大田内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成20年4月4日

(平成20年4月4日(金) 9:15~9:43  於:共用220会議室)

1.発言要旨

 おはようございます。
 まず閣議の御報告を簡単にいたします。
 交通事故死ゼロを目指す日について、全国交通安全運動の実施について。それから、後からお話しいたします成長力強化の早期実施策について、私から発言しました。
 また、閣僚懇談会では、国民生活審議会について御報告があり、関連して総理からも御発言がありました。
 閣議の御報告は以上です。
 諮問会議は、4月8日火曜日の予定です。議題は2つ。1つは環境力についてで、環境をてこにした成長戦略ということです。もう1つは、「骨太2008」に向けての議論がスタートいたしますので、これについて民間議員から御提案がある予定です。
 また、「構造変化と日本経済」専門調査会ですが、次回4月7日は成果配分について議論を行いますので、連合の会長の高木さんに、個人の御立場でご出席いただいて議論に加わっていただくことにいたします。それから、この時から福井俊彦さんも出席になります。
 続きまして、成長力強化への早期実施策についてご報告いたします。
 今朝8時半から官邸で、経済対策閣僚会議が開催されまして、成長力への早期実施策が決定されました。この件は、3月11日に福田総理から私が取りまとめの御指示を受け、関係省庁や与党と調整しながら検討を進めてきたものです。決定の内容につきまして、お手元の図表、1枚ものの横長の図をもとにして御説明させていただきます。
 まずこの早期実施策を取りまとめる背景ですが、アメリカ経済の減速、ドル安に伴う円高・株安の進行、原油価格の高騰などを背景に、このところ景気回復は足踏み状態になっておりまして、下振れリスクが高まっています。こうしたリスクに対して早目早目に対応するというのが、今回の早期実施策の趣旨です。
 特に一段の対応が求められる分野として、中小企業、地域経済、雇用といったものが挙げられます。中小企業は、原油高などで収益が圧迫されてきております。地域経済につきましては、回復のばらつきの中で、いまだ十分に回復が弱いという状況で推移しています。雇用につきましても、非正規雇用の拡大などによって不安定感が続いております。こういったことに対して、できる限りの対応をしていくということです。
 柱は大きく分けて5つございます。「中小企業の体質強化」、「各産業の体質強化」、「雇用の改善」、「地域活性化」、更には成長力強化のまさに基盤となります「安全・安心の確保及び低炭素社会への転換」という5つの柱で早期実施策は組み立てられております。それぞれについてポイントをご紹介いたします。
 まず中小企業の体質強化ですけれども、中小企業へのIT経営の実践・普及の促進といたしまして、研修事業の倍増やIT専門家の派遣などを早期に実施いたします。また、財務会計から電子納税申告などまでを処理できる中小企業向けオンライン版ソフトを開発いたしまして、国のポータルサイトからの廉価な提供を4月から6月の間に開始いたします。
 それから、地域力連携拠点の整備を進めます。これは、経験豊富な大企業の退職者、中小企業、農業、大学などが相互に連携して、中小企業の経営力向上などを支援するモデル拠点を全国で200から300カ所整備するものです。6月上旬に事業を開始いたします。
 次に中小企業の金融の円滑化。これは、セーフティネット保証対象業種の拡充、エンジェル投資の活性化などを通じたベンチャー・第二創業の促進。資本的な性質を持つ劣後ローンの創設など中小企業の資本強化。「マル経」と呼ばれております小規模事業者経営改善資金融資制度の拡充など資金繰りの円滑化を、いずれも4月から進めます。
 第2の柱であります各産業の体質強化では、まずスーパー特区の第一弾として、先端医療の開発を進める先端医療開発特区を創設します。これは、最先端の再生医療などについて、先端医療研究拠点を中核とした企業等との複合体を選定いたしまして、研究資金の特例や規制担当当局と並行協議しながら開発を進めるというものです。今年度内に先行プロジェクトを実施いたします。
 また、金融資本市場の競争力強化。これは、昨年末に取りまとめました強化プランの早期具体化を図ります。金融商品の多様化、英文開示有価証券の対象拡大、海外のファンドマネージャーの誘致などに取り組みます。このほか策定をしておりますサービス産業の生産性向上、それから貿易手続の効率化など物流コスト引下げに向けた取組の推進、電子政府に向けた取組の強化などを行います。
 第3は、雇用の改善です。女性・若者・高齢者の雇用促進に向けて、「新雇用戦略」を策定し、早急に実行に移します。その一環として、「新待機児童ゼロ作戦」を展開いたします。保育施策を質・量ともに充実します。特に、保育所の受入児童数の拡大、保育ママの拡充、認定こども園の設置促進を早急に実施いたします。この「新雇用戦略」では、3年間の集中取組の数値目標を掲げて実施する予定です。また、ジョブ・カード制度を4月に施行いたします。既に経済界、労働界が参加した推進協議会を中心にして対象や仕組みの拡充を進めております。それから、適正な雇用関係の構築。これは最低賃金の履行の確保、「緊急違法派遣一掃プラン」の推進、非正規労働者の待遇の改善などを推進します。更に、非正規雇用の若者や子育て中の女性などの就職支援、ワーク・ライフ・バランスの実現を進めます。
 第4の地域活性化ですが、地域が主体となった地域活性化の取組を行うということで、人材育成や社会実験の実施を中心とする地方の元気再生事業による支援制度を4月に創設して推進します。また、「ユビキタス特区」事業を4月から順次事業開始します。光ファイバー網の整備、IT人材の育成等を内容とする「ITによる地域活性化等緊急プログラム」を推進します。農林水産品を活用した新事業展開や実用化研究開発の支援事業の早期実施する、農商工連携を加速いたします。このほか、地域の中小企業の事業再生支援や企業立地等による地域活力の向上を進めます。
 最後ですが、第5が成長力強化に向けた基盤としての、安全・安心の確保及び低炭素社会への転換です。安全・安心の確保に向けて、公立学校の耐震化事業を自治体が早期に実施できるように、6月には国庫補助の交付決定をすることを目指します。また、食の信頼性向上に向けた取組として、食品業界のコンプライアンスの徹底に向けた自主的な取組の推進を進めます。更に、低炭素社会への転換に向けて、環境モデル都市の提案募集、200年住宅の推進に向けた4月からの支援制度を創設します。
 これまでの継続施策ではなく新規施策につきましては、3枚紙をお配りしておりますので、参考にご覧ください。
 5つの柱を強力に進めますけれども、安全・安心のためには年金記録問題への取組、社会保障制度の改革というのは当然の前提ですので、これは並行して推進していくことが今日の会議でも確認されました。
 今日の総理の指示のごあいさつの中で、この早期実施策を真に実効あるものにするために、実施状況の点検をしっかり行うようにという指示がございました。このような施策は実施されるかどうかが鍵ですので、この点検体制をしっかり整えていきたいと思っております。主な施策につきましては、実施状況を毎月確認いたします。具体的には、担当省庁ごとに点検責任者を登録いたしまして、できる限り施策の実施目標を具体的に出してもらいます。数値でできるものは数値で出してもらうと。そして、毎月の月末時点で主な施策の進捗状況を私のところで取りまとめまして、翌月報告するというプロセスを採ります。早期実施策ですので、いつまでも行う訳ではありませんが、この早期実施の対象期間については、毎月行っていきたいと思います。
 それから、お手元に原油高・円高等の日本経済への影響を分析したものをお配りしておりますので、これも御参考にしていただければと思います。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)成長力強化への早期実施策なのですが、幾つかある中で、大臣として目玉と考えている事業、効果が期待できる事業はどれなのでしょうか。
(答)例えば中小企業のIT経営の支援ですとか、金融の円滑化は効果が期待できると思います。もちろん連携拠点もそうですし、スーパー特区は既に諮問会議でも議論されて準備を進めてきております。金融資本市場の競争力強化も、昨年末取りまとめてから準備を進めておりますので、効果を持つと思います。
 新雇用戦略はこれから4月中にも取りまとめていきます。これは3年間の集中実施ですので、すぐに足元でということではありませんが、日本経済の成長力強化には大変重要です。それから、ジョブ・カードは既に1年かけて準備をしており、4月に本格スタートいたします。これはすぐに効果が出てくると考えております。それから、この新規施策に盛り込まれたものは、それなりに準備も進めてきておりますので、効果を持つと考えております。
(問)もう一度お願いします。全体的に見て、余り新味がないように感じられるのですが、どれほどの効果がこれをもって期待できるのか、もう一回総括してください。
(答)新味がないということですが、成長戦略の議論は既に今年初めから諮問会議で幾つかやってきておりますので、そういう意味では降って湧いたような全く新しいものとして、皆さん方のお耳に初めて入るようなものはありませんけれども、すべて成長戦略として準備を進めてきたものを早期に加速させるということですので、これは当然効果を持つように実施していくということになります。
(問)諮問会議ですが、国土交通大臣は参加されるのでしょうか。
(答)いえ、今回は御出席の予定はありません。
(問)もう一つ、うろ覚えで大変恐縮なのですけれども、「『骨太07』に向けて」という民間議員の御提案は、例年たしか5月下旬だったように記憶していて、06年もそのぐらいの時期だったように記憶しているのですけれども、今回の民間議員からの御提案というのはそれに当たるものなのですか。それとももっと前段階のものでしょうか。
(答)まだ検討をしていただいている段階ですけれども、今回は福田内閣初めての「骨太方針」になりますし、それから1月に今年の課題というのを出しまして、通常はそれから諮問会議の「骨太」に向けての議論がスタートするのですが、例えば景気が踊り場に差し掛かっていること、あるいは道路特定財源に向けて新しい展開があったことなど、幾つか1月から変更点がありますので、そういうことを踏まえて早目に民間議員から今年の「骨太」に向けてのポイントといいましょうか、考え方が示されるのだろうと思います。
(問)基本的に、「骨太」の取りまとめの時期自体は例年と変わらないと考えてよろしいのですか。
(答)はい、結構です。
 「骨太方針」も既に7回目ですがマンネリになってはいけませんので、パターン化されないように、やはりその都度「骨太」の意義というものを、それぞれの内閣で確認しながらやっていく必要があると考えております。その点については、民間議員もまさに問題意識は共有しておられます。
(問)先ほどの「新味のない」というところの繰り返しになりますが、この早期実施策において、これまで準備されていて実施時期を前倒ししたもので、何か具体的な例があれば、教えていただけませんでしょうか。
(答)全体に、予算成立を待ってゆっくり取り掛かるのではなく、すぐに集中的にやっていくという趣旨です。前倒しの例としては、学校耐震化などを早くやっていくということですね。
 ただ全体に、今年度予算として取りまとめていて、実施時期は各省に委ねられている訳ですけれども、それはもう早くやっていくと。本文をご覧いただくと分かるように、4月から6月の間に立ち上げていくというものがほとんどです。
(問)今回の早期実施策で取りまとめをしなければ通常だと7月以降になるものを、早いものは4月に前倒しして実施するというように、政府として位置付けていくということでしょうか。
(答)ええ、もう準備を3月から進めていただいて、予算成立直後から入ってもらうと。成長戦略自体今取りまとめ中ですけれども、その戦略の中には今年度の予算のものも入っている訳です。ですが成長戦略の取りまとめを待たずに今回の早期実施策でスタートしていくことになります。つまり、成長戦略の全体はまだ取りまとめていないのです。ですが、早期に実施できるものはこの4月からやっていくということになります。
(問)また効果についてなのですけれども、アメリカの経済の減速が鮮明化して、日本の景気の下振れリスクが高まっているのですが今回は新たに財政支出はしない実施策ですよね。それがどれだけその下振れリスクを止められるのかというところを改めてお伺いしたいのですが。
 それと、円高の影響について紙に出ていますが、大臣の方から総括的にその影響の有無についてお伺いできますか。
(答)まず景気の現状ですけれども、今回の震源地であるアメリカ経済の減速の大きさ、期間がどうなるのか。それから、今アメリカで打たれている金融政策、財政政策の影響、効果がどの程度かというのをしっかりと見極めていくことが大事だと思っています。アメリカ経済の減速の大きさや期間によって日本の処方箋も描いていかなければいけないのだと思います。今の段階では、アメリカで打たれている政策の効果を見極めている段階ですので、できるところから早目に、例えば成長戦略の中でもできるものは早期に実施しながら、その状況を見極めていくということが必要だと考えております。
 したがいまして、例えば今回の早期実施策でどの程度の経済効果があるかということをなかなか判定できるたぐいのものではありません。早期に実施することによって、できることからやっていくという構えを、この実施策に入れているということです。
 また、円高ですけれども、まだ日本へのこの円高の影響がどの程度の大きさであるかは、検証する段階には至っておりません。急速に円高が進んでおりますし、例えば輸出への影響、それから企業収益の影響はじわじわと出てきてはおりますけれども、総括してこれがどの程度のインパクトを持つのか、まだ検証できる段階にはなっておりません。
(問)資料を読むと、「過去の円高局面と比較すると、影響が軽微」と書いてあるのですが、そういった認識は大臣にはあるのでしょうか。
(答)これはヒアリングに基づくものです。ヒアリングでこのような答えが多かったということです。ここに書かれておりますように、今回は円高というよりもドル安ですので、他の通貨に対しても円高になっているという状況ではありませんし、現地生産比率は高まっております。
 それから、輸出の動向を見ても分かるように、アジア新興国はいまだ堅調さを保っているという点がありまして、輸出へもダイレクトな影響というのはまだそれほど大きくないといったこと。ここに書かれているのは、恐らくこのとおりだろうと思います。
(問)月末に進捗状況を取りまとめるということですが、これはここに挙げられているすべての施策なのでしょうか。あと聞き漏らしたかもしれないのですが、早期実施の対象期間がいつからいつまでかというのと、その進捗状況の取りまとめはどういうものかというのをもう少し具体的にお聞きできればと思うのですが。
(答)これは全部についてやることはできませんので、国民生活や企業活動に重要な影響を持つような主な施策について行おうと思っております。中には、数値目標が掲げられるもの掲げられないものがありますので、この数値目標だけではないかもしれませんが、なるべく具体的な目標を各省が設定して、そこにどの程度至っているのかという進捗状況を毎月点検することにいたします。総理からも、こういう早期実施策は、後のフォローが割といい加減になりがちだが、実は後のフォローこそが大事だというお話がありましたので、しっかりやっていきたいと考えています。
 時期につきましては、本文の中にそれぞれ書けるものは4月中に実施とか6月に実施とか書いてあります。すべての施策それぞれの範囲がありますが、全体に前倒ししてもらったというのが、今回の実施策です。したがって、例えば雇用戦略の取りまとめといったようなものは3カ年になりますが、なるべくその取りまとめは早くしていくということで、全体として何月までがこの実施策の期間だと一言でまとめる類いのものではありません。それぞれの項目をご覧いただければと思いますが、全体的に前倒ししていると。予算執行のものも、できるだけ早い時点を書いてもらったのが、この時期だということです。

(以上)