みどりの学術賞選考経過報告

第2回みどりの式典 みどりの学術賞選考経過報告

みどりの学術賞選考委員会委員長 山田康之

 選考委員会は、第2回みどりの学術賞の選考にあたって、「みどり」に関する学術に造詣の深い学識経験者等約170名に対し、この賞にふさわしい候補者の推薦を依頼しました。その結果、約50名の推薦が得られましたが、分子レベルで植物のメカニズムを研究している方から、森林の生態を研究している方など、非常に多様な分野からお名前が挙がり、改めて「みどり」という言葉の持つ幅広さ、奥深さを思い知らされた次第です。選考委員会は計3回の選考委員会を開き、これらの推薦を基に慎重に候補者の選考を行いました。

 その結果、第2回みどりの学術賞受賞者として、植物光生化学の分野で光合成の仕組みを解き明かした、京都大学名誉教授の淺田浩二(あさだこうじ)博士、緑地環境計画の分野で都市における緑地の役割を明らかにした、東京大学大学院工学系研究科教授の石川幹子(いしかわみきこ)博士を推薦することに決定いたしました。

 淺田博士は、植物光生化学の分野において、世界にさきがけて、生物に害を及ぼす反応性の高い酸素の分子種を「活性酸素」と名付け、光合成の場である葉緑体における活性酸素の生成と消去のメカニズムを研究し、活性酸素を中心に植物の環境ストレス耐性の機構を明らかにされました。

 博士の業績は、人類の生存に必要な食糧、化石燃料などを産み出すだけでなく、地球環境の保持、温暖化の防止に必要な二酸化炭素の固定に不可欠である、植物光合成の仕組みを解き明かした、誠に顕著なものであります。

 また、石川博士は、緑地環境計画の分野において、世界各国における「みどり」の継承と創出のあり方、拡大する都市に対する「みどり」の計画的な整備の方法、大都市圏問題に対応する緑地の役割を明らかにすることにより、「みどり」が単なる物的環境ではなく、制度的、文化的な「社会的共通資本」であることを論証し、また、国内外の多くの緑地計画の策定、指導にもあたられました。

 博士の業績は、都市の緑地は偶然の所産によるものではなく、継承・創出・維持のための市民の意志と都市・地域計画の制度・政策・財源が存在したことを明らかにしたものであり、また、その研究成果を、東京、横浜、鎌倉、マドリード、瀋陽など現実の都市の緑地計画に反映させるなど、研究の社会的貢献という意味からも高く評価されるものであります。

 このように、細胞と都市という全く異なるスケールで研究を行っているお二人がみどりの学術賞を受賞されることは、「みどり」の持つ豊かなイメージを象徴するものであるとともに、今後とも「みどり」に関する学術がバランスよく発展していくことを願う選考委員会のメッセージでもあります。

以上をもちまして、私の選考経過報告を終わります。