河上消費者委員会委員長 記者会見
2017年1月31日
消費者委員会
日時
2017年1月31日(火)17:00~17:30
場所
消費者委員会会議室
冒頭発言
(河上委員長) よろしくお願いします。
今日は報告事項が3件ございます。
第1件目が「身元保証等高齢者サポート事業に関する建議について」でして、本日の本会議におきまして、「身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についての建議」を取りまとめ、消費者担当大臣、厚生労働大臣及び国土交通大臣宛てに発出しました。
簡単に背景を申しますと、ひとり暮らしの高齢者等に身元保証あるいは日常生活支援、死後の事務処理といったサービスを提供する新しい事業形態が現れておりまして、今後もその需要はますます高まっていくことが予想されるわけですけれども、しかし、こうした事業をトータルに捉えて、これを指導監督するという行政機関が必ずしも明確ではないということがございます。利用者から苦情相談があったとしても、ほとんど把握されていないというのが実情でありますし、事柄の性質上、そもそもそうした苦情が表に出にくいという状況もございます。
そこで、当該事業による消費者被害を防止するための対策を早急に講ずる必要があると考えまして、調査審議をし、本日の建議の取りまとめに至ったというわけです。
建議は次の3点を柱にしております。
第1は「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の取組」であります。
この事業については、契約内容としていろんなサービスが複雑にまとまって提供されるということで、内容が複雑になりがちで、対価との関係が非常に不透明になるという問題があります。さらに、サービスの履行確認が難しい。本人自身も認知能力が落ちていますとモニタリングが難しいですし、まして死亡後では確認もできないということになります。一定の事務処理サービスの前にまとまった預託金が預けられることがあるわけですけれども、預託金の適正な管理といったものについても、必ずしも十分な手当てがなされていない場合があるということで、多くの課題があると考えられます。
現実に、日本ライフ協会の事件が起きましたように、事業が破綻したことによって、サービスの提供が受けられなくなったり、預託金が返還されないという事態が生じたわけでございます。しかし、先ほど述べましたように、指導監督に当たる行政機関が必ずしも明確でなく、事業やトラブルの実態も明らかになっていないということでありまして、まずは身元保証等高齢者サポート事業に関する実態把握を行って、実態把握の結果を踏まえた必要な措置を講ずるという必要があると考えたわけでございます。これが第1です。
第2は「病院・福祉施設等への入院・入所における身元保証人等の適切な取扱い」であります。法令上、病院あるいは介護保険施設では、正当な理由なく診療・治療・サービスの提供を拒んではならないとされているところでありまして、入院・入所希望者に仮に身元保証人等がいないという場合でも、そのことはサービスを拒否する正当な理由には該当しないと考えられるわけですが、実際には、病院とか福祉施設等が身元保証人をあくまで求めていくということで、この身元保証人等に対して多様な役割を求めているのも、また実態でございます。
そこで、病院とか介護保険施設が身元保証人等のいないことのみを理由に入院・入所等を拒むなどの取扱いはないように措置を講ずるとともに、病院・福祉施設等が身元保証人らに求める役割等の実態を把握して、その役割の必要性やその役割に対応することが可能な既存の制度及びサービスについて、病院とか福祉施設等及び都道府県等にこれを示すべきであるとしております。
第3は、「消費者への情報提供の充実」であります。身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者被害の防止のためには、賃貸住宅への入居の際に身元保証人を確保することが困難な高齢者のニーズに応え得る家賃債務保証に関する情報を含めてサービスを適正に選択するために十分な情報が提供されることが必要であります。
そこで、消費者がサービスを選択するに当たって有用と思われる情報提供を積極的に行っていく必要がります。
以上の建議事項につきまして、消費者担当大臣、厚生労働大臣及び国土交通大臣は着実に履行して、身元保証等高齢者サポート事業に係る消費者被害の防止に努めていただきたいと思います。
これが第1件目の報告事項であります。
第2件目は「消費者基本計画工程表の改定に向けた意見について」であります。
本日の本会議におきまして、消費者基本計画の実施状況に関する検証・評価及び計画工程表の改定に向けての意見を取りまとめ、消費者庁に宛てて発出することにいたしました。
消費者基本法においては消費者基本計画についてはそれらの結果の取りまとめを行おうとする場合、消費者委員会の意見を聴かなければならないとされております。このため、当委員会としては、計画の実施状況や計画に盛り込むべき新たな課題に係る計画を調査審議の重要な柱の一つと位置付けて、これまでやってまいりました。現行の消費者基本計画においても、消費者委員会は消費者行政全般に対する監視機能を最大限に発揮しつつ、本計画に基づく施策の実施状況について随時確認し、KPIを含めて検証・評価・監視を行うとされているところです。
今回の意見を検討するに当たっては、これまで第4次委員会として調査審議を行ってきた蓄積が幾つかございましたので、これを入れることにいたしました。代表的なものとして、記憶に新しい成年年齢の引下げに対する対応策や、「健康食品の表示・広告の適正化に向けた対応策と、特定保健用食品の制度・運用見直しについての建議」などがそれに当たりますけれども、そのほかにも各専門調査会での議論や、医療機関のウェブサイト等の取扱いなどのこれまでの建議のフォローアップを行ってきた結果も積み上がっているところでございます。
これらについては、確実に工程表に反映していただき、積極的な取組を行っていただきたいという思いで、今回の意見を取りまとめました。
関係省庁においては、是非積極的に検討の上で、工程表の改定素案に反映していただければ大変有難く思います。改定素案が出来上がった後、またもう一度意見を述べる機会がございますので、今回は差し当たりの意見ということになります。
第3件目ですけれども「子ども向け広告のあり方について考えるシンポジウムについて」のお知らせでございます。この「子ども向け広告のあり方について考えるシンポジウム」については、本会議でも御説明させていただいたところですけれども、今年の2月18日土曜日13時半から中央合同庁舎4号館、この建物の2階にあります共用220会議室において開催することを予定しております。シンポジウムには学識経験者、事業者等様々な関係者に御出席をいただきまして、子供向け広告の在り方について議論を深めていただきたいと考えているところであります。
当委員会としても、シンポジウムにおける議論などを踏まえまして、その成果について取りまとめができましたら、その点について報告書を作成したいと考えているところです。
シンポジウムへの参加については、ホームページなどで御案内をしておりますので、そちらを御覧いただければと思います。
皆様のお手元には1枚紙の御案内があるかと思いますので、御参照下さい。
私のほうから御報告すべきことは以上でございます。あとは質疑の中でお答えさせていただきます。
質疑応答
(問) 身元保証等高齢者サポート事業の建議のところですけれども、具体的にどんなことを想定しているのかというのをお尋ねしたくて、いっぱいあるのですけれども、まず、建議事項の1の(2)厚労省の実態把握というのはどんなことの実態を想定しているかというか、例えば何事業者ぐらいいて、二者契約しているのは何社で、三者契約は何社だとか、どんな項目の実態調査なのかというのをお尋ねしたいです。
(答) ここで示した、身元保証等高齢者サポート事業という定義で捉えたものがあります。マル1からマル3があって、マル1とマル3をどちらか又は両方含んでいるものを対象とすると書いてあります。そういう事業が現実にどのぐらい存在していて、具体的な問題点というか、トラブルがどのぐらいあるのかとか、どういった形でその問題処理をしているのか、まずは現実の実態を把握していただくことから作業を始めていただこうと考えております。
委員会でも、独自に調査をして、こういう事業がありますということがわかっているデータもありますので、その辺は資料として厚労省や消費者庁に提供しております。まずはその辺りを手掛かりにして調査をしていただけるのではないかと期待しているところです。
(問) あと、同じように、必要な措置を求めている中のマル1からマル4があって、それぞればくっとしていて、例えば「マル3第三者等が契約の履行を確認する仕組みの構築」の「第三者」とは、弁護士とか、公認会計士とか、自治体なのか、どういったところを想定しているのか。
(答) 余り具体的に書いておりません。といいますのも、実は身元保証の高齢者サポート事業をいろいろやっているところを調査していますと、例えば公益法人であったり、NPO法人であったり、場合によっては冠婚葬祭業者がやっているというように、様々な主体がこうしたサービスを提供していまして、そうしたサービスの提供の仕方そのものも非常に多様なのです。そうなりますと、それが一体どういう形で具体的に問題を引き起こすことになるのかということについても、余り先入観を与えるような形では書けないということがございました。ですから、まずは実態をきちんと踏まえて、「必要な措置」を取っていただくという包括的な書き方になっております。
ただ、日本ライフ協会の事件に典型的に見られますように、例えば解約時のルールがはっきりしないとか、あるいは預託金の保全措置がきちんととられていなかった、元々三者契約だったのが二者契約に知らないうちに変わってしまっているというようなことがあって、保全措置が十分機能していなかったということがあったりするわけです。そうすると、あらかじめ預託した金銭に関して、その使用方法や実際の履行そのものを確認する手段が十分でないときに、何らかの形で第三者がそれを確認するような仕掛けを考えていく必要が出てくるかもしれません。そうした一つ一つの利用者からの懸念とか苦情相談を収集して、具体的な対応策があるのであれば、その対応策を整理して、そうしたものの活用の仕組みを考えていっていただきたいというのが、差し当たり、こちらからお願いであります。
まずは具体的な実態がわからないと、何をどう対応したほうがいいかということについても余り確たることを申し上げるのは適切ではないので、必要な措置についての例示はしておりますけれども、それ以上の踏み込んだ形での書き方はしておりません。
どちらにしても、将来、フォローアップをすることになりますので、検討結果を踏まえて、こんなことを処置としてやっておりますというような話をいただけると思うのです。その時点で、そこは足りないからこうしたほうがいいとか、より具体的に踏み込んだ対応をお願いするということは将来的に考えていますけれども、現時点ではとりあえず必要と思われる措置をとってくださいというところでとめてあります。
(問) この「第三者等が契約の履行を確認する仕組みの構築」の「契約の履行」の中に預託金の使途といったことも含まれるのですか。
(答) それはあり得ることです。葬儀の手配をして、実際に葬儀をする。松竹梅の葬儀があるとしても、実際にそれがきちんと行われているのか誰かに確認してもらうという仕組みはあり得ることです。
全く個人的なアイデアですけれども、例えばこれを民事信託のような形に持っていけば、実際には信託の機関がその人に関してもある程度モニターするということが考えられます。ほかにもいろいろな方法がありますし、最近は成年後見制度の中で、死後事務の処理についても成年後見人の職務の中に入れるという改正法が通りましたから、もし成年後見人制度を使うのであれば、後見人がそのようなモニターをやるということもあり得ることです。知恵出しをする段階では、いろいろあり得ることですし、消費者委員会としてももちろん協力はさせていただきます。けれども、今の段階では、この間、日本ライフ協会のような事件がありましたけれども、それ以上定型的にどんな問題があるかというのがわからないので、預かり金に対して第三者の目が入るような仕掛けを考えてくださいという程度でとめてあります。
(問) そうなると、「マル2預託金の保全措置」とあるではないですか。これも状況によっては第三者による監視の目というか、そこは違うのですか。
(答) 分別管理をやっていただくとか、いろいろな方法はあり得ます。恐らくどういう形で議論が展開するかについて、いろんな方が知恵を出されると思うのですが、厚生労働省の場合でしたら、有料老人ホームの対応例がございました。有料老人ホームの預託金に関しての一定の扱いなども、一つの参考になるのではないかと思います。余りこちらでこうすべき、ああすべきということは、まだ今の段階ではお話しする段階ではないと思います。
(問) もう2点あって、「預託金の保全措置を講じていない事業者が存在しており」と書いてあるのですけれども、これは日本ライフ協会以外に何かヒアリングとかで確認できた事例はあるのですか。
(答) 三面契約になっていないところはありますね。
(問) 三面契約になっていないことをもって保全措置を講じていないと言えるのですか。
(答) 第三者に預けておいて、その人から使途についてチェックを受けながら金銭を支出するという仕掛けは一つの方法です。元々日本ライフ協会は最初は弁護士さんにそれを預けてやるという仕掛けにして、説明もしていたようですけれども、必ずしもそういうやり方だけではないと思います。
(問) 最後に、個々の費目というか「費用体系が明確でない」というのがあって、調査報告書の13ページの表6にはそこそこ費目が書いてあるのではないかという気もしなくもないのですけれども、例えば表6でいうところのもっとこういった費目を書いたほうがいいとか、ありますか。
(答) 調査報告書で出ている費目の具体的な裏付けというのはほとんどないのです。ある種のつかみ金というか、ざっくりとした値段の付け方をしていることが多くて、実際にこの金額でできるのかどうかも含めて、はっきりしない。ほかの一般の市場で仮に第三者にお願いしてやった場合の、例えば死後準備支援の人件費はどのぐらいかかるのだろうかということもわからないわけですね。こうした一覧表になって出ているときに、これをぱっと見せられて、それぞれ判断したり、評価したりするというのはかなり難しい。一つ一つのサービスであれば、ある程度ほかと比較することもできるのですけれども、こうやってまとめて書かれて、値段表みたいになっているものでは、それぞれが本当に適切なのかどうかというのはなかなかわかりにくい。
ですから、一般的に複合的な給付の場合には、それぞれの給付と対価との関係の透明度が低くなるということが言われておりますけれども、ここでも同じことがあるのではないかと思われます。
やるのであれば、もう少し実証的かつ具体的な形でこれを出していただく必要があるのかなと思います。
(問) 身元保証のところで、建議事項1の理由の9から10にかかるところで、いわゆる指導監督を今までしている省庁がいなくて、それに当たることをどこかがやるべきだということを指し示しているのかなと解釈したのですけれども、指導をしていく、例えばモデル契約書のようなものを作るとして、それをやる主体は消費者庁と厚労省という方向付けをしたということですか。
(答) 消費者庁にしても、厚労省にしてもそうなのですけれども、行政庁というのは指導監督をするためには根拠法令が必要だということが大前提なのです。現時点できちんと事業法としてこれを指導監督するための根拠法令というのはないというか、はっきりしていない。むしろ、厚労省の方の言い方を繰り返しますと、因数分解をして、それぞれの事業について細かく見ていくと、それなりに担当している省庁があって、それに対する介入のための根拠法令もあるものもあるということなのです。しかし、これをトータルに業としてやっている者を指導監督するような根拠法令ははっきりしないという状態です。その意味では、厚労省もうちがやらなくてはいけないものだという認識は恐らく余りお持ちではないと思います。
そうなると、消費者庁が受け皿になるかということなのですが、消費者庁も因数分解した後、いろんな省庁と関わっていきますので、全体的な調整が必要になるのです。ですから、指導監督といったときに、制度的な対応のところまで踏み込んでお願いをするというところまでは、今回の建議では言っていません。むしろ実態を調査したり、あるいは業界の中で一定のガイドラインを考えているような動きがあるのであれば、それを後押しするとか、いろいろな対応があると思いますけれども、必要な措置の中で今後考えていただくことになります。
消費者委員会としても、対応の様子を見ていて、これは業法が必要ではないかとか、あるいは、指導監督のための根拠法令を整備する必要があるかということについて、もし言わないといけない場面があるのであれば、また議論させていただきます。現時点ではそのようなところまで踏み込んだ書き方にはなっておらず、ボールを投げた状態であるという理解でお願いしたいと思います。
(問) 「必要な措置を講ずること」という建議の中の文言というのは、そうすると、ここで例に書かれているモデル契約書の策定とか、そういったことは建議の中に入っていると解釈していいのか。
(答) それは必要な対応策の一つの例として挙げております。ただ、むしろ実態把握をした上で、問題点が明らかになったときに、その問題に対応するにはこういうことが必要だと考えられた場合に、それを是非やってくださいということです。
厚労省に一肌脱いでもらうということで、中心となってやっていただくことになりますけれども、厚労省だけがやるべきことでもない場合もありますので、むしろ実態調査も含めて関係省庁と連絡をとりながら協力してやっていただく。その調整役は消費者庁が司令塔的な機能を果たしていただければと考えているところです。
(問) そうすると、消費者庁と厚労省が必要な措置を講ずる主体となるということは間違いないということなのでしょうか。
(答) 中心的な役割を果たしていただくことは期待しています。場合によっては、関係している省庁でフォーラムを作っていただいて、そのフォーラムの中で必要な措置について検討していただくということになるかもしれません。
(以上)