決意を政府も日銀も持っている、そういう状況であるというふうに私は判断しております。
(問)言葉じりをとるようで恐縮なんですけれども、ということは、今政策的な努力を怠ると、日本経済は底割れするぐらいの危険性があるという御認識でいらっしゃるということでよろしいんでしょうか。
(答)これはアメリカ経済がどこまで悪くなるのか、いつ立ち直るのかということはいろいろな説がありますけれども、結局は定説はありません。かなり長引くだろうというのが一般的な常識になっております。その間、プラスの成長率を目指すとか、そういう明るい展望ではなくて、世界経済が実体経済面でも、あるいは金融という側面でも悪化していく、そういう懸念が非常にある時には、やはり我々が持っているあらゆる政策手段を動員して、底割れを防ぐということが大事だと思っております。
 なぜそういうことを申し上げるかといいますと、1929年のウォール街の大暴落で始まった世界大恐慌というのは、実は1929年その年には危機だという認識がなかったわけです。ですから、せめて今とあの時代との違いは、いち早くその危機を予知しているというところが、やっぱりあの時よりも現代のほうが優れたところだろうと思っておりますし、また政策手段も財政出動、金融政策、あらゆるものを駆使してやっていこうと。これは底割れの危険があるかと言えば、何もしなければ日本は来年は間違いなくマイナス成長になってしまうわけで、マイナス成長の世界は放置しないというのが我々の経済政策でございます。いろいろな危険な要素がまだまだ世界中に転がっているので、それがどういう影響を日本にもたらすかというのは、まだまだこれから見ていかなければならないと思っております。
(問)長年日本経済を御覧になってきて、今日、政府がようやく悪化という認識を国民に示し、国民実感と一致することになったわけですけれども、これは大臣の直感として、よくおっしゃるように来年1年間はやっぱり厳しい時代が続くのか、それとももっと長くなるのか、その辺の距離感はいかがでしょうか。
(答)これは神様でないとわからないんですけれども、来年は耐え忍んで、悪化が更に悪化を呼ぶということをしない努力を、政府も企業もやらなければならない年だと思います。この状況がどのくらい続くかというのは、その予測は極めて難しい。これは多数の要素から成り立っておりますし、日本政府のビヨンドコントロールという言葉があるんですけれども、日本政府の制御不可能な世界で起きる話の影響を受けるということで、不確定要素は非常にたくさんある。したがって、やはり他の国々の経済状況を見ながら、日本の状況がどうなるかということを判断していかざるを得ないという側面があると御理解をいただければと思っております。
(問)景気が悪化する中で、外需に対しての内需の拡大の重要性については改めて。
(答)内需ということを考えますと、個人消費、企業の設備投資、国の社会資本形成、あるいは住宅建設等々ありますけれども、内需拡大というのは言葉で言うのは簡単ですけれども、実際政策を打つ時に、内需拡大という政策は、いわば無理な財政出動は仮にあったとしても、そのほうはとれませんから、やはり考えられるのは、不安が不安を呼ぶ、萎縮が萎縮を呼ぶということに対して、企業も個人も正しい経済状況の認識が持てるように、我々としては状況を的確に、透明性高く皆様方に御説明することであるというふうに思っております。
(問)景気の底割れを防ぐのが最優先ということだと思うんですが、10月以降の経済指標の急速な悪化を見ると、企業部門は既に底割れをしているような状況だと思われます。個人消費はある程度支えられているので、何とか底割れしていないという状況だと思うんですが、そこで、今の日本経済の新しい展望を語る時期というよりも、底割れを防ぐことが重要だというトーンで先ほどおっしゃられたと思うんですが、となると、先の日本経済が明るい展望が開けた時期の消費税の増税を含む税制の抜本改革に力を今の時点で注ぐというのは、国民の間に違和感も出てくるんじゃないかというふうに想定されます。このあたり、大臣の御持論では、もちろん財政の健全化は重要だとは思うんですが、どうお考えでしょうか。
(答)やっぱり人間は優れているのは、今のことだけでなく、将来のことも考えられる能力を持っているということだろうと思っていまして、局面が転換した時にどういうことをするかということをあらかじめ考えておくということは、私は賢いことであって、愚かなことではないと思っております。
(問)今のに関連するというか、今、個人消費が底支えというのは共通した認識だと思うんですが、その底支えを脅かすような雇用の状況というのが今起きているわけですけれども、麻生内閣、与謝野大臣御自身も雇用に力を入れるというふうな御発言を繰り返されていますが、改めて雇用面の現状認識と先行きに対しての対策というのはどういうふうにお考えですか。
(答)今は失業率もまだ5%に達していない、有効求人倍率は悪化したとはいえ0.8あるという状況です。これは、雇用対策と一口に申し上げても、マクロの経済が大きなマイナスにならないということは多分大前提であると思っております。それと、一つは失業された方が、失業保険の世界はありますけれども、やはり再就職の機会というものを提供できるように、税制、財政上いろいろ考えていくということも一つ。個人消費は、労働分配率がこの10年間ぐらい見ればそう上がっているわけではないんで、そういう意味では限界はあったわけですが、これから個人はますます用心深くなって、まだこの車はあと3年走れる、5年走れるということで、やはり買い控えというものを、例えば耐久消費財、自動車等について考えられるわけで、そういう意味では不安が不安を呼ぶ、萎縮が萎縮を呼ぶということについて、やはり政府として現状を正しく国民に伝えるという努力をしていくということが一番大事なことだと思っております。
(問)先ほどの質問に関連するんですが、「中期プログラム」に関する政府内での調整が大分佳境を迎えてきて、概ね今消費税の時期については明示する方向というふうにされておりますけれども、これについて原案どおりの方向になりそうですが、現時点での大臣の現状認識についていかがでいらっしゃいますでしょうか。
(答)今与党内で調整が進んでいるわけでして、現状については与党にお任せするしかないわけでございますけれども、政府は政府として一定の考え方があるということも多分与党の皆様方にも御理解をいただけるんではないかということを期待しているということしか現時点では申し上げられません。

(以上)