河上消費者委員会委員長 記者会見
2016年6月28日
消費者委員会
日時
2016年6月28日(火)16:30~16:56
場所
消費者庁記者会見室
冒頭発言
(河上委員長) それでは、始めさせていただきます。
今日は、報告事項が2件ほどございます。
最初は、「若年層を中心とした消費者教育について」というものです。消費者教育については国とか地方公共団体において、消費者基本法、消費者教育の推進に関する法律、それから同法に規定される基本方針などに基づいて、諸政策が推進されているというところであります。
この消費者教育については、幼児期から高齢期までの各段階で行われるべきものですが、若年層については消費者問題に係る知識、社会経験が乏しいといったことから、消費者被害に遭う問題だけではなくて、場合によっては、知らず知らずのうちに消費者問題に係る犯罪の加害者になってしまうということもあります。
また今般、選挙年齢の引下げということに合わせて、仮に成年年齢が18歳に引き下げられるというようなことがあった場合には、高校生であっても契約上の責任を自ら負うということが考えられることなどから、若年層に対する消費者教育がより重要になると考えられます。
こうした問題意識から、若年層を中心とした消費者教育の効果的な推進の方策を探るということで、昨年の秋くらいから調査を実施して、消費者委員会としての提言を取りまとめるということを考えてきたわけであります。今日の本会議で、一定の結論を得たということで、提言を取りまとめさせていただきました。皆様のお手元に、その概要に当たるポンチ絵のようなものがお配りされているかと思いますので、それなどを参考にしながら聞いていただければと思います。
この提言では、最初に消費者教育に関する実態調査の実施ということで、消費者庁に対して、文部科学省などの関係行政機関と調整の上で、これまでの消費者教育の取組によって、若年層の知識などにどういう変化が見られるかなどについて実態の調査を行って、今後の消費者教育の推進に生かしていただきたいということを述べております。
第2番目ですけれども、若年層の消費行動や消費者トラブルを踏まえた消費者教育の実施が必要だろうということでして、消費者庁及び文部科学省は、関係行政機関と調整の上、18歳前後の消費者が直面する消費者問題の実態やニーズに応じた消費者教育を実施してくださいと要請しております。
第3番目ですけれども、これはコーディネーターの設置と活動の促進に関わるものであります。コーディネーターの設置を促進し充実させるために必要な支援を行ってくださいということで、消費者庁及び文部科学省に対して、コーディネーターが消費者行政担当部局だけではなくて、学校または教育委員会とも意思の疎通が容易に図れるように取り組むこと、さらに、消費者庁に対して、コーディネーターの役割を十分理解し、コーディネーターが継続的に活動できるよう、地方公共団体の役職としての位置付けを明確にするように取り組むことを求めております。
以上の提言を受けて、消費者庁及び文部科学省には、若年層の消費者教育について適切に取り組んでいただくことを期待しているところでございます。
第2番目の報告事項ですけれども、消費者基本計画の工程表の改定についてということがございます。先週の21日の消費者委員会本会議で、消費者基本計画工程表の改定原案について、消費者政策会議より意見の求めがございまして、委員会で議論をした結果、今般の工程表改定原案は消費者基本法の趣旨に鑑み、適当であるという旨の答申をいたしました。
今回の改定において、消費者庁では、より充実した工程表となるように、当初スケジュールより随分時間をかけて作業を行ってこられました。当委員会としても、充実した改定に資するように、本年の2月に工程表の改定に向けての意見、5月にも工程表の改定素案に対する意見を発出いたしまして、消費者庁及び関係各省庁に積極的な検討を促すよう求めてきたところであります。
その結果、関係各省庁におかれましては、可能な限り積極的に当委員会の意見を踏まえて、工程表の改定原案に施策を盛り込んでいただいたものと理解しております。関係各省庁におかれましては、この工程表が消費者政策会議で仮に決定された暁には、ここに盛り込まれた各施策について、是非、確実に実施をしていただきたいと考えているところであります。
また、5月に発出した工程表の改定素案に対する意見で、今後の課題ということで表明させていただいた部分もありますけれども、その部分については、次回の改定の際には是非積極的に御検討いただいて、よりよい計画や工程表を作り上げていただきたいと考えているところであります。
私のほうから御報告すべき点は、以上の2点であります。あとは、適宜御質問があればお答えいたします。
質疑応答
(問) 消費者庁の移転関連なのですけれども、消費者庁、国民生活センター、消費者委員会も移転対象かと思うのですけれども、来週からまた検証が始まって、8月末までには結論という方針が出ておりますけれども、どうも本当に十分な検証をした上での結論になるのかという疑問も抱かざるを得ないところもあるのですけれども、その辺りの検証の仕方等を含めて、委員長の御所見があれば伺いたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
(答) 現時点で、消費者庁と国民生活センターが少し長期の移転を試行するということで、十分な検証になるかはともかく、前回より具体的に、実際に行った場合の課題であるとか、それを克服する可能性なんかが検討されると伺っております。どういう形で検討結果を出してくるかというところを、現在注視しているところであります。
(問) 今の段階ではあくまで注視して、どういう結論が出るかによって委員会としての意見なり何なりを考えていくということになるのでしょうか。
(答) そうです。
(問) 成年年齢が民法上も18歳に引き下げられるという場合、消費者問題に与える影響というのもかなり大きいかと思うのですが、そこら辺は消費者委員会として何か審議するような予定はないのでしょうか。
(答) 基本的に、選挙年齢と取引行為をやったときの行為能力の問題というのは、必ずしもリンクしなければならないというものではありません。
ただ、いろいろな動きを見ていると、やはり下げる方向で検討してはどうかという方向が見えてきています。その場合に、例えば未成年者取消権の幅が狭まっていくというようなことがあったときに、これまでの抑止効果として考えられていた部分の年齢が下に下がってくるわけです。高校を卒業したら、直ちに成人としての責任を負わされるということになると、場合によっては、高校卒業直後の若者が悪質な勧誘のターゲットになってしまうという危険性は高まります。
一方で、成人年齢の引下げということになった場合に、それに見合ったセーフティネットをきちっと張っていけるかどうかということは、消費者委員会としても強い関心を持っております。
民法が一旦そちらのほうに向かって動いているのに、それを否定するような形では、恐らくなかなか意見を出せないだろうと思いますけれども、若者に限らず、障害者であるとか高齢者であるとか、相対的に取引社会で弱い立場に置かれている消費者に対する一定の支援というものが可能であるのであれば、その辺も含めて制度的な対応等は考えてみる価値があるのではないかと考えております。
どういう形で検討するかはまだはっきりしておりませんけれども、恐らく来年の通常国会に年齢の引下げの法案が出るということでしょうから、それに合わせて一定の方向性が示せればと考えているところです。
(問) 今回の提言も、そうした背景があって、若年層の消費者教育を充実させていこうというところがあると見てよろしいのでしょうか。
(答) これまで高齢者ばかりやっていたので、やはり若者のほうにもきちんと目を向けないといけないということを、前々から議論はしていたのです。しかし、今度、選挙年齢の引下げを契機に、成人年齢の引下げの話も出始めましたので、これは急がないといけないということで、その辺の事情についての配慮は確かにございました。
消費者教育の問題ですから、基本的には消費者教育推進会議でも似たような検討がなされているということですし、この問題についてはいろいろなところが対策を打ち出しておられます。消費者委員会としては、それをどちらかといえば具体的に後押しするという形で、この提言を出させていただいたということであります。
(問) 若年層の消費者教育の件なのですが、提言の中に実態調査の実施というのがあります。平成19年度の選好度調査が最後ということで、これは最後の国民生活白書の中に盛り込まれたことかと思いますけれども、あのときは消費者教育を全くというかほとんど役に立っていないという結論だったと思いました。
この提言というのは、建議はよく半年ごとに取組についての報告を求めていらっしゃいますけれども、この実態調査とか教育の実施とか、取組についての期限というのは、消費者庁に対して設けられていないのでしょうか。
(答) 特に建議とかそういう形にしておりませんので、いついつまでにこれをやれというようなことは書いておりません。
ただ、実際問題としては、今、消費者庁もそれをやらなくてはいけないという認識を持って推進会議等がいろいろと課題を出していますし、既に提言も2つ、3つくらい出ているのです。それをもっと具体的にやるとこういうことになるのではないですかということで、それを補充するつもりで出しております。
消費者庁がこれをきちんとやっていただいているかどうかということは、また、さまざまな機会がございますので、基本計画の見直しのこともありますから、それの辺りでヒアリングをしたりして、フォローアップは是非やってみたいとは思います。
ですから、別に提言だから弱いとかそういう話ではなくて、かなり尊重していただける内容になったと思っております。
(問) それと、徳島移転の件なのですけれども、先ほど御発言がありましたけれども、消費者委員会自体が対象になっていると思うのですけれども、徳島移転について評価といいますか、それはどういうことなのでしょうか。試行とか何かは難しいと思うのですけれども、同じように国センも消費者庁も消費者委員会も、8月下旬をめどに結論を出すということになっていたと思うのですけれども、評価はどうなっているのでしょうか。
(答) 試行の結論を待って、評価についても考えてみたいと思います。
消費者委員会としても、何もしないでいるというわけにもいきませんので、例えばウェブ会議のような形で消費者委員会をやったら一体どんなことになるだろうというようなことは、どこかで試行的にやってみようかとは思っています。ただ、徳島まで行ってやるようなことでもございませんので、今ある枠組みの中でウェブ会議のようなことをやってみて、本当にこれが一般化していったらどんな問題があるだろうかという辺りは検証してみようかとは思っています。
(問) ということは、行かなくてもできるということ。
(答) 行かなくてもできることは、いっぱいありますよ。
(問) そうなのですけれども、例えば建議を出す過程の中で、自ら調査というのも消費者委員会でできるわけですけれども、それをする過程で、恐らく関係省庁への調査といいますか、資料請求がありますから、あるいはその調整があったりとか、そういうことがあるかと思うのですけれども、そういうものというのは、委員長のお考えでは、仮に徳島に行ったとしても、テレビ会議とか何かでできるというお考えでいらっしゃるのか。それとも、実際徳島に行ってみて何かして、それを厳密に評価して白黒付けるのかというところはどうでしょうか。
(答) 消費者庁や国民生活センターほどは、消費者委員会は試行してみないとわけがわらないというようなことではないかと思っておりまして、大体想像がつく問題がたくさんございます。ですから、消費者委員会自身が行ってみて何かをするということは、全く考えておりません。庁の試行的な滞在が終わった後、検討結果がある程度わかりましたら、それをもとにして、必要に応じて委員間で議論の上、一定の意見表明をするということはあるということは前々から申しておるとおりでございます。
(問) 明日の食品表示部会は、どのようなことをやられるのですか。
(答) 明日の食品表示部会は、第4次の消費者委員会としては初めて開催する食品表示部会でありますから、基本的には委員の顔合わせを行うことと、今後食品表示基準の改定に伴う諮問が出てきますから、その諮問によって同部会で審議する可能性がある事項について、消費者庁のほうから現在の検討状況について説明を受けるというのが大きな議題になります。
通常の諮問を受けての審議は、明日の分にはないということになります。
(問) 私、去年の7月に担当になってから、多分初めての食品表示部会だと思うのですけれども、これは大体1年に1回くらいのものなのですか。もっとやっていますか。
(答) かなりやっています。事務局で正確な数がわかりますか。
(答・事務局) また後で言おうと思ったのですが、別に、定期的に開いているわけではなくて、必要なときに開いているということになります。
(問) 多分、この1年ではこの1回だけだと思うのですけれども。
(答・事務局) それはそうです。4次になってから第1回です。
(問) わかりました。
(問) 消費者契約法の積み残された課題の検討会というのは、再開はいつ頃をめどと考えていらっしゃるのでしょうか。
(答) 私は、できるだけ早く始めたいと考えております。
附帯決議でも早急にということを言われておりますし、遅くとも3年という書き方をされておりますけれども、3年と言わず、とにかく早く再開して検討をやりたいと思います。この消費者基本計画の中でも、今年度にその検討をやるというところに矢印が入っておりまして、私もその心構えでやろうと思います。
委員の人に、今、日程調整をかけておりますけれども、できるだけ早くきちんと会議ができるような形にしたいと思っております。
(問) 年内ではなく年度内ですか。
(答) 年内です。
(問) 先ほどの質問の回答についてなのですが、食品表示部会自体は、食品表示法が制定される、あるいは食品表示基準とか原産地の表示とか、またいろいろな議論があったトランス脂肪酸とか、いろいろなことをやってこられたのですが、要するに施行された後、ずっと検討されてきたことを踏まえた上で、検討されたことについて今の制度はどうなのかという議論はないのでしょうか。
(答) そこは、食品表示部会の中で考えていただくことになるだろうと思います。
既に、本会議のほうで特保についての検討をお願いして出しました。その結果として、一定の提言をさせていただいたのですが、恐らくそれの延長上で、食品表示部会で更に検討してもらうべきことが出てくるという可能性は私は高いと考えております。
食品表示部会の中で、今後どういうことをどう検討していくかというのは、諮問に対する答申を作る以外にもいろいろとあるかと思いますので、食品表示部会には、今後、是非頑張っていただければと考えています。
(以上)