大田内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成19年6月6日

(平成19年6月6日(水) 19:52~20:03  於:記者会見室)

1.発言要旨

 お待たせしました。ただいま、第2回目の成長力底上げ戦略推進円卓会議が終了いたしました。

 今日の議題は、大きく分けて2つです。

 まず前半ですが、成長力底上げ戦略は3つの柱でなっておりますけれども、それぞれの19年度の実施計画、20年度以降の取組方針、それからジョブ・カード構想委員会、地方版円卓会議の取組についてご説明して御意見を伺う、これが1つ目の柱です。

 2つ目の議題は、最低賃金について、その現状を資料でご説明して、生産性向上との関係などについて御意見をいただきました。

議論の詳細は、後ほど事務方がご説明いたします。

 私からは、主な議論をご紹介したいと思います。

 まず、1つ目の議題では、アウトリーチということをめぐって何人かの方が発言されました。アウトリーチというのは、こちらから出かけていって、一人一人にコンサルティングを実施する、一人ひとりの状況に合わせていろいろなアドバイスをしていくということです。まず山本再チャレンジ担当大臣が、アウトリーチについて紹介されて、例えばイギリスでは、13歳から19歳の若者をフォローして、出向いて行って詳しくアドバイスしている、ということでした。中小企業への融資も、アドバイザーがそれぞれ出向いて、アドバイスとセットで融資するという考え方を紹介されました。

 これに関連して、連合の高木会長からは、若い人たちが勤めても、3カ月とか半年で辞めて、職探しがなかなか難しい。勤めるとなると派遣や請負で、トレーニングの機会を用意されていても、受けるのが難しいという現状があるわけですね。

 したがって、そういう一人ひとりの状況に対応しながら訓練のチャンスを得られるように、例えば食べる術といいますか、訓練を受けている時に何らか生活の安定が得られるような、生活費用が支給されるような、なかなか難しいだろうけれども、そうした呼び水が必要ではないかというお話がありました。

 清成先生からは、アウトリーチに関して専門職大学院で教員と大学院生が地域に出向いて中小企業の指導をしているのだという例を紹介されました。

 前半は、それだけご紹介しておきます。

 後半は、最低賃金についてです。

 まず、伊藤忠の丹羽会長から、最低賃金とは一体何かと原点に返って考えなければいけないのではないか。現在では、算定根拠が、その地域の労働者の生計費、賃金水準、それから事業者の支払能力の3つであるが、算定根拠を労働者の生計費に絞るべきではないか。事業者の支払能力を考慮すると、労働者の最低限の生活費を下回ることがあるのではないか。やはり、労働者が最低限の生活をするのに幾ら必要なのかという基準で決めるべきではないか。それを払えない企業は、企業努力で本来解決すべきものではないか。労働者に生活に必要な最低限の賃金を保障するということにして、それでマイナスの影響がある場合は、例えば中小企業支援法などで解決すべきではないかということと、国際比較した時にペナルティーが非常に低いということについて御発言がありました。

 それから、日経センターの小島さんからも、やはり海外に比べて日本の最低賃金は低い。これから労働力人口が減っていき、移民の受入れも議論に出ているような段階で、これは矛盾があるのではないかという御発言がありました。併せて、アメリカと比べて労働生産性の低い業種では、むしろその差が拡大してきているわけですね。この差が何によって生まれているかというと、ITも含めた経営努力によるところがあるのではないかと。今日の議論の中でも、地域は非常に厳しい、中小企業は厳しいという意見がたくさん出てきたわけですけれども、単に中小だ、単に業種だということではなくて、経営のやり方によってシナリオが違うということも重要なのではないかという御意見がありました。

 これに対しては、やはり地域は厳しいのだ、やはり中小は厳しいのだという反論もありました。

 それから、連合の高木会長からは、丹羽会長の発言を受けてですが、現在の最低賃金が国際的に低いという認識は共有できる。生活するという意味では、そのベースに達していないと。一番低い地域が610円なのですね。これを年収にすると110万円ぐらいだと。最低賃金制度がスタートした時に、中卒の初任給をベースにおいている。その後、30人未満の企業の賃上げ率に準拠してきている。つまり、上げ幅の率で議論してきているのだけれども、やはり今はもう中卒ではなく高卒以上が大半を占めております。そういう構造を踏まえて、この上げ幅の率だけで最低賃金の毎年の議論をするのではなくて、生計費というファクターを考慮すべきだ。今後、制度のこういう骨格に関わるルールが必要だと。

 それから同じく高木会長が、まずお手元に最低賃金をどう考えるかという4つの論点がありますので、これは参考にしていただきたいと思うのですがこの中で、2つ目には「中長期的な引上げの方針」というのがあるわけですが、やはりこれには指標が要る。上げればよいということではなくて、とにかく何らかの指標が要ると。例えば、一般労働者の賃金の50%などという指標ですね。何らか準拠すべきものを考える必要があるというような議論がありました。

 他の議論として、やはり生産性向上、最低賃金という議論のベースとして、取引慣行、下請取引といったものをきっちりと考えてくれないと、生産性向上以前の問題があるのではないかという御議論も、何人かの方から出ておりました。

 それから、竹中ナミさん、この方は障害者がITを活用されることできちんと働けるようになって年収を得られるよう活動をしておられるわけですが、ITを活用し一人ひとりのできることを引き出すことで、例えば400万円の年収を得る障害者もいるし、例えば芸術的な才能を販売網に乗せることで数百万円の収入を得る人もいるわけで、そういうことも考えていく必要がある。一人ひとりのできることを引き出す―先ほどのアウトリーチですね、そういうことが重要だという御発言もありました。

 詳しくは、事務方からお聞きいただきたいと思います。

 次回のスケジュールですけれども、7月上旬に第3回の円卓会議を開催いたします。ここでは、最賃引上げの基本的な考え方についてご議論いただこうと思っています。

 例えば、中・長期的な方向性や、目標をどうするか、生産性向上とのリンクをどうするのかというようなことをご議論いただいて、これを中央の最低賃金審議会に方向性として反映していただくということを期待しております。

 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)今日、決定事項は何かあったのでしょうか。
(答)いえ。今日の議題として、1つ目は現在の取組について、2つ目は最低賃金と生産性向上について広く意見交換するということですので、決定は想定していません。
(問)次回の会議で、数値目標まで議論されると仰いましたけれども、次に数字が出るということもあり得るのですか。
(答)数字ですか。方向性について議論していきたいと思いますが、数値についての合意は、難しいかと思います。今ご紹介しましたように、今日もやはり相当開きはあります。ただ、大きい基本的な方向性については、次回更に議論を深めて、何らかの方向性を得られるよう議論していきたいと考えています。
(問)最低賃金について概ね一致した部分はあるのでしょうか。
(答)概ね一致したというほどこの4つのテーマでそれぞれの方が何度も御発言になったということはありませんが、日本の最低賃金はやはり国際的に見ると低いということには、格別の反論はありませんでした。
 ただ、これに関して日商の山口会頭からは、国際比較も出ていますけれども、それぞれ(適用対象となる)企業の取り方などが違っているので、国際比較は注意してやるべきだという発言はありましたけれども、「高いのだ」という反論はありませんでした。

(以上)