与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成20年12月5日

(平成20年12月5日(金) 10:04~10:24  於:記者会見室)

1.発言要旨

 閣議は案件どおりでございまして、特段、御報告すべきことはございません。
 以上です。

2.質疑応答

(問)基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引き上げの財源ですけれども、財政投融資特別会計の金利変動準備金を使うという考え方が有力な考え方として浮上している。舛添大臣も、それで中川大臣に申し入れをされたということなのですが、それについての評価と、あと、引き上げ時期について、これまでは4月ということを、総理もおっしゃっていたようなのですけれども、それを総理は「'09年度中に」と言い方を変えていますけれども、そのあたりの評価、その2点をお願いします。
(答)まず、国民年金法の附則に、平成21年度には国庫負担を、現在3分の1のものを2分の1に引き上げると。金額にして、おおよそ2兆3,000億円から2兆5,000億円ぐらいだと思いますけれども、これを引き上げると。そこには、安定財源を求めて引き上げるということですから、行政府と立法府に安定財源を求めるということを、いわば求めている法律であると私は解釈しております。
 これは、最も条文に忠実な読み方ですけれども、やはりこういう経済状況になったときに、その条文が忠実に守れるかどうかということは、もう一つ判断しなければならないことであると思っております。すなわち、税負担を大きくすることによって平成21年度に安定財源を確保するというのは、ほとんど不可能のような経済情勢ではないかと私は判断しております。
 しかしながら、いずれ2分の1に引き上げることを、いわば担保する安定財源というものは必要でありますし、また、行政も立法も、国民年金法の附則によって義務が課せられていると思っておりますから、時期はズレますけれども、安定財源確保のための作業は、行政府、立法府ともに求められていることだというふうに思っております。
 財源の引き上げ時期については、年度中だとか4月だとかと、いろいろな説がありますけれども、いずれも正しい説だと思っていまして、4月と言う方は、年度という以上は年度当初からできればそうしたい、と言うし、年度中と言っている方は、年度中にできれば義務を果たしたことになる、という考え方で、いずれもそう本質的な問題を論じているわけではないと思っております。
(問)昨日、欧州の中央銀行が軒並み同時利下げをやっておりまして、アメリカも含めて日本との金利差がかなり縮小してきたという状況ですが、日本経済への影響、それからそもそもの同時利下げの受けとめ方、その2つをお願いできますか。
(答)金融危機、信用不安の連鎖、こういうものに対して、バンク・オブ・イングランドもECBも、それぞれ金利を下げた。その背景には、当然、経済危機、金融危機もありますけれども、同時にインフレ懸念もない、という判断があるわけでございます。
 当然、日本にとっても大歓迎すべき状況でありまして、ヨーロッパ、英国の経済が活力を少しでも取り戻すということは、日本の経済にも非常に大きな影響があると。そのように評価しております。
(問)金利差が縮小することが、円高に振れる一つの要因になるということはないのでしょうか。
(答)実は、金利差の縮小がどっちに動くかということは、予断を持って判断できないことで、円ポジションを解消しようという方が多くて円安要素もそれで出てくるわけですけれども、むしろ、比較的あるいは相対的に、円の水準は安定している、ないしは強含みだということで、自分の手持ちの資金を円貨にかえる、安心な通貨という面で円高に振れているという局面もあります。
 したがいまして、金利の差だけでは為替レートが論じられないという状況にあるのではないかと思っております。
(問)9日の経済財政諮問会議ですけれども、社会保障の中期プログラムの仕上がり具合というか、そのときの出し具合を含めて、どんなことを議題にすることを考えていらっしゃるか。今の時点でおっしゃられることをお願いします。
(答)9日の時点では、相当煮詰まったものをお出しすることになります。税制改革のおぼろげながらの輪郭……ただ、12日に党税調のほうで物が決まりますので、諮問会議のほうで物事を先に言ってしまうということは、礼節を欠くことになるので、その辺はきちんとお互いに気持ちよく物が決められるように、よく連絡をとりながらやっていきたいと思いますが、骨格的なものは、多分、出てくるのではないかと思いますけれども、それは9日のお楽しみで、待っていただければと思います。
(問)先ほどの年金の国庫負担の財源の話と関わるのですけれども、やはり国民年金法の附則というのは法律ですから、かなり縛られるべきだと思うのですけれども、事実上、安定財源を来年度確保するのは難しいということですが、仮に中期プログラムの法定化というものが担保された場合、それは法律上の附則を満たすものというふうにお考えになりますか。安定財源を確保するということを、その法定化ということで満たすというふうな御解釈になりますか。
(答)将来の展望のないまま、あっちにもお金を使う、こっちにもお金を使うという話は、責任ある政治とは言えないと。「今はこうしますけれども、将来、財源はこういう形で確保します。国民負担もお願いします」というきちんとしたものがないと……お金を使いますという話は、とても簡単な話で、今朝も閣議前に中川昭一財務大臣が「ちょっと、もう一度、打ち合わせしましょう」と言うから話していたら、鳩山邦夫総務大臣が「私も話がある」と言うから、私は「あなたの話はお金を使いたいという話ばかりだから、聞く必要ないんじゃないか」と言って、やはりお金を使うという話には、お金をどうやってつくってくるかという話も同時にないと、責任ある話にはならないので、だから「鳩山大臣も、お金をつくることにも協力してくださいよ」と言って念押しをしておきました。
(問)連合が、来年の春闘について、賃上げを要求していくということを決めました。一方で、会社側のほうは、ここに来て非正規を中心に雇用調整の動きが進んできておりますが、この一連の動きについて、どうお考えになりますでしょうか。
(答)連合も、ようやく労働運動の本質に目覚めたのかなと思っておりまして、連合にやっていただきたいのは、自分たちの組織労働者のことだけではなく、やはり日本の雇用全体を心配するという、総労働という立場をとって、ぜひ、私の尊敬する親友である高木さんには、頑張っていただきたいと思っております。
 雇用の問題は、党のほうでもやっております。もう一段とリファインメントして、それで政策に純化していただきたいと私は思っておりまして、雇用対策はやはり麻生内閣に課せられた、私は重大な責任だと。
 これは、中曽根さんがよく私に言っておられたことですけれども、社会の中にはいろいろな悲劇があるけれども、一つの家庭でお父さんが職を失うということは、社会的な悲劇の中で最も大きなものの一つだということを、中曽根先生は私に若い時分、繰り返し言っておられた。やはり、私も今、そう考えておりますので、雇用対策――これはいろいろな政策がありますけれども、経済対策であり社会政策的な対策でもある。これは、全力を挙げなければいけない麻生内閣の課題であると思っています。
(問)その対策の実施の時期、実行するための手当てしていく時期というのは、いつ頃を想定されるのですか。年度内ですか。
(答)昨夜、NHKの9時のニュースを見ていましたら、実は深刻な気持ちになって、「急いでやらなければいけないな」ということが、昨日9時10分ぐらいの私の心境です。
(問)その雇用の問題ですけれども、非正規社員の削減が、自動車から電機とか、いろいろな業種に広がってきているわけですが、こういった業種は、いわゆる輸出型の製造業なわけですけれども、輸出型製造業はグローバルな需要によって落ちているという面もあると思うのですが、先ほどおっしゃった円高が結構効いているという側面もあると思うので、今の局面で資源がこれだけ下がっている中で、為替の円高は日本経済にとって、あまりプラスはないのかと思うのですが、そのプラスマイナスをどのように見ていらっしゃいますか。
(答)貿易収支が完全にプラスマイナス・ゼロという状態では、円高であろうと円安であろうと、実は一国の経済に、マクロで見たらそんなに影響はない。だけれども、事実、個別の企業をとりますと、受け取る円での単価が下がってしまう。また、ドル表示の物の価格は、他国との競争において劣後の地位を占めるということもあって、輸出環境にとっては競争力の点からも、受け取りの円貨の点からも、非常に厳しい。
 雇用対策というのは非常に難しくて、どこかの会社に強制的に「雇いなさい」ということも言えないというので、周辺から触っていくしかないということもありますが、やはり厚生労働省という旧労働省が、こういう100年に1回の状況は、役所のレゾンデートルをかけて政策をつくり上げなければいけない。党の関係部会も、総力を挙げて雇用対策に取り組まなければいけない。それに注入するお金というのは、ちっとも惜しくないだろうと思っております。
(問)昨日の舛添・中川会談で舛添大臣が、たばこ税を上げて社会保障財源に充てるといったような提案をしまして、昨日の段階では与党の検討待ちということになりましたけれども、与党内の情勢を見ますと、おそらく、たばこ増税で社会保障費の伸びの抑制を和らげるといった方向になろうかと、そういった情勢かというふうに思われるのですけれども、そういった財源の充て方について、大臣の御所見をお伺いできますでしょうか。
(答)一時期は、たばこ1箱1,000円にしようというような人がいて、今回はどうやって考えているのかわかりませんけれども、予算編成の基本方針は、最初の原文は、財源を求めてきて社会保障を充実させると書いてあったのです。直されて「社会保障を充実させる」「それに安定財源を求める」というので順番を入れ換えて、党の言い分は「安定財源が求められなかったら何もやらないのか」と叱られて、そういうふうに直しているのです。仮にそういう、たばこというようなものに課税ができるというコンセンサスが得られるとすれば、その使途は限定されていませんから、健康に使ってもよいのではないかと思います。
(問)場合によっては、それは基礎年金の国庫負担引き上げの財源になるかもしれないと考えられるのですけれども、そういったことについては。
(答)それは、1,000円に引き上げた場合の話で、1円、2円の引き上げでは、そういう世界には全く到達しないです。

(以上)