賠償負担金・廃炉円滑化負担金の算入に伴う電力託送料金変更案の算定に関する消費者委員会意見

2020年8月28日
消費者委員会

賠償負担金・廃炉円滑化負担金の算入に伴う電力託送料金変更案の算定に関する消費者委員会意見

消費者委員会は、本日、公共料金等専門調査会電力託送料金に関する調査会から、賠償負担金・廃炉円滑化負担金の算入に伴う電力託送料金変更案の算定に関する電力託送料金に関する調査会意見の提出を受けた。

本意見を踏まえ、消費者庁において意見表明することを求める。

賠償負担金・廃炉円滑化負担金の算入に伴う電力託送料金変更案の算定に関する電力託送料金に関する調査会意見

令和2年8月28日
消費者委員会公共料金等専門調査会
電力託送料金に関する調査会

消費者委員会公共料金等専門調査会電力託送料金に関する調査会(以下「調査会」という。)は、令和2年8月5日付けで消費者委員会が消費者庁より意見を求められた「託送供給等約款変更認可申請に係る託送供給等約款及び託送供給等約款変更届出に係る託送供給等約款でそれぞれ設定する料金の算定」について調査審議した。

調査審議は、上記消費者庁からの意見聴取の対象に基づき、一般送配電事業者が設定する料金の算定を中心に行った。

資源エネルギー庁より示された一般送配電事業者9社1の料金の変更内容(以下「料金変更案」という。)は、以下のとおり。

  • 料金変更の適用予定日 令和2年10月1日(値上げ相当分は1年繰延べ2
  • 変更内容3、4

(円/kWh)

  北海道 東北 東京 中部 北陸 関西A5 関西B5 中国 四国 九州

特別高圧

▲0.01

0.06

0.03

▲0.02

▲0.02

0.05

0.04

▲0.01

0.16

0.05

高圧

▲0.01

0.06

0.03

▲0.02

▲0.01

0.05

0.04

▲0.01

0.17

0.05

低圧

▲0.01

0.06

0.03

▲0.03

▲0.01

0.05

0.04

▲0.01

0.18

0.05

(令和3年9月30日までの料金変更額)

特別高圧

▲0.01

0.00

0.00

▲0.02

▲0.02

0.00

0.00

▲0.01

0.00

0.00

高圧

▲0.01

0.00

0.00

▲0.02

▲0.01

0.00

0.00

▲0.01

0.00

0.00

低圧

▲0.01

0.00

0.00

▲0.03

▲0.01

0.00

0.00

▲0.01

0.00

0.00

令和2年8月7日に資源エネルギー庁へのヒアリングを行い、その後同月11日、同月20日及び同月24日にも調査会を開催して調査審議した結果、料金変更案の算定に関する電力託送料金に関する調査会の意見は、以下のとおりである。

1.結論

  • 料金変更案の算定は、所定の算定方法に沿ってなされたものとして妥当であると認められる。
  • なお、資源エネルギー庁は、原子力発電事業に関する費用を託送料金で回収する形を取った賠償負担金・廃炉円滑化負担金の各制度について、下記2.(3)の各指摘の趣旨も踏まえて、消費者の納得を得られるよう一層努めるとともに、一般送配電事業者及び小売電気事業者に対して、料金変更に関して消費者にとって分かりやすく、丁寧な情報提供・説明を行うよう促すべきである。

2.理由

(1)経緯

資源エネルギー庁の説明から下記事項が確認された。

  • 賠償負担金は、福島第一原子力発電所事故後に導入された賠償への備え(原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(平成23年法律第94号)に基づく一般負担金。)に関して、事故前に確保すべきであった不足分を託送料金の仕組みを利用して需要家から回収するものである。被災者・被災企業への賠償については、福島第一原子力発電所の事故前には確保されていなかった分の賠償の備え(上限約2.4兆円)を広く需要家全体の負担として、令和2年度以降40年程度にわたって回収することとし、そのために必要な託送料金の見直し等の制度整備を行う旨の閣議決定6を踏まえ、平成29年に託送料金により回収する制度措置(電気事業法施行規則(平成7年通商産業省令第77号)等の省令改正)がなされた。
  • 廃炉円滑化負担金は、原発依存度の低減というエネルギー政策の基本方針の下、原子力発電所を円滑に廃炉するための費用を託送料金の仕組みを利用して需要家から回収するものである。発電事業者が想定よりも早期に廃炉する場合に、設備の残存簿価の一括減損等により一時的に多額の費用が生じることで廃炉判断を躊躇する可能性があったことから、費用の分割計上を可能とする「廃炉会計制度」を平成25年に措置していた7。当時は小売規制料金による回収を認めることが前提とされていたが、小売規制料金が原則撤廃される令和2年以降、制度を安定的に継続させる観点から、平成29年に託送料金の利用を可能とする制度措置(電気事業法施行規則等の省令改正)がなされた。
  • 賠償負担金・廃炉円滑化負担金に関する制度は、令和2年4月より施行された。
  • 同年7月17日に原子力発電事業者10社8が賠償負担金承認申請を、同事業者7社が廃炉円滑化負担金承認申請を、それぞれ経済産業大臣に行い、同月22日に経済産業大臣から同各申請の承認及び一般送配電事業者9社への回収金額等の通知がなされた。
  • 同月28日、一般送配電事業者9社が当該通知の内容に基づく託送料金の変更に関する認可申請・届出を経済産業大臣に行った。なお、当該申請・届出は、賠償負担金・廃炉円滑化負担金の算入と併せて、使用済燃料再処理等既発電費相当額の回収が令和2年9月30日で終了することによる料金の変動額も含めて算定されたものである。
  • 同年7月31日、経済産業大臣より電力・ガス取引監視等委員会に、資源エネルギー庁より消費者庁に、それぞれ意見聴取があった。なお、その後、電力・ガス取引監視等委員会は、同年8月6日に、当該認可を行うことに異存がない旨、及び、当該届出内容について関係規定に基づき適正に算定されていると認められる旨の回答をした。

同月5日、消費者庁より消費者委員会に対して意見の求めがあった。

(2)料金変更案の算定について

  • 料金変更案の算定の妥当性については、調査審議の過程で確認された事実関係を基に、一般送配電事業託送供給等約款料金算定規則(平成28年経済産業省令第22号。以下「算定規則」という。)で定められた算定方法に沿ってなされているか否かにより判断した。
  • 算定規則における算定方法は、以下の手順に整理される。
    ①今般の託送料金の変更で変動する額を算定する(具体的には、外生的要因で決まる賠償負担金、廃炉円滑化負担金及び使用済燃料再処理等既発電費等を整理する9。算定規則第26条の3第1項及び同条第2項。)。
    ②上記①で算定した変動額の合計額を、現行の料金設定時の発受電量の比率で、3つの需要種別(特別高圧・高圧・低圧)に配分する(算定規則第26条の3第4項)。
    ③需要種別の配分額を、現行の料金設定時に想定した販売電力量で割り、料金の変動単価を算定する(算定規則第26条の3第6項から同 条第12項)。
  • 料金変更案について、資源エネルギー庁より、同庁及び電力・ガス取引監視等委員会において、前提となる変動額や発受電量の比率、販売電力量等の数値を確認の上、上記①から③の手順に沿って算定されていることを確認したとの説明がなされ、調査会においても、資源エネルギー庁からの説明に照らすと、上記①から③の手順に沿って算定されていることが確認された。

(3)消費者への情報提供等について

賠償負担金・廃炉円滑化負担金の各制度については、原子力発電事業に関する費用を託送料金で回収する形を取ったことで消費者にとって分かりにくいものとなっていると考えられること、個別の電力受給という直接的・具体的な受益との関係が分かりにくい負担を消費者に求めるものであることなどを踏まえ、資源エネルギー庁において、下記のような取組・対応等がなされることが重要である。

  • 制度の内容・趣旨や制度設計時の各利害関係者の負担の在り方等の検討経緯を、消費者が改めて十分に理解し、納得できるように、継続的に消費者にとって分かりやすく、丁寧な情報提供・説明を行うことなどの取組を一層進めること。
  • その際、関係省庁・関係機関と連携し、賠償への備えの確保や円滑な廃炉を促す環境の整備といった各政策目的の達成状況について、消費者が確認できるようにすること、また、将来的に政策的観点からの費用に関して消費者への過度な負担を求めることにつながることのないようにするためにも、引き続き、原子力政策の全体像や、その中で消費者が負担することとされている費用について消費者が確認できるようにすること。
  • 一般送配電事業者に対して、料金変更案の変更内容や算定根拠、適用日等について、消費者にとって分かりやすく、丁寧な情報提供・説明を行うよう促すこと。
  • 小売電気事業者及び一般送配電事業者に対して、料金変更が適用されるに至った場合に、請求書への記載10やウェブサイトの閲覧を可能とすることなどを含め、実際に負担する消費者が適時に賠償負担金・廃炉円滑化負担金に関する情報を得られるように、また、消費者の多様性にも配慮し、広く情報が行き届くように、工夫するよう促すこと。

以上

  1. 認可申請5社:東北電力ネットワーク株式会社、東京電力パワーグリッド株式会社、関西電力送配電株式会社、四国電力送配電株式会社及び九州電力送配電株式会社。 届出4社:北海道電力ネットワーク株式会社、中部電力パワーグリッド株式会社、北陸電力送配電株式会社及び中国電力ネットワーク株式会社。
  2. 値上げとなる5事業者(東北、東京、関西、四国及び九州)は、新型コロナウイルス感染症の影響に配慮する観点から、値上げ相当分の適用期間の始期及び終期を1年延期する(1年ずつ繰り延べる)としており、約款附則にて、令和3年9月30日まで現行の料金に据え置く旨を規定している。
  3. 第7回調査会の資源エネルギー庁提出の資料3(電力・ガス取引監視等委員会事務局作成)記載の変動単価に基づく。
  4. 特別高圧・高圧・低圧の各変動単価は、配分の比率や端数処理等との関係で同額でないものがある。
  5. 関西は、値上げ相当分の適用期間の始期及び終期を1年延期した後、令和5年3月に廃炉円滑化負担金の一部の回収が終了する。この変更を反映するため、令和5年3月31日までは関西Aを適用し、令和5年4月1日以降は関西Bを適用する。
  6. 「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針」(平成28年12月20日閣議決定)
  7. 廃炉会計制度の下、原子力発電事業者7社が計15基の廃炉判断を行っている(令和2年8月7日時点)。
  8. 北海道電力株式会社、東北電力株式会社、東京電力ホールディングス株式会社、中部電力株式会社、北陸電力株式会社、関西電力株式会社、中国電力株式会社、四国電力株式会社、九州電力株式会社及び日本原子力発電株式会社。
  9. なお、資源エネルギー庁によれば、今回の料金変更は、賠償負担金・廃炉円滑化負担金の算入及び使用済燃料再処理等既発電費相当額の回収終了による変動分のみを対象とした変分改定で、これら以外の費用項目については変更が行われていないということであり、調査会でもこれを前提に調査審議を行った。
  10. 消費者委員会公共料金等専門調査会電力託送料金に関する調査会「電力託送料金に関する調査会報告書」(平成28年7月)では、「消費者が、託送料金、使用済燃料再処理等既発電費用、電源開発促進税の費用に関する情報を得られるよう、検針票に記載するなどするとともに、小売電気事業者においても、消費者に分かりやすい形で、託送料金、使用済燃料再処理等既発電費用、電源開発促進税の費用に関する情報を提供するべきである。また、経済産業省は、小売電気事業者に情報提供を強く働き掛けるとともに、事業者の情報提供の状況について調査を行い、その状況を公表すべきである。」としている。