大田内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成19年5月29日

(平成19年5月29日(火) 10:07~10:26  於:記者会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。
 閣議では、まず松岡大臣に哀悼の意を表するために黙祷を捧げました。総理から、道半ばで亡くなられたことは誠に痛恨の極みだ。閣僚各位におかれては、今後も結束して国政に取り組んでいくよう御協力をお願いするという発言がありました。
 それから、ものづくり基盤技術の振興施策について御発言が関係閣僚からありました。
 また、総務大臣から、労働力調査結果及び家計調査結果について御発言がありました。このデータは御存じと思います。厚生労働大臣から、有効求人倍率について、また5月31日の世界禁煙デーについて御発言がありました。地方分権改革推進本部の設置について、総理から御発言がありました。「地方分権改革の推進に関する施策の総合的な策定及び実施を進めるため、内閣に私を本部長とし、全閣僚が参加する地方分権改革推進本部を設置することとした。地方分権は、内閣の最重要課題であり、新たに設けられた本部において、政府が一体となって改革に取組み、新分権一括法案を3年以内に国会に提出したいと考えている。官房長官、地方分権改革担当大臣兼総務大臣、財務大臣、経済財政政策担当大臣、国・地方行政改革担当大臣を中心に、各大臣が各省庁の利害に囚われることなく、率先してリーダーシップを発揮してご協力いただきたい」ということでした。
 それから、地方分権改革担当の菅大臣から、政府一体となった取組を強力に推進していくという御発言がありました。食育月間の御発言がありました。
 それから、2008年のG8閣僚会議等の開催日程について、官房長官から発言がありました。
 以上が閣議の御発言です。
 閣僚懇談会で、まず総理から歳出・歳入一体改革について「基本方針2007」の取りまとめに向けての御発言がありました。基本的には、先日の諮問会議で総理から指示のペーパーが配られましたものと内容は同じです。
 ご報告します。
 「6月に予定している『基本方針2007』の取りまとめに向け、歳出・歳入一体改革について、私の考えを明らかにしておきたい。歳出削減を一段と進め、財政の無駄をなくすとの基本方針は、安倍内閣においていささかも揺らぐことはない。真に必要なニーズに応えるための財源の重点配分を行いつつ、歳出改革を着実かつ計画的に実施する。平成20年度予算は、この歳出改革を軌道に乗せる上で極めて重要な予算である。歳出全般にわたって、これまで行ってきた歳出改革の努力を決して緩めることなく、国・地方を通じ、引き続き「基本方針2006」に則り、最大限の削減を行う。また、新たな歳出を行う際は、原則として他の経費の削減で対応する。税の自然増収は安易な歳出等に振り向けず、将来の国民負担の軽減に向けるなど、「進路と戦略」で示した「予算原則」に沿って規律ある財政運営を行う。こうした歳出改革の取組を行って、なお対応し切れない社会保障や少子化などに伴う負担増に対しては、安定財源を確保し、将来世代への負担の先送りは行わない。各閣僚におかれては、これらを踏まえ、歳出・歳入一体改革への取組を進められたい。」という御発言です。
 高市大臣からキャリア教育等推進プランの策定について、法務大臣からG8司法内務閣僚会合の開催結果について、国家公安委員会委員長から同じくG8司法内務閣僚会合の開催結果について御発言がありました。
 閣議での御発言は以上です。
 次回の諮問会議ですが、6月4日に開催いたします。「骨太2007」の素案をご提示する予定です。それ以外の議題については、今調整をしておりますので、決まり次第ご報告いたします。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)景気の関連の指標が幾つか発表されまして、例えば家計調査は実質1.1%増で、失業率も3.8%で9年ぶりぐらいの良い数字で、景気も良くなってきているように見えますが、そういったことを踏まえた上で、大臣の今の景気認識をお願いします。
(答)景気は、月例経済報告でお示ししているように、やはり生産に弱さが見られますけれども、回復基調はしっかりしていると見ています。今日発表されました指標でも、完全失業率が3.8%ということで、9年1カ月ぶりに3%台になりました。しかも、内訳を見ますと、就業者、雇用者ともに増加して失業者が減っているという大変良い形が表れています。有効求人倍率も1.05ではありますが、3月より上昇いたしました。
 それから、消費支出は実質消費支出が季調済で前月比0.6%のプラスです。3月は前月比0.8%のマイナスでしたので、持ち直してきています。まだ詳細を見ておりませんが、ざっと見たところでは、家と車の消費はマイナスになっていますので、これを除きますともう少しプラス幅が大きくなるのではないかと思っております。これはいい姿だと思います。
 それから、小売業販売額は名目値季調済前月比で0.4%のプラスです。3月は前月比マイナス1.3%でしたので、上向いてきております。したがって消費が持ち直してきています。
 ただ、どうも需給と価格との連動性があまり直接的なリンケージになっていないということがあります。労働の需給があまり賃金の上昇に結びつかないと。実体経済の需給が必ずしも物価に結び付いておらず、やや連動性が切れている部分があります。したがいまして、賃金がなかなか上がらないという点はやはり気にしております。ユニットレーバーコストが上がらないという点はやはり気にかけている点です。
 ただ労働需給は確実に良くなっております。需給ギャップも先日お示ししましたように0.7%のプラスになっておりますので、徐々にこの引き締まりが賃金に波及してくるのではないかと期待しているところです。
(問)歳出・歳入一体改革についての閣僚懇での総理指示についてお聞きしたいのですが、これを受けて「骨太方針」ではこれからどのような方針で取り組まれるのかというのが1点と、それから5月8日の経済財政諮問会議では、民間議員が公共事業の3%削減という数字を示されていたわけですが、今後数字を示さないとした理由について改めてお伺いしたいのですが。
(答)まず「骨太2007」では、歳出・歳入一体改革のその姿をしっかりと示す予算にしなくてはいけないと。当然ですけれども「基本方針2006」に則っていくと。そして、最大限の歳出削減を目指すという基本路線を貫きたいと考えています。
 民間議員からは、最近、資材費が上がっているといったことはありますし、また公共事業もかなり削減してきていると言われていますけれども、やはりその中で最大限の歳出削減を目指すべきだということで、数字を付けて御提言がありました。
 ただ、予算編成の実際の数字は年末までの予算編成プロセスの中で決定されていきます。「骨太方針」は閣議決定の文書ですので、その基本的な考え方はしっかりと書きますけれども、実際の数字はその後のシーリングに向けて、予算の全体像、シーリングの中で議論していくということになります。
(問)松岡さんの件で、今朝閣僚の皆さんに伺っているのですが、2点お願いします。1つ目は、今回自殺という悲しい形での結末でしたが、閣僚や政治家の疑惑が浮上して国会で質問が続いた場合に、大臣はどのように対処するべきだとお考えでしょうか。
(答)どういう状況でお亡くなりになったのか詳細を存じませんので、亡くなり方についてのコメントは控えたいと思います。松岡大臣としては本当にこれまでベストを尽くされてきたと考えています。
(問)あともう1点が、安倍総理が昨日自らの任命権者としての責任を仰っているのですが、政権に与える影響をどのように見ておられるのか、閣僚の立場でお願いできますか。
(答)松岡大臣は農業について改革を本気でやっていくと言っておられました。WTO交渉でも、やはり自分の中にしっかり道筋を描いて、その方向で着々とやっておられるという印象を私も持っておりましただけに、まさに松岡大臣という農林水産大臣を失ったことは大変痛手だと思っています。内閣全体にもこういう形で閣僚を失ったことは、やはり大きい影響があると思いますが、それが今後どうなるのかは、私には今の時点で判断できません。
(問)その関連でもう1点ですけれども、自殺の原因は明らかになっていませんが、「政治とカネ」の問題があると思われます。こうしたことを繰り返さないためにも、「政治とカネ」に関してはどうあるべきと思われていますか。
(答)どういう背景で、どういう状況で亡くなられたのか、私もつぶさには存じませんので、亡くなられた背景については、少しコメントは控えたいと思います。一般的に、政治とカネは当然国民の目から見て、透明で、きちんと説明責任を果たすものでなくてはいけないと一般論として考えています。
(問)今週、物価安定政策会議が開かれるのですけれども、その中でタクシーの値上げについて議論されるということですが、大臣は値上げについて疑問を感じると仰っていましたが、改めてタクシー運賃の値上げについてお考えをお聞かせください。
(答)タクシーについては、規制改革が行われて供給が増えた結果1台当たりの収益が減って運転手の賃金が下り、しかも事故が増えたので値上げをしなくてはならないとよく説明されるわけですけれども、本来規制改革は需要と供給がよりダイレクトに結び付いて、企業サイドが消費者の需要をしっかりと掴んで反映させていくと。そしてしっかりと反映させることのできない業者は退出していく、いわゆる護送船団から離れるということが趣旨だったのだろうと思います。
 ところが、それが十分に機能しないとすれば、そこに何らか別の要因があるのではないかと思います。特にタクシーの場合はなかなか消費者がタクシーに乗る前にどういう運転手さんのタクシーか選べない、特に流しの場合は選べない、という情報の非対称性の問題があって、総括原価方式が採られています。かつ、タクシーの運転手さんの賃金が歩合制になっていますので、タクシー業界からしますと、台数を増やしても、そのことによる収益の減少リスクは運転手にある程度転嫁することができると。しかも、総括原価方式で掛かったコストを申請によってまた上限運賃を上げるという仕組みになっていますので、なかなかしっかりサービスしない業者が退出しなくても済む構造があるのではないかと。つまり、そういう消費者の需要に応じて努力する業者が伸び、そうでない業者は退出を余儀なくされるというような構造をしっかりと作っていきませんと、運賃を上げても、結局運転手さんと消費者にしわ寄せがいく形で、また同じ悪循環が繰り返されるのではないかという懸念があります。
 したがいまして、今回の物価安定政策会議でも恐らく議論になると思いますが、考えなくてはいけないのは3点あると考えています。1つは、総括原価方式という決定の仕方が適切なのかどうか。それから、安全の規制はこれで十分なのか。これはまさに政府の役割です。労働面で運転手さんの労働基準はしっかり守られているのかどうか、これでいいのかどうかという点をしっかり議論しなくてはいけないと思っています。今回は厚生労働省にもおいでいただいて、審議することになっています。
(問)関連で、値上げを求める意見は、結局運転手さんの待遇の低下を通じて安全面に影響が出ているという主張かと思うのですけれども、経済的な側面と、安全のための規制という非経済的な部分はこうやって一緒にして考えるべきなのか、分けて考えるべきなのかについてはどのように考えますか。
(答)まず、安全の規制は政府の役割としてしっかりやらなくてはいけないことで、これは必要な規制ですから、それが十分であったのかどうか。つまり、賃金が下がっているから安全が損なわれているのかどうか、安全そのものはしっかりと規制されているのかは調べなくてはいけないと思っています。
 その上で、供給を増やし――車1台の価格はそれほど高くありませんから、供給を増やすコストはそれほど大きくないわけですね――、しかも歩合制の下で収益が減るリスクが運転手に転嫁される形で、運転手さんの賃金が下がってきていると。したがって、たくさん働かなければ収益を上げられない、運転手さんが所得を上げられないという状況は、それはそれで安全面にも悪影響を及ぼしますので、一緒に考えるというよりは、先ほど申し上げた3つの観点ですね。価格決定と労働基準の面と安全規制の面、これはまさに政府の役割として、その点も併せて考えなくてはいけないと。
 どうも色々な要因が一緒に論じられるということは、やはりおかしくて、その中をしっかりと構造を分析して、議論していかなくてはいけないと思っています。
(問)仮に次回の物価安定政策会議で納得できる説明がなかった場合、再度の開催というのはあり得るのでしょうか。
(答)物価安定政策会議は、運賃を上げることにオーケーだとかノーだと判定する会議ではなく、飽くまで意見を聞くことになっています。したがって、前回意見を色々出されて、それに対して今回関係者から回答があってそれでまた議論がなされると思いますが、その議論を踏まえて、飽くまで政府の中で決定していくということになります。今回の意見も踏まえて、政府の中で調整していきたいと考えています。
(問)それは回答が十分だったという前提の場合ですか。
(答)きっちりとした説明がなされるということは期待しております。

(以上)