河上消費者委員会委員長 記者会見

2013年1月16日
消費者委員会

日時

2013年1月16日(水)11:00~11:47

場所

消費者庁6階記者会見室

冒頭発言

(事務局) おはようございます。消費者委員会委員長の定例の記者会見を始めさせていただきます。本来であれば第1週の水曜日ですけれども、年明けということもありまして、第2週、まだ立ち上がったばかりということで、変則的ですけれども、本日、設定をさせていただきました。
 冒頭、委員長から当面の委員会の活動について御報告申し上げ、その後、御質問、御意見をお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。

(河上委員長) それでは、今年も、よろしくお願いします。
 新しい年になって、政権も代わって、いろいろと状況が変わりましたけれども、消費者問題そのものは待ったなしですので、今の消費者行政が直面しておりますさまざまな課題に対処するために、いろいろな機関や団体から情報や御意見をいただいて、消費者目線で問題の所在を明らかにして、政府全体の消費者行政の監視をするという機能をフルに発揮していきたいと考えております。今後、個別の建議も行っていくわけですけれども、同時に、中長期的な消費者行政の在り方についての根本的な課題も掘り下げていく作業を、継続してやっていくことも大事だろうと思っております。委員も職員一同も、強い使命感を持って頑張っていこうということで張り切っておりますので、よろしくお願いいたします。
 まず、報告事項が何点かございます。
 第1は、昨日、1月15日の第110回消費者委員会におきまして、「特定商取引に関する法律施行令の一部改正について」という諮問に対する答申の取りまとめを行いました。御承知のとおりかと思います。
 この件につきましては、昨年の12月14日付で内閣総理大臣から当委員会に対して諮問が行われておりまして、その後、消費者庁からの説明を聴取した上で当委員会としての諮問内容についての検討を行ってきたところであります。お配りしております答申、もう「案」がとれてしまっていますけれども、最初のページに記載されています、附帯事項、すなわち訪問購入に係る消費者被害の実態把握の強化と、消費者被害が拡大した場合は必要な見直しを機動的に実施してくださいということなどを条件としてと言っていいと思いますが、これを前提として、原案のとおり了承することにいたしました。
 こういう判断に至った理由については、答申の2ページ目に記載しているとおりです。この法律ができた経緯、表現が変わっていったところの経緯を考えますと、立法府で、ポジティブリストからネガティブリストに切りかえて、基本的にはすべての商品について訪問購入というものを禁止するのだという意思があったわけで、それを最大限尊重していただくことが必要だろうということが大前提になっております。ですから、今回のネガティブリストの選定にあたって、その点についての配慮を最大限お願いしたいということでございます。政府におかれましては、この附帯事項を十分尊重していただいた上で、政令を速やかに施行して、訪問購入に関する消費者被害の防止に向けて強力な取組みをしていただきたい。
 時間があればもう少し適用除外対象品目の当否を議論してもいいのですけれども、今、問題となっている貴金属とか、その他の押し買いを速やかに取り締まることをやっていただくためには、余り時間をかけるということもできませんので、いろいろ勘案した上でこういう結論になったということでございます。
 第2番目は、消費者安全専門調査会の報告書に関することです。消費者委員会の下に設置されています消費者安全専門調査会というのがございまして、それが平成24年度4月から、「消費者事故の未然防止のためのリコール等注意喚起情報の周知徹底に係る方策について」ということを主たるテーマにして審議を行っているところですけれども、去る1月11日(金曜日)開催されました専門調査会において、報告書の取りまとめの議論が行われました。報告書は、一部、表現の字句の修正などを含めて座長預かりになっていますけれども、基本的な骨子はまとまったということで、最終報告書は1月29日(火曜日)の第111回消費者委員会において、座長の松岡先生から提出をいただいて御説明をいただく予定でおります。
 消費者委員会としても、同報告を踏まえまして、速やかに建議、提言等に結びつけるべく検討作業を行っていきたいと考えております。本来であれば年度末を目標にして頑張ってきましたが、ちょっとおくれてしまいました。1月のうちには何とか作業をまとめたいということであります。
 第3番目は、消費者教育の推進に関する基本方針の策定に向けた意見で、資料3であります。消費者教育の推進については、昨年の12月25日の109回消費者委員会でお配りしている意見を取りまとめたところであります。当委員会としては、今後、発足する推進会議が、この意見に盛り込まれた事項について十分に議論を深め、消費者教育を着実に推進するための明確かつ実効的な方針を速やかに提示されることを期待しているところであります。
 なお、推進法の法律本体の中に、政府が基本方針案を作成しようとするときには、消費者委員会の意見を聞かなければならないという旨が規定されております。その意味では改めて政府のほうから、基本方針の骨格ができた段階で、消費者委員会に対して法定の諮問があるということですから、本委員会における指摘事項について十分な対応がなされているかなど検証を行った上で、再度、意見を述べる機会を持つ予定でございます。
 当面の関心事項についても幾つか御報告をいたします。
 まず、健康食品の表示の在り方についてです。消費者が、正しい情報をもとに健康食品を適切に利用できる環境を整備するというのは非常に大事なことでありまして、健康食品の表示、広告の適正化、安全性の確保、消費者の理解の促進等を図るための方策について、近々意見表明を行う予定でいます。1月末に当委員会としての見解を発出することを目指して、現在、委員会内で最終的な取りまとめの作業を行っているところでございます。
 第2が、消費者基本計画の検証・評価・監視であります。計画の改定がまた行われるわけですけれども、それに向けた意見表明をやっていくことになります。具体施策の年度前半における実施状況等を確認するために、12月には関係省庁に対してヒアリングを行ったところでございます。このヒアリングの結果や、昨年の基本計画改定以降に当委員会が行った意見表明の内容などを踏まえまして、近々、できれば、2月のうちに本年夏の基本計画改定に向けた当委員会としての意見表明を行う予定でございます。
 第3番目は、消費者契約法のシンポジウムでございます。2月2日(土曜日)に開催する予定で、前回の会見でも御案内済みであります。平成23年12月から調査作業チームをつくって検討を重ね論点整理を行ってきましたけれども、大体論点がまとまってきましたので、その中間報告を行うということで、基調報告のほか、学者、弁護士、全相協、事業者、法務省、消費者庁などからもパネリストを迎えてパネルディスカッションを行う予定でおります。
 シンポジウムの重心は問題点の整理ということになりますけれども、問題点を抽出する過程で一定の方向性というのはどうしても出ます。その意味では、今後の議論への一つの重要な土台ができるのではないかと期待しています。一般の方に広く御紹介いただくとともに、記者の皆様にも積極的に御参加いただくことを期待しております。
 第4番目が、「消費者団体ほか関係団体等との意見交換会」の開催についてです。例年、2月と9月を中心に年2回、消費者団体、関係団体との意見交換会を実施しているところであります。ことしも2月から3月にかけて、主だった消費者団体、適格消費者団体に参加をいただきまして、本委員会の開催の前後の時間で、各回3つか4つの団体で合計10団体ほどを想定しておりますが、3回程度、意見交換会を実施する予定です。
 私のほうで用意していた報告は以上でございます。

質疑応答

(問) きのうの答申については、正直、満足度はどのくらいでしょうか。いいものができたのか、タイムオーバーになって中途半端になったのではないかというのか、答申についての評価はどんなものなのでしょうか。

(答) 大学の試験で言えば、60点というところです。

(問) その40点分はどういうところがありますか。

(答) いろいろありますけれども、あの法律自身、せっかく議員の方で修正してこれまでにない踏み込み方をしてくださったわけです。後追いのやり方をやめて、包括的に網をかけようという積極的な姿勢も、私としては非常に歓迎していました。それに比べると適用除外を定める上でちょっと慎重すぎた感じがします。法律の条文の中に、消費者の利益にならない場面と流通システムを著しく阻害する場面については、政令で外すという要件になっていますから、それに従って原案を練ってくださったことは確かなのですが、事業のシステムに対する影響を大きく評価しすぎているのではないかという印象はぬぐえなかったのです。もう少しきちんとつめて、本当に必要な範囲で適用除外をする方法はなかったのかというようなことは随分考えました。
 例えば自動車などの場合でもやはり問題はあったわけで、それをクーリングオフをしてしまったときに、登録と所有権者の間の食い違いが起きて問題が生ずるとか、その問題は軽自動車の場合にはないのだとすれば、軽だけでも外せないかとか、クーリングオフのところだけを外してそれ以外の不招請勧誘のところは規律を入れるとか、いろいろありますけれども、それは法律の本体のところで規定の仕方を変えないといけない。法律の本体の入り口のところで、そもそも訪問購入の対象物品で括弧して「何々を除く」となってしまっています。そうすると、法律でもう少し工夫をしておけば、あるいは、最低限の問題を回避するためだけのところで適用除外をつくることも不可能ではなかったと思います。
 以上のような法律そのものの問題もあるし、政令として書き出すときの書き方に、さらに工夫の余地はないかということについての検討の時間ももう少しあればよかったのではないかと思います。ただ、日程的にはぎりぎりという状態で、しかも、施行が遅れればそれだけ貴金属の訪問購入に関する規制が遅れるわけです。ですから、そちらのほうとのバランスを考えると、少し懸念は残ったけれども、よしとしておいて、先ずは実施を優先させたわけです。しかし、実際に適用除外にしたがためにトラブルが起きることがないように最大限の監視をしてもらう。もし問題が起きれば即座に対応してもらうということを条件につけて、よしという形にいたしました。
 ですから、委員の間の議論では、皆さん不完全燃焼的なところが大いにあったことは確かです。その辺を考えると、優良可でいけば可の60点ぐらいかと思います。

(問) 非常に苦しい状況だったというのはわかりますけれども、仕方なくと。ただ、これから実態把握をして、何かあるなら対応せよということではなくて、既にいろいろな団体から、センターもそうですが、既に自動車トラブルがあるということを言っているわけです。それについては、今後云々かんぬんではなく、今すぐ消費者庁はこれについてはやりなさいということを、この枠でなくてもいいですが、別個、何か伝えているのですか。

(答) 必要なものがあるとしましたら、やるつもりでおります。中古車の問題について指摘したときに消費者庁から出てきた説明は、要するに通常の貴金属の押し買いとは紛争のタイプが違って、むしろオファーがたくさん来て、最初に売った人との関係で契約を取りやめたい、もっといい条件で売りたいというタイプの紛争のほうが多いという、紛争類型の差異が随分議論されました。クーリングオフが利用されるときは常にそういう問題はあり得ることですけれども、それも含めて、最初に契約するときにじっくりと情報を手に入れて、その情報を比較した上でこれというふうに、きちんと意思を固めて契約をするような環境にするほうがいいのではないかという意見も当然あるわけです。
 私などは、どちらかというと、少しタイムラグを置いてそのように確実な契約ができるようにしたほうが、結果的には消費者にとってもいいし、トラブルも少なくなるのではないかという気はしているものですから、外せるものであれば外すことをぎりぎりまで考えてみました。ですから、紛争に合ったより望ましい対応の仕方が別にあるとすると、その点については消費者庁に検討をお願いすることはあると思います。

(事務局) ほかにいかがでしょうか。

(問) 関連ですけれども、委員長は先ほど、強い使命感を持ってやっていくということをおっしゃっていました。温かい目で我々も見ているのですけれども、きのうの検討ですが、今、おっしゃった60点という中で、委員の方々は、反対と言いたいところだけれども仕方がないとか、今回は妥協したとか、やむを得ないという発言がありました。委員会は消費者行政全般を推進・支援することと、同時に、消費者行政全般に対しての監視機能とか、消費者の意見を届けるというのがあります。
 監視機能の中で一番重要なのは、委員会と消費者庁との意見が違ったときにどうするのかというところが、真価が問われるところだと思っていました。今回の場合は、消費者団体も、日弁連そうですけれども、適用除外については非常に批判がある。消費者被害の防止に向けてどうするのかといったときに、条件はありますが、諮問に対する答申という形で差し支えないという結論になっていて、どうしてそうなったのかが見えないわけです。わからない。つまり、委員会としてあれだけ委員の方々がやむを得ないと。我々は聞いていて、非常に消極的な後ろ向きの意見のような気がしました。
 委員会の中は、積極的にやろう、差し支えないという意見ではなくて、むしろ委員長がおっしゃったように60点と。これは合格点かどうかわかりませんが、そういう意見がある中で、もう少し考えろとか、時間的な都合ということをおっしゃっていましたけれども、ワンクッションをもう一つ置いてという判断が委員会としてなぜできなかったのか、というところはどうですか。

(答) 本委員会でやる前に、一度、説明を受ける機会がありました。きのうもありました。2回あったのですが、それとは別に委員間打合せでも一定の説明を受けて随分議論をさせてもらいました。私自身も、個人的にも随分ヒアリングをいたしました。その中でこちらの疑問点はかなり強く出していきました。最後まで反対であるということについて言った場合のメリットと、デメリットというのが見えてくるわけでして、例えば、せめて自動車については外せということを言うと一体どういうことが起きるかということを、委員の間でも随分議論をしました。
 2月の施行日までということになると、消費者庁としては、委員会から言われたのだから、それを受けてもう少し努力するということをやってみたとしても、恐らく、関係団体とかいろいろなところとの調整はつかないし、消費者庁としてこれを外すわけにもいかないという状況に追い込まれる。そうなると、結果的には、消費者庁と消費者委員会とのいわば信頼関係のようなものが壊れてしまうことを心配する人もいました。それから、もし消費者庁がそこで失敗してしまうと、施行そのものがずれ込んでしまって、本来ねらっていた保護が大きく損なわれるということも問題になる。確かに積極的に良いという感じでなかったことは確かですけれども、それよりも一日も早く法律を施行させて、貴金属の押し買いに対しての取締りをきちんとやってもらうほうが、今、やるべきことではないかというセカンド・ベストの判断をしたこということです。
 その辺は委員の間では随分迷いもあったり、議論もあったのですが、最終的にはこれで速やかにやってもらおうというのが委員全員の意思であったことは確かです。

(問) 訪問購入に係る消費者被害の発生状況についての実態把握を重点的に行い、報告してもらうということが条件として付されています。そういうものが拡大するおそれがあれば速やかにということですけれども、これは消費者委員会として情報を提供してもらうとか、そういうことは、消費者庁との間で、例えば施行、今段階とか、そういうのはどうなっているのでしょうか。

(答) これは技術的なことになりますけれども、実際にこれで動き始めたら、消費者庁にはモニターをしてもらって、報告を定期的に受けることになると思います。

(事務局) ほかにはいかがでしょうか。関連でも結構です。

(問) きのうの委員会の後半のほうで、委員会の在り方といいますか、委員会が案件を抱え込みすぎではないかとか、違うところに任せたほうがいいのではないかという発言が相次いだ中で、委員長御自身も、一つひとつやっていくしかないみたいな発言があったと思います。その辺について、今後、委員会の在り方を根本的に考え直す、検討するようなことは予定しているのでしょうか。

(答) 委員の間では、いつも、委員会の見直しをやらなくてはいけないということは意識していますけれども、一つは、事務局体制との関係で、委員会としてやれることはやはり限界があります。予算的な問題もあります。もちろん、それは政府に対して要求していくことになりますが、その人的・物的な資源の中でどこまでやれるかということです。たくさんタマを打とうとすると、どうしても一個一個が軽くなってしまう。ある程度きちんとした形で答申を出したり意見表明をするためには、それなりに一個一個重みを持った作業をしないといけない。となると、どうしても、重みづけといいますか、テーマの選定が大事になる。そのために企画・運営会議を開いて、いろいろな意見の中で、これを今回は是非やっていこうというものをセレクトしております。
 しかし、それでも重要な問題というのはいっぱいあるわけです。これだけは外せないというものについては拾っていくということにならざるを得なくて、その結果、委員はかなり疲弊しているし、事務局もかなり疲弊しているという状況にあります。それでも何もしないというわけにいきませんから、目の前にある課題はできるだけきちんと一つずつこなしていくということで、その実績を積み重ねながら委員会としても成長するほかないと思います。
 少なくとも消費者庁との協力体制の構築が一つのカギになると思います。消費者庁の協力を得てやれる部分というのは、人的にも相当パワーアップできますので、消費者庁にもその気になってもらって一定の検討会の手伝いをしてもらったり、資料の作成をしたり、調査をしたりということをやれれば、委員会としてまだまだできることはあるという見込みを持っています。消費者庁も人手がなくて大変だということは承知しておりますけれども、しかし、協力してやれる部分はあるだろうと思いますし、国センとのパイプをもっと緊密に持っていけば、情報収集・分析の面でも少しは楽になる部分があります。ですから、今年は、三者間の連携関係をさらに強めていって、お互いになれ合いになってはいけませんので、そこはある程度の緊張関係を持ちますけれども、手伝えるところはお互いに手伝うということをやっていきたいと思います。
 阿南長官との間でも、どんどん諮問を出してくれということにして、消費者庁でこういうことを課題にしているというときには出してもらって、消費者委員会が受けて、消費者庁と協力して、いろいろなチームをつくって作業をやっていこうというふうに話し合っております。限界はあるけれども、最大限の効果を発揮できるようにしようというつもりでおります。

(問) この1年半というか、1次から3年とか委員をなさった経験の上で、皆さん、ああいう発言があるかと思いますけれども、扱う案件のスリム化よりも、歯を食いしばってできるところまでやっていこうという方向で考えるということですか。

(答) 私はまだ足りないと思っていますから、もうひとふんばり歯を食いしばるべきだと思います。もちろん、消費者委員会がやらなくてもいいという部分があるのであれば、それは整理することはいいと思うのです。例えば、食品の問題についてああいう話がありましたけれども、専門的な鑑定の話とか調査の話は、もちろん、専門家に任せればいい。けれども、消費者の目で、健康食品やいろいろな食品に関するものを見ていく必要は、現在、まだ高いと思うのです。
 ですから、ある程度の熟度に達すれば、おのずと消費者委員会がやるべきものと、そうでない技術的・専門的な調査の部分とを切り分けて、その部分については他機関にお願いすることはあると思います。ただ、今はまだ3年間の経験で成熟している状態ではないと思いますから、むしろ、消費者目線でどの点に注意してやっていけばいいかということをきちんと考えていくべき時期だろうと思っております。

(問) 関連質問です。きのうの委員会の後半で、委員の方は、消費者委員会は課題を抱えすぎているとか、そういうのは確かにありました。特定の委員の方に負担がかかっているとか、トクホの調査機関については、事務局の中に一人も専門家がいないという発言もありました。あたかも事務局が問題であるかのような感じを受けたわけですけれども、それもあるのでしょう。要するに、今後の方針とか何かが極めて後ろ向きの発言のような気がしてならないのです。
 3年と言いますけれども、4年目に入っているわけで、これはモデルのないケースだったわけで、監視機能とか、推進支援機能とか、消費者意見の反映とか、こういうことについては一つずつやってきた実績があると私は思っていますけれども、委員の方そのものが余りにも後ろ向きの発言のような気がします。そういう委員の方は、本来、いいのかどうか。国民、消費者の負託を受けて独立して職権を担うという、法律に保障されている委員の方々。専門調査会も専門の委員の方々ですし、そういう方々がいらっしゃる中で、抱えすぎているとか、妥協せざるを得ないとか、そういうものが公の場で出てくる。打合せ会で出てくるなら何となくわかりますけれども、公の場で出てくる。しかも、それが新しい展望として、消費者委員会の在り方という形で、どうするかという発言ではない。そういう形が非常に目立った感じをきのうは受けました。
 だから、改めてお聞きしたいのですが、先ほど委員長は、阿南長官からの諮問をいろいろ受けて答申と。消費者委員会の一つの役割は、自ら調査というものがある。実際ここでは専門調査会を持って、委員会は調査をされているわけです。きのうも諮問に対する答申を出されている。例えば表示基準の検討についても諮問です。
 ところが、食品表示一元化の関係だと思いますけれども、食品表示一元化については、消費者団体は今の消費者庁案に対して疑問を持ったり、反対運動をされていて、独自案を出そうとされている。こういう中で消費者委員会はこれでいいのかというのをちょっと感じているわけです。つまり、一つの枠の中でやるということになってくると、そこのところは、きのう、いろいろな形で委員の方々が一つひとつの言葉の中にバックグラウンドとしてあったような気がしましたもので、そういう面を考えると、新しい委員会の在り方とか、ことしの方針、展望とか、そういうものが何かあればお聞きしたいと思います。

(答) 一つ、きのうの話の中で、これで仕方がないのではないかという妥協的な言葉が出てきたのは、あれは私は逆によかったと思っています。つまり、今まで委員会がどんなことを考えて、どういうふうに意見形成をしてきて最終的な答申に至ったのかということについて、余り外に出さなかったわけです。委員間打合せの中ではみんなブーブー言っていて、これはおかしいのではないかというような話があって、それでもみんなが、しょうがないかというようなことで決めて、本委員会ではシャンシャンとやることのほうがむしろ多かったのではないかと思います。第2次委員会は、できるだけ議論をしている部分、みんなが悩んでいる部分も出そうということで、この間の会議でああいう発言が出てきたこと自体については、私はむしろよかったのではないかと思っています。委員会の意思形成の過程で甲論乙駁あってしかるべきで、その中で委員会としては自分たちの知恵と経験を結集し、消費者の利益を総合的に考えると一番これがいいのではないかという判断を、こういう形でしたということがわかるように、本会議の中でも意見を言ってもらおうと思います。
 もう一つ、枠の中でということですけれども、諮問を受けて、この枠の中で一定のことを考える場面と、自ら調査をやって新しい局面で出すという両方ないといけない。委員がいろいろなアイデアを出して事務局がそれに従って調査をしたり、ほかの官庁との間で話し合いをして、委員も随分議論をさせてもらっています。委員のほうは気楽にいろいろな意見が言えるわけです。事務局は他の省庁に出かけていって、こういう形で意見をまとめたいがやってくれるだろうかというようなことを話して、もうぐちゃぐちゃにされて職員の人たちは帰ってきます。それでも委員が頑張れと言ってやっているというようなことがあります。出した答申が無視されるのが一番困るわけです。消費者委員会がまたあんな勝手なことを言っていると言われて、無視されるのは困るので、むしろ消費者委員会が言ったことについては最大限尊重して、それを実行してくれるというところの目途をつけてから答申をつくりたい。
 1次の委員会で、消費者庁との話し合いができなくなったことから、かなり無理な議論をしてしまったことが、逆に、消費者委員会に相談をしてもむだだと、そういう感触を庁に持たせてしまったということがどうもありそうなのです。むしろ消費者委員会は頼りにしてもらって、消費者庁としても消費者被害をなくしたいのですから、そのためにどういうことができるだろうかと悩んでいます。ですから、委員会としても、長期的課題と合わせて、今の法制でできること、ここを直せばできるのではないかという知恵を出して、消費者庁を支えるということもしないといけないと思います。
 私は2次に入った段階で、黒子になりたいというふうに言ったら、皆さんに怒られたのです。消費者庁が褒めてもらえるように消費者委員会が頑張るというのが私の目標だと言うと、庁とケンカしないのはだめだというふうに言われたのです。そうではなくて、消費者庁も消費者委員会も目標は同じなので、消費者行政の中で消費者庁が司令塔として頑張ってもらえるように、一番いい道筋を消費者委員会のほうから示していくことで力を合わせてやりたいという気持ちでおります。その意味では、枠の中・外ということは個人的にはほとんど考えておりません。結果として消費者にとって一番いい体制を実現できる提案をしていくことに尽きるかと思います。

(問) もう一つ、健康食品の表示の在り方について、資料では建議の取りまとめと書いてありますが、建議なのでしょうか。

(答) 建議になると思います。

(問) 建議というのは、法的な改正とか、制度的改正とか、こういうものを含むということでしょうか。

(答) 必要となれば、そういうものについても提案をすることになります。

(問) それから、先ほど話しました食品表示の一元化については、意見表明とか何かおありでしょうか。

(答) これも準備をしているところで、あるところまではできるはずです。仮に、提言の本体の中にきちんと書き込むというところまでいかなかったとしても、その理由書の中で、次へのステップの手がかりは必ず残していこうと思います。一つひとつ積み重ねていって、今の段階でできること、将来的にここは検討してやっていきたいということを、その中に残していくのは大事なことだと思います。一気に100点を取ろうとすると難しいけれども、少しずつステップアップしていくことは可能でしょうから。

(問) もう一つ、消費者安全専門調査会の報告書がまとまりますけれども、今は松岡座長預かりと。リコールの法的な問題だと思いますけれども、これも建議でしょうか、提言でしょうか。

(答) 建議になると思います。

(問) きのうの委員会でも大臣から発言があったと思いますけれども、大臣は、もともとは委員会と消費者庁は一つにしたかったというお考えをお持ちだったということでした。これについて、委員会としての受けとめを教えていただきたいと思います。

(答) 私は現体制での委員会の委員長になっているものですから、現行法における消費者委員会の位置づけの中で最大限のことをやるだけです。個人的には、どういう形がいいかというのはいろいろなイメージがありますけれども、ただ、今の三極体制、つまり消費者庁と消費者委員会というのは一応別で、国民生活センターも別の独立した機関として、それぞれの持ち味でやっていくことのよさはあるわけです。もちろん一体となってやったほうがいいこともあるし、そのほうが効率的な場面もあることは確かで、諸外国の機関ではそういうところも結構あります。
 ただ、三極体制になっていることのよさはむしろ生かして、成果を上げていくことに今は努力すべきだろうと思います。もし実際に経験を積んで、これではだめだという話になれば、一体化するということもありでしょうけれども、せっかく国会が全会一致でこういう体制でやっていこうではないかというふうにしてくれたわけですから、これでできるところまでやるのが我々の使命だと思います。

(問) 加えまして、国センについて、国への移行が1年間先延ばしにされたということですけれども、これに関しての委員会としての考え方と、今後はどうあるべきか。形にしていくのか、研究などをされていくのか、ということについて教えてください。

(答) 今のところ、国センに関して委員会の中で検討会を持つ予定はありません。国センをどういうふうにやっていくかというのは、2次の消費者委員会が立ち上がった時点から既に消費者庁と国センの関係の問題で、消費者委員会は横から見ているという感じでした。私は、法律的にどういう形になるかということよりも、国センの現在の独立した一体的な機能、機動性のある組織としての動きができる仕掛けができれば、それは消費者庁にぶら下がっても構わないし、独法の形でも構わない。野々山理事長なども随分気にしておられますけれども、予算的な手当が、独法のままでじり貧になっていくことへの危惧はあるみたいで、予算的な確保も含めて、国センが今の機能を十全に発揮できる仕掛けになるのであれば、それはどういう形になっても構わないかなというふうに思っています。
 きのうの森大臣の発言も、どこにどういう形でくっつくかということについての具体的な方向性というのはまだない状態です。ですから、今後、どういうふうになるかはともかくとして、もし、今の国センのメリットの部分が阻害される方向で動くとすれば、そのことについては、また消費者委員会として発言するつもりです。

(事務局) それでは、結構長い時間になりましたので、また個別の案件がございましたら、いつでも御連絡をいただければと思います。よろしいでしょうか。

(河上委員長) ことしは、消費者契約法の見直し作業がかなり重い課題になると思っておりますので、また、いろいろな機会に勉強会などもできればいいかなと思います。記者の方々も、あれは法律の問題でなかなか理解そのものが難しいものですので、一緒に勉強する機会があれば喜んで出てまいりますので、言ってください。

(以上)