松本消費者委員会委員長 記者会見

2011年1月14日
消費者委員会

日時

2011年1月14日(金)17:09~17:31

場所

消費者庁6階記者会見室

冒頭発言

 本日、記者会見をお願いしたのは、自動車リコール制度に関する建議を我々は8月に行いまして、これは消費者委員会の第1号の建議でございました。それで12月までに、その建議事項に対して一定の対応をして報告するようにということを各省庁に求めておりましたところ、昨年末にそれぞれの省庁から報告がございまして、これは初めての建議についてきちんと対応してもらえたということです。建議の制度が1回回ったということで、それなりに評価してもいいことであろうと思います。
 ただし、今日の質疑のところでも委員の側から出されたわけですが、まだ幾つかの点で我々の疑問に答えていないところがあるのではないか。問題提起に必ずしもきちんと理解して答えていないところがあるのではないかというところがございますので、そういう点につきまして何点かリストアップをして、今後、更にフォローアップを行っていきたいということを消費者委員会として決めた次第であります。
 ただ、本日お配りしていますが、委員会で追加資料として配付いたしましたフォローアップについての文書は、本日の議論がなされる前の段階で、回答を基にしてつくっているというところがございます。議論の中でもう問題にする必要がなくなった、あるいは別途、こういう点も取り上げるべきではないかというところもございますので、フォローアップ項目についてはもう一度、消費者委員会の方で精査をして、きちんと文章化した上で、こういった点について両省庁で引き続き対応をお願いしたいという要請を行って、5月ぐらいに予定をしております第3次の消費者基本計画の検証・評価・監視、我々は今まで2回、シリーズ的に行ってまいりまして、3回目を5月、6月ごろと考えておりますので、そこで両省庁から引き続き対応状況についてヒアリングをしたいと考えております。
 そして、これを一つの先例として、消費者委員会が建議という最もフォーマルな形で問題提起したもの、あるいは提言というややソフトな形で提言したものもありますけれども、そういった問題提起に対して関係省庁がきちんと取り組んで回答を出していただくという作風が確立することは大変いいことであると思いますので、今後ともそういうよいPDCAサイクルといいましょうか、スパイラルが回っていくように消費者委員会としても一層努力したいと思っております。
 あと、中村委員長代理から何かございますでしょうか。
(中村委員長代理) 大体、今、委員長が言われたとおりなんですが、私ども、やはり消費者委員会というものができて、今まで業界の保護・育成を中心にやっていた省庁、特に国交省が、我々の当初の建議のための調査の段階でかなり一定の抵抗を示されていたんですけれども、建議をして、そして回答を求めた、その回答に対して一応、大変誠実に回答されておりまして、消費者委員会ができて、まさに消費者目線で行政を見直すということが実現できたのかなということを少し実感しております。そういう意味では、委員長が言われたように、大変成果のあることで、今後、引き続き建議や提言に対しても同様に関係省庁が誠実に対応してくれることを本当に期待したい。そういうことによって、日本の消費者行政全体が消費者目線にだんだん移っていくということになるんだろうと思っております。
 それで、今回の自動車の問題につきましては、本当に特に消費者から見て情報の一元化、それから公表というところがうまくいっているのかということを大変懸念しながら前の報告をして、建議をしてきました。調査の当初は、例えば消費者庁の自動車情報ではなくて、事故情報データバンクに国交省のリコール対策室の情報がリンクしていない。いわゆる参画機関に入っていないということを、それはおかしいではないかという指摘をさせていただいたんですが、本日、口頭の回答では、そこはようやく事故情報データバンクと国交省のリコール対策室の間でシステムの参画ができるようになったということの御報告を受けました。
昨年の8月27日に出した報告書を読んでいただくとわかるんですが、非常に消費者庁と国交省の間で見解が分かれて、これは果たして連携できるんだろうかというのを心配しておりましたけれども、今日の報告で、我々の建議を受けて改善していただいたということは大変喜ばしいと思いますし、また引き続く、集まった情報からの分析・調査等についても、なかなか国交省も予算と人を付けるのがうまいと思うんですけれども、新しい組織を立ち上げ、そして人員を増やすということを次年度の予算の中にちゃんと入れておられるようなので、これが実ることを期待したい。一方、消費者庁の方も人員の拡大はかなり要求されておりますので、こういう消費者の安全の面で行政が更に前進していくことを大変喜ばしく思っているということです。

質疑応答

(問) メーカーが社内でリコールを決めてから国交省に届け出る日数に期限を設けるということですけれども、これは何日以内というのは具体的に決まっているんですか。

(答) いや、これは国交省がそういう方針を定められたようなんですが、まだ今日のお話では、何を起点にして何日というところまで議論は進んでいないのか、あるいはまだ公表できない段階なのかという感じでした。

(問) それでは、期限は定めることは決めたけれども、それが例えば1週間以内とか1年以内とかという具体的な数字はまた今後決めていくということになるわけですね。

(答) はい。少なくとも、本日は出なかったです。

(答・中村委員長代理) 今日の段階では、これからその日数等について明確な基準を設けることにしますという程度でしたので、我々はフォローアップ項目としてそこを更に突っ込む予定ではおります。

(問) 先ほど委員長は、これは建議第1号ということで、省庁もある程度対応してくれたというふうに評価をしていたと思うんですけれども、ただ、今回のこの自動車リコールについては、建議を出して数日後ぐらいに国交省の方でこの対策室は来年度つくるというように、リコール制度の見直しは既に前々からやっていたのではないかというような疑問も少しあるんですけれども、その辺りは本当にこれが、消費者委員会が動いたから成果であると言えるのかどうかというのは、委員長としてはどうお考えでしょうか。

(答) その辺の、消費者委員会が動いたことが唯一の原因であり、建議の成果であるとまでは考えておりません。各省庁も一定の方向の検討をしているところに、消費者委員会がこういう方向にやるべきであるという建議を出すことによって、その省庁の言わば肩を押し、かつ財務省との関係で予算をきちんと付けてもらえる一つの根拠づけに使ってもらえれば、それはそれでよいことであろうと思っています。
 有料老人ホームの問題についても、やはり国交省あるいは厚労省の方が一定の法改正の中で考えておられるという中で、我々としてはその肩を更に押すという意味であのような建議を行ったということです。全くやる気のない、何も考えていないところにいきなり建議を出してそういう方向に変わってもらうというのも一つの、非常にドラスチックなやり方ですけれども、一定の考えているところに後押しをするというのも意味があると思っています。

(答・中村委員長代理) 少し補足なんですが、国交省の大臣はなかなか機を見るに敏で、私ども消費者委員会では昨年の2月から自動車リコール問題で国交省をお呼びしてヒアリングをしたりして、問題指摘はずっとやってきていて、そして今回、建議に先立つ報告は正式には5月から、法律に基づく調査報告を求めるということで入っていきまして、そういう過程の中で我々がやらんとしているところは国交省は敏感に感じ取っておられて、当時の大臣も、お会いしますと、なかなかその辺を感じ取った、受け止めた答弁をしておられたので、全く無関係ではない。連携はうまくできていたのかな。勿論、国交省も独自のお考えもあったかもしれませんけれども、消費者委員会のそういう動きを敏感に感じ取って施策を実施されたのではないかと思っております。

(問) 少し細かいんですが、この4枚目の「フォローアップ項目」の「(独)交通安全環境研究所の技術検証体制を強化したことによる成果」というふうにあるんですが、これはこれの建議がされる前までも、この研究所は利用していたんですね。それをもっと利用するということなんですか。

(答・中村委員長代理) はい。それで、今までは人数が少なかったから今回は増やしますというので、平成23年度中に現在の16名から25名へ増員しますという回答でした。

(問) それでは、これまでも何か新しい民間の独法を使うんだということではなくて、これまでやっていたところに更に人数を増やすということですね。

(答・中村委員長代理) はい。そうです。

(問) ちなみに、この調査推進室を設置するのに、国交省はどれくらい予算を獲得したかというのはわかりますか。

(答・中村委員長代理) 平成23年度中にまず7人でスタートして、半期の予算というものがあって、プラス5名して、合計12名にする。そういう予定でやるということでした。

(問) それでは結果として、国交省としては建議を奇貨として予算を獲得し、大きくなったということですね。

(答) ある意味ではそうです。ただ、単純に焼け太りかどうかはわかりません。ほかのところをスクラップしているかもしれませんので、ただ我々としては、こういうところを強化してくださいという要請には応えていただいたと思っています。

(問) これはそもそも、トヨタのリコール問題でサービスキャンペーンがわかりづらいというところから始まったと思うんですけれども、これは最後のところで「中期的な課題として検討を継続する」ということですね。これは、今日の委員会も聞いていましたけれども、どのような区分けにするものがいいのか検討しますと答えていただけであったような気がするんですが、何かもう一つ、踏み込みが見られないように感じたんですけれども、いかがですか。

(答) こうすべきであるという提案を我々が一気にやってしまうというのもあり得るかもしれませんし、法律的に存在しない制度はもうやめてしまえ。法律的にはまさにリコールしかないわけですから、リコールの定義をきちんとした上で、それに対応するものはリコールとしてきちんとやるべきであるというふうに仕組みをつくってもらうというのも一つかと思いますが、建議に至る段階での国交省とのやりとりでは、区分をしているけれども、運用は余り変わっていないんだから、例えば改善対策になったから手を抜いているとかというわけではないんだというような感じの説明もされていましたので、実態としてきちんとやっているのならそれはそれでいいかもしれませんけれども、それなら一つのジャンルにすればいいのではないか。その方がすっきりするかなという気もいたしております。

(問) それはそのとおりですね。けれども、今日の回答を見る限りでは、向こうは余り積極的ではなかったですね。それは、向こうの今のやり方をどうするかというのは、まさに中期的な課題として今後も検討してくださいということに、これについてはとどまるということですか。

(答) はい。1つ想像できるのはメーカーの評判との関係で、リコールというものは言わばマイナスイメージがかなり強く付きますから、メーカーとしてはリコールという対応よりは改善対策の方がいい、あるいはサービスキャンペーンということで、実質的にはちゃんとやりますというふうにしたいというところはあるのではないかと思うんです。それで、言わば主務官庁としての国交省もそういうメーカーのことを配慮して、やっていることは一緒なんだから、イメージが余り下がらないような区分でやってもいいですというふうに従来は事実上指導をしていた。黙認していたのかもしれないです。実際に、トヨタ自動車の例の踏み込みが緩いから空転するというケースについては、最初はリコールではなくて、改善対策とか、あるいはサービスキャンペーンとかというような話も出ていたわけですが、最後に、やはり国民の声も見極めた上でリコールという対応を取ったんだと思っています。
 我々は、このメーカーはリコールしたからけしからぬという非難をするために一番厳しいレッテルを張れというようなことは言っていないわけです。それでは余り意味がないわけですから、むしろそうなった原因をきちんと解明して、現に危険な、市場に出回っている、あるいは家庭に行っている自動車についてきちんとした対策が取られるということが一番重要なので、その限りではどのジャンルに入ろうが、きちんとやってもらえればそれにこしたことはないという言い方もできます。

(問) フォローアップ項目なんですが、これは7項目なんですけれども、これは今後増えるといいますか、内容も変わっていくものなんでしょうか。
 それと、もう一つは消費者庁あての建議の回答なんですが、事故情報データバンクへの国交省のリコール対策室の参加というのはわかったんですけれども、PIO-NETの事故情報データバンクへの接続といいますか、要するに反映といいますか、それが消費者庁サイトでその情報が見られるように、そういう方向で消費者庁が考えているのかということを、今回の回答の中でそういうふうに考えているんだと理解していいのかどうか。

(答) いや、もうそれは実際にしているんだというのが本日の回答でした。ただ、PIO-NETですから、相談情報なので、こういうヒヤリハットであるという情報は入りますが、結果として相談員が間に入って、こういう処理をしましたという処理の結果は出していません。
 ですから、事故の概要の部分については全国の、従来は都道府県レベルと、それから県庁所在地の主要なセンターの情報だけをつないでいたらしいんですが、今度、それをもっと広げて、全国700のほとんどのセンターの事故そのものの情報については検索できるようにするということです。

(問) そういうことで、その処理結果については、行政サイトでは見られるようにするけれども、一般消費者サイトではそこまでは回答がなかったという質問と、そういう意見もあったんですけれども、難しいということで。

(答) 「処理結果」というものは、個別事件で幾ら慰謝料を払いましたかとかという話なので、それは裁判ではないわけですから、両当事者が公開してもいいですと言えば公開になるんでしょうが、そうではない。このメーカーは幾ら、この事件で賠償金を払ったか。  それはそれぞれの損害賠償請求をする被害者にとっては大変貴重な情報かもしれませんけれども、我々は、そういう形の公開は今のところは想定していません。

(問) それが処理結果の内容である、それも含まれているということなんですね。

(答) そうです。処理結果ということの意味は、相談処理の結果、どういうふうに決着したかということのようです。

(答・中村委員長代理) 私がそれを質問して、これは何年何月何日に既にリコール届けをしましたというものも何で公表しないのかと言ったのは、我々の、前に建議をやったときの前提となる報告書に2つの用語を使っていて、「処理結果」というものと「措置状況」というものを括弧で、イコールで書いているんです。それで、国交省などは「措置状況」という言葉で、この車は既に何年何月にリコールしましたということを書くことになっていますので、イコールとして見ましたら、「処理結果」のところにもそれも入れてくれて書いてくれたら消費者の役に立つ。そうしたら、それも公表していいのではないのかというつもりで私は質問したんですが、消費者庁の課長の回答は非常に、今、言われた相談員の処理結果みたいな、いわゆる相談結果みたいなとらえ方で回答されていましたので、用語の使い方をきちっと、もう少し説明すればよかったかなと思っています。

(問) 結局、今のところですけれども、一般消費者向けサイトと行政向けサイトの中身というものは、両方とも要約だけではなくて詳細が見られるようになるということでいいんですね。

(答・中村委員長代理) はい。

(答) 詳細ということの意味は、処理結果ではないところの。

(問) 処理結果ではなくて、相談の方ですね。

(答) 事故の態様等のです。

(問) 事故の態様もそうなんですね。

(答) はい。

(以上)