北海道電力による家庭用電気料金値上げ認可申請に対する消費者委員会の意見について

2014年10月7日

消費者委員会

消費者委員会は、本日、公共料金等専門調査会家庭用電気料金の値上げ認可申請に関する調査会から、本件に関する意見の提出を受けた。

消費者庁においては、本意見を踏まえ、経済産業省との調整を進めることを求める。


北海道電力による家庭用電気料金値上げ認可申請に対する消費者委員会の意見について

2014年10月6日
消費者委員会 公共料金等専門調査会
家庭用電気料金の値上げ認可申請に関する調査会

消費者委員会は、平成26年9月29日付けで消費者庁より「北海道電力株式会社による電気供給約款の変更認可申請について」の付議を受けた。家庭用電気料金の値上げ認可申請に関する調査会では、10月2日に札幌市で地元消費者団体との意見交換会を実施し、10月6日に経済産業省資源エネルギー庁へのヒアリング等を行った。これらの結果を踏まえ、上記付議に対しての調査会の意見は以下のとおりである。

1.全体的な評価

  • 今般の査定方針案は、当調査会での調査審議を経て、本年9月11日に消費者庁で取りまとめた「北海道電力の家庭用電気料金値上げ認可申請に関するチェックポイント」1で指摘した意見を概ね踏まえたものとなっている。このことは、チェックポイントが家庭用電気料金値上げ認可申請の審査の過程において、公平かつ効率的な料金査定方針案策定のための指針とすることが定着したものと評価できる。
    1 北海道電力会社からの値上げ認可申請に関する検証にあたり、消費者の観点を踏まえたものとなるよう、9月10日の調査会での議論を経て、消費者庁において9月11日に取りまとめたものである。
  • 査定方針案において、電気料金の値下げの条件について考え方を明らかにしている点、値下げの実施時期や値下げ幅等について電気料金審査専門小委員会がフォローアップを行うこととしている点については評価できる。今後、フォローアップは適切なタイミングで行われるべきであり、さらに、値下げ幅等について需要家から公開にて意見を聴く機会等を設けるべきである。また、フォローアップの結果に基づき、値下げを実施する仕組みを検討すべきである。
  • 今回の査定は、電源構成変分認可制度(一般電気事業供給約款料金算定規則第19条の2、以下電変という)に基づいて提出された申請に係る初めての査定である。電変の基本的な考え方について、査定の前提として、需要家に更なる負担を求めるに当たり、今般の料金改定の「前提計画」として位置付けられている経営効率化計画が、前回改定の査定方針及び認可時に求めた経営効率化を反映したものであるかどうか、その進捗状況・内容等を十分に確認するとされたことは評価できる。
  • 電変において査定対象とされた項目以外についても、チェックポイントで示した点を経営効率化の指標として取り入れたことについては評価できる。今回のような短期間での再値上げに対して、需要家の査定に対する信頼を確保するため、今後の料金認可申請においても、今回と同水準またはそれ以上の徹底した審査を実施すべきである。
  • 経済産業省資源エネルギー庁における審査プロセスにおいて、公聴会や国民の声など、需要者の意見を広く聴取するとともに、事業者に綿密な情報提供を求め、精力的な審査を行った点は評価できる。ただし、査定方針案についても需要者が十分理解できるように、値上げ実施までに十分周知する等、配慮すべきである。
  • 2.で掲げる「経営効率化」、「料金体系等」、「今後の料金値下げ等」の個別項目について、更なる対応を頂き、結果について説明を求めたい。特に、経営効率化について、「コスト削減において一部未達となっていること等も踏まえ、更なる効率化の徹底」を求める内容となっているが、項目ごとに、未達部分を中心とした更なる効率化と、資産売却等を含めた経営努力の徹底を求めるべきである。
  • 札幌の意見交換会において、今回の大幅値上げによる負担増について懸念する声が多く出されていた。こうした声を踏まえ、北海道電力においては、消費者のための激変緩和措置に関する具体的な方策を速やかに明らかにし、適切に実施すべきである。特に、電力需要量の大きいオール電化世帯の負担増については、北海道電力がオール電化を推進してきた経緯にも鑑み、料金メニュー間での不公平が生じないことにも十分留意した対策を実施すべきである。
  • 3.で掲げる、中長期的なエネルギー政策の在り方等の今後の課題については、経済産業省資源エネルギー庁において検討頂き、近い将来しかるべき時期に消費者委員会としてヒアリングを行いたい。
  • 北海道電力が、経済産業省資源エネルギー庁における審査プロセスに真摯に対応したこと、また、経営効率化を更に進めることを表明したこと、さらに、需要家に対する説明会を実施し、情報提供に努めたことは評価できる。消費者からの厳しい声に対し、電力供給事業者として、自社の経営が北海道の経済及び消費生活に多大な影響を与えることを十分自覚し、中長期の電源構成やそれに応じた設備投資の意思決定を行うとともに、消費者の共感を得るための積極的な取組や丁寧な情報提供・説明を行うべきである。

2.個別項目

【経営効率化】

  • 原価に織り込まれていないものの、一部原価を超える支出について経営効率化未達の指摘をしたこと、及び再値上げにおいては、原価に織り込まれない支出であっても、純資産の毀損により要資金調達額が増えるとの観点から、効率化の深掘りで生み出される原資を需要家への還元や財務基盤強化に充てられるべきとしたことは評価できる。他方、「あらためて、北海道電力においては、一段の経営効率化の取組を行うことを具体的に表明することを求めたい」とされていることについて、あわせて費用項目ごとに未達部分の理由の検証を行うべきである。

【燃料費】

  • 値上げの大宗を占める燃料費について、メリットオーダーの徹底を行い、自社火力の発電電力量の増加分及び燃料消費数量の再算定を行い、料金原価から費用を上回る部分を減額すべきとしたことは評価できる。
  • 燃料費の「数量の変更に起因する変動額に限る」の条文解釈について、電変制度において燃料費単価も見直し対象となることを一般電気事業供給約款料金審査要領に明記することとしたことは評価できる。
  • 一般水力について、前回計画以降に発生した機器の故障による作業停止計画の追加により発電電力量の減少が想定されていたが、原価算定期間より前に修繕が可能だったのではないかという指摘を踏まえ、電変に基づく社会的経済的事情の変動によるものと認められないとしたことは評価できる。

【料金体系等】

  • 消費者が電気料金を節約できる新たなメニュー等について積極的に広報・普及に取り組むよう、北海道電力に促すべきである。
  • 「供給約款料金の単価が割高に設定されるという事実は確認されなかった」としているが、逆に、選択約款料金の単価が割高でないかどうかが不明確である。公平性が確認されているのか、明確に説明すべきである。
  • 北海道電力の申請案では、1・2段階格差、2・3段階格差ともに縮小しているが、激変緩和措置の一つとして、使用量の少ない需要家の負担を緩和するための措置を検討すべきである。

【今後の料金値下げ等】

  • 泊原発の再稼働時期と値下げ時期との関係について、「再稼働後、原則として」値下げすることとしているが、実際に値下げが行われるのか不明確であるため、必ず値下げするということを明示すべきである。値下げ率は事前に一意的に決められないとしているが、そうであっても、事例による試算を示すなど、消費者への積極的な情報提供を行うべきである。例えば、1から3号機がすべて再稼働した場合、今般の経営効率化による原価削減効果も織り込んで、平成25年改定以前の水準以下まで電気料金を値下げしていくこと等を明示すべきである。
  • 料金値下げ幅が適正であるかを検証するプロセスについては、これまで制度上の措置が不十分であった。今回、フォローアップにより確認することが示されたことは評価できるが、フォローアップ実施のタイミングについては、料金値下げが可能となる事由が明らかになった後、直ちに行うべきであり、また、可能な限り短期間で行うべきである。
  • 燃料費等の追加費用が、今回認可時の想定を下回ることが明らかになった場合は原価算定期間内に値下げするとの査定方針案はもちろんであるが、さらに、フォローアップの結果、値下げ幅が不十分であった場合は、更なる値下げを求めることも検討すべきである。
  • 料金値下げ幅の検証プロセスにおいても需要家の意見を聴く機会を広く設けるべきである。
  • 泊原発の再稼働時期が予定よりもさらに遅れる場合であっても、原価算定期間内に3度目の値上げが行われないことを確保するために、経済産業省資源エネルギー庁がどのような措置を講じるのか、明確にすべきである。

3.今後の課題

  • これまでの電気料金値上げ認可申請の調査審議の過程で明らかになった諸課題(例:情報公開・開示の在り方、総括原価方式の在り方、事業報酬算定の在り方、事後評価における事業者の値上げ申請認可後のモニタリングの在り方、電源構成変分認可制度による電気料金値上げの審査の在り方、料金値下げ幅の審査の在り方等)について、さらに経済産業省資源エネルギー庁において需要家の利益が損なわれることがないような制度の検討を行うべきである。
  • 査定方針案において「LNGの調達に当たっては、他事業者との連携も含め最大限のコスト削減を行うことが求められる。」としているが、経済産業省資源エネルギー庁において、引き続き国の支援等の対策を含めた総合的対応を検討すべきである。
  • 札幌の意見交換会において、北海道省エネルギー・新エネルギー促進条例(条例第108号)を踏まえた、電源の多様化の推進や新しいエネルギー分野のより一層の開発を求める声が多く出されていた。経済産業省資源エネルギー庁は、中長期的な電源構成の考え方について、再生可能エネルギーの使用拡大の見通しも含め、消費者に対し、積極的に丁寧な情報提供・説明を行うよう、北海道電力に促すべきである。
  • 経済産業省資源エネルギー庁として、電力システム改革の進捗状況については、消費者の関心も非常に高いため、消費者庁等とのかかわり方も含め、これら検討の全体を俯瞰できるような情報提供を工夫すべきである。特に、消費者にどのようなメリットがあるのかについて分かりやすい情報提供を行うべきである。今後の家庭用までの電力小売の自由化、発送電分離、再生可能エネルギーの利用拡大及びスマートメーターの普及等が消費者に与える影響について、消費者教育の機会を設けることを検討するべきである。
  • 経済産業省資源エネルギー庁は、電力システム改革における具体的な制度設計や制度の運営を行う際には、消費者の利益が損なわれることがないよう、消費者の意見が政策に反映されるような仕組みを検討するべきである。

以上の今後の課題については、消費者庁においても経済産業省資源エネルギー庁とこれらの政策に係る情報及び認識等を共有し、消費者庁の使命を実現すべく適切に対応することを強く期待する。

以上