大田内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成20年7月14日

(平成20年7月14日(金) 15:46~16:13  於:記者会見室)

1.発言要旨

 ただいま月例経済報告関係閣僚会議が終了いたしました。
 今月の基調判断ですが、「景気回復は足踏み状態にあるが、このところ一部に弱い動きがみられる」と、先月から変えておりません。
 個別項目では、業況判断につきまして、「企業の業況判断は、一段と慎重さが増している」と、これは日銀の短観を受けまして、下方に変更しております。
 そのほか、個別項目は変更ありませんが、少しコメントいたしますと、輸出については、弱含みという判断は変えていませんが、5月はアジア向け、アメリカ向けともに、プラスに転じています。
 それから生産につきましては、一部の弱さというところがまさにこの部分ですが、電子部品などのIT関連財、ここが在庫調整に入っています。ここが一番懸念されるところです。5月は、在庫は依然として積み上がってはおりますけれども、その幅は縮小しておりまして、どんどん悪くなっていくという状態にはありません。
 それから、個人消費につきましては、マインドは非常に悪化していますが、消費のデータで見ますと、横ばい圏内にとどまっています。
 ということで、全体として、ぎりぎり横ばいで踏ん張っているという状態にあります。この踊り場にあるという判断を変えるには、至っておりません。
 それから、需要項目ではありませんが、消費者物価について、今月は「緩やかに上昇している」と変更いたしました。消費者物価は、前年と比べてはっきりプラスになってきております。ただ、これは需要が増えてプラスになっているわけではなく、原油、原材料高、コストが上がって消費者物価は上昇しておりますので、十分に警戒が必要です。
 先行きについては、アメリカ経済が持ち直してきますと、景気は緩やかに回復していくと期待されますけれども、アメリカの景気後退懸念、それから株式為替市場の変動、原油価格の動向、いずれも予断を許さない状態です。景気の下振れリスクは高まっておりますので、十分に留意が必要です。
 あと、今日の閣僚会議では、発言が渡辺大臣から1つだけございました。
 金融庁の調査で、貸し渋りの状況について、中小企業で、特に資金繰りが厳しくなっているとのことで、金融円滑化ホットラインというものを設けて取り組んでいるというお話がありました。
 あと、御意見として、世界の金融・資本市場を見ると、金融危機に近い状態であると。アメリカの住宅公社─ファニーメイ、フレディマックですね─支援策を発表されたけれども、公的資金の投入は避けられないのではないかと。それから、巨大金融機関の決算が、今週から来週初めにかけて続きます。日本からのお金を引き上げる動きが加速する可能性もあるので、どう対応するか十分に考えていく必要があると。日本がお金の最後の出し手になる可能性もあるので、十分に対応策を考えておく必要があるという、これは御意見として出ました。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)総括判断は、横ばいというか、据え置きされたわけですけれども、大臣もおっしゃったとおり、それぞれの指標の動きを見ると、全体としてぎりぎり横ばいに踏みとどまったというのはよくわかる話なのですが、今後のリスクとして、例えば生産とか輸出とか消費とか、主要項目を見て、下振れリスクとしてはどの項目のリスクが一番高いと思われますか。
(答)輸出が5月はプラスに転じておりますけれども、これがまたさらに下落してまいりますと、当然、生産に波及してきます。あと、生産で、これは先月からですけれども、IT関連生産財が在庫調整に入っていると。この動きは、今後も十分に警戒が必要です。
 それから、リスクとしては、やはり一番大きいのはアメリカ経済の減速。これが、景気後退に至り、さらに長引くということは、非常に大きいリスク要因ですので、そこが輸出にどういう形で出てくるかというのを、一番、今、懸念しております。
(問)個人消費のところで、やはりかなりマインドの悪化というのが先行してどんどん進んでいるわけですけれども、それが実際の消費自体の悪化にもつながってくるリスクというのは、どう捉えていらっしゃいますか。
(答)やはり原油高、原材料高で、個人消費に限らず、企業収益を圧迫していますので、今、設備投資の伸びを鈍化させてきていますけれども、これがさらに設備投資に波及すること、そして消費を減速させること、この点は大きいリスクです。
(問)もう一つ、先ほど、渡辺金融担当大臣のほうからもお話があったようなのですが、アメリカの政府系住宅金融機関、これについては経営危機が取りざたされて、政府が救済策を、急遽、発表するという事態まで至ったわけですけれども、これは、やはり背景には、アメリカの住宅市場の低迷が予想以上に長引いている、あるいは深くなっているというところがあるかと思うのですけれども、アメリカの景気後退リスクというのは、やはり今回の事態により高まっているというふうに判断されますか。
(答)住宅価格の下落が止まらないということは、やはり心配される事態です。ブルーチップの判断を見ましても、減税の効果は、やや当初の予測よりは前倒しして出てきているわけですけれども、この政策の効果が発現している間に住宅価格の下落、あるいは金融資本市場の危機感というのがおさまってくればよいわけですけれども、ブルーチップの予測でも、政策効果が出た後、一段下がるというシナリオが描かれてきていると。それは前回からの変化でもあるわけですね。実際、住宅価格の下落が止まりませんので、この景気減速がやや長引いていく恐れというのは、十分にあると考えています。
(問)まだ、いわゆるリセッションに陥るかもしれないという危険性が高くなったなというところまでは、認識されていないということですか。
(答)景気後退懸念のリスクの大きさとしては、前と同じ状態です。
(問)渡辺大臣が最後におっしゃった、日本がお金の最後の出し手になる可能性があるというのは、どういう表現でおっしゃったのですか。
(答)今、ほぼ正確に発言は紹介しているのですけれども、それだけです。どう対応するか考えておかなくてはならないと。そして、渡辺大臣の下にも、金融市場の戦略チームというのをつくって、さまざまな議論はしてきていると。日本がお金の最後の出し手になる可能性もあると。デッド・エクイティ・スワップを出す可能性もあるので、そういうことも考えておかなくてはならないという、それだけの御意見です。これについて、さらに意見交換があったということはありません。
(問)ずっと個人消費でマインドの悪化が先行して、この間の景気ウォッチャー調査も、相当ひどい数字が出たのですが、同様に企業のほうでも、短観で景況感がぐんと下がったということが証明されたという、ここまでの経緯を見て、マインドと実体の数字というよりも、それを追いかける形になっているというふうに大臣は御覧になっていますか。
(答)やや、マインドと実際の数字は、乖離があるように思います。過去の例で見ると、マインドを実際の消費が追いかけているわけですけれども、今回、やはり身近な商品の値上げが、非常に顕著に、しかも短期間の間に起こっているということが、マインドを大きく低下させているというふうに見ています。
 したがって、この状態が今後も続き、ガソリンがさらに上がり、食料品がさらに上がりということになりますと、消費を冷やす懸念というのは十分に考えられます。
 ただ、全体として、所得環境は、今、横ばいです。そして、消費者物価全体を見ますと、じわじわ上がってはきておりますけれども、全体として、まだ非常に高いということはないわけで、どういう形で消費に波及してくるかは、もう少し様子を見たいと思っております。
 ただ、今回、この閣僚会議の資料にも出しましたけれども、11ページですね、7月以降の値上げ品目というものが、まだたくさんございます。8月、9月、値上げが予定されているものがありますので、これは十分に注意していきたいと思っています。
(問)ただ、このマインドという点で、一般の人のマインドという点から見ると、やや景気回復という言葉について、やはり月例の表現と違和感があるのではないかなという印象を持っているのですけれども、このあたりについてはどのようにお考えになっていますか。
(答)基本的には、消費総合指数で見ますと、ぎりぎり横ばい圏内にあるということで、先ほど申し上げたように、ぎりぎり横ばい圏内で踏ん張っているというのが現状だと見ています。
 したがって、踊り場にあるという判断をしております。先のことは、もちろん予断を許しませんので、その時々、可能な限りのデータ、あるいはヒアリング、いろいろなものを総合的に判断していきたいと思っています。
(問)景気動向指数のほうが4月からCIに変わって、それで2カ月据え置かれたと。それで、今回また、月例も据え置かれたと。動きを見ていると、CIに変わってから、月例が景気動向指数の動きを後追いというか、非常に重複しているような感じがするのですけれども、月例と両方あると、非常に混乱するような感じがするのですが、この景気判断への一本化というものは考えられないのでしょうか。
(答)もともと一本化する類のものではなくて、景気動向指数というのは、もう御案内のように、景気に先んじて動くもの、一致して動くもの、遅れて動くもの、3つによく反応する指標をとって見ております。多分、今おっしゃったのは一致指数だと思うのですけれども、一致指数は特に景気を敏感に、同時に反応する11の指標を選んで指数化しております。そうしますと、この11の指標の中で5つは生産ですので、かなり生産の動きをヴィヴィッドにあらわす指標になってまいります。設備投資とか個人消費というのは遅行指数ですので、この一致指数には入ってこないと。月例に関しては、景気動向指数の先行、一致、遅行に加えて、それ以外のデータも総合して判断いたしますので、景気動向指数は月例の景気判断をするときの重要な一つの材料であるということですね。これを一緒にするということは考えておりません。後追いとかということではなくて、これが完全に方向が逆になっているとすると、一致指数の指標自体がおかしいということにもなるわけですから、そこは一部重なりながら、でも、完全に一致したりしなかったりということなのだと思います。
(問)ぎりぎり横ばいで踏ん張っているとおっしゃったのは、それは個人消費についての判断なのか、それとも景気全体についての判断なのか。
(答)景気全体です。
(問)そうすると、今までそういう言い方はなさっていなかったと思うのですが、なぜ今回、こういうぎりぎりで踏ん張っているという言い方をなさったのでしょうか。
(答)今、輸出、生産が弱含んでいるということですね。それから、設備投資、個人消費は横ばいにあると。業況判断というのは、需要項目として入っているものではありませんけれども、業況判断も、やや一段と慎重さが増していると。大変難しい局面にあるのは事実だと思っています。
 ただ、輸出も、弱含みではあっても、5月単月、持ち直しておりますし、IT関連生産財も、在庫調整に入っているわけですけれども、どんどん悪くなっているという状態でもありませんので、「踏ん張っている」というのが、いろいろなものを判断している実感として出てきた言葉です。
(問)これは、ここ何カ月か、毎回同じ質問が出ているかと思うのですけれども、要するに、そういう表現が出てきたということは、先月に比べると、やはり景気の下振れリスクが全体としてみれば増しているという、そういう解釈でよろしいのでしょうか。
(答)そうですね。やや増していると。ただ、データで見ると、輸出が上がってきたりしていますので、下振れリスクは同じぐらい強いと言ったほうがよいかもしれませんね。業況判断も、だんだんとアメリカ経済の減速、原油高を受けて出てきていますので、同じぐらい強いというふうに見ています。やはり、先行きの不透明感が強いというのが現状ですね。決して楽観はできませんけれども、足元、可能な限りのデータで見る限り、横ばい圏内にあるというのが現状です。

(以上)