受賞者代表挨拶


第9回みどりの式典 受賞者代表挨拶

進士五十八 東京農業大学名誉教授

 生命力を象徴する“みどり”のこの佳き日、天皇皇后両陛下ご臨席のもと、第9回みどりの学術賞を賜り、また緑化推進運動功労者として表彰して頂き、誠に有難うございました。一同を代表して、御礼を申し上げます。

 わが国で一番早いサクラは遠くヒマラヤに起源をもつ沖縄のカンヒザクラです。カンヒザクラは正月には咲き始めます。以後、日本列島は順序良く桜の季節につつまれていきます。桜の花は私たちに「さあ、今年も元気に、がんばろう」という勢いと生きる力を与えてくれます。

 みどりの英語、グリーンgreenの語源はアーリア語のガーラghraで、“生長する“という意味です。まさに”生命“、そのものです。

 学術賞受賞者の寺島一郎先生は、地球上で唯一の生産反応・光合成において、葉全体の光合成の効率があがるように葉の内部構造ができていることを解明されました。私たち人類もすべての生き物たちも、すべては一枚の葉から森林へと?がる”みどり“の存在に拠ってのみ生きられるのです。

 一方で私たち人間は、それぞれの気候風土のもとで、生物的自然と共生する生産と生活の技術を発達させ、文化芸術にまで高めて、緑豊かな美しい国を創造してきました。 しかし、生物多様性や気候変動など地球環境問題の解決、緑のまちづくりによるコミニュテイの再生、農地や里山の保全活用による地方の再生など、正に本日表彰して頂きました緑化推進運動功労者の皆さまに代表される環境市民の継続的な努力と活躍が今日ほど強く求められていることはありません。そのことは、人と自然の調和共存環境の実現を目標とする 造園学・ランドスケープ アーキテクチュアが専門の私の基本認識でもありました。

 私の研究は、自然美・時間美の日本文化の代表である日本庭園の特質を解明し、そこから日本独自の自然共生の思想や技術とその原理を導き、これを具体の“緑と農のあるまちづくり”や“美し国づくり“に有効な計画論や政策論の体系化を図ろうとしたものです。日本庭園は自然共生と社会生活合理性の上に、日本独自の美を具現化したものです。従ってこれを国土的スケールに適用すれば、緑豊かな美し国を実現できるのです。

 私たち一同は、このたびの栄誉を励みとして、これからも国内外の人々に愛し愛されるみどり豊かで美しく特色ある地域づくり、生き物とひとで賑わう元気な国土づくりを目指して、また、これまでも私したちを支えて下さった多くの方々とともに、益々努力を重ねて参りたいと思います。 

 本日は誠にありがとうございました。