与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成20年10月20日

(平成20年10月20日(月) 18:40~19:17  於:記者会見室)

1.発言要旨

 月例経済報告等に関する関係閣僚会議が開催されましたので、その概要を御報告申し上げます。
 景気の基調につきまして、「景気は、弱まっている」と下方に変更いたしております。
 第1には、アメリカの景気後退などを反映し、輸出が緩やかに減少していること。第2に、これに加え、設備投資が引き続き弱含んでいることなどから、生産が減少していること。これらを踏まえ、景気の下向きの動きが一層明確となったことから、このような判断をしております。
 主な個別項目につきましては、今月は輸出、生産のほか、個人消費や雇用情勢の判断を下方に変更いたしております。
 我が国経済の先行きにつきましては、当面、世界経済が減速する中で、下向きの動きが続くと見ております。加えまして、アメリカ、欧州における金融危機の 深刻化や景気の一層の下振れ懸念、株式・為替市場の大幅な変動などから、景気の状況がさらに厳しいものとなるリスクが存在することに、留意する必要がある と認識しております。
 先日、平成20年度補正予算が成立いたしました。今後、これを速やかに執行していくことが重要であると考えております。また、現在の厳しい経済情勢を踏まえ、与党との連携を図りつつ、新たな経済対策、すなわち生活対策を早急に取りまとめてまいりたいと考えております。
 以上でございます。

2.質疑応答

(問)今回、「景気は、弱まっている」という判断だと思いますが、以前、「景気は、悪化」という言葉も使っていたかと思いますが、今回、この「弱まっている」、「悪化している」の違いについて、もし大臣御自身の現状の認識としてあれば、お伺いしたいのですが。
(答)今までは、たしか「弱含んでいる」と表現しておりましたのを、「弱含んでいる」のではなくて「弱まっている」というふうに直した、下方修正したということで、「悪化」という言葉は使っておりません。
(問)「悪化」という言葉は、どうして使わなかったのか、何か、もし大臣の御認識で違いがあれば。
(答)これは、経済の統計は数字であらわれてくるわけでして、それを修辞学上どう表現するかというだけの話であって、弱含んでいたのが、弱含みではなくて弱くなっているというふうに、率直に下方修正したということです。
(問)米国の景気について、「景気は後退している」という表現を今回、使っておりますが、アメリカの景気の現状と先行きについては、どのように御覧になっておりますでしょうか。
(答)日本にいてアメリカのことを正確に判断することは大変難しいことですし、アメリカ自体、自分たちの経済の先行きがこういうふうになるという100%正しい見通しを持っているわけではないと思います。
 ただ、民間のアメリカの経済研究所等、あるいは民間の機関が発表しているものを見ますと、来年の夏以降、徐々に成長率もプラスになっているというのがアメリカの見方ですけれども、国際機関、例えばIMF等の見方は、もっと厳しいものになっていると伺っております。
(問)今のアメリカの見通しを踏まえて、日本の景気ということについては、これまでアメリカの景気が持ち直すにつれ日本も回復してくると、こういう御認識だったかと思いますが、日本の景気の回復の時期というのは、今後、どうなっていくと御覧になっていますでしょうか。
(答)これは、新たな経済対策をやりますので、それがどういう効果を発揮するかということにもかかっているわけでございますが、やはり日本の経済に対する影響というのは、幾つかの要素を考えなければならないと思っております。
 1つは、外需の問題ですけれども、米国の経済が減速するということは、米国に対する輸出、すなわち外需は落ちてくるでしょう。また、ヨーロッパ、あるいは新しい経済パワーである中国、インド等も、日本からの輸入というものが自然と減るという傾向にあります。ですから、外需はマイナスに働く。それから、一連の金融危機の結果、米国の株価も下がる、日本の株価も下がるということで、資産効果としての株価下落というのは、個人も企業もマイナスに働く。それから、株価の下落というのは、やはり金融機関の自己資本比率を毀損いたしますから、自己資本から見た貸し出し枠というのは減少せざるを得ない。さらに、世界経済全体に対する不安から、金融機関も貸し出し態度が、大変臆病あるいは慎重になっていく、これも日本経済にマイナスです。それから、輸出産業にとりましては、円高の影響で受け取り円貨が少なくなるという影響も受けるわけです。
 ただ、こういう状況になりまして、石油・原油価格が大幅に下がった。あるいは、穀物類の価格も下がっている。それから、円高になりましたから、輸入物価も円ベースでは下がる、こういうこともありますので、マイナスの面とプラスの面と両方ありますけれども、御説明するまでもなく、マイナスの影響のほうがはるかに大きいと思っております。
(問)今回の調査統計の中では、恐らくまだリーマンショックを反映していない8月分などもかなり含まれていると思うのですけれども、そういったことを勘案すると、日本経済はさらに厳しさを増しているというふうな御認識をお持ちですか。
(答)まあ、じっと耐えるしかないという時期が続くのだろうと、私は思っております。
(問)先ほどの御回答の中で、新しい経済対策の効果にもよるというお話だったのですけれども、その経済対策を出すときの初めのときの大臣の会見の中で、景気浮揚効果というよりも、悪くなるのをぎりぎり防ぐというか、そこの違いというのもあるのではないですか。
(答)景気が過度に落ち込むことを防ぐ、緩和効果と言ってもよいと思うのですけれども、そういうものは考えなければなりませんし、例えば、中小企業金融が過度に詰まって、まったく利に合わないような中小企業の破綻が起きる、こういうことはやはり社会として防御しなければならないと。そういう意味では、これでドンと景気が浮揚するというよりは、悪い影響をできるだけ緩和する、そのためにあらゆる政策手段を動員する、それが次の経済対策だろうと思っております。
(問)逆に言うと、大臣の御認識としては、政策的なもので一気に景気を浮揚させることは、何をやっても難しいというふうなお考えですか。
(答)今回の経済対策は、恐らく総需要対策、昔、かつてとったような、いわば公共事業の積み増しとか、財政出動による有効需要の創出とか、そういう側面は極めて少ない、あるいはあまり意識していない対策になるのではないかと思っております。
(問)その追加の経済対策の進捗状況、まとまり具合ですけれども、金融機能強化法なども初め、全体の規模感であるとか、そういうのは大体どれぐらい決まってきているのでしょうか。
(答)今、与党が作業しているので、規模等については、与党から何も伺っておりません。
(問)今日、中国の7-9月期のGDPが発表されて、成長率が前年同期比9%ということで、かなり減速しているのですけれども、今回の月例でも、アジア経済に対する現状判断というのは下方修正されていますけれども、やはり中国の成長率の推移などを見ても、米国だけではなくて、アジアも厳しくなっているというふうに御覧になっていますか。
(答)一時、デカップリング論というのがあって、アメリカは悪くても、新興国の経済がよいから、そう輸出は落ちないよという議論がありましたけれども、どうもその議論は通用しなくなっているのだろうと思います。中国が9%に落ちたというのは、11.3%から9%に落ちただけで、そう大したびっくりする話ではないという、9%自体が、実は驚きの数字であると思っています。
(問)先ほど、「じっと耐えるしかない時期が続く」というふうにおっしゃいましたけれども、逆にお伺いしますが、回復するまでにはどれぐらい待ちの期間が必要なのか。
(答)なるべく早くと思っておりますけれども、まだ金融危機に対して、みんなが胸をなでおろすという状況にはなっていない。アメリカも、相当大胆な政策的措置をしましたので、じわじわと皆さんが落ち着きを取り戻して、不安の連鎖というものは断ち切れると思います。そう遠くない将来、完全に断ち切れると確信しておりますから、そこから今後の経済の状況というのは、論じることができるのではないかなと思っております。
(問)世界同時不況になるのではないかというふうなことを言っている識者もいるのですけれども、大臣はそのような可能性があるとお考えでしょうか。あるいは、今、既にそう呼ぶべき状況にあるとお考えでしょうか、どうでしょうか。
(答)いつの間にか、我々は「グローバライゼーション」という言葉を何気なく使っていたわけですけれども、人も物もお金も、国境を超えて今はつながっているということで、一国の経済が独立して存在するということはあり得ないというのが、現在の世界の状況だろうと思います。そういう意味では、世界全体が同時に悪くなるというのは、半ば当たり前の話というふうに受けとめたら、私はよいのだろうと思っています。
(問)今日の会議で、総理のほうから、何か特段の指示なり発言はございましたでしょうか。
(答)総理のほうからは、最後に中小企業金融に対しての御懸念があって、これは中川金融担当大臣と経済産業大臣でよく相談しながらやってほしいと、そういう御発言がありました。
(問)今、アメリカが提案して、金融サミットをアメリカで開いたらどうだと、こういう話が出ていますが、その金融サミットを開くということについて、大臣御自身はどういうお考えをお持ちでしょうか。
(答)私は、各国の首脳たちが同意されるのであれば、日本も喜んで参加すべきだと思っております。

(以上)