与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成20年9月16日

(平成20年9月16日(火) 11:18~11:42  於:記者会見室)

1.発言要旨

 閣議は案件どおりでございましたが、財務大臣から補正予算の総額が1兆8,100億ということが数字として初めて明らかにされました。なお、この財源につきましては、1兆円強が規定経費の節減等で捻出され、また3,100億円強は、前年度繰越金の半分が使われ、そして補正予算の中には建設国債の対象となるものがあるので、建設国債は4,000億程度出すと、こういうことになりました。
 なお、諮問会議を5分か10分開いて、総理が諮問会議の民間議員に感謝の気持ちを申し上げるという会をやろうということを考えておりましたけれども、それではあまりにも形式的過ぎるというので、多分総理が夕食会を開いてくださって、そこで時間をかけ、皆様方に謝意を表し、また民間議員からもいろいろなお考えも伺いたいということですから、諮問会議というよりは、その夕食会をもって総理の感謝の気持ちをお伝えする会にしようということで、今日町村官房長官とお話をしまして、これから官邸でその日程調整をされるものと思っております。
 また、閣議後に昨日のリーマンブラザーズのチャプターイレブンの申請に関しましての会議がありまして、日本銀行、金融庁が持っております最新の知識等に基づきまして、若干の意見交換をしましたが、結論はやはり沈着冷静に行動すること、国際協調は力強く行っていくこと、また日本として何ができるかということを真剣に考えていくこと、そういうことが最後に総理の口から発せられましたので、沈着冷静に国際協調を常に考え、また特に日本として何ができるかということも考えながらやっていかなければならないということについては、私自身も確信を持ったわけでございます。
 以上です。

2.質疑応答

(問)今お話のありましたリーマンブラザーズのチャプターイレブンの話ですが、これによって今アメリカでは金融不安のような状況になっているかと思いますが、アメリカの状況が日本経済に及ぼす影響をどのように御覧になっているかということと、それによって日本経済回復の見通しのシナリオ等に影響が及んでくるかどうかお伺いしたいのですが。
(答)アメリカ経済は当然のことながら、大きいか小さいかは別にして、信用収縮ということが起きる可能性があります。また、企業の設備投資意欲、あるいは個人の消費意欲、あるいは消費力、いずれも若干衰えると思いますけれども、日本経済としてはアメリカ向けの外需というものは若干落ちるということは、当然のこととして予想されるわけです。
 それでは昨日のことでそういうことが考えられ始めたのかといえば、もう昨年のサブプライム問題の発生の時から、このことは十分予想されていた話でして、これを契機に一気にそういう現象が深くなるということは考えられないと。しかしながら、気持ちの上でも影響がありますし、それは真剣に考えなければいけないことですけれども、この際は、去年起きたサブプライム問題の続きを見ていると考えた方がいいのではないかと思っております。
(問)アメリカでの金融不安なのですが、今後もまだしばらく続くと大臣御覧になっていますでしょうか。
(答)これは色々な説がありまして、リーマンブラザーズが破産を申請したことによって、いわば証券会社に関しては、この種の問題の打ち止め感が出てきたというふうに考える方もいますし、また日本の山一などが破綻した時のケースを考えますと、アメリカの場合には情報公開も、あるいは一定の見切りをつけるということについても、かなり早いスピードで行われていると。即ち処理が迅速に行われているという点が一点の明るさだと言う方もおられまして、今起きていることは、サブプライム問題の一連のドラマの続き物でして、更にこれが手のつけられないほどの深刻さを持つということは、考えにくいと私は思っています。
(問)もう終幕が近い状況であると。
(答)色々な説がありまして、もちろん1か月、2か月で片付く問題ではありませんけれども、来年の秋以降、米国経済も徐々に回復軌道に乗ってきて、金融秩序もそれなりに回復するだろうという方が多数ではないかと思っております。
(問)諮問会議ですが、先程のお話だと、結局諮問会議はもう開くのはやめになったという理解でよろしいのですか。
(答)これはもともと、諮問会議はもう開かれないのですけれども、一度感謝の気持ちを申し上げる機会を作った方がよいのではないですかということで、私が総理に申し上げた。諮問会議を開いても5分か10分の形どおりの会議になってしまうので、それならば夕食でもとりながらゆっくりお話を伺うということにしたいということで、感謝の気持ちを表すという内容は一緒なんですけれども、もう少し時間をかけてやろうということです。
(問)アメリカの原油市場が非常に急落しているのですけれども、ガソリン価格への影響とか色々な物価への影響が考えれると思うのですが、ここ最近の急落している情勢をどのように大臣は見ておられますでしょうか。
(答)一時期140ドルを超えたもの100ドルを切った。しかし、その時でもやはり石油の実際の取引価格というのは多分70ドル台だったと思います。先物市場が過熱をしたというのは、色々な資金が、小さなニューヨークの石油市場に集中的に投下された結果でもあったわけですし、一方ではそういう投機的な動きの他に、やはり中国の実需、あるいは新興国の実需、こういうものが明白に減ってきたということが大きな影響を与えておりまして、やはりこれは落ち着くべき水準まで落ちていかなければいけないと思っていますし、またこういうように資金がタイトになってまいりますと、恐らく投機資金の動きも従前のようにはいかないと。自然な価格形成が行われる状況になりつつあると私は思っています。
(問)先程、アメリカ経済の回復が来年秋以降になるという声が多いのではないかというお話がありましたけれども、かねがね日本経済の回復の鍵を握るのはアメリカを初め海外経済の回復だというように仰っていたと思います。今のお話だと、やはり日本経済が回復軌道に戻るのも来年秋以降になる可能性が高いという御認識なのでしょうか。
(答)日本経済のファンダメンタルズの健全性というのは、相対的には高いと私は思っております。ただし、日本経済はやはり何と言っても外需依存度が高いということは否めないわけですから、外需が回復して、それが日本経済に寄与するまでは、1年ぐらいはかかるだろうと、そういうことを申し上げたつもりでございます。
(問)金融危機に関連して、今日の日本の株価がかなり下落して、円が急騰しているということですけれども、今日の緊急会議等で当面日本としてやるべきことについて、何か方向感みたいなものが出てきましたでしょうか。
(答)株価は、政府がこう言った、ああ言ったといって動くものではない。株価は純粋に市場が決めているわけですけれども、日本の株価がそれでは果たして独自の判断に基づいてずっと株価形成をしてきたのかといえば、どちらかと言えばニューヨークの動向を見ながら、写真相場的に株価形成をしてきたというのが過去何年かの実情でございまして、今回もやはり市場関係者は、ニューヨーク市場、ロンドン、あるいはヨーロッパ市場等の株価動向を見ながら、自分のポジションを決めていったという点では、500円以上下がったというのは、さして驚くことではないと思っています。
(問)今後、日本政府として、株価ですとか円安とか円高とか、今の時点では、日本政府としてやるべきことはないと。
(答)いずれも市場が決めるものですから、それは市場実勢に任せるというのが正しい。ただ、為替の問題につきましては、いわゆるボラティリティが増えてくるというのは好ましくないというのは、昔からの考え方ですから、不自然な為替レートの変動、日本経済のファンダメンタルズが全く考慮されないような為替変動に対しては、やはりどう対応するかというのは、そういうことが起きた段階で考えなければならない課題かもしれませんけれども、現在の2円、3円の変動というのは、市場が決めた価格として静かに受け止めるべきものだと私は思っています。
(問)若干お聞きしにくいのですけれども、今アメリカの状況がかなり厳しい情勢になっていて、そういう時に日本では自民党総裁選をやって、大臣も出馬していると。現職の経済財政担当閣僚が総裁選にかなり時間を割かれるという状況になっていますけれども、そのあたり御自身で何か考えることはありますでしょうか。
(答)予定どおりの遊説日程にはお付き合いしたいと思っていますけれども、やはり日本経済というのは国民のためのものですから、遊説などやっている状況ではないと考えられる場合には、進んで遊説日程は放棄すべきものだと私は思っています。
(問)大臣が先程仰った現時点では為替レートの2円、3円の変動であると。これは市場が決めた価格として受け止めなければならないというお考えは、先程の関係閣僚会議でもこういうコンセンサスができたのでしょうか。それとも大臣の私見でしょうか。
(答)為替レートについては、一切閣議後の会議では出ておりません。これは私が経済財政担当大臣として申し上げた言葉です。
(問)アメリカの状況を受けて、日本で信用収縮が起きる可能性があるかどうかということと、仮に信用収縮が起きてきた場合に、中小企業の資金繰りに影響が及んでくるのではないかということについては、どうお考えになりますか。
(答)信用収縮というのは、実は、例えば黒字の上場企業が黒字を計上にしているにもかかわらず、突然融資を中断された。倒産やむなきに至ったというケースが、今年に入ってから何件もあります。金融機関としてどうかなと思うケースもあって、こういうものは金融庁、あるいは茂木大臣の方で、全くリスクをとらない金融というものが存在意義があるだろうかという根本問題がそこに横たわっているわけです。
 それから、こういうことが起きますと日本の金融機関は、年末にかけて恐らくそこまでやる必要はないのだというぐらいのところまで貸し出しについて慎重になる可能性があって、そのためには緊急経済対策の中で、今度は中小企業で真水で4,500億使うわけですから、そういう中で特に中小企業の金融、特に年末の資金繰り等にきちんと手当をしていくということがなければ、本当に信用収縮というものが企業活動に甚大な影響を与える可能性がある。これは金融庁も我々もしっかり見張ってなければいけないところだと思っています。

(以上)