与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成20年12月19日

(平成20年12月19日(金) 9:55~10:14  於:記者会見室)

1.発言要旨

 本日、「生活防衛のための緊急対策」及び「21年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」に関する経済対策閣僚会議及び閣議が開催されました。その概要を御報告申し上げます。
 「生活防衛のための緊急対策」は、国民生活と日本の経済を守るため、果断に対策を実施するものであります。特に、年末を控え、雇用問題及び企業の資金繰り確保を最重要課題として、必要な施策を取りまとめております。
 経済見通しでは、平成21年度においては、世界的な景気後退が続く中で、内需、外需ともに厳しい状況が続きますが、累次の対策による効果が見込まれると ともに、年度後半には民間需要の持ち直しなどから低迷を脱していくことが期待されるとしております。こうした結果、国内総生産の実質成長率は0.0%程 度、名目成長率は0.1%程度になると見込まれております。
 以上につきましては、既に皆様方には、事務方から詳細な説明をさせていただいていると思います。
 そこで、景気対策の総額は一体幾らかといいますと、3つに分けますと、一次補正でやりました「安心実現のための緊急総合対策」は、事業規模で11兆 5,000億円、予算額としては1兆8,000億円、「生活対策」は27兆円、12月19日決定のものは、財政上の対応として10兆円程度、金融面での対 応33兆円程度、というのを、重複を省いて足し合わせますと、総額75兆円でございます。このうち、財政措置は12兆円程度、金融措置は63兆円程度でご ざいまして、財政措置の12兆円は、対GDP比で概ね2%でございます。
 諸外国における経済対策、すなわち財政措置の対GDP比と比べてみますと、米国では対GDP比約1.1%、英国では約1.4%、欧州では約1.5%でございますから、国際的に十分比肩し得るレベルの経済対策を行ったと思っております。
 以上でございます。

2.質疑応答

(問)政府経済見通しの成長率について、民間調査機関は、政策効果を織り込んでマイナス成長というふうに予測しているところが多いんですが、本当にマイナス成長を回避できるのか、この可能性やリスク要因についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
(答)マイナス0.8%程度という計算結果が出ておりますが、しかしながら、減税及び諸々の財政支出がございますから、こういういろいろ政府が考えた税財政上の対策がうまく動いてくれれば、その0.8を多分帳消しにして、概ね0.0になると。そういう考え方に基づいてこの数字が決められております。
(問)経済見通しで定額給付金の効果を見込んでいますけれども、40%が消費に回るというふうに試算されていると思うんですが、この生活防衛的な消費行動だと、もっと貯金に回す率が多いんじゃないかという見方もありますけれども、これについてはいかがでしょうか。
(答)地域振興券の場合は、地域振興券を配布しまして、もちろん消費に回ったんですけれども、総額の7割近くは実は現金支出に代替するものであって、地域振興券による需要の純増は、32~33%でないかというふうに推定をされております。
 今回は、この2兆円を全部使うということになりますと、0.4%の理論上の押し上げ効果がございますけれども、多分全部は使わないだろうと控えめに見ておりまして、0.2%程度の影響ということを前提に全体を計算しております。
(問)では、この4割が消費に回るというのも、控えめな試算というところなんでしょうか。
(答)これは現金ですので、多分皆さん何らかの形で使われるんではないかと期待しておりますし、不況の中で生活は厳しくなっておりますから、生活上必要性の高いものに対しての消費行動に走ってくださると思っております。
(問)アメリカが実質ゼロ金利にしまして、このままでは日本の金利水準では円高が進むのではないかという懸念があると思いますけれども、これに対する見解をお願いします。
(答)円の為替レートの水準というのは、一国のファンダメンタルズに基本的には、また理論上は依拠して依存していると。これは教科書的な答えでございますが、その他、為替レートを変動させる要因としては、一定の思惑とか見通しによって為替投機が行われると。
 それから、もう一つ為替レートが変動する要因としては、例えば二国間の為替レートが安定している中で、意義ある金利差が存在すると、それによって為替が変動するという場合があります。今の円高というのは、むしろ金利差で発生しているよりは、日本国通貨が安心通貨かどうかというメルクマールで決まっている部分も非常に大きい。しかしながら、日銀の0.3%の短期誘導目標をどうするかということは、やはりそれを動かすことのメッセージ性はまだ残っていると。これを動かすことによって、何か大きく物事が変わるということではありませんけれども、メッセージ性としての意義はまだ残っている。そのメッセージをいつ使うかというのは、日銀独自の判断、また日銀が独自に集められました日本国内の経済の状況、短観の解釈等々によるのではないかと思っております。
(問)メッセージについて、大臣御自身はこの局面に使うべきだというふうにお考えになりますか。
(答)短い手紙でも、うまいタイミングで出せば心が伝わるということはあるんだろうと思います。
(問)一連の経済政策で、社会資本整備、あるいは国の公共事業は、ざっくりと見た限りでも、おそらく1兆円から2兆円ぐらい国が予算投入することになるんではないかなと思われるのですけれども、旧経企庁が98年にまとめました経済白書で、公共事業について直接の経済効果も、あるいは波及効果も小さくて、民需主導の自律的な景気回復にはつながりにくいというふうに指摘しているんですけれども、それでも今回公共事業に踏み切らざるを得なくなったというのは、これはやはり背に腹はかえられないで、あらゆる手を尽くすという御判断なのでしょうか。あるいは、内容を精査するですとか、そういったやりようによってはうまく効果を上げられると、そういった勝算がおありということなんでしょうか。
(答)今、アメリカなんかでも、ケインズの有効需要政策の有効性が再び見直されてきた。オバマ次期大統領のとる政策も、今のいろいろな金融上の政策、あるいは金融等に対する財政出動、プラス来年は大掛かりな公共事業を行うのではないかということが予測をされております。日本国内でも、経済対策としての公共事業というのは、雇用という面からはいまだ有効性を持っております。したがいまして、今述べられた98年の白書というのは、公共事業をやって、それが呼び水となって経済全体が回復していくという、その力は失われているけれども……、というふうに解釈しなければならない。
 ただ、意義ある公共事業、例えば学校の耐震化、耐震補強に要する費用等々は、国民生活に直接資するものでありますし、波及効果は少なくとも、国民生活に直接資するもの、また社会全体の生産性の向上につながるものは、公共事業といって、その名前が冠せられているだけで拒否反応を持つというのは、経済政策上はいかがなものかと思っております。
(問)今までは、公共事業については、有効需要を作り出すような、そういった意味はないというような、こういったお考えを話されていたように思うんですけれども、雇用対策、失業対策としての公共事業は、今この時点では意義があると、こういうお考えになられたということですか。
(答)もちろん雇用を生み出すための公共事業というのは、当然、意義がある。ただ、意義があるんだけれども、雇用だけで満足しているのではなくて、お金を使うのであれば、 それが将来活きてくるような分野に使うということを心がけていく、ということが大事なことであると思っております。
 今回の経済対策に含まれている公共事業は、公共事業として社会的意味を持ったものを入れているわけですし、また昔ほどではありませんけれども、一定の経済効果を持つことは間違いないと思っております。
(問)政府経済見通しについて、世界が軒並み来年マイナス成長になるであろうとされている中で、日本政府としては、政府の経済対策を景気の下支えとして、何とかゼロに持っていくというふうなものとうかがえますけれども、改めて来年の経済の想定される状況について、大臣が今考えておられるところをお話いただけますでしょうか。
(答)まず、何といっても、アメリカの国内経済が相当傷んでいる。また、アメリカの金融、証券等々も相当傷んでいる。象徴的な企業である自動車産業も非常に困難な状況に直面している。各家庭の消費意欲、また、アメリカ国内の企業の設備投資意欲も増えることはあり得ない。輸出、日本の外需は減っていくと。こういうことは当然ありますし、また韓国経由の輸出、あるいは中国経由の輸出ということも減ってくるわけですから、米国ばかりでなくて、中国、韓国その他の国々の経済からの外需も減ってくるということで、あまりいい話はないと思っております。
 それから、また国内でもこういう世界の経済の状況を見て、金融界の貸し出し態度、経営態度も相当大きな萎縮効果を持つに至っている、個人も消費に対しては用心深さを持つ、等々を総合しますと、やはりマイナスになってしまうというので、我々としては、我々の作った経済対策が有効に働いて、やっと0.0になるという、来年は、やはり厳しい、耐えて、底抜けしないように政府も国民も力を合わせて努力をしなければならない年である、そういうふうに思っております。

(以上)