大田内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成18年12月19日

(平成18年12月19日(火) 9:47~10:09  於:記者会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。  
 
 今朝の閣議ですが、まず私の方から「19年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」について、今朝の経済対策閣僚会議で了解いただきましたので、
その点を報告しました。これについては後から申し上げます。  
 閣議でのその他の発言は案件だけ申し上げます。平成18年版消防白書、法令外国語訳推進のための基盤整備について、H2Aロケット11号機の打ち上げについて、
 甘利経済産業大臣の中国出張について、閣議開催時刻の変更について。その後の閣僚懇談会では、教育基本法成立を受けた教育再生について、
 北方領土等の視察について御発言がありました。  
 閣議については以上です。  
 
 19年度経済見通しに入る前に2件申し上げます。  
 次回の諮問会議は明日4時半から5時半まで1時間行います。議論としては、集中審議として生産性改革について審議いたします。
 それから経済見通しについて報告をいたします。その次の諮問会議は恐らくこれが年内最後になりますが、26日火曜日に開催いたします。
議題は今調整中です。
 それから、私が担当しております市場化テストについて、ILO条約に関する懇談会を開催すると申し上げていましたが、準備が整いましたので、報告いたします。  
 今回のこのテーマにつきましては、11月30日の諮問会議で民間議員から2つの提案をいただきました。
すなわち、現在の主要な官のハローワークを維持したままで、その他の運営を民間に包括的に委託することと、民間開放したハローワークを官が監督する仕組みを整えること、
この2つの条件で市場化テストを実施してはどうかという御提案をいただきました。この2つの点がILO条約に抵触するのかどうかについて、
専門家の御意見を伺うものです。  この懇談会は、第1回の会合を今週21日10時半から開催する予定です。メンバーはお手元にお配りしたとおりです。座長は花見忠先生にお願いすることにしています。  
 懇談会は数回開催いたしまして、来年2月末を目途に検討結果を報告していただき、その結果を私から諮問会議に報告したいと考えています。
この懇談会の検討を踏まえて、公共サービス改革基本方針の次回の改定の際に対象事業等を追加できるよう、ユーザーの立場で成果が得られることを期待しております。
 以上です。
 
 では、19年度経済見通しについてご報告いたします。詳しくは後ほど事務方からご説明いたします。  
 この「19年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」につきまして、今日、8時45分から開催されました経済対策閣僚会議で了承され、
その後の閣議において了解されました。その概要を御説明いたします。
 平成18年度におきましては、足元、の消費に弱さが見られ、企業部門から家計部門への波及が足踏みしておりますが、
 今後は企業部門の好調さが雇用・所得環境の改善を通じて家計部門に波及し、民間需要中心の回復が続くと見込まれます。国内総生産の実質成長率は1.9%程度、
名目成長率は1.5%程度になると見込まれます。平成19年度におきましては、企業部門、家計部門ともに改善が続き、物価の安定の下で自律的、持続的な経済成長が実現すると見込まれます。
 こうした結果、国内総生産の実質成長率は2.0%程度、名目成長率は2.2%程度になると見込まれます。  
 平成19年度の経済財政運営につきまして、政府は日本経済の成長力を高めるための改革に大胆に取り組むとともに、日本銀行と一体となった取組を行うことにより、
物価安定の下での民間主導の持続的な成長を図ってまいることとしております。
 以上です。

2.質疑応答

(問)政府経済見通しについて2点あります。まず第1点、個人消費の回復を見込んでおりますけれども、これがいつ始まり、どういうメカニズムで達成されるのかということ。
それから2点目は、デフレ脱却の認識について後ずれしたということでいいのか、この2点をお願いします。
(答)まず個人消費は今年の夏以降不調です。天候要因もありますが、それ以外に所得が伸び悩んでいるという点があります。
 この点につきまして、天候要因は剥落しておりますし、所得も雇用環境がいい状態が続いておりますので、これがじわりじわりと所得に波及し、
消費を持ち上げていくという予想を立てております。それから、デフレ脱却の見通しは以前と変わっておりません。デフレ脱却は視野には入っております。
 GDPデフレーターも依然としてマイナス圏内ではありますが、傾向としては上方に向かっております。
 それからCPIもコアコアでゼロ近傍に来ております。傾向としては以前と変わっておりません。デフレ脱却は視野に入っておりますが、もうしばらく様子を見ていきたいと考えています。
(問)関連ですけれども、個人消費は06年度の後半から回復に向かうと見ていらっしゃるということでよろしいのでしょうか。
(答)先のことは何とも言えませんけれども。これから徐々にまた回復していくと見ています。
(問)同じく見通しの関係ですけれども、18年度の経済動向に関しては、デフレに後戻りする可能性がないかどうか注視していく必要があるということですが、
19年度はこれは特段必要がないということで記載がないのでしょうか。
(答)もちろん19年度もデフレに後戻りする可能性がないかどうか、十分に注意する必要があります。消費者物価指数は0.5%と置いております。
 この水準は、まだデフレ後戻りの可能性がないかどうかは、もちろん十分に注意が必要だと考えておりますが、18年度についてはあとまだ半期ありますので足元の数字を、
十分に見ていきたいと考えています。
(問)家計への波及の関係ですけれども、個人消費について「雇用・所得環境が改善することから、引き続き増加する」とありますが、失業率の見通しに ついては、4.0%であまり変わらない状況としています。失業率があまり変わらない中で、家計への波及が進むメカニズムについてお願いします。
(答)失業率につきましては、回復がかなり長期にわたってきておりますので、やや巡航速度に乗ってきている感じがあります。一服したということでもないけれども、ある段階に来ている感じがします。
あと構造的失業はもちろんありますが、景気循環的な要因としてはあるレベルに達してきていると考えています。  
賃金につきましては、やや夏以降の足踏み感が気になりまして、これがまだ十分に説明できない状態があります。
ただ、今年の新卒採用もいいですし、収益、設備投資といった企業の状況は依然としていい状態が続いておりますので、これが来年以降、賃金に反映されてくると見ています。
(問)予算の関係で、国債の新規発行高が大幅に抑えられたことなどから、プライマリーバランスの確保が19年度にできるのではないかという報道もありますけれども、
現時点で平成23年度にプライマリーバランスを確保する見通しについてどう見られていますか。
(答)今朝の新聞報道をざっと見ましたところ、国と地方の間の調整を行わないまま、バラバラの数字でプライマリー収支が回復するという中身になっていたように思いますので、
19年度のプライマリー収支回復は難しいと。国・地方を調整すると難しいと見ています。
(問)これはある程度試算をされた上でという見通しですか。
(答)プライマリー収支均衡については、2011年に向けて計画が立っているわけです。今の時点ではまだ精査をしておりませんが国・地方を調整しますと、
19年度に急に回復するのは難しいと思います。まだどの程度になるかはこれから計算いたします。
(問)政府税調の本間会長の官舎入居の問題が大分自民党内でも色々言われておりますが、大田大臣はどう見られておりますか。
(答)コメントするべき立場にありませんので、すみませんが、コメントは控えさせていただきたいと思います。
(問)先程のデフレですけれども、今回の政府見通しでは今年度当初に名実逆転するという絵を描いていて、大幅に修正してきたわけで、
政府としては今年度末までのデフレ脱却は1つの目標になっていたと思いますが、その達成は現時点で厳しいとお考えなのかどうなのかを伺いたい。
(答)まだ半期ありますので、十分に注意して今後の動きを見たいと思っております。少なくとも今時点での18年度の実績見込みでは名実逆転は解消されていないということですね。
 この名目成長率が当初の想定よりも低くなってしまったことの理由は大きく2つあります。1つ目は夏以降消費に足踏み感があり、その背景に所得環境の伸び悩みがあったという点です。
それから、2つ目は原油価格が今年当初に見通した時よりも上がった点です。
 原油価格が上がるということは、海外に所得が移転しまい国内の富が海外に流れてしまうということです。海外の支払いですので、その分名目GDPが低く抑えられたということが考えられます。
これが大きい理由かと考えられます。GDPデフレーターについてはこれに加えてCPIの基準改定があり、これによってGDPデフレーターは0.3%下押しされ、想定よりも低くなったという点があります。  
 ただ、GDPデフレーターにつきましては、マイナス幅は縮小してきておりますので、残り半期、この物価の動きやユニットレーバーコストの動きを見ていきたいと考えます。
(問)確認ですけれども、先程大臣のお話の中で19年度、来年度のCPIを0.5%と置いていますと。ただ、この0.5%という数字ですと、デフレに後戻りするかどうか注意が必要だということですけれども、
デフレが後戻りするかどうか注意する状況というのは、今の内閣府の定義からいいますと、デフレ脱却できていないことになりかねないと聞こえたので、
それだと今年度はもう無理で、来年度ですらなかなか微妙だなとお考えなのかなと思いますが、いかがでしょうか。
(答)デフレ脱却はユニットレーバーコスト、GDPギャップ、CPI、GDPデフレーターを注意して見ていかなくてはいけません。CPIだけで判断するわけにいきませんので、
常にデフレに後戻りする可能性はあると申し上げました。ただ、この場で何回か申し上げておりますが、物価が持続的に下落する状況は終わっております。
そして傾向としても上方に向いてきておりますので、想定どおり来年は名実逆転すると見込んでいることに違いはありません。
ただ経済運営に当たっては、やはりそこは十分注意して見ていかなくてはいけないと思っています。
(問)デフレの関係で重ねてお聞きしますけれども、先程仰った名目GDPが伸び悩んでいるという話、それからCPIの下方改定という話がありまして、
それは今まで想定したよりも確かに上方には向かっているけれども、足踏みしている、あるいは想定しているより遅れているということではないのですか。
(答)後ずれということはあるだろうと思います。その理由の1つは原油価格の上昇ですね。これについては少し原油価格は足元で下がってきております。
 実際、内需デフレーターはもう既に若干のプラスになってきております。  それと消費の足踏みについては、企業から家計への波及という大きい流れは変わっていないと見ています。
企業部門から家計への波及が止まったとか、後退するという見方はしておりません。
依然として企業収益は好調ですし、雇用環境もさほど悪くありません。
企業から家計への波及という動きは変わっていませんが、その波及が少し足踏みをしている、後ずれしていると見ています。
(問)名実逆転の理由の1つに原油価格が想定より上がったと。原油が上がっても、例えば製品価格に転嫁されていればそれはデフレにはならないと思うのですが、
それがうまくできていない構造というのがまだ続いているという状況だと思いますが、それは解消する見通しは、年度後半から来年度にかけてどうなっていくのですか。
(答)御指摘のとおり価格にしっかり転嫁されていけばいいわけですが、それが十分ではありません。ただ、これはCPIがどうなるかという点で、
こちらも徐々にゼロ近傍まで来ておりますし、徐々に上がっては来ておりますので、今後の需給の動向によって反映されていくと見ています。
(問)06年度については、名目で2%台という数字が、政府・与党にとっても重要だったと思うのですが、それが今回2%台を達成しなさそうだということについてどのように御認識ですか。
(答)原油価格の上昇、それから夏以降の足踏み感があります。原油価格については日本の外での話になりますが、足踏み感については昨日もシンポジウムさせてもらいましたが、
少し構造的な問題も考えていかなくてはいけませんし、雇用のあり方全般を考えていく必要が、政策的にも今取組が始まっておりますので、考えていく必要があると思います。  
 ただ、マクロで見ますと雇用者所得自体は伸びてきております。1人当たりの賃金がやや伸び悩んでいる状況ですが、マクロの雇用者所得自体は伸びており、
それほど悲観的になる必要はないと思っています。  
 今回名目成長率が想定より低くなりましたけれども、やや後ずれしているという見方をしています。マイナスの方に逆戻りではなく、後ずれしているという見方をしております。
(問)今の関連ですけれども、自民党は今年度2%成長を政権公約に立てているわけですけれども、与党との間で政策運営で何か注文があったのかどうか教えていただけますか。  
それから名目成長が想定より低くなったのは後ずれしているということですが、回復の度合いが後ずれしているという認識でよろしいのでしょうか。
(答)まず後段から申し上げますと、企業から家計への波及がやや後ずれしていると見ています。  
名目成長率に関しては、日銀と政府が十分に政策目標を共有して、マクロ経済運営をやってほしいという御要望がありました。
(問)それともう1点、先程のデフレ脱却の認識ですけれども、これもやや後ずれしているという認識でよろしいのでしょうか。
(答)まだ18年度全体は終わっておりませんので、あと半期見ていきたいと思っています。デフレ脱却については、これまでと認識は変わっておりません。既に物価が持続的に下落する状況は終わっており、これが後戻りすることがないかどうか注意して見ていきたい。
(問)ただ、政府の正式な文書の中でこれまでは「デフレ脱却が視野に入っている」ということだけで止めていらしたのが、
今回の18年度の経済動向の中では、「デフレに後戻りする可能性がないかどうか注意していく必要がある」とはっきり書き込まれているということは、
ややこれまでの認識と違い、デフレ脱却が難しくなってきたという状況を踏まえて書き込まれたのかと読めますが、そこは間違いでしょうか。
(答)デフレ脱却が視野に入っているという認識は変わっていません。ただ、実際GDPデフレーターはまだ18年度の見込みはマイナスですので、
デフレ脱却が後戻りしないかどうかはやはり注意する必要があると考えています。その点を率直に書き込んだということです。

(以上)