大田内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成19年3月15日

(平成19年3月15日(木) 18:13~18:36  於:記者会見室)

1.発言要旨

 ただいま、月例経済の閣僚会議が終了いたしました。
 今月の基調判断ですが、「景気は、消費に弱さが見られるものの、回復している」と先月から判断を変えておりません。今月の動きとしまして、家計部門の所得が横ばいで推移しており、引き続き家計消費についてはおおむね横ばいになっていると判断しております。
 他方、企業面を見ますと、企業の収益は改善し、設備投資は増加しているなど、引き続き企業部門の好調さが持続しており、景気回復の基調はしっかりしたものであると考えております。
 先行きにつきましては、原油価格の動向が内外経済に与える影響などには注意する必要がありますが、景気回復基調は続くものと見ております。
 閣僚会議で出ました主な意見を簡単に御紹介いたします。詳細は後ほど事務方から御説明いたします。
 まず、渡辺大臣から物価の見通しをどう見ているのかというお尋ねが政府と日銀双方にありました。
 高橋統括官の方から、生鮮食品と石油価格、その他の特殊要因を除いたコアコアCPIはマイナス0.2%になっている、試算に基づくと、今後、生鮮食品を除くコア指数で見ますと、原油価格の下落が押し下げ要因になってくるだろう、夏頃までは原油価格の押し下げが下落要因になるだろう、コアコア指数で見ると、携帯電話料金の押し下げ、これはソフトバンクのホワイトプラン、こういうものが押し下げ要因になるのではないか、したがって、夏ぐらいまでを見通すと少し押し下げになるのではないか、という説明がありました。
 これに対して福井総裁は、日銀としてはもう少し先まで見て政策判断をしている、経済が順調に推移する中で、労働設備の稼働率などは徐々にタイト化していく、物価もそれを反映して動いていくだろう、というお話がありました。
 あと、同じく渡辺大臣から日銀に対して、最近の株安は日銀の利上げと関係があるのかというご質疑がありました。
 これに対して総裁からは、今回の株の動きというのは、日本だけではありませんで、先進国、エマージング市場で、同じような動きをしており、中国で株が下落したことによって、投資家のリスク志向の修正が行われたと見るのが妥当ではないか、という話がありました。
 同じく渡辺大臣から日銀総裁に、アメリカでのサブプライムローンの焦げつきが懸念されているわけですけれども、この影響をどう見ているのかということで、日銀総裁からは、サブプライムローンがアメリカのモーゲージに占めるシェアは1割強である、しかも、徐々に金利が上がっていく形のサブプライムモーゲージはその半分ぐらいで、それほど大きいシェアは占めておりませんけれども、心理的な波及効果も含めて注意して見ていきたいという話がありました。
 あと、質問としてもう1点、麻生大臣から、貸出金利は上がったけれども、長期金利は下がってきている、一方で設備投資は増えている、これはどういう状況を反映しているのか、銀行からの貸し出しは増えているのか、というご質疑がありました。
 これに対して高橋統括官から、まず長期金利が下がっていることについては、株が下がっているために、安全資産に資金が流れている、国債に資金が流れているということを反映しているのではないか、それから、民間企業は依然としてキャッシュフローの範囲内での設備投資ですので、資金需要はそんなに強くはない、というお答えをいたしました。
 質問は以上2件でございました。私からは以上です。

2.質疑応答

(問)物価の判断を今月変えていなくて、政府として06年度内のデフレ脱却ということを一つの目標にしていたと思うんですが、これはやはり果たせなかったという認識でよろしいんでしょうか。
(答)まだ、06年度の1-3月期まで見て判断していきたいというふうに考えております。
(問)政府が判断する際の4指標ですが、4つともそれほど確実にデフレ脱却だというふうな指標というのはないわけでして、今後、1-3月期も含めてなかなか困難を擁するなという認識は正しいかと思うんですが、改めてこのデフレというものが、なぜ深刻に日本にずっとはりついているのかということについて、大臣としてはどういうようなお考えでいらっしゃいますか。
(答)今回、需給ギャップはプラスになっておりますし、傾向としては、右上がりの傾向をしっかりと示しています。
 ただ、やはり賃金が伸び悩んでいるという点があります。ユニット・レーバー・コストが上がっていかないという点があります。これがどうなっていくのかが注目されるわけですね。
 ただ、原油価格が一時よりは下落しておりますので、これが中小企業の収益の圧迫要因だったわけですけれども、それが取り除かれることによって、常用雇用者の7割は中小企業にいますので、これが全体の賃金動向を上げる1つの要因になるのではないかと思っております。4つの指標については、まだ引き続き注意して見る必要があるなと思っています。
(問)賃金の話が出ましたけれども、昨日、春闘が大手の金属メーカー、製造業で終結しましたけれども、これについて今後の賃金動向と併せてどのような先行きになるかとご覧になっていますでしょうか。
(答)企業収益の改善を反映して、春闘も改善の傾向が見られますが、最近の傾向として、一時金での対応になっております。これが全体の賃金にどう反映してくるのか、また、さらにそれが懸念されている消費にどう反映してくるのか、というのは、もう少し見てみないと何とも申し上げられません。
(問)先程、デフレ脱却の判断に関して、1-3月期も見て判断したいということですが、これは1-3月期のQEの結果を見てということでしょうか。
(答)1-3月期の色々な指標を見て、先程の4つの指標の動きを見なくてはいけません。
 それから、名目成長率と実質成長率についてはQEを見るということですね。
(問)QEが出ないと、GDPデフレーターとか、あるいはユニット・レーバー・コストとか出ませんので、それを見てからということですか。
(答)そうですね。
(問)春闘で昨日出たのは主に企業の業績が好調なトヨタとかホンダとかで、そういったところでの賃上げがあそこの幅にとどまったことで、これから中小の交渉が本格化すると思うんですけれども、なかなか先程仰ったように7割の方が働いている中小で、大手であれぐらいならば、中小はなかなか厳しいじゃないかという見方が広がっていると思うんですけれども、そこら辺どのように見通していらっしゃいますか。
(答)春闘は個々の労使の判断ですので、なかなか読めませんし、政府として何らか申し上げることでもないと思います。全体としては収益改善を反映した動きにはなっていると思いますが、ただ、中小企業につきましては、やはり収益が伸び悩んでいるということがございますので、そこは少し中小企業で賃金がどうなっていくのかというのは、私どもも注意して見ているところです。
(問)賃金の伸び悩みについては、昨年夏から構造的な問題があるというようなお話があったと思うんですが、そのあたりについてはまだ続いているかどうかという点を含めて、改めてどうでしょうか。
(答)賃金の動きについては足元で、現金給与総額、定期給与が横ばいとなっておりまして、ただ一方で雇用の需給は逼迫しているという状況があります。したがって、これが単に企業が賃上げに慎重であるということだけを反映しているとも思えません。本当にこれはすっきりとした答えができるといいんですけれども、私どもも背景にどういうことがあるのか、そこがよく見えてこないというのが正直なところです。
 団塊の世代がだんだんリタイアしていって、若い人に置き換わっているという動きもあるんだろうと思いますが、なかなかデータでとらえきれないというところがございます。
 それから、正規社員が増えてはおりますが、非正規社員も依然として増えておりますので、その影響もあるんだろうと思っております。2005年に一度賃金が下げ止まって、やや上がったのが昨年からまた横ばいになってきているということの背景について、私どもも色々な角度から見てはいるんですけれども、なかなかすっきりとした動きが見えてこないというところがあります。

(以上)