大田内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成19年4月16日

(平成19年4月16日(月) 18:45~19:17  於:記者会見室)

1.発言要旨

 ただいま、月例経済閣僚会議が終了いたしました。
 今月の基調判断ですが、「景気は、生産の一部に弱さが見られるものの、回復している」としております。先月から表現に変化がありますけれども、基調は変わっておりません。
 昨年の夏以降、消費に伸び悩みが見られましたけれども、持ち直しの動きが出ていると判断しております。この背景としまして、暖冬の影響が1月までマイナスに働いておりましたけれども、2月から春物衣料が売れるといった形で暖冬のプラス面が出てきているということがあります。ただ、昨年の夏以降の消費の弱さの背景には賃金の伸び悩みがあると見ており、その賃金自体はまだ伸びている状況にありませんので、この消費の持ち直しが今後力強く続いていくかどうかはまだ定かではありません。今後の動向を見極めたいと思います。
 消費に持ち直しの動きが見られる一方で、生産の一部に弱さが見られます。この背景としましては、昨年の10月-12月に自動車を中心に生産が強く出た反動というのが1つの理由です。
 もう1つの理由として、電子部品デバイスを中心にIT関連の生産材に減少が見られます。ただ、企業部門を見ますと、企業収益は改善しておりますし、設備投資も増加しておりますので、引き続き景気回復の基調はしっかりしたものであると見ております。
 先行きにつきましては、原油価格の動向が経済に与える影響に注意する必要がありますけれども、今後も回復が持続していくというふうに見ております。
 あと月例経済報告の閣僚会議で出ました意見、御質問が中心ですけれども、御紹介いたします。
 まず、渡辺大臣から、足元でCPIがマイナスになっており、重点強化期間内にデフレ脱却というのはどうなったのかという質問がございました。それと、日銀が、足元でCPIはマイナスだけれども中長期的にCPIが上がっていくと見ている根拠は何なのかという御質問がありました。
 まず、前者につきましては、私からデフレの脱却が視野に入っているという状況に変化はないと、GDPデフレーターのマイナス幅も縮小しておりますし、需給ギャップも改善してきており、プラスになっている、1-3月のQEを見ながら判断していきたいというふうに申し上げました。
 それから、今日は福井総裁ではなく岩田副総裁が御出席でしたけれども、足元のCPIがマイナスになっているのは、原油価格の下落ということがあるので、これは中長期的には悪いわけではないとのご発言があり、それから、やや消費者物価が下振れしているけれども、需給ギャップ改善の中でいずれ上がっていくと見ているという回答がありました。
 それから、自民党の中川政調会長から、原油価格が一時下がってここへ来て少し上がっている背景は何なのかという御質問がありました。高橋統括官の方から、明確な理由は定かではないが、イランや投機の問題もある一方で、アメリカでドライブシーズンに入ってやや在庫が減少してきているというようなことがあるのではないかという回答をいたしました。
 それから、公明党の北側幹事長から、日銀の説明の中で銀行貸し出しが増えているという点について紹介があったが、これは地域によって差があるのではないか、地域別のデータが欲しいという要請がありました。岩田副総裁がお手元のデータから、地域別の銀行貸し出しは必ずしも景気動向とパラレルではなく、マイナス幅が大きいのは近畿であり、北海道はややプラスだという御紹介がありました。
 最後に、自民党の中川幹事長から、景気動向指数を見ると、ややこれは弱いのではないかという御指摘がありました。
 これに対しまして、私の方から、一致指数が2カ月連続50を切っているのは、2004年の秋で、この時は踊り場に入りまして、ただ、2004年の後半は、半導体の生産が世界的に落ち、中国向けの輸出が明らかに低下いたしましたし、台風や地震の影響で消費が落ちるといった3つが落ちる状況にありました。それから比べますと、今の足元の状況は、生産はやや弱さが見られますが、消費は持ち直してきておりますので、その時とは状況が明らかに違っております。ただ、注意して見てはいきたいということを、高橋統括官と私とでお答えしました。中川幹事長からは、楽観的にではなく十分注意して見るようにという御意見がありました。
 主な意見は以上です。

2.質疑応答

(問)消費について、持ち直しの動きが出てきたというふうに変わっておりますけれども、一方で、所得、賃金はあまり改善していないような感じですが、賃金の改善が進まないと今の消費というのは、持ち直しの動きがまたさらに下降する懸念があるということを含んでいらっしゃるんでしょうか。
(答)昨年の秋以降、賃金が伸び悩んでいる背景が読めないところがありまして、雇用環境は決して悪くないのに賃金へと結びついていかないという要因はあります。
 ただ、雇用者数は伸びておりますので、マクロの雇用者所得は横ばいにとどまっているため、消費がまた落ちていくとは思ってはおりません。1人当たり賃金が上がらないから消費も下がっていくとは見ておりません。少なくとも足元では消費が底を打ったというふうに見ております。
(問)デフレの脱却をしたかどうかという時期について確認なんですけれども、これは5月発表の1-3月期のQEを見てから、それから判断すると、そういうスタンスでよろしいんでしょうか。
(答)それだけでデフレ脱却宣言のようなものをするものではないと思っております。GDPデフレーター、それから需給ギャップ、それからユニット・レーバー・コスト、それからエネルギーと生鮮食品、それから制度的要因を除いたCPIの4つを見ながら総合的に判断していくものだと思っております。
 この4つの指標が18年度について出てくるのはQEが出た後になりますので、その数字を見ていく必要があると思っております。ただ、デフレ脱却は視野に入っておりますし、それが後戻りしないかどうか注意して見ているという現在の状況に変わりはないと認識しております。明らかにGDPデフレーターもマイナス幅が縮小してきておりますので、方向としてはデフレ脱却に向けた方向にあるというふうに見ています。
(問)消費が底を打ったという解釈なんですけれども、今回、その理由として暖冬の影響とされておりまして、これはある種季節的な天候の要因ですが、昨年夏場から消費が落ち込んだ時も、やはり天候要因が大きなものとしてありました。そう考えると、これから先、天候次第によってはまた消費が落ち込む可能性もあるんじゃないかと思うんですが、そこで底を打ったと判断されている根拠はどんなことを考えていらっしゃるんでしょうか。
(答)昨年の夏以来の天候要因は8月には剥落しているのに消費が上がらないということで、その背景に賃金の伸び悩みがあるだろうと見ておりました。それが、また暖冬という要因でやや攪乱されたところがございます。1月に消費が上がりましたけれども、初売りやバーゲンが早く始まるということもあって1月にはやや上方バイアスがありますので、もう少し様子を見ようと思っておりましたところ、2月も上がっており、消費総合指数も、需要供給ともに比較的いいということで底を打っている、持ち直しの動きが見られると判断いたしました。
 ただ、これがまた天候で下がるのかは先を見てみないとわかりません。つまり、昨年の夏以降の動きは天候要因による攪乱に加え、やはり背後で賃金が伸びなかったということも一因なんじゃないかと見てきたということです。
 しかしここへ来て、昨年の暮れからの暖冬の影響が剥落しても1月、2月続けて上がってきているということは、均してみるとおおむね横ばいで推移してきた昨年後半の動きに比べ、持ち直しの動きがみられると認識しております。
 ただ、繰り返しになりますが、これから力強く消費が上がっていくかどうかという点は、まだそうでもないかなと思いながら見ています。というのは、賃金が明確に上昇に転じていないからということですね。
 したがいまして、今回は持ち直しの動きがみられると判断しておりますが、消費の動きは引き続き注意深く見ていきたいと思っています。
(問)関連ですけれども、今回賃金に限っていうと、現金給与総額を下方修正していますけれども、それはこれから先の消費を考えるに当たって、マイナス要因にならないでしょうか。
(答)そこは、もう少し様子を見ながら突き止めたいと思いますが、消費がなかなか上がらない背景には賃金が伸びていないことがあると見てきたわけですね。ところが、現金給与総額は伸びないけれども、消費は持ち直してきているというところがありますので、この関係ももう少し見てみたいと考えております。雇用者数は伸びていますので、マクロの雇用者所得は横ばいですので、1人当たりの賃金が影響を与えていないのかどうかはもう少し見てみたいと思っています。少なくとも足元では消費は持ち直してきていると、ただし、現金給与総額はややマイナスで上がっていないということですね。

(以上)