大田内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成19年12月25日

(平成19年12月25日(火) 10:10~10:33  於:220会議室)

1.発言要旨

 おはようございます。
 今朝8時半から官邸で、福田総理主催の下で、全閣僚と与党の幹部が出席して、「原油高騰・下請中小企業に関する緊急対策関係閣僚会議」が開催されました。今月11日に「基本方針」を取りまとめておりましたが、それに基づいて具体策を検討していました。今日の会議では、私から取りまとめの案をご説明し、与党の幹部からも活発な御意見が出され、予算措置を含めた具体的な対策パッケージの取りまとめに至りました。
 内容をご説明する前に、私から今回の原油対策の意義を簡単にご説明したいと思います。
 原油価格が上がるというのは、日本にとって良いことは何もありません。産油国に対する支払いが増え、その増えた分を企業、家計のどちらかが負担しなくてはいけない訳です。第一次オイルショックの時は、まず物価が4割上がりました。企業からしますと価格に転嫁できた訳ですが、家計にとっては4割物価が上がった。しかし、一方で賃金も上がりました。賃金が上がった分はまた企業の負担ということで、結果的に見ますと、企業の負担の方がやや多かったということです。
 今回は賃金も物価も上がりません。したがって、企業と家計が痛み分けをしている状態になっています。政策的に見ますと、第一次オイルショックの時は、転嫁はできたのですが、その分インフレが進行しまして、総需要抑制政策が採られ、成長率は大きく下落いたしました。つまり、マクロ経済で問題が起こった訳です。
 今回はマクロの成長率はそれほど下がっておりませんが、企業と家計の痛み分けですので、ミクロのレベルで企業や家計部門にそれぞれ問題が起こっている訳です。したがって、今回はミクロレベルでの対策が必要です。企業の中、家計の中でそれぞれダメージを大きく受けているところに対策を採る。これが今回の原油対策の趣旨です。
 内容については、お手元にA4の形で取りまとめが配られていると思います。
 この1枚目に6項目ありますが、今申し上げましたように、特にダメージの大きいところを中心に緊急的な対策を取りまとめたということです。
 まず、1がなかなか価格転嫁できずにしわ寄せがきている中小企業、それから2が特に原油を使うために痛みがきている建設業、漁業、農林業、運送業、石油販売業といった業種別対策です。3が家計の中でも特に厳しい状態にある灯油を多く使う寒冷地あるいは離島といったところへの対策ということです。
 それぞれについて簡単にご説明します。
 1ページおめくりください。
 まず最初は、中小企業対策についてです。主なものだけご説明いたします。
 (1)の4、中小企業向け金融・信用補完の基盤強化のために補正で238億円を計上いたしました。それから、5にありますセーフティーネット保証の対象業種として、クリーニング業など4業種を追加いたしました。
 右側にいっていただきまして、(2)の1、下請適正取引推進センター(仮称)を全国規模で整備することとしまして、平成20年度予算で約5億円計上いたしました。
 (4)下請業者への対策として、1にありますガイドラインを策定するということ。それから、3にあります法令の厳格な運用などの強化に向け、その実効を高めてまいります。  それから、2ページ目の業種別対策で、右側をご覧いただきますと、漁業については1にありますように、経営体質の強化や省エネ型漁業への転換促進を目的として、補正で102億円の基金を設置しています。
 運送業につきましては、1にありますが、深夜の高速道路料金を更に引き下げることとしておりまして、補正で67億円、20年度予算で235億円計上しています。
 一番下をご覧いただきますと、石油販売業については、資金繰り悪化への対応や離島などにおける流通効率化への支援のため、70億円の信用保証基金の積み増しと特別保証枠の設置をしております。
 それから、次のページをご覧ください。これは離島、寒冷地など地方の生活関連対策です。
 まず、左側をご覧いただきますと、住民の生活を支えます離島航路や航空航路、(2)にあります地方バス路線の維持のために、合計して補正で23億円、20年度予算で119億円計上しています。
 それから右側に行っていただいて、寒冷地における生活困窮者対策など地方自治体の自主的な取組を支援するために、特別交付税措置を講じます。
 まず、先般の「基本方針」策定後、即日地方自治体に対して取組を促す通達を行いました。現時点で4つの道県、278の市町村が生活困窮者に対する灯油購入費等の助成を実施することにしています。そのほか、社会福祉施設に対する暖房費の助成などを行うところもありまして、今後更に精査の上、必要な自治体の一般財源の2分の1について特別交付税措置を講じてまいります。
 次のページをご覧ください。ここはエネルギー関係の構造転換対策です。(1)省エネ対策では1にありますように、運送業、農業、漁業を含めた事業者が行う省エネ設備の導入支援のために、20年度予算で296億円計上しています。
 右側の(2)バイオ燃料・バイオマスエネルギーの開発・導入促進で、1にありますように、食料供給と競合しない稲わらなどの有効利用に向けた技術開発に80億円を20年度予算で計上しています。2にありますように、バイオガソリンの導入に向けた実証事業を計上しています。
 それから、(3)石油以外の新エネルギーにつきましても、1にありますように、地方自治体や事業者が行う先進的な設備の導入支援のため、378億円を計上しています。
 参考資料にも掲げました、今回の取りまとめ全体の省エネ、新エネ対策について合計いたしますと、平成20年度予算で約1,100億円を計上しています。
 最後のページをお開きください。これは国際石油市場への安定化への働きかけです。
 国際機関への支援、それから産油国との協力事業を推進するとともに、首脳レベル・閣僚レベルの会合における発信を更に強化してまいります。
 この右下に最後にありますように、生活関連物資の価格に与える影響の調査を進め、石油製品等の価格監視を強化してまいります。
 以上、これらの具体的な対策を政府として着実に実施し、原油高騰の影響を受けている国民や事業者に対してきめ細かく対応してまいりたいと思っております。
 なお、今回の対策に係る予算の合計額は、大括り予算として内数に溶け込んでいるものを除いて合計いたしますと、補正予算で約430億円、平成20年度予算で約1,720億円となります。
 財務省が20日に発表しました補正予算では、原油対策570億円となっておりました。これは別に金額が変わった訳ではありませんで、570億円の中には海上保安庁の巡視船の燃料費といった政府自ら使う必要経費が増えた分も含んでおります。ここでその430億円と取りまとめましたのは、直接的に国民への支援に向かう分が430億円ということです。
 この取りまとめの後、これはプレスも入っておられましたが、総理から、やはり昨今の急激な原油価格の高騰は国民生活や中小企業の経営を直撃している。さらに、厳しい冬に入り不安を感じている国民の気持ちをしっかりと受け取め、それに答えていかなければいけないと申し上げてきた。今日の取りまとめられた対策は、実施段階において真価が問われるものである。関係閣僚におかれては、ぞれぞれの施策が真に実効のあるものとなるよう取り組むようにという御指示がありました。
 今日の議論の中では、与党の方から、やはりしっかりと実効あるものにしなくてはいけないと。それから、一般のガソリンユーザーについての対策はない訳で、そういうものも必要だというような御意見がありました。やはりきめ細かく施策を講じていくことが必要で、くれぐれも実効性のあるものになるようにという御発言です。
 それから、冒頭に原油価格の上昇は日本にとっていいことはないと申し上げましたが、やはり国際石油市場への働きかけというのはそういう意味で必要で、そういうことも重視するようにという御発言などありました。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)まず、今回の取りまとめに当たり、これまでの段階で野党側との何らかのディスカッションはなさったのでしょうか。
(事務局)文書や申入れをいただいておりまして、そういったものを踏まえながら行っておりますが、事務的に特段議論するといった形で承ってはいなかったと思います。
(答)国会の場では、私も数回御質問を野党から受けました。原油対策で何をやるのか、灯油でダメージを受けているところに対策が必要だといった御意見を、国会では私もお受けいたしました。
(問)先ほどお答えになった事務局の方にお尋ねしたいのですが、野党側の申入れは踏まえられたと。これは民主党の申入れのことを仰っていると思うのですが、具体的に例えばどのようなポイントが反映されたのかということも含めてお願いします。
(事務局)後ほどお答えします。
(問)続いて中身について、寒冷地の灯油購入費補助の件ですけれども、これは自治体によっては既に始めているものもあるかもしれないと思いますが、そういったところにも遡及するのか。また自治体によっていつまでそういった補助が必要なのかというのは当然時期も違ってくると思いますが、その辺のスケジュール感を教えていただけますでしょうか。
(答)「基本方針」が取りまとめられた段階は、北海道だけだったのですね。それで、地方議会の開会期間もありますので、なるべく多くの特に寒冷地の自治体でこういう対策が講じられるようにし、特に補助率は半分ですが、こういうものも早急に決めて通知をしたということがございます。その結果として、今4道県と200幾つの市町村となっていますけれども、これがまた更に広がっていくのだろうと思います。
 特別交付税の措置は、12月初めと年度末で行う仕組みになっております。したがって、今回の対策分は年度末の交付税措置で配分されるということになります。
(問)原油対策について幾つか確認致します。4道県というのは具体的にどこか。それから、今後広げると仰いましたが、それはどこに広げていかれるのか。地域、エリアが決まっていれば教えてください。
 それから、交付税措置で国が2分の1助成ということですが、その規模は大体どれぐらいを見込んでいらっしゃるのか。それで、補正に430億円、平成20年度で1,720億円というお話が全体の枠としてありましたが、この中には交付税措置として採られるものが含まれていないのではないかと思いますが、その辺りの確認をお願いします。数字がもし含まれているのであればその旨、教えてください。
(答)この430億の中には入っておりません。これは特別交付税の措置です。
 それから、これからどれぐらいの規模になるかということは、自治体がこういった政策を採りませんと交付税措置はできません。自治体の負担も2分の1ありますので、今自治体でご議論いただいているんだろうと思います。ですから、これからどこの地域でというよりも、それぞれの自治体の自主的な判断です。対策を講じられるところに特別交付税で半分措置をしていくということになります。
(事務局)4道県につきましては、北海道が既に実施中でございます。あとの3県はいずれも検討中ということですので、そういうことでお願いしたいと思いますが、岩手県と長野県と新潟県でございます。
(答)これは今実施を決めた、もしくは検討中ということですね。これは今日総務大臣から御発言があったものですが、昨年度北海道では51市町村で約6,800万円の助成が行われていましたが、今回照会した結果、道内では165市町村、約8億4,000万程度に増えています。この中には検討中の分も含んでいます。全国では、278市町村で助成を実施または検討中、また4道県においては、こうした市町村に対する補助を実施または検討中であるという回答を得ております。このうち124市町村は、この12月議会で予算措置を決めていると。道県と市町村を合わせた助成額は、一般財源ベースで約29億円程度となっていますということで今日増田大臣から御発言がありました。
 それから、福祉施設や農林漁業者などに対する支援について、これは自治体からですが、一般財源ベースで6億円程度という回答がありました。こういう自治体の取組は、今回の原油対策を受けて今後も増えていくと考えられます。総務省としても支援していくという発言が今日ありました。
(問)まず、寒冷地の灯油ですが、生活困窮者という範囲はどこまでを指すのか。ここに高齢者世帯、母子家庭というのが書かれていますが、所得で分配するのか、それとも母子家庭と高齢者は全部に支給するのかというところの範囲をお願いします。次に高速道路料金ですが、これは全国の高速道路一律で下げるのか、それともある地域の高速道路なのかというところをお伺いしたいのですが。
(答)生活困窮者の対象は、それぞれ各自治体が検討して決めることになっています。
 それから、高速道路料金につきましては、今深夜0時から4時までの間3割引になっています。これはそれぞれの道路会社の経営努力でそうなっている訳ですが、これを4割にするということです。
(事務局)今、大臣のお話がありましたように、3割引の深夜割引が入っているところについては一律4割引にさせていただくという対策を行いたいと思っております。3割引が入っていない高速道路もある部分的にはあり、そういうところは一部社会実験を行うなど、今その効果を検討しているところです。今回は現在3割引が入ってるところが対象になります。
(答)今経営努力で3割引を実施しているところを4割引にするということですね。
(問)もう1点、厳しいことを言うかもしれませんが、各自治体に裁量を任せるということは、一種ばらまきのようになってしまう可能性も否めないとは思うのですが、そこはどういうお考えで進められるおつもりなのでしょうか。
(答)自治体がそれぞれの実情に応じて施策を講じるということが大事で、それをやりませんと逆にばらまきになってしまうのだと思うのですね。自治体に半分支援するという形ですので、これはやはり住民との話し合いも当然必要になってくる訳です。自治体の負担が発生いたしますので、そういう意味では逆にばらまきになっていないなと思います。
(問)少し細かいのですが、今の灯油の話ですけれども、対象は全国ですよね。寒冷地だけなのですか。
(答)寒冷地ではなくても、自治体が導入すると決めれば、特別交付税を措置することになります
(問)先ほども質問がありましたけれども、このペーパーの書き方では自治体の自主的な取組に対して支援するということですが、補助の仕方として自治体が決めた生活困窮者が対象の自治体施策に対してはすべて行うということですか。要するに、例えばかなり幅広に自治体が補助を行う場合に、それに対しても国が半分お金を出すのかということですが、そこはどう理解すればよろしいのでしょうか。
(答)これは、自治体が決めることになります。ただ、自治体も半分の負担になりますので、全世帯ということはやはりできないだろうと思います。自治体に必要性、範囲を決めていただくという形で、特別交付税では半分補助するという措置になっています。

(以上)