大田内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成18年12月25日

(平成18年12月25日(月) 19:02~19:24  於:記者会見室)

1.発言要旨

 ただいま、月例経済報告等に関する関係閣僚会議が開催されました。その概要を、私から報告いたします。
 今月の基調判断は、「景気は、消費に弱さが見られるものの、回復している」と、先月から判断は変えておりません。ポイントを幾つかお話しいたしますと、まず家計消費につきましては、やや弱い状態が続いておりますが、消費者マインドが少し改善してきているといった動きも見られます。ただ、全体としては横這い状態が続いています。この消費の横這い状態の背景としては、所得の伸びの鈍化が続いているという状況がございます。
 一方、企業面を見ますと、最近発表されましたデータを見ますと、企業収益は増益が続いておりますし、業況判断も緩やかな改善が示されておりまして、企業部門の好調さが確認されています。企業部門から家計部門への波及に足踏みが見られますけれども、景気回復の基調はしっかりしたものであると見ています。
 それから、今日の閣僚会議での発言、質問を幾つか御紹介いたします。詳しくは、後ほど事務方から御紹介します。
 まず、賃金、特に小規模企業の給与がよくないと。したがって、これが消費の落ち込む一つの要因になっているのではないか、伸びが鈍化する一つの要因になっているのではないか、大企業から中小企業への所得のトランスファーをしっかり見ていく必要があるという、これは柳澤大臣の御発言なのですが、この大企業から中小企業へのトランスファーというのは、価格ですね。川上から川下への価格の転嫁がしっかりできていないと。中小企業は、やはり仕入れ価格が上がっても、それを最終価格にしっかり転嫁できていないという状況を反映しての御発言だと思います。
 それから、企業はグローバル展開しているので、なかなか賃金を上げていくのは難しいと、日銀が描いている回復シナリオというのは維持できるのかという渡辺副大臣からの御質問がありました。これに対しては、ゆっくりではあるが、家計部門への波及は徐々に徐々に進んでいるというお答えがありました。
 それから、足下で雇用の改善の広がりは鈍化しているのではないか、規模別で企業の業況に差があるのではないか、やはり中小企業は厳しいのではないかという御指摘が、中川政調会長からありました。雇用の改善は、長い目で見ますと、徐々に徐々に広がってきております。失業率も4%台前半が続いておりますし、有効求人倍率も、今回1.06倍と少し下がりましたけれども、依然として高い水準が続いております。内閣府からそのようなお答えをいたしました。
 それから、日銀の方からも、中小企業の業況感は確かに厳しいというのは事実だけれども、少しずつ良くなっているというような御発言がありました。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)先ほどお話にも出ました個人消費の件ですけれども、7-9月も落ち込んで、あとは回復が期待されているとは思うのですが、今回の10月の消費総合指数を見ると、数字の上からはそれほど悪くない数字が出ているわけですけれども、足下と、それから特に先行き、また復調の展望が出てきたのかどうかというあたりについてのお話をお願いします。
(答)足下は、10月が0.9%でした。これは、自動車の販売の8-9月分が10月に入ってくるという統計上の問題で、ちょっと高く出ているのですね。ですから、10月から少し上がったからといって、消費が復調したというふうには見ておりません。
 ただ、それほど落ちていく状態にはない、伸び率がどんどん低下していく状態にはないと考えています。これは、もう少し様子を見たいと考えています。所得も、伸びが鈍化はしておりますが、落ちていく状態にはありませんので、消費も落ちていく状態にはないと。10月まではまだ暖かさが続いておりましたので、もう少し様子を見たいと思っています。
 例えば、11月は、百貨店の高額商品は少しよく売れる、ただし、コンビニやスーパーはよくないといったようなまだら模様でありますので、この状況は少し丁寧に見ていきたいと思っています。
(問)企業部門ですけれども、先ほど企業収益等は良いというお話があったのですが、法人季報などを見ると、設備投資の伸びは前期比でやや鈍っておりますし、それから今日の法人企業景気予測調査、これだと大企業はむしろ景況感が悪化しているというような結果も出ておりまして、ちょっと一本調子で良いというわけではなくて、少し気になる指標も混じってきていると思うのですが、お考えをお聞かせいただけますか。
(答)設備投資はこれまで1-3月、4-6月が少し高かったので、その調整が少しあるかなと見ています。日銀の短観で見た設備投資については、依然として10%を超えるぐらいの上昇でしたが、比較的好調ですので、設備投資についてはまだ好調さが続いているというふうに見ております。
(問)景気予測調査は、今回の月例には入っておりませんけれども、企業の部門で景況感が若干悪化しているということについてはいかがでしょうか。
(答)若干悪化はしておりますが、それほど大きい落ち込みではありませんので、それほど懸念すべき数字でもないというふうに見ております。
(問)雇用の関連なのですけれども、こちらの資料の方にもありますが、新規求人数がこのところ、伸びが鈍化したと。この背景というのは、どういうふうに分析されていますでしょうか。
(答)これが今後の雇用者数にどう反映するか、そこは注意が必要です。
 ただ、雇用者所得をマクロで見ますと、1人当たり賃金はそれほど上がらないのですが、雇用者数は伸びているという状況にありますので、今の時点でそれほど落ちているというふうには見ておりません。この動きが今後どう反映するかを、これから注意して見ていきたいと思っております。
(問)渡辺副大臣の日銀の回復シナリオは進んでいるかということに対して、ゆっくりではあるが進んでいるという回答をしたのはどなたですか。
(答)総裁です。
(問)大田大臣自身は、どういうふうにお考えですか、同じことを質問されたとしたら。
(答)企業部門は好調ですので、企業から家計への波及は、ゆっくりではあるけれども、今後も進んでいくと見ています。雇用環境は決して悪くありませんので、徐々に反映していくと見ています。
(問)政府と日銀の景気判断ですけれども、企業から家計へ今後ゆっくりと波及していくという、これは一致しているというふうに考えてよろしいのでしょうか。
(答)はい、結構です。
 ただ、雇用者賃金の見方が、やや内閣府の方が下振れリスクといいますか、やや注意度が高いような感じも受けています。特に、マクロの雇用者所得とともに、やはり1人当たりの賃金も注意して見ておりますので、マクロの雇用者所得は雇用者数の増加によって上昇しているのですね。ただ、1人当たり賃金は増えていないという状況がありますので、その点は、やや私どもは注意して見ています。
(問)中川政調会長のお話は、聞きようによっては、現在の政府の経済分析、見通しに対して、甘いというふうにも聞こえるのですけれども、そういうふうに受けとめていいのでしょうか。あるいは、大臣のそれに対する見解はどうでしょうか。
(答)統計のとり方として、日銀の短観も、全体をカバーはしていますけれども、企業の数ですとか働いている人の数からいうと、中小企業が圧倒的に多いと。そういうことを、加重平均でもないのでしょうが、そういうウエイトを勘案すべきではないかというような御指摘だったというふうに見ています。ですから、大企業、中小企業、製造業、非製造業と見て、全体にプラスだから業況判断が良いと言ってしまってよいのか、実際の企業の数とか従業員の数で、ウエイトづけをする必要があるのではないかというような御指摘だったというふうに私は聞きました。それに対して総裁からは、全数調査というのはもちろんできないわけで、サンプルとして全体をカバーしているというようなお答えがありました。

(以上)