河上消費者委員会委員長 記者会見

2016年8月23日
消費者委員会

日時

2016年8月23日(火)16:30~16:59

場所

消費者庁記者会見室

冒頭発言

(河上委員長) 報告事項は1件でございます。

「消費者庁等における各種試行を踏まえた今後の取組に関する意見」ということであります。お手元にありますような形で、意見をまとめました。

消費者庁、消費者委員会及び国民生活センターは、政府関係機関移転基本方針に基づき、これまでICTの活用等による試行等を行ってきた。その結果を踏まえ、本年8月末までに結論を得ることが目指されているが、消費者庁においては、徳島県に消費者行政の新たな未来の創造を担う「消費者行政新未来創造オフィス(仮称)」、以下「徳島オフィス」、を置き、実証に基づいた政策の分析・研究機能をベースとした消費者行政の発展・創造の拠点とする考えが示されている。

これを踏まえ、今後の消費者行政の目指すべき姿に関して、当委員会は以下のとおり意見を述べる。消費者庁におかれては、今後の徳島オフィスの取組を進めるに当たり、以下の意見に留意されたい。

なお、当委員会は、徳島オフィスの取組を注視し、消費者庁の機能維持、消費者行政の進化の観点から、今後とも必要に応じて意見を述べることとする。

具体的留意点が3つほどあります。

第1が、これまでの消費者行政にはなかった新しい取組に挑戦すること。

徳島オフィスでの取組は、本来消費者庁等に期待される役割が、これまで以上に十分に果たせているかという観点から検証されることとなる。すなわち、徳島はもとより、近隣地域のネットワークも活用した実証フィールドとしての新たな取組により、本来の政府機関としての機能の向上を図り、新しい消費者行政・政策を創造し、実現していくことが求められる。

そのためには、地域の特性を生かして、これまでになかった新しい取組にも挑戦し、消費者行政を進化させるよう工夫することが必要である。その際、徳島オフィスを活用して得るべき成果について一定の目標を設定し、実効性確保に努めるべきである。

第2が、進捗状況は、定期的に委員会に報告すること。

当委員会は、徳島オフィスでの取組の成果が、従来の消費者庁の機能を補完し、今後の消費者行政の推進にとって重要なポイントとなり得ると認識している。そのため、徳島オフィスでの取組の状況については、当委員会に対し、定期的な報告を求める。

第3、徳島オフィスの成果について丁寧な検証を行うこと。

徳島オフィスの成果は、3年程度をめどに検証・見直しを行うことが考えられているが、その際、消費者庁は、国民生活センターとともに、徳島オフィスの取組の成果はもとより、その他の環境整備の進捗状況も踏まえて、客観的な検証を行うべきである。以上の3点であります。

この意見について、少し御説明をしないといけないと思うのです。長くなることもありますので、お手元に「委員長記者会見用解説」をお配りしてあるかと思いますので、それを御覧になりながら聞いていただければと思います。

消費者委員会の任務は、全てではありませんがその一つは、「消費者の利益の擁護及び増進に関する基本的な政策に関する重要事項」並びに「消費者の利益の擁護及び増進を図る上で必要な環境の整備に関する基本的な政策に関する重要事項」に関して、調査・審議し、建議を行うということにございます。その意味では、消費者政策の司令塔となるべき消費者庁や、あるいは国民生活センター法にあるわけですが、国民生活の安定に寄与するため、総合的見地から国民生活に関する情報提供・調査研究・紛争解決手続の実施を目的とする国民生活センターの活動の在り方や拠点をどこに据えるかといった問題は、委員会としても重大な関心を持つべき事項でありまして、これまで慎重に検討を進めてきたところであります。

この間、消費者団体などからは、この問題を憂慮する数多くの意見書を頂戴してまいりました。他方で、政府として「まち・ひと・しごと創生本部」での審議や、これを受けた消費者担当大臣の意向を踏まえ、課題の洗い出しのための試行作業をしている過程では、委員会として意見を表明することは控えるべきであると考えて、試行結果がある程度明らかになるまで、事態を注視する方針をとってまいりました。

この度、消費者庁・国民生活センターにおいて、比較的長期の試行作業を実施し、その結果がある程度明らかとなったこともありまして、消費者庁並びに国民生活センターから、試行結果についてヒアリングを実施し、今回の意見表明につながっているものであります。

今日、本会議で、消費者庁と国民生活センターからかなり詳しい試行結果についての報告をいただいたことは御承知かと思います。検討に当たっては、少なくとも現在と同等以上の機能の発揮が期待できるかという点が極めて重要であります。試行の結果、新たな実証研究・分析のフィールドとして徳島を捉え、地域の協力を得つつ、従来の消費者庁においては十分でなかった調査・研究部門を補完するものとして「消費者行政新未来創造オフィス」を創設して、消費者行政の発展・創造の拠点とする方向性が模索されているということであります。

委員会としては、このような取組自体は、現場と連携したより実効的な施策の企画立案を通じた消費者行政の強化につながると考えられるため、歓迎されるべきものと思います。こうした取組が着実に成果を生み出すことを期待して、今回の意見を取りまとめるに至ったというものであります。

もちろん、現時点では、両機関ともに徳島の移転については、なお克服すべき課題が多く、また、国民の税金を投入する以上、徳島における「消費者行政新未来創造オフィス構想」も、他地域との公平の観点を踏まえつつ、消費者庁・国民生活センターのこれまでの活動を維持・強化し、新たな課題に挑戦するものとして、他地域の消費者にも成果が行き渡るよう、意義あるものになることが必要であります。したがって、定期報告を受けることで、必要に応じて意見を発出するとともに、3年後めどの検証・見直しに当たっては、特に、消費者行政の進化の観点から同オフィスは成果をもたらしているか、その得るべき成果については、一定の目標を設定し、そして実効性確保に努める必要があって、当委員会としても客観的な検証に努め、意見を発出する所存でおります。

以上のような背景というか考え方をもとに、このような形での意見を取りまとめて発出したということであります。

私からの御報告は以上であります。よろしくお願いします。

質疑応答

(問) 消費者庁と国民生活センターがそれぞれやったお試し移転、試験業務にかかったコストも、今日、あの場で報告されていました。たしか、消費者庁が2,670万。多分あれは7月だけだと思うので、3月を足せば2,800万ぐらいになるのかなということと、国民生活センターが5から8月で600万ぐらいと書いてあったのですけれども、それについて、委員長としては、あれは適正なのかどうかというところはいかがでしょうか。

(答) 費用対効果の面で、それが十分なものであったかということと適正であったかということは、確かに問題になり得ると思います。ただ、消費者庁としても、できるだけ現地のものを活用しながら安く上げたと聞いておりますので、その意味ではぎりぎりのものだったのだろう。むしろ、そもそも試行すること自体が一定の費用を要しますから、それがまずかったという話ならば別ですけれども、試行にかかった費用としてはああしたものかとは思います。

(問) あわせて、今、読み上げがあった解説のところで、客観的検証に努めるというのは、当然、成果もそうだと思うのですけれども、「国民の税金を投入する以上」と書いてあるので、かかるコスト面も客観的にしっかり検証していくという意味なのかどうかということ。

(答) やはり、それは大事なことだということです。特に、消費者委員会の本会議の中でも、コストパフォーマンスについてきちんと検証ができるような形での報告をいただきたいという意見もございました。消費者庁も了解しましたという返事だったと受け止めております。

(問) 今日、試行の結果が消費者庁と国センから出ました。河野大臣がネガティブなものはやめろと言っていた割には、きちっと書いてきたのではないかと思いますが、この試行結果についてはどのように御覧になりましたでしょうか。

(答) 客観的な判断をするための材料が、ある程度示されたのではないかとは思っております。

さらに、今回いろいろなミッションを持って試行されたわけですけれども、それについてのメリット、デメリットは、軽重はありますけれども、かなりはっきりと示されたので、今後の判断にとっては非常に役立つものだと思います。

(問) この試行を踏まえた結論なのですが、まず、結果も出る前にオフィスありき、オフィスを作るという方針が大臣から示されました。消費者委員会は、このオフィスについてのことは、オフィスについてちゃんと検証していきましょうと確かに言っています。なぜ、試行の結果から、本来の課題である、消費者庁を徳島に全面移転するのかという結論に結び付くまでの過程を評価せず、そこに意見がないのでしょうか。

(答) 評価はしたつもりでして、むしろ3年間先送りの前提には、幾つかの暗黙の了解があるのだろうと思います。消費者庁としても、いろいろなことを考えてオフィス構想を前面に出して説明するという形をとられたのだと思います。消費者委員会としては、消費者庁がオフィスのことについて一定の考え方を示されたこと自体は評価できるものだと考えて、今回の意見になりました。

ただ、そのオフィス構想も、実際に一体何をするかということがはっきりしていませんので、具体的な目標をきちんと立てていただいて、その成果をはっきりさせる。さらに、徳島はもとより近隣のネットワークも活用した取組になってほしいということとか、徳島県の全面的なバックアップというものが重要であって、それが期待できる範囲でこのプロジェクトの成果もかかっているだろうとは考えているところであります。

(問) 皆さんなかなか言いにくそうではありましたけれども、今日、委員の中からも、消費者庁が期待される役割、機能を移転することは無理だという結論が出ているのではないかという意見を言われている方もいらっしゃいました。

オフィスが何をするかも全く出ていない中で、試行から一足飛びに、あの試行の結果から、書き方もいかにもオフィスにつながるように書いていますね。消費者庁としては、そうせざるを得ないと思うのですけれども。

国民生活センターも、研修の地図を書いていて、徳島に一部のところしか来ておらず、明らかに定員を大幅に下回っていて、危険な試験はできなかったとか、明確なものが参考資料に出ています。それについて、なぜ何も言わないのですか。

(答) 消費者庁が、3年間の見直しの間にどのように活動するのか、その試行というものの射程と効果を見定めてから発言しても構わないかなということであります。

(問) 消費者団体からは、本来ならば結論として移転は断念すべきだという意見があれだけ出ている。そこについて、委員会は見解とか何も答えないのでしょうか。

(答) もちろん、一定の見解は各人が持っておりますし、そのことについて今回意見を述べる可能性もなかったわけではないのですけれども、現時点では述べる必要はなかろうと考えたわけであります。

(問) なぜ、現時点で言う必要がないのか。

(答) そのことによる効果の問題です。隔靴掻痒(かっかそうよう)の感がありますかね。

(問) 国民生活センターのとき、第1次消費者委員会のときには、消費者委員会としての明確な意見が出ました。はっきり言って、今の消費者委員会は機能していないのではないでしょうか。もう、消費者庁の中に入っていいのではないでしょうか。

(答) ちゃんとした監視機能を果たせるように、これからも努力したいと考えております。

(問) 当初の政府の基本方針では、消費者委員会自身も移転対象となっていたのですが、今回、結果的には外れるような見通しになるかと思うのですが、そのこと自体についてはどう受け止めていらっしゃるのでしょうか。

あの大臣の会見では、消費者委員会は今回は見送るというような発言はされていたはずだと思います。

(答) 大臣の発言の中にはなかったと思います。

(問) いや、していました。

(答) そうですか。

(答・事務局) 会合とかを徳島ですることが考えられるのではないかという言い方をされていたと思います。

(答) 場合によっては、消費者委員会が今後検証していくというときに、現地での検証のために、徳島で委員会の会合を開くことはあろうかと思います。

(問) そうすると、消費者委員会自身も引き続きこの中に含まれることになるのですか。

創造オフィスとは別だけれども、消費者委員会自身も徳島移転の継続検討の中の一部として入っていることなのですか。

(答) 少なくとも、消費者庁が出している考え方というのは、徳島オフィスで新たな拠点としての活動をやりたいということでして、それがうまくいっているかどうかの監視の限りで、消費者委員会も徳島で会合をやることはあろうかとは思っております。

(問) オフィスの中身について、委員長御自身がこれをやったほうがいいという私案みたいなものはありますか。今日も、何も出てこなかったのですけれども。

(答) 今日、本当はもうちょっと具体的にどういうことができそうかということについて消費者庁から聞くことができればよかったのですが、前々から板東元長官と話をしておりますと、例えば高齢者の見守りのための実証的なフィールドを作って、ITを活用した見守りの実験をやってみるとか、あるいは消費者啓発についての様々な取組に、徳島ならではのいろいろなプロジェクトでそれを追加していけるのではないかとか、いろいろなことはテーマとしては考えておられるようであります。

どうしても、なぜ徳島かという話につながりますので、やはりそこは徳島ならではのプロジェクトにしていただきたいし、その成果についても、徳島でやってよかったという成果を上げてもらわないと、やはり意味がないのではないかとは思っております。

(問) オフィスの中身については、消費者委員会としては何か提言というか。

(答) 今のところは、それは考えておりません。

(問) あくまでやっていることを監視するという立場なのでしょうか。

(答) はい。必要があれば言いますけれども、今のところは具体的には考えておりません。

(問) わかりました。

(問) この移転問題をまた3年間引きずられる国民生活センターとか消費者庁の負担よりも、このオフィスの効果のほうが大きいと判断したのだと思うのですが、その理由は何ですか。

(答) オフィスの効果が大きいかどうかはこれからの話ですね。

(問) でも、なぜ何も言わないのかという質問に対して、効果の問題だとおっしゃったのです。要するに、移転断念せよというような、本来ならもう移転は無理ですねという結論が出ているのではないかと私は思いますし、委員からもそういう意見が出ていた。なぜ、そういうところに踏み込まないで、オフィスのことだけを言うのかという質問に対して、3年間の移転を断念せよとかいう意見を出すよりも、オフィスを作ることのほうが効果が高いのだと。その理由は何ですか。

(答) 消費者委員会としては、移転は無理ですねということについては言ってもいないし、そこはオープンにしてあります。

(問) 何も言っていないということでしょうか。

(答) 何も言っていません。

実は、消費者庁も河野元大臣も、移転は無理だとは言っていないですね。他方で、行くとも言っていないですね。

(問) 行くとも言っていないけれども、いろいろなことを踏まえて移転は断念していないと言っていますね。

(答) 断念したとは言っていないのですね。その上で、このオフィスの話に終始して、記者会見でもお話しされているという状況です。

消費者庁に関して言うと、私はやはり調査の機能が今まで弱過ぎたと思っています。辛うじて消費者委員会が調査、審議をして提言をするという機能を持っていますけれども、本来であれば、消費者庁自身が自前での新たな問題を掘り出したり、調査、審議したりしていく機能を持った機関を持たないといけなかったはずなのですが、それが今までなかったというか弱かったのです。もし今回の機会に、そうした新しい問題について挑戦できるということであれば、これは消費者庁の今後の政策策定にとって大変プラスになるだろうと思います。

特に、今日樋口委員からも出ましたけれども、例えば、徳島で国際的な消費者問題についての問題を検討する、IT関係の問題なども多いわけですけれども、そういうものについてじっくりと腰を据えて研究するというような研究・調査の拠点が徳島にできるのであれば、それはそれで消費者政策にとっては大変なプラスになると思います。

(問) この試行の結果を読んで、結局、徳島のメリットは、消費者教育、倫理的消費などに関する学校、大学での取組など熱心な取組と、知事を初めとする協力する強い意欲の2つですね。この2つで、消費者庁を全面移転すると手を挙げた。結局これしかなかった。これについて、本当に全国で公平性があるのかと。このプロジェクトについてやってくれるところはないですかと手を挙げさせたら、ほかの自治体が手を挙げるかもしれないですね。

(答) それは、まち・ひと・しごとの当初のやり方の問題です。

(問) この公平性については、意見書の中で、この結果が全国に及べば公平性は欠かないと書いていますね。

(答) 全国に成果が及ぶ、そこでコストパフォーマンスの問題はもちろん考えないといけないですが、もしプラスになるのであれば、それはよいことではないでしょうか。

何よりも、現場の知事さんとか関係者が消費者問題について協力的であるという環境は、そう簡単には得られない貴重なものだと思います。その意味では、徳島の方々の意欲というのは買ってあげていいと思います。

(問) ただ、その移転問題を3年間引きずるわけです。向こうは全面移転を検討してほしいとずっと言い続けているわけですから、そこはやはりもうちょっとちゃんと線を引いて、こことこことここは無理でしたねということぐらいは、どこかできちっと言ったほうがいいのではないですか。

(答) むしろ、課題ははっきりしてきたわけで、その課題を克服するような環境が変わらない限りは、無理ですねというか難しいですねという部分は残り続けますね。しかも、試行のための試行はもうやらないとなりますと、その部分というのはよっぽど大きな環境変化がないと難しいのではないですか。

(問) その言葉が聞けてよかったですが、何しろ徳島に行ってみられるとわかるのですが、一部、非常に事実に基づかない過大な期待があるのです。今回も、徳島県のホームページを見たらわかるでしょうけれども、やはり県民にそういう誤解というか、3年先には全面移転もあるのではないかという期待を抱かせるようにホームページで作られています。やはり、誰かがどこかでそういうことは意見を出すとか、明確に言っておく必要があるのではないかと私は思っています。

(答) それは、御社の新聞報道でしっかりと指摘していただければありがたいですね。

(以上)