河上消費者委員会委員長 記者会見

2016年1月7日
消費者委員会

日時

2016年1月7日(木)12:32~13:12

場所

消費者委員会会議室

冒頭発言

(河上委員長) 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

報告事項が2件ほどございます。

1つが特定商取引法に関する答申についてです。特定商取引法の見直しについては、社会経済情勢の変化、それに伴う消費者トラブルの変化に応じて改正が行われてきていたところで、近年では平成20年に大幅な改正が行われました。この平成20年改正では、附則において、改正施行後5年経過時の検討について規定されていまして、当委員会では昨年1月に総理大臣から諮問を受けて、特定商取引法専門調査会を設置して、法律の執行状況を踏まえた購入者等の利益の保護及び特定商取引法の適正化を図るための規律の在り方について調査審議を行ってまいりました。座長として後藤巻則先生にお願いしておりました。

先月24日に開催いたしました特定商取引法専門調査会において報告書が取りまとめられましたので、本日の消費者委員会本会議において報告書の内容について報告を受けまして、その内容を踏まえた上で検討を行って答申を決定いたしました。

答申の内容は、お手元に資料があるかと思いますが、そのような形の内容でございまして、「『特定商取引法専門調査会報告書』の内容を踏まえ、法改正による対応が必要な事項については速やかに特定商取引に関する法律の改正法案を策定した上で国会に提出し、また、政省令の改正を行うなど、必要な取組を進めることが適当である」としております。

第2番目が消費者契約法に関する答申についてであります。これについては、平成26年8月に内閣総理大臣から諮問を受けて、当委員会では同年10月に消費者契約法専門調査会を設置して、法施行後の社会経済状況の変化への対応等の観点から、消費者契約法における契約締結過程及び契約条項の内容に係る規律等の在り方について調査審議を行ってきたところであります。こちらのほうの座長は京都大学の山本敬三先生にお願いし、座長代理を後藤先生にお願いしました。

そして、先月25日に開催した第24回消費者契約法専門調査会で報告書が取りまとめられましたので、本日の消費者委員会本会議で報告を受け、その内容を踏まえた上で検討を行って、諮問事項のうち、速やかに法改正等の対応が求められる点についての答申を決定いたしました。

こちらの答申の内容についても、お手元の資料にあるとおりでございますが、「『消費者契約法専門調査会報告書』の内容を踏まえ、現時点で法改正を行うべきとされた事項については速やかに消費者契約法の改正法案を策定した上で国会に提出し、また、解釈の明確化を図るべきとされた点については、消費者契約法に係る逐条解説に適切に反映するとともに改正の内容とあわせて幅広く周知活動を行うなど、必要な取組を進めることが適当である」としております。

なお、消費者契約法に関しましては、報告書において、今後の検討課題として引き続き検討を行うべきとされている論点が示されております。「等」という字が入っておりますように、それで尽きているわけではないわけですけれども、そこで挙げているような論点を含めて、法改正の立案及び国会における審議も踏まえながら、消費者委員会において更なる検討を加えた上で、できる限り早く答申を行うことにしております。

今回の答申に至るまで、特定商取引法専門調査会及び消費者契約法専門調査会において、長期にわたって審議に熱心に取り組んでいただいた委員の方々あるいはオブザーバーの皆様には、心から御礼申し上げたいと思います。また、審議に協力してくださった消費者庁やヒアリングに御出席いただいた各団体にも厚く御礼を申し上げたいと思います。特定商取引法、消費者契約法のいずれについても、今後、消費者庁において提言事項の実現に向けた具体的な取組が行われていくことになろうかと思いますが、今回の答申を踏まえまして実効的な取組となるように期待したいと考えております。

なお、今回の答申につきましては、本日14時45分に私から河野大臣に直接手交することになっております。

私からの報告は以上でございます。よろしくお願いします。

質疑応答

(問) 委員長は、率直に今回の報告書に対する受け止めというのは、どのぐらいの評価をされていらっしゃるのかというところを可能な限りで。

(答) それぞれの委員会において、私は消契法のほうはオブザーバーとして参加しておりましたし、特商法のほうもほとんど傍聴席で伺っておりました。大変熱心な議論をしていただいたということで、委員の方々に対しては本当に御礼申し上げたいと思います。当初考えていた論点からは幾つか大きなものが落ちたり、後退した部分もありますので、その意味では100点満点で言うと60点ぐらいかなという感じがしております。

ただ、消契法のほうは、とりあえずまとまるところをまとめて出して、残された課題が相当ありますので、国会に向けた審議の過程とか、いろいろな状況を見ながら、必要な立法事実についての調査分析も含めて、準備をその期間にしておいて、速やかに第2次の報告書策定に向けて動きたいと思います。合わせて80点ぐらいになればと期待しております。

(問) 念頭に置かれているのは、消契法のほうで第2次の答申を出されたいということで、特商法のほうは、とりあえずはこれでもうおしまいということですか。

(答) 特商法のほうは、比較的短い期間でこれまでも改正が行われておりまして、消契法のように十数年、放ったらかしになっているという状態ではないのです。ですから、特商法のほうは問題状況をモニターしてみて、足りなかった部分とか、あるいは今回、残念ながら落ちてしまったものについても、自主規制等の状態を見ながら、これはやらなければいけないということがあれば、速やかに改正に向けた専門調査会をまた立ち上げたいと思います。訪問買取りについての改正の見直しの時期もすぐにまいります。その意味では、消契法は継続的ではありますけれども、特商法もこれで終わりというつもりは全くございません。

(問) 特商法のほうですけれども、不招請勧誘の制限、一番期待していた部分が落ちて、先ほども議論の中で、入口論で終わったのは残念だという委員の声もあったのですが、入口論で終わってしまった、PI0-NETの件とかも大きいと思うのですが、そこの準備的なところが不十分であったのかどうか、その辺の委員長の所見をお聞かせ願えればと思います。

(答) 特商法の議論の最後のときに御挨拶がてら申し上げたのですけれども、PI0-NETの情報というのは、相談員の人たちが本当に心血を注いで書いてくれたデータでして、個人的には1級の資料だと思っています。ただ、立法の前提となる事実として、どういう具体的な事情があったのかとか、あるいはそれに対して、今の法体制の中でどこまで対応できるのかという分析をやるだけの資料としての充実度は、ちょっと足りないのかなという気はしました。

立法事実というのが一体どういうものかということ自体も、大いに問題なのですけれども、そうした事業者側の方の疑問が出たときにきちんと答えるだけの分析ができていたかという点については、反省している部分もあります。ですから、個人的にはあれで十分な立法事実が出ていると思ったのですけれども、更に説得力を高める努力はしないといけないなと思っております。

(問) もう1点、特商法の虚偽・誇大広告の件ですけれども、こちらも先送りになったのですけれども、こちらのほうはもう少し時間をかければ、何らかの解決策といいますか、意見の一致まで持っていけたのかどうか、その辺の見通し的なところは委員長のほうはどんな感じでしょうか。

(答) これは、消契法も含めてですけれども、不特定多数の人間に対して出された広告表示というものについて、どういう形で法律で介入していけるかということが問題になります。例えば電子媒体で出している広告とか、いろいろなものがあるわけですね。そうすると、十把一絡げにいろいろな広告が規制対象になってしまうのではないかという、事業者の方の大変な御心配があって、広告関連への踏み込みというのは相当手ごわいという印象は持ちました。

ただ、一方で景品表示法という法律が、誇大広告とか優良誤認とか有利誤認をもたらしたものに対して、行政規制がかかっている部分、あれにほぼ対応するような部分に民事責任を課すということでさえ、なかなか理解してもらえなかった。という意味では、行政に対してだったら、まだ信用できるけれども、消費者団体があれを使って何かされると困るという、ダブルスタンダードじゃないですけれども、消費者とか消費者団体に対する信頼度が余りないのではないかという気がしたのです。PL法のときもそうでしたけれども、いろいろなルールができ上がって、それを使って市場を適正化しようとするときの消費者団体の現在のレベルというのは、決して低くないと思っています。ですから、めちゃくちゃな形でそれを運用されることはないだろうと思うのですけれども、懸念を払拭できなかったという部分はありまして、もう少し丁寧に事業者の方々と、どこが具体的に問題なのか、懸念としている部分はどういう場面かというのを議論する時間があったらよかったかなとは思います。

ただ、いかんせん、最初の入り口のところでとまってしまったという部分がありました。そこは後藤座長にも随分苦労していただいて、大変だったと思いますけれども、自主規制とか、いろいろな問題に対しては、皆さん、理解してくださったので、様子を見ながら、また機会を見て、必要な法規制を考えるということで一歩一歩やっていこうと思います。

(問) 先ほど、100点満点で60点ぐらいというお話でしたけれども、大事な論点が先送りされていますが、今回の提言をもとに法改正された場合には、消費者保護の観点からどれぐらい、どういうふうに効果があると、委員長としては。

(答) 消費者庁がどのくらい頑張ってくれるかにもよりますけれども、かなり前進だと思います。特に、例えば執行面でのいろいろな手当でありますとか、それから、解釈上の明確化というところもありました。大きなものは確かに落ちたのですけれども、認めていただいたものも結構あって、これをやれば、問題のかなりの部分が処理できるというか、対応できる部分が多いのではないかとは思っています。ですから、そこは具体的な内容について、消費者庁のほうで執行部隊にちゃんとした説明をしたり、事業者にも理解を求めたりということを是非頑張ってやっていただきたいと思います。

(問) もう1点、消契法の2回目の答申ですけれども、時期的なスケジュール感で言うと、もう1年ぐらいかけて、今年の年末とか、それぐらいのイメージでしょうか。

(答) まだはっきりしたところが言えないのですけれども、例えば今回の国会に改正法が上程されたとしたら、そこで議論がありますね。ですから、それはちゃんと見ていないと、次、やるべきこととの関係がはっきりしないので、その間は準備作業を具体的に進めようと思っているのですけれども、それが終わるのが6月ぐらいですかね。そうすると、そこから再スタートして、しかるべき回数をとってやるということになりますので、御想像のようなところがいいところかなと思いますけれども、はっきりしたことは申し上げられません。

(問) 先ほどの期間で、一、二年というスパンで考えていらっしゃいますでしょうか。

(答) 一、二年のスパンで考えているかというと、四、五年で考えているかとの対比ですか。

(問) はい。四、五年なのか、二、三年なのか。

(答) それは一、二年です。諮問との関係では、余りだらだらと引き延ばすつもりはございませんで、1部、2部と分けたにしても、そんなに遠い先で答申を出すつもりはございません。

(問) はい。

それから、特商法の関係ですが、報告書の中に、事前拒否者への勧誘規制の議論があったことすら最終的に入れられなかった。それについてはどのようにお考えでしょうか。

(答) あれだけの大議論をして、入り口のところで言ってみれば議論が止まってしまったというか、前提となる事実の共有ができなかったというのが最大の問題点で、あのまま進んだとすれば、ほかの論点も全部落ちてしまう可能性さえあったわけですので、途中で消費者側の方々も方針転換をしたというやむを得ない部分があったのだと思います。

ただ、私は横から聞いていて、事前に拒否した人間に対して、なお直接勧誘をするということを正当化する理由は、事業者の方からの発言でも1つも明らかにならなかったですね。それは困るとおっしゃったけれども、本当のところ、事前に嫌だと言っている人に、あえて直接勧誘したり訪問したりするということは、どんな社会だってやってはいけないことだと思いますよ。ですから、その意味では、理屈の上でそんなにおかしな提案ではなかったと思います。本当にそれが必要な場面が具体的に委員の皆さんに共感していただけたとすれば、速やかにそうしたルールが入ってくるべきだろうと思います。

ただ、中途半端に、かつ、やや強引に入れることが、果たして改正法にとっていいことかどうかという判断はあったのではないかと思います。その辺は、後藤先生に伺ってもいいかと思います。

(答・後藤特定商取引法専門調査会座長/消費者契約法専門調査会座長代理) なかなか難しくて、当初は消費者庁からも豊富な資料が出て、法規制を考えるということを私も念頭に置いていたのですけれども、事業者委員の方々の発言をお聞きしていて、そこはより慎重に、手堅く進めるほうが今後のためでもあるという判断も働きまして、今のところはできるベストということを特商法の改正全体ということで捉えました。今回、勧誘のところが割と注目されているところだし、大事なところだと思うのですが、ほかの部分でかなり前進している部分があるというのは評価いただけたらと思っております。

そういうところの議論を充実させて、それから、勧誘についても、自主規制等、現時点で事業者委員の方々が了承していただけて、全体としてコンセンサスが得られるところと、ぎりぎりのところを求めたということでありまして、これで終わりということではありません。なるべく今後につなげることを意識したということであります。

(問) 実は、議論を聞いていて非常に残念だったなと思ったのは、14回の資料で取引対策課が一件一件分析した中に、夫に相談しないとわからないと言って断ったときに、1時間以上粘られて、仮契約だけしたらいいと新聞を勧誘させられた事例とか、子供がドアを開けてしまったのだけれども、恐ろしくて威圧的で怖かったので新聞を契約してしまったというものがきちんと資料の中に出ていました。それを議論すらせずに、消費者委員の側から取り下げてしまった。事前規制の法改正を取り下げてしまって、自主規制の合意をとりに行ってしまった。そこはどうだったのか。せっかくやった議論をもう少し詰めて。

それから、入口論でPI0-NETの信頼性がずっと問われ続けて、それが意見として入ってしまい、一方の意見としては議論があったことすら入らなかった。そこで実は禍根を残したのではないかと私は心配していて、では、今後、一体何をするのか。PI0-NETの精緻化も求められるという1行を報告書に入れています。では、PI0-NETの課題を何と考えて、何をどうするのか。その辺は、座長とか委員長の御意見を伺いたいと思います。

あそこでもうちょっと踏ん張って、自主規制をとっても、行政が自主規制について判断するとか、どこまで効果があったかというのを検証するようなことも報告書の中には結局入れられていなくて、どこまで合意をとりに行って、消費者教育とか法執行と書いて、どこまで効果があるのか。そこの論法としてはどうだったのかと、私は拝見しながらずっと思っていたのですが、いかがでしょうか。

(答) 物足りない思いをされたのは、あなただけじゃないと思いますし、私ももう一歩踏み込めなかったかなという気はしないではない。けれども、法執行とか自主規制はきっちりやる。そして、相談体制の強化・充実、そういう取組を推進していく。高齢者被害対策を強化しなくちゃいけないということについては、意見は一致したとみております。

最後の最後のほうですけれども、消費者側の委員の方が、事業者・消費者ともにウィン・ウィンにならないとだめだと、そのためのルールを共に考えようじゃないかとおっしゃって、事業者側の委員もオール・ジャパンでこれは考えていかないといけないのだという意見も言ってくださった。だから、私はそこで、事業者側の方も問題そのものについては十分認識しているとみました。ただ、この段階で不招請勧誘禁止ルールのようなものが入ったときの副作用がどんなものかについて、はかり切れなかったというところがあるのだろうと思います。

既に諸外国では、ステッカー制度とかDo-Not-Call制度とか、いろいろなものが入って、全然問題なく動いているという現実があります。日本でも、例えばマンションなんかは普通には自由に入っていけないですね。直接勧誘しようと思っても、ロックされていて入っていけないところがほとんどです。そういうことを考えると、事業者の方が直接勧誘とか、そういう今までのようなビジネスモデルだけを前提にして、いろいろな活動の萎縮を語るということ自体も、もう時代から遅れているという気がします。

ですから、自主規制とか、そういうことをやっている状況下で、なおかつ問題が発生し続けるという事態があったときには、これではだめですということがはっきり言えるのではないかと思います。モニターをしっかりやって、それについての対策というのは考えるのは当然のことではないかということです。

(問) 相談件数が増えても、要するに立法事実がない。相談件数が増えること自体、そのデータ自体が信頼できないと言われている状況の中で、今後何をどうするのか。

(答) 相談を文字化したものが、相手の意見を聞いていないじゃないかという言い方をされましたね。そうなると、実際には仲裁とかあっせんしたケースを具体的に精査してみるとか、そういうことも必要になるかもしれません。

それから、消費者庁のほうでも、PI0-NETの入力の仕方とか検索の仕方ですね。今はキーワードで検索しますけれども、最近だったら言葉だけ集めて検索できるようなシステムもあるわけですから、そういう新しい検索のシステムも導入してもらって、より実態に近いものを示せるようにしたいと思います。

ただ、本当に規制強化を望んでいないときには、立法事実に関して幾らでも文句が言えますね。この間だって、4月の分、1か月分しか見ていないじゃないかと言われました。1年分調べろと。しかし、目検で1年分調べたら1年だけかと言われて、それは幾らでも言えるわけです。ですから、そういうのではなくて、立法事実というのは一体何のために必要なのかということをもう1度きちんと議論してみる必要があるだろうと思います。これは、消費者契約法とか特商法だけの問題じゃなくて、金商法とか、いろいろな法律に共通している問題なので、我々もきちんとそこは考えてみたいと思います。

(問) 強引のキーワード、不招請のキーワードがない状態ですね。再勧誘のキーワードがなくて、強引のキーワードでやったら、強引が曖昧だとずっと言い続けられて、本当はこういう事例が埋まっているのに、それが全然着目もされないような状況があって、徳島問題とかやっている場合じゃなくて、実は一体何をどうするのか。ここをはっきりしないと、次の金融庁とか、いろいろなところにも影響してくると思っています。

(答) おっしゃるとおりですね。

(問) ここをどうするのか。ここのところは、立法事実についても、向こうに言われるままの報告書になってしまったところが大変気になっています。

(答) これはいい試金石になりますので、立法事実の捕まえ方とか、そういうことについて、しっかり考えてみたいと思います。

(問) 自主規制に関しても当然見ていくわけですね。

(答) そうです。きちんとモニターする必要があります。

(問) 座長と委員長にお伺いしたいのですけれども、先ほどかなり前進だと評価されたと思いますが、あえて挙げるとすれば、どの論点について、これがまとまってよかったなという感想ですか。

(答・後藤特定商取引法専門調査会座長/消費者契約法専門調査会座長代理) 特商法に関しては、資料の報告書に出ておりますように、見直しをするということで、措置すべき具体的な事項としてたくさん挙がっておりますけれども、優劣つけがたく、どれも貴重な成果だなと思っております。

「勧誘」のところについては、確かに私も個人的には残念だと思っておりますけれども、審議会で議論を進めていくうちに、私も消費者の被害実態ということに非常に関心を持って、いろいろ考えてきたのですけれども、少し反省すべき点としては、事業者側が主張してきたことに対応する形での抗弁を出すことに対して、もう少しできたならという意味での残念な思いというのはあります。確かにPI0-NET情報でたくさん被害があるということはわかっておりますけれども、そのPI0-NETの評価の問題等について、どこまでの議論ができるかということについては、今後、もう少し時間をかけて検証していくという課題が残っていて、その課題を克服するということ。

あと1つは、非常に強く感じたことで、消契法も特商法も含めての話ですけれども、審議の過程でわかりやすく審議の内容、今、こういうことの議論が進んでいますということを、説明会を開くなり、あるいはそういうわかりやすい資料を作るなり、そういうことをするのが非常に大事だなと思いました。事業者側から出てくる懸念というものも、抽象的な懸念だな、そこまで心配しなくていいですよという意識を持ちがちですけれども、具体的にその懸念に対して対応して答える。その懸念というのがどこまで本当で、その事業者側にとってビジネスに差し支える程度のものなのか、そういうところをこちらもわかりやすく説明しつつ意見を聞いていく。そういうことは、今後のこういう議論の進め方については大事だなと感じました。

消契法に関して、ここが成果だなと思うところも、報告書で速やかに法改正を行うべき内容を含む論点というところで出てきているのは、どれも甲乙つけ難くて、重要な成果だなと思っておりますが、私の個人的なところで言いますと、合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型というのは、最初の議論からは手堅いところに絞ったことになっていまして、過量契約という名称がつくような内容になっておりますけれども、もともとはより豊富な内容を持っていました。そういう意味で、もともとの豊富な内容のところまで、更に充実させていくということも含めて考えると、ここの部分は非常に大きな成果だと考えております。

(答) 私も甲乙つけがたいということですが、何かしら、これはよかったねということを挙げるとすると、特商法は指定権利制が事実上廃止できるかもしれないということですね。あれがいろいろな悪質商法の温床の1つになっていましたから、指定権利制をやめるということであらゆる商品が特商法の規制の網にかかるというのは、これはかなり大きな前進だろうと思います。

あと、勧誘に関する対策は、自主規制とか、いろいろなほかのものの規制の組合せがたくさん入りました。民事のルールとしての問題とか、そういうものは落ちましたけれども、それ以外の行政上の課題についてみんなで認識が共有できたというのは大きかったという気がいたします。

あとは、美容医療と、先ほどの電話勧誘において過量販売が該当する部分という辺り。少しずつですけれども、今までの穴になっていたところが塞がれた。美容医療に関しては、本当はもっと本格的に単発的な施術も含めて規制したいところですけれども、少なくともブレークスルーにはなるだろうという気がします。これから後の問題は、医療法にどういうふうに踏み込んでいけるかということで、消費者委員会でこれまでも建議を出しているところですので、足りない部分については、更にフォローして、これだけでは無理だったということであれば、単発的な施術についても取り込めるような方法を考えたいと思います。

それから、消契法ですけれども、これは途中経過なので、どこで一番大きな成果が出るかはまだわからない部分がありますけれども、前々から気になっていた問題点というのが少しずつ解消されて、例えば重要事項で、特商法だとその契約を必要とする事情というのが正面から出ていたのですけれども、それが裁判所でもなかなか受け入れてもらえなかった。これを正面から入れようという方向に進みましたので、重要事項のところは適用範囲がかなり広がったという気がします。

合理的な判断をすることができない事情を利用してというのは、後藤先生が今、おっしゃったとおりで、内容的には非常に豊富な内容を含んでいます。しかし、その中の少なくとも1つに関してブレークスルーができたということですから、これを手掛かりにして、ほかの合理的な判断ができない事情を利用して行った契約に対しても規制の考え方を広げていく。先ほど本会議でも鹿野委員がもう少し広く見てほしいということをおっしゃっていましたけれども、まずは1つ手掛かりができたということで、これをきょうとうほにしていろいろな問題に広げていくということができればと思います。

あとは、取消権の行使期間などももちろん大事です。不当条項の中で消費者の解除権の確保が入りました。これは、条項規制の中で必要だったのに、今までなかなかなかったという部分ですから、法定解除権がちゃんと確保できたというのはよかったなと思います。

いろいろあるのですけれども、主立ったところといえばそういう辺りか思います。

(以上)