みどりの学術賞選考経過報告

第9回みどりの式典 みどりの学術賞選考経過報告

みどりの学術賞選考委員会委員長 黒岩 常祥

 選考委員会を代表し、第9回みどりの学術賞受賞者の選考経過をご報告申し上げます。

 選考委員会は、みどりに関する学術に造詣の深い学識経験者など、約500名の方々に対し、この賞にふさわしい候補者の推薦を依頼いたしました。
 その結果、分子・細胞レベルから地球環境にいたるまで、多様かつ大変幅広い研究分野から、約60名の候補者の推薦が得られました。また、約半年間の期間をかけて、推薦のあった方々の業績を慎重に調査・審議し、選考を進めてまいりました。その結果、みどりの学術賞受賞者として、東京農業大学名誉教授の 進士 五十八博士と、東京大学教授 寺島 一郎博士の2名を推薦することに決定いたしました。

 先ずはじめに、進士博士の業績について申し上げます。
 進士博士は、造園学の分野で、日本庭園が日常生活から隔離された特殊な空間ではなく、自然との共生により育まれてきた、我が国の生活・文化、すなわち「農の風景」を凝縮したものであることを明らかにすると同時に、景観の保全・育成や都市農園の復権に向けた市民活動の重要性を説き、今日、全国各地で見られる市民農園や里山ボランティアの底流を形作るなど、みどりに対する国民の理解増進に大きく貢献される功績を挙げてこられました。

 次に、寺島一郎博士の業績について申し上げます。
 寺島一郎博士は、植物生理生態学の分野で、植物群落における太陽光の利用を個々の葉内への光利用に発展させ、一枚の葉でも、表面は強い光、裏面は弱い光を利用するのに適した性質をもち、葉全体の光合成の効率上昇に寄与していることを明らかにすることによって、「葉緑体分化の謎」を解明するなど、我が国の学術研究の発展に大きく貢献される功績を挙げてこられました。

 お二人の研究は、学術研究として先駆的であるだけでなく、我々人間が「みどり」を深く理解し、それをどのように活かしていけばよいかという、いわば羅針盤とでも言うべき道筋を示された功績として、高く評価いたしました。
 みどりの学術賞受賞を契機として、国民の方々が「みどり」に対する関心をより一層深めるとともに、我が国が、国際社会から高い評価と崇敬の念を勝ち得るのに役立たれることを心から期待し、念願する次第です。

 以上をもちまして、委員長としての選考経過の報告を終わります。