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違法ドラッグ対策に関する提言

2012年4月24日
消費者委員会

1.背景

違法ドラッグ(注1)については、平成10年頃から一部の薬物マニアの間で流行し始めたと言われており、違法ドラッグを吸引等した場合、麻薬に似た幻覚症状、興奮、多幸感だけでなく、頻脈、痙攣などの重篤な中毒症状などの健康被害が多発しており、また、青少年を中心に乱用が広がるなど社会問題化している。最近では、都内や大阪市で薬物中毒による緊急搬送が多発したほか、今年2月には名古屋市内、4月には横浜市内で薬物中毒による死者が出るなどの事実もあり、このまま見過ごすべきではない状況にある。
こうした薬物中毒の多くは、麻薬や大麻といった違法な薬物に指定された薬物による中毒ではなく、いわゆるヘッドショップ等で市販されたハーブや芳香剤などに含まれる成分を被害者(消費者)が意図的に吸引等をすることにより、薬物中毒を発生させたものである。
違法ドラッグとは、薬事法第2条第14項に規定する「指定薬物」及びこれに含まれないもののその化学構造式が指定薬物に類似したものであって、事実上、吸引などの人体への摂取目的で販売されている場合には、無承認・無許可医薬品に該当し、薬事法上の取締りの対象となるものである。しかしながら、薬事法以外に違法ドラッグを規制する法律がないため、個人の所持や摂取、また、売買は販売者が人体への摂取を示唆しない限り違法とは言えない状況にある。これらの違法ドラッグは、店舗販売のほか、インターネット等を通じて販売されており、薬事法に抵触しないようにハーブ、芳香剤や観賞用などとして販売されているケースが多い。


(注1)違法ドラッグとは、いわゆる「脱法ドラッグ」と称されるものである。


2.消費者問題としての違法ドラッグ

今回、消費者委員会が違法ドラッグ問題を消費者問題の1つとして取り上げたのは、次の事由による。
まず、違法ドラッグは、強い常習性を持つ麻薬や覚せい剤などへの入門薬物(ゲートウェイドラッグ)と言われており、また、違法ドラッグの中には、製造管理工程が劣悪な場合もあることから麻薬などより強い毒性を含んでいる場合もあり、使用することにより精神錯乱等身体に重大な影響を与え、場合によっては死に至らせるものもある。
こうした薬物乱用のきっかけとなる商品が、市中において、また、インターネット取引等を通じてオープンマーケットで自由に販売され、青少年も簡単に手に入れることができる状況にあり、消費者安全の観点から大いに問題があると考える。
また、販売主は、当然予想される結果に目をつむり、違法性を認識しつつ販売していることが容易に推測される。この行為は、仮に違法ドラッグの使用方法等を消費者へ示唆した場合は、無承認・無許可医薬品の販売に当たり、薬事法の処罰対象となるとともに、あたかも危険な薬物でないかのように偽って販売するといった取引上の問題、重大な副作用等の不利益事実に関する不告知に当たる可能性もある。
また、容易に販売名や包装形態等を変えて販売されるなど実際にどのような物質が含まれているか不明なまま流通したり、用途が偽装されたり、用途を一切標榜しないまま輸入・販売されるなど、違法ドラッグの多くは、実効ある取締りが難しい。
このように、違法ドラッグについては、市場適合商品であるかのような様相を呈しつつ、消費者の健康に対して非常に有害なものが市場に出回っており、消費者問題として違法ドラッグ問題に取り組み、積極的にこれを市場から排除していくことが重要である。



3.違法ドラッグ対策に関する消費者委員会の提言

違法ドラッグによって派生する種々の問題を踏まえ、消費者委員会としては、違法ドラッグを消費者問題の一つ(消費者安全、消費者取引)として捉え、厚生労働省をはじめとする薬物乱用対策推進会議(注2)関係府省に対し、以下のとおり提言する。

(1)指定薬物への指定の迅速化
指定薬物に指定されている薬物は平成24年4月現在68物質となっているが、ヨーロッパ等で販売・製造されている違法ドラッグについては、これに該当しないものが日本で新たに輸入・販売される傾向がある。
このため、日本で販売される前にそれら違法ドラッグの成分を調査し、販売前に指定薬物に指定するなどの方法により、指定の迅速化を速やかに図る必要がある。こうした指定をすり抜けて日本で新たに販売された違法ドラッグについては、その事実が確認でき次第、指定薬物に指定することが有効である。
また、厚生労働省にあっては、新たな違法ドラッグに関する情報収集・監視力を高めるとともにより一層の基礎的な研究・分析体制の整備を行い、指定薬物の指定の迅速化を図るよう要請する。

(2)取締りの強化のための方策
指定薬物以外の薬物等については、薬事法では、「人体に影響を及ぼすことを目的とする物質」を医薬品として取り締まることが可能であり、違法ドラッグもその対象である。しかし、違法ドラッグについては、化学構造式を若干変えた新規の違法ドラッグが相次いで出現しており、実際にどのような物質が含まれているか不明なまま流通し、また、用途を一切明示しないままで輸入・販売がされるなど、実効ある取締りが難しい状況にある。
そこで、厚生労働省に対しては、(i)成分構造が類似していれば薬事法違反として一括で規制対象とする「包括指定」の導入や(ii)現状では麻薬や覚せい剤などの捜査権限しかない麻薬取締官(員)に違法ドラッグを独自に捜査、摘発できる司法警察職員としての取締権限などを持たせるなどの体制強化を検討するよう要請する。
さらに、薬物乱用対策推進会議関係府省が連携して、(iii)個人輸入等による入手機会を抑制するための施策の実施(違法ドラッグの仕出地や中継地となっている国と国際協力の新たな枠組みを構築する等、水際対策を徹底する。)、(iv)合法商品としての様相を呈しつつインターネットを利用して販売活動を行う広告の監視・規制強化についても検討し、必要な対応を行うよう検討することを要望する。
当委員会は、重大消費者被害の発生又は拡大の防止を図る観点から、上記の規制強化など、所要の措置が適切に講じられることを求める。

(3)取締当局との連携強化
これまでも、政府全体では、薬物乱用対策推進会議のもと、厚生労働省をはじめ警察など関係行政機関が連携した対応を行っているが、平成24年度より、厚生労働省により情報を関係者が共有できる協議会の設置が予定されており、これを基にして今後の取組がより強化されることを期待する。当委員会は、今後とも、さらに関係府省等の間の連携を進めて、消費者被害の効果的抑止が実現できるよう、より一層の努力を求めるものである。

(4)実態把握と消費者への情報提供・啓発の実施
違法ドラッグに関する全国レベルの乱用実態・健康被害情報については、各都道府県単位でそれらの被害数やその程度等を統一的に把握するのは難しいことから、厚生労働省が関係行政機関と連携の上、それらの情報を一元的に把握し、効果的な対応策を検討する必要がある。実態把握の上、健康被害や危険性に関する消費者への情報提供・啓発の強化を求める。その際、特に青少年への影響を踏まえ、大学等をはじめとした学校における啓発の一層の強化を求める。
また、薬物問題相談窓口や消費生活センターを活用する等して違法ドラッグによる健康被害に関する消費者等からの相談窓口の設置の検討を要望する。


(注2)薬物乱用対策推進会議
議長:内閣府特命担当大臣(薬物乱用対策)、副議長:国家公安委員会委員長、法務大臣、財務大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣、国土交通大臣、
構成員:総務大臣、外務大臣、経済産業大臣



皆様へのメッセージ(PDF形式:8KB)
河上委員長発言(12月4日 第106回消費者委員会)(PDF形式:63KB)

提言の概要

  1. 指定薬物への指定の迅速化
  2. 取締りの強化のための方策
    (i)「包括指定」の導入
    (ii)麻薬取締官(員)に違法ドラッグを司法警察職員としての取締権限などを持たせるなどの体制強化の検討。
    (iii)個人輸入等による入手機会を抑制するための施策の実施(水際対策の徹底)
    (iv)合法商品としての様相を呈しつつ販売活動を行う広告の監視・規制強化についての検討
  3. 薬物乱用対策推進会議関係府省が連携した取締当局との連携強化
  4. 乱用実態・健康被害情報の一元的な把握と消費者への情報提供・啓発の実施

主な成果

  • 提言以降、指定薬物部会を随時開催。違法ドラッグを指定薬物とすることについて審議し、妥当とされたものについて、省令改正により順次指定。
  • 2013年2月20日、「合成カンナビノイド類」の1骨格を有する物質群を指定薬物として包括指定(772物質)する省令を公布し、同年3月22日より施行(指定薬物は92種から851種に拡大)。
  • 2013年5月10日、麻薬及び向精神薬取締法及び薬事法の一部を改正する法律が可決され、麻薬取締官(員)が指定薬物に係る薬事法に違反する罪について、司法警察員として職務を行うこと等が可能に。
  • 2012年8月30 日、薬物乱用対策推進会議において、「合法ハーブ等と称して販売される薬物に関する当面の乱用防止対策」を取りまとめ。
  • 毎年7月の「青少年の非行・被害防止全国強調月間」において、薬物乱用防止啓発ポスター別ウインドウで開きます及びチラシ等を青少年の目につきやすい場所へ掲示、配布。
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